Catégories:“歴史・時代小説”

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長年大切に扱われてきた器物の中には、百年を経ると妖(あやかし)と化して力を得て、つくも神となるものがあります。お紅と清次の姉弟が切り回している小さな古道具屋兼損料屋・出雲屋には、そんなつくも神となった古道具がいっぱい。そしてそんなつくも神となった品物は売り払われることなく、日々様々な場所に貸し出されているのです... という連作短編集。

お紅と清次の店にあるつくも神は、掛け軸の月夜見(つくよみ)、蝙蝠の形をした根付の野鉄、姫様人形のお姫、鷺の煙管の五位、櫛のうさぎ、金唐革の財布・唐草といった面々。大切にされてきた古い品がつくも神になるという設定はいいと思うし、実際このつくも神たちとなった品々が愛嬌あるんです。お紅と清次もいい感じだし、そこまでは順調。とっても可愛らしい話になりそうでワクワクしちゃう。でも、そこからが... うーん。
肝心のつくも神たちと人間2人の距離が、なんだか中途半端な気がしちゃうんですよねえ。つくも神たちは、お紅と清次を気にせず喋りまくってるけど、2人に話しかけられた時は返事をしないと決めてます。2人が何か知りたいこと、つくも神たちに調べてもらいたいことがある時は、つくも神たちの前でわざとらしく話題にしてから、つくも神たちを関係各所に貸し出すんです。
この話が「しゃばけ」シリーズとはまた違うのは良く分かってるし、これもまた決まりごとの1つだとは思うんだけど...
つくも神たちが「人間とは決して話さない」と決めてる根拠が、イマイチ薄くないですか? なんだかすっきりしないんですよね。お互いのやり取りが遠まわし遠まわしで、どうにも不自然だし...。しかもつくも神たちが期待したほど活躍してくれなくて、結局単に噂集めをしてるだけ。
...というのは、まあ、読んでいるうちにだんだん気にならなくなってくるんですが。

やっぱりこのラスト、あまりにあっさりとしすぎてやいないでしょうかね? あれだけ「蘇芳」「蘇芳」って騒いでいたのに、途中経過の一波乱二波乱もなく、これだけですか? うーん、正直言って拍子抜け。可愛らしい話なんですけどねえ。それだけに、もう一捻り欲しかったなあ。(角川書店)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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オスマントルコ時代の著名な建築家・シナンは、1488年にトルコのカッパドキア地方の小さな村に生まれ、24歳の時にデヴシルメという少年徴集制度によってイスタンブールへ、オスマントルコを巨大な帝国としたスルタン、スレイマン大帝の下でなんと477もの建築作品を作ることになったという人物。キリスト教徒だったシナンが、信仰を変えてまでデヴシルメに志願したのは、イスタンブールに出て聖(アヤ)ソフィアをその眼で見てみたかったため。聖ソフィアはその当時でこそイスラムのジャーミー(モスク)となっていましたが、元は1千年前にキリスト教徒が建てた建物。村にいたキリスト教の神父から、聖ソフィアこそが人が造り出した最も神がよく見える場所だと聞いて以来、シナンはそれを自分の眼で確かめたいと思っていたのです。

トルコで最も偉大な建築家と呼ばれるシナンの一生を追った小説。元々トルコにはすごーく興味があるし、この小説もとても面白かったのだけれども... うーん、夢枕獏さんの小説を書くときの癖のようなものが気になった作品でもあったかな。それは小説を通して作者の存在が強く感じられてしまうということ。例えば「陰陽師」や「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」のような、日本もしくはそれに近い環境の小説の中では、それもまたいいと思うんですけど、こちらは舞台がオスマントルコですからねえ。なんだか舞台裏を見せられているようだったし、必要以上に作り物の部分を意識させられてしまって、いつもみたいにすんなり物語の中に入り込めなかったかな... それがちょっと残念でした。それに、歴史小説というのは作者がいかに人物を作り上げるかにかかっていると思っているんですけど、その辺りでも掘り下げ方が少し物足りなかったです。シナンとハサン、ザーティといった人物との友情はあるんですけど、例えばシナンの恋愛観なんかについては全く触れられていないですしね。スレイマンとロクセラーヌ、そしてイブラヒムやハサンの辺りは面白かっただけに、肝心のシナンについてももっと作りこんで欲しかったところ。...とは言っても、やっぱり読みやすかったし面白かったんですけどね。期待しすぎちゃったかな。あ、あとシナンの持ってる神の概念自体には私とかなり近いものを感じたんですが、聖ソフィアの不完全さとサン・マルコ寺院における神の不在についてはすごく意表を突かれて面白かったです。それに最後は感動的。そうそう、こういう物語の色気(?)みたいなのが欲しいんですよ~。(中公文庫)


+既読の夢枕獏作品の感想+
「陰陽師 龍笛の巻」夢枕獏
「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」夢枕獏
「陰陽師 鳳凰ノ巻」夢枕獏
「『陰陽師』読本 平安の闇に、ようこそ」夢枕獏
「シナン」上下 夢枕獏
(Livreに「猫弾きのオルオラネ」「羊の宇宙」「大帝の剣」「陰陽師-付喪神ノ巻」「陰陽師-生成姫」「陰陽師-鳳凰の巻」の感想があります)

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やり場のない怒りを抱えて家を飛び出し、粗末な小船を操っていた二郎が、一羽の翡翠に導かれるようにして辿り着いた場所は、まるで桃源郷を思わせるような満開の桃林。そしてその桃林で、10年ぶりに幼馴染だった七娘と小妹と再会します。七娘は金色の毛の猿に、小妹は白虎にそれぞれ導かれてこの地にやって来たのです... という「楽昌珠」他全3編の連作短編集。

簡単に言ってしまうと、久しぶりに再会した幼馴染たちが、酒を酌み交わしながら宴を囲んでいるうちにふと寝入ってしまい、夢とは思えないほどリアルな夢を見るという話。この夢の中では、科挙に受かって立身出世をしたかったという二郎の夢が叶っていて、唐の武則天の時代の権謀術数渦巻く宮中にいるし、現実の世界では怪我をしていたはずの七娘はピンピンしてるし、小娘が妓楼に売られるなんてこともないんですよね。3人の名前も年齢も、桃林と夢の中では違うし、3人の関係だって全然幼馴染じゃないんです。この宮中でのドロドロとした話が面白い! 桃林に元々現実味のあまりなかっただけに、本当はどちらが現実なのか分からなくなってしまうほど。久々に森福都さんらしい話だなあ~と嬉しくなっちゃう。この作品には高力士も登場するんですが、以前の作品の設定とはまた全然違っていて、ニヤリとしてしまうし。
...でもね。これで終わりなのでしょうか? あの桃林には、結局どういう意味があったの? あの3匹の動物たちは? 3人はただ現実逃避をしていただけだったのか、それとも...? 本としては、一応これで完結してしまったみたいなんですけど、これじゃあ話としてちゃんと落ちてないですよね。それともこれで本当に終わりなのかしら。ええと、最後のあの思わせぶりな書きっぷりは回想シーンじゃなくて、新しい環が始まったってことなんでしょうか。もしそうだったら、今度は実は弄玉があの有名な妃だった、なんていうのも楽しいと思うんですが...。
これはぜひとも続編をお願いしたいものです。このまま放り出されたら、落ち着かないわ~。(講談社)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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与次郎が語ったのは、言い伝え通り恵比寿像の顔が赤くなった時、1つの島が滅んだという話。それを聞いて正馬と惣兵衛は非合理な話だと強く否定し、剣之進1人があり得ることだと反論。剣之進は実際にその話の証拠として「豊府紀聞巻四」を見つけてきます。しかしそれでも正馬と惣兵衛は、確かに恵比寿像の顔が赤くなった後に天変地異が起きたのかもしれないが、その2つの出来事の因果関係が証明されたわけではないと言うのです。結局4人は薬研堀のご隠居のところに話を聞いてもらいに行くことに... という「赤えいの魚(うお)」他、全6編の収められた短編集。

一体いつ以来...? の京極作品。京極堂のシリーズの方だって、あんなに夢中になってたのに、「宴の始末」辺りから気持ちが離れ始めて、結局「邪魅の雫」も読まなかったんですよねえ。でもこの作品はともっぺさんにとても良かったと教えていただいて、読んでみました。「続巷説~」がとても綺麗に閉じていてすごく良かったので、あれ以上一体何を書いたんだろう?って思ってたんですけど、ともっぺさんも読む前は似たようなことを感じてらしたのに、読んでみたらすごく良かった~と仰ってたので。
「憑き物」を落として人を正気に戻す京極堂シリーズに対して、こちらは「憑き物」を利用して人を正気に戻すシリーズ。でも時代は既に明治となっていて、今までの話とはまた趣向が違いました。百介はもうすっかり老人だし、文明開化の時代を生きる4人の若者たちが中心。

最初のうちは、それぞれに確かに面白いんだけど、同じパターンが続くなあ... って感じだったんです。でもね、最後の「風の神」が良かった! きっとこの部分を書きたかったんですね、京極さんは。「彼岸」と「此岸」に関する部分がしみじみと良かった。百介が又市たちと過ごしたのはほんの数年間のこと。その後又市たちは百介の前に姿を現さなくなって、百介自身は又市たちに見捨てられてしまったように感じてるんですが、でもそれはきっと本当は全然違うんですね。大きな愛情が感じられるなあ。もしかすると又市たちにとって、百介は最後の良心だったのかも。江戸から明治へと移り変わった時代の中で、最早妖怪に用などなくなってしまったというのは、どうも寂しいんですが、やっぱりこの境目の時期だからこその話だったんだなあ。(なんて言ったら京極堂のシリーズはどうなんだ?なんですが)
あ、京極堂のシリーズに直接繋がる人物も複数登場してました。結局のところ、全部そっちに流れ込むってことなのね。(笑) (角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「巷説百物語」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「続巷説百物語」京極夏彦
「後巷説百物語」京極夏彦

+既読の京極夏彦作品の感想+
「百器徒然袋-風」京極夏彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります

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虫がついた葉を切ろうとして、丹精こめて育てていたひょうたんのつるそのものを切ってしまい、落ち込むサキ。しかしそんなある晩、サキの夢の中にそのひょうたんが出てきます。夢の中のひょうたんはつるを切られてなどおらず、つっかい棒をつたって元気に壁を登っていました。それからというもの、ひょうたんは毎日のように夢に登場し、どんどん伸びて花が咲き、実がなります。サキは夢の中のひょうたんをもいで加工、夢の中の部屋に飾ることに。そしてもう夢も終わりだろうと思ったその時、ひょうたんを持っていたサキは空に浮かんだのです。そのまま窓の外に出て、空を飛んでいたサキが降り立ったのは、古い時代の武蔵の国。そこでサキは不破麻呂という若者に出会うことに。

芝田勝茂さんの作品を読むのは初めて。風待屋 の sa-ki さんに教えて頂いたんですが、いやあ、可愛らしいお話でした! 中心となっているのは菅原孝標の女の「更科日記」(だから「サラシナ」)の中の「竹芝伝説」で、史実と虚構を織り交ぜて書かれたタイムスリップ物。タイムスリップ先は聖武天皇の時代。先日読んだ高橋克彦さんの「風の陣」(感想)よりも、ちょっぴり時代を遡った頃。
ピンクのネグリジェ姿で空から降りてきたサキは、見慣れた多摩川があんまり綺麗で、しかも人影が全然ないんで、服を脱いで川で泳いだりするんですよね。それを見ていた不破麻呂が天女伝説と結びつけてしまうところが、まず可愛い~。天女とは言っても、案外本当にそんなところかもしれないですものね。宇宙服を脱いだ宇宙人とか。(笑) でもって、不破麻呂に出会った後の古代の多摩川での描写が素敵なんです。「多摩川に 晒す手作り さらさらに 何ぞこの娘の ここだ愛しき」と歌いながらの川で布を晒す娘たちや、酒壷の中でゆらゆらとゆれてる直柄のひさごとか... 不破麻呂のひさごの歌と踊りが見てみたくて堪らなーい。
で、一旦現代に戻るサキなんですが、またこの時代に来ることになります。でも今度は天女としてではなくて、天皇の第4子の竹姫こと更科内親王として。なんでここで竹姫になっちゃうのかという必然性については、ちょっと疑問なんですが... 更級日記だから天皇の姫にする必要があるのは分かるんだけど、サキがそうなる必要は特にないですしね。でも竹姫の祖母の皇太后が語る恋物語に竹姫自身の話、そしてサキと不破麻呂の話が重なって、この時代をすごく身近に瑞々しく感じることができたので、まあいっかという感じでした。サキよりもむしろ竹姫の方が身近に迫ってきましたし。ああ、この話の後、どうなったのか気になるなあ。サキの2度目の登場の仕方からいえば、この後彼はちゃんと幸せに暮らしたんじゃないかとも思うんだけど... それはまた別の話なんですね。きっと。(あかね書房)

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聖武天皇による寺院建立や大仏鋳造が続いた天平21年、陸奥から黄金が発見されたという知らせが朝廷に届きます。日本初の黄金産出の知らせに、陸奥に対する朝廷の眼差しは一変。そしてその黄金を陸奥守に貢いだのが父の丸子宮足であったことから、丸子嶋足は陸奥守について都に上ることに。嶋足はかねてから都で自分の腕を試したい、いつかは陸奥守となって故郷に戻り、陸奥を都と変わらない国にしたいと考えていたのです。そして嶋足が都に上って8年の歳月が流れます。右兵衛府の見回りの長になっていた嶋足の前に現れたのは、同じく陸奥の出身である物部天鈴。嶋足は天鈴の助けを得て、やがて左衛士府の坂上苅田麻呂の片腕となることに。

ここに登場する坂上苅田麻呂は、「火怨」の坂上田村麻呂のお父さん。「火怨」の前日譚的作品なんですねー。
今回読んだのは、「立志篇」「大望篇」「天命篇」の3巻。読んでる最中は、この3冊で完結するのかと思い込んでたんですが、「天命篇」を読んでる時に、どうも終わりそうもないなあ、と気づきました...。調べてみたら、先月4巻「風雲篇」の単行本が出たところじゃないですか。しかも、今は5巻目に当たる「裂心篇」が連載中ですって。ここで一旦主人公が別の人物に変わっているとか。とは言っても、また嶋足に主人公が戻るんだろうし... 一体、何巻までいくんだろう?(笑)
「立志篇」は橘奈良麻呂、「大望篇」は藤原仲麻呂(恵美押勝)、「天命篇」は弓削道鏡と、それぞれに時の権力者を抱きこんでわが世の春~♪ を謳歌しようとしてたり、実際謳歌してた人たちを、嶋足や天鈴が蝦夷のために追い込んでゆくさまが描かれています。話そのものもすごく面白いんですけど、例えば吉備真備とか和気清麻呂なんかも登場して、自分の中では名前だけの存在だった人たちがどんどん繋がって広がっていくのが、また面白いんですよね~。教科書で読んでる分には、あんなに面白くなかったのに。歴史物の醍醐味ですね。これは続きも楽しみです。
3巻合わせて全部で46の章があるんですけど、その章題全てが風にまつわる言葉なんです。これがまた想像力をかきたててくれて、いい感じです。(PHP文庫)


更新にちょっと間があきましたが、実はちょっと熱を出したりして体調不良...。その間に第38回たら本も始まっていたようですね。今回のお題は、「何か面白い本ない?」という無謀な問いかけに答える、です。主催はりつこの読書メモのりつこさん。(こちら
体調の悪さもあるんですけど、この問いかけにはイタイ思い出が色々と... しかもなんだか生々しく蘇ってきちゃったので、今回は参加できないかもしれません。うむむ。


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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唐の玄宗皇帝の時代。金品を溜め込んで県令を引退した父のおかげで、無為に100歳まで暮らしても十分おつりがくるということに気づいた王弁は、その日から机を離れ、武具を持つこともなく、何もせず佳肴を楽しみ、風光を愛でる日々。そして父は、まだ22歳の息子が日がな一日庭でぼおっとしている不甲斐なさに怒る日々。しかし近くの黄土山に仙人が住み始めたと聞きつけた父は、息子に供物を持たせて仙人に会いに行かせることに。黄土山中の庵にいたのは、王弁が想像したような見事な白髪姿の仙人ではなく、若く美しい少女の仙人。少女は「僕僕」と名乗ります。仙骨はないものの、「仙縁」はあるという王弁は、早速僕僕と酒を酌み交わし始めて...。

第18回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。ずーっと図書館に予約を入れてた作品。待ってる人数は10人もいなかったのに、延々半年以上待たされて、ようやく読めました!
何万年も生きているらしい仙人の僕僕が、なんと美少女の姿をしていて、仙人だという説得力を出す時だけ老人の姿になるというのも人を食っていて楽しいし、少女の姿をしていると、くるくると表情が変わる本物の可憐な少女に見えてくるのが不思議。そしてそんな僕僕に振り回されてるうちに、日々ふわふわと生きるだけで覇気が全くなかった王弁が徐々に自分を持ち始めるというのもいいですね。2人の間の淡い恋心も可愛らしくて、ほのぼの~。ただ、僕僕が王弁のどこを気に入ったのかは、今ひとつ分からないんですが。(笑)
時代背景としては、玄宗皇帝が即位して間もない頃。楊貴妃がまだ現れてなくて、玄宗皇帝が優秀な皇帝として唐を治めていた頃です。中国の神話を始め、「列仙伝」などに登場する仙人の名前や、「山海経」に登場するような異形の存在、そして中国史上の人物の名前なんかがあちこちにばらまかれていて、中国物好きとしては堪らないところ♪ (この辺りはそれほど濃くないので、全然知らなかったとしても問題ないと思いますが) ただ、今のままの緩めの雰囲気もとても心地良かったんですけど、エピソード同士の繋がりが薄くて、なんだかちょっと散漫な感じもあるんですよね... もう少し整理すれば、もっと芯の通った話になっただろうに惜しいな、という気もちょっぴりしました。...それでもやっぱり好きなんですけどね。この方はこれからも中国物を書かれるのかしら? そうだったらいいな。楽しみ!(新潮社)


+シリーズ既刊の感想+
「僕僕先生」仁木英之
「薄妃の恋 僕僕先生」仁木英之」

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