Catégories:“ファンタジー(翻訳)”

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神(アラー)の御心によって、イスラム教の第三天国にいる生と死を司る天使・イズライールの前に立っていたのは、妖霊(ジン)・ハーリド。ナジド王国の世にも美しいジフワー姫が結婚することになった時、その王子が嘘つきで偽善者と知り、殺してしまったハーリド。最初はアラーによる死を免れないと思われるのですが、王子がイスラム教を信じる気がないどころか、ジフワー姫や人々を異教に改宗させようとする不信心者だったと分かったため、ハーリドは命を救われ、購いとして人間としての生を与えられることに。そしてジフワー姫と結婚し、もし姫がハーリドへの愛に目覚めればハーリドには不死の魂を授けられ、愛に目覚めなければ地獄で焼かれることになったのです。

思いがけず、同じような場所が舞台の作品が続きました。でもダマール王国物語が昼の砂漠のイメージなら、こちらは夜です。華麗なアラビアンナイトの世界~。作品自体は100年以上前に書かれたものだし、言ってみればよくあるパターンではあるんですが、でもすごく素敵でした。ダマール王国物語も面白かったけど、比べてしまうと深みが全然違うなあ。
感情よりも理性が遥かに勝っているジフワー姫に自分を愛させることは、ハーリドにとって予想外の難問。ハーリドはまず戦争で勇敢に戦って勝利を収め、その勇気と強さを見せつけ、次に敵の城を落として夥しい戦利品を手に入れ、その後は美しい女性絡みでジフワー姫の嫉妬心を煽ろうとします。そしてその合間にも、愛について語ろうとするのですが... これがなかなかうまくいきません。もちろん、最後にはハーリドが姫の愛情を得るのだろうというのが予測できるんですけど、それまでの過程にイスラム教徒とその風俗や文化、世界観などが現れていてとても面白かったです。欲を言えば、ハーリドが妖霊だった時の場面を最初に少し見てみたかったかなあ。あとイスラム教の天国の描写をもっと読みたかったですね。でもきっと今の形の方が全体的なまとまりとしては良いのでしょう。子供の頃からアラビアンナイトは大好きだったし、やっぱりこの雰囲気には憧れます。(ハヤカワ文庫FT)

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両親が亡くなり、兄に呼ばれるがまま本国を船で発って、砂漠の町・イースタンにやって来た少女・ハリー。そしてある日イースタンに現れたのは、古くからある砂漠の王国、ダマール王国の王・コールラスでした。コールラスは、北方族の侵略に対して、イースタンの人々と共同戦線を張りたいと申し入れに来たのです。しかしイースタンの人々はその申し出を断り、数日後、コールラスは部屋で眠っていたハリーを人質としてひそかにダマール王国へと連れ出すことに... という「青い剣」と、「青い剣」では既に伝説となっているいにしえのイーリン姫の物語「英雄と王冠」。

ダマール王国シリーズ2冊。
ハリーの本国は、はっきりとは書かれてないのですが、19世紀~20世紀の華やかなりし頃の大英帝国という感じ。「青い剣」は、砂漠の国の王に攫われた背高のっぽの少女・ハリーが、伝説のイーリン姫の力も借りて成長し、いつの間にか英雄になっていくという物語です。攫われたハリーがやけに落ち着きすぎてるし(もちろん泣き寝入りぐらいはするんですが)、攫ったコールラスに対してまるで敵意を持たないし(丁重すぎるほど丁重に扱われるとは言っても、ねえ)、ダマールの人々とすっかり仲良くなってしまって、言われるがまま行動するのにはちょっと引っかかるんですが...(ストックホルム症候群?) でも、まあ、それに対する理由もないわけではないんですよね。その辺りを気にしすぎなければ、結構面白かったです。砂漠の民であるダマール王国の人々の旅の情景も鮮やかだし、脇役たちもとても魅力的。そしてダマール王国でも限られた人々の持つケラーという力が謎めいていて、興味をそそります。
「英雄と王冠」の方も面白かったのだけど、こちらは「青い剣」ほどではなかったかな。「青い剣」で語られるイーリン姫は、颯爽とした気の強いお姫さまのイメージなのに、本物は結構情けないし、それ以前に、構成がちょっと分かりづらくって。あと、イーリンと仲良しのトー王子が気に入ってたので、余計な男がしゃしゃり出て来てイヤだったというのもありました。(笑)
訳者あとがきによると、ダマール王国シリーズ第3作が予定されていたようなんですが、どうなってるのかな? もう書かれてないのかしら? まあ、この2冊で完結してる方がすっきりしてるかもしれませんが...。(ハヤカワ文庫FT)

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ニューヨークの共同墓地・ヨークチェスターに19年もの間隠れ住んでいるジョナサン・レベック。ある時ぐでんぐでんに酔っ払ってここに迷い込んで以来、鴉に1日2回の食事を運んでもらいながら、ここに暮らしているのです。幽霊を見ることができるレベックは、死者の話し相手となって相手の気持ちを落ち着かせたり、一緒にチェスをしたり、本を朗読する毎日。そんなある日、新たにマイケル・モーガンという男が墓地に埋葬されます。

以前「最後のユニコーン」を読んだ時に(感想)、ちょろいもさんがこの「心地よく秘密めいたところ」もいいと伺って、読もうと思っていた本。もっと早く読むつもりだったのに、ずいぶん遅くなってしまいましたー。(それでも1年は経ってないからまだマシなのだ)
まるで神話の世界のような「最後のユニコーン」とは違って、とても現実に近い物語なのだけど、独特の雰囲気は共通してますね。あくまでも静か。墓地が舞台の物語なので当然といえば当然なんですが、本当に静かに淡々と進んでいきます。途中、マイケルの死は毒殺なのか自殺なのかといった興味はあるんですが、基本的にはそれほど起伏のない物語。ただ、舞台が墓地で、死と隣り合わせだけに、とても登場人物たちの言葉に哲学的な雰囲気があるんですよね。レベック氏がマイケルに語る「死」というもの、静かに記憶がなくなっていくそのイメージが素敵です。人生から逃げ出したレベック氏や、夫を失って以来時間が止まっているようなクラッパー夫人にとって、ここはまさに「心地よく秘密めいたところ」。ここにいることは、人生における執行猶予期間なんでしょうね。人生半ばで死んでしまい、死んだ自分と向き合う時間を持つことになったマイケルやローラにとっても同様。まさにそれぞれにとっての「死」と「再生」の物語なのでしょう。
そしてこの作品で印象に残るのが鴉! ボロニヤ・ソーセージやローストビーフ・サンドイッチの重さによろけ、時にはトラックの荷台で休みながらも、レベック氏に食べ物を届け続け、皮肉な言葉を吐き続ける鴉の姿がとても微笑ましくて良かったです♪ こんな話を読んだら、鴉に対するイメージが変わっちゃうな。(そういえば、ジョージ・マクドナルドの「リリス」でも鴉が印象的だったなあ)

この作品は、ピーター・S・ビーグルが19歳の時に書いたものだと知ってびっくり。19歳でこういう作品が書けるものなんですか! てっきり、既に人生を重ねて老成した時期の作品かと... 凄いなあ。良かったです。(創元推理文庫)


+既読のピーター・S・ビーグル作品の感想+
「最後のユニコーン」ピーター・S・ビーグル
「心地よく秘密めいたところ」ピーター・S・ビーグル

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魔法の国ザンスシリーズの4作目と5作目。最初の3冊を読んだ時にすっかりおなかいっぱいになってしまって(感想)、これでオシマイにしておこうかななんて思ったんですが、読んでみたらやっぱり面白かった!
特に「魔法の通廊」の方は、読みながら何度も笑ってしまいました。これはザンスの外の魔法の存在しない世界(全部ひっくるめてマンダニアと呼ばれています)に行った王と女王が予定の1週間を過ぎても帰って来なくて、1作目の主人公ビンクの息子ドオアが探しに行く話。ドオアの魔法の力は、無生物と話す能力なんですよね。だからドオアがいると、石だの水だの壁だのが話し始めてとっても賑やか。たとえば、ドオアが城の堀の水に「知っていることを言え。でないと、この石をぶつけるぞ」と脅すと、水もおびえるんですけど、投げられそうになった石も「うへえ! こんなドロドロの汚水になんか、投げ込まないでくれ!」と言ってたり。(笑) 3巻の「ルーグナ城の秘密」もドオアが主人公で面白かったし、ドオアが主人公の話って実は結構好きかも。そしてこの4巻では、ザンスとマンダニアの地理的時間的繋がりが、初めて明らかになりました。これは色々冒険ができそうな設定ですねー。
5巻は、人喰い鬼のメリメリが7人の人外美女たちと旅をすることになる話。人喰い鬼なのに菜食主義者のメリメリは、気が優しくて力持ち。愛すべきキャラクターです。でも今回、知能(アイキュー)蔓の呪いですっかり賢くなってしまったり、魂の半分を取られて力が弱くなってしまったりと、アイデンティティの危機が! まあ、結末は想像がつくんですけど、意外と最後までじらして読ませてくれました。やっぱりこのシリーズは、もうちょっと読み進めよう。(ハヤカワ文庫FT)


+シリーズ既刊の感想+
「カメレオンの呪文 魔法の国ザンス1」ピアズ・アンソニイ
「カメレオンの呪文」「魔王の聖域」「ルーグナ城の秘密」ピアズ・アンソニイ
「魔法の通廊」「人喰い鬼の探索」ピアズ・アンソニイ
「夢馬の使命」「王女とドラゴン」ピアズ・アンソニイ

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異世界を舞台に、痩せのニフトとチリテのバーナーという2人の盗賊たちが活躍する短編集。どちらかといえば、なるべく手に取りたくないタイプの表紙だったんですけど、想像してたよりは面白かったです。丁度、フリッツ・ライバーのファファード&グレイマウザーシリーズのような雰囲気でしょうかー。いかにもアメリカンヒロイックファンタジーという感じ。本当はそういうのはあまり得意ではないんですけどね。
主人公が盗賊という割に盗みの場面はそれほどなくて、それよりも不思議な冒険が中心。決して善人ではないながらも、悪人に一泡ふかせるニフトの冒険はなかなか痛快。物語自体も、最後のどんでん返しが楽しいです。4編収められてる中で私が一番気に入ったのは、代官にハメられて死刑にされそうになった2人が、魔海に囚われてる代官の息子ウィンフォートを探しにいくことになる「魔海の人釣り」。これは4編の中では一番長くて、200ページほどもある中編。ニフトとバーナーが旅に出てウィンフォートを見つけるまでがちょっと退屈だったんですけど、口ばかりが達者で実力が伴わないウィンフォートが一行に加わってからは、話がすっかりややこしくなって、俄然面白くなりました。おどろおどろした魔海の辺りの描写もいい感じです。(ハヤカワ文庫FT)

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地図屋のヤキン=ボアズは、何年もかけて息子にやる親地図を作り続けていました。そして息子のボアズ=ヤキンが16歳になった時、その地図を息子に見せることに。そこにはヤキン=ボアズが知っている全ての物事が書き込まれているのです。しかし息子が言ったのは、「ライオンは?」という言葉。ライオンは既に絶滅して久しいというのに...。そして数ヵ月後、ヤキン=ボアズは旅に出ます。1ヶ月経っても戻って来なかった時、ボアズ=ヤキンが親地図がしまってある引き出しをあけると、そこには地図はなく、「ライオンをさがしに行った」という書付が残されていました。

うーん、これは今ひとつ分からなかったです... とてもアレゴリカルな物語なのは分かるのですが...。荒俣宏さんの訳者あとがきに「ライオン」や、「ヤキン」と「ボアズ」という言葉について、色々と解説されていました。「ヤキン」と「ボアズ」はソロモンの神殿の2本の青銅の柱のことで、ユダヤ教とキリスト教にとってはとても重要なシンボル性を持つ言葉なのだそうです。...へええ。普通であれば、若い息子が冒険を求めて旅に出て、父親は家にいるものですが、この物語ではその逆。年老いた父親がまず家を出ています。探し求めるのは、既に失われてしまった「力」(ライオン)。父親は既に自分の妻の夜の相手ができなくなっているのですが、家を出てグレーテルに出会うことによって、そういった「力」の1つを取り戻しています。そして息子もまた父親を探す旅に出るのですが...。
帯にはピーター・S・ビーグルの「くやしい。ぼくは本書のような物語を書きたかったのだ!見事に先を越されてしまった」という言葉があったんですが、ピーター・S・ビーグルにそこまで思わせたものは何だったのか。うーん、私にはやっぱりよく分からない...。(ハヤカワ文庫FT)

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リアムが即位して1年。リアムらと共に東方の諸侯と隣国を周り、ようやく首都に戻って来たアルサは、早速アニタに求婚し、2人は領地クロンドルで結婚式を挙げることに。しかしクロンドルに戻ったアルサを待ち構えていたのは、邪悪な魔道師マーマンダマスの放った刺客。アルサとは馴染みのスリ、ジミー・ザ・ハンドがそれに気付き注進、厳重な警戒態勢の中で挙式が行われます。しかし既に宮殿に入り込んでいた刺客は、挙式の最中にアルサに向かって毒矢を放ち、それは花嫁のアニタに命中してしまうのです。

「魔術師の帝国」(感想)に続く、リフトウォー・サーガシリーズの第2弾。
前作はパグの成長物語がメインでしたが、今回はクロンドル公となったアルサが中心。頭は切れるけれども、少し扱いにくいと考えられている王子なんですが、1作目で一番気に入っていた人物なので、私にとっては嬉しい展開。
でも、話としてはまあ面白かったんですけど、これはどうなんだろう...。今回アルサの命が狙われたのは、魔道師マーマンダマスが、西部の支配者が死ぬ時に自分の権力が蘇るという予言を信じて、アルサのことを「西部の支配者」とみなしたからなんですが... なんで「西部の支配者」がアルサなわけ? その辺りの根拠が薄いというか突拍子なく感じられてしまったし、そういう悪の存在にしても、不気味ではあるんですけど、存在感がどこか薄いんですよね。それに、登場人物たち自身もそうだったと思うんですけど、どうしてもアニタ姫のための毒消し探しの旅と、アルサの命を狙う動きが別々の出来事のような印象。あと、巻頭に相変わらずケレワン地図を載せてるのは、ネタバレのような気がする...。(でも魔術に関しては、相変わらず面白い♪)
この作品は1作目の「魔術師の帝国」みたいに一話完結ではなくて、3部作最終の「セサノンの暗黒」へと繋がっていくんですが、そちらは未入手。読むのはちょっと先のことになりそうです。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のレイモンド・E・フィースト作品の感想+
「魔術師の帝国」上下 レイモンド・E・フィースト
「シルバーソーン」上下 レイモンド・E・フィースト

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