Catégories:“ファンタジー(翻訳)”

Catégories: / /

  [amazon] [amazon]
ダイアナ・ウィン・ジョーンズ2冊。すっごくファンというわけでもないし(失礼)、私にとっては好きな作品と嫌いな作品がハッキリ分かれる作家さんなんですが、身近なところからどんどん回ってくるので、翻訳されてる単独作品はとうとうコンプリートしてしまいました。
で、思ったんですが、やっぱりダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は初期のものの方が好き! 今回も複雑でヤヤコシイSFファンタジー「魔空の森ヘックスウッド」より、初期の傑作と言われる「星空から来た犬」の方が断然面白かったです。25冊ほど読んだ中で、私が好きなのは大魔法使いクレストマンシーシリーズの「クリストファ-の魔法の旅」と「トニ-ノの歌う魔法」だったんですが、この「星空の犬」を足してベスト3。(他の2作品も初期の作品のはず) 初期の作品の方がシンプルでストレートでぐっときます。(シンプルとは言っても当人比で、実際には十分重層的なんですが・笑)

その「星空から来た犬」は、無実の罪で高位の星官という身分から、地球上に落とされてしまった天狼星シリウスの物語。地球ではなんと子犬として生まれ変わり、地球に落ちたはずの「ゾイ」を見つけられれば以前の地位に戻されるけれど、見つからなければそのまま犬としての一生を終えることになる... という刑に処せられています。ラブラドール・レトリバーの子供として生まれてはみたものの、どう見ても雑種。飼い主は純血種の子犬を期待していたので、兄弟たちと一緒に袋詰めにされて川に流されちゃうし、生まれたところから波乱万丈。でもなんとか袋から抜け出して、キャスリーンという女の子に拾われることになるんですよね。子犬の間のシリウスは、星人だったことなんて全然覚えてないし、まるっきり普通の子犬。拾ってくれたキャスリーンがまるでシンデレラのような境遇なので、なかなか大変なんですけど、シリウスとキャスリーンが心を通わせていく部分がすごくいいです。そして大きくなるにつれて徐々に色んなことを思い出して、形も何も分からない「ゾイ」を探し始めるシリウス。でも、急がなくちゃと分っていながら、時には犬の本能に負けちゃったりして...(笑) ダイアナ・ウィン・ジョーンズって、きっと犬が大好きなんですね。犬好きの人には堪らないのではないでしょうか~。シリウスが外で出会う人たちもすごくいい味出してるし、星の世界が絡んでくる部分も好き。最後は切ないけど、楽しかった!

それにひきかえ「魔空の森ヘックスウッド」は... うーん、ちょっとややこしすぎ。時系列が飛び飛びになったり、行ったり戻ったりする辺りはついていけるんだけど、1人2役どころか一体何役よ?!って辺りですっきり読めませんでした。みんながお芝居を演じてるようで、そういう意味では楽しいんですけどねえ。(アーサー王伝説やゲド戦記のモチーフも!) 全部分かった上で読み返したら、きっと今度は良く分かるんでしょうけど、そこまでするほどでは...。(苦笑)

この2冊は相当長い間積んでたので、ようやく返せて嬉しいわー。(笑)(早川書房・小学館)


+既読のダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の感想+
「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「アブダラの空飛ぶ絨毯」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「デイルマーク王国史」1~4 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法使いはだれだ」「クリストファーの魔法の旅」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔女と暮らせば」「トニーノの歌う魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法がいっぱい」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
留守中に読んだ本(18冊)(「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」の感想)
「呪われた首環の物語」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「花の魔法、白のドラゴン」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「いたずらロバート」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バウンダーズ」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「星空から来た犬」「魔空の森ヘックスウッド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バビロンまでは何マイル」上下 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」「海駆ける騎士の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法!魔法!魔法!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ぼくとルークの一週間と一日」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「牢の中の貴婦人」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「キャットと魔法の卵」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Livreに「ダークホルムの闇の君」「グリフィンの年」「九年目の魔法」の感想があります)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / / /

 [amazon]
ショパンの恋人だったことでも有名な男装の麗人・ジョルジュサンドの作品。フランス文学が気になってることもあって、ちょっと読み返したくなりました。今回読んだ「愛の妖精」は新しい本なんですけど(篠沢教授訳ですって!)、「ばらいろの雲」はとっくに絶版になってる本。子供の頃から持ってる岩波少年文庫です。古すぎてamazonにもデータがないよーと思ったら、BK1にはありました。コチラ

「愛の妖精」は、一卵性双子の兄弟シルヴィネとランドリ、そして「こおろぎ」と呼ばれる不器量な野生児・ファデットの3人の物語。双子、それも一卵性双子って、これまでほとんど身近にいなかったせいもあって、惹かれるんですよねえ。片方が怪我をすると、もう片方も痛みを感じるとか色々言いますよね。自分ともう1人って、どんな感じがするんでしょう。
産婆のサジェットばあさんは、お互いに相手が分かるようになったらすぐに引き離し気味に育てるようにと忠告するんですが、なかなかそういうわけにもいかず、結局いつも2人だけでべったり一緒にいることになっちゃうんですよね。でも2人が大きくなると、家の都合で1人が奉公に出されることになって... 奉公に出ることになったランドリは仕事が忙しいこともあって、だんだん兄弟の関係から自立していくんですが、家に残されたシルヴィネが悲惨。暇だから色々と考えちゃう。そしてそこに登場するのが、ファデットという少女。...とは言ってもシルヴィネがファデットに恋してランドリを忘れるとかそういう話じゃなくて、彼女のせいで事態がややこしくなるんですが。
フランスの農村地帯が舞台のせいか、美しい自然と素朴な人々に囲まれて、とても柔らかく、それでいて地に足が着いた力強さもありました。ランドリやシルヴィネ、そしてファデットがその中で色んな経験をしながら成長していく様子が、濃やかに描かれていて美しいです~。良いことばかりが起きるわけじゃないのに、なんだかずっと柔らかい日差しに包み込まれているような印象。とっても分かりやすい展開だし、違和感を感じる部分もあるのですが(特に財産の件!)、すごく暖かな読後感。

そして「ばらいろの雲」には、「ものをいうカシの木」「ばらいろの雲」「ピクトルデュの館」の3編が収められています。こちらも美しい田園地帯を舞台にした作品。晩年のサンドが孫のために作った童話なのだそうですが、今読み返してみると、あまり子供っぽくなかったです。3編の中で一番好きだったのは、子供の頃と変わらず「ピクトルデュの館」。誰も見たことはないけれど、ヴェールをかぶった女性が招いた人間だけが入れるという荒れ果てた館、主人公のディアーヌが体験する、立像や絵画から抜け出した神々や水の精たちが舞い踊る幻想的な情景... そして話が幻想的なだけじゃなくて、現実的な部分とも綺麗に絡み合っているのがまたいいんですよね。(中公文庫・岩波少年文庫)


+既読のジョルジュ・サンド作品の感想+
「愛の妖精」「ばらいろの雲」ジョルジュ・サンド
「フランス田園伝説集」ジョルジュ・サンド

| | commentaire(4) | trackback(0)
Catégories: / /

  [amazon] [amazon]
「黄金の羅針盤」「神秘の短剣」に続く、ライラの冒険シリーズ第3部。これで完結です。
ここにきてようやく、「失楽園」にインスパイアされたというプルマンの描きたいことが見えてきました。「失楽園」をタイミング良く再読しておいて良かった! そこに書かれていた、ルシファーにしろアダムにしろイヴにしろ自由意志を持った、自分で選択する自由を持った存在として神が創造したという部分もこの作品に表れてるし、ルシファーやアダム、イヴのやったことは実は魂の解放と自由の始まりだったという部分も、「失楽園」を読んで感じていた通り。欧米でこの考えがどの程度受け入れられるのかは分かりませんけど、神についての解釈や描写も、大胆でとても良かったです。あの「オーソリティ」の姿には、さすがにびっくりしましたが...(^^ゞ
もちろん善側・悪側と立場がはっきりと見える人々もいるんですが、善悪が複雑に絡まりあってなかなかその本心が見えてこない人間もいるので、その辺りに緊迫感がたっぷり。ラストも安易なハッピーエンドじゃないところが気に入りました。ウィルとライラが自分たちの運命を受け入れていく様子もとても良かったし~。3部で新たにまた1人重要人物の視点が加わったので、途中ちょっと話が飛びすぎて散漫な印象になってしまったのが少し残念だったんですが、うるしを塗り重ねていく場面なんかはすごく好きだったし、琥珀の望遠鏡を覗いた時に見た金色のダストの情景が美しかったです。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「黄金の羅針盤」上下「神秘の剣」上下 フィリップ・プルマン
「琥珀の望遠鏡」上下 フィリップ・プルマン

+既読のフィリップ・プルマン作品の感想+
「かかしと召し使い」フィリップ・プルマン
「マハラジャのルビー サリー・ロックハートの冒険1」フィリップ・プルマン
「仮面の大富豪 サリー・ロックハートの冒険2」上下 フィリップ・プルマン

| | commentaire(0) | trackback(1)
Catégories: / /

    [amazon]
ライラは、生まれてすぐに両親を飛行船の事故で亡くし、おじのアスリエル卿にオックスフォードのジョーダン学寮に預けられている11歳の少女。その日もダイモン(守護精霊)と一緒に、普段は絶対に入ってはいけない奥の間に忍び込んでいました。ふいの話し声に慌てて隠れたライラが見たのは、その日やってくるアスリエル卿のために用意されたワインに、学寮長が白い粉を流し込んでいる場面。そのまま部屋から出られなくなってしまったライラは、衣装ダンスの中に隠れて様子を伺うことに。

以前睡猫亭の睡さんに教えて頂き、壹萬壹阡之本のヤマボウシさんにもオススメ頂いていた、ライラの冒険シリーズ。全6巻なんですが、とりあえず先に4巻を。(ダンテの「神曲」とか言いながら、いきなり普通の本に戻ってます(^^;)
いやー、読み始めてびっくり。初っ端からミルトンの「失楽園」が引用されていました。わあ、読んだばかりですよー、なんていいタイミング! 解説を見てみると、どうやらこの作品はミルトンの「失楽園」を始めとするキリスト教的神話に大きなインスピレーションを受けたプルマンが、叙事詩のようなモチーフを持った冒険ファンタジーを描こうとした作品なんだそうです。ええと、叙事詩のような重みは、まだ全然感じられないですが... どちらかといえば展開の速いハリウッド映画のようなジェットコースター感覚。
主人公の1人・ライラの住む世界は、私たちの住むこの世界にそっくりのパラレルワールド。地名も共通してるし、この世界と同じように聖書も存在しているんですが、色々細かい違いがあるようです。その中でも決定的な違いは、人間がそれぞれダイモンと呼ばれる守護精霊を持っていること。この「ダイモン」(この言葉を見るたびにどうしても「デーモン」という言葉が頭にちらついて困っちゃう・笑)、どうやら人間の魂が具現化した存在のようです。子供の頃のダイモンは様々な動物に姿を変えるんですが、大人になると一定の姿に固定し、それはその人間の本質的な姿を表していて、この辺りは物語が進めばもっとその暗示するものが見えてきそうです。
鎧を着た北極熊や、ジプシーならぬジプシャンたちといった面々が魅力的。夜空を覆うオーロラの向こうには見知らぬ町並みが見えるという北の地の情景も素敵。でも肝心のライラが...。どうも魅力を感じられず、なぜ周囲の人たちがライラを可愛がるのか分からなくて困りました。ただの嘘つきの女の子なのに!(実際「ライアー(嘘つき)」と掛けられているらしいです) でも「神秘の探検」が始まって、普通のこの世界の少年ウィルが登場して、ぐんと面白くなったし、バランスも良くなったような。「失楽園」からのインスピレーションもようやく具体的な形を見せてきたし、後2冊でどんな展開を見せてくれるのか楽しみです。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「黄金の羅針盤」上下「神秘の剣」上下 フィリップ・プルマン
「琥珀の望遠鏡」上下 フィリップ・プルマン

+既読のフィリップ・プルマン作品の感想+
「かかしと召し使い」フィリップ・プルマン
「マハラジャのルビー サリー・ロックハートの冒険1」フィリップ・プルマン
「仮面の大富豪 サリー・ロックハートの冒険2」上下 フィリップ・プルマン

| | commentaire(4) | trackback(0)
Catégories: / /

4150200688.jpg 415020070X.jpg 4150200718.jpg 4150200750.jpg 4150200769.jpg [amazon]
アイルという国を舞台にした異世界ファンタジー「アイルの書」全5巻。「白い鹿」「銀の陽」「闇の月」「黒い獣」「金の鳥」です。ケルトの神話を下敷きにしてるとあって、以前からものすごーく読みたかったんですが、既に絶版。見つけるのに苦労しました...。でもその甲斐あって、とても良かったです~。

私のファンタジー好きは、ここを見て下さってる方はご存知だと思うんですけど、その根っこのところにあるのは、どうやら神話好きと叙事詩好きらしいんですよね。だからそういう世界を作家が作り出している異世界ファンタジーが大好き。そしてこの「アイルの書」は、まさしくその要素を備えた作品です。神話が存在する世界がしっかりと作られていて、しかもまるで吟遊詩人が本当に歌い語っているような物語なんです。
主な舞台はアイルという島。これはきっと「アイルランド」がモデル。5冊全部主人公が違っていて、最初の「白い鹿」が神話の時代が終わる頃の物語。「はるかな昔、まだ創世の魔法がこの世にとどまっていたころ、アイルとよばれる小島があった。」です。そして「銀の陽」から「金の鳥」までは、それから1千年ほどの時が流れた後の物語。一貫して書かれているのは友情。そして痛みとその癒し。って書くとなんだか陳腐になってしまうんですが...。特に良かったのは2巻。続いて3巻かな。4巻5巻も面白いんですけど、4巻で舞台が変わるので、読み終えてみると全3巻で終わらせても良かったような気もしますね。4巻5巻は番外編ということで。(笑)
「指輪物語」が好きな方は、気に入る可能性大です。実際、この作品にも「指輪物語」の影響が色濃く感じられます。でも「指輪物語」自体ケルトの神話との関連が深いはずなので、出処は一緒とも言えるのかなあ。

この作品に「ケア・エイシャ」と呼ばれる城砦が登場するんですけど、C.S.ルイスの「ナルニア」シリーズで、王や女王となったぺヴェンシーきょうだいが住んでいたのが「ケア・パラベル」。「ケア」って城のこと? 何語?...と思って検索したら、ウェールズ語だという記述が。そしてウェールズ語は、インド・ヨーロッパ語族ケルト語派なんだそうです。なるほどねえ。(ハヤカワ文庫FT)

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
第二次世界大戦が勃発。頭に爆弾の破片を受けたアメリカ人外交官・バーバーは、イギリスの田舎町で養生中。しかし世話になっている家の奥さんが妖精のために裏口に置いておいた牛乳をこっそり飲んでしまったことから、取り替え子として妖精の国へ連れ去られ...。

行った先の妖精の王国にいるのが、オベロンやタイタニア。シェイクスピアの「夏の夜の夢」を下敷きにしたファンタジー作品です。根っからの合理主義者だったはずのバーバーも、実際にその状況に身を置いてしまえば信じるより他はありません。妖精のために牛乳を置いておく風習からも分かるように、その妖精の王国での出来事にはイギリスやアイルランド辺りに伝わる伝説が色々取り入れられてて、時々ニヤリとできます。とは言っても、私には分かってないネタもいっぱいありそう。きっと詳しい人ほど楽しめるんでしょうね。
それにしてもこの話は一体何だったんでしょう... 夢物語? まるで「不思議の国のアリス」みたいな不条理な世界。終わりも呆気なくて、まさに一夜の夢というのにぴったりだったんですが...? シェイクスピアの作品の中で「夏の夜の夢」は好きな方なんですが、この作品はどうもまとまりが付かないまま終わってしまったという印象。ほんと舞台を借りただけって感じでした。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のディ・キャンプ&プラット作品の感想+
「妖精の王国」ディ・キャンプ&プラット
「神々の角笛」「妖精郷の騎士」「鋼鉄城の勇士」「英雄たちの帰還」ディ・キャンプ&プラット

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / /

4150200920.jpg4150200955.jpg4150200971.jpg [amazon] [amazon] [amazon]
ダミアーノは、父親譲りの魔力で錬金術を行う21歳の青年。リュートと、言葉を話す小さな牝犬・マチアータをこよなく愛し、平和な生活を送っているダミアーノなのですが、パルテストラーダの町を支配下に置いていたサヴォイ公国の軍が撤退し、代わりにパルド軍が入ったことによって、ダミアーノの平和な世界は一変してしまうことに。

先日読んだ「黒龍とお茶を」がとても面白かったR.A.マカヴォイの、「魔法の歌」シリーズ全3巻。「ダミアーノ」「サーラ」「ラファエル」です。現代のサンフランシスコが舞台で、日常生活にほんのりと異質なものが入り込んだ程度のファンタジーだった「黒龍とお茶を」とはがらりと変わり、こちらは中世イタリアを舞台にした荘厳な作品。まるでラファエロの絵画がそのまま動き出したような印象。
とは言っても、ものすごーく感想が書きにくい作品だったんですけど... 天使や悪魔の扱いが独特で、その辺りがすごく面白かったです。冒頭から大天使ラファエルが登場して、ダミアーノにリュートを教えていたのには驚かされたんですが、そもそも、ダミアーノが魔道士でありながら敬虔なキリスト教徒という、この設定も珍しいと思うんですよねえ。
途中、サタンの姦計によってラファエルが大天使らしからぬ扱いを受けることになり、それがラファエルに大きな変化をもたらすんですけど、それ以前のラファエルって、ダミアーノ以外の人間には基本的に無関心だったし、多分ダミアーノに呼び出される前は、もっと人間に無関心だったんじゃないかと思うんですよね。ラファエルがこの状態なら、多分ウリエルやガブリエルやミカエルも似たようなものでしょうし、神その人はそれ以上に無関心なのかも、なんて思ったり。となると、神にとっては、ラファエルとサタンの諍いも特に関心を引くものではなかったんだろうなあ、なんて思いながら読んでいたら、なんだかサタンの方がずっと人間的に見えてきて、ルシファーがサタンになってしまった根本的な原因が見えたような気がしてきちゃいました... とは言っても、それはあくまでもこの作品の中でのことなんですが、マカヴォイ自身が、どんなことを考えて書いていたのか知りたい!(もしやこの作品の真の主役はラファエル?)
そしてサタンが住んでいるのが、常若の島ティル・ナ・ヌォーグ。なぜここにティル・ナ・ヌォーグが? これってケルトの神話に登場するティル・ナ・ノグと同じですよね? 私はケルト近辺でしか読んだことがないんですが、イタリアにもそういうのがあるのでしょうかー。妖精や死んだ英雄なんかが住んでる楽園だとばかり思ってたんですけど、なぜそこにサタンが住む?...マカヴォイがその名前を出してきた意図も知りたくなってしまいます。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のR.A.マカヴォイ作品の感想+
「黒龍とお茶を」R.A.マカヴォイ
「ダミアーノ」「サーラ」「ラファエル」R.A.マカヴォイ

| | commentaire(0) | trackback(0)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.