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日本に帰化し、「小泉八雲」と名乗るほどに日本を愛していたラフカディオ・ハーン。彼が日本各地に伝わる伝説、幽霊話などを再話した、有名な「耳なし芳一のはなし」を始めとする17編の「怪談」と、「蝶」「蚊」「蟻」にまつわる3編のエッセイ「虫の研究」。

ラフカディオ・ハーンは、アイルランド人の父とギリシャ人の母の間に生まれて、アイルランド、フランス、イギリスで教育を受けた後にアメリカに渡ってジャーナリストになり、さらに紀行文を書くために来日したという人物。日本では高校や大学の英語教師をつとめ、小泉節子と結婚し、その後帰化。イザベラ・バードやアーネスト・フェノロサらと並ぶ日本紹介者として有名ですね。そのラフカディオ・ハーンが、妻である節子から聞いた怪談話をきっかけに、日本古来の文献や民間伝承に取材して創作したという短篇集です。原文は英語で書かれていて、これはそれを日本語に翻訳したもの。

「耳なし芳一」や「雪女」といった話は、もう本当に有名ですよね。最早ラフカディオ・ハーンの手を離れてるのではないかと思うほど、一般に浸透した昔話となっていますが、その他の話もよく知られているものが多いです。でも知っている物語でも、改めて読むと思っていたのとはまたちょっと違っていてびっくり。例えば「耳なし芳一」は、主人公の芳一は目が見えないので、基本的に視覚的な描写というのがないはずなんですが、これがものすごく映像的なんです。特に芳一が甲冑に身を固めた武者に連れられて「さるやんごとないお方」を訪れる場面。芳一の耳に聞こえてくる音からでも、情景が立ち上ってくるみたい。「雪女」も、子供用の絵本からはちょっと味わえない、しみじみとした哀切感と夢幻的な雰囲気があって素敵だったし...。可笑しかったのは「鏡と鐘」。「ちょっと言いかねる。」で終わってしまうところが絶妙なんですよね~。(これだけじゃあ意味が分からないと思うので、ぜひ読んでみて下さい♪) しみじみとした美しさのある「青柳ものがたり」もとても好きな作品。今回改めて読んでみて、純粋に物語としての面白さが楽しめたのはもちろんのこと、その端々から江戸~明治時代の時代背景を伺い知ることができたのも楽しかったです。そしてラフカディオ・ハーンの再話能力のすばらしさも。この「怪談」の日本的な部分があくまでも日本らしく描かれているのは、ラフカディオ・ハーンはキリスト教に対してそれほどの信頼を置いていなかったというのが大きく関係しているような気もするのですが... どうでしょう。
そして意外な収穫だったのが「虫の研究」。これは虫にまつわる3編のエッセイなんですが、ここでは生まれながらの日本人ではないラフカディオ・ハーンの視点から語られることが、単なる虫に関する意見だけでなく、文化論・文学論にも発展するようなものだけにとても興味深かったです。蟻社会を人間社会に重ね合わせた「蟻」も哲学的だし、どこか近未来小説みたいで(というのは私が「一九八四年」を読んだところだから?)面白かったです。(岩波文庫)

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弁護士のアタスン氏と遠縁のリチャード・エンフィールド氏が恒例の日曜日の散歩をしている時に出たのは、ロンドンの繁華街の裏通りにあるドアの話。それはエンフィールド氏が初めてハイド氏を見かけた場所。早足で歩いていたハイド氏は、懸命に走っていた少女と正面衝突し、倒れた少女の身体を平然と踏みつけたのです。悲鳴をあげている彼女をその場に置き去りして歩み去るハイド氏に、エンフィールド氏は思わずの小男の襟首をつかんで現場に引き立てることに。そして少女の家族とやがて現れた医者と共にハイド氏を非難するのですが...。このハイド氏は、相手に嫌悪感を抱かずにはいさせないタイプの小男でした。

作品を読んだことのない人でも、「ジキルとハイド」といえば知ってますよね。既に有名になりすぎていて、改めて読む気がしないという人も結構いそうです。結構スリリングなサスペンスですごく面白いので、ネタがあまりに有名になってしまってるのが勿体ないなーと思うのですが... ネタを全然知らずに読めば、どきどきワクワクしながら読めるはず。でも有名な作品になってしまうと、ネタばれなしに読むのってほんと難しいですね。という私は、ふと読みたくなって、久しぶりの再読です。中学か高校の時に読んで以来。まあ、その時もネタを知りつつ面白く読んだのですが、今回はさらに面白く読めました。
でも今回ちょっと意外だったのが、というか、すっかり忘れていたのが、ジキルとハイドの分かれ具合。なんとなくカルヴィーノの「まっぷたつの子爵」(感想)のような感じに思ってたんですけど、そうじゃなくて! ジキル博士は確かにいい人なんですけど、それでも若い頃には結構放埓な生活を送っていたという人。ハイド氏が登場した後も、その性格は基本的にまるで変わっていないようです。そもそも、最初に登場する時に「きれいに顔をそった五十歳の博士は、多少狡そうなところもあるが、知性と善意にあふれている」とあるんですね。ここの「多少狡そうなところもあるが」というのが気になるーーー。だってこの時点では既に、なんですもん。ハイド氏のおかげで、悪の部分が抜けきったわけじゃなかったんだ! となれば、そりゃハイド氏の方が純度が高い分(?)強いでしょう。ジキル博士は、世間一般が好人物だと考えている、普通の人間のままなんですもん。
そうか、そうだったのか。この辺り、色々と突っ込んで考えていくと面白そうです。スティーヴンスンは、その辺りのことはどう考えてたのかしら。あまり深く考えていなかったのか、それとも考えつくした結果がこの作品なのか。こういうのって卒論のテーマにもいいかもしれないですね?って卒論を書く予定なんて、実際には全然ないんですけど。(笑)(岩波文庫)


+既読のスティーヴンスン作品の感想+
「新アラビア夜話」スティーヴンスン
「ジーキル博士とハイド氏」スティーヴンスン

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江戸時代。旗本・飯島平左衛門の邸では、正妻亡き後、妾のお国が幅を利かせるようになり、お国と正妻腹の娘・お露との仲は険悪に。そのためお露は女中のお米と共に邸を出て、平左衛門が購入した寮に別居することになります。そして、そんな2人をある日訪れたのは、顔馴染みの医者・山本志丈と、志丈に連れられて来た浪人の萩原新三郎。現在21歳でまだ妻帯していない新三郎はすこぶる美男。お露は新三郎に、新三郎もお露に心を奪われます。しかしなかなか会う機会もないまま、お露は新三郎に焦れ死。お露が亡くなったと聞いて、嘆き悲しむ新三郎。しかしそれから間もなく、新三郎はお米に再会。2人とも元気だったと知り、喜びます。そしてお露は女中のお米と共に、牡丹灯籠を手に毎晩のように通うようになり...。しかし新三郎の世話をしている関口屋伴蔵がこっそり蚊帳を覗くと、そこにいたのは幽霊としか思えない女を抱く新三郎の姿。このままでは命がないと知った新三郎は、良石和尚から金無垢の海音如来をもらい首にかけ、家には魔除けの札を張るのですが...。

人情噺や怪談噺が得意だったという初代三遊亭円朝による創作落語。これは中国明代の小説集「剪灯新話」に収録されている「牡丹燈記」が、落語の演目のために翻案されたもの。でも本来の「牡丹燈記」に由来する部分は全体から見るとほんの僅かなんですね。そのほとんどは円朝自身が作り上げた物語。今や「四谷怪談」や「皿屋敷」と並んで、日本三大怪談とされているんだそうなんですが。
実際に演じられた落語の速記をとって、それを本に仕立てたというものだという説明が序にあるんですが、落語ならではのテンポの良い台詞回しや滑らかな物語の展開がまず見事。怪談としての本筋と言えるお露と新三郎の物語に、飯島家のお家騒動や敵討ち、供蔵とその女房・お峰の因果噺が絡んで、物語は重層的に展開していきます。これほどまでに分厚い物語だったとはびっくりー。私はてっきり怪談部分だけなのかと思ってましたよ。でもその主役のはずの怪談自体は、正直それほど怖くなくて... やっぱり生きている人間の方がよっぽど怖いですね。男と女の色と欲、忠義と裏切り、そして殺人。1つの物語にこれだけのものが盛り込まれて、それでいて最後には綺麗にまとまるというのもすごいなー。これこそが名人の語り口というものでしょうか。落語にしては相当長い話なんじゃないかなと思うんですけど、きっと聞いてた人はもう本当に聞き入ってしまったでしょうね。実際に演じられた高座が見てみたくなるし、今はもう円朝自身による語りが見られないのがとっても残念。いや、他の落語家さんの語りでもいいんですけどね。今度やってるのをみつけたら、ぜひ聞いてみなくては!(岩波文庫)

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スイスの小さな町・ヴェヴェーのホテル「トロワ・クロンヌ」に滞在している伯母の見舞いにジュネーヴから来ていたアメリカ人青年・ウィンターボーンは、このホテルに母親と弟、従僕と共に滞在していた若く美しいアメリカ人のデイジー・ミラーに出会います... という「デイジー・ミラー」。そして、夜になると暖炉のまわりに集まり怪談に聞き入る人々のためにダグラスが話すことになったのは、妹の家庭教師だった女性が体験した出来事。彼女は20年前に亡くなっているのですが、死ぬ前に、初めて家庭教師をした屋敷で起きた出来事を原稿に書き、ダグラスに送ってきていたのです...という「ねじの回転」の2編。

先日新潮文庫で読んだ「ねじの回転」の訳が今ひとつだったなあと思っていたら、kotaさんが岩波文庫の訳が一番しっくりきたと教えて下さったので、早速リベンジ。確かにこっちの方が全体的に訳が滑らかで読みやすかったです! やっぱり文章に気をとられないと、その分純粋に楽しめますねー。でも訳を細かく見比べる気なんていうのは毛頭なかったし、最初から最後まで通して読むだけのつもりだったんですけど、「あれ、ここって...?」と不思議になったところがいくつかあったので、結局その辺りだけちょっと見比べてみることに。そしたらこれが相当違っててびっくりです。
例えば、家庭教師となった彼女が学校の校長からの手紙を家政婦に渡そうとした場面。

字が読めないのです! しまったと思い、なんとかとりつくろい、書簡を開いて彼女に読んでやりました。それから、途中でつっかえたこともあって、結局、折りたたんでポケットにしまうことになりました。(岩波文庫)

わたしの相談相手は字が読めないのだ! わたしはへまをしてしまってたじたじだったが、でも出来るだけとり繕おうとして、また手紙をひらいた。そして彼女に読んで聞かせようとしたが、いざとなるとまたためらわれて、もう一度それをたたみ直し、ポケットに戻した。(新潮文庫)

違いますよね。結局、彼女は手紙を読んだのでしょうか。それとも読まなかったのでしょうか...?(笑)

前回読んだ時も、下男と前任の家庭教師のことは大体分かってたつもりなんですけど(新井潤美さんの「不機嫌なメアリー・ポピンズ」を読んだしね →感想)、岩波文庫では先に「デイジー・ミラー」が入っているので、ここで階級とか男女の付き合いのことに関するヴィクトリア朝風の道徳観が読者の頭にしっかりインプットされるんです。確かにこの構成は技アリだなあ。

そしてそのデイジー・ミラーも面白かったです。こちらは登場するのはアメリカ人ばかりなのに、舞台は歴史と伝統のあるヨーロッパ。主人公の若者は常識的な紳士だし、その伯母さんは社交界で地位のある人物。でもミラー家は裕福なんだけど、ニューヨークの社交界では低く見られる存在。デイジー自身も、とても美人なんだけど教養はないと見なされてます。男性と2人でも気軽に外出するデイジーに、アメリカ上流階級の婦人たちは眉をひそめるんです。
アメリカ人たちがニューヨークの社交界とそこの価値観をヨーロッパにそのまま持ち込んでいるというのが、なんか可笑しいんですよね。みんな自由気侭なデイジーのことをアメリカの面汚しだって考えてるんですけど、実際にヨーロッパの社交界の人々はどう思うのかしら? アメリカの社交界のことなんて、実は洟も引っ掛けてないんじゃないかしら。だからこそ、ここまで頑張っちゃうのかもしれないなー。(岩波文庫)


+既読のヘンリー・ジェイムズ作品の感想+
「ねじの回転」ヘンリー・ジェイムズ
「ねじの回転・デイジー・ミラー」ヘンリー・ジェイムズ

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夜になると暖炉のまわりに集まり怪談に聞き入る人々。その時「子供に幽霊が出たという話は初めてだ」という意見が出たことがきっかけとなって、ダグラスがかつて聞いた、2人の子供に幽霊が出たという話になります。それはかつてダグラスの妹の家庭教師だった女性の体験談。彼女は既に亡くなっているのですが、死ぬ前に、初めて家庭教師をした屋敷で起きた出来事を原稿に書き、ダグラスに送ってきていたのです。それはサセックス州にある田舎の屋敷で、両親を既に亡くした2人の子供、フローラとマイルズの家庭教師をした時に起きたことでした。

恩田さんの「ねじの回転」を読んだ時から気になってはいたんですが、幽霊物と聞いてちょっと躊躇... ひなたでゆるりのリサさんが高校生の頃から大好きな本と伺って、それに背中を押されてようやく読めました。ヘンリー・ジェイムズってアメリカの作家さんかと思ってたんですけど、イギリス的ですねえ! と思ったら、生まれはアメリカだけど子供の頃からイギリスやフランスに何度も行ってるし、最終的にはイギリスに住むことになったと知って納得。読んでる間、中学生の頃に読んだシャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」を思い出して仕方なかったんです。

メインの幽霊話は実際にその体験をした家庭教師の女性の1人語り。雇い主の男性と会った頃から、既にちょっぴり不穏な空気が漂ってます。たとえ何が起きても、その男性に苦情は入れないという約束。そして子供たちのいる郊外の屋敷へ。初めての家庭教師の仕事に緊張する彼女。でも天使のように可愛い子供たちにすぐに夢中になってしまいます。最初はすごく上手くいくんです。家政婦の夫人ともすっかり親しくなるし。でも亡霊たちが現れた頃からだんだん歯車が狂ってきて... 彼女は亡霊たちから子供たちを守ろうと奮戦するんですが...
でもね、1人語りですしね。どこからどこまで本当なのか分からないんです。不穏な目で見ると全てが不穏に見えてくるし、まるで世界が崩壊していくのを目の当たりにしてるような感じなんだけど。そしてこの彼女がだんだん追い詰められていく様子がすごく面白かったんだけど!

ただ、訳文がちょっと。これがもっと自然な日本語なら、もっと楽しめたんだろうなあ、と思ってしまいます。でもね、例えば中学の時に「ジェーン・エア」を読んだ時も、もしかしたら訳文はあまり、だったのかもしれない、なんて思うんですよね。その頃はそんなことは全然気にせず、物語の勢いに夢中になってたのだけど... いつの間にかそれができなくなってるというのは、自分が文章を見る目が少し磨かれたということでもあるんでしょうけど、でもやっぱりちょっと悲しいな。(新潮文庫)


+既読のヘンリー・ジェイムズ作品の感想+
「ねじの回転」ヘンリー・ジェイムズ
「ねじの回転・デイジー・ミラー」ヘンリー・ジェイムズ

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社交界の花・サノックス卿夫人と名外科医・ダグラス・ストーンの仲は公然の秘密。しかし夫人がある日突然きっぱりと修道院に入ってしまったことから、いたるところで噂話が飛び交います。しかもその時、ダグラス・ストーンは泥酔してうつろな笑いを浮かべながら従僕と共にベッドに腰掛けていたというのです... というアーサー・コナン・ドイル「サノックス卿夫人秘話」他、全12編の収められた短篇集。

ええと、今年ぜひとも読みたいと思っている幻想文学なんですが... この本の「幻想」って「幻想」というより「怪奇」? 幻想味はあるんだけど、それが不気味な方向に出てる作品が多かったです。面白い作品は結構ありましたが、幻想という意味ではどうなんだろう。ホラー系は基本的にあまり得意ではないので、怖くなりすぎたらどうしよう、と読みながらドキドキしてしまいました。初っ端のコナン・ドイルからして、結構怖かったんですよぅ。

この中で私が好きだったのは、嵐の日に風に飛ばされてきた幽霊船に、村の若い幽霊たちがラム酒を飲みに通っちゃう「幽霊船」(リチャード・バラム・ミドルトン)。なんとも長閑な幽霊話で、こういうのは好き好き。それと、眠るたびに林檎の樹に覆われた谷間の情景の夢を見るという「林檎の谷」(ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ)も良かったです。一番の大きな林檎の樹の枝が分かれているところに金髪の美しい魔女が立ち、林檎を片手に歌っているんですけど、その下の谷底には男の骸がいっぱいなんですよね。さすがダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、絵画のような美しさがありました。あと、インド版狼男話の「獣の印」(ラドヤード・キプリング)も。でもこれは子供の頃に読んだことがあるような気がする...。
読んだことがあるような気がするといえば、「屋敷と呪いの脳髄」(エドワード・ブルワー=リットン)と「ポロックとポロの首」(H.G.ウェルズ)の2作も読んだことがあるような気がします。多分、なんですけどね。エドモンド・ハミルトンの「フェッセンデンの宇宙」なんかと同じ本に入ってた、なんてことはないかしら。いずれにせよ子供の頃に図書館で借りた本だと思うので、今となってはよく分からないのだけど。(白水uブックス)


+シリーズ既刊の感想+
「イギリス幻想小説傑作集」由良君美編
「スペイン幻想小説傑作集」東谷穎人編
「ドイツ幻想小説傑作集」種村季弘編

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18歳のメリキャットは、姉のコンスタンスと、ジュリアンおじさんとの3人暮らし。両親や他の家族は6年前、砂糖壷の中に入っていた砒素のために死亡。当時コンスタンスがその事件の容疑者となったため、疑惑が晴れてもコンスタンスは自分の庭から先に出ようとしなくなり、ジュリアンおじさんも車椅子暮らしのため、メリキャットが毎週火曜日と金曜日に村に行って食料品を買い、図書館で本を借りてくる日々。しかしその事件が原因で、彼女たちのブラックウッド家は村一番の名家にも関わらず、村人たちの反感は強く、村に行くたびにメリキャットは村人たちに蔑まれたり、子供たちにからかわれたりするのです。

何も知らずに読み始めた時はミステリかと思ってたんですが、これが見事なホラーでした。それも、特に怖い描写とかスプラッタシーンがあるわけではないのに、じわじわと寒くなってくるようなホラー。話は終始メリキャット視点で描かれているので、最初はメリキャットに対する村人たちの悪意の強さが印象的です。彼女が、失礼な村人たちを見ながら「みんな死んじゃえばいいのに」と思っているのも、精一杯の強がりのように見えます。そしてここで村の子供たちの歌う

メリキャット お茶でもいかがと コニー姉さん
とんでもない 毒入りでしょうと メリキャット

という歌がまるでマザーグースの歌のようで、不気味な雰囲気を盛り上げてるんです。
でも読み進めるうちに、徐々にメリキャットの憎悪の方が遥かに強いことにだんだん気づいてきて... そうなると彼女の孕む狂気や世界の歪みが何とも言えないんですよねえ。正直、あんまり私の好みではないんですが、ホラー系の作品が好きな人には評価が高そうな作品。映画にするのも、なかなか不気味でいいかもしれないなあ。(創元推理文庫)

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高校2年生の春休みの京都旅行の時に急行列車の中で出会って親しくなり、しかしその後亡くなってしまった阪井京子。その京子のご両親から久しぶりに家に招かれた「わたし」は、かつて京子にもらったそばちょこに梅酒ゼリーを作って持っていくのですが... という「のぞき梅」他、全11編の短編集。

単行本未収録の作品から、ホラー風味の強い11編選んで収めたという短編集。若竹七海さんお得意の、人間の悪意がじわじわ~っと染み込んでくるような怖さや、漠然とした不安からくる怖さ、超常現象や怪奇現象的な怖さ、怪談的な怖さなど、一言でホラーとは言っても怖さは様々。でも読んでいて、それぞれの作品がばらばらに発表されたとは思えないほど、各短編同士に繋がりや流れがあるのにはびっくりでした。特に途中の何編かは、短編のポイントとなる言葉が次の短編に引き継がれていて、そういった意味でもぎょっとさせられたし...。短編集を組む時に、その辺りの配列にも十分気を配られたんでしょうねー。
それぞれに面白かったんだけど、これで私が短編が苦手でなければもっと楽しめたでしょうに勿体ないなー、と思ってしまいました... 11編もあると集中力を持続させるのが大変なんです。連作短編集なら、準長編みたいなものだから大丈夫なんですけどね。
それでも一番印象に残ったのは表題作の「バベル島」かな。これはイギリスのウェールズ北西部のバベル塔で起きた惨劇の話。そこでボランティアの一員として働きながらも、からくも日本に生還した高畑一樹と、200年前にそこを訪れていた曽祖父・葉村寅吉、それぞれの日記から話が進んでいきます。舞台といい雰囲気といい何と言い、かなり好み。あ、葉村寅吉ってことは、葉村晶の曽祖父... だったりするのかな。やっぱり。(光文社文庫)


+既読の若竹七海作品の感想+
「猫島ハウスの騒動」若竹七海
「親切なおばけ」若竹七海・杉田比呂美
「バベル島」若竹七海
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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目の前を行く女性の尻に目を奪われて、思わず付いて行ってしまった鍵和田巴は、それが中学時代の友人・服部ヒロシの姉のサトだということに気づきます。それがきっかけで、巴はかつての同級生の家に招じ入れられることになるのですが... という表題作「「余は如何にして服部ヒロシとなりしか」他、全4編の収められた短編集。表題作は、第12回ホラー小説大賞の短編賞受賞作。恒川光太郎さんの「夜市」がホラー大賞を受賞した時の短編賞です。ペンネームの「あせごのまん」とは、「あせご」という場所の「まん(化け物・憑き物)」という意味だとのこと。どうやら「あせごの」が苗字みたいですね。

前エントリに続いて、これも頂き物。ホラー系は基本的に苦手なので、滅多に読まないんですけど、この表題作は、結構気に入ってしまったわ!  選者の荒俣宏氏が「異様に気に入った」という作品なんですけど、その気持ちが分かる~。でもこれは、気に入る人は異様に気に入るし、それほどでもない人にはそれほどアピールしない作品かもしれません。私の場合、ごく普通のはずが日常の情景が少しずつズレていくというのは元々好きだし、この作品はまるで夢を見ているように逃げ出すことができないまま、不条理感にがんじがらめになっていく感じなんですよね。それも好き。妙な迫力があります。この雰囲気を盛り上げている各所の描写の気持ち悪さも堪らないし。
その他は、「浅水瀬」「克美さんがいる」「あせごのまん」の3編。「浅水瀬」はあまりにも予想できるオチなんですけど、この本の中では一番ホラーらしいホラー作品。きっと、分かっていてもあえて楽しめる、というところを狙った作品なんだと思います。「克美さんがいる」も予想できるオチなんですが、もう少しミステリ的かな。リアルな怖さがあって、私は「浅水瀬」よりもこっちの方が好きでした。最後の「あせごのまん」は、なんと土佐弁で書かれた作品。岩井志麻子さんの「ぼってえ、きょうてえ」を思い出すなあ。(角川文庫)

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先日、「ザスーラ」のDVDを観たんです。これが結構面白くて(アマゾンのカスタマーレビューでは星1つでしたが!)、でも基本的な話は以前観た「ジュマンジ」と一緒なんですよね。「ジュマンジ」は、子供たちがゲームを始めた途端に家がジャングル状態になってしまう話で、「ザスーラ」は、その宇宙版。どういう関係なんだろう? 二番煎じ? なんて思っていたら、どちらもクリス・ヴァン・オールズバーグの絵本が原作だということが判明。早速図書館で借りてきました。

「ジュマンジ」の絵本が描かれて約20年後に「ザスーラ」が描かれたのだそう。実は話が続き物になっててびっくり。でも絵本になると、やっぱりかなりあっさりしてしまうものですね。そんなものかもしれないけど... というか、このぐらいの長さの話を膨らませる方が、映画を作るには向いてるのかもしれないですけど。少なくとも、長編小説を映画化するために、設定を色々変えて、しかも「あのシーンもない、このシーンもない」なんて言われちゃうよりも、作る人にとっては作りやすいかも? 映画のシナリオって、実際、びっくりするほど短かったりしますし。

それでもやっぱり、この絵本からあんな映画を作っちゃったのかというのが驚きです。特に「ジュマンジ」はスゴイです! あれは、迫力。私にとっては、ほとんどホラー映画状態。あまりに迫力だったので、最後までちゃんと観たのか定かではないほどですし... 結末とか全然覚えてないので、今度また借りてこなくっちゃ。そして、「ザスーラ」の方は、確かに「ジュマンジ」の二番煎じだし、「ジュマンジの方が映画として格上だった気もするんですが、お子様な私には、こちらも十分面白かったです。絵本よりも映画の方が、いがみ合ってる兄弟の気持ちが通じ合っていく過程が丁寧に描かれていたし、絵本よりも映画の方が好みだったかも。って、映像化にほとんど興味のない私にしては、ちょっと珍しい感想かも。でも絵本に出来ること、映画にできること、それぞれの特性がよく分かるような、映画とその原作でした。(ほるぷ出版)

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「図書室の海」以来の短編集。「水晶の夜、翡翠の朝」「ご案内」「あなたと夜と音楽と」「冷凍みかん」「赤い毬」「深夜の食欲」「いいわけ」「一千一秒殺人事件」「おはなしのつづき」「邂逅について」「淋しいお城」「楽園を追われて」「卒業」「朝日のようにさわやかに」の14編。

この中では、三月の学園の「水晶の夜、翡翠の朝」と、アガサ・クリスティの「ABC殺人事件」へのオマージュ「あなたと夜と音楽と」だけが既読だったんですが、どうも既視感のある作品が多くて、ちょっとびっくり。他の作品もどこかで読んでるのかも...。それとも、気づいてないところに特定の作家さんや作品へのオマージュ作品もあるのかしら? さすがに「一千一秒殺人事件」なんてタイトルだと、稲垣足穂系だなと分かるんですが。
どの作品も現実離れしているようでいて、でも妙なリアリティがあって、ちょっと不気味なホラー系。この本に収められた短編のうち「朝日のようにさわやかに」だけが全然ホラー系じゃなくて、むしろエッセイタッチの作品なので、それが表題となってるのがなんだか悪い冗談みたいです。本を読み進めるにつれて世界が徐々に歪んでくるような感じ...。それほど怖くはないんですが、様々なパターンのホラー作品が楽しめます。
私がダントツで気に入ったのは「冷凍みかん」。これも、どこかで読んだことがあるような気がするんですけどね...。これは星新一さんのショートショートみたいな雰囲気。これはいいなあ。あと「淋しいお城」は、講談社ミステリーランドのための作品の予告編なんですって。本編を読むのが楽しみ! でもやっぱり「水晶の夜、翡翠の朝」も素敵でした。それでも天使のようなヨハンにうっとり。(新潮社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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高校の英語教師をしているトーマス・アヴィの夢は、作家マーシャル・フランスの伝記を書くこと。9歳の誕生日に父親に「笑の郷」を贈られて以来、手に入る限りの本を集め、フランスについての細かいことを色々と調べているのです。ある日の午後、稀覯本を扱う書店に立ち寄ったトーマスは、何年も絶版になっていた「桃の実色の影」の初版が置かれているのを見つけます。しかしその本は既に買い手が決まっていました。買い手のサクソニー・ガードナーに、100ドルで譲って欲しいと持ちかけるトーマス。2人はやがて一緒に組んでフランスの伝記を書くことになり、フランスが亡くなるまで住んでいたミズーリ州ゲレインへと向かうことになるのですが...。

ジョナサン・キャロルの作品は初めて。実はこの本、ずーーーっと積んでたんですよね。いつから積んでるのか不明。サイトを始めた2000年頃からなのか、それとももっと前からなのか... 誰かにオススメしてもらったか、何かで紹介を見たのか、それすら覚えてないほど。(笠井潔さんが創元推理文庫の企画でベスト5に挙げてたから買ったと思い込んでたんだけど、それはコリン・ウィルソンの「賢者の石」だったらしい...) でも先日翻訳家の浅羽莢子さんが亡くなって、この本も読まなくちゃなあと思っていたところに(浅羽さんは、ジョナサン・キャロルの作品を沢山訳してらっしゃるのです)、先日、檀さんがたらいまわし企画第30回「フシギとあやし」で挙げてらしたんですよね。(記事) 既に十分過ぎるほど熟成済。ようやく手に取ってみました。

最初のうちは緩やかな展開なんですが、トーマスとサクソニーがゲレインに着いた頃からは、どことなく不安感が付きまとい始めることに。これまで伝記を書こうとしていた人々にはけんもほろろだったはずのアンナが親切なのはなぜ? ゲレインの人々と会った時にサクソニーが感じていたのは何? 町の人々が常に全てを知っているのはなぜ? 残念ながら夢中になるところまではいかなかったんだけど、面白かったです。この最後の一文がスゴイ。
それにしても、マーシャル・フランスが実在の作家さんではないのが、ものすごく残念。「笑いの郷」「緑の犬の嘆き」「桃の実色の影」... どれも読んでみたくなっちゃうんですもん。一番読みたくなってしまったのは「笑の郷」ですね。いっそのこと、ジョナサン・キャロル自身に書いてもらいたいほど!(創元推理文庫)

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徹底した人間嫌いの主人、エムズ卿には身寄りがないことから、いつか自分たちが遺産を相続をする可能性があるのではないかと淡い期待を抱き始めたデーヴィス夫婦。しかしエムズ卿の動物への偏愛ぶりを見ているうちに、もしや動物に全財産を遺すつもりなのではないかと不安になり、デーヴィス夫婦は屋敷にいる動物を1匹ずつ始末し始めます。そしてエムズ卿の死後。エムズ卿は、動物たちが生きている限りデーヴィス夫婦が屋敷に住むことを認めると遺書に書き残していたことが明らかになり、デーヴィス夫婦は唯一残った半シェパード犬の世話中心の生活を送るようになるのですが...。

いやー、ハヤカワ文庫FTも結構読みましたが、その中でもダントツで妙な話でした...。ファンタジーらしくない話はこれ以外にも時々ありますけど、なぜこの話がこのラインナップに入ってるのか理解できないぐらい。
原題は「Chog」で、これは「child」と「dog」の造語、文字通り犬児のことなんです。それも普通の犬の子じゃなくて、人間と犬の間にできた子。でもだからといって、そういう場面が赤裸々に描かれてるわけではなくて、かなり後になってから、そうだったんだということが分かる程度の婉曲な表現。直接的に書かれるというのも考えてしまうけど、ここまで婉曲に書かれてるというのも、実際起きたこととのギャップが激しすぎて何とも言えません...。こういうのをブラックユーモアって言うんでしょうか。読んでるだけで気が滅入りそうです。でも決してつまらないわけではなくて、逆に一旦読み始めたら、その展開からは目が離せないんですよね。

クエンティン・クリスプって、私は全然知らなかったんですけど、同性愛カミングアウトの先駆者としても有名な人なんだそうです。バージニア・ウルフ原作の映画化作品「オルランド」とか、イーサン・ホーク監督の「チェルシー・ホテル」、スティングの「イングリッシュマン・イン・ザ・ニューヨーク」のビデオクリップにも出演してるとか。いや、そういった部分は特に関係ないんですが...^^;(ハヤカワ文庫FT)

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ロンドンの下宿に住んでいるスパイダーは、過去の思い出が甦って目の前の光景に重なるような感覚に混乱して、日記をつけ始めることに。それはスパイダーの子供の頃の物語。その頃のスパイダーは、怒りっぽい父と優しい母との3人で、今の下宿から程近い街に暮らしていました。しかしスパイダーが12歳の時、父はあばずれのヒルダ・ウィルキンソンと出会い、夢中になり、なんと母を殺害してしまうのです。ヒルダは、我が物顔にスパイダーの家に居座るのですが...。

解説によると、物語分析には「信頼できない語り手」という言葉があるんだそうです。この物語の主人公・スパイダーは、まさにその「信頼できない語り手」。何も予備知識を持っていなければ、読者は当然1人称の主人公の言うことを信じて読み進めることになりますけど、どこかの時点で、その認識を覆されるわけですね。ミステリで言えば叙述トリック。普段、ミステリの感想を書く時に、「素晴らしい叙述トリックでした~」なんて書いてしまったら思いっきりネタバレなんですけど(書いちゃダメですよ!)、この作品に関しては、主人公に対する印象の変化が主眼なので大丈夫なんでしょう... きっと。本の裏にも解説にも主人公の狂気について思いっきり書いてあるし。...それでも「叙述トリック」という言葉を書くと、どこか後ろめたくなってしまうのは、ミステリ者のサガ?(笑)
この「信頼できない語り手」に、某有名古典ミステリが挙げられているのは当然として(もちろん作者も作品名も伏せられてましたが、読んでる人はぴんと来ますよね)、カズオ・イシグロの「日の名残り」(感想)も挙げられていたのにはびっくり。あれも叙述トリックだったのか...!(違います) でも言われてみると、確かに。納得。あの主人公は自信満々だし、プライドもすごーく高いし、何食わぬ顔で事実をさりげなく脚色してそうです。

まあ、叙述トリックなんて言葉が出てくる通り、この作品もミステリ的ではあるんですが、むしろサイコホラーですね。最初は普通の主人公に見えるんですが、もしかしたらこの精神状態は...? と感じ始めた頃から、どこからどこまでが事実なのか分からなくなっちゃいます。本当に殺人事件はあったのか、あったとすれば誰が殺したのか。そして誰が殺されたのか...。
でも私自身、叙述トリックもサイコホラーも苦手なこともあって、正直ちょっと読みづらかったです。主人公の狂気も、あまり楽しめず仕舞いでした。残念。(ハヤカワepi文庫)

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Baroque Midnight の森山樹さんに教えて頂いた本。アイルランドに伝わる民間伝承をモチーフにしたアイリッシュ・ホラー11編です。ホラーも短編も得意じゃないので大丈夫かな... とちょっと恐る恐る読み始めたんですけど、これがすごく面白かった!
物語の中心となるのは、よその土地に住む、それほどアイルランドに関する知識のあまり深くない人間。でも気がついたら、するりとこの世界に入り込んでしまってるんですよね。そしてこの土地の呪縛に囚われてしまう... ここで描かれるアイルランドの土地には、今も古い神々や精霊たちが息づいていて、しかもこの土地がずっと見てきた人々の営みや歴史、特に12世紀に始まるイングランドによるアイルランド侵略と虐殺や、19世紀半ばの大飢饉が色濃く影響を残してるんです。慟哭と呪詛の歴史から生まれるホラー。本当なら起きるはずのないような出来事でも、アイルランドというこの土地ではいかにも起こりそうに感じられてしまうのも、怖いところ。アイルランドにもいつか行ってみたいんですが、もし旅行直前にこれを読んだら、行くのを躊躇っちゃうかも。...少なくとも土地の人たちの言うことはきちんと聞こう!と思いました。(笑)

それにしても、土台がものすごくしっかりとした作品だなあと思ってたら、作者のピーター・トレメインは、実は高名なケルト研究者なんだそうです。道理でしっかりしてるはずだ! とは言っても、学者先生が書いたというより、本職の小説家が書いたとしか思えないような素晴らしい作品群でした。普段なかなか触れる機会のないゲール語がふんだんに使われているのも楽しかったし、その言葉の奥に隠された意味から導き出される結末にはひやりとさせられたし、短編集でこれだけ楽しめたのって本当に久しぶり。そしてホラーではあるんですが、幻想的でもあり、私には十分許容範囲でした。
アイルランドやケルトに馴染みが薄い人でも読みやすいと思うし、詳しい人にもきっと満足がいくような1冊。アイルランド近辺に興味のある方は、ぜひ読んでみて下さいませ~。(光文社文庫)


+既読のピーター・トレメイン作品の感想+
「アイルランド幻想」ピーター・トレメイン
「蜘蛛の巣」上下 ピーター・トレメイン
「幼き子らよ、我がもとへ」上下 ピーター・トレメイン
「修道女フィデルマの叡智」ピーター・トレメイン

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「光の帝国」の、全体的に穏やかな雰囲気の漂う常野一族の物語の中でも、異色の緊迫感を持っていた「オセロ・ゲーム」の続編。常野一族のダークサイド。うららかな日差しが感じられるような春田一族の物語も好きなんですが、このダークサイドにもすごく惹かれていたので、楽しみにしていた作品です。「オセロ・ゲーム」では、夫が「裏返され」て失踪し、自分も戦い続けてきた拝島暎子が主人公でしたが、今回は娘の時子が主役。

途中まではすごくスリリングなんです。時子の父に本当は何が起きていたのか、そして今回瑛子に何が起きたのか、電話をかけた先の女性たちや「洗濯屋」の火浦という青年の真意も分からないまま緊迫感たっぷりに進みます。「洗って、叩いて、白くする」という「洗濯屋」もいいですねえ。でも終盤... うーん、どうなんでしょう。確かにどんな物事でも、その一面だけではかることはできないし、当事者にはなかなか見えてこない面というのはあります。その人間にとっての真実が他の人間にとっても真実だとは限らないし、いくら真実だと信じていたことでも、簡単に崩壊してしまう可能性が十分あるのは分かるんですが... なんだか、決定的な部分をはぐらかされたままで終わってしまったような。途中までは確かに面白く読んでたはずなのに、「あれ、それで結局何だったんだ?」という感じで読み終えてしまいました。...このもやもや感は一体どうすれば... うーん...?(集英社)


+シリーズ既刊の感想+
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸

+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ノンシリーズの短編集。いつも不思議な世界を構築して読者を煙に巻いてくれる松尾さんですが、今回はちょっと珍しいテイスト。ややブラックな短編集です。
一旦ほっとさせておいて、最後にゾクリとさせてくれるかと思えば、当然あともう一つ来ると期待して読んでいたオチを見事にかわされてしまったり、一体その後どうなったんだ...? という話もあれば、意図的に何かをずらされてしまっているような話もあり。...当然来ると信じているものが来ないというのも、結構気持ち悪いものなんですね。それにその後の予感も何もない話というのも、案外後を引くものですね。
帯の「異世界への扉、ここにあります。ダーク・ファンタジーの傑作7編」という言葉はちょっと違うんじゃないかと思ったんですが、これらを映像化すれば、かなり不気味な作品になりそう。そのまんま「世にも奇妙な物語」になってしまいそうです。文章として読む限り、それほどホラーとは思えなかったんですけど、やっぱりホラーだったのかしら。そしてそんな作品集にこの表紙というのも、実はちょっと凄いかも。(光文社文庫)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ホラー小説大賞を受賞しているけど、それほどホラーではなく、むしろファンタジック、と聞いて興味を持ってた作品。その言葉を聞いた時に、私がまず思い出したのが朱川湊人さんだったんですよね。読んでみると、確かに朱川さん... しかも私がダントツで好きな「都市伝説セピア」に通じる雰囲気が...?! いやー、良かったです。この「夜市」という本には、表題作の「夜市」と「風の古道」という中編が2つ収められていて、私は最初「夜市」の方だけ読ませてもらったんですけど、「風の古道」も読みたくて、思わず本屋に走ってしまいました。(笑)

「夜市」は、異界が交わる場所に現れる、お金さえ出せば何でも手に入るという夜市の物語。夜市のイメージ自体はそれほど目新しくないかもしれないんですが、不思議で、ちょっと不気味で、やっぱり魅力的。静かな暗闇の中に、この夜市が鮮やかに浮かび上がってくるように感じられるのがいいんですよね。そして「風の古道」は、花見に行った公園で迷子になった少年が、不思議な道を教えてもらって家に帰り、その道のことが忘れられず... という物語。こちらも読んでいると絵が浮かびます。この道がいいんですよねえ。どちらかといえば、私はこちらの方が好きかな。どちらにしても、これがデビュー作なんてびっくり。
本当の怖いホラーは苦手なんですけど、こういう幻想的な作品は大好き。あっという間に異世界に引き込まれてしまいました。とは言っても、2作品とも異世界から抜け出せる保証はどこにもなくて、そういう意味では十分怖いんですけどね。
「都市伝説セピア」がお好きな方は、ぜひ読んでみて下さいませ~。(角川書店)


+既読の恒川光太郎作品の感想+
「夜市」恒川光太郎
「雷の季節の終わりに」恒川光太郎
「秋の牢獄」恒川光太郎

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完全な美の持ち主であるクルミと、そのクルミの美に取り付かれた人々の物語。今までにも西澤作品には、時々「フェチ」や「ジェンダー」といった要素がありましたけど、ここでとうとう1つの作品にまとまったという感じですね。「意匠」「異物」「献身」「聖餐」「殉教」という各章に分かれて、脚(タイツ)フェチや手フェチ、女装趣味など、怪しげな「フェチ」ぶりを見せる人々が登場します。
でも、もちろん知り合いの男性が女装趣味だと突然知らされたら、さすがの私もびっくりすると思うんですけど(笑)、そこまでいかなくても、人それぞれに何らかの嗜好ってあるものですよね。隠した方が無難なものも、隠す必要が全然ないものも。嗜好自体がどうこういうよりも、そういった嗜好がクルミという存在を通して、表面に露呈されてくるのが面白かったです。それまで影の存在でしか有り得なかったそれぞれの嗜好が、クルミによって解放されたというか。だからなのか、たとえそんな特殊な嗜好を持つ人間が殺されても、私にはあまり不幸には見えなかったんですが... そういう読み方って間違ってるかしら(^^;。
殺人はたびたび起きるんですが、ミステリというよりもむしろサイコホラー。クルミの「触れれば死ぬ」という特異体質についてもっと知りたかったんですけど、それに関してはあまりすっきりしないまま終わってしまったのがちょっと残念でした。あんまり突き詰めて考えないで、無条件に受け入れるべき部分だったんですね、きっと。(集英社)


+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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菊地秀行さんといえば、まず新宿を舞台とした例のシリーズのイメージだったので、これは意外でした! こういった時代小説も書いてらしたのですねー。そっちの作品に比べたら、官能的な描写なんてないも同然の硬派な時代小説。時代小説と言うより、怪談と言う方が相応しいかも。全部で9編入っていて、それぞれに幽霊が出てきたり、不思議な出来事が起きたり。

この中で一番好きだったのは、最初に入っていた「影女房」。辻斬りに殺された小夜という町娘の幽霊が、何も関係ないはずの久馬の家に乗り込んで仇討ちを頼むんですけど、久馬が諦めろと言うと、その前に断った侍を半病人にしたことを告げて、「あなたには、もっと酷い運命を与えて差し上げます」と脅すし、久馬の母親が女の噂を聞きつけて家に乗り込んでくると、誤魔化そうとする久馬を尻目に、「だって口惜しいじゃありませんか」と自ら名乗り出るし、挙句の果てに「私、負けません」なんて宣言しちゃう気の強さ。気の強い幽霊というのも結構いると思いますが、ここまで来ると逆に気持ちいいです。(笑)

それとこの短編集で面白かったのが、それぞれの短編によって幽霊の有り様が違うこと。例えば「影女房」の小夜は、幽霊なのに身体は暖かくて足もきちんとあるし、人間のできることは普通にこなすんです。辻斬りに斬られた傷口からは未だに血が溢れて出るんですけど、それが畳などに付くことはありません。でも他の作品に登場する幽霊は、また違うんですよね。手が氷のように冷たくて、血の跡を残していたり。例えば「足がないから幽霊」とかそんな風に決め付けられないんです。血を流してるから人間だ、という発言にも、「死人が、霊が血を流さぬと、誰が決めまして?」 確かにそうかもしれないですねー。日本の幽霊に足がないのが普通になったのも、そもそも丸山応挙がそういう絵を描いたせいですもんね。(笑) (角川文庫)


+既読の菊地秀行作品の感想+
「幽剣抄」菊池秀行
お正月休みの間に読んだ本(7冊)

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「ヒガン」の1ヶ月には、死者が戻ってくるというアナザー・ヒル。関係者以外なかなか立ち入ることのできないこの地に、ジュンは今年初めて、親戚のハナやマリコと共に参加することに。しかし今年は連続殺人犯の存在もあり、いつもの年とは違うヒガンが始まるのです。

今回の本の装幀も素敵ですねー。川を渡るとそこはアナザーワールド! 恩田さんらしい異世界が広がってます。
1ヶ月間の「ヒガン」の物語。でも「彼岸」と言うより、むしろお盆に近いかと。お盆では先祖の魂がこの世に戻って来ますが、この「ヒガン」では、主にこの1年に亡くなった人が戻ってくるんです。しかも霊魂だけではなくて、実体付き。生きていた時の姿のまま。だからうっかりしてると、死者とは気づかないこともあり得るんですね。そしてこの死者は「お客さん」と呼ばれていて、なぜか嘘をつけないのが特徴。だからお客さんの言葉は公式の記録として扱われる可能性があり、お客さんと遭遇した人は皆、ブラックダイヤリーと呼ばれる黒い手帳にその会話の記録を残すことになってるんです。殺人事件の被害者がお客さんとしてやって来たら、その犯人が分かっちゃうんですねー。(後ろからいきなりとか、本人も良く分かってない状態だと無理なんですが)

「死というものが残酷なのは、突然訪れ、別れを言う機会もなく全てが断ち切られてしまうからだ。せめて最後にひとこと言葉を交わせたら。きちんと挨拶できたら。そう思っている遺族がどれほどこの世にいることか。」
恩田さんがこの物語を書こうと思ったのは、ここが始まりだったのかもしれないですね。(朝日新聞社)

と、設定自体はとても魅力的だと思ったんですが、以下、あまり好意的じゃないことを書いてるので、折り畳み~。


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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様々な媒体に発表されてきたホラー短編が、前後の会話を挟むことによって、数人のホームレスらしき人間の集まりで語られている物語として成立している作品。1つ話が終わるたびに、その語り手たちのことが少しずつ分っていくところが面白かったです。最初は「わたし」と「トヨさん」と「彼女」の3人。そこに「ヒゲ三」が加わって、「わたし」が「センセイ」であることが分かり、そして「サトーさん」が加わり... と、それほど大掛かりな仕掛けではありませんが、短編が苦手な私にはちょっと嬉しい趣向かも。
それぞれの作品はホラーと言うほど怖いわけではなく、あとがきで柴田よしきさんが書いてらっしゃるるように「夜」のイメージ。ごく普通の日常生活を送る「昼」に対して、それが歪み変化した「夜」。ほとんど怖くないんですけど、幻想的。何かの瞬間に歪んで変化してしまう女性の想いが様々な形で描かれているのが、柴田よしきさんらしかったです。...今、本の画像を見ていて気づいたんですけど、黒いのは女性の髪の毛だったんですね... 怖っ。(祥伝社)

で、本の感想とは関係ないんですけど、今朝、階段から落ちました... 上から下まで、ずどどどどーっと。
痛いやら情けないやらで、もう泣きそう。じっとしてる分には大丈夫なんですけど、身体を動かすと痛くって、結局今日は1日中寝てました。そしたら寝れること寝れること。ほんと信じられないぐらい1日中ぐっすりでしたよ。気がつかないうちに、ちょっと疲れが溜まってたのかもしれないですね。逆にいい休みになりましたー。
で、晩になって少し復活したんですが... 頭にできたたんこぶがやっぱり痛いです(^^;。


+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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津原泰水まつりエントリ第1弾として選んだのは、この「妖都」。本当は、ブログには「ペニス」「少年トレチア」「綺譚集」の感想を書いているし、サイトの方には他の作品の感想もアップしてるので、エントリしようと思えば一気にできるんですが... いい機会だし順番に再読していくことにしました。(少なくとも手元にある本は) ...あ、でも再読しても、前に書いた記事をそのままエントリしちゃう可能性大です。(と、「妖都」を読了した時点で思いました。)

この「妖都」は、人間でも幽霊でもない、「死者」たちが徘徊する東京が舞台。「死者」の姿を見れるのは、雛子や馨などごくわずかな人間のみ。2人は先日自殺した人気ヴォーカリスト、両性具有と噂された美貌の「チェシャ」の書いた歌詞に暗示的なものを見つけ、調べ始めることに... という物語。綾辻行人さん、小野不由美さん、井上雅彦さん、菊地秀行さんが絶賛したという作品です。(ココで見れます)
今回読むのは丁度3年ぶりの再読なんですが、もう、読み始めた瞬間のめり込んでしまいました。やっぱり、この作品好きだー!! 半陰陽、両性具有、近親相姦... といったものをモチーフに、ねっとりとした夜の闇とエロティシズムが迫ってきます。(「綺譚集」とはまたちょっと違うのですが) 先日のたらいまわし企画「美しく妖しく... 夜の文学」でも、これか「蘆屋家の崩壊」を入れたくて、最後まで迷ったんですよね。やっぱり入れておけば良かったかな。好き嫌いは、ハッキリ分かれそうなんですけどね。
なーんて全然感想にも何もなってないですね。でもね、やっぱりこの方の作品の感想を書くのってとっても難しいです...。好きだというだけで、もう十分のような気もするのですが、それってただの「書けない言い訳」なのでしょうか?(笑)(講談社文庫)


+既読の津原泰水作品の感想+
「ペニス」津原泰水
「少年トレチア」津原泰水
「綺譚集」津原泰水
「妖都」津原泰水
「蘆屋家の崩壊」津原泰水
「赤い竪琴」津原泰水
「ルピナス探偵団の当惑」津原泰水

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ふと気がつくと、幽霊になっていた?! ひっきりなしに頭に浮かぶのは「事故だ!」という言葉ばかりで、何も思い出せない「あたし」。でもドアを通り抜けて家に入り、3人の姉妹を見た途端、自分が誰なのかを思い出します。幽霊になってしまうだなんて、一体何があったのかしら...?

主人公が自分のことをまるで思い出せない状態なので、当然読んでる側にも何も分からず、序盤はちょっと話に入りづらかったんですけど、まずは「自分は誰なのか」、そしてその自分に「一体何が起きたのか」というミステリ的な展開。そして姉妹が登場し、幽霊の正体が分かった辺りから、どんどん面白くなります。もうこの姉妹の喧嘩が強烈で、読んでるだけでも圧倒されそうでした。同じ4人姉妹でも、「若草物語」とは何という違い!(笑) でもね、その両親がまた一枚上手なんですよー。寄宿学校の経営をしているんですけど、もうすっかり疲れ切っていて、娘たちにまるで無関心。4人のうちの1人がいなくても気付かないなんて!
でもまあ、この辺りまではまだ普通の日常生活の雰囲気なんです。中盤以降、その雰囲気が一変してしまってびっくりでした...。とにかく先が読めない展開で、実はまだまだ大きな謎も残されています。そしてラスト。なんと、そう来ますかーっ。いや、もうまるでスパッと包丁で切り落とされてしまったような感覚。でもこのラストこそが、ダイアナ・ウィン・ジョーンズなのかもしれないな。や、予想外に強烈な作品でした。もう、びっくりしたなー。(創元推理文庫)


+既読のダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の感想+
「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「アブダラの空飛ぶ絨毯」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「デイルマーク王国史」1~4 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法使いはだれだ」「クリストファーの魔法の旅」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔女と暮らせば」「トニーノの歌う魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法がいっぱい」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
留守中に読んだ本(18冊)(「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」の感想)
「呪われた首環の物語」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「花の魔法、白のドラゴン」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「いたずらロバート」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バウンダーズ」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「星空から来た犬」「魔空の森ヘックスウッド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バビロンまでは何マイル」上下 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」「海駆ける騎士の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法!魔法!魔法!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ぼくとルークの一週間と一日」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「牢の中の貴婦人」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「キャットと魔法の卵」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Livreに「ダークホルムの闇の君」「グリフィンの年」「九年目の魔法」の感想があります)

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海外物が続いてたので、このまま海外物強化月間にしてしまおうかとも思ったんですが、図書館でこの本を借りてしまいました。図書館、久々ーっ。読みたかったんですよねえ、コレ。
まず本を手に取って... 装丁が美しいです。表紙の女性は生きているのでしょうか、それとも...? 本の奥付には「津原やすみ」の著者検印付き、ハトロン紙まで貼られてるんですよー。凄いなあ。これは図書館で借りるよりも購入向きの本だったかも。(^^ゞ
中身の方は、「異形コレクション」に発表された作品を中心にした短編集。ここに収められた15作品のうち2編が既読だったんですけど、でも本来バラバラだったはずの短編なのに、こうして1つにまとめてしまうと、なんて違和感がないんでしょう。艶やかで美しくて妖しくて、そしてエロティック。何も知らずに読んでいたら、別々に書かれた作品とは思わなかったかも。1つ1つは全然違う世界なのに、ごく自然に滑らかに繋がっていくんです。
この中で一番印象的だったのは「聖戦」という作品だったんですが、これは先日読んだ長編作品の「ペニス」にそっくり。この作品をふくらまして書いたのが「ペニス」だったのかな? あちらを読んだ時は、実はものすごーく苦労したんですけど、でも今読み返したら最初に読んだ時よりもずっと理解できるかもしれないなあ...。あれはもしかしたら、短編集のような気持ちで読むべき作品だったのかも、なんて思ってみたり。全体を通して、「正気」と「狂気」の境目が曖昧というか... 「生」と「死」でも良さそうですね。普段なら両極にありそうなものが違和感なく隣り合わせに共存していて、しかもふとした拍子にどちらにもなり得るような、そんな不思議な感じでした。(集英社)


+既読の津原泰水作品の感想+
「ペニス」津原泰水
「少年トレチア」津原泰水
「綺譚集」津原泰水
「妖都」津原泰水
「蘆屋家の崩壊」津原泰水
「赤い竪琴」津原泰水
「ルピナス探偵団の当惑」津原泰水

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東京郊外の新興住宅地、通称緋沼サテライトで不吉な事件が次々に起こっていました。動物や人間が襲われ、殺されたり行方不明になっていたのです。目撃した子供の口から出てくるのは「トレチアがやった」という言葉のみ。事件現場では白シャツに制帽姿の少年が目撃され、「キジツダ」という言葉が...。

前回の「ペニス」(感想)に引き続き、幻想小説テイスト。あちらほどの難解さはないと思うんですけど、こちらも結構な難物デシタ。前半部分は、人工的な新興団地の闇に浮かぶ都市伝説。まだ大人ではなく、かと言って善悪の区別のつかない子供でもなく... といった年代の子供たちの中途半端さと、容赦ない極端さが怖い! そして後半になると、その都市伝説が崩壊して怒涛の広がりを見せることになります。その辺りが津原さんの津原さんたる所以のような気がするんですが... 自分が果たしてどの程度理解できているのかと考えると、妙に不安になってしまったり...(^^;。(集英社文庫)


+既読の津原泰水作品の感想+
「ペニス」津原泰水
「少年トレチア」津原泰水
「綺譚集」津原泰水
「妖都」津原泰水
「蘆屋家の崩壊」津原泰水
「赤い竪琴」津原泰水
「ルピナス探偵団の当惑」津原泰水

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えっと、これは何をどう書けばいいんでしょう... 幻想小説って言えばいいんでしょうか。ええと、はっきり分かってるのは、主人公は中年の公園管理人だということ。そして最初のページにあるように、舞台が「井の頭恩賜公園とその周辺、および管理人の記憶と夢想」ということ。なんだか、特に筋書きのないオムニバス映画を観ているような印象でした。現実と虚構、現在と過去が入り乱れて描かれていて、それぞれの場面はすごく濃厚でくっきりとしてるんだけど、でもなんだか希薄。不安定でとりとめがなくて、混乱してて... でもその核には何かあるような感じ。生きてる人間の思考の中を覗き込んだら、こんな感じなのかしら、なんて思ったり...。これは頭で理解するような作品じゃないんだろうな。「ルピナス探偵団の当惑」みたいな、分かりやすくて楽しい作品とはまた全然違うんだけど、きっとこっちの方が津原さんの本質なんでしょうね。私は、本当は「妖都」や「蘆屋家の崩壊」みたいな作品の方が好きなんですけど、そこから更に一歩踏み出したって感じ。でもワケわかんないとこもあるんですけど、吸引力は凄いんですよ。なんだか息をつめて読んじゃってたので、読み終わった後はぐったり。
去年各所で話題になってた「綺譚集」もすごく読みたいんだけど、次は文庫になった「少年トレチア」を読む予定。でもこの作品を読むのに力を使い果たしちゃった感じなので、その前に何かもっと優しいものを読もうっと。(双葉文庫)


6月27日+追記+
津原泰水まつりエントリ第4弾のために再読してみました。ゆっくりゆっくり何日もかけて読んで、最初に読んだ時よりもずっと堪能できたし、少しは理解もできたと思います。でも少しはマシなことを書けるかと思ったんですが、どうやら書けそうになく... ダメじゃん。結局過去記事をそのままエントリしちゃいます。(^^ゞ


+既読の津原泰水作品の感想+
「ペニス」津原泰水
「少年トレチア」津原泰水
「綺譚集」津原泰水
「妖都」津原泰水
「蘆屋家の崩壊」津原泰水
「赤い竪琴」津原泰水
「ルピナス探偵団の当惑」津原泰水

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「僕」と「ちーちゃん」とは家が隣同士の幼馴染。小さい頃は、家に突然やってきては押入れの中で臨場感たっぷりに怖い話を聞かせる、幽霊や妖怪が大好きな「ちーちゃん」に閉口していた「僕」なのですが、そんな2人も高校生に。そしてちーちゃんは、オカルト研究会に入部。学校の七不思議を自分で解明すると意気込むのですが... ということで、お初の作家さんです。「日日日」と書いて「あきら」と読むんですって。そしてこの作品は、第4回新風舎文庫大賞受賞らしいです。この本の帯にも「天才高校生デビュー」とあるように、作者はまだ高校3年生。どうやら一部では既にかなり話題になってるようですね。
...なーんていう予備知識も全くなく、裏表紙のあらすじすら読まずに読み始めたんですけど...

読んでみてもうびっくり。この題名だとか表紙だとかにすっかり騙されたわっ。や、これは凄い。何が凄いって、この歪みっぷりというか壊れっぷりというか何というか。(謎) 高校生でこんなの書いちゃうって、これは乙一さんに比べられるというのも納得です。でも西尾維新さん風でもありますね。だってこの主人公、なんだか「いーちゃん」みたいなんだもの。(笑)
あ、でも文章はすごく読みやすいと思うんですが、作品自体の好みは分かれそう。このオチも賛否両論かもしれないですね。という私は結構好きなんですけど、読後感がいいとはお世辞にも言えず。「なんなんだ、コレは!」と思う人も多そう。でもどちらにしても、今後が楽しみな作家さんが1人増えました。これからどんな感じに化けてくれるのか楽しみです。(化けるのか? てか、化けなくちゃいけないのか?) (新風舎文庫)

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吸血鬼物。英国幻想文学賞、ブラム・ストーカー賞受賞作。最初はすごいスピード感があっていい感じだったんだけど、回想シーンに入ったころから失速しちゃった。amazonの書評に「菊池秀行氏の著作が好きな人なら」ってあったんだけど、それも納得。バイオレンス部分なんて丁度そんな感じですね。あそこまで艶っぽくはないですけど、でもやっぱりエログロ。続編2つと外伝もあるらしいんですけど、とりあえずそっちはいいや...。(ハヤカワ文庫FT)

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古い劇場のバルコニーが落ち、その下敷きになった22人の児童が亡くなるという惨事。16歳のジョン・ポール・コルバートは、その時丁度バルコニーにいたことから、そして暗闇の中でマッチを擦ったことから、25年経った今でも電話や手紙、そして新聞記事に「人殺し」と責められながら、ひっそりと暮らしていました。
ということで、昨日に引き続きコーミア。前回のサスペンスから一転して、今回はホラーでした。劇場のバルコニーが落ちたのは、劇場主が老朽化を知ってて放っておいたから。でもその劇場主が自殺しちゃうから、遺族のやり場のない怒りは、ジョン・ポールにぶつけられるんですよね。遺族のやるせない気持ちも、25年経っても遺族にとっては事件は風化しないというのも分かるんですけど... それで25年を費やしてしまうってどうなんだろう? ジョン・ポールだってまるで責任がないわけじゃないけど、でもだからってどうすればいいの?
あ、でもこの作品の主人公はジョン・ポールではなく、実は息子のデニー。彼もまた、「人殺しの息子」とののしられたり白い目で見られたりしてるんですよね。彼自身には、何も係わり合いのないことなのに。
...そしてそんな恨みの1つが息子の方に向かった時...
実はそっちがメインです。ということで、すっかりズレたことを書いてますが、でも昨日の「僕が死んだ朝」よりも良かったな。(扶桑社文庫)


+既読のロバート・コーミア作品の感想+
「ぼくが死んだ朝」ロバート・コーミア
「真夜中の電話」ロバート・コーミア
Livreに「チョコレート・ウォー」「フェイド」の感想があります)

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