Catégories:“ファンタジー(翻訳)”

Catégories: /

415020019X.jpg [amazon]
背が高く、濃い黒いひげを生やし、黒いべっこうの縁のメガネをかけているにも関わらず、自分がどんどん透明人間になっていくような気がしていたステファン。ニューヨークでも一流のグラフィック・デザイナーであり、一等地の豪華なアパートメントには美しい妻・ドロシーがおり、白い大きなグレート・ピレネー犬のサムと散歩をするのが日課。コネチカット州には農場もあり、愛車はアルファ・ロメオ、年に1度のヨーロッパ旅行が恒例。なのに、ステファンは何も感じないのです。45歳になったステファンに、ドロシーは10段変速ギアのついた自転車をプレゼント。それはステファンが時々欲しいと思っていたもの。でもステファンは上手く自転車に乗れず、結局ステファンはサムだけを連れてコネチカットの農場に移ることに。

人間は自分の心1つで、幸せにも不幸にもなれるもの。誰かに幸せにしてもらうという考え方もいいけど、基本的に幸せって自分自身でなるものだと私は思ってます。気持ちの持ちよう1つで、周囲の風景はまるで違った風に見えてくるし、いつでも新しい発見ができるはず。でもステファンみたいに何も感じなくなってしまったら、それはなかなか自分ではどうしようもないのかも...。まだまだ男盛りと言える年齢なのにすっかり無感動になってしまったのは、愛犬・サムの年老いていく姿の中に自分自身を見てしまったからなのかもしれません。いつかはサムが死んでしまうなんて信じられないステファンなのに、結局サムを看取ることになってしまうんですよね。そのせいか、偶然出会った若く美しいピアがいくら働きかけても、なかなか自分の殻から飛び出すことができなくて...。一旦飛び出してしまえば、そこには常にサムがいてくれると気づくことができるのだけど。
案外深いものを含んでいるアダルト・ファンタジー。夜空を自転車で駆ける中年男性というのも案外絵になるものだなあ、なんて思った物語でした。(ハヤカワ文庫FT)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / /

[amazon]
いつものように4人だけで夏休みを過ごしていた、ジェーン、マーク、キャサリン、マーサ4人の子供たち。お父さんは既に亡く、お母さんは新聞社に勤めていて忙しいので、いつもビックさんという女性が家に来て4人の面倒を見ることになっているのですが、ビックさんは4人をどこかへ連れて行こうなどと考えるような人ではないのです。あんまり何も起こらないことにうんざりしたジェーンが、「いっそのこと火事でもあればいいのに」と大声で叫んだ時、4人の耳に聞こえてきたのは、消防自動車のサイレンの音で...。

ハヤカワepi文庫に浮気してたり、図書館の予約本が回ってきたりして、1ヶ月ぶりのハヤカワ文庫FT。今年は主に通し番号で100番までを読もうと思ってるんですけど(現在通し番号は414番まで)、まだ半分ちょっと。この辺りは絶版本ばかりで、読むよりも入手するのが大変なんですよね。「魔法の湖」も、amazonには既に情報もない状態だし。
さて「魔法半分」は、魔法のコインを拾った4人の子供たちが巻き起こす騒動の物語。E.ネズビットの大ファンだという4人の子供たちの冒険は、そのまんまネズビットの「砂の妖精」みたい。冒険をするのが4人の兄弟姉妹という部分も、伝統的なファンタジーの形式を受け継いでるんですね。(男女2人ずつではないですが) もちろん、魔法が使えるようになるとは言っても簡単に上手くいくわけはなくて、魔法のコインが叶えてくれるのが、願った事の半分だけというのが、とても面白いんです。家に帰りたいと願ったお母さんは、気がつけば帰り道の途中に立ってるし、猫のキャリーは「アタシニャー、オニェガイ、ソトヘ、ニャク」なんて人間と猫の言葉が混ざってるような状態。マークが願った「無人島に行きたい!」に至っては、「無人」だけが叶って、「島」は叶っていない状態。結局みんながいたのは、無人の砂漠。(笑)
「半分の魔法」を使いこなすためには、本来の願い事の2倍お願いしなくちゃいけなくて、これがすごく面白いところ。それにこういった子供たちだけの魔法の冒険に、実の母親といった身近な大人が引きずり込まれてしまうのも、実はかなり珍しいのでは...。実は結構斬新な作品なんですね。(作品自体は既に古いんですが)
そして「魔法の湖」は、「魔法半分」の冒険から3週間後、家族で湖の畔の山荘に旅行した時の話。こっちは「魔法半分」みたいな斬新な部分はあまりなくて、むしろ3つの願い事に失敗してしまうおとぎ話のパターンのような感じ...。相変わらず楽しかったけど、「魔法半分」の方が私は好きでした。(ハヤカワ文庫FT)

| | commentaire(4) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
アノドスは21歳の誕生日に、死んだ父親の遺した古い書き物机の鍵を譲り受けます。早速机の様々な引き出しや棚を調べ始めた彼は、奥に隠された空間を見つけ、そこに現れた不思議な婦人によって、きっと妖精の国への道が見つかると約束されて...。

副題は「成人男女のための妖精物語」。C.S.ルイスやJ.R.R.トールキン、ルイス・キャロルに大きな影響を与えたというジョージ・マクドナルドの大人向けファンタジー。
マクドナルドの大人向けのファンタジーには、他にも「リリス」という作品もあって、そちらは難しいながらも展開自体は追いやすかったんですが、こちらは本当に難しかったです...。様々な人や出来事と遭遇しながら、ひたすら妖精の国を通り抜けるアノドスの姿は、まるで聖杯探求の騎士のよう。でも全編通してものすごく暗示的なのに、何がどんな意味を含んでいるのかは、さっぱり。しかも、途中で挿入される魔法の鏡と青年の物語はとても面白かったんですけど、その他の部分はそれほど起伏に富んでいるとは言いがたく...。最後まで読むのがとっても大変でした。でもC.S.ルイスはこの本の序文で、この作品がルイスの「想像力を回心させ、洗礼さえした」とまで書いてるんですよね。マクドナルドの作品の中では、「カーディ」2冊、「黄金の鍵」「賢い女」「リリス」と並ぶ「偉大な作品群」だとも。うわーん、こんな風に書かれているのに、その良さが分からないのって悲しいです。最後まで読んでから、また最初に戻って半分ぐらいまで読んだんですが、結局「それで...?」状態の私ってば。仕方がないので、いずれまたリターンマッチしてみることにします...。
そして、このルイスの序文でびっくりさせられたのは、この作品を読んだ当時は「キリスト教ほど私の思想に縁遠いものはなかった」と書いていること。ナルニア国シリーズがあれだけキリスト教的作品なのに、それまでは「縁遠」かっただなんて! やっぱりこの作品との出会いが、ルイスに大きく影響を与えたんでしょうねえ。そんな作品なのに、なんで理解できないんだろう、私...。(しくしく)(ちくま文庫)


+既読のジョージ・マクドナルド作品の感想+
「お姫さまとゴブリンの物語」「カーディとお姫さまの物語」マクドナルド
「北風のうしろの国」ジョージ・マクドナルド
「かるいお姫さま」マクドナルド
「ファンタステス」ジョージ・マクドナルド
「金の鍵」「黄金の鍵」ジョージ・マクドナルド
「きえてしまった王女」「かげの国」ジョージ・マクドナルド

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: /

[amazon] [amazon] [amazon] [amazon]
アラン史略全4巻。アランという架空の場所を舞台にした異世界ファンタジー。
ファンタジーとは言っても魔法はないし、想像上の存在も登場してなくて、舞台が架空の場所だという程度ですね。作者は女性なんですが、全体的に男性的で硬派な雰囲気。まるで無骨な石造りの部屋に掛けられた重厚なタペストリーを見ているような感覚。派手な色合いこそないけれど、落ち着いた色合いでしっかりと情景が描き出されていきます。まるで中世の物語を読んでいるみたい。でも考えてみたら、アーサー王伝説などの方が余程、魔法の気配が濃厚なんですよね。(笑)
でも、そんな雰囲気は悪くないんですが、訳文が...。この物語にはきっと良く似合ってるんでしょうけど、まるで日本の戦国時代の小説を読んでるような文章に馴染めなくて、読むのにかなり時間がかかっちゃいました。だって、どう考えても欧米のファンタジーの舞台設定なのに、主役の1人の一人称が「それがし」だなんて。しかも「奉行所」なんて出てきても... そこにいるのは、金髪碧眼の金さんですか。(苦笑) 「北の娘」で会話が関西弁やら薩摩弁に訳されているのも、私にはダメでした。そういう方言ってイメージが掴み易くて、きっととても便利なんでしょうけど、こういう使い方は勘弁して欲しいです。もちろん、国内作家さんの作品で、その土地の人間に方言をしゃべらせる分には構わないんですが、それも作家さん自らがネイティブ、もしくはそれに近い場合に限って欲しいですし...。(大阪に住んだことのない作家さんの書く妙な関西弁に、何度鳥肌が立ったことか) まあ、この作品では、京都弁だの大阪船場の商人言葉などが、きちんと使い分けられているようなんですが...。そういう部分で気を取られてしまって話の流れに乗れないっていうのも、勿体ない話ですね。
そしてこの重厚な雰囲気の中に、突然奔放な愛情表現が登場してびっくり。「アランの舞人」では、もしかしてこの作品ってBLだったのか?!とびっくりするような場面も。一体どういう意図があってそういう場面が描かれたんだろうと思ったんですが、巻末の作者のインタビューによると、どうやらこのシリーズでは、その部分が一番最初に書かれたらしく... そうか、そうだったのか。(がっくり)

「冬の狼」「アランの舞人」「北の娘」の間はそれぞれ時間が100年ほど流れていて、読み終えてみると、チアリという、舞人であり闘う者たちの興亡を描いた作品だったことが分かるのですが... でも結局何だったのかしら? それぞれの重厚な情景は印象に残ったんですが、結局何を訴えていたのか、今ひとつ掴めないまま終わっちゃいました。(ハヤカワ文庫FT)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / /

4150200629.jpg 4150200637.jpg 4150200645.jpg[amazon] [amazon] [amazon]
ウィラン・サーガ全3巻。オーストラリアの原住民・アボリジニの青年を主人公にしたファンタジーです。
オーストラリアのファンタジーとは珍しいですね。もしかしたら私、ファンタジーに限らず、オーストラリアを舞台にした小説を読むのって初めてかもしれません。そういえばオーストラリア出身の作家さんというのも全然知らないし。
オーストラリアといえば南半球。当たり前のことなんですが、北半球とはまるで逆なんですよね。私が生まれ育った日本は北半球の国だし、読んでる本もほとんど北半球の人間によって書かれた本ばかり。「北国」と聞けば反射的に「寒い」と思うし、「春」と聞けば、まず4月や5月頃を思い浮かべてしまうので、最初は少し戸惑いました。南に向かう旅が「どんどん寒くなる」と書いてあってもピンと来ないし、10月末が夏だっていうのにも、「...えっ?」状態。確かに半年ずらすと4月末。うちの辺りではそろそろ半袖を着始めたりしますけど... でも夏って言うには早いですよねえ。なんて未だに思っちゃう部分はあるんですが、馴れてしまえば大丈夫。アボリジニの伝承に伝わる土着の精霊たちなどが多く登場して、現代のオーストラリアという舞台にしっくりと馴染んでるのを見てると、北半球のファンタジーには見られない個性がとても楽しかったです。
でもアボリジニのことも精霊たちのことも大地のことも、とても興味深かったし、面白かったんですけど... 物語としては、あと一歩踏み込みが足りないというか、最後の詰めが甘い気も...。オーストラリアの土着の精霊には馴染みが薄いから、それだけで面白く読んでしまうんですけど、欧米のファンタジーでいくらエルフだのドワーフだのが沢山登場しても、それだけじゃあ話にならないですもんね。そういう意味では、精霊たちが舞台背景で終わってしまって、今ひとつ生かしきれてないような、勿体ない印象が残ってしまいました。アボリジニの、大地に根ざして生きる民としてのメッセージ性は十分感じられたし、色々と考えさせられるのだけど... この作家さん自身は、アボリジニではないわけで。
でも、それはともかくとして、アボリジニについてはもっと何か本を読んでみたくなりました。日本の作家さんでは、上橋菜穂子さんが興味を持ってらっしゃると聞いたことがあるんですけど、守り人シリーズにも、アボリジニの影響が色々とあったりするのかな。調べてみると、「隣のアボリジニ」という本があるので、今度読んでみようかしら。アイヌやインディアンもそうだけど、アボリジニの歴史にも、なかなか凄まじいものがありそう。これはノンフィクションなのかな? そうだったらいいな。(ハヤカワ文庫FT)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / /

  [amazon] [amazon]
金属や妖魔を操る魔法使い・レジークは、織物や生物を操る美しい女魔法使い・デリヴェヴに結婚を断られ、逆にデリヴェヴに憎まれていると思い込んでしまいます。"織り姫"のデリヴェヴはその気になれば、レジークの着ている服を操ることすら可能。いつデリヴェヴに攻撃されるか心配になったレジークは、デリヴェヴの魔力を避けるため、自分の得意分野である黄金を紡いで、肌着を作って身につけることに。しかし秘密裏に作るためには、デリヴェヴや手先の蜘蛛たちの気をそらす必要がありました。レジークは、普段は14歳の金髪の少女の姿をしている炎の妖魔・ギルドラムに青年騎士の外見を与え、デリヴェヴの住むスピンウェブ城へと送り出します。計画は予想以上に上手くいき、デリヴェヴと青年騎士は愛し合い、そして騎士が去った後、デリヴェヴは息子を産んでクレイと名付けることに。

何冊かハズレの作品が続いてちょっとげんなりしてたんですけど、これはいいです。こういう作品は大好き! こういう作品と出会えるなら、多少ハズレがあったとしても我慢できるわ~。
ええと、全ては大勘違い野郎のレジークのせいで始まったという、ちょっと凄い話なんですが...
何といっても妖魔のギルドラムがいいです。本来なら人間を愛することなんてできないはずの妖魔なのに、デリヴェヴを愛してしまい、しかもクレイに父性愛まで抱いてしまうギルドラム。レジークに呪縛されながらも、陰に日向にクレイを助けるギルドラムの姿が何とも言えません。忠誠と愛情の板ばさみになっちゃうところの切ないこと! でもそのギルドラムの普段の姿は、14歳の金髪の少女なんですよね... と書くと、ものすごく妙な話と思われそうなんですが... この話、説明だけじゃあ、どうやっても妙な話としか思ってもらえないかも(^^;。
いやあ、生物学上の父親なんて何ほどのものじゃないですね。最後に真相を知ったデリヴェヴの態度、男らしいわ~!(違)

この物語で描かれている世界観もとても好みだし、デリヴェヴの蜘蛛や植物を使った魔法、レジークの火や金属を使った魔法の場面も素敵でした。完璧に悪役のレジークだけど、金で指輪を作る場面は好きです。私も手伝いたくなってしまったではないですか。(でも鋳造しかしないのね) この作品には続編もあって、そちらも入手済みなのでぜひ近いうちに読みたいです。家に置いてきてしまったのが悔やまれます。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のフィリス・アイゼンシュタイン作品の感想+
「妖魔の騎士」上下 フィリス・アイゼンシュタイン
「氷の城の乙女」上下 フィリス・アイゼンシュタイン

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / /

 [amazon]
古代バビロンの研究をしている考古学者のフォーサイスがジョン・ケントンに送ってきたのは、巨大な石盤。ケントンは早速、石盤に刻まれた古代楔状文字の碑文を調べ始めます。そこにあったのは、光の女神イシュタル、暗黒神ネルガル、知恵をもたらす青の神ナブ、そしてザルパニトとアルサルという名前。そして調べているうちに、ケントンは石盤の中に何かが閉じ込められていたことに気づきます。それは宝石で作られた1隻の魔法の船でした。

古代バビロンの石盤から美しい帆船が出てくる辺りはとても素敵だし、気づいたらケントン自身がその船に乗り込んでいたという展開も、かなり好きなパターン。女神イシュタルは暗黒神ネルガル、知恵の神ナブ、そしてその巫女や神官たちという設定も異国情緒たっぷり。でも、魅力的な設定の割に、物語自体はどうも...。主人公がつまらなさ過ぎです。考古学好きの普通の青年の人生が一変してしまうという辺りはまだしも、奴隷になって帆船を漕ぐうちに、頭の中まですっかり筋肉になってしまったみたい。彼が考えているのは、シャラーネという美女のことばっかりだし、それ以外のことでは仲間と一緒にやりたい放題。ケントンが逞しくなった途端に優しくなるシャラーネの造形も含めて、あまりに男性作家的な物語の展開にはがっかりです。(ハヤカワ文庫FT)

| | commentaire(2) | trackback(0)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.