Catégories:“ファンタジー(翻訳)”

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1年が終わり、新しい年が始まる夏至の日は、少年たちが1つ歳を取る日でもあり、14歳になった少年たちが大人への第一歩を踏み出す徒弟選びの日でもありました。クライディーのボリク公爵のお城に住む孤児・パグや、パグと兄弟のように育ったトマスも14歳。トマスは武術長官のファノンに指名され、パグは魔法使いのクルガンの弟子となり、それぞれに修行に励むことになります。そして、それから1年半余りがたったある日のこと、トマスとパグは難破船と異国人を見つけます。それは異次元世界・ケレワンのツラニ帝国から、この世界を侵略しようとやって来た人間だったのです。

リフトウォー・サーガシリーズの第1弾。物語は、2つの世界が舞台となっています。1つはパグやトマスが住んでいるミドケニア。そしてもう1つは、侵略者たちが住むツラニ帝国のあるケレワン。2つの世界の行き来は、空間に作られた「裂け目(リフト)」から。

まず感じたのは、「指輪物語」の影響の大きさ。森に住む妖精はエルフそっくりですし、小人もドワーフそのもの。ゴブリンやトロルや竜もいます。力の指輪的な物も存在しますし、その持ち主だった邪悪な存在や、いつから生き続けているのか分からない謎の多い魔法使いも登場。正直、あまりオリジナリティは感じられませんでした。
ただ、「指輪物語」と違うのは、舞台がミドケニアとケレワンという異次元同士の2つの世界ということ。そしていいなと思ったのは、ミドケニアとケレワンがそれぞれに独自の文明を持って発展していて、特に能力差があるわけではないということ。言ってみれば、ミドケニアが中世ヨーロッパ、ケレワンが中国みたいな感じですね。(実際にはちょっと違いますが) どちらが劣ってるとか野蛮人だとか、そういうのではないんです。しかもどちらも普通に人間。どちらにも悪人もいれば善人もいて、それぞれに事情もあって... と書いてると、本当に2つの異次元の世界という設定にする必要があったのか? なーんて思えてきたりもするんですけど(笑)、2つの世界の魔法のあり方なんかはまるで違うので、その辺りも面白かったです。というか、ミドケニアだけで話が進んでた時はそれほどでもなかったんですが、ケレワンの世界が描かれ始めてから俄然面白くなりました。やっぱり異世界ファンタジーは、その世界にどれだけ厚みと奥行きを持たせられるかというのが重要ポイントですね。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のレイモンド・E・フィースト作品の感想+
「魔術師の帝国」上下 レイモンド・E・フィースト
「シルバーソーン」上下 レイモンド・E・フィースト

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豊かな平野にあるドリメア自由国は、西の境は妖精の国と隣接している国。しかし革命が起き、商人階級が当時の支配者・オーブリ公爵に取って代わってからというもの、2国間の交流はすっかり途絶え、魔法や空想の類に関すること、特に「妖精」という言葉はドリメア国では禁句とされていました。しかしそのドリメア国の首都、霧のラッドで一番の名士、チャンティクリア判事の長男・ラナルフが、妖精国の「魔法の果実」を食べたと告白したことから、大騒ぎになります。

解説によれば、作者はアイルランド系英国人とのこと。(どうやらトールキンやルイスと同時期にオックスフォードで教鞭を取っていたこともあるらしいです) 道理で物語全体がとてもケルト風の雰囲気でした。でも、思いっきり妖精の存在を感じさせるような舞台設定にも関わらず、そういった存在自体は、逆になかなか登場しないんですよね。その辺りが独特。しかも妖精にまつわる言葉や妖精を彷彿とさせる言葉は、登場人物たちにとって禁句となってるはずなのに、「太陽と月と星に誓って」「西の国の黄金の林檎に誓って」なんて、いかにも妖精の国の影響が見える決まり文句が頻繁に飛び出すところが可笑しいのです。
登場人物たちは大真面目に現実的な生活を生きようとしていて、中盤には過去の殺人事件の調査なんてミステリ的展開もあって、その辺りはきっちりと白黒はっきりするんですけど、それでもやっぱり最終的にはファンタジー的環境には逆らえず... その辺りの微妙な感じが面白かったです。(ハヤカワ文庫FT)

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市の参事官・アージオの書記として、朝から晩までせっせと書類を書き写しているグントラム・は、毎日の味気ない仕事の連続にうんざり。そんなある日、グントラムは年上の書記・ブーボに話しかけられて驚きます。ブーボは天涯孤独だと思い込んでいたグントラムに、実は裕福な親類がいることを明かし、窓から入ってきたスズメをグントラムの姿に変えてグントラムの仕事をさせると、グントラムにスズメの姿になって田舎の親類の元まで飛んでいくようにと勧めたのです。

登場人物たちが、本物の人間なのか本当は鳥なのか分からなくなってしまう可愛らしいファンタジー。以前読んだ「あべこべの日」(感想)は、正直あまり面白くなかったんですけど、こちらは結構楽しかったです。正義が勝つわけでもなく、努力する者が報われるわけでもなく、だからといってハッピーエンドにならないわけでもなく、ファンタジーやおとぎ話の文法を無視したような、あと一歩捻るのか捻らないのか予測不能な展開がいいのかも。...とはいえ、読み終わった途端に忘れてしまうような話でもありましたが...。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のハンス・ファラダ作品の感想+
「あべこべの日」ハンス・ファラダ
「田園幻想譚」ハンス・ファラダ

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ケリゴールが閉じ込められてから14年。サブリエルとタッチストーンによって敵が一掃されたはずの古王国で、今またネクロマンサー(死霊使い)たちの動きが活発になってきていました。そしてクレア氷河の奥では、父を知らず、10歳の時に母も失ったライラエルが絶望していました。ライラエルはクレア族特有の明るいブロンドと青い目、浅黒い肌の代わりに、黒い髪に茶色い目、そして青白い肌の持ち主。それだけでも浮き上がっているのに、14歳の誕生日を迎えても、まだクレア族特有の「先視の力」が発現しなかったのです。今また11歳になったばかりの少女に抜かされたことを知ったライラエルは、自ら命を絶つことを考えて、1人氷河の上に向かう階段を上り始めます。

古王国記シリーズの第2作。「サブリエル」(感想)の続きです。
今回もサブリエルやタッチストーンは登場しますが、主人公としてはライラエルと古王国のサメス王子。あっさり世代交代してしまいました。それもそのはず、2巻が始まった時点で、王国では既に「サブリエル」の時から14年経ってるんですね。主な物語に至っては19年後。
物語はライラエルとサメス王子の視点から交互に語られていきます。先視の力が得られないせいで、一度は自殺を考えながらも、図書館での仕事をもらって、「不評の犬」という仲間もできて、どんどん生き生きとしてくるライラエルが楽しいパートに対して、サメス王子の情けなさは鼻につく! 序盤で冥界に入っていった時のことがトラウマになってしまっているのは分かるんですけど、それにしても自分の生まれに甘えているとしか思えなーい。義務を放棄して、ひたすら自分の世界に閉じこもってるし、両親が帰ってきたらあれを言おうこれを言おうなんて思ってたことも、いざ帰ってきたら何一つ言えないまま。2人のパートのバランスが、あまりにも取れていないように感じられてしまうのですが...
でも先視の力を授かるのが遅ければ遅いほど強い力を得られることが多いように、悩みが大きければ大きいほど、自分探しに手間取れば手間取るほど、一旦迷いを捨てれば強いもの。2巻から3巻へは直接繋がっているようなので、そちらの展開もとても楽しみ。これはいつ文庫になるのかしら? 図書館でハードカバーを借りてきちゃおうかなあー。(主婦の友社)


+シリーズ既刊の感想+
「サブリエル 冥界の扉 古王国記I」上下 ガース・ニクス
「ライラエル 氷の迷宮 古王国II」上下 ガース・ニクス
「アブホーセン 聖賢の絆 古王国記III」上下 ガース・ニクス

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石造りの城・ゴーメンガーストの周囲には<外>の民のあばら家が、貝がらのようにびっしりと張り付いており、それがこの世界の全て。そのゴーメンガーストの現当主は76代目のセパルクレイヴ。城での生活は、数限りない儀式によって支配されており、老書庫長のサワダストだけがただ1人、それを理解し取り仕切っていました。そしてその日の朝、77代目伯爵となる菫色の瞳をしたタイタスが生まれます。

先日「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」の感想で読みかけだと書いたゴーメンガースト3部作、最初の2冊をようやく読み終わりました。
これはトールキンの「指輪物語」と並んで、20世紀のファンタジーの最高峰と言われている作品なのだそう。でもその雰囲気は、正反対と言ってもいいほど違うんですね。「指輪物語」は、その後のファンタジー作品に多大な影響を与えてるし、実際追随する作品がとても多いんですけど、こちらの作品はとにかく独特。並大抵の作家じゃあ、こんな作品に追随する作品なんて書き上げられないんじゃないかしら。全編、陰鬱で重厚な雰囲気。暗くて重苦しいゴーメンガースト城の情景が、質感も含めて、周囲に浮かび上がってくるよう。しかも登場人物たちがまた、揃って個性的... というかアクが強いんです。どうやら美しい人間は1人もいないようで、それぞれに醜さが強調されてるんですけど、それが作品の雰囲気と相まって、ものすごく印象的なんですよね。マーヴィン・ピーク自身による挿絵も異様な雰囲気を醸し出してました。そしてこの作品、展開がとても遅いです。シリーズを通して、主人公は多分タイタスだと思うんですけど、1冊目が終わった時点で、まだ2歳ですから。(笑) でもその展開の遅さが逆に、ゴーメンガースト城をめぐる悠久の時の流れを感じさせます。
きっと絶賛する人は絶賛するんでしょうねー。という私は、絶賛というほどではなかったです。が、それでも読んでから時間が経てば経つほど、場面ごとの印象が鮮明になりそうな作品ではありました。でもとにかく読むのにパワーが... 本当は3冊まとめて感想を書きたかったんですけど、3冊目はやっぱりもうちょっと時間を置いてから読むことにします。ちょっとぐったり。(創元推理文庫)


+既読のマーヴィン・ピーク作品の感想+
「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」マーヴィン・ピーク
「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」マーヴィン・ピーク

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スペインの黄金時代。自分の死期を悟ったアルゲント・アレスの領主は、自分自身で何かを勝ち取る力のない次男に土地を残し、長男のロドリゲスにはカスティーリャの古い長剣とマンドリンを遺すことに。父の葬儀を終えたロドリゲスは、剣を佩きマンドリンを背負うと、父の言葉に従って戦さを求めて旅に出ます。そして途中の宿屋で出会ったモラーノも、ドン・ロドリゲスに同行することに。

今はない月刊ペン社の妖精文庫に入っていた時の題名は、「影の谷年代記」。この妖精文庫というのが、当然のようにことごとく絶版なんですけど、気になる作品が多いんですよねえ。いくつかはちくま文庫などで復刊されていて、私も読んでるんですが、もっと(文庫で)出してくれないかなと思ってるシリーズ。
訳者あとがきに、この「影の谷物語」がセルバンテスの「ドン・キホーテ」を意識的にモデルにしているようだと書かれていたんですが、私もそれはすごく感じました。ロドリゲスはドン・キホーテだし、モラーノはサンチョパンサ、セラフィーナはドゥルシネーアといった役回り。ロドリゲスはドン・キホーテほど滑稽な人物ではないんですけどね。むしろ非常に真面目。着実にやるべきことを果たして、一番の望みを叶えますし。とは言っても、私は「ドン・キホーテ」をきちんと読んだことがないんですよね。読んでいたら、もっと色々と分かったんでしょうに、悔しいなあ。
ダンセイニらしく物語は淡々と進みます。主人公は一応ロドリゲスだと思うんですが、この作品ではモラーノがすごく魅力的。常にフライパンを大切に持ち歩いて、朝食になるとベーコンを焼くモラーノ。ロドリゲスがドン・アルデロンと戦っている時にとる行動なんて、思わず笑ってしまうほど。純朴で真っ直ぐな愛すべき田舎者です。 (ちくま文庫)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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行方不明の伯父から甥に届いた手紙。それは、かつてイギリスを捨てて旅に出て、今は北極にいるという伯父が突然書いてよこしたもの。伯父さんは、雪原の帝王である幻の白いライオンを追い求めているというのです。

本当は「ゴーメンガースト」シリーズに取り掛かっているんですが、全3冊のうち、今2冊目の途中。これはものすごく重厚... というか暗くて重苦しくいファンタジー。こういうのをゴシック・ファンタジーというのかなあと思いつつ、分類には疎いのでよく分からないのですが... ちょっと疲れたので、そちらを中断して同じマーヴィン・ピークのこちらの本を読んでみました。
表紙の画像を見てもいい感じだと思ってもらえると思うんですが(オレンジの地に白抜きになってるのが、幻の白ライオンの絵がついた切手)、中身もいいです。要するに絵入りの手紙集なんですけど、これが凝ってるんですねー。本を開くとまず目にうつるのが味のある鉛筆画。左脚を失った代わりにメカジキのツノをつけている伯父さんの絵や、助手の亀犬・ジャクソンの絵、他にも動物たちの絵が沢山。この絵を描いたのはマーヴィン・ピーク自身なんです。そしてそんな絵を背景に、伯父さんからの手紙。タイプライターで打った紙を絵の余白に切り貼りしていたりして、芸が細かい! しかも伯父さんの使ってるタイプライターが古いので、文字によって太さも濃さもまちまちで、沢山ある誤字脱字が頻繁に訂正されていたり、手書きの説明が余白に記入されていたりするのが、日本語で再現されているんです。(原書ではどんな感じなのか見てみたい) その手書きの文字がまた汚い字なんですけど、雰囲気にぴったりなんですよね。いかにもこの伯父さんが書きそうな字。そして時には、手紙にコーヒーや肉汁、血の染み、足跡、指紋が...。(血の染みだけはあまりリアルじゃなかったけど)
手紙を受け取った甥の反応などはまるで分からないんですけど、こういう手紙を受け取ったら、やっぱりワクワクしちゃうでしょうね。陰鬱な「ゴーメンガースト」からは想像できないような、ユーモアたっぷりの冒険話。絵はいっぱいあるけど、絵本ではないです。意外と読み応えがあってびっくりでした。(国書刊行会)


+既読のマーヴィン・ピーク作品の感想+
「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」マーヴィン・ピーク
「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」マーヴィン・ピーク

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