Catégories:“歴史・時代小説”

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現代人から「インフラの父」とさえ呼ばれているローマ人。インフラストラクチャー(社会資本、基礎設備、下部構造)ほど、それを成した民族の資質を表すものはない、というのが塩野七生さんの考え。ローマ人にとっては「人間が人間らしい生活をおくるために必要な大事業」であり、それらの全てを備えていないと都市とは認められていなかったいうインフラについて重点的に取り上げていく巻です。

次は五賢帝最後のマルクス・アウレリウス・アントニウスなのかな?と本を広げたら、違いました。今回はインフラのお話ばっかりで、ローマの皇帝たちは一休み。
ええと、インフラにもハードなものとソフトなものがあって、ローマ時代のハードなインフラと言えるのは、街道、橋、港湾、神殿、広場(フォールム)、公会堂(バジリカ)、円形闘技場、半円形劇場、競技場、公衆浴場、上下水道など。そしてソフトなインフラとは、安全保障、治安、税制、医療、教育、郵便、通貨制度などなど。この巻で主に取り上げられているのは、ハードなものとしては街道、橋、水道。ソフトなインフラとしては医療と教育。他のは改めて取り上げられたりはしてないんですが、これまでの巻でも随時触れられてきてますしね。

まず面白かったのが、ローマと支那という西と東の大帝国の対照的な姿。同じような技術力を持ちながらも、支那(まあ、基本的には秦のことだと思うんだけど)は万里の長城を築き、ローマは街道を築く。縦になってるか横になってるかの違いだけで、技術力はほぼ同じ。でも、人の往来を絶つ万里の長城を築いた支那人とは対照的に、ローマ人は自国内の人々の往来を促進するローマ街道を築くんですね。どちらの民族も作ろうと思えば壁でも道でも作れたはずなのに、自国の防衛のためにまるで正反対の行動を取っているというのがスゴイ。
あと、共和制時代は財務官(ケンソル)や執政官(コンスル)が、帝政となってからは皇帝が立案して、元老院(セナートウス)が決定を出した、というインフラ事業なんですが、その費用を国庫で賄うのは当然のこととしても、権力者や富裕者が私財を投じて建設し寄贈した公共財も多いというのも、すごいことですよね。日本の政治家は、自分の地元に高速道路や新幹線を通すことは考えるけど、私財なんてまず出さないでしょうし~。でもローマ人は、そんなこと当然のことのようにやってるわけで。その辺りの考え方の違いもすごいですよね。視野の大きさも全然違うし。そしてこれこそがローマ帝国の長寿の秘訣だったのでは。だからこそ、塩野七生さんも単行本の1巻分をまるまる割いてインフラを語りたいと考えたのでは。

「はじめに」で、この巻は歴史的にも地理的にも言及の範囲が広いから読むのが大変なはず、とさんざん書かれてるんですけど... 例えば「ハンニバル戦記」や「ユリウス・カエサル」のような面白さや快感は期待できないから覚悟して欲しいと散々脅されてるんですが、ふたを開けてみれば、すんごく面白かったです。ユリウス・カエサルはもちろんのこと、初のローマ街道・アッピア街道、初の水道・アッピア水道を作ったアッピウス・クラウディウスも素晴らしい。そしてこれらのインフラこそが、古代ローマを現代に繋げる架け橋と言えそう。地図や図面、写真が沢山見られるのも良かったです。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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この巻で取り上げるのは、紀元98年から161年まで、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの3人の皇帝の時代。20年の治世であらゆる分野で多大な業績をあげたトライアヌス帝ですが、同時代のタキトゥスは「まれなる幸福な時代」という一行を残したのみ。同じくこの時代を生きたスヴェトニウスも何も書かず、しかし同時代のローマ人も「黄金の世紀」と呼び、後世「五賢帝時代」と呼ばれるようになったこの時代。賢帝とは何であったのか、どのような理由でローマ人は賢帝と賞賛したのか、ということを見ていく巻です。

これまでタキトゥスの「歴史」「年代記」「アグリコラ」「同時代史」を元に自分なりの解釈をしつつ書き進めてきた塩野七生さんですが、ここにきてタキトゥスが何も書いていないので、相当戸惑ったようです。タキトゥスの没年は120年とされているので、117年までのトライアヌス帝の治世についても書こうと思えば書けたはずなのに、実際に書いているのはドミティアヌス帝の暗殺まで。同時代人のスヴェトニウスも「皇帝伝」でドミティアヌス帝までしか触れていないし、200年後にその続編を書こうとした6人の歴史家たちが書いた本も、書き始めはハドリアヌス帝から。1 年半ほどの治世しかなかったネルヴァはともかく、あらゆる分野で多大な業績をあげているはずのトライアヌスが全然書き残されていないなんて!
でもそんなトライアヌス像が、塩野七生さんによって鮮やかに描き出されていきます。ここに描かれているのは、初めての属州出身の皇帝だからと、黙々と人並み以上にがんばってしまったトライアヌスの姿。賢帝と言うにはあまり華がないように思えるトライアヌス帝なんですが、それでもトライアヌス円柱と呼ばれる戦勝記念碑に刻まれた浮き彫りに見るダキア戦記や(この円柱の全貌を見てみたい!)、当時建設されたという橋の図面からも、その有能さが分かります。
そしてトライアヌスの次は、トライアヌスが代父となっていたハドリアヌス。この人物の治世は21年。でもその21年のうち、本国イタリアにいたのは7年だけなんですね。皇帝の位についた当初こそローマに留まっていたものの、45歳から58歳までの13年間のほとんどを視察の旅で属州を巡行。常に皇帝としての義務を果たしつつ、トライアヌスが拡大した帝国内をくまなく巡察し、既存の公共施設を修理、国境の防衛線を強化、地域ごとの問題を解決、さらには徹底した法の整備まで。疲れを知らないその働きぶりに、即位直後の危険分子との粛清というマイナスイメージもいつしか払拭されることに...。この巻で興味深いのは、ハドリアヌス帝後半でかなりのページが割かれているローマ人とユダヤ人の意識の違いについて。ユダヤ人についてもある程度は知っているつもりでしたが、まだまだでした。これほどの意識の差があったとは正直びっくり。
そして取り上げられている3人の賢帝のうちの最後は、アントニヌス・ピウス。晩年首をかしげられるような行動が多かったハドリアヌスの神格化を1人訴えていたことから、ピウス(慈悲深い)という名前がつけられたというこの人物は、様々なことに目を配りつつも現状維持で賢帝となった人物。何もしていないので、あまり書くべきことも多くなくて、割かれているページも50ページ足らずなんですが、それでもその人柄の良さと頭の良さは十分伝わります。しかし逆に大改革を推し進めるためには、アントニヌス・ピウスではなくて、ハドリアヌスのような性格が必要だったということもよく分かります。

今回一番印象に残ったのは「ローマの皇帝たちの治世は殺されなくても二十年前後しかもっていないが、それも激務によるのかもしれない」(24巻P.248)という言葉。確かに長くても大体20年前後ですね。やっぱりそれだけローマ帝国の統治は大変だったんだなあー。と、納得。(新潮文庫)


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アウグストゥスの死後、皇帝となったのはティベリウス。常に若く元気な部下に囲まれていたユリウス・カエサル、決断の際には常にアグリッパとマエケナスに相談することのできたアウグストゥスとは対照的に、ティベリウスは孤愁を感じさせる男。背が高くがっちりとした体格で、貧相という言葉とは無縁だったティベリウスですが、その背は人の想いを拒絶するかのように厳しいのです。そんなティベリウスと彼に続くカリグラ、クラウディウス、ネロといった、歴史的にあまり評価の高くない皇帝たちを取り上げる巻。

ローマ皇帝の中でも、カリグラとネロは飛びぬけて有名ですね。有名とは言ってももちろん悪い方でですが。カリグラはものすごいはじけっぷりだし、ネロは母親殺しと妻殺し、そしてキリスト教徒迫害。ローマ市内に放火。そんな2人と並んでいるところからして、ティベリウスやクラウディウスはどんな酷い皇帝だったんだろうって思ってしまうところなんですが~。
これが全然なんです。確かにそれぞれに悪かった点はあります。社交性に欠けていたティベリウスはそもそも人心を掴む努力を全然してないし、最後の10年はカプリの別荘に隠遁してしまったから、そのせいでローマっ子たちは見捨てられたと思ってしまうし... クラウディウスはすっかり自分の奥さんの言いなりになってしまうという情けなさ。再婚して奥さんが変わっても全然ダメ。でも、塩野さんの筆にかかると、それぞれなりに最善を尽くしたという感じになってしまうんですね。ティベリウスはローマ市民が大好きな催しを全然しなかったから人気は低迷してたけど、その分アウグスティヌスから受け継いだローマ帝国を健全な形に保つことには十分実力を発揮していたし、クラウディウスは元々歴史家だっただけに、皇帝という地位とその重責をよく分かっていて、カリグラが破綻させた財政をきちんと立て直してます。とてもじゃないけど、愚帝という感じじゃありません。
そして単なる愚帝と思わせないのは、カリグラとネロの場合も同様。まあ、黒字財政をたった4年で破綻させたカリグラの浪費っぷりとか、神に成り代わろうとするとこはさすがにどうかと思いますけど(笑)、カリグラの場合は、軍隊のマスコットボーイだった時代から描かれてますしね(カリグラというのは「小さな軍靴」という意味の愛称)、あの可愛かった少年が~!って感じで哀れだし、切ないんです。それにネロだって、いいことだっていっぱいしてるのに、ちょっとした失敗や時機を逸したことが大きく響いて、結局雪だるま式になっちゃったのね... という感じで、十分同情の余地あり。
普通の小説の悪役だって、実はそんなに悪い人間じゃなくて、むしろ主人公よりも人間的に深みを感じさせることだってあるし、それでも構わないんですけどね。評判の悪い皇帝たちのダメな部分を強調するだけでなく、人間的な部分をここまで描き出したというのはすごいと思います。でもね、暗殺されてその治世が終わるからには、後世までその悪名が轟いているからには、もっと憎々しい悪役の魅力というのも読んでみたかったなあ、なんて思ってしまったりするんですよね。ないものねだりなのは分かってるんですが。(笑)(新潮文庫)


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紀元前31年9月。アクティウムの海戦でアントニウスとクレオパトラの連合軍は敗北し、翌30年8月、エジプトに逃れていた2人は相次いで自殺。そして勝者となったオクタヴィアヌスはローマで3日間にわたる壮麗な凱旋式を行うことに。戦いの神・ヤヌスを祭る神殿の扉も閉ざされ、ヴェルギリウスやホラティウスといった詩人たちも平和への喜びを高らかに謳い上げ... この時、オクタヴィアヌスは34歳を迎えていました。

カエサル死後のローマを制した、ローマ初代皇帝・アウグストゥスを描く巻。
天才肌のカエサル亡き後、冷静沈着なアウグストゥスがいかに王政を嫌うローマ人の反感を買わずに、共和制のローマを帝政に変えていったのか、というのが興味の焦点。自分が持っていた非常時の権力を返上して、元老院に権力を取り返させるように見せておいて、巧妙に自分の地位を固めていくアウグストゥス。細かいことを1つずつ、決して焦らず、時期を見計らって着実に実行していくアウグストゥス。「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと思う現実しか見ていない」というのはカエサルの言葉ですが、アウグストゥスが選んだのは、見たいと欲する現実しか見ない人々に、それをそのまま見せるやり方。元老院も民衆もアウグストゥスが巧妙に作りかえていく社会を、これこそ自分たちの求めるものだと勝手に思い込んでたってことなんですねえ。カエサル自身が目指していたこととはいえ、実はこういった仕事ってカエサルよりもアウグストゥスの方が向いてたんじゃないかしら。カエサルだと弁舌さわやかに相手を言いくるめてしまいそうですけど、目立って仕方ないですものね。そのことからも、カエサルの人選は万全だったんだなあと改めて感じさせられます。カエサルの持つ華はアウグストゥスにはないんですけどね。文才もなく、弁舌の才能もなかったアウグストゥス。でも使う言葉は決して間違えなかった、というのがとても印象に残ります。

でもね、学生時代、毎年クリスマスになると行事で暗誦させられてた聖書のキリストの生誕場面にの最初に「そのころ、全世界の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た。これは、クレニオがシリアの総督であった時に行われた最初の人口調査であった。」というのがあって(ルカによる福音)、そろそろキリストが生まれるんだなーなんて思いながら読んでたんですが、16巻を読んでみると、紀元元年前後に国勢調査が行われたという事実はなかったんですって。びっくり! すっかり事実なのかと思い込んでましたよー。

それにしても... 16巻だけ書影が色褪せてキタナイ感じなのはなぜ?(笑)(新潮文庫)


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ルビコン川を渡ったカエサルと彼に従う第十三軍団は、何の抵抗も受けずに北伊属州と本国ローマをへだてる境界の町・リミニの城に無血入城を果たします。ここで待っていたのは、現職の御民官・アントニウスとカシウス。四千五百ほどの兵しか持たずに、しかも戦闘に不向きな真冬のこの時期にルビコン越えなどしないだろうというポンペイウスと元老院派の予測を完全に覆したカエサル。その後の行動にも迷いがなく、ポンペイウスをはじめとする元老院派の多くが首都ローマを脱出することに。

ハンニバルが言ったという「肉体のほうが先に成長してしまい、内臓の発達がそれに伴わない」という言葉が、その通りなんだなあと実感できてしまう時代。
塩野七生さんのカエサルへの愛情が感じられるのは前巻と同じなんですが、面白さという意味ではこっちの方が上だったかも。前の巻では、「ガリア戦記」以前の話は面白かったものの、肝心の「ガリア戦記」が今ひとつ面白く感じられなかったんですよねえ。それは塩野七生さんがどうこういうよりも、元々の「ガリア戦記」のせいのような気もしますが。というか、それ以前に自分のせいですね、きっと。ガリア人の民族名とか個人名が全然覚えられなかったので... 「ガリア戦記」の簡潔な文章は素晴らしいし、そこからはカエサルの頭の良さがうかがい知れて、そういうところはすごいです。
そして文章的、内容的には「ガリア戦記」に劣るとされているようですが、こちらの「内乱記」の方が、私には読み物としては楽しいようで~。基本的にカエサル視点で描かれているので、ポンペイウスには若干不利なのではないかと思うんですけど、それでもやっぱりカエサルの方が格上ですね。11巻では軍人として、12巻では政治家としてのカエサルの姿が余すことなく描かれていました。戦時では力を発揮しても平時には失策ばかりのアントニウスや、平時には力を発揮できる才能があるのに軍事的才能が乏しいために、軍事的才能が豊かな若者がつくことになったオクタヴィアヌスなどを見てると、カエサルの非凡さがよく分かるー。ほんと先の先まで読んでたんですね。そしてカエサルにコピーライターの才能もあったというのは、まさに!(笑)
カエサルの周囲には様々な人がいたわけなんですが、その中ではキケローの姿が印象に残ります。政治的信条からカエサルの敵にはなっても、友人であることは一貫して変わらなかったというキケロー。知識はあっても先読みができないキケローは、なんだか肝心なところで損してばかりだったようにも見えるんですけど、カエサルの友情を信じながらもドキドキしてるキケローが妙に愛嬌があって可愛いです。書くことが大好きだったというキケローの手紙の書きっぷりも楽しいし。そういうキケローを通して見えてくるカエサルの魅力、というのもいいですね。でもほんとカエサル暗殺は、本当に尻すぼみだったんですね...。これほどまでにお粗末な暗殺だったとは。情けない。(情けないといえばアントニウスやクレオパトラもね)(新潮文庫)


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紀元前100年、ローマの貴族の家に誕生したユリウス・カエサル。ローマ史上最大の英雄・カエサルはどのような時代に生まれて、どのような育ち方をしたのか。どのように世に出たのか。前半はカエサルの誕生から若い頃のエピソードを、後半は2000年経っても未だに世界中で読まれている「ガリア戦記」を中心に、有名な「賽は投げられた」のルビコン川までの、カエサルの前半生の姿を描き出します。

再読です。感想は以前書いたので今回は文章の抜書きだけ。塩野七生さんの文章も誰かの発言も入り混じってます。


「人は、仕事ができるだけでは、できる、と認めはしても心酔まではしない。」(8巻P.72)
「きみたちにはわからないのかね、あの若者の中には百人ものマリウスがいることを」(8巻P.79)
「読書の趣味は、経済的に余裕ができたからはじめる、というものではない」(8巻P.121)
「女とは、モテたいがために贈物をする男と、喜んでもらいたい一念で贈物をする男のちがいを、敏感に察するものである。」(8巻P.124)

「敵への不審だけででいる戦争とはちがって、政治は、敵でさえも信頼しないことにはできないのである。」(9巻P.89)
「戦争は、死ぬためにやるのではなく、生きるためにやるのである。戦争が死ぬためにやるものに変わりはじめると、醒めた理性も居場所を失ってくるから、すべてが狂ってくる。」(9巻P.91)

「復讐とは、彼にすれば、復讐に燃える側もその対象にされる側も、同じ水準にいなければ成立不可能な感情なのである。」(10巻P.21)
「だが、わたしが、お前たちの命よりも自分の栄光を重く見たとしたら、指揮官としては失格なのだ」(10巻P.91)
「ゲームと戦争は根本的なところでちがう。ゲームでの駒は思いのままに動かせる木片にすぎないが、戦争での駒は、感情をもつ人間である。ゆえに、形に現れにくく数でも計りがたい要素を、考慮にいれなければ闘えない"ゲーム"なのだ」(10巻P.97)
「他者から良く思われたい人には権力は不可欠ではないが、何かをやり遂げたいと思う人には、権力は、ないしはそれをやるに必要な力は不可欠である」(10巻P.177)
「ここを越えれば人間世界の悲惨。越えなければ、わが破滅」(10巻P.234)


前回はこの3冊を読んだ後に「ガリア戦記」にいってしまって「ルビコン以後」は結局読まなかったんですよね。今回はちゃんと読みます。(まだ入手してないけど)でも、同じ戦記でも、私にはカエサルよりもハンニバルvsスキピオの方がずっと面白かったな。やっぱり英雄には好敵手の存在が不可欠。でもカエサルにはカエサルだけで、好敵手と呼ぶのに相応しい人物がいないんですよね。それが物足りないです。(塩野七生さんのカエサルへの愛は十分感じるんですけどねー)(新潮文庫)


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紀元前146年カルタゴを滅亡させ、名実共に地中海の覇者となったローマ。しかし人間も都市も国家も帝国も、いつかは滅亡するもの。この時建国600年を経過していたローマに新たな難問が降りかかろうとしていました。第二次ポエニ戦役中に元老院に集中した権力が戦後もそのまま継続され、ローマ社会の貧富の差が拡大します。それは、かつてのように貴族に対して平民が政治上の権力の平等を求めるという段階を超えてしまっていたのです。紀元前2世紀後半のローマに現れたグラックス兄弟からマリウス、スッラの時代を経て、紀元前63年にオリエントを平定し終わったポンペイウスの時代までを見ていきます。

国外の問題が片付いたかと思えば、国内の問題が勃発するローマ帝国。「共通の敵」がいる間は強かった結束も、平和になるとお互いのことが気になってくるのはよくあること。「共通の敵」というのは、もしかしたら必要悪なのかもしれないですね。でもこの時点で既に建国から600年のこの時代だというのが驚き。日本だと徳川幕府でもこの半分の300年しか続いてないんですものねえ。
前の巻のみたいなワクワクする爽快感はないし、華やかなスキピオとカエサルの時代に挟まれてどちらかといえば地味だと思うんですけど、こういう時代をしっかり理解しておくことが、これからのローマの在り方を理解する上で重要になってくるような気もします。
それにしても、古代ローマ物は名前が同じ人物が多くて覚えにくいなーと思ってましたが、元々名前のバリエーション自体が少なかったとは。男性の個人名はガイウス、ティベリウス、グネウス、アッピウス、ルキウス、プブリウス、マルクス程度だったんですって。少なッ。で、5人目からはクイントゥス、セクストゥス、セッティムス、オクタヴィウス、デキウスって、ほんとそのまんま五郎・六郎・七郎... じゃないですか。しかも女性の個人名ともなると、家門名の語尾変化形に過ぎなかったとか。あれだけ神々の多い国なのに、しかもその神々が身近な存在なのに、その名前を借りようとは思わなかったんですね~。(新潮文庫)


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