Catégories:“ファンタジー(翻訳)”

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ある晩、自分がグウィネファーと呼ばれる女性になった夢をみたローレル・フェラン。その頃、不眠症治療のために過去世退行セラピーを受けていたこともあり、ローレルはグウィネファーがアーサー王妃グイネヴィアであり、自分の過去世がグイネヴィアその人であることを知ることに。そして数年後、ローレルはグイネヴィアの過去を改めて辿ることになります。その体験の中で知ったグイネヴィアは、思っていたような温和で愛らしい女性ではなく、自尊心の強い、エネルギーが全身にいきわたったような強い女性でした。

アーサー王妃・グイネヴィアの生涯を、自分の過去世として辿ることによって描き出したという異色の物語です。過去世退行セラピーなんていうのも初耳だったし、読み始めた時は、なんかヤバい本買っちゃったかと思いましたが...。(笑)
通常のアーサー王伝説では、グイネヴィアは良くも悪くも女性らしい女性として描かれていて、正直あまり好きじゃないんですが(コイツさえいなければ!と思ってしまうことも多い)、ここに登場するグウィネファーは男まさりの強さと賢さで、自分の中の「女性」を拒否するような女性。指揮官として戦うべく育てられてしまったため、女性としての幸福を知ろうともしません。男性からみたら、ほんと可愛気がなさそうです。でも本当は自分では心の鎧を脱ぐことができなくなってしまっただけの、不器用で真っ直ぐな女性なんですよね。

今までにないグイネヴィアという面が面白かったし、グイネヴィアの生まれ育ったケルトの文化と、アーサー王のキリスト教文化の慣習の違いが興味深かったです。でも、物語そのものには、実際に自分の目で見たリアルな力強さがあるんですけど(やっぱりそのセラピーで追体験したのかなあ?)、肝心のグウィネファーの造形にはあまり深みを感じられず... ランスロットとモーガンに至ってはまるで魅力が感じられないままに終わってしまいました。やっぱりこの辺りは、本職の小説家じゃないからでしょうかー。残念。
ちなみにグウィネファーとは、従来のケルト語、ブリトン語の発音に基づいた読み方をしたグイネヴィアのこと。ランスロットはランシラス、ガウェインはガルウェインという名前で登場しています。...この本には 「グイネヴィア」と表記されてたのでそれを使いましたが、私としては「グィネヴィア」がしっくりきます。細かい。(笑)(角川文庫)

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バグパイプ奏者のジェーニー・リトルは、祖父の家の屋根裏部屋で、祖父の旧友であり、今は亡き作家のウィリアム・ダンソーンの未発表の小説本を見つけます。そのタイトルは、「リトル・カントリー」。限定発行一部のみという表記のある羊皮紙の本には、祖父に宛てて、この本は絶対に手放してはならない、そして何があろうとも絶対に公表してはならないという手紙がついていました。元々ダンソーンの大ファンだったジェーニーは、屋根裏部屋に座ったまま、その話を読み始めます。しかしジェーニーがその本を読み始めたことによって、何かが動き始めたのです。ジェーニーの周囲に妙な人々が出没し始めます。

隠されていた本を見つけた途端、謎の秘密結社が暗躍し始める現実世界の物語は、ミステリアスなサスペンス風。魔法で小人にされてしまった少女が仲間と一緒に魔女と戦うという、ダンソーンが書いた本の中の世界は、魔女と魔法のファンタジー。この2つの世界が交互に描かれていくんですが、そのどっちもが面白い! 読み始めた途端、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。舞台であるイギリスのコーンウォールもすごく魅力的に描かれてるんです。で、てっきりイギリスの作家さんなのかと思ったら、カナダ在住のオランダ人と分かってビックリ。でもチャールズ・デ・リントは元々作家である以前にケルト音楽奏者なのだそうで、納得。何度も訪れてるんでしょうね。音楽家だったなんて。道理で演奏シーンがリアルに楽しそうなわけだ!(巻末には、主人公の作曲した曲の譜面までついてました)
そしてこの作品で面白いのは、ジェーニーとその祖父、そしてジェーニーの友人2人が、同じ本で違う物語を読んでいるということ。たとえ同時に文字を追っていたとしても、それぞれに読んでいる物語はまるで違うというところなんです。ジェーニーが読んでるのはファンタジーだけど、他の3人が読んでるのはそれぞれ、場所的な設定はそのままだけど、冒険物だったり、恋愛物だったり。作中にはジェーニーの読んだ物語しか載っていないのですが、他の3人の読んだ物語も読みたくなってしまいました。
ただ、肝心の主人公のジェーニーがあまり好きになれなかったのが残念... これほど癇癪持ちだと周囲も大変でしょうね。悪役の女性の方がよっぽど可愛く感じられてしまいました。(苦笑)(創元推理文庫)


+既読のチャールズ・デ・リント作品の感想+
「リトル・カントリー」上下 チャールズ・デ・リント
「ジャッキー、巨人を退治する!」チャールズ・デ・リント

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紀元前1500年ミノア時代の後期、大森林に逃げ込んだ海賊を討伐しに行っていたクレタ王国のミノス王の弟・アイアコスは、数年間の行方不明ののち、耳の先が尖り、緑がかった褐色の髪をしている子供を2人連れて帰ってきます。姉のテアが16歳、弟のイカロスが15歳になった時、2人が暮らす宮殿にアカイアの侵略軍が入り込み、2人は翼のついた魚に乗って宮殿から脱出。しかし行き着いたのは、父からは行ってはいけないと言われた「けものの国」だったのです... という「ミノタウロスの森」と、その前日譚の「幻獣の森」。

「薔薇の荘園」(感想)がものすごく素敵だったトマス・バーネット・スワン。「ミノタウロスの森は」はスワンの処女長編なのだそう。「薔薇の荘園」の詩的な雰囲気に比べると、こちらはちょっと物足りないかなと思うんですが、それでも幻の獣たちが暮らす森林の情景はなかなかでした。ここから「薔薇の荘園」のあの雰囲気に繋がっていくんでしょうね。
ギリシャ神話に登場するミノタウロスは、牛頭人身の怪物。ミノス王の妻と牛の間に生まれたミノタウロスは迷宮に閉じ込められて、アリアドネの糸を使ったテセウスに退治されたというエピソードがあります。でもここに登場するミノタウロスのユーノストスは、神話のミノタウロスと同じ牛頭人身の獣ながらも、「気は優しくて力持ち」。戦闘時には獰猛果敢になるんですけど、普段はごくごく穏やかな存在。こういう作品を読んでると、元々はこういう存在だったのに、こんなことがあったからギリシャ神話のエピソードが生まれてきたのかな、なんて思えるのが楽しいところです。(迷宮を作ったダイダロスがちゃんと存在してるらしいのが、また面白い)

「幻獣の森」は、「ミノタウロスの森」にも登場した木の精(ドリュアス)のゾーイが回想する、ユーノストスとドリュアスのコーラ、そしてクレタの王子アイアコスの物語。「ミノタウロスの森」で、ユーノストスがテアとイカロスにその両親のことを一通り語っているので大筋では一緒なんですが、年齢その他の設定に色々と食い違いが! これはもしやユーノストスが姉弟に生々しい話を聞かせたくなくて脚色したのかしら?と思ったんですが... 著者あとがきによると、そういう意図はなかったようです。
いずれにせよ、もっと人間の王子とドリュアスの素直な悲恋物かと思っていたのですが、実はあまり気持ちのよくない物語でした... 恋に恋するコーラの身勝手な話だったのか! とはいえ、「ミノタウロスの森」では、あまり上品とは言えない年寄り女だったゾーイが、こっちではすごく魅力的で良かったです。哀しいんですけどね。 (ハヤカワ文庫FT)


+既読のトマス・バーネット・スワン作品の感想+
「薔薇の荘園」トマス・バーネット・スワン
「ミノタウロスの森」「幻獣の森」トマス・バーネット・スワン

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紀元前8世紀、ローマを建国したロムルスとその双子の弟・レムスを回想する「火の鳥はどこに」、紀元前5世紀のペルシャで、子供が生まれないために、幽鬼(ジン)疑惑をかけられて追放されたペルシャのヴァシチ王妃と、王妃を追いかけた小人のイアニスコスの物語「ヴァシチ」、13世紀のイギリスを舞台に、2人の少年と1人の少女の冒険譚を描いた「薔薇の荘園」の3編。

トマス・バーネット・スワンは元々詩人なのだそうで、どれも詩人らしい叙情性に満ちた美しい作品でした! れっきとした史実を背景にしながらも、半人半獣のファウニ(フォーン?)や、木の精(ハマドリュアス)、ユニコーン、幽鬼(ジン)、マンドレイクといった神話的な存在が登場して幻想味たっぷり。こういうの好きだなあ。あ、もちろん、いかに幻想的な舞台背景ではあっても、史実の裏側を書いているようでも、そこに描いているのは人間そのものでしたけどね。
3編の中で一番気に入ったのは、ペルシャを舞台にした「ヴァシチ」。これはゾロアスター教の光明神アフラ・マズダと暗黒神アーリマンが基礎となった、光と闇の戦いの物語。ペルシャといえば、以前「王書」は読んだんですが(記事)、これはペルシャがゾロアスター教からイスラム教に変わった後に書かれた詩なんですよね。ゾロアスター教に関して、あまり知識がないのがとっても残念。クセルセス王のギリシャ遠征のことも、もっと知ってたらもっと楽しめただろうな。そちら方面の本も探してみなくてはー。(ハヤカワ文庫SF)


+既読のトマス・バーネット・スワン作品の感想+
「薔薇の荘園」トマス・バーネット・スワン
「ミノタウロスの森」「幻獣の森」トマス・バーネット・スワン

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ジョイリーの女領主・ジレルが征服者ギョームに敗北を喫します。兜を取ったジレルの美貌に見とれたギョームにくちづけを強いられ、怒りに駆られるジレル。ギョームを倒す武器を手に入れるために地下牢を抜け出し、城の地下からひそかに通路が通じている地獄へと向かうことに... という表題作「暗黒神のくちづけ」他4編の連作短編集。

ハヤカワ文庫SFに入ってるんですが、これはSFではなくファンタジー作品ですね。舞台となっているのは中世のヨーロッパ。5つの短編のそれぞれで、主人公が超常的で、人間の力の及ばない場所に行き、それでも何とか自分の力で切り抜けていくというパターン。ヒロイック・ファンタジーならぬヒロイニック・ファンタジーです。
ヒロインのジレルは、どうやらスタイルはいいみたいなんですけど、あんまり女っぽくありません。赤毛の短い髪と金色に燃える眸、男に負けない大柄な体、そして男以上の獰猛さを持つ女性とあるので、かなり迫力の怖いおねーさんですね。男なんて全然目じゃないので、「暗黒神のくちづけ」では無理矢理キスされて怒り狂ってます。だからといって、いきなり地獄にまで行かなくても... なんですが、地獄の情景はとても良かったです! 3編目や4編目で訪れる魔法の国や暗黒の国の描写もとても魅力的。こういう描写が素敵な作家さんなんですねー。...ただ、無理矢理キスされて、逆にその相手がなんだか気になってきたわ~的な展開は、ちょっと気になったんですが... それに全編通してキスぐらいしか出てこないのに、妙にエロティックな雰囲気なのはなぜ。
思った以上に面白かったんですが、イラストが松本零士氏なんですよね。この方のイラストの女性って、どうしてこんなに全部メーテルなんだろう? ジレルとはイメージがちがーう。しかもジレルの髪は短いってあるのに、相変わらずの長い髪の女性の絵なんです。なんだかなあ。(そういやこの表紙の絵は誰なんだ?)(ハヤカワ文庫SF)

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かつて意気投合した高名な映画音楽家の指示通り、夜中に起き出して、40年間空き家になっている屋敷へと向かった16歳のマイケル。渡されていた鍵を使って玄関のドアから入り、家の中を通り抜けて裏口から外へ。そして再び左の隣家の玄関から入って中を通り抜けて裏口へ。途中、裏庭のパティオにいた女性に追われて慌てるものの、マイケルはなんとか指示通りに6つ目の門を開けて飛び込みます。その門の先にあったのは、妖精シーと人間、そしてそのハーフが暮らしている妖精の王国。地球ではない、全く別の場所だったのです。

マイケルが行ってしまう異世界は、基本的にシーの国。一応人間もいるんですけど、特定の場所に保護されてます。そこにいる人間たちは、全て音楽にまつわる人々。ピアニストだったり、トランペッターだったり、音楽評論家だったり、音楽教師だったり、ある音楽会を聴きに行っていた人だったり。
マイケル自身もワケが分からなくて困るんですが、読者の私もワケが分からなくて困っちゃう。なんでマイケルがここに来ることになったのかも分からないし(マイケルは音楽家ではなくて詩人)、わざわざ他の人と違う方法でやって来なければならなかった意図も分からないし、ここで何をすることになってるのかも分からない! そもそもこの世界の設定自体、分からないことだらけなんです。みんなマイケルに学べ学べと言うんですけど、質問してもまともに答えてくれる人はほとんどいないし、それ以上質問するなって怒られたりしてるんですよね。マイケルの「質問しないでどうやって学ぶのさ?」という台詞は本当にごもっとも! 読み進めていくうちに徐々にこの世界のことが分かってくるという構成なんですが、これがほんと分かりにくくて、実は「無限コンチェルト」の途中で話が分からなくなってしまった私...。仕方がないので、とりあえず1冊読み終えてから、また最初に戻って読み返すことに。でも一旦分かってくれば、骨太でなかなか魅力的な世界観。続編がなかったらきっとここで諦めてたかと思うんですけど、もう一回読んで良かったー。苦労した甲斐がありました。
詩と音楽の使い方が面白かったし、宇宙の成り立ちにまで話がいってしまうところは、さすがSF作家。とは言っても、感想がものすごーく書きにくい作品なので、ここにもまともなことは書けそうにありませんが... 2冊で1000ページ超、とにかく読み応えがありました。きっと再読したらさらに面白くなるんでしょう。でもとりあえずは「ぐったり」です。(ハヤカワ文庫FT)

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ある8月の暑苦しい日のこと。背が高くて痩せっぽちで、みすぼらしい髭を生やした魔法使い・プロスペロは、漠然とした不安感を感じていました。何かがやって来るのは分かるのですが、それが何なのか分からないのです。その日の夜、プロスペロの家を訪れたのは、親友の魔法使い・ロジャー・ベーコン。翌日、家が見知らぬ男たちに包囲されているのに気づいた2人は、隠し扉から脱出することに。

プロスペロという名前は、シェイクスピアの「あらし」に登場する魔法使いの名前と一緒。わざわざ別人だという断ってありますけどね。でもロジャー・ベーコンは、13世紀のイギリスの哲学者でありカトリック司祭でもあるロジャー・ベーコンみたいです。
この作品で何が一番楽しいかといえば、昔ながらの童話に出てくる魔法使いらしい家が描かれていること。プロスペロの二階建ての大きな家は、「骨董屋の悪夢にでてきそうな」滑稽な安ぴか物でいっぱい。こういう部分は、作者も楽しんで書いてるんでしょうねー。私が一番気に入ったのは、プロスペロが旅先で使う、普段は小さな銀の嗅ぎタバコ入れの中に入っているヒマワリの形の灯りでした。
でもそういう部分は楽しいんだけど、基本的に話の展開にはあまり関係ないし、しかもその展開自体、私にはどうも掴みにくかったです。あんまり物語に入り込めないまま終わってしまいました...。これは本当はとても面白い作品で、実は私に分からなかっただけなのかしら?なんて思いつつ読み終えるのって、イヤですねえ。あ、でもこの作品、作者はアメリカ人なんですが、アメリカというよりもイギリス的なユーモアのある作品なんですよね。もしかしたらそれが合わなかったのかもしれません。イギリスの作品は基本的に好きなんですが、イギリス人のユーモアって、あまりピンと来ないことが多いような気が...。(嗚呼)(ハヤカワ文庫FT)

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