Catégories:“歴史・時代小説”

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現代人から「インフラの父」とさえ呼ばれているローマ人。インフラストラクチャー(社会資本、基礎設備、下部構造)ほど、それを成した民族の資質を表すものはない、というのが塩野七生さんの考え。ローマ人にとっては「人間が人間らしい生活をおくるために必要な大事業」であり、それらの全てを備えていないと都市とは認められていなかったいうインフラについて重点的に取り上げていく巻です。

次は五賢帝最後のマルクス・アウレリウス・アントニウスなのかな?と本を広げたら、違いました。今回はインフラのお話ばっかりで、ローマの皇帝たちは一休み。
ええと、インフラにもハードなものとソフトなものがあって、ローマ時代のハードなインフラと言えるのは、街道、橋、港湾、神殿、広場(フォールム)、公会堂(バジリカ)、円形闘技場、半円形劇場、競技場、公衆浴場、上下水道など。そしてソフトなインフラとは、安全保障、治安、税制、医療、教育、郵便、通貨制度などなど。この巻で主に取り上げられているのは、ハードなものとしては街道、橋、水道。ソフトなインフラとしては医療と教育。他のは改めて取り上げられたりはしてないんですが、これまでの巻でも随時触れられてきてますしね。

まず面白かったのが、ローマと支那という西と東の大帝国の対照的な姿。同じような技術力を持ちながらも、支那(まあ、基本的には秦のことだと思うんだけど)は万里の長城を築き、ローマは街道を築く。縦になってるか横になってるかの違いだけで、技術力はほぼ同じ。でも、人の往来を絶つ万里の長城を築いた支那人とは対照的に、ローマ人は自国内の人々の往来を促進するローマ街道を築くんですね。どちらの民族も作ろうと思えば壁でも道でも作れたはずなのに、自国の防衛のためにまるで正反対の行動を取っているというのがスゴイ。
あと、共和制時代は財務官(ケンソル)や執政官(コンスル)が、帝政となってからは皇帝が立案して、元老院(セナートウス)が決定を出した、というインフラ事業なんですが、その費用を国庫で賄うのは当然のこととしても、権力者や富裕者が私財を投じて建設し寄贈した公共財も多いというのも、すごいことですよね。日本の政治家は、自分の地元に高速道路や新幹線を通すことは考えるけど、私財なんてまず出さないでしょうし~。でもローマ人は、そんなこと当然のことのようにやってるわけで。その辺りの考え方の違いもすごいですよね。視野の大きさも全然違うし。そしてこれこそがローマ帝国の長寿の秘訣だったのでは。だからこそ、塩野七生さんも単行本の1巻分をまるまる割いてインフラを語りたいと考えたのでは。

「はじめに」で、この巻は歴史的にも地理的にも言及の範囲が広いから読むのが大変なはず、とさんざん書かれてるんですけど... 例えば「ハンニバル戦記」や「ユリウス・カエサル」のような面白さや快感は期待できないから覚悟して欲しいと散々脅されてるんですが、ふたを開けてみれば、すんごく面白かったです。ユリウス・カエサルはもちろんのこと、初のローマ街道・アッピア街道、初の水道・アッピア水道を作ったアッピウス・クラウディウスも素晴らしい。そしてこれらのインフラこそが、古代ローマを現代に繋げる架け橋と言えそう。地図や図面、写真が沢山見られるのも良かったです。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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この巻で取り上げるのは、紀元98年から161年まで、トライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの3人の皇帝の時代。20年の治世であらゆる分野で多大な業績をあげたトライアヌス帝ですが、同時代のタキトゥスは「まれなる幸福な時代」という一行を残したのみ。同じくこの時代を生きたスヴェトニウスも何も書かず、しかし同時代のローマ人も「黄金の世紀」と呼び、後世「五賢帝時代」と呼ばれるようになったこの時代。賢帝とは何であったのか、どのような理由でローマ人は賢帝と賞賛したのか、ということを見ていく巻です。

これまでタキトゥスの「歴史」「年代記」「アグリコラ」「同時代史」を元に自分なりの解釈をしつつ書き進めてきた塩野七生さんですが、ここにきてタキトゥスが何も書いていないので、相当戸惑ったようです。タキトゥスの没年は120年とされているので、117年までのトライアヌス帝の治世についても書こうと思えば書けたはずなのに、実際に書いているのはドミティアヌス帝の暗殺まで。同時代人のスヴェトニウスも「皇帝伝」でドミティアヌス帝までしか触れていないし、200年後にその続編を書こうとした6人の歴史家たちが書いた本も、書き始めはハドリアヌス帝から。1 年半ほどの治世しかなかったネルヴァはともかく、あらゆる分野で多大な業績をあげているはずのトライアヌスが全然書き残されていないなんて!
でもそんなトライアヌス像が、塩野七生さんによって鮮やかに描き出されていきます。ここに描かれているのは、初めての属州出身の皇帝だからと、黙々と人並み以上にがんばってしまったトライアヌスの姿。賢帝と言うにはあまり華がないように思えるトライアヌス帝なんですが、それでもトライアヌス円柱と呼ばれる戦勝記念碑に刻まれた浮き彫りに見るダキア戦記や(この円柱の全貌を見てみたい!)、当時建設されたという橋の図面からも、その有能さが分かります。
そしてトライアヌスの次は、トライアヌスが代父となっていたハドリアヌス。この人物の治世は21年。でもその21年のうち、本国イタリアにいたのは7年だけなんですね。皇帝の位についた当初こそローマに留まっていたものの、45歳から58歳までの13年間のほとんどを視察の旅で属州を巡行。常に皇帝としての義務を果たしつつ、トライアヌスが拡大した帝国内をくまなく巡察し、既存の公共施設を修理、国境の防衛線を強化、地域ごとの問題を解決、さらには徹底した法の整備まで。疲れを知らないその働きぶりに、即位直後の危険分子との粛清というマイナスイメージもいつしか払拭されることに...。この巻で興味深いのは、ハドリアヌス帝後半でかなりのページが割かれているローマ人とユダヤ人の意識の違いについて。ユダヤ人についてもある程度は知っているつもりでしたが、まだまだでした。これほどの意識の差があったとは正直びっくり。
そして取り上げられている3人の賢帝のうちの最後は、アントニヌス・ピウス。晩年首をかしげられるような行動が多かったハドリアヌスの神格化を1人訴えていたことから、ピウス(慈悲深い)という名前がつけられたというこの人物は、様々なことに目を配りつつも現状維持で賢帝となった人物。何もしていないので、あまり書くべきことも多くなくて、割かれているページも50ページ足らずなんですが、それでもその人柄の良さと頭の良さは十分伝わります。しかし逆に大改革を推し進めるためには、アントニヌス・ピウスではなくて、ハドリアヌスのような性格が必要だったということもよく分かります。

今回一番印象に残ったのは「ローマの皇帝たちの治世は殺されなくても二十年前後しかもっていないが、それも激務によるのかもしれない」(24巻P.248)という言葉。確かに長くても大体20年前後ですね。やっぱりそれだけローマ帝国の統治は大変だったんだなあー。と、納得。(新潮文庫)


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アウグストゥスの死後、皇帝となったのはティベリウス。常に若く元気な部下に囲まれていたユリウス・カエサル、決断の際には常にアグリッパとマエケナスに相談することのできたアウグストゥスとは対照的に、ティベリウスは孤愁を感じさせる男。背が高くがっちりとした体格で、貧相という言葉とは無縁だったティベリウスですが、その背は人の想いを拒絶するかのように厳しいのです。そんなティベリウスと彼に続くカリグラ、クラウディウス、ネロといった、歴史的にあまり評価の高くない皇帝たちを取り上げる巻。

ローマ皇帝の中でも、カリグラとネロは飛びぬけて有名ですね。有名とは言ってももちろん悪い方でですが。カリグラはものすごいはじけっぷりだし、ネロは母親殺しと妻殺し、そしてキリスト教徒迫害。ローマ市内に放火。そんな2人と並んでいるところからして、ティベリウスやクラウディウスはどんな酷い皇帝だったんだろうって思ってしまうところなんですが~。
これが全然なんです。確かにそれぞれに悪かった点はあります。社交性に欠けていたティベリウスはそもそも人心を掴む努力を全然してないし、最後の10年はカプリの別荘に隠遁してしまったから、そのせいでローマっ子たちは見捨てられたと思ってしまうし... クラウディウスはすっかり自分の奥さんの言いなりになってしまうという情けなさ。再婚して奥さんが変わっても全然ダメ。でも、塩野さんの筆にかかると、それぞれなりに最善を尽くしたという感じになってしまうんですね。ティベリウスはローマ市民が大好きな催しを全然しなかったから人気は低迷してたけど、その分アウグスティヌスから受け継いだローマ帝国を健全な形に保つことには十分実力を発揮していたし、クラウディウスは元々歴史家だっただけに、皇帝という地位とその重責をよく分かっていて、カリグラが破綻させた財政をきちんと立て直してます。とてもじゃないけど、愚帝という感じじゃありません。
そして単なる愚帝と思わせないのは、カリグラとネロの場合も同様。まあ、黒字財政をたった4年で破綻させたカリグラの浪費っぷりとか、神に成り代わろうとするとこはさすがにどうかと思いますけど(笑)、カリグラの場合は、軍隊のマスコットボーイだった時代から描かれてますしね(カリグラというのは「小さな軍靴」という意味の愛称)、あの可愛かった少年が~!って感じで哀れだし、切ないんです。それにネロだって、いいことだっていっぱいしてるのに、ちょっとした失敗や時機を逸したことが大きく響いて、結局雪だるま式になっちゃったのね... という感じで、十分同情の余地あり。
普通の小説の悪役だって、実はそんなに悪い人間じゃなくて、むしろ主人公よりも人間的に深みを感じさせることだってあるし、それでも構わないんですけどね。評判の悪い皇帝たちのダメな部分を強調するだけでなく、人間的な部分をここまで描き出したというのはすごいと思います。でもね、暗殺されてその治世が終わるからには、後世までその悪名が轟いているからには、もっと憎々しい悪役の魅力というのも読んでみたかったなあ、なんて思ってしまったりするんですよね。ないものねだりなのは分かってるんですが。(笑)(新潮文庫)


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紀元前31年9月。アクティウムの海戦でアントニウスとクレオパトラの連合軍は敗北し、翌30年8月、エジプトに逃れていた2人は相次いで自殺。そして勝者となったオクタヴィアヌスはローマで3日間にわたる壮麗な凱旋式を行うことに。戦いの神・ヤヌスを祭る神殿の扉も閉ざされ、ヴェルギリウスやホラティウスといった詩人たちも平和への喜びを高らかに謳い上げ... この時、オクタヴィアヌスは34歳を迎えていました。

カエサル死後のローマを制した、ローマ初代皇帝・アウグストゥスを描く巻。
天才肌のカエサル亡き後、冷静沈着なアウグストゥスがいかに王政を嫌うローマ人の反感を買わずに、共和制のローマを帝政に変えていったのか、というのが興味の焦点。自分が持っていた非常時の権力を返上して、元老院に権力を取り返させるように見せておいて、巧妙に自分の地位を固めていくアウグストゥス。細かいことを1つずつ、決して焦らず、時期を見計らって着実に実行していくアウグストゥス。「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと思う現実しか見ていない」というのはカエサルの言葉ですが、アウグストゥスが選んだのは、見たいと欲する現実しか見ない人々に、それをそのまま見せるやり方。元老院も民衆もアウグストゥスが巧妙に作りかえていく社会を、これこそ自分たちの求めるものだと勝手に思い込んでたってことなんですねえ。カエサル自身が目指していたこととはいえ、実はこういった仕事ってカエサルよりもアウグストゥスの方が向いてたんじゃないかしら。カエサルだと弁舌さわやかに相手を言いくるめてしまいそうですけど、目立って仕方ないですものね。そのことからも、カエサルの人選は万全だったんだなあと改めて感じさせられます。カエサルの持つ華はアウグストゥスにはないんですけどね。文才もなく、弁舌の才能もなかったアウグストゥス。でも使う言葉は決して間違えなかった、というのがとても印象に残ります。

でもね、学生時代、毎年クリスマスになると行事で暗誦させられてた聖書のキリストの生誕場面にの最初に「そのころ、全世界の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た。これは、クレニオがシリアの総督であった時に行われた最初の人口調査であった。」というのがあって(ルカによる福音)、そろそろキリストが生まれるんだなーなんて思いながら読んでたんですが、16巻を読んでみると、紀元元年前後に国勢調査が行われたという事実はなかったんですって。びっくり! すっかり事実なのかと思い込んでましたよー。

それにしても... 16巻だけ書影が色褪せてキタナイ感じなのはなぜ?(笑)(新潮文庫)


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ルビコン川を渡ったカエサルと彼に従う第十三軍団は、何の抵抗も受けずに北伊属州と本国ローマをへだてる境界の町・リミニの城に無血入城を果たします。ここで待っていたのは、現職の御民官・アントニウスとカシウス。四千五百ほどの兵しか持たずに、しかも戦闘に不向きな真冬のこの時期にルビコン越えなどしないだろうというポンペイウスと元老院派の予測を完全に覆したカエサル。その後の行動にも迷いがなく、ポンペイウスをはじめとする元老院派の多くが首都ローマを脱出することに。

ハンニバルが言ったという「肉体のほうが先に成長してしまい、内臓の発達がそれに伴わない」という言葉が、その通りなんだなあと実感できてしまう時代。
塩野七生さんのカエサルへの愛情が感じられるのは前巻と同じなんですが、面白さという意味ではこっちの方が上だったかも。前の巻では、「ガリア戦記」以前の話は面白かったものの、肝心の「ガリア戦記」が今ひとつ面白く感じられなかったんですよねえ。それは塩野七生さんがどうこういうよりも、元々の「ガリア戦記」のせいのような気もしますが。というか、それ以前に自分のせいですね、きっと。ガリア人の民族名とか個人名が全然覚えられなかったので... 「ガリア戦記」の簡潔な文章は素晴らしいし、そこからはカエサルの頭の良さがうかがい知れて、そういうところはすごいです。
そして文章的、内容的には「ガリア戦記」に劣るとされているようですが、こちらの「内乱記」の方が、私には読み物としては楽しいようで~。基本的にカエサル視点で描かれているので、ポンペイウスには若干不利なのではないかと思うんですけど、それでもやっぱりカエサルの方が格上ですね。11巻では軍人として、12巻では政治家としてのカエサルの姿が余すことなく描かれていました。戦時では力を発揮しても平時には失策ばかりのアントニウスや、平時には力を発揮できる才能があるのに軍事的才能が乏しいために、軍事的才能が豊かな若者がつくことになったオクタヴィアヌスなどを見てると、カエサルの非凡さがよく分かるー。ほんと先の先まで読んでたんですね。そしてカエサルにコピーライターの才能もあったというのは、まさに!(笑)
カエサルの周囲には様々な人がいたわけなんですが、その中ではキケローの姿が印象に残ります。政治的信条からカエサルの敵にはなっても、友人であることは一貫して変わらなかったというキケロー。知識はあっても先読みができないキケローは、なんだか肝心なところで損してばかりだったようにも見えるんですけど、カエサルの友情を信じながらもドキドキしてるキケローが妙に愛嬌があって可愛いです。書くことが大好きだったというキケローの手紙の書きっぷりも楽しいし。そういうキケローを通して見えてくるカエサルの魅力、というのもいいですね。でもほんとカエサル暗殺は、本当に尻すぼみだったんですね...。これほどまでにお粗末な暗殺だったとは。情けない。(情けないといえばアントニウスやクレオパトラもね)(新潮文庫)


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紀元前100年、ローマの貴族の家に誕生したユリウス・カエサル。ローマ史上最大の英雄・カエサルはどのような時代に生まれて、どのような育ち方をしたのか。どのように世に出たのか。前半はカエサルの誕生から若い頃のエピソードを、後半は2000年経っても未だに世界中で読まれている「ガリア戦記」を中心に、有名な「賽は投げられた」のルビコン川までの、カエサルの前半生の姿を描き出します。

再読です。感想は以前書いたので今回は文章の抜書きだけ。塩野七生さんの文章も誰かの発言も入り混じってます。


「人は、仕事ができるだけでは、できる、と認めはしても心酔まではしない。」(8巻P.72)
「きみたちにはわからないのかね、あの若者の中には百人ものマリウスがいることを」(8巻P.79)
「読書の趣味は、経済的に余裕ができたからはじめる、というものではない」(8巻P.121)
「女とは、モテたいがために贈物をする男と、喜んでもらいたい一念で贈物をする男のちがいを、敏感に察するものである。」(8巻P.124)

「敵への不審だけででいる戦争とはちがって、政治は、敵でさえも信頼しないことにはできないのである。」(9巻P.89)
「戦争は、死ぬためにやるのではなく、生きるためにやるのである。戦争が死ぬためにやるものに変わりはじめると、醒めた理性も居場所を失ってくるから、すべてが狂ってくる。」(9巻P.91)

「復讐とは、彼にすれば、復讐に燃える側もその対象にされる側も、同じ水準にいなければ成立不可能な感情なのである。」(10巻P.21)
「だが、わたしが、お前たちの命よりも自分の栄光を重く見たとしたら、指揮官としては失格なのだ」(10巻P.91)
「ゲームと戦争は根本的なところでちがう。ゲームでの駒は思いのままに動かせる木片にすぎないが、戦争での駒は、感情をもつ人間である。ゆえに、形に現れにくく数でも計りがたい要素を、考慮にいれなければ闘えない"ゲーム"なのだ」(10巻P.97)
「他者から良く思われたい人には権力は不可欠ではないが、何かをやり遂げたいと思う人には、権力は、ないしはそれをやるに必要な力は不可欠である」(10巻P.177)
「ここを越えれば人間世界の悲惨。越えなければ、わが破滅」(10巻P.234)


前回はこの3冊を読んだ後に「ガリア戦記」にいってしまって「ルビコン以後」は結局読まなかったんですよね。今回はちゃんと読みます。(まだ入手してないけど)でも、同じ戦記でも、私にはカエサルよりもハンニバルvsスキピオの方がずっと面白かったな。やっぱり英雄には好敵手の存在が不可欠。でもカエサルにはカエサルだけで、好敵手と呼ぶのに相応しい人物がいないんですよね。それが物足りないです。(塩野七生さんのカエサルへの愛は十分感じるんですけどねー)(新潮文庫)


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紀元前146年カルタゴを滅亡させ、名実共に地中海の覇者となったローマ。しかし人間も都市も国家も帝国も、いつかは滅亡するもの。この時建国600年を経過していたローマに新たな難問が降りかかろうとしていました。第二次ポエニ戦役中に元老院に集中した権力が戦後もそのまま継続され、ローマ社会の貧富の差が拡大します。それは、かつてのように貴族に対して平民が政治上の権力の平等を求めるという段階を超えてしまっていたのです。紀元前2世紀後半のローマに現れたグラックス兄弟からマリウス、スッラの時代を経て、紀元前63年にオリエントを平定し終わったポンペイウスの時代までを見ていきます。

国外の問題が片付いたかと思えば、国内の問題が勃発するローマ帝国。「共通の敵」がいる間は強かった結束も、平和になるとお互いのことが気になってくるのはよくあること。「共通の敵」というのは、もしかしたら必要悪なのかもしれないですね。でもこの時点で既に建国から600年のこの時代だというのが驚き。日本だと徳川幕府でもこの半分の300年しか続いてないんですものねえ。
前の巻のみたいなワクワクする爽快感はないし、華やかなスキピオとカエサルの時代に挟まれてどちらかといえば地味だと思うんですけど、こういう時代をしっかり理解しておくことが、これからのローマの在り方を理解する上で重要になってくるような気もします。
それにしても、古代ローマ物は名前が同じ人物が多くて覚えにくいなーと思ってましたが、元々名前のバリエーション自体が少なかったとは。男性の個人名はガイウス、ティベリウス、グネウス、アッピウス、ルキウス、プブリウス、マルクス程度だったんですって。少なッ。で、5人目からはクイントゥス、セクストゥス、セッティムス、オクタヴィウス、デキウスって、ほんとそのまんま五郎・六郎・七郎... じゃないですか。しかも女性の個人名ともなると、家門名の語尾変化形に過ぎなかったとか。あれだけ神々の多い国なのに、しかもその神々が身近な存在なのに、その名前を借りようとは思わなかったんですね~。(新潮文庫)


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日限の親分が若だんなのところへ。最近通町で横行している質の悪い掏摸は、おそらく打物屋の老舗の大店の次男坊が飴売りの女の共謀。しかし肝心の証拠がまるでなく、親分は困り果てていました... という「いっちばん」他、全5編の連作短編集。

しゃばけシリーズの第7弾。「ひなのちよがみ」だけは雑誌掲載時に既読。
相変わらずのしゃばけワールドで、若だんなだけでなく妖たちも相変わらず。このシリーズはマンネリになろうが何しようがこのまま頑張って欲しいなと思う気持ちと、でもそろそろ狐者異を再登場させてみても面白いんじゃ?という気持ちと半分半分なんですよね。まあ、もし畠中恵さんがそろそろ終わりにしたいと思ったとしても、まあ出版社が止めさせてくれないでしょうけど。
今回は妖たちが勢ぞろいする「いっちばん」が楽しかった! みんな若だんなを喜ばせようと頑張るんですけど、なかなか上手くいかないまま最後になだれ込んで、気がついたら事件もすっかり解決してマシタ! というこの構成が素敵。そして「餡子は甘いか」では、相変わらず菓子作りが下手な栄吉が頑張っている様子が見られて、こちらもいいですねえ。器用貧乏な人よりも、栄吉みたいなタイプの方が一度コツを掴んだら安定度はずっと高いはずだし、これからも負けずに頑張って欲しいな。(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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紀元前265年、シチリアの第一の強国・シラクサがメッシーナに進攻し、メッシーナはローマに救援を要請。ローマはメッシーナとは同盟関係になく、しかもローマの軍団はいまだ海を渡ったことがないにもかかわらず、メッシーナの要請を受諾することを決定します。もしローマが断れば、メッシーナがカルタゴに頼ることは目に見えており、カルタゴがメッシーナを手に入れると、ローマまでもが危うくなってくるのです。結果的にメッシーナとシラクサを手に入れたローマにカルタゴが強い危機感を抱き、第一次ポエニ戦役(紀元前264~紀元前241)が勃発することに。

ローマとカルタゴとの間に闘われたポエニ戦役を中心に対外戦争の時代を描く巻。第一次ポエニ戦役の勃発する紀元前264年から、スペイン全土を領有することになる紀元前133年までの130年間を、プロセスを丹念に追いながらみていきます。カルタゴといえば、ローマの祖・アエネイアスと恋に落ちたディードの国~。なんですけど、ここではそういった伝説的なことには全く触れないんですね。「ローマは一日にして成らず」の時とは違って、今回はアレクサンダー大王のことなんかもきちんとしたスタンスで書かれていたように思います。

いや、この巻はほんと面白かった。面白いとは聞いてたんですけど、ほんとすっごく面白かった。子供の頃にハンニバルの本を読んだことがあるんですけど、そもそも戦争物は好きじゃなかったし、印象に残ってるといえば、せいぜい象ぐらいだったんです、私。(汗)
でも海軍どころか輸送船すら持っていなかったローマが、地中海最強の艦隊を擁する海運国カルタゴに対するために船を作って船の漕ぎ手を育成して、陸戦が得意なローマ軍ならではという工夫を凝らして... なんて読んでるとほんとワクワクしてしまいます。やっぱりこの柔軟さがローマの武器なんですねー。そして2人の対照的な男たち。まずは孤高の男・ハンニバル。彼に最後まで付き従った兵士たちにとって、ハンニバルは父親のようなものだったのではないでしょうか。兵士たちはハンニバルの背中を親父の背中のように見て育っていったに違いない。そしてハンニバルの好敵手・スキピオ。こちらは孤高なハンニバルとは対照的な、人の心を掴むのが上手い大らかで人懐こい青年。彼ら2人の姿が対照的に描き出されていて、それだけポエニ戦役の明暗がはっきりと現れているような気がします。

そして今回もローマの特徴として色々出てきたんですけど... 敗軍の将に責任を求めないこととか、軍の総司令官である執政官に一度任務を与えて送り出したら最後、元老院ですら口出しはしないこととかね。戦争続きで国庫が空になっても、簡単に増税したりしないとかね。でも旧敵国にとってはとても温情なはずの措置も、一歩間違えると弱腰と間違えられちゃう。ここで塩野七生さんが強調しているのは、こういった「穏やかな帝国主義」が成功するには、双方共に納得して許容している必要があるということ。確かにそうかもしれないなあ。そして紀元前146年、ローマはそれまでの「穏やかな帝国主義」から「厳しい帝国主義」に方針を転換することになるんですが、この辺りが納得できるのは、確かにこれまでのプロセスを丹念に見てきたからこそなんですね。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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1492年夏。シエナの街のカンポ広場で馬を走らせていたチェーザレ・ボルジア。チェーザレはあと1ヶ月で17歳という頃で、ピサ大学に通う学生。その日は、シエナの街の恒例の年中行事であるパーリオ(競馬)出場のために、練習をしていたのです。そこにローマにいる父親・ロドリーゴ・ボルジアからの書状が届きます。それは、その日行われた法王を選出する枢機卿会議コンクラーベで、チェーザレの父親が新法王に選ばれてアレッサンドロ6世となったという知らせ。そして父に呼ばれて、チェーザレもローマに向かうことになったのです。

高校の時に読んだ本の再読です。ちょっと前にタニス・リーの「ヴェヌスの秘録」(感想感想)を読んだ時に、明らかにチェーザレ・ボルジアやその妹のルクレチアがモデルとなっている人物が出ていて、その時からもう一回読みたいなあと思っていたんです。今年になって読んだマイケル・スコット「マジシャン 魔術師ニコロ・マキャベリ」(感想)にも、マキャベリが登場するだけあってこの時代のエピソードが出てきましたしね。そして高校の時になんでこの本を手に取ったかといえば、多分、川原泉さんの「バビロンまで何マイル?」がきっかけ。(笑)

チェーザレがヴァレンティーノ枢機卿として存在する時代「緋衣」、枢機卿職をおりてから野心のままに突き進む「剣」、そして父の法王が亡くなってからの「流星」と3部構成。1492年といえば、そういえばコロンブスがアメリカ大陸を発見した年なんですねえ。地球のあっちとこっちでは、こんなことがあったのか。(笑)
今回読んでいてちょっと意外だったのは、妹のルクレツィアの出番が少なかったこと。これだけだったかしら? 以前読んだ時はすごく印象に残ったような気がしてたんだけど...? 例えばダンスのシーンがあるんですけど、そういうのを自分で勝手にイメージを膨らましてしまったのかしら。そして今回いいなあと思ったのは、ドン・ミケロット。いつも影のようにチェーザレについている存在。チェーザレの右手で、彼の存在だけで誰かの死を意味すると言われる美しい青年。まあ、こうやって読むと、かなり美化されてるんだろうなって思いますが~。

以前読んだ時もものすごくさっぱりした(というか、そっけない?)作品だとは思ったし、今もそう思うんですが、「ローマ人の物語」に比べると遥かに小説らしいですね。(新潮文庫)


+既読の塩野七生作品の感想+
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
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「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

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父と息子と僅かな人々を連れてトロイを脱出したアエネアスが、長い航海の果てにローマ近くの海岸に辿りつき、土地の王女を妻にしてそこに定住、その血を引くロムルスが後にローマを建国することになった... というのは、ローマ人たちに信じられていた建国の物語。「知力では、ギリシア人に劣り、体力では、ケルト(ガリア)やゲルマンの人々に劣り、技術力ではエトルリア人に劣り、経済力ではカルタゴ人に劣るのが、自分たちローマ人である」と自ら認めるローマ人がなぜあれだけの大文明圏を築き上げ、長期にわたって維持することができたのか... それを考えつつローマ帝国の興亡を描きあげる超大作の序章です。

リンゼイ・デイヴィスのファルコシリーズ(感想)にハマって、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミティアヌスという3人の皇帝について知りたくてその部分を読み、その後カエサルの前半部分だけを読んだ「ローマ人の物語」。今度は最初の1巻です。やっぱり最初の1冊目から順番に読むというのは重要ですね。例えばファルコシリーズに散々出てくるローマでの役職のことなんかもこの最初の2冊(ハードカバーでは1巻)に出てくるし。ローマにある丘のこともよく分かるし。でも読みながらちょっと混乱してしまったんですけど、これってあくまでも「小説」だったんですね。塩野さんが調べたことを想像を交えて書いた小説。こんなに歴史解説書のような書き方をしているのに、それでも小説なのか!というところで、どうも私としては受け入れがたいものがあるんですが...。

いえ、ローマ部分はいいんです。各人の造形や出来事を膨らませて書いているのが分かるから。でもね、文庫の1巻途中からギリシャについての記述が始まるんですよね。「では、ローマよりは先発民族であったギリシア人は、ローマからの調査団を迎える前五世紀半ばまでに、どのような歩みをしてきたのであろうか」なんて文章で始まって、完全に説明口調で書かれてしまうと、そこはどうしても純粋な解説を読んでいるような頭になってしまうわけです。そこは純然たる事実が書かれているのだろうと思ってしまう。でもそうではないんですね。実際その内容はホメロスの「イーリアス」「オデュッセイア」、アイスキュロスの「アガメムノーン」を始めとするギリシャ悲劇、ヘロドトスの「歴史」といった作品の要約を繋ぎ合わせたようなもの。トロイ戦争から帰ったアガメムノンが浴室で殺されたのはお話だろって分かるとしても、そういういかにも「お話」ってとこ以外は、事実だと思い込む人も多いんじゃないかなあ...。もう少し気を配って書いて欲しいなって思っちゃう。こういうとこも塩野さん流の小説なんだとしたら、どこまで信じて読んだらいいのか分かりませんー。
なんて書きましたが、ローマ人の部分は面白いです。ローマ人がなぜギリシャ人よりもエトルリア人よりも強い勢力となり、そして長い間生き残ったか。それがすごく分かります。私としては、カエサルの部分を読んだ時も思ったんですけど、敗者を滅ぼすのではなくて同化させる道を選んだことじゃないかと思いますね。もちろん寛容な宗教の存在も大きかったでしょうけどね。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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千蔭お駒が妊娠。つわりが酷く何も食べられないお駒のために、千蔭と八十吉は巴之丞の元へ。お駒の母・佐枝が、お駒は珍しいものの方が喜んで口にするかもしれないと言い、珍しいものなら巴之丞が詳しいと考えたのです。巴之丞のおすすめは、乃の字屋の猪鍋。最近江戸で流行っており、店の外まで行列ができるほどだというのですが... という「猪鍋」他、全3編

猿若町捕物帳第4弾。いやあ、面白かった。このシリーズ、最初はちょっと地味かなと思っていたのですが、進むにつれてどんどん面白くなりますね! 今回の注目は「おろく」。彼女がいい味を出してるんですよねえ。そしてもしやこのままいっちゃうの...? と思いきや、千蔭がまたかっこいいところを見せてくれるし。ま、人が良いにもほどがあるって感じもしますが。梅ヶ枝も巴之丞も元気です。今回、梅ヶ枝がなんだか可愛らしかったなあ。

それにしても日本人作家さんの本を読むのはほんと久しぶり。先月の仁木英之さん「薄妃の恋 僕僕先生」以来かな? 最近は翻訳物オンリーでいきたいぐらい、翻訳物に気持ちが向いてしまってるんですが、近藤史恵さんはやっぱり大好き。特に好きなのは、どうしてもデビュー作の「凍える島」とか「ガーデン」「スタバトマーテル」「ねむりねずみ」「アンハッピードッグス」といった初期の作品なんだけど... いや、「サクリファイス」も久々に「キター!!」って感じだったんですが(笑)、でもこういうのもいいなあ。可愛いとか美味しいのもいいんですけどね。そういうのは読んでてすごく楽しいんだけど、近藤史恵さんらしさが少し薄めのように感じられてしまうんですよね。このシリーズは、私の中では既にそちらよりも上になってきてます。我ながらちょっとびっくりですが。(光文社)

+シリーズ既刊の感想+
「巴之丞鹿の子」「ほおずき地獄」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「にわか大根」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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5年ぶりに姿を見せた師匠の僕僕とともに、桃花の花びらが舞う街道をゆく王弁。光州を出た2人は釣りをし、花を愛で、酒を飲みつつのんびりと南西へと向かい、僕僕が長江で呼び出した巨大な亀の珠鼈(しゅべつ)と共に荊州江陵府の春の祭りへ。そこで王弁が見つけたのは荊州一の料理人を決めるという料理大会の高札でした...という「羊羹比賽」他、全6編の連作短編集。

可愛らしい女の子の姿をした仙人「僕僕先生」の続編です。連作短編集と書きましたが、長編と言ってもいいような感じですね。前回のラストで僕僕が去ってから5年の月日が流れ、王弁は仙道に通じたものとして皇帝に「通真先生」という名前をもらい、立派な道観を建ててもらって薬師としてひとり立ちしています。
僕僕が空白の5年間に何をしていたのか、なぜ今帰って来たのか、どんどん南下して王弁をどこに連れて行こうとしているのかなど、その辺りははっきりと語られてないんですが、どうやらまだしばらく物語は続きそうだし、じきに明らかにされるのかな? 王弁は少しずつ一人前になってきたものの、まだまだ僕僕にいいようにからかわれてるんで、そんな2人のやり取りが相変わらずほのぼのとして楽しいです~。その2人と一緒に旅することになる亀の珠鼈や薄妃もいい味を出してましたしね。いい感じで安定してました。今回は爺さんの姿にはならないんですけどね。ほっとしたような、ちょっぴり残念なような。(笑)
でもほんとになんでどんどん南に行っちゃうのかしら。南に何かあるのかな?(新潮社)


+シリーズ既刊の感想+
「僕僕先生」仁木英之
「薄妃の恋 僕僕先生」仁木英之

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明治31年(1898年)。仏典の研究のために清国へと渡った能海寛(のうみゆたか)は漢口の街に到着。準備を整え人夫を雇って出発した能海に接近してきたのは、英国商社のジャーデン・マセソン社のトーマス・ヤンセン。あくまでも日本の仏教を立て直すために原典を求め、そのために東本願寺法主からダライ・ラマ13世への親書を携えて拉薩を目指しているつもりの能海でしたが、外の人間たちからは、彼は日本政府の意を受けて西蔵を目指す密使だと見られていたのです。能海は知らないうちに、「グレートゲーム」に巻き込まれていくことに。

日清戦争と日露戦争の間の時期を背景に、清や西蔵(チベット)、そしてそれらの国々を巡るを各国の思惑を描いた骨太な歴史ミステリ。能海寛はもちろんのこと、河口彗海や寺本婉雅、成田安輝など実在の人物たちが登場します。
能海が本人も知らないうちに歴史の一駒にされていたという設定はとても面白かったし、チベットのラサへと向かう厳しい道のりもとても迫力があって、英国のジャーデン・マセソン社のエージェントの介入、能海を助ける山の民や清国人たちとのやり取りもなかなか良かったんですけど、これだけのことを描きあげるには枚数が足りなかったのではないかしら? このページ数にしてはかなりよく描き込まれてると思うし、能海もなかなかいい感じなんですけど、全体から眺めた時にどこか物足りないものがありました。最後も、ある程度は歴史物の宿命とはいえ、後味があまりにも良くないですしね... なんでこんな幕引きにしちゃったのかしら。このラストで作品全体の印象も変わってしまうんだけどなあ... ここまできちんと作り込んできてるのに、なぜ?(小学館文庫)


+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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長屋に女の幽霊が出ると聞いた岡っ引の長次は、下っ引きの宇多に調べるように言いつけます。その幽霊は近頃息子と娘を失ったばかりの大和屋由紀兵衛の持つ長屋に出るのだというのですが... という「恋はしがち」以下、全6編の連作短編集。

9人の幼馴染たちの物語。下っ引きの宇多、岡っ引きの長治の娘のお絹、大和屋由紀兵衛の息子・千之助とその妹・於ふじ、大工の棟梁の娘のお染、野菜のぼて振りの弥太、叔父の口入屋の手代をしている重松、茶屋の看板娘のおまつ、裕福な煙管屋の娘・お品。この話が始まる時点で千之助と於ふじは既に亡くなってしまっていて、大きな流れとしてはこの2人の亡くなった事件のミステリですが、むしろ青春小説といった感じでしょうか。

小さい頃は男女の区別もなく毎日のように遊び回っていた9人も、今やもうお年頃。それぞれの生活が忙しくてなかなか会えなくなるし、お互いを男や女として意識するようにもなります。そこで上手く「思い思われ」になればいいんですけど、9人ですしね。なかなか上手くいかなさそうだなという予想通り、実際それぞれの思いはすれ違い... そうこうしてるうちに仲間を失ってしまったり。
大人になるってこういうことなのよね、なーんて切ない感じが前面に出てるのはいいんですけど... やっぱり9人というのは多すぎやしませんかねえ。せいぜい7人なんじゃ? 区別がつかなくて困るってほどではなかったんですけど、それほど9人の描き分けができているとは思えなかったし、逆にそれぞれのイヤな面は目についてしまったりで、感情移入できるような人物はいなかったな。せっかくなのにあまり楽しめず、ちょっと残念でした。(光文社)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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ロナアルワとダカルの事件も一件落着。翠蘭は、ガルやラセルと共に馬を飛ばしてヤルルンの聖寿大祭を目指します。そして祭りの当日、ソンツェン・ガムポと再会することに。

「風の王国」シリーズ16冊目。
前巻までの話も一段落して、この作品から新章スタートってところです。今までちょっと緊張関係にあった翠蘭とガルも、ここに来て一緒に国を盛り立てて行こうとしてるようですね。そして今回の見所は、史実通りに進んでいくための重要なステップとも言うべき翠蘭とソンツェン・ガムポとのやり取りなんですが... これにはちょっとびっくりだったんですけど、この展開はソンツェン・ガムポの狸オヤジぶりにぴったりだ。(笑) まあ、この理由には納得だし、確かにその流れでこうなるのが一番自然かもしれないですね。
そして翠蘭は西国シャンシュンを訪れることになるんですが... ここで「河辺情話」で尉遅慧を案内したカロンが再登場! でもプロローグである程度予想はしてましたけど、シャンシュンは相当酷い状態のようで...。リク・ミギャ王って、この見たまんまの人なのかしら? リク・ミギャに嫁いだリジムの妹・セーマルカルは、未だに「清楚で可憐な乙女」で「礼儀正しく、周りの者に対する思いやりもある」ままなのかしら。上下巻でもないのに、またしても「続く」で終わっちゃったんですけど、まあ、ここまで来たら別にいっかーってなところです。(集英社コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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隋の大業13年(西暦617年)。ほぼ300年ぶりに中国全土統一を果たしたにも関わらず、2代目皇帝・楊広の3度に渡る高句麗遠征失敗のため、隋の皇帝の権威は完全に失墜。国中で反乱が起こり、皇帝は都を捨てて江南の地へと逃れて酒色に溺れる日々を送っていました。楊広の母方の従兄にあたる唐公・李淵もまた、長男・建成、次男・世民の力に支えられて決起します。その頃、「龍鳳の姿、天日の容なり。年二十に至れば、必ず世を済い、民を安んずるべし」と言われた李世民は20歳となっていました。

後に唐の太宗皇帝となる李世民が群雄割拠の時代に決起、中国全土を統一して覇権をとるまでを描く歴史小説。いやあ、読み応えがありました。これがこの小前亮さんのデビュー作とはびっくり。
題名は「李世民」だし、確かに最終的に覇権を取るのは李世民なんですけど、李世民が主役の物語というよりも群像劇ですね。李世民は確かに若き英雄として描かれてるんですが、他の群雄と同じ程度の扱い。だから、もちろん群像劇としての面白さはあるんですけど... うーん、李世民をもう少し人間的に掘り下げて欲しかったかなあ。そもそも出番が少ないし、なんだか李世民の人物像をふくらませるより、父親の李淵の無能ぶりを強調して李世民を引き立たせてるみたい。みんなが一目見て納得するような「真王」ぶりが今ひとつ伝わってこなかったのが残念だったんですよね。それを考えると、作品そのものもどこか決定的な盛り上がりに欠けてたような気も...。戦争の場面の描写には迫力があるし、メリハリも利いてるのになんでだろう。各武将についてのエピソードも分かりやすく配置されてるし、章が変わるたびに新しい勢力図が挿入されてるから情勢の変化も掴みやすいのに。もしかしたらその「分かりやすさ」への配慮が裏目に出て、勢いがなくなっちゃったのかしら。
でも、一番の興味だった兄・李建成との決着のつけ方は良かったです。李建成の人物像にも、世民と建成が2人並び立って父を支えてるという構図にもすごく合ってるし、これはすごく納得できました。それにここで思い悩むこの李世民はとても人間的。こういうところをもっと早く前面に出してくれれば良かったのに。
この方、他にも宋や明の時代の作品を書いてらっしゃるみたいだし、いずれそちらも読んでみたいな。この李世民が皇帝になった後の話もぜひ書いてほしいですー。(講談社文庫)

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あるうらぶれた老人のもとを訪ねた客。老人の出す茶の香りや味が普通のものとはまるで違うと客が気づいたことから、老人はかつて金陵一と言われた妓女・王月生の話を始めます... という「朱唇」他、全7編。

井上祐美子さんの作品を読むのはほんと久しぶり。ブログを始めて5年目に入ってるんですけど、ブログには全然井上祐美子さんの本の感想がないことに気がついて、さっきちょっと呆然としてしまいました...。サイトを始めてから読み始めた作家さんなので、そっちには全作品の感想があるんですけどね。(サイトを始めたのは8年前かな) なんと新作が5年以上出てなかったってことなんですねえ。ええと、この「朱唇」は、唐代や明末期から清にかけて生きた妓女たちの物語。7編のうち「断腸」という作品だけは妓女ではなくて、そういった楼閣に生きる男が主人公なんですが、どの物語にも妓女が登場します。妓女といえば、宮尾登美子さんの昭和初期の土佐高知の色街を舞台にした一連の作品も好きだったなあーと懐かしく思い出すんですが、これは宮尾さんの作品のようなどろどろとした愛憎渦巻く世界とはまた全然違う雰囲気。

ここに登場する妓女たちはそれぞれに艶やかな美貌の持ち主。個性はまるで違うんですが、それぞれに美しくて芯の強い彼女たちの姿がとても魅力的。でもどれほど美しくて教養があっても、素晴らしい技芸の持ち主でも、時がたてば容色は衰えるし、見向きもされなくなるんですよね。花の命は短くて、です。一流の妓女となるような女たちはそのことをよく知ってます。だからこそ、自分の一番美しい時期を大切に生きているのでしょう。プライドの高さも、傍目には無礼に感じられる行動も、単なる我侭だけでなくて、それだけ自分の気持ちや誇りを大切にしているという証。
この中で特に強く印象に残ったのは牙娘と李師師かな。李師師といえば水滸伝にも出てきましたねえ。この妓女は結局誰だったのだろうと余韻の残る「名手」も良かったです。 (中央公論新社)


+既読の井上祐美子作品の感想+
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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新姚県の知事が難癖をつけては罪もない士人を捕縛して牢に押し込めたがるというという噂が朝廷に届き、越州へと向かった巡按御史一行。そして新姚県に入って早くも3日目で、希舜と伯淵は宿に踏み込んできた羅卒によって政庁へと引き立てられてしまいます...という「黄鶏帖の名跡」他、全5編。

「十八面の骰子」に続く巡按御史のシリーズ第2弾。少年のような見かけながらも実は25歳の巡按御史・趙希舜、長身に美声ながらも拳法の達人でもある希舜の弟分・傅伯淵、希舜の父に用心棒として雇われた賈由育、そして伯淵に惚れて女細作として同行するようになった燕児の4人組が活躍する連作短編集です。ええと、巡按御史というのは、天子直属の監察官。身分を隠して任地へ赴き、秘密裏のうちに地方役人の不正の有無を吟味する役目。身分を証明するためには「先斬後奏」「勢剣」「金牌」という3つの品を常に携行しています。
要するに水戸黄門的勧善懲悪物なんですが(笑)、中華ミステリの森福都さんらしく、「蓬草塩の塑像」ではアリバイトリック、「肉屏風の密室」では文字通り密室トリックといったように、ミステリ的にも十分楽しめるのがポイント。一行がどこに行っても温信純という男の存在が不気味に見え隠れして、女流賊・行雲とその手下2人も事あるごとに現れます。それに希舜がなぜ巡按御史になりたいと思ったのか、どんな出来事があったのか、という前作を読んだ時に知りたいと思っていたこともぽつぽつと語られるので、前作「十八面の骰子」を読んでおいた方が断然楽しめるでしょうね。と言ってる私自身が「十八面の骰子」の細かい部分をすっかり忘れていたりするんですが... 文庫が出たら買うつもりにしていたのに、すっかり抜けてたみたい。チェックできませんー。(それにしても文庫本の表紙の雰囲気が単行本と全然違うのにはびっくり。なんと宇野亜喜良さんでしたか。)
悪役との決着もまだついてないし、5編目「楽遊原の剛風」のラストは、いかにも続きがありそうな終わり方。続編にも期待です。(光文社)


+シリーズ既刊の感想+
「十八面の骰子」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「肉屏風の密室」森福都

+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「風の王国」シリーズ14冊目と15冊目。『初冬の宴』から続く一連の話は次刊で終わります... と前巻のあとがきに書いてあった通り、ここのところずっと続いていた一連の話にもようやく終止符が打たれることになります。「花陰の鳥」「波斯の姫君」も本編じゃなかったから、本編として話にきっちり一区切りがつくのは本当に久しぶり! でも一連の流れの一区切りともなると、何を書いてもネタバレになっちゃう...。ええと、ネタバレにならないように書けることだけ書くと。
なるほど、こうやって決着をつけるわけですね~。不審な動きをしていたロナアルワに関しては、ほぼ想像通りの展開になってました。そういう話や展開は本当はあまり好きじゃないし、逆にものすごく苦手だったりするんですが、なかなか後味のいい結末を迎えてくれましたよ。よかったー、ほっとしました。それと、その後一体どんな風に話が続いていんだろう?と思ってたんですが、なるほどこういう風に流れていくわけですね。心配してたんですけど思ってたよりもずっといい感じです。
さて次はヤルルンだ! 一時はもう読むのをやめようかと思ったんですけど、こうなったら最後まで付き合いますよ~。(集英社コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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ようやくツァシューに帰り着いたリジムと翠蘭。しかしほっとする間もなく、間近に控えた聖寿大祭のために多くの人々が城を訪れ、リジムも翠蘭も多忙な日々を送ることになります。朱瓔たちの婚約式は聖寿大祭の3日後に執り行われることになり、その時に吐谷渾の王族でありガルの義弟でもあるケレスとジスンの弓競べ、そして城下の子供たちの剣の試合が行われることになるのですが...。

「風の王国」シリーズ12冊目と13冊目。
久々の本編再開なんですが、なんだか低調... 特に「初冬の宴」は大きな波乱もなくて思いっきり失速してました。小さなトラブルは沢山あるし、それを翠蘭たちが1つずつ解決しようとはしているんですけど... 聖寿大祭や婚約式というイベントを控えて忙しい日々ではあるものの、言ってみればただ単に日常の風景といった感じ。この「初冬の宴」の最後でようやく大きな波乱が起きようとするんですが、それもあっさり「金の鈴」に持ち越されてしまうし。この2冊、なんで副題が違うんでしょう。同じ題名の上下巻にした方が良かったのでは?
そして「金の鈴」。「初冬の宴」の最後の波乱もあっさり片がついてしまって、逆にあっけないぐらい。こちらも日常の風景が続くんですが... でもこちらはそこはかとなく不安感が漂ってます。と思ったら、最後の最後で爆弾が! うわー、これはどうなるんでしょう。本当なのかな。そしてあとがきには「『初冬の宴』から続く一連の話は次刊で終わりますので」という言葉。その次の巻はもう出ていて私も持ってるんですけど、これが上巻なんです。気になるけど、上巻だけ読むというのもねえ。来月上旬に下巻が出るので、上下揃ったら一気読みする予定です。(集英社コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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サマルカンドに向かうムーザの隊商に加わった尉遅慧。慧が加わる前、ムーザの息子・ノインが若いペルシア女性を拾っていました... という「波斯の姫君」、唐の使者を連れてヤルルンに戻ったガルとその妻・エフランの物語「しるしの石」、増田メグミさんによる漫画「ジスンとシェリン」の3編。

「風の王国」シリーズ11冊目。
久々に慧が登場したり、ガルが可愛い奥さんに振り回されてるのを見るのは楽しかったものの、全体的な満足感はそれほどでもなく...。特に「しるしの石」でちょっとした犯人探しがあるんですけど、これがまた簡単ですしねえ。まあ、この話は奥さんに振り回されるガルを楽しめばそれでいいという話もありますが。リジムや翠蘭は登場しないので、ご贔屓の脇キャラが登場してる場合は楽しめるし、そうでなければ物足りなく感じる1冊かも。(集英社コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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母と叔父の会話から、ソンツェン・ガムポ王が2人目の妃を探していることを知ったティモニェン。ソンツェン・ガムポは15年前に吐蕃の王になり、今は名君と讃えられる人物。しかしティモニェンにとっては、宰相だった父を謀反人であると斬り殺した男でもあったのです。母は未だにソンツェン・ガムポを恨み続け、しかし数年前から王都で父の仕事を引き継いでいるティモニェンの兄の手紙は、ソンツェン・ガムポの素晴らしさを讃えるものばかり。一体ソンツェン・ガムポとはどういった人物なのか...。その時、丁度表れた婚約者気取りで図々しい男から逃れたかったティモニェンは、思わずソンツェン・ガムポの2人目の妃に名乗りを上げたと言ってしまいます。

「風の王国」シリーズ10冊目。随分前に出てたんですが、本編ではないと聞いて読んでなかったんですよね。でも6月には15冊目の新刊が出るし、既に5冊も溜め込んでたのに気がついて、そろそろ読んでみることに~。
今回は本編よりも30年ほど前の物語。ソンツェン・ガムポと、本編では既に亡くなってるリジムの生母・ティモニェンの出会いの物語です。んん~、本編じゃなくてもやっぱり面白い! 若々しいソンツェン・ガムポが素敵だし~。リジムとはやっぱり父子ですね。どこかイメージが似てます。ソンツェン・ガムポとティモニェンの出会いも、どこかリジムと翠蘭の出会いみたいだし。でもソンツェン・ガムポ王が時に冷酷非情になれるという部分は、リジムにはないんですよね。リジムも素敵だし頑張ってるけど、やっぱりどこかお坊ちゃん育ち。まあ、そこがリジムの良さとも言えますが。そしてリジムの幼い頃に亡くなったお母さん、もっと儚げな美女を想像してたんですけど、実態は全然違いました。外見も愛嬌がある程度で決して美女ではなかったようだし、前向きで行動力があって、むしろ逞しいイメージ。そういうところも、翠蘭にどこか似てるかな。父子が2人ともこういうタイプに弱いということなのかな? それとも~? でもソンツェン・ガムポがティモニェンに惹かれる気持ちはすごく分かるな。私も好きだもの、こういうタイプ。(集英社コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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梁山泊と童貫軍が総力の全てをかけてぶつかる、北方水滸伝完結の19巻。

いやあ、全部読んでしまいました。ふぅー。
19巻は、前巻に引き続きの激しい戦闘の物語となっています... が、こういう結末になるのかあ。童貫軍との激しいぶつかり合いはいいし、「水滸伝」としての話自体はここで終わるんだけど、でもあまりに次の「楊令伝」の存在が見えすぎるラストにちょっとびっくり。これじゃあ、この「水滸伝」が「楊令伝」の前座みたいじゃないですか。いや、その後へ繋がっていくということ自体はいいのだけど... とりあえずここで一つ区切りはつけて欲しかったなあ、というのが正直なところ。
でも梁山泊側だけで108人いるので、途轍もない数の登場人物になるのだけど、北方さんの描く漢たちは、誰もがそれぞれにかっこよかったな。全巻通して特に心に残った人物といえば、林沖と楊志。あとは秦明とか呼延灼、解珍、李逵辺り。思っていた以上に生き残った人間がいたので(とは言っても、全体から考えると僅かなんだけど)、このメンバーが「楊令伝」でも活躍することになるんですね、きっと。
あとは北方水滸伝読本として「替天行道」というのが出てます。こちらは「水滸伝」にまつわる北方さんの手記や対談、登場人物の設定資料、担当編集者が連載中に北方さんに書いた手紙などが収められているのだそう。これも読むかどうかは、現在考え中。(集英社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「水滸伝」1~3 北方謙三
「水滸伝」4~6 北方謙三
「水滸伝」7~9 北方謙三
「水滸伝」10~12 北方謙三
「水滸伝」13~15 北方謙三
「水滸伝」16~18 北方謙三
「水滸伝」19 北方謙三

+既読の北方謙三作品の感想+
「破軍の星」北方謙三
「楊家将」上下 北方謙三
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致死軍が青蓮寺に襲い掛かるなど水面下での動きが目立つ16巻、とうとう童貫が出陣する17巻、さらに戦況が厳しくなる18巻。

やっぱり童貫は強かったんですねえ。前から禁軍随一の実力という評判でしたけど、梁山泊側の苦戦が痛々しくなってしまうほど。あれだけのメンバーを揃えていても、やっぱり敵わないのですか! でも、こんなに強い軍を具えている国の内情が腐敗しきっているというのも、やっぱりどこか妙な感じが...。今回はどちらかといえば水面下の戦いが繰り広げられた16巻が面白かったな。燕青の意外な活躍ぶりも良かったし。
それにしても、気に入っていた主要メンバーが次々に死んでしまうのはやっぱり悲しい。特に18巻では、殺しても死にそうになかった人たちばかり散っていきます。そして、それらのメンバーをひっくるめたほど強い楊令の活躍ぶりには、ちょっとびっくり。いや、強いだろうとは思っていましたけど、ここまで...? これじゃあちょっと人間離れしてますよぅ。でもここから今執筆中の「楊令伝」に繋がっていくんですものね。(集英社文庫)


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「水滸伝」1~3 北方謙三
「水滸伝」4~6 北方謙三
「水滸伝」7~9 北方謙三
「水滸伝」10~12 北方謙三
「水滸伝」13~15 北方謙三
「水滸伝」16~18 北方謙三
「水滸伝」19 北方謙三

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官軍が10万以上の大軍で梁山泊を討とうと動き始める13巻、その軍がとうとう20万以上になる14巻、そして梁山泊が必死の攻防を繰り広げる15巻。

戦いに明け暮れたこの3巻。物語の前半ではどんどん人が集まってきていたんですが、この辺りになるともう本当にどんどん人が死んでいきます。その方が、本家本元の「水滸伝」の108人集まるまで誰も死なない状態よりも、余程自然なんですけどね... 北方さんご自身、「俺の水滸伝は死ぬんだよ」とインタビューの時に呟かれていたのだそう。
今回好きだったのは、林冲が単廷珪を叩きのめす場面。そして特に印象に残ったのは、石梯山での魯達と鄒淵の会話。

「俺は、天下などほんとうに考えたことはないんだ。梁山泊が天下を奪る。そうすれば、別の宋ができる。それだけのことだ。違うと思うか?」
「それは、いい国かもしれねえだろう?」
「宋も、建国された時は、いい国だった。民に活気があって、いろいろなものが発展した。それが、やがて腐った。」
「梁山泊が天下を奪っても、腐ると思っているのかい?」
「十年後は見える。多分二十年後も。しかし三十年後は霧の彼方で、五十年後はないも同じだ。(後略)」

いや、全くその通りですよね。だからといって、何もしないまま諦めるのは間違ってると思うわけですが。(集英社文庫)


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一度だけなら必ず勝てるという呼延灼が梁山泊に戦いを挑む10巻、もっと兵が集まるまでじっくりと力を蓄えたいという考えと、今が攻め込む時だという考えの対立が大きくなっている11巻、青蓮寺がとうとう闇塩のルートを探り出したのか?!という12巻。

ひーっ、この人が死んでしまうのか!という11巻なんですけども。
12巻での、「どちらでもいい、片方には死んで貰いたかった。ひとりが死んだあとに、そのことに気づいたよ」という台詞が凄いなあ。死んでしまったこと自体はとても衝撃的だし、みんなショックを受けてるけど、でも心の底にこういう思いを持っていた人も必ずいたはず。こういうところでウッと来るんですよね、北方さんの作品って。
でももうすっかり折り返し地点を過ぎて。これからは散っていく漢の方が多くなっていくんですねえ...。

そしてこの水滸伝を読んでいて、毎巻楽しみにしているのが実は解説だったりします。そもそも豪華メンバーだし、みんな熱いんですよねえ。語ってる語ってる。もっと本家の「水滸伝」との比較の話が多ければいいのに、なんて思ったりもするけれど。そして便利なのが登場人物表。なんていっても、登場人物が多いですからね。その巻の話に登場する順番で登場人物が紹介されていきます。戦死者の名前が載るようになったのも嬉しいところ。ただ問題は、その巻で官軍から梁山泊に加わったりする人物も、梁山泊の方に名前が入ってることかな。これで誰が加わるのかネタバレになっちゃいますしね。というよりも、この人はきっと加わるんだろうなと期待して梁山泊側の名前の一覧を辿ってしまう私の行動が、一番問題かしら。(笑)(集英社文庫)


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「水滸伝」1~3 北方謙三
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北方版「水滸伝」、全国を巡り歩いていてまだ梁山泊に入っていない宋江ら5人が大軍に包囲される7巻、祝家荘に入った官軍と梁山泊軍がぶつかる8巻、林冲に思わぬ罠が仕掛けられる9巻。

こういう作品には魅力的な敵役が不可欠だし、実際、青蓮寺の李富や聞煥章といった面々がそういった役割を務めてるのは分かるんですけど、官軍側があまりに魅力的になりすぎるのも問題なんですよね。読んでいても、宋という国の腐敗ぶりが今ひとつ伝わってこないような... もちろん役人は各地で賄賂を受け取って好き勝手してるし、禁軍にしろ地方軍にしろ、弛みきってる軍も多いみたいなんだけど、そんな全国から不満を持った人々が蜂起するほどとは思えないなあ。むしろ宋という国はとても大きくて、むしろ土台が堅固という印象です。そもそも青蓮寺みたいなしっかりした組織と人材があるんだし、たとえ腐りきっていたとしても、彼らなら民衆が決定的に蜂起する寸前の状態に押さえつけておくなんてことは簡単だったはず、とか思っちゃう。いくら不遇の状態に落とされてるからといって、れっきとした軍人がおいそれと叛徒に寝返るとも思えないですしね。でも、だからといって人材不足で勝負にならないなんてことになったら、それこそお話にならないし...。その辺りの兼ね合いがとーっても難しそう。
今回青蓮寺側がちょっと生彩を欠いていたのは、その辺りの関係なのかな~?
なーんてちょっと穿った読み方をしてしまいました。だって、今まで名前だけの登場だったとはいえ、あれほど恐れられていたはずのあの人物でさえ「あっさり」死んでしまうんですもん。この人物がやられるのはもちろん大歓迎なんですけど... でももうちょっと手応えが欲しかった気もするし... んんー、フクザツ。(集英社文庫)


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以前「三国志」を読んだ時は1巻ずつの感想を書いてたんですが(ブログではありませんが)、今回の「水滸伝」はどうもそれができそうにありませんー。こういう続き物だと、あらすじを書くこと自体がネタバレになっちゃったりしますしね。
...と言いつつも、前の感想では書かなかったあらすじをごくごく簡単に書いてみるとすれば...
1巻では志を持つ男たちがそれぞれの場所で立ち上がり、2巻で梁山泊という拠点を得て、3巻で青蓮寺という国側の組織が動き出し... といったところでしょうか。そして今回、4巻でとうとう青蓮寺側と梁山泊側がぶつかり始め、5巻では大きな動きが! 6巻では5巻の展開を補強するかのように、新たに両陣営に強力な人材が加わります。
なあんて書いてもあんまり意味がないかもしれないんですけど、一応こういう感想は自分のためのメモなので。何も書いてないと絶対ぜーんぶ忘れちゃいますしね。(笑)

1巻を読んだ時は正直それほど物語に乗れてなかったし、2巻3巻は「確かに面白いんだけど、まあ、そこそこ」といったところだったんですが、ここに来てようやく没頭できるようになってきたかな。4巻から5巻にかけての流れは、物語前半のクライマックスと言えるでしょうしね。いやー、こういう展開って読んでるのがツラいんだけど、目が離せません。あ、でももし今1巻から読み返したら、きっと初読の時よりもずーっと楽しめると思います。ちゃんとそれぞれの人物について掴めてきたので。...やっぱり、以前読んだ本家本元の記憶がすっかり飛んでしまってるのが痛いんだな。
そして今回、主要登場人物がとうとう1人死んでしまいました。結構気に入ってた人物なのでとっても残念。そしてその人物以外で私が今のところ特に気に入ってるのは、林冲と魯智深。この2人は出来るだけ長生きをしてくれるといいなあ。(集英社文庫)


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「水滸伝」7~9 北方謙三
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「水滸伝」16~18 北方謙三
「水滸伝」19 北方謙三

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北方水滸伝、全19巻。一昨年に文庫落ちし始めてから1冊ずつちまちまと買い続けていたんですが、今月中に最後の19巻が文庫で発売されるというところまできたので、ようやく読み始めました。これはぜひとも一気読みした方がいいと、以前ちょろいもさんにも言われていたし、自分の性格的にもその方が合ってると思ったので~。登場人物が多いのは分かりきってることなので、その名前を忘れてしまわないためにも、ですね。記憶力のなさには自信があるし。(自慢になりません・笑 ←笑いごとではない!)

で、読み始めたんですが...
実は私、本家本元の「水滸伝」をすーーっかり!忘れていることに気づいてしまいました。確か中学か高校の頃に中国古典文学全集の中に入ってるのを読んだ記憶があるんですけど、それほど愛着が湧かなかったんですよねえ。中国四大奇書と呼ばれる4つの作品のうち、小学生の頃から大好きだったのが「西遊記」、次いで好きになったのは「三国志演義」、そして「水滸伝」と「金瓶梅」は一通りさっと読んだだけだったような...。なので、北方版「三国志」を読んだ時のような、「うわ、あの人物がこんな風にかっこよくなっちゃうなんて!」という驚きが味わえないんです。これは実はものすごく勿体ないことかもしれません... だって北方版「三国志」のあの呂布ったら! 張飛ときたら! そしてあのラストってば...!(という私が一番好きなのは周瑜ですが♪)
ということで、まだまだ「三国志」の時のように夢中になって読み耽る状態までいってませんー。でもさすが北方版というべきでしょう、いい漢揃いなのは確かなので~。これからじっくり読み進めようと思います。(集英社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「水滸伝」1~3 北方謙三
「水滸伝」4~6 北方謙三
「水滸伝」7~9 北方謙三
「水滸伝」10~12 北方謙三
「水滸伝」13~15 北方謙三
「水滸伝」16~18 北方謙三
「水滸伝」19 北方謙三

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「地中海戦記3部作」と呼ばれているらしい3冊。一貫して描かれているのは、キリスト教の西欧諸国VSイスラム教のオスマントルコの戦い。「コンスタンティノープルの陥落」では1453年、「ロードス島攻防記」は1522年、「レパントの海戦」は1571年のそれぞれの出来事が中心に描かれています。

3作通して、なんだか小説を読んでるというよりも、まるでノンフィクションを読んでいるような印象の作品でした。やっぱりこの方の持ち味は、こういった硬質のノン・フィクション寄りの作風なんでしょうねえ。個人的な好みとしては、もっとフィクション寄りの作品の方なんですけど、実際には塩野さんの作品の中に描かれている恋愛模様なんかにはあんまりそそられないので... 結局こういった作風で正解なのかも。
3作ともどちらかといえば西欧側の視点から描かれてるんですが、私が興味津々だったのは、やっぱりというか何というかトルコ側。「コンスタンティノープルの陥落」で登場するのは、オスマントルコ帝国の基礎を築いたスルタン・マホメット2世。「ロードス島攻防記」は、夢枕獏さんの「シナン」(感想)や新藤悦子さんの「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」(感想)に出てきたスレイマン大帝。そして「レパントの海戦」に登場するのは、そのスレイマンの次にスルタンとなった息子のセリム。
でもこういう本を読むと、そういやトルコ軍の戦いっぷりってば残虐なんだった... と思い出させられちゃいますね。多分西欧側の視点から描いた本からの知識なので、必要以上に強調されていそうなんですが、「今降伏すれば全員の命は保証する」なんて言っておきながら、いざ降伏したら皆殺しにしちゃった、なんて印象がものすごーくあるんです。そして実際、「コンスタンティノープルの陥落」や「レパントの海戦」では、そういった一面も。でも驚いたのは、スレイマン大帝の紳士的なこと! ここまで紳士的なのってヨーロッパにも珍しいのではないかしら... 作中ではフランス貴族が引き合いに出されていて、「スレイマンこそ本当の騎士だった」なんて聖ヨハネ騎士団長が言ってたりします。本当にそうだったのかしら。でも実際がどうだったにせよ、こういった描き方ができるのは、キリスト教国家でもイスラム教国家でもない国の人間だけでしょうね。
実際の戦いの場面が中心で、そういうのは本当はあまり得意じゃないんですが、色んな立場の人間の視点から多層的に描かれているのが面白かったし、防衛的な城砦の構築なんかの話もすごく興味深かったです。聖ヨハネ騎士団についても知りたいと思っていたので丁度良かったし! でもやっぱり小説を読んだ~というより、勉強したな~って気分になるんですよね、塩野さんの作品って。(笑)(新潮文庫)


+既読の塩野七生作品の感想+
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

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ある6月の雨の日。仕事途中に立ち寄った青山のギャラリーの扉を押し開けた途端、思いがけない芳香に鼻をくすぐられて驚く友香。それは人間ではなく、ギャラリー奥の壁にかけてある小さな布裂から漂ってくる匂いでした。その週、ギャラリーではトルコの染織をテーマに絨毯やキリムを展示していたのです。その芳香に引き寄せられるように友香は毎日のようにギャラリーを訪れ、その布裂が13世紀のコンヤ地方の村で作られた貴重なトルコ絨毯だと知ることに。そして「匂いは、追わないと消えますよ」というオーナーの言葉に後押しされるように、友香はいい匂いのする絨毯を探しにイスタンブルへ...。

匂いがポイントになるという時点で、実はちょっと引きそうになりましたが... パトリック・ジュースキントの「香水 ある人殺しの物語」(感想)を読んだ時は全然そんなことなかったのに、なんでだろう? 体調の違い?(今、ひどい風邪をひきそうなところを一歩手前で踏みとどまってるような、イヤんな感じがあるのです) 読んでみれば結構面白かったです。芳香を放つ絨毯を探して旅をする物語。現代のイスタンブルから、13世紀のビザンティン帝国の首都・コンスタンティノポリスまで行くことになるという、タイムトラベル物でもあります。
トルコに何度も滞在している新藤悦子さんならではの現在や昔のトルコの描写や絨毯の話もたっぷり。トルコのルーム・セルジューク朝の最盛期を築いたスルタン・ケイクバードと、ニカイア帝国の「千の耳」テオドータの恋を通してトルコの歴史的な一面をも見ることもできて、雰囲気もたっぷり。もっとこの辺りの歴史的な小説を色々と読んでみたいな。(東京書籍)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

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夜中の火事で、仁吉と佐助に起こされた若だんな。しかし中庭に向いた離れの板戸を開けた途端に煙を吸いこんでしまった若だんなは、気づくと賽の河原にいたのです... という「鬼と小鬼」他、全5編の連作短編集。

しゃばけシリーズの第6弾。
今回、いきなり若だんなが三途の川のほとりに行ってしまってびっくり~。でも他の短編も「死」や「別れ」を強く意識させられる作品ばかりでした。特に最初の「小鬼」と最後の「はるがいくよ」。
この「はるがいくよ」が余韻が残る作品でいいですねえ。生まれたその日から病弱で、いつまで命が持つのか分からない若だんな。たとえ若だんなが病で亡くなることがなかったとしても、人としてせいぜい数十年を生きるのみ。後に残される妖たちは、その後も長い年月を生きることになるんですが、普段自分があんまり「死」の近くにいるから、若だんなはそんな当たり前のことを実感として知ることはなかったんですね。自分が置いていかれる身になって初めて、そのことに改めて気づかされることになるわけです。小紅の存在が切ないながらも、とても健気で可愛らしい~。(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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1542年。父のカワと一緒に羊を連れて山の上の草原に来ていた7歳のネフィが出会ったのは、バロという男。人に追われて3日3晩飲まず食わずで歩いてきたというバロは、食料と水をもらったお礼に、遥か西にあるオスマンの国の都イスタンブルの話を物語ります。それは、スルタン・スレイマンがぞっこん惚れ込んで1年前に正式な妃にしたフッレムが宮廷の新しいハレムの庭に青いチューリップを欲しがっているという話。そして何年も青いチューリップの研究をし続けているアーデム教授の話。青いチューリップは都では幻の花とされていました。しかし、カワやネフィの来るこの山では咲いているのです。突然行ってもスルタンには会ってもらえないと考えたカワとネフィは、青いチューリップの球根を持ってアーデム教授に会いに行くことに。

トルコに造詣の深い新藤悦子さん初の児童書という作品。読んでみると夢枕獏さんのシナン(感想)とかなり時代的に重なっててびっくり。背景は16世紀のスレイマン1世の時代。シナンはもう既に建築家頭となっていて、アヤソフィアを凌ぐモスクを建築させようとしていた頃の話です。まあ、この時代がトルコにとって黄金時代だから当たり前といえば当たり前なんでしょうけどねー。それにスレイマン1世もシナンも名前しか登場しないんですけどね。あ、でも、「青いチューリップ、永遠に」の方にはスレイマン妃のロクセラーヌが登場していました。(この作品ではフッレム妃という名前) そしてイブラヒム大宰相とのエピソードも。

その後のヨーロッパでのチューリップ狂時代を予感させるようなストーリーを下敷きに、都に出てきた羊飼いの少年・ネフィの成長や、絵師に憧れるアーデム教授の娘・ラーレの話などが展開。面白かったんだけど、描きたいことがちょっと多すぎたかも、という印象も...。これだけ詰め込んだにしてはよく整理されていると言えるんでしょうけど、もうちょっと絵のことに焦点絞っても良かった気もします。絵師頭の一番弟子・メフメットの葛藤とか、もっとじっくりと読みたかったし。でもこの辺りの話は本当に興味深いです。当時のトルコでは写実的な絵は基本的に禁止されていて、肖像画を描くこともできないし、花の絵を描くにもいちいち文様化しなくちゃいけないというのがあるんですが、見たままを描くのが好きなラーレは、それがどうしても納得できないんです。で、宮廷の絵師頭をしている祖父に尋ねるんですね。その時の答が「文様にだって生命(いのち)がある。目に映るものを、一度殺して、新たな生命を吹き込む、それが文様というものじゃ」という言葉。これがとっても印象的でした。
そして「青いチューリップ、永遠に」は、それから1年後の話。こちらの方が新藤悦子さんの肩からも力が抜けたのか、話の中心がはっきりしていて読みやすいです。波乱万丈という意味では少し控えめになってるし、1作で勝負という感じだった前作に比べて、良くも悪くもシリーズ物になっちゃってるんですけどね。中心となっているのは、相変わらず絵師に憧れているラーレと、印刷された本を初めて目にして、宝石のような本よりも、人々が手に取りやすい薬草帳を作りたいと考えたネフィが中心。ラーレは描いた絵が認められて、女絵師としてちやほやされるようになるんですが、そこで気づかされるのは、「生きている」ことと「生かされている」ことの違い。籠の中の鳥よりも空を飛ぶ鳥の方が、のびのびと歌うということ。いくら華やかで美しい世界だろうと、閉ざされた世界にいるよりも外の自由な空気の方が大切だということ。となると、ラーレを巡る青年たちの中では、型破りなネフィがいかにも魅力的に映るわけで...。ライバルのメフメットにももう少し見せ場を作ってあげて欲しいなー。(講談社)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

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天平18年秋8月。備前国から平城京に庸調を納めに行く一行の中にいたのは、采女として後宮で仕えることになっている広虫と吉備真備の娘の由利。男ばかりの一行の中で2人はすぐに意気投合します。そして、京まであと3日というところで拾ったのは、行き倒れていた百世という少年。百世は母を亡くし、丹波笹山から大仏鋳造のタタラで働いている父を探しに来たのです。京に着いた2人は早速吉備真備に葛木連戸主を紹介され、百世の父親探しに乗り出すのですが... という「三笠山」他、全4編の連作短編集。

奈良時代、聖武天皇から称徳天皇までの時代を舞台に、4編でそれぞれ東大寺の大仏建立、正倉院への宝物奉納、藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱、そして道鏡の野心と宇佐八幡の神託が取り上げられていて、この時代の主な出来事を網羅してる連作。風待屋の sa-ki さんに教えて頂いた本です。sa-ki さんから芝田勝茂さんの「サラシナ」(感想)と時代的に結構重なってるとは聞いてたし、確かにそちらとも重なってたんですが、それ以上に高橋克彦さんの「風の陣」(感想)と重なっていてびっくり。「風の陣」は、「立志篇」「大望篇」「天命篇」の3巻を読んだんですが、それぞれ橘奈良麻呂、藤原仲麻呂(恵美押勝)、弓削道鏡を取り上げてるんです。スタートが微妙にズレてはいるけど、もうまるっきり同じ時代の話。でも雰囲気がまるっきり違っていて、それもびっくり~。「風の陣」は、陸奥出身の丸子嶋足という青年を主人公にした正統派の歴史小説なんですが、こちらは広虫と戸主という内裏で共働きをしてる夫婦を中心に据えていて、もっと明るいユーモアたっぷりの作品なんです。味付け程度とは言え、ファンタジーがかった柔らかさもありますし。どちらもそれぞれにそれぞれの作家さんらしさが出てて面白いんですが、同じ歴史的事実を描きながらも書き手によってこれほど違ってしまうとは、両極端~。(笑)
4編の中で一番面白かったのは、2編目の「正倉院」。こんな裏話があったなんて、正倉院の宝物を見る目が変わっちゃうな。あと面白かったのは、吉備真備の長女の設定。これにはびっくり! 言われてみれば、確かに同じ時代ですものねえ。でも、一体どこからこんなアイディアが浮かんだのやら。(笑)(文芸春秋)


+既読の山之口洋作品の感想+
「オルガニスト」山之口洋
「0番目の男」山之口洋
「天平冥所図会」山之口洋

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長年大切に扱われてきた器物の中には、百年を経ると妖(あやかし)と化して力を得て、つくも神となるものがあります。お紅と清次の姉弟が切り回している小さな古道具屋兼損料屋・出雲屋には、そんなつくも神となった古道具がいっぱい。そしてそんなつくも神となった品物は売り払われることなく、日々様々な場所に貸し出されているのです... という連作短編集。

お紅と清次の店にあるつくも神は、掛け軸の月夜見(つくよみ)、蝙蝠の形をした根付の野鉄、姫様人形のお姫、鷺の煙管の五位、櫛のうさぎ、金唐革の財布・唐草といった面々。大切にされてきた古い品がつくも神になるという設定はいいと思うし、実際このつくも神たちとなった品々が愛嬌あるんです。お紅と清次もいい感じだし、そこまでは順調。とっても可愛らしい話になりそうでワクワクしちゃう。でも、そこからが... うーん。
肝心のつくも神たちと人間2人の距離が、なんだか中途半端な気がしちゃうんですよねえ。つくも神たちは、お紅と清次を気にせず喋りまくってるけど、2人に話しかけられた時は返事をしないと決めてます。2人が何か知りたいこと、つくも神たちに調べてもらいたいことがある時は、つくも神たちの前でわざとらしく話題にしてから、つくも神たちを関係各所に貸し出すんです。
この話が「しゃばけ」シリーズとはまた違うのは良く分かってるし、これもまた決まりごとの1つだとは思うんだけど...
つくも神たちが「人間とは決して話さない」と決めてる根拠が、イマイチ薄くないですか? なんだかすっきりしないんですよね。お互いのやり取りが遠まわし遠まわしで、どうにも不自然だし...。しかもつくも神たちが期待したほど活躍してくれなくて、結局単に噂集めをしてるだけ。
...というのは、まあ、読んでいるうちにだんだん気にならなくなってくるんですが。

やっぱりこのラスト、あまりにあっさりとしすぎてやいないでしょうかね? あれだけ「蘇芳」「蘇芳」って騒いでいたのに、途中経過の一波乱二波乱もなく、これだけですか? うーん、正直言って拍子抜け。可愛らしい話なんですけどねえ。それだけに、もう一捻り欲しかったなあ。(角川書店)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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オスマントルコ時代の著名な建築家・シナンは、1488年にトルコのカッパドキア地方の小さな村に生まれ、24歳の時にデヴシルメという少年徴集制度によってイスタンブールへ、オスマントルコを巨大な帝国としたスルタン、スレイマン大帝の下でなんと477もの建築作品を作ることになったという人物。キリスト教徒だったシナンが、信仰を変えてまでデヴシルメに志願したのは、イスタンブールに出て聖(アヤ)ソフィアをその眼で見てみたかったため。聖ソフィアはその当時でこそイスラムのジャーミー(モスク)となっていましたが、元は1千年前にキリスト教徒が建てた建物。村にいたキリスト教の神父から、聖ソフィアこそが人が造り出した最も神がよく見える場所だと聞いて以来、シナンはそれを自分の眼で確かめたいと思っていたのです。

トルコで最も偉大な建築家と呼ばれるシナンの一生を追った小説。元々トルコにはすごーく興味があるし、この小説もとても面白かったのだけれども... うーん、夢枕獏さんの小説を書くときの癖のようなものが気になった作品でもあったかな。それは小説を通して作者の存在が強く感じられてしまうということ。例えば「陰陽師」や「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」のような、日本もしくはそれに近い環境の小説の中では、それもまたいいと思うんですけど、こちらは舞台がオスマントルコですからねえ。なんだか舞台裏を見せられているようだったし、必要以上に作り物の部分を意識させられてしまって、いつもみたいにすんなり物語の中に入り込めなかったかな... それがちょっと残念でした。それに、歴史小説というのは作者がいかに人物を作り上げるかにかかっていると思っているんですけど、その辺りでも掘り下げ方が少し物足りなかったです。シナンとハサン、ザーティといった人物との友情はあるんですけど、例えばシナンの恋愛観なんかについては全く触れられていないですしね。スレイマンとロクセラーヌ、そしてイブラヒムやハサンの辺りは面白かっただけに、肝心のシナンについてももっと作りこんで欲しかったところ。...とは言っても、やっぱり読みやすかったし面白かったんですけどね。期待しすぎちゃったかな。あ、あとシナンの持ってる神の概念自体には私とかなり近いものを感じたんですが、聖ソフィアの不完全さとサン・マルコ寺院における神の不在についてはすごく意表を突かれて面白かったです。それに最後は感動的。そうそう、こういう物語の色気(?)みたいなのが欲しいんですよ~。(中公文庫)


+既読の夢枕獏作品の感想+
「陰陽師 龍笛の巻」夢枕獏
「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」夢枕獏
「陰陽師 鳳凰ノ巻」夢枕獏
「『陰陽師』読本 平安の闇に、ようこそ」夢枕獏
「シナン」上下 夢枕獏
(Livreに「猫弾きのオルオラネ」「羊の宇宙」「大帝の剣」「陰陽師-付喪神ノ巻」「陰陽師-生成姫」「陰陽師-鳳凰の巻」の感想があります)

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やり場のない怒りを抱えて家を飛び出し、粗末な小船を操っていた二郎が、一羽の翡翠に導かれるようにして辿り着いた場所は、まるで桃源郷を思わせるような満開の桃林。そしてその桃林で、10年ぶりに幼馴染だった七娘と小妹と再会します。七娘は金色の毛の猿に、小妹は白虎にそれぞれ導かれてこの地にやって来たのです... という「楽昌珠」他全3編の連作短編集。

簡単に言ってしまうと、久しぶりに再会した幼馴染たちが、酒を酌み交わしながら宴を囲んでいるうちにふと寝入ってしまい、夢とは思えないほどリアルな夢を見るという話。この夢の中では、科挙に受かって立身出世をしたかったという二郎の夢が叶っていて、唐の武則天の時代の権謀術数渦巻く宮中にいるし、現実の世界では怪我をしていたはずの七娘はピンピンしてるし、小娘が妓楼に売られるなんてこともないんですよね。3人の名前も年齢も、桃林と夢の中では違うし、3人の関係だって全然幼馴染じゃないんです。この宮中でのドロドロとした話が面白い! 桃林に元々現実味のあまりなかっただけに、本当はどちらが現実なのか分からなくなってしまうほど。久々に森福都さんらしい話だなあ~と嬉しくなっちゃう。この作品には高力士も登場するんですが、以前の作品の設定とはまた全然違っていて、ニヤリとしてしまうし。
...でもね。これで終わりなのでしょうか? あの桃林には、結局どういう意味があったの? あの3匹の動物たちは? 3人はただ現実逃避をしていただけだったのか、それとも...? 本としては、一応これで完結してしまったみたいなんですけど、これじゃあ話としてちゃんと落ちてないですよね。それともこれで本当に終わりなのかしら。ええと、最後のあの思わせぶりな書きっぷりは回想シーンじゃなくて、新しい環が始まったってことなんでしょうか。もしそうだったら、今度は実は弄玉があの有名な妃だった、なんていうのも楽しいと思うんですが...。
これはぜひとも続編をお願いしたいものです。このまま放り出されたら、落ち着かないわ~。(講談社)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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与次郎が語ったのは、言い伝え通り恵比寿像の顔が赤くなった時、1つの島が滅んだという話。それを聞いて正馬と惣兵衛は非合理な話だと強く否定し、剣之進1人があり得ることだと反論。剣之進は実際にその話の証拠として「豊府紀聞巻四」を見つけてきます。しかしそれでも正馬と惣兵衛は、確かに恵比寿像の顔が赤くなった後に天変地異が起きたのかもしれないが、その2つの出来事の因果関係が証明されたわけではないと言うのです。結局4人は薬研堀のご隠居のところに話を聞いてもらいに行くことに... という「赤えいの魚(うお)」他、全6編の収められた短編集。

一体いつ以来...? の京極作品。京極堂のシリーズの方だって、あんなに夢中になってたのに、「宴の始末」辺りから気持ちが離れ始めて、結局「邪魅の雫」も読まなかったんですよねえ。でもこの作品はともっぺさんにとても良かったと教えていただいて、読んでみました。「続巷説~」がとても綺麗に閉じていてすごく良かったので、あれ以上一体何を書いたんだろう?って思ってたんですけど、ともっぺさんも読む前は似たようなことを感じてらしたのに、読んでみたらすごく良かった~と仰ってたので。
「憑き物」を落として人を正気に戻す京極堂シリーズに対して、こちらは「憑き物」を利用して人を正気に戻すシリーズ。でも時代は既に明治となっていて、今までの話とはまた趣向が違いました。百介はもうすっかり老人だし、文明開化の時代を生きる4人の若者たちが中心。

最初のうちは、それぞれに確かに面白いんだけど、同じパターンが続くなあ... って感じだったんです。でもね、最後の「風の神」が良かった! きっとこの部分を書きたかったんですね、京極さんは。「彼岸」と「此岸」に関する部分がしみじみと良かった。百介が又市たちと過ごしたのはほんの数年間のこと。その後又市たちは百介の前に姿を現さなくなって、百介自身は又市たちに見捨てられてしまったように感じてるんですが、でもそれはきっと本当は全然違うんですね。大きな愛情が感じられるなあ。もしかすると又市たちにとって、百介は最後の良心だったのかも。江戸から明治へと移り変わった時代の中で、最早妖怪に用などなくなってしまったというのは、どうも寂しいんですが、やっぱりこの境目の時期だからこその話だったんだなあ。(なんて言ったら京極堂のシリーズはどうなんだ?なんですが)
あ、京極堂のシリーズに直接繋がる人物も複数登場してました。結局のところ、全部そっちに流れ込むってことなのね。(笑) (角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「巷説百物語」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「続巷説百物語」京極夏彦
「後巷説百物語」京極夏彦

+既読の京極夏彦作品の感想+
「百器徒然袋-風」京極夏彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります

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虫がついた葉を切ろうとして、丹精こめて育てていたひょうたんのつるそのものを切ってしまい、落ち込むサキ。しかしそんなある晩、サキの夢の中にそのひょうたんが出てきます。夢の中のひょうたんはつるを切られてなどおらず、つっかい棒をつたって元気に壁を登っていました。それからというもの、ひょうたんは毎日のように夢に登場し、どんどん伸びて花が咲き、実がなります。サキは夢の中のひょうたんをもいで加工、夢の中の部屋に飾ることに。そしてもう夢も終わりだろうと思ったその時、ひょうたんを持っていたサキは空に浮かんだのです。そのまま窓の外に出て、空を飛んでいたサキが降り立ったのは、古い時代の武蔵の国。そこでサキは不破麻呂という若者に出会うことに。

芝田勝茂さんの作品を読むのは初めて。風待屋 の sa-ki さんに教えて頂いたんですが、いやあ、可愛らしいお話でした! 中心となっているのは菅原孝標の女の「更科日記」(だから「サラシナ」)の中の「竹芝伝説」で、史実と虚構を織り交ぜて書かれたタイムスリップ物。タイムスリップ先は聖武天皇の時代。先日読んだ高橋克彦さんの「風の陣」(感想)よりも、ちょっぴり時代を遡った頃。
ピンクのネグリジェ姿で空から降りてきたサキは、見慣れた多摩川があんまり綺麗で、しかも人影が全然ないんで、服を脱いで川で泳いだりするんですよね。それを見ていた不破麻呂が天女伝説と結びつけてしまうところが、まず可愛い~。天女とは言っても、案外本当にそんなところかもしれないですものね。宇宙服を脱いだ宇宙人とか。(笑) でもって、不破麻呂に出会った後の古代の多摩川での描写が素敵なんです。「多摩川に 晒す手作り さらさらに 何ぞこの娘の ここだ愛しき」と歌いながらの川で布を晒す娘たちや、酒壷の中でゆらゆらとゆれてる直柄のひさごとか... 不破麻呂のひさごの歌と踊りが見てみたくて堪らなーい。
で、一旦現代に戻るサキなんですが、またこの時代に来ることになります。でも今度は天女としてではなくて、天皇の第4子の竹姫こと更科内親王として。なんでここで竹姫になっちゃうのかという必然性については、ちょっと疑問なんですが... 更級日記だから天皇の姫にする必要があるのは分かるんだけど、サキがそうなる必要は特にないですしね。でも竹姫の祖母の皇太后が語る恋物語に竹姫自身の話、そしてサキと不破麻呂の話が重なって、この時代をすごく身近に瑞々しく感じることができたので、まあいっかという感じでした。サキよりもむしろ竹姫の方が身近に迫ってきましたし。ああ、この話の後、どうなったのか気になるなあ。サキの2度目の登場の仕方からいえば、この後彼はちゃんと幸せに暮らしたんじゃないかとも思うんだけど... それはまた別の話なんですね。きっと。(あかね書房)

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聖武天皇による寺院建立や大仏鋳造が続いた天平21年、陸奥から黄金が発見されたという知らせが朝廷に届きます。日本初の黄金産出の知らせに、陸奥に対する朝廷の眼差しは一変。そしてその黄金を陸奥守に貢いだのが父の丸子宮足であったことから、丸子嶋足は陸奥守について都に上ることに。嶋足はかねてから都で自分の腕を試したい、いつかは陸奥守となって故郷に戻り、陸奥を都と変わらない国にしたいと考えていたのです。そして嶋足が都に上って8年の歳月が流れます。右兵衛府の見回りの長になっていた嶋足の前に現れたのは、同じく陸奥の出身である物部天鈴。嶋足は天鈴の助けを得て、やがて左衛士府の坂上苅田麻呂の片腕となることに。

ここに登場する坂上苅田麻呂は、「火怨」の坂上田村麻呂のお父さん。「火怨」の前日譚的作品なんですねー。
今回読んだのは、「立志篇」「大望篇」「天命篇」の3巻。読んでる最中は、この3冊で完結するのかと思い込んでたんですが、「天命篇」を読んでる時に、どうも終わりそうもないなあ、と気づきました...。調べてみたら、先月4巻「風雲篇」の単行本が出たところじゃないですか。しかも、今は5巻目に当たる「裂心篇」が連載中ですって。ここで一旦主人公が別の人物に変わっているとか。とは言っても、また嶋足に主人公が戻るんだろうし... 一体、何巻までいくんだろう?(笑)
「立志篇」は橘奈良麻呂、「大望篇」は藤原仲麻呂(恵美押勝)、「天命篇」は弓削道鏡と、それぞれに時の権力者を抱きこんでわが世の春~♪ を謳歌しようとしてたり、実際謳歌してた人たちを、嶋足や天鈴が蝦夷のために追い込んでゆくさまが描かれています。話そのものもすごく面白いんですけど、例えば吉備真備とか和気清麻呂なんかも登場して、自分の中では名前だけの存在だった人たちがどんどん繋がって広がっていくのが、また面白いんですよね~。教科書で読んでる分には、あんなに面白くなかったのに。歴史物の醍醐味ですね。これは続きも楽しみです。
3巻合わせて全部で46の章があるんですけど、その章題全てが風にまつわる言葉なんです。これがまた想像力をかきたててくれて、いい感じです。(PHP文庫)


更新にちょっと間があきましたが、実はちょっと熱を出したりして体調不良...。その間に第38回たら本も始まっていたようですね。今回のお題は、「何か面白い本ない?」という無謀な問いかけに答える、です。主催はりつこの読書メモのりつこさん。(こちら
体調の悪さもあるんですけど、この問いかけにはイタイ思い出が色々と... しかもなんだか生々しく蘇ってきちゃったので、今回は参加できないかもしれません。うむむ。


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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唐の玄宗皇帝の時代。金品を溜め込んで県令を引退した父のおかげで、無為に100歳まで暮らしても十分おつりがくるということに気づいた王弁は、その日から机を離れ、武具を持つこともなく、何もせず佳肴を楽しみ、風光を愛でる日々。そして父は、まだ22歳の息子が日がな一日庭でぼおっとしている不甲斐なさに怒る日々。しかし近くの黄土山に仙人が住み始めたと聞きつけた父は、息子に供物を持たせて仙人に会いに行かせることに。黄土山中の庵にいたのは、王弁が想像したような見事な白髪姿の仙人ではなく、若く美しい少女の仙人。少女は「僕僕」と名乗ります。仙骨はないものの、「仙縁」はあるという王弁は、早速僕僕と酒を酌み交わし始めて...。

第18回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞作。ずーっと図書館に予約を入れてた作品。待ってる人数は10人もいなかったのに、延々半年以上待たされて、ようやく読めました!
何万年も生きているらしい仙人の僕僕が、なんと美少女の姿をしていて、仙人だという説得力を出す時だけ老人の姿になるというのも人を食っていて楽しいし、少女の姿をしていると、くるくると表情が変わる本物の可憐な少女に見えてくるのが不思議。そしてそんな僕僕に振り回されてるうちに、日々ふわふわと生きるだけで覇気が全くなかった王弁が徐々に自分を持ち始めるというのもいいですね。2人の間の淡い恋心も可愛らしくて、ほのぼの~。ただ、僕僕が王弁のどこを気に入ったのかは、今ひとつ分からないんですが。(笑)
時代背景としては、玄宗皇帝が即位して間もない頃。楊貴妃がまだ現れてなくて、玄宗皇帝が優秀な皇帝として唐を治めていた頃です。中国の神話を始め、「列仙伝」などに登場する仙人の名前や、「山海経」に登場するような異形の存在、そして中国史上の人物の名前なんかがあちこちにばらまかれていて、中国物好きとしては堪らないところ♪ (この辺りはそれほど濃くないので、全然知らなかったとしても問題ないと思いますが) ただ、今のままの緩めの雰囲気もとても心地良かったんですけど、エピソード同士の繋がりが薄くて、なんだかちょっと散漫な感じもあるんですよね... もう少し整理すれば、もっと芯の通った話になっただろうに惜しいな、という気もちょっぴりしました。...それでもやっぱり好きなんですけどね。この方はこれからも中国物を書かれるのかしら? そうだったらいいな。楽しみ!(新潮社)


+シリーズ既刊の感想+
「僕僕先生」仁木英之
「薄妃の恋 僕僕先生」仁木英之」

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上方で算法を収めた町医者の父に幼い頃から手ほどきを受けたあきは、まだ13歳ながらも、算法の学力はかなりの水準。近所の娘たちと浅草の観音さまにお参りに行った時にも、奉納されようとしていた算額に誤りがあるのを見つけてしまいます。算額とは、表向きは勉学の進歩を神仏に感謝するものなのですが、その実態は、自分の学力を大勢の人の前で誇示するもの。奉納しようとしていたのは、江戸での算法の中心的な存在である関流の宗統・藤田貞資の直弟子で、しかも旗本の子弟だったため、町人の小娘のやっつけられた話は算法家の間ですぐに広まってしまいます。そして話は筑後久留米藩の有馬候にまで伝わり、算法好きの有馬候はあきを姫君の算法御指南役に迎えようと考え始めます。しかし、あきがやっつけた相手の師匠・藤田貞資から、横槍が入って...。

先日、掲示板でアッシュさんにオススメしていただいた本。この「算法少女」という題名は、作者の遠藤寛子さんがつけたものではなくて、安永4(1775)年に刊行された和算書「算法少女」からきたものなんだそうです。江戸時代の「算法少女」を書いたと言われているのが千葉桃三という町医者で、それを手伝ったのが娘のあき。遠藤寛子さんが、あきによる前書きを繰り返し読んで、内容を詳しく調べているうちに、徐々に心の中に育ってきた物語なんだとか。
日本古来の数学である「和算」の存在自体は知っていましたが、江戸時代に、これほど和算が庶民の間に広まっていたとは、全然知りませんでしたー。既に相当高いレベルに達していたようですね。正確な円周率の算出方法などもあって、流派の秘伝とされていたよう。そもそも、万葉集にも九九を使った句があるんだそうですよ! 「十六」と書いて「しし」と読ませたり、「八十一」と書いて「くく」と読ませたり。でもそれほどの和算も明治以降はすっかり影を潜め、西洋の数学が中心になってしまったんですって。勿体ないなー。
物語としては、詰めの甘さもあるんです。せっかくの有馬候の御前での算法対決の場面なんかは、もうちょっと盛り上げて欲しかったところ。でも元々は児童書だそうだし、この品の良い語り口には、この展開が合っているのかもしれないですね。いやあ、本当に可愛らしいお話でした。あとは、物語の中に登場する問題とその解き方が巻末にでも載っていれば、尚良かったのにな。これを読んで、数学の問題を解きたくなる人もきっといるはず!(笑)(ちくま文庫)

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紀元前100年、ローマの貴族の家に誕生したユリウス・カエサル。ローマ史上最大の英雄・カエサルはどのような時代に生まれて、どのような育ち方をしたのか。どのように世に出たのか。前半はカエサルの誕生から若い頃のエピソードを、後半は2000年経っても未だに世界中で読まれている「ガリア戦記」を中心に、有名な「賽は投げられた」のルビコン川までの、カエサルの前半生の姿を描き出します。

先に読んだ「ローマ人の物語 危機と克服」でも何度も名前が登場していて、塩野七生さんのカエサル好きが伺えるなあと思っていたのですが、やっぱりカエサルの部分には力が入っていますね! 「ガリア戦記」を読む前に、と思って読んだんですが、いやあ、面白かったです。
何が面白かったかといえば、肝心の「ガリア戦記」以前。(あらら) 後に圧倒的な天才ぶりを見せ付けるカエサルですが、実は若い頃のカエサルは借金王のプレイボーイだったんだそうで! お洒落には人一倍気を使うダンディぶりで、これぞと思う女性には贈り物攻撃。でも女性関係が派手な割に、相手の女性に恨まれることが全然なかったのだとか。(ここで塩野七生さんの洞察が鋭いです!) お洒落にお金を使い、女性には高価な贈り物、しかも私費で公共事業なんかもやっちゃうんですから、借金は莫大な額になってます。でもその借金をほとんど気にしなかったというのが、やっぱり大物なんですね。自分の資産を増やそうとするわけではなかったというのもポイントなんでしょう。そして借金が莫大な額になると、債権者と債務者の立場は逆転してしまうんですね。知らなかった。(笑)

そんなカエサルが本格的に芽を出し始めたのは、クラッススとポンペイウスと始めた三頭政治とガリアへの遠征。
ガリアとはギリシャ語で「ケルト」のことなんですよね。(それもあって「ガリア戦記」を読もうと思ったわけです) 位置的には現在のフランスとその周辺で、途中2度ブリタニア(現イギリス)にも上陸しています。ウィンストン・チャーチル曰く、このカエサルの上陸をもって英国の歴史が始まったのだとか。(その発言って英国人としてどうよ? と思ってしまいますが) このガリア戦記の部分から見えてくるのは、カエサルの戦略や決断の確かさ、そして度量の広さ。「お前達の命よりも私の栄光が重くなったら指揮官として失格なのだ」なんて発言もあって、部下の心の掴みもばっちり。やっぱりプレイボーイとして遊んで人生経験を積んでいたからこそでしょうかー。(笑) 時には同盟していたはずのガリア人に裏切られることもあれば、味方の兵士たちが浮き足立ってしまうこともあるんですけど、その戦略家としての手腕は確かですね。勝った後の敵の扱い方とかも、見てるとやっぱりすごいなって思っちゃう。

で、「ローマ人の物語」の後に「ガリア戦記」も読みました。やっぱり「ローマ人の物語」を先に読んでおいて良かった、というのが正直なところ。ガリア人の部族名の訳などが微妙に違うので、その辺りは分かりづらかったんですけど、その時ローマでは何が起きていたか、なんてことは「ガリア戦記」だけでは分からないですしね。塩野七生さんが作り上げたカエサルの造形もあいまって、単体で読むよりもかなり理解できたのではないかと。(新潮文庫・岩波文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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紀元68年の皇帝ネロの自死から、紀元97年の五賢帝の最初の1人・トライアヌスの登場までの29年間は、ガルバ、オトー、ヴィテリウス、ヴェスパシアヌス、ティトゥス、ドミティアヌス、ネルヴァという7人次々にが即位することになったという、ローマ帝国史上における「危機と克服」の時代。タキトゥスの「歴史」他の資料を元に、塩野七生さんが自分の考えも交えながら描き出していくローマ史です。

最近、リンゼイ・デイヴィスのファルコシリーズ(感想)にハマってるんですが、そのシリーズを読みながら、この時代についてもっと知りたいなあと思ってたんです。この「ローマ人の物語」は通読するにはかなり長いけど、ローマ帝国500年の歴史を年代順に追ってるので、読みたいところを集中的に読むのに便利ですね! しかもヴェスパシアヌス帝という、どちらかというと地味な時代のことを知りたいなら尚更。(笑)
いやあ、面白かったです。主要な登場人物の名前が既に頭に入ってるっていうのも大きいかもしれませんが、もしそうでなかったとしても、これならきっと面白く読めたはず。学者の書く歴史とは違う、作家として描き出す歴史は、読み物としてすごく面白いし、しかもすごく分かりやすかった。暴君として悪名高いカリグラやネロ、そして五賢帝の時代に挟まれて、どうしても地味に思われがちなこの時代なんですけど、いやあ、全然地味じゃないです。スペイン北東部の属州総督としては公正な統治をしていたたガルバ、ルジタニア属州の総督として善政が評判だったオトー、特に何もしてはいなかったけれど、マイナス材料もなかったヴィテリウスの3人が、なぜ皇帝としては失敗だったのか、3人の相次ぐ死で乱れ切っていたローマ帝国を、なぜ「田舎者丸出し」だったヴェスパシアヌスが立て直すことができたのか、よーく分かりました。それぞれの人間性が丁寧に描かれていくことによって、すごく説得力が出てきますね。

ファルコシリーズでは、ヴェスパシアヌスとティトゥス、ドミティアヌスが登場してて、3人ともファルコに散々な言われようをしてたりするんですけど、あれはまあ愛情の裏返しということで...。(笑) やっぱりこの3人の堅実ぶりはいいですね。カエサルのようなカリスマ性はなくても、華々しい偉業がなくても、日々の地道な努力で帝国を安定させ、繁栄させることは十分可能だということなんでしょう。最後のドミティアヌスは15年の治世の後に暗殺されてしまうんですけど、その彼にしたって、悪い皇帝だったとは思えないです。何よりも健全な財政を次世代に引き継いだというのが大きいし... この3人がいたからこそ、五賢帝が五賢帝でいられたとも言えそう。
古代ローマには以前から微妙な苦手意識があったんですが、どうやら払拭できそうな予感です。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず」1・2 塩野七生
「ローマ人の物語 ハンニバル戦記」3~5 塩野七生
「ローマ人の物語 勝者の混迷」6・7 塩野七生
「ローマ人の物語」8~10 塩野七生 「ガリア戦記」カエサル
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前」8~10 塩野七生(再読)
「ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以降」11~13 塩野七生
「ローマ人の物語 パクス・ロマーナ」14~16 塩野七生
「ローマ人の物語 悪名高き皇帝たち」17~20 塩野七生
「ローマ人の物語 危機と克服」21~23 塩野七生
「ローマ人の物語 賢帝の世紀」24~26 塩野七生
「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」塩野七生

+既読の塩野七生作品の感想+
「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」塩野七生
「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」塩野七生

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浙江省の南の町の役所にいるのは、英華という名の鬼仙。英華はかつてこの町の役所で殺された幽霊。しかし修業をして仙籍を得て鬼仙となり、そのまま役所の中に棲み付いているのです。「肌の色雪をあざむく、天人のような美女」の英華のこと、気に入った役人がいれば恋仲になることもあれば、自分を魔物祓いの祈祷で追い払おうとする役人がいれば、それ相応の報復で思い知らせることも。そんなある日、能吏だが堅物の范公明がここの役所に赴任して来て... という表題作「鬼仙」他全6編。

宋から清の時代の中国を舞台にした短編集です。どうやら「緑窓新話」という中国の古い本を種本として書き上げた物語のようですね。6編のうち最後の2編でその「緑窓新話」の中の話を南條竹則さんが脚色しつつ紹介されていて、それがまた面白いんです。
この「緑窓新話」は、「聊斎志異」から遡ること数百年、南宋の風月主人が志怪、小説、史書、随筆、逸話集などから物語を集めて編集した154編の物語集なのだそう。「聊斎志異」ほどの生彩の豊かさはないそうなんですけど、その辺りが逆に宋の好事家の仕事という感じでいいみたい。それはぜひとも読んでみたーい。...と、ネットで古本屋を調べてみたんですけど... 3件ほど該当する本が出てきたんですけど... 上海古籍出版社の中国古典小説研究資料叢書って、日本語じゃあないんですかね...? 中文書っていうのは...? どちらも日本語じゃなさそうな気配が濃厚... そんなの怖すぎて注文できませんーっ。

6編中で私が一番好きだったのは、表題作の「鬼仙」。英華姐さん、とでも呼びたくなるような鉄火肌の英華と、堅物の范公明の関係がいいんです。情が深くて、恋人の一族に重い病気の人間がいれば、よく効く薬を与えたりもする英華なんですが、魔物祓いの祈祷なんてしようとする役人には容赦しません。「この無礼者!何をする!あたしは下等な狐狸妖怪じゃないぞ!」なんて啖呵を切っちゃうし、その後、きっちりと報復が...。范公明も最初は英華を追い払おうとして、逆に英華に命を狙われたりもするんですけど、英華のおかげで悪人が罪を自白したのを見て、悪い妖怪ではないと悟って、きちんと感謝と謝罪をするんです。で、ちょっとした茶飲み友達になっちゃう。(范公明は妻帯者だし、英華はその辺りの仁義を大切にするから、あくまでも茶飲み友達)
あと、「我輩は猫である」ブラック風「犬と観音」も面白かったし、料理の上手な小琴の活躍が小気味いい「小琴の火鍋」も、南條さんらしい美味しそう~な作品でした。やっぱり南條竹則さんの本はもっとガンガン読もうっと。(中央公論新社)


+既読の南條竹則作品の感想+
「セレス」南條竹則
「りえちゃんとマーおじさん」南條竹則
「鬼仙」南條竹則
「あくび猫」南條竹則
「魔法探偵」南條竹則
Livreに「酒仙」「満漢全席」「遊仙譜」「ドリトル先生の英国」の感想があります)

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太一郎と多恵が深川の海辺大工町に開いたのは、料理屋「ふね屋」。しかしふな屋に移ってきて間もなく、1人娘のおりんが高熱で寝付いてしまいます。おりん自身ですら、もう死ぬのかもしれないと思うほど酷い病状の中で、ある時冷たい手を感じておりんが目を開けると、目の前にいたのは、おりんに向かってあかんべえをしている女の子。夢の中でおりんが立っていたのは、三途の河原。そこには焚き火をしているおじいさんがいて、まだおりんの時ではないと言います。そして目が覚めると枕元には見知らぬ按摩がいて、おりんは体中を揉み解されて...。おりんの熱はようやく下がり、ふな屋は晴れて旗揚げの日を迎えることに。

なんと5人のお化けがいるというふな屋を舞台にした時代ファンタジー。時にはそのお化けが見える人もいるけれど、全部見えるのはおりんだけという設定。
おりんちゃんがとても健気で素直で、でも時々妙に大人っぽいことを言ったりして可愛らしい~。それに亡者たちが個性的でいいんですよね。若くて美形なお侍の玄之介、腕が確かな按摩の笑い坊、艶やかな色気のある女はおみつ、おりんを見るたびにあかんべえをする小さな女の子はお梅、大酒飲みで刀を持って暴れるおどろ髪のお侍... おりんとお化けたちの交流が楽しかったです。特に気に入ってたのは、おみつ。
最初は皆を早く成仏させてあげたいと考えるおりんなんですけど、みんな自分がどうやって死ぬことになったのか、肝心な部分の記憶を失っているので、なかなか上手くいきません。それでも生前持っていた黒い思いのおかげで、同じように黒い思いを持つ人間のことはよく理解できるし、諭してあげることはできるんですよね。こういうところが、宮部みゆきさんの時代物の特徴かも。救いがあって暖かくて、だから私は現代物より時代物の方が好きなのかもしれません。現代物だと、そういう風に人を救ってあげようと姿勢ってあまりないように思うんですよね。
なぜ亡者が見えるのか、という辺りもすごく好きでした!
ただ、お化け騒動がようやく片付いたところで、肝心のふね屋の商売はまだ軌道に乗ってないんですよね。それどころかまだまだどん底状態。これからきっとちゃんと立て直すんでしょうけど... 次はお化けは抜きでも仕方ないんですけど、お店の話をぜひとも書いて頂きたいものだなあ。(新潮文庫)


+既読の宮部みゆき作品の感想+
「ICO 霧の城」宮部みゆき
「あかんべえ」上下 宮部みゆき
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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神田の古名主、高橋宗右衛門の自慢の息子・麻之助は、16歳になった途端に生真面目で勤勉な青年から、お気楽な若者へと変貌してしまったという青年。そんな麻之助も22歳。ある日、悪友の八木清十郎に男色の仲だと宣言して欲しいと言われ、さすがの麻之助も驚きます... という表題作「まんまこと」他、全6編の連作短編集。

畠中恵さんの新シリーズ。やっぱりこの方の作品には、江戸の雰囲気がよく似合いますね。今度のシリーズ中心となるのは、主人公の高橋麻之助と、女好きの八木清十郎、堅物の相馬吉五郎という3人組。とは言っても、それほど一緒に行動するわけじゃないんですけどね。基本的には名主のところに持ち込まれた麻之助絡みの揉め事を、麻之助が友人たちの助けを借りて調べて、人情味たっぷりに解決するという流れです。八方丸く収まって読後感が良いところは、さすが畠中恵さん。でもまだシリーズ最初の作品のせいか、まだどこか定まりきっていない印象もあるんですよね。麻之助の機転がきくところはいいんだけど、どうしても若旦那と重なっちゃうし... そうなると妖(あやかし)がいない分、こちらはやや部が悪い気も。麻之助が16歳でお気楽になってしまった理由に早々に見当がついてしまったのも、ちょっと残念でした。ただ、「しゃばけ」シリーズでは常時登場して活躍する女性がいないので、今後のお寿ずの活躍に期待かな。(文芸春秋)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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5歳の一太郎は、身体が弱くて熱を出してばかり。両親は店の切り盛りで忙しく、お店にいる小僧さんたちも働くのに忙しく、毎日一太郎は離れの部屋で一人ぼっちで寝ています。そんなある日、ふと天井を見た一太郎が見つけたのは、天井の隅にいる小鬼たち。小鬼たちは、じきに沢山出てきて、楽しそうにぎゅいぎゅいと騒ぎ始めます。思わず一緒に遊ぼうと話しかける一太郎。そして一太郎は小鬼たちと鬼ごっこを始めることに。

若だんなのシリーズの絵本。一太郎と鳴家の出会いの物語。
本編と同じく柴田ゆうさんの絵なのでイメージもぴったりだし、もうそのまんま楽しむことができます。手代の佐助や仁吉の少年姿が見られるのも嬉しいし、一人ぼっちで寂しい一太郎が、鳴家の可愛らしさや楽しい雰囲気に和んでいく様子が、とてもほのぼのとしていて暖かいのです~。あんなに楽しそうに遊んじゃって、後で大丈夫なのかしら... なんてちょっとハラハラしながら読んでましたが、それだけのことはある出会いですね。こうやってあやかしに慰められていたからこそ、一太郎はそのまままっすぐ育って、今の若だんなになれたんじゃないかな、なんて思っちゃうほどの素敵な出会い。で、やっぱり鳴家って猫みたい。ものすごーく可愛かったです。この本は図書館で借りて読んだんですけど、やっぱり自分でも買っちゃおうかな♪(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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「仕掛人・藤枝梅安」シリーズ、読み終えてしまいました。7巻「梅安冬時雨」は「シリーズ白眉の長編完結を目前に、著者が急逝した痛恨の作品」だそうで、「そろそろ、こちらの仕掛をしてもいいころだ」「いつでもようござんすよ」という、すごーくいいところで終わってしまってます。うわーん。それに、この巻に浅井新之助という往年の剣客が登場するんですが、これが秋山小兵衛に「近世の名人、それも希代の名人は、ただひとり、浅井為斎先生あるのみじゃ」と評されたという人物。既にちょっとした活躍をしてるんですが、この後にもまだ重要な役回りをすることになっていたんじゃないかと思うんですよね。それほど前面に出てないのにものすごく存在感があるので、その辺りが読めないのがすごく残念。シリーズとしてすっごく面白かっただけに、もっともっと読みたかったですー。

「梅安料理ごよみ」は、「剣客商売包丁ごよみ」と同じく、作中に登場する様々な料理を紹介した本。とは言っても「剣客商売包丁ごよみ」のように池波正太郎氏自らが紹介してるわけではなく、佐藤隆介・筒井ガンコ堂両氏によるものだし、レシピも写真も、ましてや絵もないんですが、作中の文章を抜き出して、そこに書かれた料理を紹介するというのは同じ。(私の場合、直接写真を見てしまうよりも文章で読む方がそそられるので、写真がないのは無問題) 「剣客商売」と同じ頃の料理なのに、料理はそれほど重なってないのかな? 新鮮な魚介類が美味しそうでした。海の海水と川の淡水が混ざり合う江戸湾で取れた魚介類には、独特の風味があったのだそうで、それが「江戸前」なんですって。知らなかった。それにはまぐりなんて今じゃあ高級品になっちゃってますけど、アサリとかはまぐりはこの頃は庶民の味だったんだとか。池波正太郎さんのインタビューを読んでいても、ほんと江戸時代のことをよく知ってた人なんだな... というよりもむしろ、江戸時代と地続きで生きてた人なんだなって思いますね。

剣客商売が全19冊、鬼平シリーズが全24冊、梅安シリーズは7冊と、梅安シリーズだけが妙に少ないんですが、これについては池波氏ご自身が語ってらしたようです。「乱れ雲」のあとがきで引用されていました。

「やはりね、そう殺せないわけですよ、金もらって殺すのがね。毎月毎月書くっていうわけにはいかないものねえ。毎月毎月ね、金もらって人殺してることになりますからねえ。そこが書きづらい...。」
「うーん、とにかく書いている小説で、これがいちばん難しいですよ、『鬼平』よりも『剣客商売』よりも。」

なるほどねえ。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

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雨宿りに飛び込んだ小屋で、かつての恩師の死のきっかけとなった男を見かける短編「梅安雨隠れ」、梅安を裏切り者として制裁しようとする白子屋菊右衛門が大坂から江戸に仕掛人を送り込み、自らも江戸へ赴くことになる「梅安乱れ雲」、白子屋残党が各方面から梅安を狙う「梅安影法師」。

短編の「梅安雨隠れ」は「梅安乱れ雲」の冒頭に収められているんですが、これだけは独立した作品で、その後からが長編。この「梅安乱れ雲」が、このシリーズのクライマックスですね! 白子屋菊右衛門との因縁の対決。そして「梅安影法師」がその余韻。この辺りはずっと話の続いている長編のような感じでもあります。なんで「雨隠れ」をここに入れたんだろう? 前の巻に入れてしまえば良かったのに... と思ったら、前の巻「梅安針供養」も長編だったのでした! そうそう、話はここからもずっと続いていたんでしたね。...まあ、それを言ったら、シリーズ全作品続いているとも言えるのだけど。(笑) でもこの辺りは長編ならではの話の絡み具合と盛り上がりぶり。いや、いいですねえ。特に「乱れ雲」の緊迫感はもう堪らないー。
それにしても、白子屋菊右衛門が考え出した仕掛の方法は、梅安の最大の弱点を突くもの。闇の世界は正々堂々となんてしてられないから仕方ないんですが... これはツラい。そして白子屋が「梅安は仕掛人の掟を破った」という理由で殺そうとしているうちはまだ良かったんですが、「藤枝梅安というやつ、表向きは鍼医者をしているが、裏へまわると強欲非道な奴でのう。こいつ、生かしておけば、世のため人のためにならぬ」と言い始めた時はぞぞーっ。色んな意味で怖い台詞...。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

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既に隠居して百姓暮らしをしている亀右衛門に、会うだけ会って欲しい、仕掛は断っても構わないと言われて梅安が会うことになったのは、大井の駒蔵という元締。以前からの義理で、亀右衛門が断りきれなかったのです。しかしその時依頼された仕掛の相手は、先ごろ梅安が仕掛を引き受けた音羽の半衛門で...という「梅安鰹飯」が入った連作短編集「梅安最合傘」、そしてシリーズ初の長編となる「梅安針供養」。

今回も面白かった~。1・2巻では元締はあくまでも仕掛を頼む人というスタンスで、それほど話の中に深入りして来なかったように思うんですけど、今回の梅安は元締同士の争いにすっかり巻き込まれて、どちらからも仕掛の依頼がきてしまいます。そして、だんだん、この世界に一度入ってしまったら足を洗うことはできないという面を実感させられるような展開になってきてますね。長編「梅安針供養」では梅安にいい感情を持っていない元締なんかもいたりして、狙い狙われの緊迫感がたっぷり。色んな状況が二重三重にも絡んできて読み応えがありました。そして、大抵の作家さんの場合、短編が得意か長編が得意か、自然にどちらかに分かれると思うんですけど、池波正太郎作品は、どちらも同じように面白く読ませてくれるなあと実感。ほんと短編でも長編でも面白いです。短編とは言っても実際には連作短編なんで、長編みたいなものですけど... 1編だけ取り出しても十分面白いですし。
あ、今回見つけた「剣客商売」との繋がりは、浅草の料亭・不二楼でした♪(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

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今年35歳になる藤枝梅安は、普段は腕の良い鍼医者、裏の顔は金で殺しを請け負う仕掛人。その日、赤大黒の市兵衛から請け負ったのは、薬研堀の料理屋・万七の女房・おみの殺しでした。しかし実は梅安は3年前に違う筋からの依頼で、先妻のおしずを殺していたのです。仕掛人は詳しい事情を聞かないのが原則。しかし女房が立て続けに殺される裏にはどのような事情があるのか、梅安は気になり始め... という「おんなごろし」他、仕掛人・藤枝梅安の連作短編集です。

「剣客商売」を読了したのが去年の8月。それから「仕掛人・藤枝梅安」の方も貸して頂いてたんです。去年から続いてる海外物ブームのせいでしばらく寝かせてしまったんですけど、ここらでちょっと和んでみたいと思います。(...仕掛人で和むって一体。^^;)
テレビの必殺シリーズを何度か見た程度なので、そういう仕掛け人のグループがあって、回ってきた仕事をみんなでやるのかと思ってたんですけど、梅安は基本的に一匹狼。彦さんという仕掛人仲間がいることはいるけど、それぞれ別々に仕事をしてたんですねー。中村主水なんて出てこないじゃないですか! ということはあのお姑さんも出てこない!(笑)
あ、テレビのシリーズでは藤枝梅安は出てないんだと思い込んでたんですが、緒形拳がやってたんですってね。知らなかった。

仕掛人が仕事を請け負うまでには、まず殺しの依頼人(起こり)がいて、その「起こり」が「蔓」と呼ばれる顔役に殺しを依頼、その「蔓」から「仕掛人」に話が来るという流れ。「起こり」がいくら殺しを依頼しても、その人間が殺されるべきかどうかは「蔓」が判断するので、ただの私怨程度の依頼はボツ。その代わり、「蔓」が「コイツは死んだ方が世の中のためだ」と判断したら、「仕掛人」に話がいきます。「仕掛人」が詳しい事情も聞かないまま仕事を遂行するのは、「蔓」を信頼しているからこそ。
でも梅安だって人間だし、たまには裏事情が気になることもあるんですよね。そうでなくても事件に巻き込まれて、やむなく調べ始めることもあるし。その辺りの事情の繋がっていき方が面白いです。それに、鍼医者として病人を治療する梅安は、貧乏人から無理に治療費を取り立てたりしない神様のようなお医者さんなんですけど、そうやっていられるのも、仕掛人として稼いだお金があるからこそ。そんな相反することをしてるようでいて(人の生死のどちらも一手に握ってるんですね)、梅安の中では特に葛藤はないんですよね。どちらも1人の人間の中に自然に存在してるのが、なんか好き♪
途中で牛堀九万之助なんて名前が登場して、「剣客商売」との繋がりを感じさせてくれるのも嬉しいところ。それに相変わらず美味しそうな場面がいっぱい~。これは続きも楽しみです。^^(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

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女だてらに戯作者を志すお夢が今追っかけているのは、江戸の豪商・紀伊国屋文左衛門。蜜柑船を江戸に運んで一夜にして大儲けし、さらに材木商として幕府ご用達となって一代の栄華を誇りながらも、財産をつぎ込んだ貨幣改鋳が中止になり、一夜にして全財産を失ったと言われる紀伊国屋文左衛門。しかし店を畳んで隠棲して4年、まだまだ吉原で豪遊し続けているのです。そんなある日、お夢は謎の夜鷹に命を狙われ、あやういところで暗闇留之介と名乗る浪人に命を助けられることに。

誰もが一度は名前は聞いたことがあるような豪商、紀伊国屋文左衛門について面白可笑しく書きながら、新たな考察を付け加えていく1冊です。お夢が戯作を書くために推理していくという意味では、歴史ミステリと言えそう。紀伊国屋文左衛門の表向きの顔と本当の素顔、表向きの黒幕と本当の黒幕、本当はそこで何が起きていたのかを探り出していきます。下は町の講釈師や物売りといった町人から、上は6代将軍家宣の正室・天照院までが、お夢に向かって紀伊国屋文左衛門の逸話や自分の推理を語っちゃうんですよね。その部分はフォントも変えられていて、まるで講談でも聞いているような気分。お夢自身が大奥にも入り込むことになるので、舞台も幅広いし、8代将軍吉宗とじかに対決してしまうし、戯曲や講談などに登場する一心太助と大久保彦左衛門までもが登場! 実際の時代とは少しずれてますが、その辺りもきちんと解説済みなのが、米村さんらしいところ。(笑)
ただ、賑やかで楽しいし、突拍子もない真相にもその気にさせられてしまうのが凄いなあって思うんですが、どうしても退屈姫君のシリーズと比べてしまうんですよね。これ1冊しか知らなかったらもっと楽しめるでしょうに、あちらと比べてしまうと、どうしても増長に感じられてしまう部分が... 仕方ないこととはいえ、それがちょっと残念でした。(新潮文庫)


+既読の米村圭伍作品の感想+
「退屈姫君 海を渡る」米村圭伍
「おんみつ蜜姫」「退屈姫君恋に燃える」米村圭伍
「紀文大尽舞」米村圭伍
Livreに「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「面影小町伝」の感想があります)

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ツァシューへと向かう翠蘭は、途中、ロ・バクチェ・イーガンが治めるエウデ・ロガに滞在し、ここでリジムやラセル、朱瓔らと合流。毎年エウデ・ロガに薬草摘みにやって来るリュカも現れます。翠蘭やリジムを屋敷に残し、イーガンはリュカや朱瓔、サンボータらと薬草摘みに出かけるのですが、その帰り道に森の民に襲われ、朱瓔とサンボータは崖の下へと転落してしまい...。

「風の王国」シリーズ9冊目。
翠蘭は、今までのような無鉄砲な行動が許されなくなる体調なので、今回はじっと我慢。でも翠蘭が動かないおかげで、逆に周囲の人々の動きに焦点が当てられていて、いつもとは違う楽しみがありました。サンボータと朱瓔にスポットライトが当たっていますし、森の民ヴィンタク族の長・ホルクや巫子・ラミカも魅力的。エウデ・ロガの良民には優しい領主・イーガンの二面性やその原因も、今回は悪役は悪役と切って捨てられないところがいいですね。翠蘭とリジムの周囲で、様々なドラマが同時進行しているという印象でした。いつもみたいな、当時のチベットでの風習で「へええぇ~」と思う部分はあまりなくて残念だったんですが、やっぱり楽しかったです。 (コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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「風の王国」シリーズ7冊目。サイドストーリーの短編4編と、イラストを描いてらっしゃる増田メグミさんのまんが2編、全6編が収められています。

「小説+まんが」ということで、最初は読むのを躊躇っていて、結局8冊目の長編を先に読んじゃったんですけど、色々なサイド・ストーリーが読めて、結果的には面白かったです。まんがとは言っても以前から挿絵を描いてらっしゃる増田メグミさんの作品なので、違和感もなかったですし。本当はあまり小説とまんがを1冊の本にして欲しくはないのだけど。
今回面白かったのは、翠蘭と朱玉の出会いとなった「天河の水」と、吐蕃へ嫁ぐことが決まった翠蘭が後宮で過ごす日々を描いた「花の名前」。特に「花の名前」は、李世民(唐の太宗皇帝)の宮廷でのエピソードが描かれるだけに、中国歴史物好きとしては堪らないものがありました~。ここに登場する李世民の妃・楊妃は、隋の煬帝の娘。そして同じく登場する武才人は、後の則天武后(武則天)。後に皇位争いに巻き込まれて、謀反人として自殺させられた呉王李恪も登場するし、3代目高宗皇帝になる晋王李治まで! 後々のことを思うと、少し複雑な気持ちになっちゃうんですけどね。(コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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その地方では珍しいプラチナブロンドから、「銀」と呼ばれて育ったアイネイアスは、美しく利発な少年。父・アンキセスらの薫陶を受け、年毎に俊敏な若者として成長していきます。そしてアイネイアスが12歳の時、トロイアに10年前に現れたのは、ずっと行方不明となっていた王子・パリス。10年ぶりに現れたパリスは失踪した当時とは違い、見るからに立派な若者に成長していました。そして数年後、パリスが父・プリアモス王の命を受けてギリシアへと旅立つことになり、アイネイアスも同行することに。そしてその旅の途上で立ち寄ったスパルティで、パリスはメネラオスの妃・ヘレネに出会うのです。

アイネイアスの視点から描くトロイア戦争。以前、ギリシャ物を読み始めた頃に、風待屋のsa-ki さんに教えて頂いた本です。
いや、面白かったです。一気に読んでしまいましたー。全体的な構成としては、主にホメロスの「イリアス」「オデュッセイア」、そしてウェルギリウスの「アエネーイス」を繋げて、その合間にギリシア悲劇などに描かれている細かいエピソードを丹念に掬い取っていっているようですね。
でも、読み始めてまず目につくのは、そういった本家作品とは違って、こちらはあくまでも人間が主体の物語であること。神々に関しては名前のみの登場で、「イリアス」のように戦局を左右したり、人間を助けたりはしません。ギリシア神話では愛と美の女神・アプロディテの息子とされるアイネイアスなんですが、ここではイディ山の神官がそういう託宣を下しただけ。しかも宣託は「愛と美の女神の息子」というだけで、アプロディテの名前は出ていないんです。これは、当時のトロイアがギリシャと同じ神々を信じていたとは、阿刀田さんには考えられなかったから。そしてトロイア戦争の発端となる「パリスの審判」に関しても、パリスの夢の中の出来事を耳にした人間が噂として広めただけ。さらに「イリアス」では、トロイア戦争の期間は10年間、千艘を越したギリシャの軍勢は10万とされていますが、この作品の中ではかなり縮小されています。トロイア城址の規模から考えても、実際10万もの大軍が10年もかけて攻めるほどの城砦ではないのだそうです。戦争は戦争として現実にあったにしても、やっぱりホメロスが描くトロイア戦争は、あくまでもホメロスの時代の知識を基にしていますものね。トロイア人とギリシア人は同じ民族ではないのだから、同じ言葉を話し、同じ神々を信じていたわけではないだろうというのも、私も以前から感じていたことです。
そういう意味で、この「新トロイア物語」は、とても現実的な物語となっています。阿刀田さんご自身が書かれている通り、「古代史を舞台にした、現代の日本人アイネイアスの物語」というのが相応しいかも。この作品が書かれた頃は、まだ外国の歴史的ヒーローを小説化した作品がほとんどなかった時代だったそうで、時々妙に武士道的な匂いがするのが可笑しいんですけどね。(笑)

「ホメロス」や「オデュッセイア」みたいな、神々が当たり前のように登場するのも夢があって大好きなんですが、こういうのもいいですね。神々を登場させないために阿刀田さんが凝らしている工夫も、とても面白かったです。特に印象に残ったのは、残虐なアガメムノンのやり口。トロイアに首尾よく攻め込むための策略や様々な計算、そしてその挙句自分自身に降りかかってきた災難など、ギリシャ悲劇に描かれているアガメムノン関係を複数読んだ上でも、すごく説得力がありました。説得力があるといえば、パリスとヘレネの末路も。いかにもあり得そうです。あ、でもパリスが意外といいヤツだったなあ。哀愁漂ってたし。(「パリス=あほ男」がすっかり定着してたので)

やっぱりここまで来たら、「アエネーイス」も読まねばー! 岩波文庫版が絶版なので、古本で探してたんですけど、やっぱり図書館で借りちゃおうかな。ちょっと迷い中です。それにしても、こういう古典作品を絶版にするのは、やめて欲しいですね。爆発的に売れることは、まずないでしょうけど、需要はなくならないんですから。って、それだけじゃあ全然ダメなのかな、やっぱり。(講談社文庫)


+既読の阿刀田高作品の感想+
「新トロイア物語」阿刀田高
「ギリシア神話を知っていますか」「私のギリシャ神話」阿刀田高
「ホメロスを楽しむために」阿刀田高
「旧約聖書を知っていますか」阿刀田高

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10世紀末の中国。中原に拠った宋が呉越を下し、乱立していた小国のうち残っているのは北漢、そして北漢の北の強国・遼のみ。そして北漢随一の兵力となっていたのが、楊業率いる楊家軍。当主である楊業は音に聞こえた名将であり、7人の息子たちもそれぞれに一流の武将。しかしその力がこれ以上大きくなることを恐れた北漢の廷臣たちが帝にあらぬ事を吹き込んだため、楊家からの援軍の要請も無視され、宋軍との戦いのさなかには兵糧の輸送が滞る始末。楊業はついに北漢に見切りをつけて、北宋への帰順を決意します。

北宋初期に実在した武門一族・楊家の物語。当時北宋では、遼軍の度重なる侵攻に苦しめられていて、宋軍の中で遼軍に対抗できたのは楊家軍のみだったのだそうです。民衆には「楊無敵」と呼ばれ、楊業の死後まもなく「楊家将」の伝説が民間で伝えられるようになったとか。現在の中国では「三国志」「水滸伝」と並ぶ作品と言われ、京劇でも人気の演目だそうなのですが、そんな「楊家将演義」も本としての出来があまり良くないらしく(あらら)、まだ日本語には訳されていないとのこと。

本当は北方水滸伝を読みたいんですが、単行本で全19巻はツラいので、先に文庫になったこちらを。これはほんの日記のブラッドさんのお母さまのお勧めの1冊。ブラッドさんのところは、母娘で本の情報交換が活発で素敵です~。
北方三国志もそうでしたが、とにかく男たちがかっこいい! まず宋側では、楊業と7人の息子たち。私が結構気に入ってたのは、先帝の息子で明るく聡明な八王。上巻では帝もいいです。下巻になると、寄る年波を感じさせられてしまうのが寂しいんですけどね。そして敵の遼では、実権を握っている蕭太后(女性ですが、度胸と智謀が凄い!)、「白き狼」と恐れられる耶律休哥。やっぱりこういう作品では、敵の魅力も重要ポイントですね♪
遼と戦うことに集中できるならまだしも、開封の平和に慣れ切ってしまった文官たちや、宋の内部から混乱させようとする遼の間者、楊家の活躍を妬む武官たちに足を引っ張られることになって大変な楊家なんですが、それでも武人はただ戦っていれば良いと割り切る楊業を中心にした男たちの生き様は熱く、爽やか。普通の場面はもちろんですが、戦闘シーンもスピード感があってすごく面白いんです~。
本来の「楊家将演義」は、楊家5代を描いているのだそう。そこまでは求めませんけど、この後の物語もぜひ読みたいものです。特に四郎のその後が気になります。...と思ったら、PHP研究所の月刊誌「文蔵」で、続編「血涙」を執筆中とのこと。9月号が最終回ということは、遠くない将来、単行本になりますねっ。それは嬉しい。続編が読める日が楽しみです! (八王が死ぬのは見たくないけど...)(PHP文庫)


+既読の北方謙三作品の感想+
「破軍の星」北方謙三
「楊家将」上下 北方謙三
「水滸伝」1~3 北方謙三
「水滸伝」4~6 北方謙三
「水滸伝」7~9 北方謙三
「水滸伝」10~12 北方謙三
「水滸伝」13~15 北方謙三
「水滸伝」16~18 北方謙三
「水滸伝」19 北方謙三
Livreにブラディ・ドールシリーズと「三国志」の感想があります)

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しばらく間があいてしまったんですけど、池波正太郎氏の「剣客商売」読了しました!
今回読んだのは、13~16と、番外編の「黒白」上下巻、同じく番外編の「ないしょないしょ」、そして、剣客商売に登場する様々な料理を実際に再現している「包丁ごよみ」。
前の感想を探してみたら、1~4巻はココ、5~8巻はココ、9~12巻はココ、どれも今年の1月だったんですね。その後、一気に読んでしまうのは勿体ないような気がしてきて、でも、そうこうしてるうちに海外物のペースが上がってしまったりして、しばらく中断しちゃったんですよね。本を貸して下さったAさん、ごめんなさいー! でもすっごく面白かったです。

番外編の「黒白」は、13巻を読む前に読みましたよ!>b.k.ノムラさん。確かにその頃読むのが、一番いいみたいですね。これで、小兵衛の昔馴染みの登場人物のことがすごく掴みやすくなって、話にも一層入りやすくなりました。
そして13巻の「夕紅大川橋」、とっても良かったです~。>ワルツさん。色んなところで、結構びっくりさせられつつ、ちょっとしっとりとしたムードも楽しめました。洗い髪というのがまた良くて、鮮やかに情景が浮かんできますね。
あと好きだったのは、「暗殺者」かな。これは「仕掛人・藤枝梅安」を読んでたら、一層面白かったのでしょうか。なんだか繋がりがありそうな感じですね。元々必殺シリーズは好きだったので、かなりワクワクしながら読めました。シリーズ後半は大治郎よりも小兵衛が中心となる話も多かったので、久々に若先生が出てきてくれたようで、それもとても楽しかったのかも。最初は小兵衛が気に入ってたと思うのに、いつの間にか大治郎の方が良くなってたみたいです、私。(笑)(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

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セデレクの反逆から1ヶ月余り。ツァン・プーに残って後処理をするリジムを手伝っていた翠蘭ですが、ツァン・プーの西南の国が攻め込んできたため、翠蘭は急遽ガルに連れられてヤルルンに戻ることに。戻った翠蘭を出迎えたのは、ソンツェン・ガムポの第二妃・ティツンが、ヤルルンの家畜に毒が盛っているという噂。そして、ソンツェン・ガムポの寺院建立の計画に反対した大司祭・バーサンが出仕を拒否しているという事態でした。

「風の王国」シリーズ8冊目。唐の時代に李世民(太宗皇帝)の娘として吐蕃(チベット)へと嫁ぐことになった文成公主を描いた作品。しっかりと史実を踏まえつつ、毛利さんなりの解釈で作り上げられた物語が面白くて、愛読してるシリーズ。

でも、今回はリジムの出番が極端に少ないんですよー。台詞もないまま翠蘭と離れ離れになって、最後にちょっと出てくるだけ。その辺りはちょっと(いえ、かなり)残念でした。でも物語自体は面白かったです。やっぱりソンツェン・ガムポがいいですねえ。相変わらず決めるところはしっかり決めてくれます。あと、ソンツェン・ガムポの第二妃・ティツンも良かったです。ただ、彼女に関して言えば、もう少し悪役になって欲しかった気も...。このティツンは、「色々なことをはっきりと口に出してしまう性格なだけで、実は裏表のない人」という設定。(多分) 嫁姑バトルをして欲しかったわけじゃないんですが、後半もうちょっと毒が欲しかったかな。
それにしても、登場人物紹介のページで誰が悪役か予想できてしまうという構成は、もうそろそろやめませんかー。

実は1つ前の「風の王国 朱玉翠華伝」を読んでません、私。この「朱玉翠華伝」のタイトルのところに「小説+まんが」とあったので、「まんがは別に読みたくないしー」と思ってしまったせいなんですが... やっぱり読むべきなのでしょうか。今度書店でちゃんとチェックして来なくっちゃですね。(コバルト文庫)

追記: その後読みました! 面白かったです。


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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夜中の突然の地震で起きた若だんなが耳にしたのは、若だんなが邪魔だから殺してしまおうという声と、このままでは若だんなが死んでしまうのではないかと心配する声、そして遠くから聞こえる悲しそうな泣き声でした。そして翌日また地震が起き、若だんなの頭に物が激突、若だんなは気を失ってしまいます。気がついた若だんなに母親のおたえが提案したのは、湯治に行ったらどうだろうという案。ゆっくりお湯に浸かって養生したらぐっと丈夫になれるかもしれないと、稲荷神様のご神託があったというのです。

若だんなのシリーズの第5弾。
今回は1作目以来の長編なんですねー。この方の連作短編は大好きだけど、やっぱり長編だと嬉しいです。しかもシリーズ初の遠出、目先が変わって新鮮ですし。ただ、箱根まで行くとなると、旅に参加できる人数が限られてるのが、やや残念ではあるのですが...。
旅に出た途端に、消えてしまう仁吉と佐助。いつもなら梃子でも若だんなから離れないと頑張る2人なのに、予想外の事態が起きたとはいえ、結局2人とも離れてしまったというのがちょっと納得しきれないのですが... そのおかげで、若だんなが自力で頑張ることになります。いやー、周囲にどれだけ甘やかされても、若だんなって本当に良い青年ですね。皆が若だんなを思いやる心が温かくて、読んでいるこちらまで幸せな気分になれるのが、このシリーズの良さでしょう。やっぱり人間、基本は愛情をたっぷりと受けることなんだろうなー。
物語冒頭で若だんなが山神に尋ねる「私はずっと、ひ弱なままなのでしょうか」「他に何もいらぬほどの思いに、出会えますでしょうか」という問いがとても印象的でした。山神のくれた「浅い春に吹いた春一番で出来た」金平糖のようなお菓子が食べてみたい...。そして印籠のお獅子も既に仲間入りでしょうか。可愛いです~。(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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猿若町捕物帳シリーズ第3弾。今回は、吉原の遊女が3人立て続けに亡くなった事件を調べることになる「吉原雀」、以前は相当の人気があったという女形・村山達之助の演技がめっきり冴えなくなってしまったという「にわか大根」、天水桶から見つかった死体は巴之丞の昔馴染みなのか...「片陰」という3編。

これまでも面白くはあったんですが、梨園シリーズや整体師シリーズなどの他のシリーズ物に比べるとどこか印象が薄かったこのシリーズ、これまでの3作品の中で一番面白かったです! もちろんこれまで通り、巴之丞や花魁の梅が枝の存在が物語に華を添えていますし、仏頂面の千蔭もいい味を出しています。そして今回はこれに加えて、前作で結婚した彼女の新婚生活ぶりが伺えるのが楽しいところ。冒頭のやりとりなんて、ほんと立場が逆転してるみたい。やはり拵えというものは人を変えてみせるものなんですねえ。(笑)
でもそれ以上に気になるのが、梅が枝! 美貌と気風の良さが売りの彼女の本心はどこにあるのでしょう。今後どんな風に展開するのか、目が離せません! 早く続きが読みたいなー。(光文社)


+シリーズ既刊の感想+
「巴之丞鹿の子」「ほおずき地獄」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「にわかだいこん」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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明治17年、「おひいさま」の身代わりとしてアメリカに行く船に乗り込んだ少女。それは、本物の「おひいさま」である三佐緒が、愛し合っている男性と引き裂かれるのを見ていられなかった乳母・お勝によって作り出された影武者。新しいミサオはまだ12歳。船酔いに苦しまされながら、お勝からは「しつけ」という名の折檻を受ける日々が続きます。そして船はとうとうアメリカに到着し...。

CROSS-ROADの瑛里さんにオススメされた作品。いやあ、面白かった!
ほんと、帯にある通りの「大河恋愛小説」でした。自分自身の本当の名前を失い、「酒井三佐緒」として、そして後にはオーストリィの貴族・ヒンメルヴァンド子爵夫人として生き抜くことになったミサオの半生を描いた作品。乳母のお勝に苛め抜かれる船中のエピソードは、読んでいても息苦しいほどだったし、ようやくそれが終わっても、もうドキドキしたりヤキモキしたり。三佐緒の父親である酒井尊則の渡米に、どれだけ緊張したことか。桜賀光次郎やマックスへの想いにも、ありがちだと思いながらもドキドキ! 出会いと別れを繰り返しながらも、芯の強い、美しく聡明な女性に成長していくミサオの姿にすっかり感情移入してしまいました。脇役で特に印象に残ったのは、乳母のお勝ですね。ミサオにあれだけの仕打ちをしたというのも、実際には本物の「おひいさま」への愛情の裏返し。ミサオが立派に「三佐緒」を演じることができたのも、結局はお勝のおかげ。行き過ぎがあったのは事実ですけど、彼女の思いを考えると、憎めない人物でした。お勝と数馬とミサオが、お勝の料理を囲んで擬似家族をしている光景は微笑ましかったです。
下巻ではもっぱらミサオと光次郎の物語。桜賀光次郎のモデルは、川崎造船所(川崎重工業)の初代社長・松方幸次郎。彼の松方コレクションが形成されていく様子、ミサオを通じて見ることのできる美術品やドレス、ジュエリー、ヨーロッパの貴族の生活やその生活に戦火が及ぼした影響などもとても興味深いところ。そして彼女たちの想いは痛々しいほど純粋。この部分は、ある程度の人生経験を積んだ人の方が共感できる部分なのかもしれないですね。いやー、読み応えがある作品でした。(新潮文庫)

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「剣客商売」、途中経過報告第3弾。(笑)
ほのぼのとしていた前回に比べて、今回は厳しい世情の変化がそこここに... 特に10巻。
このシリーズって、1冊ごとにそれぞれ7編ほどの短編が入っていて、1話ごとに一応話が完結しているんですが、10巻だけは短編同士の繋がりがとても強くて、むしろ長編と言った方がいいほどなんですよね。秋山大治郎の名前を騙って人殺しを繰り返す剣客が登場し、秋山父子、ひいては田沼意次を陥れようとする陰湿な陰謀が?! という話です。これまでにない緊迫感たっぷりでびっくりしたんですが、でもそろそろ田沼政権も終わりを告げる頃なのかあ、と時の移り変わりを感じてしまいました。秋山父子は別に田沼意次の権勢を笠に着てるわけじゃないし、何が起きようと大丈夫だと思うんですけど、でもやっぱり風当たりは強くなるんでしょうね...。うーん、その日が来るのがなるべく遅ければいいなあ。...そしてドキドキしながら11巻12巻を読んだんですが、まだこの2冊では特に風雲急を告げることもなく、ほっと一息。
以前ワルツさんが、この作品の男尊女卑に触れてらして、ああ、確かにそういう面があるよなあと思ってたんですが、この4冊では今まで以上に感じられたかも。1つずつは小さいんですけどね。どうせ女性は無駄口が多いですよー! なんて思いつつ... 小兵衛の奥さんの「おはる」もちょこちょこやられてます。でも彼女の料理はほんと美味しそう。いい奥さんなんですよね。今で言う癒し系? 「...ですよう」の口調も和みます。(笑)(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

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風の王国シリーズ6作目。今回は完全に番外編。前々回ぐらいに吐蕃を去った尉遅慧が主人公。
てっきり本編とばかり思って読み始めたのでびっくりだったんですが、慧のその後は気になっていたので、今回のこの番外編はなかなか良かったです。でもねー、この方の作品は、いい意味で王道なのが魅力だとは思うんですが、「両親亡き後、姉と弟が2人で頑張っている塩商人の"官符"を狙った極悪商人の図」って、舞台を日本に変えればそのまま水戸黄門のエピソードとして通用するんじゃ...。(笑)
まあ、それでも相変わらず飄々としている慧はもちろん、悪役に狙われる姉弟も可愛かったし、慧に同行してる赤兎も悪役になりきれない人の良さや、今回初登場の案内人のカロンの愛嬌たっぷりなところが楽しかったですけどね。題名「風の王国」の「風」が一番良く似合うのは実は慧なのかな、なんて思えてくる1冊でした。次は本編が読みたいですが、たまには番外編もいいものだー。
そして毎回一番のお目当てにしてるチベットマメ知識(勝手に命名)、今回は塩と羊毛(カシミヤ山羊などからとれるパシュミナ)でした。チベットの塩湖、見てみたいー。しかし夏でも雪が降るとは、相当寒い場所のようですね。(コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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お正月に4冊読んだっきりと思われていそうなので、途中経過の報告などを。
ええと、移動生活のため続けて読めてはいないのですが(本は移動させてないので)、その後さらに4冊読みました。
いやー、やっぱり面白いです。常連の登場人物同士にもドラマがあるし、少しずつ新しい人が登場して、世界の奥行きが広がっていくのがすごく好み。斬った張ったな話なので、それほど急激に人間が増えるわけじゃないんですけどね。(「斬った張った」って、この字で合ってるのかしら) その中でも「おお!」となったのは6冊目の「新妻」。5冊目の終わりでそろそろかな... と思う展開があったので楽しみにしてたんですけど、やっぱりこの巻だったんですねー♪(謎)
登場人物では、今のところ秋山小兵衛と三冬さんが好み。小兵衛はいい年したおじいちゃんなんですけど、飄々としながら無敵。年輪を重ねてるだけあって、まだまだ真っ直ぐな大治郎(息子)が太刀打ちできないような懐の深さもあるし、かといって枯れきってるわけでもなく。(笑) 三冬さんは田沼意次の娘。初登場時は肩に力の入った男装の剣士だったんですけど、なんとも可愛いところを見せてくれるんですよねー。
田沼意次といえば、描かれ方はかなり違いますが、米村圭伍さんの退屈姫シリーズでも結構好きなキャラなんです。一般的に悪者扱いされてますけど、結構味のある人だったのではないかと勝手に思ってます。「白河の清き流れに住みかねて、元の濁りの田沼恋しき」という狂歌もありますしね。(というのは、解釈が違いすぎる気もしますが...) (新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
お正月休みの間に読んだ本(7冊) (「剣客商売」1~4の感想)
「剣客商売」5~8 池波正太郎
「剣客商売」9~12 池波正太郎
「剣客商売」13~16+α 池波正太郎

+既読の池波正太郎作品の感想+
「殺しの四人」「梅安蟻地獄」池波正太郎
「梅安最合傘」「梅安針供養」池波正太郎
「梅安乱れ雲」「梅安影法師」池波正太郎
「梅安冬時雨」「梅安料理ごよみ」池波正太郎

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滝沢馬琴による「南総里見八犬伝」を、浜たかやさんが児童書用に編集したもの。山本タカトさんの表紙絵に惹かれて、ずっと読んでみたかったんですけど、お正月にテレビドラマを見て、いてもたってもいられず読んでしまいましたー。1巻は「妖刀村雨丸」、2巻は「五犬士走る」、3巻は「妖婦三人」、4巻は「八百比丘尼」。

こうやって並べると凄いですね、壮観。実際に手に取ってみても、やはりこの表紙は美しかったです~。表紙だけでなく挿絵も山本タカトさんで、随所に登場人物画が挿入されているのが、またイメージを掴み易くていいんです。
私は子供の頃に他のリライト版を読んだだけで、原作の現代語訳なんてものは読んでないので、他のリライト版に比べてこれがどの程度のレベルなのか良く分からないんですが、解説によると、原作を六分の一から七分の一ほどに縮めてあり、後半部分はかなり思い切って割愛、ストーリーを単純で分かりやすくして、約400人と言われる登場人物も大幅に整理したのだそう。数多い敵役を整理して籠山逸東太に兼ねさせたり、原作にはいない人物を作り出したり、最後の決戦に犬江親兵衛を登場させるなど、エピソードを変えた部分も多々あるのだそうです。でもそういう違いがあっても、読み手がきちんと認識していればいいことですしね。(読者が必ず解説を読むとは限らないけど) おそらく八剣士や他の登場人物たちのそれぞれの性格も、原作よりも分かりやすく強調されているんでしょうね。正義の味方も悪役もそれぞれに個性的で、すごく楽しかったし面白かった! 児童書なので、さすがに字は大きいんですが、これは入門編にぴったりかと。という私もいずれは岩波文庫から出ている全10巻の現代語訳を読破したいなと思ってるのですが、この4冊で一通り満足してしまったので、ちょっと先の話になりそうです。(^^ゞ (偕成社)

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このお正月は、もっぱら昨年のうちに人様にお借りした本を読んでました。
まず、池波正太郎さんの「剣客商売」。以前若竹七海さんの「閉ざされた夏」で、主人公のお姉さんが池波正太郎作品をバイブルのように読んでいて、作中に登場する食事をしてたのが気になってたんですが、どのシリーズも長いし、なかなか手が出なかったんですよね。でも第16回のたらいまわし「美味しそうな食べ物が出てくる本は?」の時にワルツさんが挙げてらして、決定的に読みたくなっちゃって!(記事はコチラ) そして、私が読みたがってるのを知ったAさんが、全19巻プラス「包丁ごのみ」プラスその他モロモロを送りつけてくださったのでした。ありがとうございます~。予告どおり年越し読書にしてみました。

 「剣客商売」「辻斬り」「陽炎の男」「天魔」池波正太郎(新潮文庫)

テレビの時代劇みたいに完全に一話完結なのかと思ってたら、話同士に意外と繋がりがあるというか広がりがあっていいですねえ。中心人物が少しずつ変化したり成長していくのもいい感じ。まだまだ先は長いので、続きもじっくり読もうと思います。

そしてこちらは菊池秀行ファンのKさんが送りつけてくださった本。(笑)
二度と読むことはないだろうと思っていた清涼院作品まで入ってて圧倒されましたが(いえ、ある意味予想通りでしたけど・笑)、「なんなんだこれは」と思いつつ、案外楽しかったです。♪やらハートマークやらが文章についてるのには相変わらずげんなりなんですが、最初から開き直って読んでたせいでしょうか?(笑) しかし菊池作品を一気に行くのはちとツライみたいです... 「夜叉姫伝」、1巻の途中で止まってます。最後まで読めるかしら。(それにしてもドクター・メフィストが単独で登場してる時は美青年医師として完全にその場を攫っているのに、秋せつらと一緒に登場すると、たちまち怪しげな魔人に見えてしまうのはなぜ) そして「消失」は一番楽しみにしてた作品。以前から色々と噂は聞いてたし、一度読んでみたかったんですよねえ。一応心構えをしながら読んでたんですけど... なんとこういうオチだったんですか! なるほどぉ。いや、これは強烈だわ...。読者を驚かせることに、ひたすら全力を注いだ作品なんですね。(笑)

 「エル-全日本じゃんけんトーナメント」清涼院流水(幻冬舎)
 「魔界医師メフィスト 兄妹鬼」菊池秀行(角川ノベルズ)
 「消失」中西智明(講談社ノベルス)

    

「魔界医師メフィスト 兄妹鬼」と「消失!」は、画像が出ないですね。「エル-全日本じゃんけんトーナメント」は、私がお借りしたのは幻冬舎ノベルスですが、画像とリンクは幻冬舎文庫のものにしています。
本はこのぐらい。あとDVDを2つ観たので、その感想もまた改めてアップしますね。

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ものすごーく久しぶりの京極作品。「巷説百物語」の続編です。今回も連作短編。小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平、考物の百介という4人も健在。でも、前作も必殺シリーズみたいで楽しかったんですが、今回はまた一味違いました。まず、今回のそれぞれの短編は、「巷説百物語」のそれぞれの短編と入れ子になって進んでいくんですね。そして今回、最初の4つの短編はそれぞれに話が完結してたので、普通の連作短編集かと思ってたんですが、それぞれの短編、それまでの伏線が絡み合って、この本の中で一番長い「死神」へと雪崩れ込んでいってびっくり。いやあ、前作とは物語の深みが全然違うんですね。素晴らしいー。
「憑き物」を落として人を正気に戻す京極堂シリーズに対して、「憑き物」を利用して人を正気に戻すこのシリーズ。この続編の「後巷説百物語」が直木賞を受賞してるんですけど、ここまで綺麗にまとまってしまって、このあとどんな続編が出たのかしら? ちょっと気にはなるけど... でも敢えて読まずに、ここで終わらせておきたい気もします。(角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「巷説百物語」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「続巷説百物語」京極夏彦
「後巷説百物語」京極夏彦

+既読の京極夏彦作品の感想+
「百器徒然袋-風」京極夏彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります

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森福都さんの新作。おなじみの中国唐代を舞台にした短編集です。今回も森福都さんらしい雰囲気で面白かったです。則天武后や玄宗皇帝など実在の人物も登場しながら、どことなくミステリアスな雰囲気。それでもって粒揃い。でも、改めて感想を書こうとしてはたと手が止まってしまいました。読み終わって、「ああ、面白かった。」しか残ってないんですが、こういう場合は一体どうすれば...(^^;。
(多分、ここんとこちょっと調子が悪くて、集中力が散漫なせいかと)
連作じゃなくて、普通の短編集だったのだけがちょっと残念だったかな。登場人物に感情移入しても、すぐに頭を切り替えなくちゃいけないんですもん。あ、もしかしたら、私が短編集に苦手意識があるのは、そういう切り替えが下手だからかもしれないなあ。(実業之日本社)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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江戸時代。浪人の家に生まれながらも幼い頃に両親に死に別れ、中山小十郎という長唄の唄うたいと、志賀山おしゅんという踊りの師匠という夫婦に引き取られた仲蔵。義母に踊りの手ほどきを受けた仲蔵は、一旦は15歳の時に日本橋本町の大きな呉服商に引き取られて堅気になるものの、19歳の時に再び芝居の世界に舞い戻ることになります。

実在の歌舞伎役者、初代中村仲蔵の物語。歌舞伎はもちろん演劇関係にとっても詳しい自称☆芝居道楽委員会の菊花さんに教えて頂いた本。既に新刊書店では手に入らない本なんですけど、ちょっと前に中古書店で見つけました。
歌舞伎役者の家に生まれなかった役者の苦労は話に聞きますけど、やっぱり相当なものですね。今とこの時代では、かなり状況が違うとは思うんですが、相当えげつない...。(特に男の嫉妬ってヒドイ) でも声質の悪さで出世は無理と言われた仲蔵も、義母譲りの踊りで足がかりをつかんで、一歩ずつ這い上がっていきます。苦労して苦労して、でも名のある役者に育った後も仲蔵が相変わらず「甘い」ままだったってところが良かったな。タイトルに「狂乱」とあるので、いつ狂ってしまうんだろうって心配してしまったけど...(^^;。
あと、さりげなく江戸時代の有名人物も絡んでくるところが面白かった!(これにはびっくり)
同じ歌舞伎物だと皆川博子さんの「花闇」の方が引き込まれたんですが(これも菊花さんに教えて頂いた本だ)、これもなかなか良かったです。歌舞伎とか落語とか、こういう日本らしい文化には一度きちんと触れてみたいな。と思いつつ、実際にはなかなかなんだけど...。(講談社文庫)

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菊地秀行さんといえば、まず新宿を舞台とした例のシリーズのイメージだったので、これは意外でした! こういった時代小説も書いてらしたのですねー。そっちの作品に比べたら、官能的な描写なんてないも同然の硬派な時代小説。時代小説と言うより、怪談と言う方が相応しいかも。全部で9編入っていて、それぞれに幽霊が出てきたり、不思議な出来事が起きたり。

この中で一番好きだったのは、最初に入っていた「影女房」。辻斬りに殺された小夜という町娘の幽霊が、何も関係ないはずの久馬の家に乗り込んで仇討ちを頼むんですけど、久馬が諦めろと言うと、その前に断った侍を半病人にしたことを告げて、「あなたには、もっと酷い運命を与えて差し上げます」と脅すし、久馬の母親が女の噂を聞きつけて家に乗り込んでくると、誤魔化そうとする久馬を尻目に、「だって口惜しいじゃありませんか」と自ら名乗り出るし、挙句の果てに「私、負けません」なんて宣言しちゃう気の強さ。気の強い幽霊というのも結構いると思いますが、ここまで来ると逆に気持ちいいです。(笑)

それとこの短編集で面白かったのが、それぞれの短編によって幽霊の有り様が違うこと。例えば「影女房」の小夜は、幽霊なのに身体は暖かくて足もきちんとあるし、人間のできることは普通にこなすんです。辻斬りに斬られた傷口からは未だに血が溢れて出るんですけど、それが畳などに付くことはありません。でも他の作品に登場する幽霊は、また違うんですよね。手が氷のように冷たくて、血の跡を残していたり。例えば「足がないから幽霊」とかそんな風に決め付けられないんです。血を流してるから人間だ、という発言にも、「死人が、霊が血を流さぬと、誰が決めまして?」 確かにそうかもしれないですねー。日本の幽霊に足がないのが普通になったのも、そもそも丸山応挙がそういう絵を描いたせいですもんね。(笑) (角川文庫)


+既読の菊地秀行作品の感想+
「幽剣抄」菊池秀行
お正月休みの間に読んだ本(7冊)

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修道士カドフェルシリーズの17巻と18巻。現在発刊中なんですが、最終的に全21巻となることは既に決まっているので、これを読んでしまうと、あと3冊だけになっちゃうんですよねえ。なんか淋しいなあ。

さて、「陶工の畑」とは、聖書の「マタイによる福音」に登場する言葉。キリストを売って銀貨30枚を得たユダは、その後自分のしたことを後悔して首をつって死ぬのですが、その時にユダが神殿に投げ込んだ銀貨の扱いに困った祭司長たちは、「陶器職人の畑」を買って外国人の墓地にするんですよね。なのでキリスト教徒にとっては、どことなく不吉なイメージのある言葉。(陶工って、職人の中でも一番低く見られることがあるそうなんですが、きっとこの辺りが関係しているんでしょうね) そしてそんな題名が象徴するような事件が起こります。「陶工の畑」と呼ばれる土地に埋められていた女性の白骨死体は、一体誰の死体? 物語自体は、カドフェルシリーズらしいオーソドックスさなのに、謎の出し方がいつもとちょっと違っていて目新しい感じ。それぞれに愛する者たちを庇おうとするために、真実に辿り着くまでにかなり遠回りしてしまうことになります。
そして「デーン人の夏」は、「カドフェルまたしてもウェールズに行く」編。題名のデーン人というのは、平たく言えばデンマークから来たバイキングのこと。この頃にはアイルランドやスコットランド、ウェールズにも侵攻して、一大勢力となっていたようです。この作品では、3巻「修道士の頭巾」に登場した見習い修道士のマーク、9巻「死者の身代金」に登場したオエイン・グウィネズが再登場して嬉しい限り。終生住む場所はシュルーズベリの修道院と心を決めているカドフェルも、時々旅をしたくて堪らなくてうずうずするようで、ウェールズ旅行がもう楽しくて仕方ないみたい。今回は背景事情も人間関係も複雑で、冒頭で思わぬ苦戦をしてしまったんですが(3回も読み直す羽目に...)、途中からは面白くて止まりませんでしたー。そういえば「死者の身代金」もすごく面白かったし、エリス・ピーターズ自身、ウェールズとなると執筆にかなり力が入るのかも。(笑) (光文社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「聖女の遺骨求む」「死体が多すぎる」「修道士の頭巾」...ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「聖ペテロ祭殺人事件」エリス・ピーターズ
「死を呼ぶ婚礼」エリス・ピーターズ
「氷のなかの処女」エリス・ピーターズ
「聖域の雀」「悪魔の見習い修道士」エリス・ピーターズ
「死者の身代金」「憎しみの巡礼」エリス・ピーターズ
「秘跡」「門前通りのカラス」エリス・ピーターズ
「代価はバラ一輪」エリス・ピーターズ
「アイトン・フォレストの隠者」エリス・ピーターズ
「ハルイン修道士の告白」エリス・ピーターズ
「異端の徒弟」エリス・ピーターズ
「陶工の畑」「デーン人の夏」エリス・ピーターズ
「聖なる泥棒」「背教者カドフェル」エリス・ピータース
「修道士カドフェルの出現」エリス・ピーターズ

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18世紀前半。ヴェネツィアで6年間の大学生活を終えて家族のもとに戻ってきたユダヤ人青年・エリヤーフーが目にしたのは、思っていた以上に閉鎖的なユダヤ人社会と、ユダヤ人に対する激しい差別。そして、貴族の青年と決闘する羽目になり、決闘には勝つものの酷い拷問を受けることになったエリヤーフーを助けたのは、後にマリア・テレジアと結婚することになるフランツ。フランツの元でエリヤーフーはユダヤ人であることを捨て、エドゥアルトという新しい人間として生き直すことに。

「ラインの虜囚」に引き続き、西洋の冒険活劇。「スカラムーシュ」(感想)に続いて信兵衛の読書手帖の信兵衛さんに教えて頂いた本。今回はハプスブルク家のオーストリアを背景に、ユダヤ人からオーストリア人になろうとした青年を描いた歴史物語です。
読んでまずびっくりしたのは、ユダヤ人に対する差別の凄まじさ。ユダヤ人がキリスト教徒に忌み嫌われる理由は分かってるつもりだし、長い歴史の間差別され続けてきたこともナチスドイツがしたことも、知識として知ってはいたんですけど、思っていた以上でした。留学先のイタリアではそれほど差別意識がなかったようだし、地域的にかなり差はあったようなんですが、やはりドイツやオーストリアでは酷かったんですねえ...。でも差別されているユダヤ人は、決して卑屈になってないし、ユダヤ人に生まれたことを悔やんでもいないんですよね。それどころか、あくまでも誇り高く生きていて、その姿はアーリア人に対する逆差別に見えるほど。それはユダヤ人を捨てたエドゥアルトに対するユダヤ人たちの態度からも良く分かります。でもここでポイントとなるのは、エドゥアルトが人生をかけたハプスブルク家が、ユダヤ人を決して認めるわけにはいかない家だということ。
主人公のエドゥアルト自身はもちろん、彼の人生に深く関わっていくフランツやマリア・テレジア、フリードリヒ2世といった実在する人物たちもそれぞれ魅力的に描かれていたし、畳み掛けるようなテンポの良さもあってすごく面白かったです。マリア・テレジアに関しては、マリー・アントワネットの母親でオーストリアの女帝だということぐらいしか知らなかったし、フランツに関しても「マリア・テレジアの夫」という認識しかなかったので、そういう意味でも色々と面白かったなあ。エドゥアルトという人間は架空の人物だと思うんですけど、見事に歴史的事実の中に溶け込んでますね。

藤本ひとみさんの本は初めてだったんですけど、いいですねえ。すぐには読めそうにないんですが、柊舎のむつぞーさんに教えて頂いた「ブルボンの封印」もいずれ読みたいと思ってます。やっぱり冒険活劇は大好き。デュマの「ダルタニャン物語」も読みたいな。(文春文庫)

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19世紀初頭のパリ。父の訃報を持ってカナダからフランスに渡ったコリンヌは、祖父であるギイ・ド・ブリクール伯爵に会いに行くのですが、勝手にカナダに出奔して原住民と結婚した息子のことを、伯爵は既に息子とは認めていませんでした。伯爵はコリンヌに、パリの東北東、ライン河岸に立っている古い塔に幽閉されている人物の正体を調べれば、コリンヌを孫娘として認めると言い出します。実は9年前にセント・ヘレナ島で亡くなったというナポレオンが実はまだ生きていて、その塔に幽閉されているという噂があったのです。

「小学校最後の夏休みの冒険譚」みたいなのばかりで、ちょっと飽きがきてたミステリーランドなんですが(失礼)、これはまるで違う西洋史物。しかも冒険活劇。ふわふらのともっぺさんから、「三銃士」や「紅はこべ」が好きならきっと気に入ると教えて頂いたんですが、確かにこれはいい! 楽しかったです。目次からして、第一章「コリンヌは奇妙な命令を受けパリで勇敢な仲間をあつめる」、第二章「コリンヌは東へと馬を走らせ昼も夜も危険な旅をつづける」なんて説明口調。どことなく懐かしくて楽しいし、子供のためのレーベルであるミステリーランドに相応しい良質な作品だと思います。あとがきには、なぜ田中芳樹さんがこういう物語を書こうと思ったのかも書かれていて、その気持ちにもとっても納得。
ナポレオンが生きているという噂は本当か? という大きな謎はもちろん、爵位にも財産にも興味のないコリンヌが、なぜ伯爵の言う通りにするのか、そしてなぜ伯爵がそのようなことをコリンヌにやらせるのかなどちょっとした謎もいくつかあって、それらが全てきちんと解決されるのが気持ち良かったです。そしてコリンヌがパリで見つける3人の仲間も、アレクサンドル・デュマやカリブの海賊、ジャン・ラフィットといった実在の人物なんです。そういう風にきちんとした歴史の中に架空の人物を放り込んで活躍させるような話って大好き。子供には勿論、大人が読んでも十分楽しめる作品です。(講談社ミステリーランド)

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退屈姫君の新作が...!ということで、早速読もうと思ったのですが、そういえば風見藩絡みの「おんみつ蜜姫」もまだ読んでなかったのを思い出して、せっかくなので合わせて読んでみました。
「おんみつ蜜姫」の時代は8代将軍吉宗の治世。蜜姫は九州豊後の小藩のお姫さまで、退屈姫君の時代からすると、風見藩の先々代藩主に当たる時羽光晴と結婚することになるので、およそ70年ほど遡ることになります。(退屈姫君は、10代将軍家治の頃)
父が刺客に狙われ、それが将軍吉宗の放った刺客だと思い込んだ蜜姫が、藩を出奔して大活躍。幕府転覆の陰謀あり、忍びの暗躍あり、海賊騒ぎあり、諏訪湖に眠る武田の軍用金ありと盛りだくさんのストーリーで、相変わらずの軽妙な語り口と、味のある登場人物たちの会話が楽しい作品です。特に吉宗と大岡越前の会話が、まるで「大岡越前」か「暴れん坊将軍」でも見てるようで可笑しいんですよね。しかも、時羽光晴がなんであんな変な決まり事を作ったのかずっと不思議に思ってたんですが、ようやく謎が解けました♪

そして「退屈姫君恋に燃える」は、前作「退屈姫君海を渡る」(感想)の続編。確か「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「面影小町伝」で3部作になってたと思うんですけど、いつの間にか「退屈姫君シリーズ」になってたんですね! やっぱりめだか姫、可愛いですものねっ。まだまだ続編が期待できそうで嬉しいな。
今回のタイトル「恋に燃える」で、「えっ、めだか姫が恋...?!」とびっくりしたんですが、恋は恋でも、めだか姫自身の恋ではありませんでした。(ほっ) 大名のお姫さまと風見藩の冷飯の青年の恋です。めだか姫が絡んできたことから、田沼意次に睨まれることになって... やっぱりこのシリーズは田沼意次との対決も欠かせないですね! で、またしても無理難題をふっかけられて、さあ大変。
田沼意次に関しては「退屈姫君伝」の時の方が生彩があったように思うし、無理難題の解決もその時の方が鮮やかだったと思うんですが、でも今回はめだか姫の姉の猪鹿蝶三姉妹が、頑張ってくれてます。ものすごい姉さんたちでした。

今回のこの2冊も、ほんと楽しかったです。楽しい時代物といえば、これと畠中恵さんの「しゃばけ」シリーズが双璧ですね。やっぱり米村圭伍さんの時代物は大好き。未読の作品も全部読もうっと。(新潮社・新潮文庫)


+既読の米村圭伍作品の感想+
「退屈姫君 海を渡る」米村圭伍
「おんみつ蜜姫」「退屈姫君恋に燃える」米村圭伍
「紀文大尽舞」米村圭伍
Livreに「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「面影小町伝」の感想があります)

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これだけ表紙を並べると、圧迫感がありますね...(^^;。
1巻2巻は、摂関藤原家に繋がる武門の出ながらも、父の代から奥六郡にほど近い亘理に退けられていた藤原経清が主人公。3巻4巻はその忘れ形見・清丸(藤原清衡)の、そして5巻は清衡の曾孫に当たる藤原秀衡の物語。私は見てないのですが、以前NHKの大河ドラマになってるので、ご存知の方も多いかもしれませんね。同じく高橋克彦氏の「火怨」(感想)「天を衝く」(感想)と並んで陸奥三部作と呼ばれる作品。どうやらこの「炎立つ」が一番最初に書かれたようです。
陸奥三部作の1つとして、これも面白かったです。でも、ちょっと長かったかな...。

この中で一番魅力的だったのは、1~2巻で主人公だった藤原経清。すごくかっこ良かったです。しかも彼と源義家の関係が、ちょっぴり「火怨」の阿弖流為と坂上田村麻呂みたいでもあるんですよ。(あそこまでではないですが) なので、経清の代の終わり頃は辛かった... 続く3巻4巻は、不遇の環境にあった清衡を義家が助けて家を再興させる話なので、これも普通に面白いです。でも、ここで話はすっかり終わったような気がしてしまうんですよね。
5巻では源義経や弁慶が活躍するのですごく楽しいんですが(頼朝はやっぱりヤなヤツだ!)、こんな風に繋げて書く必要はあったのでしょうかー。平泉の藤原三代の栄華の祖が藤原経清であったと、言いたいのは分かるんですけど、これは独立させても良かったような。 ...と思いながら読んでたんですが、最後まで読み終えてみると、これで良かったのかもしれないなあ、なんて思ったり...(^^ゞ

「天を衝く」の九戸政実みたいに、何をやらせても超人的にずば抜けてるということもなく... あれはあれで爽快で好きなんだけど...(笑) 強さも弱さもある蝦夷たちの存在がとても人間的でした。途中何度かダレたし、↑上にもなんか混乱したことを書いてますが(^^;、やっぱりこれも良かったです。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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「結構元気に病人をやっている」(笑)若だんなのシリーズ第4弾。やっぱり畠中さんはこのシリーズが一番好き! そりゃ4作目ですから「しゃばけ」や「ぬしさまへ」の頃の新鮮味は薄れてしまってるし、若だんなのお兄さんの話がすっかり落ち着いて以来、特に大きな波風も立たないんですけど、でもマンネリ化を恐れずにこの路線を追求していって欲しいなあ。
今回は屏風のぞきや鳴家といった、今まで脇でいい味を出していた妖(あやかし)が中心となった話があったり、5歳の頃の若だんなのエピソードなんかもあったりして、相変わらずのほのぼのぶり。でも突然、「吉原の禿を足抜けさせて一緒に逃げることにしたよ」などと爆弾発言をしてくれたりします。若だんなが駆け落ち? しかも吉原の... ええっ?!
そんな中で、今回一番気になってしまったのは、初登場の妖(あやかし)「狐者異(こわい)」。他の妖とは違って、人間はもちろんのこと、妖ともまじわらない狐者異は、仏すらも厭い恐れたという妖なんですよね。それがなぜなのか誰も教えてくれないし、生れ落ちた瞬間から、他の者たちのつまはじきとなる運命。受け止めきれた者がいないというこの狐者異に、若だんなが手を差し伸べるのですが...
一応今回の話はこれで終わりなんだけど、この狐者異、また登場しそうな気がします。そしてその話こそが、このシリーズ全体の山場となりそうな予感...。(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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舞台は平安時代。自分のせいで異母妹の比右子を死なせてしまい、悶々とする12歳の小野篁が主人公。最後に一緒に遊んでいた荒れ寺へと向かった篁は、ふとした拍子に、比右子が転落した古井戸に吸い込まれてしまいます。気がつくと、そこは石ころだらけの河原。そこには大きな河と立派な橋があり、行くあてもない篁はその橋を渡り始めるのですが... ふと気付くと篁を食べようと狙っている鬼がいたのです。

以前、たまきさんに薦めて頂いた本。児童書です。
昼は朝廷に仕え、夜になると冥府に通って閻魔大王のもとで役人として働いていたなんて伝説のある小野篁の少年時代の物語。妹と恋仲だった、なんて話もありますね。大人になった後の篁は有能な官僚として有名なんですが、ここに描かれた少年時代の篁には、その片鱗はまだ全然ありません。異母妹の死をいつまでもくよくよと悩んで、生きていく気力も半分失っているような状態。鬼に襲われたところを坂上田村麻呂に危機一髪助けてもらうのに、またしても古井戸の中に舞い戻ってしまう始末。
これは、そんな篁が立ち直っていく成長物語なんですが、私がいいなあと思ったのは、3年前に死んでいるはずの坂上田村麻呂。橋の向こう側に渡ってしまいたいのに、帝から「死後も都を守れ」なんて、武装した姿で立ったまま葬られたせいで、どうしても向こう側に行けないんです。立派な武人だから、帝の言葉通りに京の都をしっかり守ってはいるんだけど、でも本当は向こう側に行きたいんですよね。友人知人もどんどん橋を渡ってしまうのに、なぜ自分だけが... と思いつつ、でも自分にできる精一杯のことをしている田村麻呂の姿がなんとも哀しくて。
そんな田村麻呂の姿もそうだし、田村麻呂に角を1本取られたせいで鬼でもなく人間でもない状態になってしまった非天丸の姿もと篁と重なって、なんとも切なかったです。それだけに、異母妹の死を乗り越えた篁の姿が一層感慨深く... うーん、いい話だわー。(福音館書店)

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8歳の時に会って一目惚れした許婚が数ヵ月後に死亡。そして9年後、17歳になった芳娥は許婚の死は殺人だったことを知ることになり、犯人を探し始めます。許婚は当時の宋の宰相・王安石の長男で、当世きっての秀才と名高かった人物。王安石の推進する「新法」にも大きく貢献していました。犯人は「新法」瓦解をたくらむ、旧法派の大物・司馬公と思われるのですが...。

森福都さんの新作。森福さんお得意の中国を舞台にしたミステリです。(嬉)
王安石や司馬公は実在の人物だし、新法派・旧法派の争いも本当にあったんですね。宋代の神宗~哲宗皇帝の時代が舞台。
中国冒険活劇... ってほどではないんですが、剣戟場面もありますし、芳娥自身がかなり長身の男装の麗人なので、司馬公に近づくために大人気女優・月英の助けを借りて偽劇団を作ってみたり、その後の逃亡劇や幻の漆黒泉探し、そこに隣国・西夏の存在や幻の武器開発も絡んできて、なかなか盛りだくさんな華やかさとなってます。芳娥の許婚を殺した真犯人は本当に司馬公なのか、それとも... と、みんなが疑心暗鬼になってくるのも楽しかったし。これで許婚の若い頃にそっくりという少游がもうちょっと活躍してくれれば、もっと良かったんですけどねえ。
でも実は犯人が誰かとか黒幕が誰かとかそういうのよりも、漆黒泉の正体にびっくりでした、私。そ、そういうことだったのか...!
いえ、これは別に秘密でもなんでもなくて、物語の前半で分かっちゃうんですけどね。なるほどねえ...。(文藝春秋)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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高橋克彦さんの陸奥三部作の3作目。ちなみに三部作の1作目は、奈良時代に朝廷に反旗を翻した蝦夷の英雄・アテルイを描いた「火怨」(感想)、2作目は奥州藤原氏を描いた「炎立つ」で、こちらは手元にはあるんですが未読。大河ドラマにもなりましたよね。あと北方謙三さんの南北朝の動乱期の陸奥を制した北畠顕家「破軍の星」(感想)も、陸奥が舞台でした。時代はそれぞれ異なるものの、陸奥の歴史がだんだん繋がってきて楽しい! やっぱり歴史物は読めば読むほど、繋がってきて楽しくなりますね。同じ時代のものを様々な角度から読むというのも大好きなんだけど、こうやって陸奥に拘ってみるのも楽しいなあ。

ということで、これは戦国時代の陸奥が舞台。戦国時代は昔から結構好きで読んでるので、今回はすんなりと入れました。(「破軍の星」はちょっと苦労したので...) 今回の主人公は九戸政実。名前は全然聞いたことがなかったんですが、南部一族で「北の鬼」と恐れられていた男なんだそうです。この人がかっこいいんですよー。武人としても一流でありながら、策士としても凄くって、敵の行動の裏の裏まで読んで大胆な策を打ち出していくんです。時には水面下でこっそり他の人間にその策を授けていたりして... まるでスーパーマンのような活躍ぶり。(笑) でもって、それがぴたりぴたりとハマっていくところが、読んでいて本当に痛快なんです。
物語前半は、南部一族の棟梁の座を巡っての内紛、後半は副題通り、「天」である秀吉に喧嘩をふっかけることになります。わずか5千の兵で立つという潔さもいいし、その少ない兵で10万の兵を自在に追い散らしてしまうとこもカッコいい。途中で政実が秀吉のことを、武者というよりもむしろ商人だと言うところがあったんですけど、本当にそうかもしれないですね。秀吉の戦巧者ぶりは有名だけど、わずか5千の兵に10万という力技を繰り出してくる辺り、札束で頬を叩いているようなものですものね。

ただ、棟梁争いをする三戸信直がもう少し大きく成長してくれたら良かったんですけど、その辺りだけはちょっぴり残念でした。最初は政実や弟の実親が信直の頭の良さを警戒してたし、かなりの曲者と言ってたはずなのに、気がついたら北信愛べったり。自分で考えることもしなくなっちゃう。途中、1人立ちしかけて、大きく成長したと言われてるのに、それも結局それっきり。私としては信愛失脚で、政実と信直との本気の対決を希望してたんですが。(^^ゞ

今度は「炎立つ」を読まなくちゃー。でも全5巻と長いので、ちょっと気合を入れ直してから取り掛かる予定です。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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中国歴史小説の情報がたっぷり詰まったサイト小芙蓉城の冰児さんが、「風の王国」シリーズの地図を作ってらっしゃいました!(コチラ
「風の王国」は、唐の時代に李世民(太宗皇帝)の娘として吐蕃(チベット)へと嫁ぐことになった文成公主を描いた作品。(私の感想はココココ) コバルト文庫なんですが、しっかりと史実を捉えつつ、毛利志生き子さんなりの解釈で作り上げられた物語はなかなか読み応えがありますし、チベットといえばバター茶とヤクとダライ・ラマ... ぐらいの知識しかない私にとっては、風俗描写もとても興味深いんですよね。でも、大好きな中国物ですら大体の場所しか把握してないのに、チベットなんて...! 挿絵入りの人物紹介なんていらないから、地図が載ってたらいいのになあって思ってたんです。
当然、7~8世紀当時の資料なんていうのもなかなか残ってないわけで、作者の毛利さんはもちろんのこと、地図を作られた冰児さんも大変だったと思うのですが、ほんと嬉しい! 今後このシリーズを読む時は、この冰児さんの地図を参考にさせてもらおうと思ってます。今までも、特に最初の文成公主お輿入れの旅、吐谷渾の辺りがイマイチ掴みづらかったんですよー。地図があると、ほんと助かります。嬉しいなあ。


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国5 月神の爪」毛利志生子
「風の王国6 河辺情話」毛利志生子
「風の王国7 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国8 目容の毒」毛利志生子
「風の王国9 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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コバルト文庫から出ていた「かぜ江」シリーズの続編が、角川ビーンズ文庫から出てました。これは三国志を、孫策と周瑜の友情を中心に描いたシリーズ。コバルト文庫で三国志っていうのもすごいと思うんですが、これが意外としっかりとした作品なんですよね。しかも私の好きな周瑜が主役級で出てくるとあれば、やっぱりこれは読むしかないでしょう♪
ということで、2年半ぶりぐらいに読んだんですが... んんー、ちょっとパワーダウンかしら。話としては、コバルトの「約束の時」の直後から「旋風は江を駆ける」の直前辺りまで。あとがきを読むと、出版社を移して完全な続編を書くということで、かなり苦労されたみたいですね。確かにシリーズ物とはいえ、やっぱり角川ビーンズから出るのは初めてだから(しかもコバルトの方は絶版)、登場人物の紹介も最初からやりなおさなくちゃいけないし、シリーズのファンにもそれなりに読ませなくちゃいけないし、色々と大変なんでしょうね。でも、そういう迷いが作品に出てきてしまっているような...。直情型の孫策と冷静沈着な周瑜は相変わらずなんだけど、以前の熱さが感じられなかったのがちょっと残念。まだ本調子じゃないだけで、これからガンガン書いて下さるといいのですが!

この朝香さんの三国志は正史ベース。私が好きな北方三国志も正史ベース。「三国志演義」は実はそれほど好きじゃないし、やっぱりこれは、いつかはちゃんと正史を読んでみなくちゃいけないなあ。でも、正史はちくま学芸文庫から出てるんですけど、文庫なのに1冊1500円ぐらいするんですよね。しかも全8巻... うーん...(^^;。(角川ビーンズ文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「運命の輪が廻るとき」朝香祥
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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酒見賢一さんによる三国志。とは言っても決して真面目な「酒見三国志」ではなくて、私見入りまくり砕けまくりの読本と言った方が相応しいかも。でも酒見さん、「正史三国志」も「三国志演義」も漢字が難しくて読めなくて、適当に和訳された「三国志」をつらつらと眺めただけなんだそうですが... 本当に? その言葉が信じられないほど詳しいし、斬新な解釈や絶妙な突っ込みが満載です。
例えば、劉備の息子の劉禅が生まれる時に、母親の甘夫人が北斗を呑み込む夢をみたとか、白鶴が役所に来て40数回鳴いたとか、産屋に妙なる香りが満ちたとか結構な神秘現象が起きてるそうなんですけど、「凄まじい神秘現象のもとに生まれても駄目なヤツは駄目だという歴史的教訓を示すために書かれているのだとしか思われない」とか...(笑) もっと面白い部分もいっぱいあって、真面目な部分は真面目なんだけど、やっぱり可笑しい。後ろの方で紹介される英語版「三国志」なんて、もう! 全編通して三国志の舞台裏を覗いているような気分でした。考えてみれば、「陋巷に在り」でも、時々挟まれる薀蓄部分が凄く面白かったんですよね。
その酒見さんが「三国志」を初めて読んだのは、デビュー作の「後宮小説」が「シンデレラ+三国志+金瓶梅+ラスト・エンペラーの面白さ」と評されてたからなんですって。なんなんだ、その評価は。(笑)

でもこの1冊でまだあんまり進んでません。この本は500ページ弱なんですが、最後100ページぐらいでようやく三顧の礼が始まるし... しかも劉備ってば嫌々やってるもんだから、違う人をナンパ(?)したり、妙なのど自慢に参加(!)してしまったりとまあ... 別冊文藝春秋での連載が再開してるようなので、きっといずれは五丈原までいくんでしょうけど、「陋巷に在り」と同じように完結まで何年もかかっちゃうのかもしれないですね。分かりやすいから三国志入門編にも良さそうなんですが、でもやっぱりある程度知ってる方が面白いでしょうね。ただ、別に作中の孔明は「泣き虫弱虫」ではなかったです。子供の頃はともかく、大人になってからはむしろ宇宙的に変なヤツでした... 何でこんな題名にしたんだろう?
これで酒見作品はコンプリート。酒見作品はこれからも追いかけていきます~。(文藝春秋)


本当はものすごく海外物の気分なんですけど、先日図書館でいーっぱい予約を入れちゃったので、しばらく国内物が続きます。(せっかくの海外物の気分なのに勿体ない、もっと海外物中心に借りれば良かった) 図書館、行きたかったんですよー。もうほんと、すっかり禁断症状が出てました。(^^ゞ


+既読の酒見賢一作品の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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鎌倉幕府が倒れ、後醍醐天皇による建武の新政が始まって間もない頃。都で不世出の麒麟児と言われた北畠顕家は、わずか16歳の若さで陸奥守に任じられ奥州へと下向。多賀国府に入った顕家は、北条家の残党との戦を繰り返しながらも、山の民である安家一族の協力も得て、わずか2年間で見事に奥州を制定します。しかしその後、後醍醐帝と足利尊氏の争いが表面化して...。

久々の日本史物。もしかし火怨(感想)以来かも。なかなか日本史物の気分にならなかったんですよね。
いやー、久しぶりなのでペースを掴むのにちょっと時間がかかっちゃいましたが、面白かったです。北方さんだから男の人たちがみんなカッコいいんですよ。(笑) わずか16歳で、北畠顕家のこの落ち着きぶりってナニモノ?!なんて思ったりもしたんですが(笑)、でも武家と公家の間で揺れ動く顕家の心情(顕家は公家)がしっかり描かれていたし... 味方はもちろんのこと、敵方の尊氏・直義兄弟、斯波家長といった武将も魅力的で、あと奥州藤原氏の末裔という設定の山の民や、忍びの如月という存在が物語に奥行きを出してました。そして特に良かったのが合戦のシーン。奥州から京都までひた走りに走って尊氏を敗走させてしまうシーンが最高! 最後の戦と、「七ヶ条の諌奏」をしたためるシーンも良かったなあ。
でもね、この南北朝時代って、私のピンポイントな日本史の知識からはすっぽりと落ちている部分なんです... だって「イイクニツクロウ鎌倉幕府」の次は「足利尊氏の室町幕府」、程度の知識しか残ってないんですもん... これで事前の知識があればもっと面白かっただろうにと思うと勿体ない... もっと勉強しないとダメですね。(涙)(集英社文庫)


+既読の北方謙三作品の感想+
「破軍の星」北方謙三
「楊家将」上下 北方謙三
「水滸伝」1~3 北方謙三
「水滸伝」4~6 北方謙三
「水滸伝」7~9 北方謙三
「水滸伝」10~12 北方謙三
「水滸伝」13~15 北方謙三
「水滸伝」16~18 北方謙三
「水滸伝」19 北方謙三
Livreにブラディ・ドールシリーズと「三国志」の感想があります)

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「風の王国」シリーズ5冊目。唐の国から吐蕃(チベット)の王に嫁いだ公主が主人公の、史実に基づいた歴史物。(1~4巻の感想はコチラ
今回、とうとう翠蘭がソンツェン・ガムポ大王に会って、自分が世民の娘ではなく姪だと告白することになります。でもそこがクライマックスになるのかと思ったら違ったのでほっ... このシリーズを読み始めた時から、世民の実の娘じゃないっていうのがそんなに大問題なのか?とずっと思い続けてたんですよね。「偽公主」だなんて言うほどの問題じゃないでしょ。だってある意味、世民の実の娘っていうより凄いのに!(謎)
初登場のソンツェン・ガムポは、かなりの狸親父。でも決めるところは決めてくれました。なかなかいいですねえ。さすが大王の風格。この父親と一緒にいると、リジムが妙に子供っぽく見えてくるのが可笑しい♪ でもそれに引き換え、リジムの幼馴染の底の浅いこと... 仮にも王様の親友扱いなんだから、もうちょっと何とかしてもらえないですかねえ。なんでこんなヤツと仲が良かったんだ? 人を見る目がないとしか思えないぞ...っ。とはいえ、今回がシリーズで一番緊迫感があって面白かったです。
しかしこれで偽公主問題は一応解決してしまいました。これからどうするんでしょ。史実の通り突き進む? 単純に史実通りにはして欲しくないなあ。さて、どんな風に料理してくれるのやら楽しみです。(コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国 月神の爪」毛利志生子
「風の王国 河辺情話」毛利志生子
「風の王国 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 目容の毒」毛利志生子
「風の王国 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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17世紀半ばの群雄割拠時代のドイツが舞台。ブランデンブルクの若き選定侯フリードリヒ精鋭部隊がハルバーシュタット公国に攻め込みます。落城寸前の城から、公爵の嫡男・ヨハンと令嬢ソニアを逃がしたのは、宰相の14歳の娘・マリア。彼女はソニアの身代わりとして、城に残ってフリードリヒを待ち受けるのですが...。

千・年・庭・園の凛未明さんのオススメ。西洋史を背景にしたジェットコースター・ロマンスと聞いてたんですが、まさにその通りでした! いやあ、展開が速い速い。(笑) それでも14歳のマリアがなぜか気になって仕方がないフリードリヒの不器用な愛情や、父の敵のはずのフリードリヒに父親的な包容力を見出していくマリアの様子はなかなか繊細に描かれていて良かったです。途中でマリアもフリードリヒもやけに気弱になってしまって、気が強かったはずのマリアが守られるだけの女の子になってしまった時はどうしようかと思いましたが、最後にようやく自分の道を自分で決めることができて、ほっ。
ちなみにこの作品、元々は講談社X文庫から出てたのだそうです。第3回ホワイトハート大賞佳作受賞作品ですって。その時の表紙が右の画像。F文庫がどういう性格のものなのかは、まだ今イチ掴めてないんですけど(大人の女性のための恋愛物?)、やっぱりかなり雰囲気が変わりますね。(笑)(講談社F文庫)

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夢枕獏氏のこの作品に対する思いを語ったエッセイや、映画「陰陽師II」の第一稿と第四稿、映画で安倍晴明役を演じた野村萬斉氏、山口博氏、志村有弘氏らとの対談、登場人物・作品詳解など、人気シリーズ「陰陽師」にまつわることを集めた1冊。

実は野村萬斉氏との対談目当てだったんですが(笑 ←もちろん「陰陽師」シリーズは大好きですが!)、その対談も面白かったし(映画の裏話とか、演技中のトリップや呪の話など)、あと夢枕獏さんの安倍晴明・源博雅の誕生秘話、特に源博雅に関する辺りも良かったです。博雅が実在の人物だというのは知ってたんですけど(とは言っても、以前あとがきか何かで読んだ程度ですが...)、実際に色々な逸話が残っている人物だったんですねー。博雅が無自覚の天才という辺り、なるほどなあという感じ。博雅自身は自分の能力に気付いていないけれど、晴明だけはは知っているから「博雅、おまえはすごい」という言葉が頻繁に出てくるんですね。なるほどー。
以前読んだ「七人の安部晴明」というアンソロジーは、いかにも晴明人気に便乗した感じがあったんですが、こちらは晴明の生きていた時代がぐっと身近に感じられる1冊でした。登場人物・作品詳解で、晴明と博雅の会話を読んでたら、またシリーズを読み返したくなっちゃった。(文春文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陰陽師-付喪神ノ巻」「陰陽師-生成姫」「陰陽師-鳳凰の巻」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「陰陽師 龍笛の巻」夢枕獏
「陰陽師 鳳凰ノ巻」夢枕獏
「『陰陽師』読本 平安の闇に、ようこそ」夢枕獏

+既読の夢枕獏作品の感想+
「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」夢枕獏
「シナン」上下 夢枕獏
(Livreに「猫弾きのオルオラネ」「羊の宇宙」「大帝の剣」の感想があります)

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唐の時代、李世民(太宗皇帝)の姪として生まれながらも、諸事情から母方の祖父母の家で商家の跡取り娘として育てられていた翠蘭は、突然皇帝の命令で吐蕃(チベット)へと嫁ぐことに...。

これはBlue windのmakiさんに教えて頂いた本です。コバルト文庫とかX文庫とか角川ビーンズ文庫とか電撃文庫とか、なかなか自分からは開拓できないんですけど、オススメされて読んでみると結構面白いのが潜んでますね。これもなかなか面白かったです。まず、中国物というところで私のハートをギュッと鷲掴みなんですが(笑)、メインの舞台はチベット。チベットを舞台にした作品というのが珍しくて、またしてもギュギュッと。(笑) 皇帝に命じられて辺境の地にお嫁入りしちゃうといえば、まるで王昭君(前漢時代)のような設定だなあ、やっぱり乙女心をくすぐる設定なのかなあなんて思ってたんですけど、実は史実に基づいた話なのだそうです。
展開は思いっきり王道。どこからどこをとっても王道。主人公が恋に落ちて、その相手と少しずつ距離を縮めていって、でも風習も民族も違う2人だから色々な問題は山積み、彼のことを奪おうとする女なんかも出てきて大変なわけです。だけどなんだかとっても和むんですよねえ。ラブラブになっても、文章がからっとしてるからかしら。ちょっと突き放した位置からの心理描写が濃やかだからかも。彼との間の邪魔者がやりすぎないというのも、きっとポイントですね。チベットの歴史や風物なんかもさりげなく紹介されて、ちょっと興味が広がっちゃいそうです。(コバルト文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「風の王国」1~4 毛利志生子
「風の王国5 月神の爪」毛利志生子
「風の王国6 河辺情話」毛利志生子
「風の王国7 朱玉翠華伝」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国8 目容の毒」毛利志生子
「風の王国9 臥虎の森」毛利志生子
「風の王国 花陰の鳥」毛利志生子
「風の王国 波斯の姫君」毛利志生子・増田メグミ
「風の王国 初冬の宴・金の鈴」毛利志生子
「風の王国 嵐の夜」上下 毛利志生子
「風の王国 星の宿る湖」毛利志生子

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これは「蒼穹の昴」(感想1感想2)の続編。というか後日談。2年前の義和団事件の混乱のさなかに、光緒帝の寵妃・珍妃が井戸に投げ込まれて殺されたという話から、英・独・露・日の高官らが調べ始めるという物語。4人は、ニューヨーク・タイムズ駐在員や、宦官の蘭琴、袁世凱、光緒帝の側室・瑾妃などに話を聞いていきます。でも一体どこからどこまでが本当の話なのやら、それぞれの話は見事に食い違って、色んな人に話を聞けば聞くほど糸はからまっていっちゃうんです。珍妃を殺したのは西太后だというのが、歴史上の通説らしいんですが、ここではそうではないらしく。
「蒼穹の昴」は面白いけどこっちはイマイチだとか、いややっぱりこっちもオモシロイとか、色んな情報があって一体どっちなんだろうと思ってたんですけど、これも結構面白かったです。こんな風に色んな証言を集めていく話って好きなんですよー。解説には芥川龍之介の「藪の中」が引き合いに出されてましたが、それこそ先日読んだばかりの「ユージニア」とかね。登場人物は「蒼穹の昴」とかなり共通してて、でも作風がまた全然違うっていうのも良かったような。歴史ミステリなんだなあと思いながら読んでいたんですが、結局光緒帝と珍妃の恋愛物だったような気がします。
でもでも、最後のあの話だけは全部本当なのかしら? 本当だったら、なぜ彼らはこんなことしたの?
...ちょっと良く分からなくなってしまって混乱中...(恩田さんのもやもやには対応できるんだけど、浅田次郎さんのもやもやにはなぜか対応できない私です(^^;) (講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「蒼穹の昴」1・2 浅田次郎
「蒼穹の昴」3・4 浅田次郎
「珍妃の井戸」浅田次郎

+既読の浅田次郎作品の感想+
Livreにきんぴかシリーズ、「プリズン・ホテル」「天切松闇がたり」1の感想があります)

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自称☆芝居道楽委員会の菊花さんがお好きだと書いてらした山月記。実は私、中国物が好きと言ってる割に、これは全然読んだことがなかったんです。教科書で読んだという方も多いと思うんですけど、私が使っていた教科書には載ってなかったんですよねえ... なんて教科書のせいにしても仕方ないので!遅ればせながら読んでみました。この1冊の中に「山月記」「名人伝」「弟子」「李陵」の4編が収められています。内容的には、既にどこかで読んだような物語ばかりだったんですけど、でも漢文調の文章がとてもいい感じ。ちょっと難し目なんですけど、読んでいて心地良い文章。あ、でもちょっと難しいとは言っても、いっぱい注釈がついてるので大丈夫。巻末の注釈に指を差し込みっぱなしで、行ったり来たりしてしまいましたが。(笑) 
4つの作品のうち、「李陵」だけはちょっとぴんと来なかったんですが、ラストが物悲しい「山月記」も、大真面目にユーモラスな「名人伝」も、孔子の子路への愛情が感じられる「弟子」も、それぞれに良かったです(^^)。(新潮文庫)

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陰陽師のシリーズ4作目。一応順を追って読んでたつもりなのに、なぜかこれだけが抜けてるのに先日気がついたので早速読んでみました。でもこれがシリーズ4作目ってあとがきに書いてあったんだけど、出版順から言えば「陰陽師」「飛天ノ巻」「付喪神ノ巻」「生成り姫」に続いて5作目なのでは...? あ、違うのかしら。きっと「生成り姫」だけ朝日新聞社から出てたせいでややこしくなったんですね(^^;。
今回は短編が7編。1編1編がいつもよりも短くて、ややあっさり風味。蘆屋道満との方術比べは、西遊記にも似たようなエピソードがあったなあって感じだったし、どこかで既に読んだような気がする話が多かったです。でもやっぱりここを流れる空気が心地良いんですよね。私が一番好きだったのは、「青鬼の背に乗りたる男の譚」。青鬼に乗った男の最後の台詞が良かったです♪(文春文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陰陽師-付喪神ノ巻」「陰陽師-生成姫」「陰陽師-鳳凰の巻」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「陰陽師 龍笛の巻」夢枕獏
「陰陽師 鳳凰ノ巻」夢枕獏
「『陰陽師』読本 平安の闇に、ようこそ」夢枕獏

+既読の夢枕獏作品の感想+
「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」夢枕獏
「シナン」上下 夢枕獏
(Livreに「猫弾きのオルオラネ」「羊の宇宙」「大帝の剣」の感想があります)

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なんだか怖い表紙ですねー。これは本のことどもの聖月さんのオススメの作品。聖月さんったら力を入れるあまり、まるでスパムのようなトラックバックまでばら撒いたんですよー。(笑) その聖月さんの書かれた書評はコチラ
で、そのトラックバックを頂いてから1ヶ月以上経ってしまったわけなんですが、読んでみました。(←これでも早い方なのだ) 
舞台は江戸末期から明治にかけての日本。表題作は、とある狂言作家が、若い頃に師匠に聞かされた話を物語るという形式。この表題作の中にも、顔は美しく化粧をしていても心の中は...という譬えが出てくるんですが、まさにそういう感覚の作品群です。核となる登場人物たちは、かつては華やかな暮らしをしていたり、幸せを掴んでいたりと一応恵まれた日の当たる場所にいたはずの人々。なのに物語の視点となる人物が見ている「今」は、既に凋落した生活ぶり。そこには一応、一般的な人々が納得できるような理由や解釈が存在するんですが、それだけではないんですよね。読んでいると、まるでたまねぎの薄皮を1枚ずつはがしていくような感覚です。1枚ずつはがしていって、その一番奥に潜むものは...? もうほんとゾクリとさせられます。5つの物語には特に繋がりも何もないのですが(日本の伝統的芸能が多く登場するけど)、でもやっぱりこれは連作短編集なんじゃなかろうかーって思います。全て読み終えてみると、どれも1人の狂言作家の目を通してみた物語という気がするし。本物の芝居を書くために、人々の生業やそこに潜む闇を覗きこむ目、ですね。
ええと、純粋に好きかどうかと聞かれると、実はあまり私の好みとは言えないのだけど...(聖月さん、ごめんなさいー)、でもオススメしたくなるのも良く分かる良質の短編集。翔田寛さんって、去年ミステリフロンティアに書かれるまでは、実は名前も良く知らなかったんですけど、こんな作品がデビュー作だなんて! しかも埋もれていたなんて!(あ、別に埋もれてない?) たとえば心の闇を描いた作品が好きな人なら、すごくハマると思います。一読の価値はあるかと♪(双葉文庫)

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普段は左から1巻→4巻と並べるんですけど、今回は4巻→1巻と並んでいます。こうすると絵柄が繋がるんですねえ。(←表紙を並べるのが好きな人)
この作品は以前おかぼれもん。のpicoさんに面白いと教えて頂いて以来(確かたらいまわし企画の「秋の夜長は長編小説!」の時)読みたくて、その後moji茶図書館のmoji茶さんが読んでらっしゃるのを見て、やっぱり面白そうだとますます気になっていた作品。自主的に図書館自粛期間をやってたこともあって随分遅くなってしまったんですけど、とうとう読めました...!
いや、ほんと面白かったです。遣唐使として唐に渡り長安に入った空海が、妖異だの何だのから思いがけない出来事に巻き込まれていくという伝奇小説。このタイトルがまたいいですよね! 「沙門空海」が、「唐の国にて鬼と宴」をしちゃうんですよー。(そんな風に書いたら、せっかくのタイトルも台無しかしら) 読み始めこそ、空海と橘逸勢(たちばなのはやなり)の会話がまるで「陰陽師」の安倍晴明と源博雅のようだなあ~という感じだったんですが、でもこっちの2人は「陰陽師」の2人とはまたちょっと違うんですよね。空海にしても野心家だし、意外と計算高かったりしするところが面白い♪ それに物語のスケールの大きさも全然違うんです。...とは言っても、私は「陰陽師」も大好きなので、スケールが大きいからこっちの方が上とかそういう話じゃなくて、「陰陽師」とはまた違う魅力があるという意味なのですが!
空海もいいし、橘逸勢もいいし(でもその後のことを知ってるとちょっと切ない)、中国側の人たちも、既に歴史上の人物となってしまっている人たちもみんな良かった。でも確かにこれは空海が主人公なんだけど、空海の話でありながら、白居易の世界でもあるんですね。二重写しというか、空海の物語の奥底に「長恨歌」が伴奏のように響いてる感じというか... 途中までは「ワクワク」がメインで読んでいたのですが、終盤は一気に切なくなりました。切ない切ない切ない哀しい切ない。 
連載開始から17年、4回も掲載誌を変えながらついに完結したという作品。あとがきの1行目に「ああ、なんというど傑作を書いてしまったのだろう。」という夢枕獏さんの言葉がありますが、これも素直に頷けちゃいます。ほんと凄いです。いい作品を読みました。そのうち空海の日本編も書くつもりがあるとのことで、楽しみ。いずれ役小角の話も書くつもりがあるとのことで、これも楽しみ。夢枕獏作品、今度は16世紀のオスマントルコ帝国を舞台にしてるという「シナン」が読みたいんですよね。あと、李白と白居易もちゃんと読みたいな。...ああ本当に、読んでも読んでも読みたい本は尽きないのですねえ。(徳間書店)


+既読の夢枕獏作品の感想+
「陰陽師 龍笛の巻」夢枕獏
「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」夢枕獏
「陰陽師 鳳凰ノ巻」夢枕獏
「『陰陽師』読本 平安の闇に、ようこそ」夢枕獏
「シナン」上下 夢枕獏
(Livreに「猫弾きのオルオラネ」「羊の宇宙」「大帝の剣」「陰陽師-付喪神ノ巻」「陰陽師-生成姫」「陰陽師-鳳凰の巻」の感想があります)

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陰陽師シリーズの... ええと6作目かな...? ...と、数えていて気がついたんですけど、もしかして私、4作目の「陰陽師 鳳凰ノ巻」を読んでなかったかも! しかもこのシリーズは大好きなはずなのに、読んだのは2000年11月以来でした... 我ながらちょっとびっくり。
...というのはともかくとして。
相変わらずの、独特なリズムを感じさせてくれる文章が素敵です。やっぱりこの空気感がいいんですよねえ、このシリーズは。今回、博雅と晴明の2人のシーンが、いつもよりもやや薄いようにも感じられたんですけど、でもその分は蘆屋道満や初登場の賀茂保憲が補ってくれたような。(というより、博雅がこの2人の濃さに負けてる...?!) 道満は相変わらず濃いキャラクターだし(笑)、相変わらず面倒なことを起こしてくれてるんですけど、でも単なる敵役ではなくなってるような。ちょっと言葉は変なんですけど、晴明とは戦友みたいな感覚のように思えました。で、賀茂保憲は兄弟子で、こちらも濃いです。(笑) いきなり真っ黒い虎に乗って登場しちゃうし(晴明の白い狩衣と好対照)、面倒だからとやりかけの仕事を晴明に押し付けちゃうようなキャラ。なんか可笑しーい。そして今回は5編が入ってるんですが、私がその中で一番好きなのは「むしめずる姫」。このシリーズは読んでいるといつも、場面場面がくっきりと鮮やかに浮かび上がってくるんですけど、その中でもこの「むしめずる姫」の最後の場面は特に素晴らしいです。
ということで、「鳳凰ノ巻」も買ってこなくてはーっ。あ、一緒に「『陰陽師』読本」というのもいいかも。野村万斎さんとの対談、読みたーい。(文春文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陰陽師-付喪神ノ巻」「陰陽師-生成姫」「陰陽師-鳳凰の巻」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「陰陽師 龍笛の巻」夢枕獏
「陰陽師 鳳凰ノ巻」夢枕獏
「『陰陽師』読本 平安の闇に、ようこそ」夢枕獏

+既読の夢枕獏作品の感想+
「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」夢枕獏
「シナン」上下 夢枕獏
(Livreに「猫弾きのオルオラネ」「羊の宇宙」「大帝の剣」の感想があります)

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「白妖鬼」(感想)、「鬼」(感想)と並ぶ、弓削是雄の登場する鬼シリーズの1作。「白妖鬼」の3年後、弓削是雄もいつの間にか陰陽寮の頭となっていました。今回は、ある晩弓削是雄が寒気を感じて目を覚ますと、目の前には5つの生首が。そしてその持ち主が1人ずつ死んでいって... という話。祥伝社15周年記念の書き下ろし企画の1つで、「鬼」というテーマで競作された1作。(他の2作は加門七海さん「大江山幻鬼行」、藤木稟さん「鬼を斬る」) ...本当は400円文庫って苦手なんですよね。「長すぎない短すぎない 中編小説の愉しみ」と銘打ってある400円文庫なんですが、私にとってはまさに、「短編にしては長すぎるし、長編にしては短すぎる」という印象。...もちろんその中にも、若竹七海さんの「クール・キャンデー」のようなピリッと引き締まった作品もあるのですが。
で、この作品はどうかといえば、長さのハンディにも関わらず読ませてくれました! まあ、シリーズ物ということで、人物の造形が既にほとんど出来上がっているので、単発物に比べて条件はいいし、元々このシリーズは他の作品もそれほど長くないんですけどね。まあそれはともかく、なかなか美しい人間ドラマを見せてくれます。

book01.jpg最初検索した時、AmazonでもBK1でも画像が出なかったので(BK1にいたっては、何度調べなおしても「空中鬼」のページすら見つからなかった)、先日買った世界史年表と一緒にパチリ。いやー、歴史物って好きなんですけど、「これっていつ頃の話?」とか「アレとコレと、どっちが先?」とか、いつも全然分からなくて困ってるんですよね。で、何か年表か参考書が欲しかったんですが、GWの間にとうとう買ってしまいました。この「世界史年表」は、愛想は全然ないんですけど、日本史を含めた世界史が地域別に並列して載ってるので分かりやすくていいかなーと思って。あまり詳しすぎないところもGood。この「空中鬼」でも、早速活躍しています。(その数時間後、もう一度BK1で検索したら、今度はちゃんと画像付きで出てきました... なぜ???)(祥伝社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「闇から招く声」高橋克彦
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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「願はくは花の下にて春死なん そのきさらぎの望月のころ」という歌からも、桜のイメージの強い西行。ここ数年、桜の季節に合わせて白洲正子さんの「西行」を読もうと思いつつ、果たせずに積みっ放しだったのですが、今年こそ!
ということで、まずは辻邦生さんの「西行花伝」を読んでみました。(えっ、白洲さんじゃないの?) 西行の死後、弟子の藤原秋実という人物が、生前の西行に関わりあいのあった人物を訪ね歩いて、西行に関する話を聞き出していくという形態。秋実自身はもちろん、乳母や従兄、友人知人、そして他ならぬ西行自身の言葉によって、徐々に西行という人間が浮かび上がってきます。西行に関する知識など皆無に等しい私にとっては、人間関係を掴むまでがちょっと大変だったのですが、でも文章がなんて美しい...! 柔らかな語り口なんですけど、芯の強さがあるんでしょうね。読んでいてすごく心地良かったです。森羅万象を愛しむ西行の懐の深さと相まって、なんだか大きな温かいものに包まれているような気分になりました。和歌の説明が特についていなくても、読んでいるうちに自然と分かってくるような気がしたし。そして西行といえば、もっと世を儚んで出家したのかと思っていたのですが、この作品によるとそうではないのですね。歌に生きるため、この世の全ての物を愛するがため、この世を美しく豊かに生きるための出家。現世(うつせみ)が好きだからこそ、現世を棄てる。現世から一歩離れてこそ、その良さが見えてくるし、より深く現世に関わるための出家。700ページという大作で、結構時間をかけて読んだのですが、でももっとゆっくり読みたかったな。序+21帖に分かれてるから、1日に1帖ずつ読むというのもいいかも。今度ぜひとも再読して、またじっくりと味わいたいものです。

これは実は5回目のたらいまわし企画で、おかぼれもん。のpicoさんが「感銘を受けた本」として挙げてらした本。たらいまわしって、漫然とした私の読書意識にいつもほんとガツーンとショック与えてくれて凄いです。私なんて参加するたびに全然読んでない本ばかりで、自分の底の浅さにショック受けちゃうんですけど、でもおかげで少しは幅が広がりそう。
ということで、次こそは白洲正子さんの「西行」。本当は瀬戸内寂聴さんの「白道」も読んでみたいんですけど、こちらは未入手。これは来年かもしれないなあ。(新潮文庫)


+既読の辻邦生作品の感想+
「西行花伝」辻邦生
「手紙、栞を添えて」辻邦生・水村美苗

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陸奥の奥にひっそりと暮らしていたため、朝廷から特に干渉を受けることもなかった蝦夷たち。しかし陸奥から黄金が産出することが分かり、事態は急転。陸奥の土地、そして人々の心を守るために立ち上がったのは、蝦夷の若き長となった阿弖流為(アテルイ)。

いやー、本当にいい作品でした...。「男が泣ける」小説とは聞いていたんですけど、まさにそんな感じ。これほどの作品だったとは。や、これは読まなくちゃいけません。面白いとか感動したとか、そんな言葉では言い表せないぐらい、もう心底良かったです。
この作品の主人公はアテルイという若き蝦夷。18歳にして蝦夷たちのリーダーとなった人物です。若いからちょっと血の気が多いんだけど、でもみんなその熱さに魅せられちゃうほどの男気のある人物。このアテルイが表に出てきて初めて、それまでバラバラだった蝦夷たちが1つにまとまることになります。アテルイの腹心となる飛良手(ひらて)や参謀の母礼(もれ)、幼馴染の伊佐西古(いさしこ)... もうみんなアテルイに男惚れしてるし、彼ら自身もいい男揃いなんですよね。朝廷軍との戦いっぷりもお見事。そして後半になると、坂上田村麻呂が登場します。アテルイを知らなくても、坂上田村麻呂という名前には聞き覚えのある人も多いでしょうね。この田村麻呂がまた男気がある人物なんだ! もうほんと敵ながら天晴れというか何ていうか、なんでアテルイと坂上田村麻呂は違う側に生まれてしまったんだろう... と哀しくなってしまうほど。でもアテルイたちと田村麻呂の、お互いに対する信頼が、またいいんですよねえ。
で、ここまでくると、大体の筋書きは想像がつくよっていう人もいるかもしれないし、かく言う私もある程度は予想してたんですが... もうそんなの途中で吹っ飛んじゃいました。後半4分の1は予想を遥かに上回る展開。物凄く良かったです。最後の100ページなんて、ティッシュと大の仲良し。涙で目が霞んで文字も読めなくなっちゃったほどでしたもん。目も鼻も真っ赤っ赤。...私がそんな風に泣くのって、ものすごーーーく珍しいんですよ! しかも100ページずっと涙が止まらないなんて、我ながらびっくり。
ということで、皆様ぜひ読みましょう。文句なしの傑作です。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「闇から招く声」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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小野篁と小野小町、そして在原業平を巡る伝奇小説。加門七海さんといえば、「大江戸魔方陣」とか「うわさの神仏」とか、若竹七海さんや高野宣李さんとの「マレー半島すちゃらか紀行」。ちょっと旅に出ればハプニングの連発で、でもそれを笑い飛ばしちゃうような感じの文章が多かったと思うんですが、こういう雅な和歌調の文体も書かれる方だったんですねえ。最初はちょっと入りづらかったんですけど、気が付いたらすっかりその世界に浸っていました。先日、お友達と話してた時に、本を「さらっと読み流す派」か「心の中で音読する派」かっていう話になって、まあ私は普段はさらっと読んでしまう派なんですけど、この本に関しては、ふと気付けば心の中で音読してましたし。そんな風に文章に浸りたくなる作品というのもいいものですねー。それと、謎が多いと言われている小野小町の設定にも意表をつかれました。こんな風に繋げてしまうなんて面白いなあ。(幻冬舎文庫)

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北森さんの作品は久しぶり。なかなか気分が乗らなくて積んだままだった本なんだけど、昨日の「警視庁草子」と登場人物がかなり共通しているようなので、今がチャンス!と選んでみました。明治12年に、後に「藤田組贋札事件」として知られる偽札事件の容疑で逮捕された大阪の豪商・藤田傳三郎の話。ミステリ風味なのかと思ったら真っ当な歴史小説だし、傳三郎の伝記的な作品かと思ったら、彼の影的な存在だった宮越宇三郎の話だったんですねえ。や、この宇三郎がいいんですよ。最初は「鬱陶しい人だな...」的視線で見てしまった宇三郎なんですが、中盤以降どんどん光ってきてびっくり。ほおぉ、これはよろしいですなあ。あ、この時代に活躍した高杉晋作や久坂玄瑞、伊藤博文といった長州の志士たちも登場します。
で、この話自体もとても良かったんだけど、昨日の「警視庁草子」と比べると、これがまた面白いんですよね。同じ贋札事件、同じ下手人による事件が、描き方によってこうも違ってくるとは。私なんて、どれを読んでも「ほー、そうだったのか!」状態だから、どれも真実に見えてきて困っちゃう。歴史ミステリなんかでも、「それがきっと真実だろう」と思い込んでる作品が結構ありますしね。私のこの騙されやすさっていうのは、もしかしたら本(特にミステリ)を楽しむ上で最大の美徳かもしれないわっ。(←自虐的)(文春文庫)


+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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 警視庁草子 下 [amazon] [amazon]
明治初期。まだ混沌とした時代を背景として、警視庁と元江戸南町奉行の面々の対決を描いた作品。いやー、この時代の政府の要人はもちろんのこと、有名人が多数登場、所狭しと動き回ってるのが凄いです。だってね、清水次郎長とその乾分の大政・小政、河竹黙阿弥、雲霧お辰に高橋お伝、山岡鉄舟、幼い頃の夏目漱石や幸田露伴、樋口一葉、少年時代の森鴎外、そして皇女和宮まで! 他にもまだまだ色んな人たちが表に裏に活躍するんですよ。まるで江戸時代から明治への時代の流れをフルカラーで見せられてるみたい。元江戸南町奉行が、「隅の老人--いや、隅の御隠居と呼んでもらおうか」と言っていたり(オルツィ!)、仕掛け人の話のところでご隠居が横を向いて「御免下され、池波正太郎殿」と言っていたり(笑)、しかもこーんなところに新撰組のあの人が!(ここで、大河ドラマでその役をやってた役者さんの顔がどどーんとアップになる) 森鴎外の初恋秘話やいかに?! もう虚実を取り混ぜて自由自在って感じ。山田風太郎って、ものすごい知識の人だったんだろうなあ...。誰が善で誰が悪ということもないのが、またいいんですよね。途中ちょっぴりダレた部分もあったんですけど(これはきっと私の知識不足のせい)、最後の追い込みがまた良かったです。色んな人の想いが切なかったなー。(ちくま文庫)


+既読の山田風太郎作品の感想+
「明治断頭台」山田風太郎
「警視庁草子」上下 山田風太郎
Livreに「魔界転生」の感想があります)

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「陋巷に在り」の次に何を読もう?ということで、「陋巷に在り」とちょっぴり共通点を感じる「鬼」を選んでみました。読む前は、去年読んだ「白妖鬼」に登場した弓削是雄の連作短編集かと思ってたんですけど、弓削是雄の話は5編中2編だけ。実際には、他にも滋岡川人や賀茂忠行、安倍晴明といった面々が登場して、もっと大きく平安時代の陰陽師たちが主人公といった感じですね。年代順に5編並んでいるので、それぞれの陰陽師たちの繋がりが分かるのも面白いし、1編目では少年だった弓削是雄が2編目では壮年になり、3編目で登場した賀茂忠行の息子が4編目で登場し、4編目ではまだ少年だった安部清明が、5編目では白髪のおじいさんになってたりするのも面白いです。
とは言っても、やっぱり弓削是雄だけの話が読みたかったなっていうのはあるんだけど(^^;。
陰陽師たちは、もちろん鬼の存在を絶対的に信じてるし、本当に鬼の仕業という怪異もあるんですけど、鬼の仕業に見せかけて悪事を行う人間も当然多いんですよね。5編共に、鬼の存在を通して人間の欲望や悪意を焙り出してるみたい。もしかしたら、そういった人間の負の感情が、鬼という形をとっているのかもしれないですね。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「闇から招く声」高橋克彦
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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「陋巷に在り」もとうとう最終巻。「魯の巻」です。いやー、読んだ読んだ。これで案外あっさり終わってしまったのがちょっとびっくりだったんですが、やっぱり面白かったです。全13冊という長大な物語なんですが、結局、孔子が司寇職にいた3年間の物語だったんですね。びっくり。しかもこの作品を読む前は、儒教といえば、ひたすら祖先や年長者を敬い道徳を重んじて、孔子といえば「聖人」だったんですけど、この作品が物の見事に覆してくれました。史実を元にここまで壮大なファンタジーを作り上げるなんて、ほんと凄いや。呪術が当たり前に存在してたこの時代という設定が、またファンタジーなんですよねえ。酒見さんの作風にも良く似合ってたような気がします。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一

+既読の酒見賢一作品の感想+
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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舞台は18世紀のフランス、ルイ15世の時代。...と書くとまるで重厚な歴史物みたいなんですが、全然そんなことはありませんでした。だってね、この作品に登場する最初の台詞が、「--もうええっちゅうに」なんですよっ。それを言ってるのは、ジャック・カザノヴァ。ドン・ファンと並ぶ艶福家として有名なあのヒトです。舞台がフランスだから、カザノヴァの話すイタリア訛りのフランス語は大阪弁になっちゃうわけなんですねー。いや、もうなんてお茶目なんでしょ。それがまたこのカザノヴァのキャラクターにハマってて可笑しくて、ついつい勢いがついて一気読みしてしまいました。いやー、面白かった。
カザノヴァの他にも、女装の剣士デオン・ド・ボーモン(この人が主人公です)、ルイ15世、その寵妃・ポンパドゥール夫人、サン・ジェルマン伯爵、他にもこの時代の有名人が続々と登場して縦横無尽に駆け回ってるって感じで、歴史物らしい重みはやっぱり全然ナシ。ちょっと軽すぎるきらいはあるんだけど、でもその分テンポの良さは抜群! しかも史実は史実として、しっかりと流れてるんですよね。なんだか不思議。これでラストがもっと盛り上がってくれたら言うことなかったかも。
この作品は、第12回日本ファンタジーノベル大賞の大賞受賞作品。やっぱこの賞の作品は面白い!というか私に合います。ということで、今年はこの賞関連の作品を1冊ずつ読んでいこうと決意を新たにした私なのでした♪(新潮社)

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11巻「顔の巻」と12巻「聖の巻」。中休み的な10巻を挟んで、また話が動きました。でも話としては凄いことになってるし、相変わらず面白いんだけど、やっぱり7~9巻の盛り上がりぶりほどではないかなあ。って、比べる方が酷というものかなあ。
次はいよいよラストの13巻。これまでの12冊はそれほど分厚くなかったんだけど(400ページ平均)、13巻になるといきなり700ページ近くの分厚さになるんです。さて、どうなることやら。読むのが楽しみなような惜しいような... って、また一休みしてしまいそう。(笑)(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一

+既読の酒見賢一作品の感想+
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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9巻「眩の巻」と10巻「命の巻」。
7巻8巻のゴタゴタも9巻でようやく片がついて、それからはちょっと中休み的な流れになります。でもここでの出来事が、孔子のその後に大きく影響してきそうな予感。それに、今まで名前しか登場してなかった孔子の母親・徴在の話がここに来て語られることになります。で、この徴在がまたいい味出してるんですよね。酒見さんの描く女性って、すごく魅力的ですねー。前の巻に出てきた女神もすっごくかっこよかったし、悪役の子蓉も、他の男性悪役を完全に食っちゃってるし、そういえば、「後宮小説」でも女性が良かったんですよね。銀河も可愛かったし、そのルームメイトもそれぞれに個性的で好きだったし♪(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一

+既読の酒見賢一作品の感想+
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
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土日は一休みしてたんですが、再び「陋巷に在り」です。今日は7巻「医の巻」と8巻「冥の巻」なんですが... うひゃー、面白いっ。これまでもまあ面白かったんですが、ここに来て一気に盛り上がってます。これは全13巻の中でも、屈指の見せ場なんじゃないかしらー。南方から医者が来て、子蓉が妤という女の子にかけた媚術の治療をするんですけど、この治療がすごい呪術決戦なんですよ。もうほんと物凄い緊迫感で全然目が離せないし、読んでる間に思わず息を止めてしまうので窒息してしまいそう。(←おばか) 作者の解説部分にきて、ようやく一息つけるって感じなのです。強烈な個性を発散してる医者もいいし、現代医学とはまるで違う、この時代の医術というのも面白いです。顔回も、とうとう冥界まで行っちゃうしねえ。凄いなあ。神話や何かで冥界に行くエピソードって時々あるけど、これはその中でも屈指じゃないかな?
で、8巻巻末には、この作品が小説新潮に連載されていた時の挿絵も載ってるんですが、これが南伸坊さんの絵なんですよー。やっぱりこの方の絵はめっちゃ好きです。なんとも言えない味わいがあっていいですね。諸星大二郎さんの表紙も評判いいけど、個人的にはこの挿絵で読みたかったな。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一

+既読の酒見賢一作品の感想+
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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今日は5巻「媚の巻」と6巻「徒の巻」。
んんー、5巻には顔回がほとんど登場してなくて、孔子もまるでいいとこなし。悪役ばかりがのさばってて、早くなんとかしてよ!状態。でもようやく顔回が動いて、孔子もいいところを見せた6巻よりも、みんな全然いいとこナシの5巻の方が面白かったのはナゼかしら。(笑) やっぱりこの悪役がいいんでしょうねえ。読んでいる私も、実はこの話術にハマっているのかも... と思いつつ、6巻で一応なんとか収まりがついてほっと一息。これで話も一段落かな。
でも本の画像を見ると、帯に「美少女がカルト教団を結成!」なんて書いてあるけど、美少女っていうのも、どうなんでしょうねー。1つ前のエントリの4巻の帯にも「美少女を襲う鏡の魔力」なんて煽り文句が見えるけど、なんだかいかにもそういうのをウリにして興味を持たせようとしてるっていうのが見えて嫌だな。ほんとはそんな美少女じゃないはずなのに。顔は可愛いのかもしれないけど、むしろ元気一杯でやんちゃなところが魅力って感じの子のはずだったんですよ。おかしいなあ。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一

+既読の酒見賢一作品の感想+
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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今日は3巻「媚の巻」と4巻「徒の巻」。
強力な媚の術を扱う美女・悪子蓉が登場します。「悪」なんて苗字だと、いかにも悪人という感じがしちゃうんですが、中国ではそれほど悪い字ではないのかな?(笑) この子蓉という女性がそりゃもうすごい人なんですよー。並み居る男たちをばったばったと、その魅力で虜にしていっちゃう。彼女が狙った男は、1人のこらず彼女にクラクラ。で、クライマックスは、顔回(主人公ね)との対決! やっぱり顔回が登場するところが面白いなあ。孔子にはそれほど魅力を感じないんですよね。1つ前の日記に書いた「乗り切れない部分」というのは、実はその孔子の部分なのかもしれないなあ、なんて思ってます。でもまあ、それはともかくとして。ちょっと不思議な感じがするのは、孔子が巨漢で異相だったというところ。孔子って、なんとなく細くて小さい人イメージだったんですけど... これって一体どこでついたイメージなのかしら? 「巨漢」とか「異相」とか出てくるたんびにドキッとします。(笑)(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一

+既読の酒見賢一作品の感想+
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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ということで、昨日書いた全13巻の本というのは、この「陋巷に在り」でした♪
いやー、とうとう読み始めてしまいましたよー。中国歴史物大好きな私ですが、もちろんその歴史全体を網羅できているはずもなく(中国三千年の歴史を網羅だなんて到底無理!)、孔子に関してもほとんど知らない状態。春秋時代は好きなんだけど、今まで読んだ話は、どれも孔子の時代とは微妙にズレてるみたいなんですよね。読み始めてみても、かろうじて晏子を知ってるぐらいだったし。(これは宮城谷昌光さんの「晏子」で)
でも、なかなかいい感じです!
主人公は、孔子の一番愛されたという弟子という顔回。この青年がなかなかいい味出してるんです。普段は、日本で言えば長屋みたいなところに住んで、働きもせず、日がな一日学問をしてるだけのようなぼんやりとした青年。でも、やる時にはやってくれます。というのも、彼は実はただの勉強家ではなく、生まれながらに超自然的存在を感知できる、巫儒の術者だったのでした...!
ただ、1巻の裏のあらすじの「サイコ・ソルジャー」という言葉は、あまりそぐわないと思うんですけどね(^^;。
今日読んだのは、1巻の「儒の巻」と2巻の「呪の巻」。まだちょっぴり乗り切れてない部分もあるんですが、1巻から結構な呪術合戦が繰り広げられてて面白いし、歴史的な説明部分にも、知らなかったことが沢山あって、それがまた面白い。これからの展開が楽しみです。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一

+既読の酒見賢一作品の感想+
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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平安時代を舞台にした、陰陽寮きっての術士・弓削是雄の物語。陰陽師といえば、これまで安倍晴明の話しか読んだことがなくて、弓削是雄? えーと、「弓削」は知ってるけど、本当に「是雄」って名前だっけ...? 程度だったんですが (注:レッキとした実在の人物です)、や、想像以上に面白かったです。文庫にして218ページという短い作品なんですけど、その短さを感じさせないというか、この長さに不足を感じさせない起承転結というか、これはいいですねえ。弓削是雄を主人公にした鬼シリーズというのがあるらしくて、これはぜひとも読んで見たくなっちゃった。薄い本だし、ものすごーく期待してたわけじゃなかったのに(分厚い本好き)、なんだか得した気分だわ!(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「闇から招く声」高橋克彦
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「面影小町伝」でこのシリーズは終わりなのかと思っていたら、いつの間にか「あんみつ蜜姫」と、この「退屈姫君 海を渡る」が出ていました。「あんみつ蜜姫」は、どうやら先々代のお殿様(例の光猶院様)の話のようですね。で、こちらの「退屈姫君 海を渡る」には、あのめだか姫が再登場!時系列的には、「退屈姫君伝」の直後のようです。
「海を渡る」という題名から、もしや外国に行ってしまうのか...?!と思ったのですが、そうではありませんでした。参勤交代で国許に帰った夫の直重が失踪してしまって、めだか姫が海路風見藩へ...という意味の「海を渡る」。そりゃそうですよね、鎖国の時代なんですから!いくらめだか姫でも、海外には行かないですよね。(笑) ...や、江戸にいる正室が国許に行くこと自体、実際にはすごいご法度なわけなんですが。(笑)
これまで「風流冷飯伝」と「退屈姫君伝」では、同じ風見藩の話でありながら、舞台が国許と江戸とに分かれて、直接的な接点がなかったのですが、今回はどちらのこの2つの作品の登場人物たちの競演が見られるのが嬉しいところ。講談調の軽妙な語り口も相まって、賑やかで楽しい作品となっています。このシリーズは、まだまだ続きそうですね。(新潮文庫)


+既読の米村圭伍作品の感想+
「退屈姫君 海を渡る」米村圭伍
「おんみつ蜜姫」「退屈姫君恋に燃える」米村圭伍
「紀文大尽舞」米村圭伍
Livreに「風流冷飯伝」「退屈姫君伝」「面影小町伝」の感想があります)

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江戸末期。上野の端にある小さな神社の禰宜を務める弓月の元を訪れたのは、由緒正しい大神社の権宮司・佐伯彰彦。彰彦は、弓月の夢告(ゆめつげ)の能力で、神社の氏子である蔵前の札差・青戸屋の1人息子の行方を占って欲しいと言うのです。
畠中さんの江戸時代物!やっぱりこの方は、江戸時代が合ってるんでしょうねー。どうしても若旦那のシリーズのインパクトが強いので、同じ江戸時代が舞台となると、どんな風に特徴を出すんだろう... とちょっぴり心配していたのですが、心配無用でした。こちらは妖怪こそ出ませんが、主人公の弓月もいい味出してますし、ほのぼのとして暖かくて、やっぱりこの雰囲気は大好きです(^^)。...ちょっと頼りなくて、でもやる時はやるゾ!って弓月のキャラクターは、若旦那と少しかぶってるんですけどね。(笑)
青戸屋の1人息子は一体誰なのか、神社に集まった彼らを狙うのは誰なのか、という謎が中心にあるし、弓月のゆめつげの能力が、本人にもなかなか意味が解けない謎の情景ということで、立派にミステリ仕立てと言える作品なんですが、でもミステリという以前に1つの物語として面白かったです。シリーズ化して欲しいような作品だけど、でもこれはもうこれでお仕舞いかなあ。ちょっともったいないような気がするけど、これは仕方ないかなあ。(角川書店)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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ということで、読み終わりました、「蒼穹の昴」!
面白かったですー、一気に読んでしまいました。...でもすごく面白かったんだけど、後半は新聞記者とかの視点に移り変わってしまって、主役2人の比重がかなり小さくなってしまったのは残念だったな。前半は史実以外の物語の部分が大きくふくらまされてて、そういう肉付けの部分が凄く面白かったのに、後半は史実に負けてしまったような... 主役の2人は、もちろん光緒帝派と西太后派として重要な役回りなんだけど、でももう既に個人のドラマというレベルではなくなってしまったから。それはこの作品の良い面でもあるんでしょうけど、でも1巻2巻を読み終わった時点で、少し違う方向性を期待してしまったんですよねえ。(^^ゞ
とは言え、それでもやっぱり面白かったです。普段中国物を読んでいると、私が好きなのはもっと古い時代のせいか、他の国との交流があまり出てこなくて、中国だけで完結していることがほとんどなんですよね。それがこういう清の時代、それも末期の話ともなると、日本を含めた諸外国の存在も無視できなくなってきていて、それが中国物としてまたすごく新鮮でした。ここから今の時代に繋がるんだなあって実感。現代に通じるマスコミのペンの力みたいなものも良く分かりますしね。実在を実感できる歴史というか何というか。...で、まずはここから「ラスト・エンペラー」に繋がるのね。(笑)
でも西太后って、本当の本当のところは、どういう女性だったんだろう?? どんな人だったのか、歴史を遡って覗き見てみたい!!(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「蒼穹の昴」1・2 浅田次郎
「蒼穹の昴」3・4 浅田次郎
「珍妃の井戸」浅田次郎

+既読の浅田次郎作品の感想+
Livreにきんぴかシリーズ、「プリズン・ホテル」「天切松闇がたり」1の感想があります)

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ということで、2巻まで読了。ハードカバーは全2巻ですが、文庫は全4巻となっているので、丁度半分読んだことになります。いやー、面白いっ。中国物好きとは言っても、清の時代に関してはあまり詳しくない私なんですが、去年陳瞬臣氏の「阿片戦争」や「太平天国」を読み、今年になって井上祐美子さんの「雅歌」を読んで、自分の中でだんだん歴史が繋がってきました。こうやって徐々に繋がっていくのが、歴史物の醍醐味ですよねえ(^^)。
ええと、中心となる人物2人は架空の人物なんですが、西太后、光緒帝、袁世凱ら歴史上の有名人物も登場してて、で、この中でびっくりしたのが西太后の描かれ方!「有名」というよりも「悪名高い」と言った方がぴったりの西太后なんですが、こんな風に描かれてるなんて面白いなあ。しかも彼女の祖父に当たる乾隆帝とカスチリョーネ(郎世寧ですね)のエピソードがすごくいいのです。あと、科挙や宦官についてもかなり詳しく書いてあって、その辺りも興味深いですね。特に科挙。これまでも色々読んで、大変だったんだなあとは思ってたんですど、本当に途轍もなく凄まじい試験だったんですね...。日本の受験戦争なんて、これに比べたら甘い甘い。日本の受験は、試験会場で気が狂ったりなんてしないですもんね。
今のところ一番好きな場面は、主人公の春児が、宮廷を出た老宦官たちの住む老公胡同に一緒に暮らしているところです♪ (講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「蒼穹の昴」1・2 浅田次郎
「蒼穹の昴」3・4 浅田次郎
「珍妃の井戸」浅田次郎

+既読の浅田次郎作品の感想+
Livreにきんぴかシリーズ、「プリズン・ホテル」「天切松闇がたり」1の感想があります)

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明治維新によって江戸時代が終わりを告げ、新政府が発足。まだその体制が整いきっていない頃、腐敗した役人を裁くための役所「弾正台」が作られます。その弾正台で大巡察として活躍するのが香月経四郎と、後に初代警視総監となった川路利良。そして2人は様々な犯罪に出会うことに。
伝奇小説で有名な山田風太郎氏によるミステリ作品。最初は長編のように始まるのですが、3章以降は連作短編集のような作りになっています。...実はこの最初の2章がどうも退屈で... 何度読み返しても頭に入ってこなくて困ってしまいました。ほとんど挫折しそうになったほど。でもここで諦めちゃダメ。3章からはずんずんと面白くなります! 奇怪な不可能犯罪の目白押し。で、このトリックにもびっくりなんだけど、作品最後の真相にはボーゼン。いやー、そういうことだったのね。これは驚いた。
謎解きをするのは、香月経四郎の愛人のフランス女性・エスメラルダ。彼女の推理部分が全部カタカナで読みにくいのだけはネックなんですけど、でもこれは頑張って読むべし!(ちくま文庫「山田風太郎明治小説全集7」)


+既読の山田風太郎作品の感想+
「明治断頭台」山田風太郎
「警視庁草子」上下 山田風太郎
Livreに「魔界転生」の感想があります)

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200歳とも300歳とも言われるすっぽんの徐庚先生に師事している、県令の1人息子・趙昭之。今日も2人で香山の照月亭へと赴き、街を見下ろしながら世の中のことについて学んでいます。
森福さんお得意の、中国を舞台にしたミステリ風味の連作短編集。「森福版"聊斎志異"」という言葉にも納得の少し不思議な雰囲気が漂います。すっぽんの徐庚先生は、本当に「すっぽん」の化身だし、その他にも幽霊や人面瘡が当たり前のように登場。でもそんな妖異が登場しても素朴でのんびりとしていて、こういう雰囲気は大好き。
でも、とても面白いんだけど、どこか決め手に欠ける気もするんですよね。短編同士の繋がりが薄いからかなあ。キャラクターのインパクトが弱いのかなあ。(昭之のお父さんとお母さんは好きなんだけど!)それにいくら社会勉強と言っても、他人の生活を勝手に覗き見してるというのがちょっとね。しかも高みの見物だし...。この部分でもう少し説得力があれば良かったのになあ。(光文社)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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中国四大奇書の1つとも言われる「紅楼夢」を元に書き上げられたミステリ作品。栄華を極めた賈家の作った人口楽園「大観園」で繰り広げられる連続殺人事件。
ここで起きる事件は、どれもこれも不可能犯罪。衆人環視の中で犯人が消えうせてしまったり、被害者の衣類だけが空を飛んでいたり、密室状態の現場にある遺体は、空から落ちてきたとしか思えなかったり。そんな事件ばかりが次々と起こります。そういう不可能犯罪って、「なぜそのような状況にしなければならなかったのか」という部分がポイントですよね。ただ単に「密室が作ってみたかったから」という理由では、読者は納得しないもの。この作品では、それが綺麗にクリアされていました。そして、なぜ大観園が舞台じゃなきゃいけなかったのかという理由も最後の最後に明らかになります。その理由自体は、正直それほど意外とは思わなかったんだけど、でもここでは全てが連動してて、そうなるとやっぱりもう、「そうだったのか!」。いやー、お見事です。
芦辺さんが「紅楼夢」を十分読み込んでらっしゃるのが分かりますね。完全にこの世界を自分のものにしてるもの。それがやっぱりスバラシイー。(文藝春秋)


+既読の芦辺拓作品の感想+
「紅楼夢の殺人」芦辺拓
Livreに「十三番目の陪審員」「真説 ルパン対ホ-ムズ-名探偵博覧会」の感想があります)

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「西遊記」でお馴染みの三蔵法師が、長安を出発して天竺に向かう物語。以前、中国物のアンソロジー「チャイナドリーム」1~3で、最初の3章は読んでたんです。で、その時は連作短編集なのかと思ってたんだけど、改めて通して読んでみると普通の長編でした。(笑)

「西遊記」での三蔵法師といえば、すぐ魔物とか悪者にさらわれてしまって、いちいち孫悟空が助けに走らなくちゃいけなくて、とっても手間のかかるヒト。孫悟空が悪者を早めに倒してしまうと、自分が危なかったことも信じないで、「慈悲」を言い出す困ったちゃん。しかも孫悟空の言うことはあまり信用しようとしないくせに、猪八戒の言うことはすぐに鵜呑みにしてしまったり、どちらかといえば頭の悪い印象だったんですよね。でもここでの玄奘は、意思の強い天才青年でした。天竺に行きたいという奏上が太宗皇帝自らの勅によって却下されると、なんと実力行使で密出国してしまうのです!
この作品って、きっと本当は大長編になるはずだったんでしょうね。たった200ページ強のノベルス1冊で終わらせてしまうのは、あまりに中途半端。でもその後続編が書かれることもなく、10年ぐらい経っているので、もう書かれることもないのでしょうね。これから面白くなりそうなところなのに、勿体無いなあ。(トクマノベルズ)

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