Catégories:“ホラー”

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Baroque Midnight の森山樹さんに教えて頂いた本。アイルランドに伝わる民間伝承をモチーフにしたアイリッシュ・ホラー11編です。ホラーも短編も得意じゃないので大丈夫かな... とちょっと恐る恐る読み始めたんですけど、これがすごく面白かった!
物語の中心となるのは、よその土地に住む、それほどアイルランドに関する知識のあまり深くない人間。でも気がついたら、するりとこの世界に入り込んでしまってるんですよね。そしてこの土地の呪縛に囚われてしまう... ここで描かれるアイルランドの土地には、今も古い神々や精霊たちが息づいていて、しかもこの土地がずっと見てきた人々の営みや歴史、特に12世紀に始まるイングランドによるアイルランド侵略と虐殺や、19世紀半ばの大飢饉が色濃く影響を残してるんです。慟哭と呪詛の歴史から生まれるホラー。本当なら起きるはずのないような出来事でも、アイルランドというこの土地ではいかにも起こりそうに感じられてしまうのも、怖いところ。アイルランドにもいつか行ってみたいんですが、もし旅行直前にこれを読んだら、行くのを躊躇っちゃうかも。...少なくとも土地の人たちの言うことはきちんと聞こう!と思いました。(笑)

それにしても、土台がものすごくしっかりとした作品だなあと思ってたら、作者のピーター・トレメインは、実は高名なケルト研究者なんだそうです。道理でしっかりしてるはずだ! とは言っても、学者先生が書いたというより、本職の小説家が書いたとしか思えないような素晴らしい作品群でした。普段なかなか触れる機会のないゲール語がふんだんに使われているのも楽しかったし、その言葉の奥に隠された意味から導き出される結末にはひやりとさせられたし、短編集でこれだけ楽しめたのって本当に久しぶり。そしてホラーではあるんですが、幻想的でもあり、私には十分許容範囲でした。
アイルランドやケルトに馴染みが薄い人でも読みやすいと思うし、詳しい人にもきっと満足がいくような1冊。アイルランド近辺に興味のある方は、ぜひ読んでみて下さいませ~。(光文社文庫)


+既読のピーター・トレメイン作品の感想+
「アイルランド幻想」ピーター・トレメイン
「蜘蛛の巣」上下 ピーター・トレメイン
「幼き子らよ、我がもとへ」上下 ピーター・トレメイン
「修道女フィデルマの叡智」ピーター・トレメイン

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「光の帝国」の、全体的に穏やかな雰囲気の漂う常野一族の物語の中でも、異色の緊迫感を持っていた「オセロ・ゲーム」の続編。常野一族のダークサイド。うららかな日差しが感じられるような春田一族の物語も好きなんですが、このダークサイドにもすごく惹かれていたので、楽しみにしていた作品です。「オセロ・ゲーム」では、夫が「裏返され」て失踪し、自分も戦い続けてきた拝島暎子が主人公でしたが、今回は娘の時子が主役。

途中まではすごくスリリングなんです。時子の父に本当は何が起きていたのか、そして今回瑛子に何が起きたのか、電話をかけた先の女性たちや「洗濯屋」の火浦という青年の真意も分からないまま緊迫感たっぷりに進みます。「洗って、叩いて、白くする」という「洗濯屋」もいいですねえ。でも終盤... うーん、どうなんでしょう。確かにどんな物事でも、その一面だけではかることはできないし、当事者にはなかなか見えてこない面というのはあります。その人間にとっての真実が他の人間にとっても真実だとは限らないし、いくら真実だと信じていたことでも、簡単に崩壊してしまう可能性が十分あるのは分かるんですが... なんだか、決定的な部分をはぐらかされたままで終わってしまったような。途中までは確かに面白く読んでたはずなのに、「あれ、それで結局何だったんだ?」という感じで読み終えてしまいました。...このもやもや感は一体どうすれば... うーん...?(集英社)


+シリーズ既刊の感想+
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸

+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ノンシリーズの短編集。いつも不思議な世界を構築して読者を煙に巻いてくれる松尾さんですが、今回はちょっと珍しいテイスト。ややブラックな短編集です。
一旦ほっとさせておいて、最後にゾクリとさせてくれるかと思えば、当然あともう一つ来ると期待して読んでいたオチを見事にかわされてしまったり、一体その後どうなったんだ...? という話もあれば、意図的に何かをずらされてしまっているような話もあり。...当然来ると信じているものが来ないというのも、結構気持ち悪いものなんですね。それにその後の予感も何もない話というのも、案外後を引くものですね。
帯の「異世界への扉、ここにあります。ダーク・ファンタジーの傑作7編」という言葉はちょっと違うんじゃないかと思ったんですが、これらを映像化すれば、かなり不気味な作品になりそう。そのまんま「世にも奇妙な物語」になってしまいそうです。文章として読む限り、それほどホラーとは思えなかったんですけど、やっぱりホラーだったのかしら。そしてそんな作品集にこの表紙というのも、実はちょっと凄いかも。(光文社文庫)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ホラー小説大賞を受賞しているけど、それほどホラーではなく、むしろファンタジック、と聞いて興味を持ってた作品。その言葉を聞いた時に、私がまず思い出したのが朱川湊人さんだったんですよね。読んでみると、確かに朱川さん... しかも私がダントツで好きな「都市伝説セピア」に通じる雰囲気が...?! いやー、良かったです。この「夜市」という本には、表題作の「夜市」と「風の古道」という中編が2つ収められていて、私は最初「夜市」の方だけ読ませてもらったんですけど、「風の古道」も読みたくて、思わず本屋に走ってしまいました。(笑)

「夜市」は、異界が交わる場所に現れる、お金さえ出せば何でも手に入るという夜市の物語。夜市のイメージ自体はそれほど目新しくないかもしれないんですが、不思議で、ちょっと不気味で、やっぱり魅力的。静かな暗闇の中に、この夜市が鮮やかに浮かび上がってくるように感じられるのがいいんですよね。そして「風の古道」は、花見に行った公園で迷子になった少年が、不思議な道を教えてもらって家に帰り、その道のことが忘れられず... という物語。こちらも読んでいると絵が浮かびます。この道がいいんですよねえ。どちらかといえば、私はこちらの方が好きかな。どちらにしても、これがデビュー作なんてびっくり。
本当の怖いホラーは苦手なんですけど、こういう幻想的な作品は大好き。あっという間に異世界に引き込まれてしまいました。とは言っても、2作品とも異世界から抜け出せる保証はどこにもなくて、そういう意味では十分怖いんですけどね。
「都市伝説セピア」がお好きな方は、ぜひ読んでみて下さいませ~。(角川書店)


+既読の恒川光太郎作品の感想+
「夜市」恒川光太郎
「雷の季節の終わりに」恒川光太郎
「秋の牢獄」恒川光太郎

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完全な美の持ち主であるクルミと、そのクルミの美に取り付かれた人々の物語。今までにも西澤作品には、時々「フェチ」や「ジェンダー」といった要素がありましたけど、ここでとうとう1つの作品にまとまったという感じですね。「意匠」「異物」「献身」「聖餐」「殉教」という各章に分かれて、脚(タイツ)フェチや手フェチ、女装趣味など、怪しげな「フェチ」ぶりを見せる人々が登場します。
でも、もちろん知り合いの男性が女装趣味だと突然知らされたら、さすがの私もびっくりすると思うんですけど(笑)、そこまでいかなくても、人それぞれに何らかの嗜好ってあるものですよね。隠した方が無難なものも、隠す必要が全然ないものも。嗜好自体がどうこういうよりも、そういった嗜好がクルミという存在を通して、表面に露呈されてくるのが面白かったです。それまで影の存在でしか有り得なかったそれぞれの嗜好が、クルミによって解放されたというか。だからなのか、たとえそんな特殊な嗜好を持つ人間が殺されても、私にはあまり不幸には見えなかったんですが... そういう読み方って間違ってるかしら(^^;。
殺人はたびたび起きるんですが、ミステリというよりもむしろサイコホラー。クルミの「触れれば死ぬ」という特異体質についてもっと知りたかったんですけど、それに関してはあまりすっきりしないまま終わってしまったのがちょっと残念でした。あんまり突き詰めて考えないで、無条件に受け入れるべき部分だったんですね、きっと。(集英社)


+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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菊地秀行さんといえば、まず新宿を舞台とした例のシリーズのイメージだったので、これは意外でした! こういった時代小説も書いてらしたのですねー。そっちの作品に比べたら、官能的な描写なんてないも同然の硬派な時代小説。時代小説と言うより、怪談と言う方が相応しいかも。全部で9編入っていて、それぞれに幽霊が出てきたり、不思議な出来事が起きたり。

この中で一番好きだったのは、最初に入っていた「影女房」。辻斬りに殺された小夜という町娘の幽霊が、何も関係ないはずの久馬の家に乗り込んで仇討ちを頼むんですけど、久馬が諦めろと言うと、その前に断った侍を半病人にしたことを告げて、「あなたには、もっと酷い運命を与えて差し上げます」と脅すし、久馬の母親が女の噂を聞きつけて家に乗り込んでくると、誤魔化そうとする久馬を尻目に、「だって口惜しいじゃありませんか」と自ら名乗り出るし、挙句の果てに「私、負けません」なんて宣言しちゃう気の強さ。気の強い幽霊というのも結構いると思いますが、ここまで来ると逆に気持ちいいです。(笑)

それとこの短編集で面白かったのが、それぞれの短編によって幽霊の有り様が違うこと。例えば「影女房」の小夜は、幽霊なのに身体は暖かくて足もきちんとあるし、人間のできることは普通にこなすんです。辻斬りに斬られた傷口からは未だに血が溢れて出るんですけど、それが畳などに付くことはありません。でも他の作品に登場する幽霊は、また違うんですよね。手が氷のように冷たくて、血の跡を残していたり。例えば「足がないから幽霊」とかそんな風に決め付けられないんです。血を流してるから人間だ、という発言にも、「死人が、霊が血を流さぬと、誰が決めまして?」 確かにそうかもしれないですねー。日本の幽霊に足がないのが普通になったのも、そもそも丸山応挙がそういう絵を描いたせいですもんね。(笑) (角川文庫)


+既読の菊地秀行作品の感想+
「幽剣抄」菊池秀行
お正月休みの間に読んだ本(7冊)

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「ヒガン」の1ヶ月には、死者が戻ってくるというアナザー・ヒル。関係者以外なかなか立ち入ることのできないこの地に、ジュンは今年初めて、親戚のハナやマリコと共に参加することに。しかし今年は連続殺人犯の存在もあり、いつもの年とは違うヒガンが始まるのです。

今回の本の装幀も素敵ですねー。川を渡るとそこはアナザーワールド! 恩田さんらしい異世界が広がってます。
1ヶ月間の「ヒガン」の物語。でも「彼岸」と言うより、むしろお盆に近いかと。お盆では先祖の魂がこの世に戻って来ますが、この「ヒガン」では、主にこの1年に亡くなった人が戻ってくるんです。しかも霊魂だけではなくて、実体付き。生きていた時の姿のまま。だからうっかりしてると、死者とは気づかないこともあり得るんですね。そしてこの死者は「お客さん」と呼ばれていて、なぜか嘘をつけないのが特徴。だからお客さんの言葉は公式の記録として扱われる可能性があり、お客さんと遭遇した人は皆、ブラックダイヤリーと呼ばれる黒い手帳にその会話の記録を残すことになってるんです。殺人事件の被害者がお客さんとしてやって来たら、その犯人が分かっちゃうんですねー。(後ろからいきなりとか、本人も良く分かってない状態だと無理なんですが)

「死というものが残酷なのは、突然訪れ、別れを言う機会もなく全てが断ち切られてしまうからだ。せめて最後にひとこと言葉を交わせたら。きちんと挨拶できたら。そう思っている遺族がどれほどこの世にいることか。」
恩田さんがこの物語を書こうと思ったのは、ここが始まりだったのかもしれないですね。(朝日新聞社)

と、設定自体はとても魅力的だと思ったんですが、以下、あまり好意的じゃないことを書いてるので、折り畳み~。


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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