Catégories:“ファンタジー(翻訳)”

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「リンゴ畑のマーティン・ピピン」を書くことによって作家としての地位を確立したエリナー・ファージョン。これは70歳をすぎたファージョンがそれまでに書いた子供向けのお話から27編を自選して編んだ短編集。

気がついた時にはもう私の部屋の本棚に入ってた本、というのが結構沢山あるんですが、これもそのうちの1冊。だからもう何度目なのか分からないぐらいの再読です。いえね、先日ぱせりさんに、このブログを見るたびに「ムギと王さま」の本の小部屋を思い出す、なんて嬉しいお言葉を頂いてしまって! それから久々に再読したくて仕方なかったんです。でも本はまだ持ってるんですけど、今手元になく... 待ちきれなくて、図書館で借りてしまいました。(笑)
でも、私が持ってる本は全訳ではなかったらしいです。そちらは1冊で全20編。この2冊が訳されて初めて全27編が完訳されたんですね。逆に知らない作品を読めて良かったかもー。「天国を出て行く」の最後に収められてる「パニュキス」なんて、なんでそれまで訳さなかったのかしら!と思ってしまうような作品だったし。(石井桃子さんによるあとがきに、その辺りのことも書かれてましたが) でも、今も昔も特別大好きな話というのは変わりませんね。「西ノ森」と「小さな仕立て屋さん」と 「天国を出ていく」... あと「レモン色の子犬」も! 「ヤング・ケート」も! それに忘れちゃいけません、本の小部屋の話!!

その本の小部屋というのは、「ムギの王さま」のまえがきに登場する部屋のこと。ファージョンの子どもの頃に住んでた家は、どの部屋にも本が溢れ出しそうなほど置かれていたらしいんですが、その中に「本の小部屋」というのがあったんですね。で、娘時代のファージョンは、他の部屋の本棚に置いてもらえずに流れ込んできた本がごちゃごちゃ置かれ積まれてる「本の小部屋」で、何時間も何時間も過ごしたそうなんです。...私が育った家も、かなり似たような状態だったんです。どの部屋にも本が溢れ出しそうなほどあって、廊下にも本棚が当たり前のように並んでいて... だからファージョンのこの言葉を、子供の頃から実感として感じていたんだと思います。

本なしで生活するよりも、着るものなしでいるほうが、自然にさえ思われました。そして、また本を読まないでいることは、たべないでいるのとおなじぐらい不自然に。(P.4)

でも、うちにも余った雑多な本が流れ込んでいく部屋はあったんですけど、本専用の小部屋というのはなかったんですよね。それだけに、このファージョンの本の小部屋の描写には憧れてたのでした。多少、埃で目や喉が痛くなったとしても! こんな素敵な場所があったら、ほんと毎日でも入り浸ってしまうだろうな。
ここのブログやサイトは、もちろん私にとっては居心地の良い場所なんですが、他の人にもそんな風に居心地良く感じてもらえてるとしたら、これほど嬉しいことはないかも。なーんて、とっても幸せな気分に浸ってた私です。

ファージョン、やっぱり素敵です。決して派手ではないし、むしろ地味と言われてしまいそうなほどなんですが... でも私にとっては愛しくなってしまうような、宝石のような作品群。エドワード・アーディゾーニの挿絵がまたぴったりで素敵。作品はほとんど全部読んでるはずなんだけど、改めて全作品読み返したくなってきました。(岩波少年文庫)


+既読のファージョン作品の感想+
「ムギと王さま」「天国を出ていく」ファージョン
「年とったばあやのお話かご」「イタリアののぞきめがね」ファージョン
「町かどのジム」エリノア・ファージョン
「リンゴ畑のマーティン・ピピン」「ヒナギク野のマーティン・ピピン」ファージョン
「銀のシギ」エリナー・ファージョン
「マローンおばさん」エリナー・ファージョン
「ガラスのくつ」エリナー・ファージョン
「エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする」「ねんねんネコのねるとこは」エリナー・ファージョン

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最初はアンデルセンのようなフェアリー・テイルを書きたいと考えていたアーサー・ランサム。しかしその後ロシアの昔話の翻訳書を偶然手にした時、話そのものは楽しいのに、言葉も文体もひどくて子供向きではないことに衝撃を受け、ロシアに行って言葉を学び、自ら昔話を収集して翻訳する決意を固めたのだそう。そして翌年ロシアに向かったランサムはロシア、コーカサス、ウクライナ、トゥルケスタンから昔話を採集し、「ピーターおじさんのロシアの昔話」を書きあげます。この「アーサー・ランサムのロシア昔話」は、その第2弾のために用意していたものの、結局日の目を見なかったという作品を集めた物語集。
「鳥とけものの戦争」「白鳥の王女」「オメリヤとカワカマス」「高価な指輪」「キツネ話」「貧すれば貪するという話」「小さな家畜」「ジプシーと聖ジョージ」「天国のかじや」「兵隊と死神」「二人の兄弟」という全11編。

子供の頃、ツバメ号シリーズを愛読していたので、アーサー・ランサムの名前はお馴染みだったし、この本の存在は知ってたんですけど、なんでアーサー・ランサムがロシア...?と思ってしまって、なんとなく手に取れずにいたんですね。でもその辺りもちゃんと説明されていました。しかも面白かったー。

ロシアの民話にはロシアの民話での常識というのがあるし、それはロシアの人なら教えられなくても既に知ってること。でもそういうのはイギリス人は知らないことですしね。そのまま話を載せても仕方ないと、ランサムは結構苦労して工夫を凝らしたようです。「ピーターおじさんのロシアの昔話」では、ピーターおじさんが毎晩孫のワーニャとマルーシャに物語を語る形式になっていて、その枠の部分にロシアの昔話の理解に必要な説明を挿入。そのことによって昔話そのものもすっきりと面白くできたのだとか。こちらの「アーサー・ランサムのロシア昔話」は遺稿集なので、きちんとした枠物語になってるわけではないんですが、それでも語り手の存在は感じられるように書かれてるので、とても話の中に入りやすいです。
ただ、まえがきに、「全体の傾向は『ピーターおじさん』よりもやや暗鬱だろうが、これもまた、むかしから暗い面を持っているロシア農民世界の真実の姿なのである」とありましたが... それほど暗鬱とは思わなかったんですけど? 確かに「兵隊と死神」は、アファナーシェフの「ロシア民話集」(感想)の方が救われる結末となってましたけど、別に暗鬱とは思わなかったですねえ。むしろそんな風に結末が違うというのが興味深いです。それに例えば、結婚したカエルが最後に若く美しい王子に変わることはなくて(実際にはカエルは登場しませんが、例えばね)、「そんなうその話をしてみてもしょうがない」なんて言われると、逆に楽しくなってしまいますー。でも訳者あとがきを見ると「ピーターおじさん」にはもっとずっとスケールの大きい明るい物語が収められてるみたい。そちらも読んでみたいので、今度また図書館で借りて来ようっと!(きちんとした題名は「ピーターおじいさんの昔話」のようです)(白水社)


+既読のアーサー・ランサム作品の感想+
「アーサー・ランサムのロシア昔話」アーサー・ランサム
「ピーターおじいさんの昔話」アーサー・ランサム

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恋人だったウィルが捨て台詞を残してアパートを去った後。自分で切り落としたザンバラ髪のまま外に出たジャッキーは、夜の公園で9台のハーレーが1人の少年を追いかけるのを見かけます。よく見るとそれは少年ではなく、子供のように小柄な男。黒ずくめのライダーから放たれた閃光は小男の杖を砕き、小男を崩れ落ちさせます。思わず小男に駆け寄るジャッキー。しかし小男は既に死んでいました。そしてジャッキーが目撃者らしき人影を探した後で再びその現場を見た時、そこに残されていたのは杖の破片だけだったのです...

これは古くから伝わる妖精物語を語りなおして1編の小説にするというシリーズ企画のために書かれた作品で、エレン・カシュナーの「吟遊詩人トーマス」(感想)も、このシリーズの1作として書かれたものなんだそうです。知らなかったー。そして現代を舞台にしたハイ・ファンタジーを書いてみたいとかねがね思っていたチャールズ・デ・リントが選んだのは「ジャックと豆の木」や「巨人殺しのジャック」やスコットランド民話に登場する「ジャック」。

カナダのオタワが舞台で、人間の世界と二重写しのように妖精の世界が存在している、というのが楽しいです。ここに住む妖精は大きく2つに分けられて、王に忠誠を誓う「祥(さきわ)いの民」と、巨人に仕える「祥(さが)なき民」。要するに善の存在と悪の存在ですね。存在することを人間に信じてもらえないと健康を保てない「祥いの民」(善)は、現在どんどん力を失い、数が減りつつあるんですが、それとは逆に「祥なき民」(悪)は力を強めてます。この「祥なき民」はさまよう死者とか幽霊とか、ホラーの本や映画の中に出てくるような存在なので、信じられてはいないまでも人々が興味を持って恐れてるからっていうんですね。この設定が面白いです。確かに「信じてない」という意味では同列だとしても、幽霊や死者を怖がってるというのはありますもんねえ。すごくうまい設定かも。
鉄に弱い妖精も人間社会の近くに住むことによって鉄に耐性をつけちゃってるし、「死の狩人」はハーレー・ダヴィッドソンを乗り回してます。キーがなくとも車のエンジンをかけて乗り回せる妖精もいます。そんな現代的な妖精とは対照的に、主人公のジャッキーは素朴な19歳。パーティやバーなどの喧騒にはまるで興味がなくて、本が好きで家にいるのが大好き。7歳の頃から切ってない金髪に、着ているものはだぶだぶのチェックのシャツに履き心地のいい古びたジーンズという、まるでヒッピーのような姿。人間と妖精が逆転してるみたいなとこも面白いです。そしてあくまでもジャックが中心とはいえ、「ケイト・クラッカーナッツ」やビリー・ブラインド、白鳥になった七人兄弟の物語など色んな民間伝承の素材が作品の中に登場してるのも楽しいところ。
でも、んんー、面白かったんだけど、あまりに勇気と幸運頼りになっているのが気になってしまうというのもあったんですよね。どうしても都合が良すぎるというか。ジャックはそういうキャラクターなんだと言われても、って感じです。「リトル・カントリー」ほどの作品とも思えなかったし、続編「月のしずくと、ジャッキーと」は読むかどうか迷い中。(創元推理文庫)


+既読のチャールズ・デ・リント作品の感想+
「リトル・カントリー」上下 チャールズ・デ・リント
「ジャッキー、巨人を退治する!」チャールズ・デ・リント

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モーニング山脈の真東にある大きな王国・リンダーウォールの7番目の姫・シモリーンはお姫さまらしくないお姫さま。上の6人は金色の長い髪にやさしい性格で、下にいくほど美しいのに、シモリーンは髪の毛は真っ黒で、いつも三つ編みのおさげにしてるだけ。しかも背も高いのです。お姫様としてのたしなみのレッスンがつまらなくて仕方のないシモリーンは、レッスンを抜け出しては剣術を習ってみたり魔法を習ってみたり。その他にもシモリーンが興味を持つのはラテン語だったり、料理だったり、経済学だったり。そんなシモリーンに困った王様とお妃さまは、シモリーンが16歳になった時、金髪に青い目のハンサムなセランディル王子と結婚させようとします。しかしこれがろくな話もできないような退屈な王子さまなのです。結婚なんてまっぴらのシモリーンは、お城で出会ったカエルのアドバイス通りに「城出」を決行。行き着いた先はドラゴンでいっぱいの洞窟でした。シモリーンは自ら囚われのお姫さまになることを志願することに。

昔ながらのファンタジーの常識を逆手に取った作品というのは、最近の流行なんですかね? 先日読んだ「六つのルンペルシュティルツキン物語」(感想)も面白かったんですが、こちらも面白い~。もう最高!
ここに登場するシモリーン姫は、あるべき「お姫さま」の姿にうんざりして、自分から城を出てしまったお姫さま。しかも自らドラゴンの囚われの姫に志願してしまいます。「これなら親も文句ないでしょ?」といった調子。だってドラゴンに囚われるのはお姫さまのステイタスで、良い結婚に繋がるんですもん。...そんな風におとぎ話としての定石を踏まえつつ、少~しずつずらしていくのって、なんて楽しいんでしょうね。「そして2人はいつまでも幸せに暮らしました」だけを目指してる、なあーんにも考えていない王子さまやお姫さまに比べて、シモリーンはほんと生き生きとしてて可愛いです。お姫さまという役回りにこそ上手く順応できてないけど、きちんと自分の足で立ってて、誰を頼るのでもなく、自分自身で幸せになれる賢さを持っている女の子。でも世間一般的には「ドラゴンに囚われたお姫さま」なので、シモリーンを救い出すために王子が何人もやってきちゃうんですね。もちろん結婚するはずだったセランディル王子も。何てったって、ドラゴンや巨人、人喰い鬼、恐ろしい妖精の呪いから救うのが、王子が姫に求婚する時の「正しいやり方」なんですから。(笑)

シモリーンと気の合うアリアノーラも、一見ごく普通のお姫さまに見せておいて実は案外しっかり者で可愛いし、シモリーンを預かるドラゴンのカズールの洞窟がとても素敵なんです。料理や掃除をやっても構わないから、私もカズールの洞窟の図書室や宝物部屋を探検してみたい~。それに何といっても昔ながらのおとぎ話や伝説の小ネタが沢山詰め込まれているところが楽しすぎます。眠り姫やシンデレラ、かえるの王子さま、アラジンの魔法のランプ、オズの魔法使い... しかも途中で登場する王子の英雄養成学校での同級生はジョージにアーサーにジャック! 私にはこれがツボでした。(でも全部のネタが分かってるわけじゃないです... 全部知りたい☆)
これは「魔法の森」シリーズの1作目で、全部で4部作の予定なんですって。続きもすっごく楽しみ~。絶対読みます!(創元ブックランド)


+シリーズ既刊の感想+
「囚われちゃったお姫さま」パトリシア・C・リーデ
「Dealing with Dragons」Patricia C. Wrede
「消えちゃったドラゴン」パトリシア・C・リーデ

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東京創元社で刊行中のラング童話集の9冊目。今回は全25編で、多かったのはネイティヴ・アメリカンの話、アフリカの話、そしてラップランドの話。なかなか面白いのが多かったです。

特に面白かったのは、ネイティヴ・アメリカンの話。「玉運びと魔物」「玉運び、つとめをはたす」という続き物が入ってるんですけど、これがユニークなんです。
まず男の子がまじない師のおばあさんに攫われるんですね。そして、精霊に知恵と力をさずかるには断食が必要と言われて、断食をすることになるんです。10日ではまだ不足。一旦食事をして、今度は20日の断食。かなりの精霊が訪れるけど、まだ不足。さらに20日断食すると、今度は全ての精霊から知恵と力を授かることができます。男の子はそのおかげで体力的にも強くなるし、目も耳もきくようになるし、変身する力まで身につけちゃう。断食をしてそんな力をつけるなんて話、今まで読んだことなかったわ~。
力をつけると、魔物から金とどこでも渡れる小さな橋を盗み出すように送り出されて、ようやく普通の昔話らしくなるんですが...。無事盗み出して、魔物をやっつけて逃げ出してから、まじない師の家に帰れなくなっちゃうんですね。道を忘れてしまって歩き回るうちに色んな冒険をして(詳細は不明)、結婚までしちゃう。子供も3人。で、なんだかんだとあった後で死んでしまうんですけど、彼が死ぬとようやく、まじない師が再登場。死んでるのを起こして(まあ、なんて簡単な!)、魔物から金と橋を盗んできたか尋ねて、それを彼の脇の下から取り出すと(ずっとそこに隠してたのか?!)、その後の行動がまたびっくり。このまじない師の存在って、一体ー!?
題名の「玉運び」の玉は、まじない師が子供を欲しくなった時に使う玉。まじない師がぽんと玉を放ると、その玉は目当ての子供の家まで転がっていって、子供と出くわした途端にまじない師の家に戻り始めるんです。子供は綺麗な玉が欲しくて、しかもすぐ追いつけそうな気がして追いかけるんだけど絶対につかまえられなくて、まじない師の家まで来ちゃうという仕組み。これ、すごい簡単で確実な方法ですよね。(笑)(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+(東京創元社版)
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編
「きいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ももいろの童話集」アンドルー・ラング編
「はいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「むらさきいろの童話集」アンドルー・ラング編
「べにいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ちゃいろの童話集」アンドルー・ラング編
「だいだいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「くさいろの童話集」アンドルー・ラング編

+シリーズ既刊の感想+(偕成社文庫版)
「みどりいろの童話集」「ばらいろの童話集」アンドルー・ラング

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黒の湿地帯の奥深く、水生植物が鬱蒼と茂る暗くよどんだ沼の上にあるガル村に住んでいたのは、ポイズンという名前の少女。ポイズンの家は沼の端の小屋で、一緒に暮らしているのは父親と継母のスナップドラゴン、そしてまだ幼い妹のアザレア。そして年に1度の「魂見の夕べ(ソウル・ウォッチ・イブ)」の日。ポイズンが雪のようなきらきら光る粉のせいでぐっすり眠らされている間に、妹のアザレアがベビーベッドから攫われていたのです。攫ったのはスケアクロウ。後には妖精の取替え子(チェンジリング)が残されていました。ポイズンは妖精王から妹を取り返すために村を出ることに。

かつては人間の王国だったこの世界も、今や妖精族やゴブリン、トロールがあちらこちらに点在し、人間が森や沼地、山の中に隠れ住むようになっている時代の物語。物語の始まりは、よくあるような妖精物語なんです。主人公のポイズンは、「毒」という名前を自分でつけてしまうような少女。自我が強く好奇心が旺盛で、妹のアザレアが攫われたのをきっかけに外の世界に出て行くことになる少女。読み手は、一筋縄ではいかないポイズンに最初は反感を持ったとしても、物語が進むにつれて徐々に感情移入して... というパターン。でもこれは、妹を無事に取り戻してめでたしめでたし、という物語ではないんです。
途中で、3度ほど「もしや」と思った部分が本当にその通りで、逆に驚いたというのはあるんですが... それでも定石通りには収まらない物語に最後までわくわく。これはもうネタバレなしに語るのは難しいんですけど、物語が好きな人ならこういうことを考えたことはあるんじゃないですかね? 私自身、自分がなんとなく思い描いていた物語をそのまま本にしてもらえたような感覚でしたし。でもごく普通の妖精物語を読みたい人には、この作品はあんまり向いてないのかも...。YAのレーベルから出ている作品なんですが、むしろ大人のレーベルから出してもいいぐらいかも。個人的な好みを言えば、こういう構造の物語は大好きです。この作家の他の作品も俄然読んでみたくなっちゃいました。面白かった!

この作品挿絵もすごく素敵なんです。全ページの下にペン画(だと思う)の挿絵がずーっと入っていて、それがまた作品世界の雰囲気を盛り上げてました。この絵を描かれたのは橋賢亀さんという方で、サイトも見つけました。→コチラ。ひかわ玲子さんの「アーサー王宮廷物語」(感想)も荻原規子さんの「ファンタジーのDNA」(感想)も、菅浩江さんの「ゆらぎの森のシエラ」も、表紙はこの方が描かれてたんですかー。知らなかった! カラーと白黒とでは、ちょっと雰囲気が変わりますね。白黒の方が小悪魔的な魅力が強くなるような気がします。(創元ブックランド)


    

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砂漠を横切って進んでいた大きな隊商(キャラバン)のの先頭に突然現れたのは、トラの皮をかけた美しくアラビア馬に乗り、見事ないでたちをした堂々とした風采の男。男の名前はゼリム・バルフ。メッカへの旅の途中で泥棒の一団に掴まっていたのを、3日前にこっそり逃げ出してきたので、隊商の一行に加えて欲しいのだと語ります。隊商の5人の商人たちは快く彼を迎え入れることに。そして食後の退屈しのぎに1人ずつ何かの物語をすることになります。

隊商の商人たちの語る6つの物語。子供の頃の私の本棚に分厚い「ハウフ童話集」が入っていたので、部分的には既読です。でも千一夜物語は大好きだったし、こういう雰囲気は本来大好物なはずなのに、なぜかこの「ハウフ童話集」だけはどうしても通読できなかったんですよねえ。その後も何度かこの本を図書館から借りてきたことがあるんですが(だってこっちの方が薄いんだもの)、その時もどうも読めず... なぜなんでしょう。
ということで、このたびようやく通読できました。(ぱちぱち) そのハウフの本で読んでたお話もあれば、先日も「べにいろの童話集」で登場したお話もあり(この話は有名なので、色んな童話本に入ってます)、あまり新鮮味はなかったんですが、これはあくまでも枠物語なので、全体を通して読むことに意義があるという感じですね。いやあ、ようやく全部通して読めて良かったです。部分的に知ってるということで、実は最後のとこまで知ってたんですけどね。あー、良かった良かった、ほっとしました。またいずれ、大元のハウフ童話集に挑戦したいと思います。(岩波少年文庫)

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