Catégories:“ファンタジー(翻訳)”

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仲間で騙されてフロリダ拘置所に入れられる羽目になったヒバートは、バークスという男の手引きで、同房のスカーラッチと一緒に脱走。3人はスカーラッチの情婦・カーロッタと共に、広い湿原に逃げ込みます。マングローブの藪を進んでいくうちに4人が辿り着いたのは、神殿のような石造りの建物の廃墟。その廃墟の奥にある池には、金色の光に包まれた目に見えない階段がありました。その階段を上った先は、異世界コーイア。そこは訪れた人間が、魂のままの真の姿に変身するという場所。そしてヒバートは、以前から夢に見続けてきた、白髪の賢そうな老人に出会うことに。

ハネス・ボクは、元々SF的な怪奇ファンタジーのイラストレーターなのだそう。さすがイラストレーターだけあって、異世界コーイアの色彩鮮やかな情景がとても美しいです。特に最後の狂気の密林での描写は、真に迫ってる! そんな情景が鮮やかに浮かんでくる作品は大好きなんですが...
肝心の主人公の相手役となる女性の造形が浅すぎてがっかり。こんな、相手の本質を見ようともしない傲慢な女性なんて放っておけばいいのに!って思っちゃいました。相手が絶世の美女なら、中身がどんな性格でも構わないのかしら! そして一旦そう思ってしまうと、どの人間もすごく底が浅く感じられてきちゃう。異世界の造形がとても素敵だっただけに、ものすごーく残念です。(ハヤカワ文庫FT)

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「オズの魔法使い」のシリーズで有名なライマン・フランク・ボームの処女作。14編の短編が収められた連作短編集です。このうち2作は、以前アンソロジーで読んでいて(感想)、まるでオズの国の延長にいるような可愛らしいおとぎ話だなーと思ってたんですが、実際にこのこの国はオズの国に繋がっていたんだそうです。登場人物も共通してるし、この物語の舞台となるモーの国は、オズの国の南東にあるのだとか。そしてこのお話はほんと美味しそうなんです。

<モーの谷>には二筋の河があり、その一つにはとても濃い牛乳が流れています。このミルク・リヴァーの中には島がいくつかありますが、なかにとびきり上等のチーズできている島があり、人々はいつでも食べたいと思うときにシャベルですくっていいことになっています。流れがゆるやかな岸辺の淵には、舌もとろけるようなクリームが牛乳の面てに盛り上がっており、睡蓮のかわりにイチゴの大きな葉が浮かんでいて、よく熟れた赤いイチゴが鼻先をクリームの中にトップリとつっこんでいるさまは、さあここへ来て召し上がれといわんばかりです。河岸を形づくっている砂は、まじりけなしの白砂糖。藪の中にはありとあらゆるキャンディやボンボンが鈴生りで、だれでも気軽に摘み取ることができます。

この他にも、全編美味しそうな描写がたっぷり。でもこういうのは、子供の頃に読みたかったですね。大人になってから読むと、可愛らしいとは思うけど物足りない...。
処女作のせいかオズシリーズではなかなか見られないようなグロテスクなシーンもあるんですが、どこか上品なユーモアに感じられるのが魅力。でも初期のハヤカワ文庫FTって子供向けの作品が結構目につきます。もっと大人向けのが読みたいぞ。(ハヤカワ文庫FT)

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作家の「ピエールさん」が眠っている間にみたのは、とても美しいお話の夢。それは、ピポ王子の物語。跡継ぎの息子がいなくて悲しんでいた王さまは、王妃さまのアドバイスで、"水のほとりの大魔女"に相談しに行き、"新生児デパート"でピポという名前の赤んぼうを見つけます。王さまは、15歳になったら赤い小馬をあげるという約束で、ピポを自分の子供にするのですが...。

物語自体はいかにも子供向けの冒険ファンタジーで、例えばエルショーフの「せむしの小馬」のような雰囲気。でも「とても美しいお話の夢」の話から始まるせいか、まるで夢の中の出来事みたいです。夢の中で、見る見るうちに怪物が迫ってくるのに、身体が重くて思うように走れない時のような、自分が夢を見ているのが分っているのに、どうしても目を覚ますことができない時のような感覚。そして夢の中ってかなり唐突に場面が変わっても、夢を見ている本人は自然に受け入れてしまいますよね。それと同じような感じ。
「夢」が絡むことによって、普通の冒険物語がすごく重層的な構造になることにびっくり。なんだかとっても不思議な感覚の作品でした。これは何だったんだろう? どういう意味があったんだろう? と思う部分が多くて、一読しただけではつかみきれなかったんですけど、色々なモチーフにはそれぞれ深い意味が隠されていそうです。なんだかとっても気になる、後を引くタイプの作品でした。(ハヤカワ文庫FT)

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恋人のアンジーが、大学の研究室の霊体投射実験でどこかに転送されてしまった?! 目の前でアンジーが消えてびっくりしたジムは、早速自分も同じように投射してもらうのですが、気がついた時、ジムの意識はなんとドラゴンの中に入り込んでいて...。

中世のイギリスらしき場所に飛ばされてしまい、しかもドラゴンの身体の中に入り込んでしまったジムが、アンジーと一緒に現代アメリカに戻るために、魔法使いや騎士、弓矢の名人、言葉を話す狼、ドラゴン仲間などの協力を得て、「暗黒の力ある者たち(ダーク・パワーズ)」を滅ぼすという、言ってみれば正統派のファンタジー。
設定もいいんですけど、何よりも登場人物たちが魅力的で良かったです。種族も気質も様々な寄せ集めの仲間なんですけど、下手に同じ志を持たせたりしないで、それぞれの思惑の通りに進んでいくと最終的に目的が一致するという辺りもいいんですよねえ。ただ単に悪を倒すというんじゃなくて、運命と歴史のバランスを保つという論理も面白かったし。
ラストも意外性たっぷり。霊体投射実験って一体何だったのかしら? この世界は結局パラレルワールドだったのかしら? なんて良く分からなかった部分もあるんですが、続きがあるそうなので、これはぜひ読んでみたいです。(ハヤカワ文庫FT)

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ヒューズは日本ではあまり知られていませんが、イギリスでは非常に有名な作家とのこと。これはヒューズの初めての児童書だそうで、ごくごく短い作品ばかり20編が収められた短編集。
常識に捉われない個性的な発想とナンセンスぶりが楽しい作品群。これらの作品は、ヒューズが友人の子供相手に即興で話して聞かせた物語をそのまま活字にしたんだそうです。特に手を入れなかっただけあって、最初に語った時のままの生き生きとした雰囲気がそのまま残ってる感じ。そして意外なほどブラック味もあったりします。
例えば、この中に収められている「電話旅行」という話は、血の繋がらない両親に厳しく育てられている少女が、時々電話線を通って、電話の相手の家に遊びに行っちゃうという、発想そのものがとても楽しい作品。でも両親に可愛がられてない可哀想な女の子と言うと、大抵「小公女」的な良い子を想像すると思うんですけど、この少女が意外な我儘ぶりを発揮してびっくりなんですよね。しかも彼女がしばらくいなかった間、両親は心配していたのか全然だったのか、それも良く分からないようなエンディング。結構煙にまかれます。
思いっきり破綻してて収拾がつかない話も多いんですけど、案外楽しかったです。(1作ずつが短いからかも)(ハヤカワ文庫FT)

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題名の「ムルガー」とはサルのことで、要するにサルが主人公のファンタジーです。本国イギリスでは、トールキンの「ホビットの冒険」が出るまでは、並ぶ作品がないと言われるほど評価されてたそうなんですけど... うーん、読みにくかったです。沢山いるサルの種類にも、食べ物や樹木の名前にもムルガー語の名前がついてて、それを追うのが大変なんですよね。巻末に「ムルガー語小辞典」がついてるんですけど、そんなのをいちいち調べてたら、話の流れになんて、とてもじゃないけど乗れませんー。脇役として登場する人間や水の精が印象的だったし、厳しい冬の情景がとても綺麗だっただけに残念。この厄介なムルガー語さえなければ、もっと楽しめたでしょうに。

この作品はハヤカワ文庫FTと岩波少年文庫から出てますが、どちらも絶版状態。読んだのはハヤカワ文庫なんですが、岩波少年文庫の画像があったので、そちらを載せておきますね。訳者さんは同じなのでどちらを選んでも一緒だろうと思ったんですが、岩波少年文庫の方が新しくて、色々と手を加えてあるようです。岩波少年文庫版を選んだら、もっと読みやすくて良かったのかも... 図書館にあったのに、惜しいことしちゃいました。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のウォルター・デ・ラ・メア作品の感想+
「妖精詩集」W.デ・ラ・メア
「ムルガーのはるかな旅」ウォルター・デ・ラ・メア
「昨日のように遠い日 少女少年小説選」

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子供の頃大好きだった「クローディアの秘密」と、今回初読の「エリコの丘」。
「エリコの丘」は河合隼雄さんの「ファンタジーを読む」に紹介されていた作品。それで興味を持ったんですけど、以前一度読もうとした時は、どうも文章そのものが受け付けなくて挫折。でもその後調べてみると、どうやら小島希里さんの訳は相当評判が悪かったらしいですね。読者だけでなくカニグズバーグ本人からも色々と指摘が来て、岩波は小島希里訳作品の全面改訂に踏み切ったのだそう。ということで、今回読んだのは、以前の訳に金原瑞人さんが手を入れたという新訳です。やっぱり全然違う! あのまま我慢して読み続けなくて本当に良かった。

でも読みやすくなって、「エリコの丘」も素敵な話だったんですけど、やっぱり「クローディアの秘密」の方が上だったかな。
これは小学校6年生のクローディアと3年生のジェイミーという姉弟がある日家出をするという話。でも家出とは言ってもそんじょそこらの無計画な家出じゃなくて、クローディアが綿密な計画を立てた家出。宿泊予定は、ニューヨークのメトロポリタン美術館だし!...同じような趣向の作品はいくつか読んだことがありますが、多分この作品が一番最初。本国では1967年に発表された作品なので、もう40年近く経ってることになるんですけど、全然話が古くないどころか、今読んでもワクワクしちゃう。そして肝心のクローディアの「秘密」については、大人になった今読んだ方が理解できたかも。その辺りもじっくりと楽しめました。
「エリコの丘」は、女優志願のジーンマリーと科学者志望のマルコムが、ひょんなことから、もう亡くなってる女優のタルーラに出会って、彼女に頼まれた仕事をするという話。このタルーラが素敵なんです。成熟した大人の女性で、美人というより個性的なのに、その個性で自分を美しく見せちゃうような人。ジーンマリーとマルコムは不思議な機械を通って、誰からも見えない姿になって活躍するんですけど、この「見えない」ということから、色んなことを学ぶんですよね。考えてみれば、どちらの作品も目に見えない部分をとても大切にしている作品でした。

「エリコの丘」をこれから読まれる方は、2004年11月に改訂された新訳を選んで下さいね。「金原瑞人・小島希里訳」って感じになってますので。以前の版は絶版になったそうなんですが、図書館だと旧訳を置いてるところの方が多そうですし。
カニグズバーグの作品は、岩波少年文庫から何冊か出ていて、すごく読みたいんですけど、「ティーパーティーの謎」と「800番への旅」は小島希里訳なので、ちょっと読む気になれない... 早く新訳が出ればいいのですが。あ、「魔女ジェニファとわたし」は、「クローディアの秘密」と同じ松永ふみ子さんの訳ですね。こちらを先に読んでみようっ。(岩波少年文庫)


*既刊のE.L.カニグズバーグ作品の感想*
「クローディアの秘密」「エリコの丘から」E.L.カニグズバーグ
「魔女ジェニファとわたし」E.L.カニグズバーグ
「ティーパーティーの謎」「800番への旅」「ベーグル・チームの作戦」カニグズバーグ

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