Catégories:“歴史・時代小説”

Catégories: /

 [amazon]
江戸時代。浪人の家に生まれながらも幼い頃に両親に死に別れ、中山小十郎という長唄の唄うたいと、志賀山おしゅんという踊りの師匠という夫婦に引き取られた仲蔵。義母に踊りの手ほどきを受けた仲蔵は、一旦は15歳の時に日本橋本町の大きな呉服商に引き取られて堅気になるものの、19歳の時に再び芝居の世界に舞い戻ることになります。

実在の歌舞伎役者、初代中村仲蔵の物語。歌舞伎はもちろん演劇関係にとっても詳しい自称☆芝居道楽委員会の菊花さんに教えて頂いた本。既に新刊書店では手に入らない本なんですけど、ちょっと前に中古書店で見つけました。
歌舞伎役者の家に生まれなかった役者の苦労は話に聞きますけど、やっぱり相当なものですね。今とこの時代では、かなり状況が違うとは思うんですが、相当えげつない...。(特に男の嫉妬ってヒドイ) でも声質の悪さで出世は無理と言われた仲蔵も、義母譲りの踊りで足がかりをつかんで、一歩ずつ這い上がっていきます。苦労して苦労して、でも名のある役者に育った後も仲蔵が相変わらず「甘い」ままだったってところが良かったな。タイトルに「狂乱」とあるので、いつ狂ってしまうんだろうって心配してしまったけど...(^^;。
あと、さりげなく江戸時代の有名人物も絡んでくるところが面白かった!(これにはびっくり)
同じ歌舞伎物だと皆川博子さんの「花闇」の方が引き込まれたんですが(これも菊花さんに教えて頂いた本だ)、これもなかなか良かったです。歌舞伎とか落語とか、こういう日本らしい文化には一度きちんと触れてみたいな。と思いつつ、実際にはなかなかなんだけど...。(講談社文庫)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / /

 [amazon]
菊地秀行さんといえば、まず新宿を舞台とした例のシリーズのイメージだったので、これは意外でした! こういった時代小説も書いてらしたのですねー。そっちの作品に比べたら、官能的な描写なんてないも同然の硬派な時代小説。時代小説と言うより、怪談と言う方が相応しいかも。全部で9編入っていて、それぞれに幽霊が出てきたり、不思議な出来事が起きたり。

この中で一番好きだったのは、最初に入っていた「影女房」。辻斬りに殺された小夜という町娘の幽霊が、何も関係ないはずの久馬の家に乗り込んで仇討ちを頼むんですけど、久馬が諦めろと言うと、その前に断った侍を半病人にしたことを告げて、「あなたには、もっと酷い運命を与えて差し上げます」と脅すし、久馬の母親が女の噂を聞きつけて家に乗り込んでくると、誤魔化そうとする久馬を尻目に、「だって口惜しいじゃありませんか」と自ら名乗り出るし、挙句の果てに「私、負けません」なんて宣言しちゃう気の強さ。気の強い幽霊というのも結構いると思いますが、ここまで来ると逆に気持ちいいです。(笑)

それとこの短編集で面白かったのが、それぞれの短編によって幽霊の有り様が違うこと。例えば「影女房」の小夜は、幽霊なのに身体は暖かくて足もきちんとあるし、人間のできることは普通にこなすんです。辻斬りに斬られた傷口からは未だに血が溢れて出るんですけど、それが畳などに付くことはありません。でも他の作品に登場する幽霊は、また違うんですよね。手が氷のように冷たくて、血の跡を残していたり。例えば「足がないから幽霊」とかそんな風に決め付けられないんです。血を流してるから人間だ、という発言にも、「死人が、霊が血を流さぬと、誰が決めまして?」 確かにそうかもしれないですねー。日本の幽霊に足がないのが普通になったのも、そもそも丸山応挙がそういう絵を描いたせいですもんね。(笑) (角川文庫)


+既読の菊地秀行作品の感想+
「幽剣抄」菊池秀行
お正月休みの間に読んだ本(7冊)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / /

  [amazon] [amazon]
修道士カドフェルシリーズの17巻と18巻。現在発刊中なんですが、最終的に全21巻となることは既に決まっているので、これを読んでしまうと、あと3冊だけになっちゃうんですよねえ。なんか淋しいなあ。

さて、「陶工の畑」とは、聖書の「マタイによる福音」に登場する言葉。キリストを売って銀貨30枚を得たユダは、その後自分のしたことを後悔して首をつって死ぬのですが、その時にユダが神殿に投げ込んだ銀貨の扱いに困った祭司長たちは、「陶器職人の畑」を買って外国人の墓地にするんですよね。なのでキリスト教徒にとっては、どことなく不吉なイメージのある言葉。(陶工って、職人の中でも一番低く見られることがあるそうなんですが、きっとこの辺りが関係しているんでしょうね) そしてそんな題名が象徴するような事件が起こります。「陶工の畑」と呼ばれる土地に埋められていた女性の白骨死体は、一体誰の死体? 物語自体は、カドフェルシリーズらしいオーソドックスさなのに、謎の出し方がいつもとちょっと違っていて目新しい感じ。それぞれに愛する者たちを庇おうとするために、真実に辿り着くまでにかなり遠回りしてしまうことになります。
そして「デーン人の夏」は、「カドフェルまたしてもウェールズに行く」編。題名のデーン人というのは、平たく言えばデンマークから来たバイキングのこと。この頃にはアイルランドやスコットランド、ウェールズにも侵攻して、一大勢力となっていたようです。この作品では、3巻「修道士の頭巾」に登場した見習い修道士のマーク、9巻「死者の身代金」に登場したオエイン・グウィネズが再登場して嬉しい限り。終生住む場所はシュルーズベリの修道院と心を決めているカドフェルも、時々旅をしたくて堪らなくてうずうずするようで、ウェールズ旅行がもう楽しくて仕方ないみたい。今回は背景事情も人間関係も複雑で、冒頭で思わぬ苦戦をしてしまったんですが(3回も読み直す羽目に...)、途中からは面白くて止まりませんでしたー。そういえば「死者の身代金」もすごく面白かったし、エリス・ピーターズ自身、ウェールズとなると執筆にかなり力が入るのかも。(笑) (光文社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「聖女の遺骨求む」「死体が多すぎる」「修道士の頭巾」...ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「聖ペテロ祭殺人事件」エリス・ピーターズ
「死を呼ぶ婚礼」エリス・ピーターズ
「氷のなかの処女」エリス・ピーターズ
「聖域の雀」「悪魔の見習い修道士」エリス・ピーターズ
「死者の身代金」「憎しみの巡礼」エリス・ピーターズ
「秘跡」「門前通りのカラス」エリス・ピーターズ
「代価はバラ一輪」エリス・ピーターズ
「アイトン・フォレストの隠者」エリス・ピーターズ
「ハルイン修道士の告白」エリス・ピーターズ
「異端の徒弟」エリス・ピーターズ
「陶工の畑」「デーン人の夏」エリス・ピーターズ
「聖なる泥棒」「背教者カドフェル」エリス・ピータース
「修道士カドフェルの出現」エリス・ピーターズ

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

  [amazon] [amazon]
18世紀前半。ヴェネツィアで6年間の大学生活を終えて家族のもとに戻ってきたユダヤ人青年・エリヤーフーが目にしたのは、思っていた以上に閉鎖的なユダヤ人社会と、ユダヤ人に対する激しい差別。そして、貴族の青年と決闘する羽目になり、決闘には勝つものの酷い拷問を受けることになったエリヤーフーを助けたのは、後にマリア・テレジアと結婚することになるフランツ。フランツの元でエリヤーフーはユダヤ人であることを捨て、エドゥアルトという新しい人間として生き直すことに。

「ラインの虜囚」に引き続き、西洋の冒険活劇。「スカラムーシュ」(感想)に続いて信兵衛の読書手帖の信兵衛さんに教えて頂いた本。今回はハプスブルク家のオーストリアを背景に、ユダヤ人からオーストリア人になろうとした青年を描いた歴史物語です。
読んでまずびっくりしたのは、ユダヤ人に対する差別の凄まじさ。ユダヤ人がキリスト教徒に忌み嫌われる理由は分かってるつもりだし、長い歴史の間差別され続けてきたこともナチスドイツがしたことも、知識として知ってはいたんですけど、思っていた以上でした。留学先のイタリアではそれほど差別意識がなかったようだし、地域的にかなり差はあったようなんですが、やはりドイツやオーストリアでは酷かったんですねえ...。でも差別されているユダヤ人は、決して卑屈になってないし、ユダヤ人に生まれたことを悔やんでもいないんですよね。それどころか、あくまでも誇り高く生きていて、その姿はアーリア人に対する逆差別に見えるほど。それはユダヤ人を捨てたエドゥアルトに対するユダヤ人たちの態度からも良く分かります。でもここでポイントとなるのは、エドゥアルトが人生をかけたハプスブルク家が、ユダヤ人を決して認めるわけにはいかない家だということ。
主人公のエドゥアルト自身はもちろん、彼の人生に深く関わっていくフランツやマリア・テレジア、フリードリヒ2世といった実在する人物たちもそれぞれ魅力的に描かれていたし、畳み掛けるようなテンポの良さもあってすごく面白かったです。マリア・テレジアに関しては、マリー・アントワネットの母親でオーストリアの女帝だということぐらいしか知らなかったし、フランツに関しても「マリア・テレジアの夫」という認識しかなかったので、そういう意味でも色々と面白かったなあ。エドゥアルトという人間は架空の人物だと思うんですけど、見事に歴史的事実の中に溶け込んでますね。

藤本ひとみさんの本は初めてだったんですけど、いいですねえ。すぐには読めそうにないんですが、柊舎のむつぞーさんに教えて頂いた「ブルボンの封印」もいずれ読みたいと思ってます。やっぱり冒険活劇は大好き。デュマの「ダルタニャン物語」も読みたいな。(文春文庫)

| | commentaire(4) | trackback(0)
Catégories: / / /

 [amazon]
19世紀初頭のパリ。父の訃報を持ってカナダからフランスに渡ったコリンヌは、祖父であるギイ・ド・ブリクール伯爵に会いに行くのですが、勝手にカナダに出奔して原住民と結婚した息子のことを、伯爵は既に息子とは認めていませんでした。伯爵はコリンヌに、パリの東北東、ライン河岸に立っている古い塔に幽閉されている人物の正体を調べれば、コリンヌを孫娘として認めると言い出します。実は9年前にセント・ヘレナ島で亡くなったというナポレオンが実はまだ生きていて、その塔に幽閉されているという噂があったのです。

「小学校最後の夏休みの冒険譚」みたいなのばかりで、ちょっと飽きがきてたミステリーランドなんですが(失礼)、これはまるで違う西洋史物。しかも冒険活劇。ふわふらのともっぺさんから、「三銃士」や「紅はこべ」が好きならきっと気に入ると教えて頂いたんですが、確かにこれはいい! 楽しかったです。目次からして、第一章「コリンヌは奇妙な命令を受けパリで勇敢な仲間をあつめる」、第二章「コリンヌは東へと馬を走らせ昼も夜も危険な旅をつづける」なんて説明口調。どことなく懐かしくて楽しいし、子供のためのレーベルであるミステリーランドに相応しい良質な作品だと思います。あとがきには、なぜ田中芳樹さんがこういう物語を書こうと思ったのかも書かれていて、その気持ちにもとっても納得。
ナポレオンが生きているという噂は本当か? という大きな謎はもちろん、爵位にも財産にも興味のないコリンヌが、なぜ伯爵の言う通りにするのか、そしてなぜ伯爵がそのようなことをコリンヌにやらせるのかなどちょっとした謎もいくつかあって、それらが全てきちんと解決されるのが気持ち良かったです。そしてコリンヌがパリで見つける3人の仲間も、アレクサンドル・デュマやカリブの海賊、ジャン・ラフィットといった実在の人物なんです。そういう風にきちんとした歴史の中に架空の人物を放り込んで活躍させるような話って大好き。子供には勿論、大人が読んでも十分楽しめる作品です。(講談社ミステリーランド)

| | commentaire(4) | trackback(1)
Catégories: /

  [amazon] [amazon]
退屈姫君の新作が...!ということで、早速読もうと思ったのですが、そういえば風見藩絡みの「おんみつ蜜姫」もまだ読んでなかったのを思い出して、せっかくなので合わせて読んでみました。
「おんみつ蜜姫」の時代は8代将軍吉宗の治世。蜜姫は九州豊後の小藩のお姫さまで、退屈姫君の時代からすると、風見藩の先々代藩主に当たる時羽光晴と結婚することになるので、およそ70年ほど遡ることになります。(退屈姫君は、10代将軍家治の頃)
父が刺客に狙われ、それが将軍吉宗の放った刺客だと思い込んだ蜜姫が、藩を出奔して大活躍。幕府転覆の陰謀あり、忍びの暗躍あり、海賊騒ぎあり、諏訪湖に眠る武田の軍用金ありと盛りだくさんのストーリーで、相変わらずの軽妙な語り口と、味のある登場人物たちの会話が楽しい作品です。特に吉宗と大岡越前の会話が、まるで「大岡越前」か「暴れん坊将軍」でも見てるようで可笑しいんですよね。しかも、時羽光晴がなんであんな変な決まり事を作ったのかずっと不思議に思ってたんですが、ようやく謎が解けました♪

そして「退屈姫君恋に燃える」は、前作「退屈姫君海を渡る」(感想)の続編。確か「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「面影小町伝」で3部作になってたと思うんですけど、いつの間にか「退屈姫君シリーズ」になってたんですね! やっぱりめだか姫、可愛いですものねっ。まだまだ続編が期待できそうで嬉しいな。
今回のタイトル「恋に燃える」で、「えっ、めだか姫が恋...?!」とびっくりしたんですが、恋は恋でも、めだか姫自身の恋ではありませんでした。(ほっ) 大名のお姫さまと風見藩の冷飯の青年の恋です。めだか姫が絡んできたことから、田沼意次に睨まれることになって... やっぱりこのシリーズは田沼意次との対決も欠かせないですね! で、またしても無理難題をふっかけられて、さあ大変。
田沼意次に関しては「退屈姫君伝」の時の方が生彩があったように思うし、無理難題の解決もその時の方が鮮やかだったと思うんですが、でも今回はめだか姫の姉の猪鹿蝶三姉妹が、頑張ってくれてます。ものすごい姉さんたちでした。

今回のこの2冊も、ほんと楽しかったです。楽しい時代物といえば、これと畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズが双璧ですね。やっぱり米村圭伍さんの時代物は大好き。未読の作品も全部読もうっと。(新潮社・新潮文庫)


+既読の米村圭伍作品の感想+
「退屈姫君 海を渡る」米村圭伍
「おんみつ蜜姫」「退屈姫君恋に燃える」米村圭伍
「紀文大尽舞」米村圭伍
Livreに「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「面影小町伝」の感想があります)

| | commentaire(4) | trackback(3)
Catégories: /

     [amazon]
これだけ表紙を並べると、圧迫感がありますね...(^^;。
1巻2巻は、摂関藤原家に繋がる武門の出ながらも、父の代から奥六郡にほど近い亘理に退けられていた藤原経清が主人公。3巻4巻はその忘れ形見・清丸(藤原清衡)の、そして5巻は清衡の曾孫に当たる藤原秀衡の物語。私は見てないのですが、以前NHKの大河ドラマになってるので、ご存知の方も多いかもしれませんね。同じく高橋克彦氏の「火怨」(感想)「天を衝く」(感想)と並んで陸奥三部作と呼ばれる作品。どうやらこの「炎立つ」が一番最初に書かれたようです。
陸奥三部作の1つとして、これも面白かったです。でも、ちょっと長かったかな...。

この中で一番魅力的だったのは、1~2巻で主人公だった藤原経清。すごくかっこ良かったです。しかも彼と源義家の関係が、ちょっぴり「火怨」の阿弖流為と坂上田村麻呂みたいでもあるんですよ。(あそこまでではないですが) なので、経清の代の終わり頃は辛かった... 続く3巻4巻は、不遇の環境にあった清衡を義家が助けて家を再興させる話なので、これも普通に面白いです。でも、ここで話はすっかり終わったような気がしてしまうんですよね。
5巻では源義経や弁慶が活躍するのですごく楽しいんですが(頼朝はやっぱりヤなヤツだ!)、こんな風に繋げて書く必要はあったのでしょうかー。平泉の藤原三代の栄華の祖が藤原経清であったと、言いたいのは分かるんですけど、これは独立させても良かったような。 ...と思いながら読んでたんですが、最後まで読み終えてみると、これで良かったのかもしれないなあ、なんて思ったり...(^^ゞ

「天を衝く」の九戸政実みたいに、何をやらせても超人的にずば抜けてるということもなく... あれはあれで爽快で好きなんだけど...(笑) 強さも弱さもある蝦夷たちの存在がとても人間的でした。途中何度かダレたし、↑上にもなんか混乱したことを書いてますが(^^;、やっぱりこれも良かったです。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

| | commentaire(2) | trackback(0)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.