Catégories:“歴史・時代小説”

Catégories: / / /

 [amazon]
長屋に女の幽霊が出ると聞いた岡っ引の長次は、下っ引きの宇多に調べるように言いつけます。その幽霊は近頃息子と娘を失ったばかりの大和屋由紀兵衛の持つ長屋に出るのだというのですが... という「恋はしがち」以下、全6編の連作短編集。

9人の幼馴染たちの物語。下っ引きの宇多、岡っ引きの長治の娘のお絹、大和屋由紀兵衛の息子・千之助とその妹・於ふじ、大工の棟梁の娘のお染、野菜のぼて振りの弥太、叔父の口入屋の手代をしている重松、茶屋の看板娘のおまつ、裕福な煙管屋の娘・お品。この話が始まる時点で千之助と於ふじは既に亡くなってしまっていて、大きな流れとしてはこの2人の亡くなった事件のミステリですが、むしろ青春小説といった感じでしょうか。

小さい頃は男女の区別もなく毎日のように遊び回っていた9人も、今やもうお年頃。それぞれの生活が忙しくてなかなか会えなくなるし、お互いを男や女として意識するようにもなります。そこで上手く「思い思われ」になればいいんですけど、9人ですしね。なかなか上手くいかなさそうだなという予想通り、実際それぞれの思いはすれ違い... そうこうしてるうちに仲間を失ってしまったり。
大人になるってこういうことなのよね、なーんて切ない感じが前面に出てるのはいいんですけど... やっぱり9人というのは多すぎやしませんかねえ。せいぜい7人なんじゃ? 区別がつかなくて困るってほどではなかったんですけど、それほど9人の描き分けができているとは思えなかったし、逆にそれぞれのイヤな面は目についてしまったりで、感情移入できるような人物はいなかったな。せっかくなのにあまり楽しめず、ちょっと残念でした。(光文社)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
ロナアルワとダカルの事件も一件落着。翠蘭は、ガルやラセルと共に馬を飛ばしてヤルルンの聖寿大祭を目指します。そして祭りの当日、ソンツェン・ガムポと再会することに。

「風の王国」シリーズ16冊目。
前巻までの話も一段落して、この作品から新章スタートってところです。今までちょっと緊張関係にあった翠蘭とガルも、ここに来て一緒に国を盛り立てて行こうとしてるようですね。そして今回の見所は、史実通りに進んでいくための重要なステップとも言うべき翠蘭とソンツェン・ガムポとのやり取りなんですが... これにはちょっとびっくりだったんですけど、この展開はソンツェン・ガムポの狸オヤジぶりにぴったりだ。(笑) まあ、この理由には納得だし、確かにその流れでこうなるのが一番自然かもしれないですね。
そして翠蘭は西国シャンシュンを訪れることになるんですが... ここで「河辺情話」で尉遅慧を案内したカロンが再登場! でもプロローグである程度予想はしてましたけど、シャンシュンは相当酷い状態のようで...。リク・ミギャ王って、この見たまんまの人なのかしら? リク・ミギャに嫁いだリジムの妹・セーマルカルは、未だに「清楚で可憐な乙女」で「礼儀正しく、周りの者に対する思いやりもある」ままなのかしら。上下巻でもないのに、またしても「続く」で終わっちゃったんですけど、まあ、ここまで来たら別にいっかーってなところです。(集英社コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

 [amazon]
隋の大業13年(西暦617年)。ほぼ300年ぶりに中国全土統一を果たしたにも関わらず、2代目皇帝・楊広の3度に渡る高句麗遠征失敗のため、隋の皇帝の権威は完全に失墜。国中で反乱が起こり、皇帝は都を捨てて江南の地へと逃れて酒色に溺れる日々を送っていました。楊広の母方の従兄にあたる唐公・李淵もまた、長男・建成、次男・世民の力に支えられて決起します。その頃、「龍鳳の姿、天日の容なり。年二十に至れば、必ず世を済い、民を安んずるべし」と言われた李世民は20歳となっていました。

後に唐の太宗皇帝となる李世民が群雄割拠の時代に決起、中国全土を統一して覇権をとるまでを描く歴史小説。いやあ、読み応えがありました。これがこの小前亮さんのデビュー作とはびっくり。
題名は「李世民」だし、確かに最終的に覇権を取るのは李世民なんですけど、李世民が主役の物語というよりも群像劇ですね。李世民は確かに若き英雄として描かれてるんですが、他の群雄と同じ程度の扱い。だから、もちろん群像劇としての面白さはあるんですけど... うーん、李世民をもう少し人間的に掘り下げて欲しかったかなあ。そもそも出番が少ないし、なんだか李世民の人物像をふくらませるより、父親の李淵の無能ぶりを強調して李世民を引き立たせてるみたい。みんなが一目見て納得するような「真王」ぶりが今ひとつ伝わってこなかったのが残念だったんですよね。それを考えると、作品そのものもどこか決定的な盛り上がりに欠けてたような気も...。戦争の場面の描写には迫力があるし、メリハリも利いてるのになんでだろう。各武将についてのエピソードも分かりやすく配置されてるし、章が変わるたびに新しい勢力図が挿入されてるから情勢の変化も掴みやすいのに。もしかしたらその「分かりやすさ」への配慮が裏目に出て、勢いがなくなっちゃったのかしら。
でも、一番の興味だった兄・李建成との決着のつけ方は良かったです。李建成の人物像にも、世民と建成が2人並び立って父を支えてるという構図にもすごく合ってるし、これはすごく納得できました。それにここで思い悩むこの李世民はとても人間的。こういうところをもっと早く前面に出してくれれば良かったのに。
この方、他にも宋や明の時代の作品を書いてらっしゃるみたいだし、いずれそちらも読んでみたいな。この李世民が皇帝になった後の話もぜひ書いてほしいですー。(講談社文庫)

| | commentaire(2) | trackback(1)
Catégories: /

 [amazon]
あるうらぶれた老人のもとを訪ねた客。老人の出す茶の香りや味が普通のものとはまるで違うと客が気づいたことから、老人はかつて金陵一と言われた妓女・王月生の話を始めます... という「朱唇」他、全7編。

井上祐美子さんの作品を読むのはほんと久しぶり。ブログを始めて5年目に入ってるんですけど、ブログには全然井上祐美子さんの本の感想がないことに気がついて、さっきちょっと呆然としてしまいました...。サイトを始めてから読み始めた作家さんなので、そっちには全作品の感想があるんですけどね。(サイトを始めたのは8年前かな) なんと新作が5年以上出てなかったってことなんですねえ。ええと、この「朱唇」は、唐代や明末期から清にかけて生きた妓女たちの物語。7編のうち「断腸」という作品だけは妓女ではなくて、そういった楼閣に生きる男が主人公なんですが、どの物語にも妓女が登場します。妓女といえば、宮尾登美子さんの昭和初期の土佐高知の色街を舞台にした一連の作品も好きだったなあーと懐かしく思い出すんですが、これは宮尾さんの作品のようなどろどろとした愛憎渦巻く世界とはまた全然違う雰囲気。

ここに登場する妓女たちはそれぞれに艶やかな美貌の持ち主。個性はまるで違うんですが、それぞれに美しくて芯の強い彼女たちの姿がとても魅力的。でもどれほど美しくて教養があっても、素晴らしい技芸の持ち主でも、時がたてば容色は衰えるし、見向きもされなくなるんですよね。花の命は短くて、です。一流の妓女となるような女たちはそのことをよく知ってます。だからこそ、自分の一番美しい時期を大切に生きているのでしょう。プライドの高さも、傍目には無礼に感じられる行動も、単なる我侭だけでなくて、それだけ自分の気持ちや誇りを大切にしているという証。
この中で特に強く印象に残ったのは牙娘と李師師かな。李師師といえば水滸伝にも出てきましたねえ。この妓女は結局誰だったのだろうと余韻の残る「名手」も良かったです。 (中央公論新社)


+既読の井上祐美子作品の感想+
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / /

 [amazon]
新姚県の知事が難癖をつけては罪もない士人を捕縛して牢に押し込めたがるというという噂が朝廷に届き、越州へと向かった巡按御史一行。そして新姚県に入って早くも3日目で、希舜と伯淵は宿に踏み込んできた羅卒によって政庁へと引き立てられてしまいます...という「黄鶏帖の名跡」他、全5編。

「十八面の骰子」に続く巡按御史のシリーズ第2弾。少年のような見かけながらも実は25歳の巡按御史・趙希舜、長身に美声ながらも拳法の達人でもある希舜の弟分・傅伯淵、希舜の父に用心棒として雇われた賈由育、そして伯淵に惚れて女細作として同行するようになった燕児の4人組が活躍する連作短編集です。ええと、巡按御史というのは、天子直属の監察官。身分を隠して任地へ赴き、秘密裏のうちに地方役人の不正の有無を吟味する役目。身分を証明するためには「先斬後奏」「勢剣」「金牌」という3つの品を常に携行しています。
要するに水戸黄門的勧善懲悪物なんですが(笑)、中華ミステリの森福都さんらしく、「蓬草塩の塑像」ではアリバイトリック、「肉屏風の密室」では文字通り密室トリックといったように、ミステリ的にも十分楽しめるのがポイント。一行がどこに行っても温信純という男の存在が不気味に見え隠れして、女流賊・行雲とその手下2人も事あるごとに現れます。それに希舜がなぜ巡按御史になりたいと思ったのか、どんな出来事があったのか、という前作を読んだ時に知りたいと思っていたこともぽつぽつと語られるので、前作「十八面の骰子」を読んでおいた方が断然楽しめるでしょうね。と言ってる私自身が「十八面の骰子」の細かい部分をすっかり忘れていたりするんですが... 文庫が出たら買うつもりにしていたのに、すっかり抜けてたみたい。チェックできませんー。(それにしても文庫本の表紙の雰囲気が単行本と全然違うのにはびっくり。なんと宇野亜喜良さんでしたか。)
悪役との決着もまだついてないし、5編目「楽遊原の剛風」のラストは、いかにも続きがありそうな終わり方。続編にも期待です。(光文社)


+シリーズ既刊の感想+
「十八面の骰子」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「肉屏風の密室」森福都

+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

| | commentaire(6) | trackback(1)
Catégories: /

  [amazon] [amazon]
「風の王国」シリーズ14冊目と15冊目。『初冬の宴』から続く一連の話は次刊で終わります... と前巻のあとがきに書いてあった通り、ここのところずっと続いていた一連の話にもようやく終止符が打たれることになります。「花陰の鳥」「波斯の姫君」も本編じゃなかったから、本編として話にきっちり一区切りがつくのは本当に久しぶり! でも一連の流れの一区切りともなると、何を書いてもネタバレになっちゃう...。ええと、ネタバレにならないように書けることだけ書くと。
なるほど、こうやって決着をつけるわけですね~。不審な動きをしていたロナアルワに関しては、ほぼ想像通りの展開になってました。そういう話や展開は本当はあまり好きじゃないし、逆にものすごく苦手だったりするんですが、なかなか後味のいい結末を迎えてくれましたよ。よかったー、ほっとしました。それと、その後一体どんな風に話が続いていんだろう?と思ってたんですが、なるほどこういう風に流れていくわけですね。心配してたんですけど思ってたよりもずっといい感じです。
さて次はヤルルンだ! 一時はもう読むのをやめようかと思ったんですけど、こうなったら最後まで付き合いますよ~。(集英社コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: /

  [amazon] [amazon]
ようやくツァシューに帰り着いたリジムと翠蘭。しかしほっとする間もなく、間近に控えた聖寿大祭のために多くの人々が城を訪れ、リジムも翠蘭も多忙な日々を送ることになります。朱瓔たちの婚約式は聖寿大祭の3日後に執り行われることになり、その時に吐谷渾の王族でありガルの義弟でもあるケレスとジスンの弓競べ、そして城下の子供たちの剣の試合が行われることになるのですが...。

「風の王国」シリーズ12冊目と13冊目。
久々の本編再開なんですが、なんだか低調... 特に「初冬の宴」は大きな波乱もなくて思いっきり失速してました。小さなトラブルは沢山あるし、それを翠蘭たちが1つずつ解決しようとはしているんですけど... 聖寿大祭や婚約式というイベントを控えて忙しい日々ではあるものの、言ってみればただ単に日常の風景といった感じ。この「初冬の宴」の最後でようやく大きな波乱が起きようとするんですが、それもあっさり「金の鈴」に持ち越されてしまうし。この2冊、なんで副題が違うんでしょう。同じ題名の上下巻にした方が良かったのでは?
そして「金の鈴」。「初冬の宴」の最後の波乱もあっさり片がついてしまって、逆にあっけないぐらい。こちらも日常の風景が続くんですが... でもこちらはそこはかとなく不安感が漂ってます。と思ったら、最後の最後で爆弾が! うわー、これはどうなるんでしょう。本当なのかな。そしてあとがきには「『初冬の宴』から続く一連の話は次刊で終わりますので」という言葉。その次の巻はもう出ていて私も持ってるんですけど、これが上巻なんです。気になるけど、上巻だけ読むというのもねえ。来月上旬に下巻が出るので、上下揃ったら一気読みする予定です。(集英社コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

| | commentaire(0) | trackback(0)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.