Catégories:“児童書・YA”

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上方で算法を収めた町医者の父に幼い頃から手ほどきを受けたあきは、まだ13歳ながらも、算法の学力はかなりの水準。近所の娘たちと浅草の観音さまにお参りに行った時にも、奉納されようとしていた算額に誤りがあるのを見つけてしまいます。算額とは、表向きは勉学の進歩を神仏に感謝するものなのですが、その実態は、自分の学力を大勢の人の前で誇示するもの。奉納しようとしていたのは、江戸での算法の中心的な存在である関流の宗統・藤田貞資の直弟子で、しかも旗本の子弟だったため、町人の小娘のやっつけられた話は算法家の間ですぐに広まってしまいます。そして話は筑後久留米藩の有馬候にまで伝わり、算法好きの有馬候はあきを姫君の算法御指南役に迎えようと考え始めます。しかし、あきがやっつけた相手の師匠・藤田貞資から、横槍が入って...。

先日、掲示板でアッシュさんにオススメしていただいた本。この「算法少女」という題名は、作者の遠藤寛子さんがつけたものではなくて、安永4(1775)年に刊行された和算書「算法少女」からきたものなんだそうです。江戸時代の「算法少女」を書いたと言われているのが千葉桃三という町医者で、それを手伝ったのが娘のあき。遠藤寛子さんが、あきによる前書きを繰り返し読んで、内容を詳しく調べているうちに、徐々に心の中に育ってきた物語なんだとか。
日本古来の数学である「和算」の存在自体は知っていましたが、江戸時代に、これほど和算が庶民の間に広まっていたとは、全然知りませんでしたー。既に相当高いレベルに達していたようですね。正確な円周率の算出方法などもあって、流派の秘伝とされていたよう。そもそも、万葉集にも九九を使った句があるんだそうですよ! 「十六」と書いて「しし」と読ませたり、「八十一」と書いて「くく」と読ませたり。でもそれほどの和算も明治以降はすっかり影を潜め、西洋の数学が中心になってしまったんですって。勿体ないなー。
物語としては、詰めの甘さもあるんです。せっかくの有馬候の御前での算法対決の場面なんかは、もうちょっと盛り上げて欲しかったところ。でも元々は児童書だそうだし、この品の良い語り口には、この展開が合っているのかもしれないですね。いやあ、本当に可愛らしいお話でした。あとは、物語の中に登場する問題とその解き方が巻末にでも載っていれば、尚良かったのにな。これを読んで、数学の問題を解きたくなる人もきっといるはず!(笑)(ちくま文庫)

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小学校6年生の光太郎は山村留学中。やることなすこと時間がかかる光太郎は、勉強も体育も苦手で、得意なのは図工だけ。それもものすごく時間がかかり、丁寧にすることはいいことだと言ってくれる先生にも、最後には「早くしてね」と言われてしまうのです。しかも身体が小さく細くて、泣き虫。周囲にイジメられて、とうとう東京の学校には行けなくなってしまったという経緯がありました。コンビニも本屋もないけれど、ヤマメのいる川は綺麗で、夜には満天の星空が広がる村。世話になっている家には同じ年のタツオがいて、兄のようにひっぱってくれます。しかし大雨が続いて山が崩れ、ヤマメのいる淵が無事かどうか見に行った光太郎は、そこで河童らしきものを助けることに。そして落ちていた赤い皿を拾ったその晩から、光太郎は原因不明の高熱に襲われ、不思議な夢をみることに...。

別名義の作品は読んだことがありますが、たつみや章さん名義の作品は初めて。これは、「ぼくの・稲荷山戦記」「夜の神話」と一緒に、神さまシリーズと呼ばれている作品なのだそう。3作に特に繋がりはないそうなんですけどね。これはイジメ問題と環境問題を大きく取り上げた作品でした。
これを読んで思ったのは、やっぱり「知らない」じゃ済まされないのよね、ということ。知らなかったから、というのは何の理由にも言い訳にもならないんですよねえ。全てのことに通じると思うんですが、たとえば環境破壊のように人間の生活に直接関わってくる部分は、特にそうじゃないかなと思ってます。自覚があって破壊するほどは悪くはなくても、結果的に破壊してしまえば結局のところは同じことだし。何事においても、きちんと自分の行動の意味と結果を知る努力は必要なんでしょうね。
とまあ、これも悪くないんだけど... 龍神とか山の姫が出てくる辺りはいいんだけど... あまりそんな風にメッセージ性の強い作品は、今はちょっと。たつみや章さんの作品を読むなら、やっぱり「月神の統べる森で」を選ぶべきだったかもしれないな。(講談社文庫)

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どこの子なのか、だれひとりとして知らないけれど、そこに確かに存在している「こうちゃん」。そんなこうちゃんのことを書いた絵本。須賀敦子さんが唯一遺したという小さな物語に、酒井駒子さんの画をつけたものです。

絵本と言っても差し支えないとは思うし、こここに書かれている言葉は決して難しいものではないんですけど、やっぱり子供向きの絵本とは言えないですね。ひらがなの多い文章はとても柔らかくて、読んでいる人を包み込んでくれるよう。するっと心の隙間に入り込んで、ひび割れた部分を埋めてくれるような気がします。でも字面を追うのは簡単なんだけど、そこにどんな意味があるのかと考え始めると、ものすごく難しいんですよね。そもそも「こうちゃん」って一体誰なんだろう? ...私には、ふとした瞬間に感じられる明るい光のようなものに思えました。ふとした拍子にするりと逃げ去ってしまうんだれど、確かに存在するもの。日々柔らかな心で暮らしていないと、すぐに見失ってしまうようなもの。
本を見る前からきっと合うだろうとは思っていましたが、酒井駒子さんの絵が素敵。須賀敦子さんの文章にぴったり。でも、須賀敦子さんの文章をそのまま絵にしたという感じではないんですよね。須賀敦子さんの文章から浮かび上がってくる情景と、酒井駒子さんの描く絵が対になって、コラボレーションとなっているみたいです。(河出書房新社)


+既読の須賀敦子作品の感想+
「トリエステの坂道」須賀敦子
「本に読まれて」須賀敦子
「ヴェネツィアの宿」「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子
「須賀敦子全集1」須賀敦子
「須賀敦子全集2」須賀敦子
「須賀敦子全集3」須賀敦子
「須賀敦子全集4」須賀敦子
「須賀敦子全集5」須賀敦子
「須賀敦子全集6」須賀敦子
「須賀敦子全集7」須賀敦子
「須賀敦子全集8」須賀敦子

+既読の須賀敦子翻訳作品の感想+
「インド夜想曲」アントニオ・タブッキ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「ある家族の会話」ナタリア・ギンズブルグ

+既読の酒井駒子作品の感想+
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子
「よるくま」「よるくま クリスマスのまえのよる」酒井駒子(「リコちゃんのおうち」)
「ビロードのうさぎ」マージェリィ・W・ビアンコ文・酒井駒子絵訳
「きつねのかみさま」あまんきみこ文・酒井駒子絵
「絵本のつくりかた1」「Pooka+ 酒井駒子 小さな世界」
「ゆきがやんだら」「ぼく、おかあさんのこと...」酒井駒子
「こりゃ まてまて」「ロンパーちゃんとふうせん」酒井駒子
「BとIとRとD」酒井駒子
「赤い蝋燭と人魚」小川未明文・酒井駒子絵
「くまとやまねこ」湯本香樹実文・酒井駒子絵
「金曜日の砂糖ちゃん」酒井駒子
「きかんぼのちいちゃいいもうと」1~3 ドロシー・エドワーズ

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北方の国に来ている「私」は、ここ数日間、家の中にあったアルコールとオイル・サーディンだけで生きのびている状態。そんなある日、窓のカーテンの隙間から外を見た「私」は、門柱のところに立ってじっと庭を見つめている女の子に気づきます。ふらふらと外に出る「私」。そんな「私」に、女の子は「この庭に、ミンクがいる気がしてしようがないの」と言うのですが... という「この庭に」と、その前日譚とも言える「ミケルの庭」。

大好きだったはずなのに、ちょっぴり気持ちが離れ気味? 去年の暮れに新刊が出てたのに、読むのが今頃になってしまいました。「この庭に」は、文庫版「りかさん」に収録されている「ミケルの庭」の続編とのことなので、せっかくだし、「ミケルの庭」も再読です。「ミケルの庭」のミケルとは、「からくりからくさ」に登場するマーガレットの産んだ赤ちゃん。ほとんど育児ノイローゼになりかけていたマーガレットが、ミケルが1歳になって乳離れしたのを機に、同居している3人にミケルを任せて中国に短期留学に行っている間の物語。
続編とはされていても、「この庭に」は「ミケルの庭」の数年後の物語だし、共通する登場人物がミケルだというだけで、物語としては特に繋がってないんですね。「この庭に」は、物語としての展開も特になくて、ほとんどアル中状態の「私」が見る妄想のような情景が移り変わっていくだけ。現実世界と異世界の境目がすっかり薄れてしまって、どこにあるのか分からなくなってしまったような感じです。それにしても精神的にかなり荒んで、殻に閉じこもってしまっているミケルの姿が痛々しい...。これはもしかして、胎内にいた時のマーガレットの不安定さを受け継いでしまったのかしら。なんて思うと、なんだか怖くなってくるし、これから本当に真っ当な人生が送れるのか、本当に心配になってしまいます。
挿絵が多いせいか、本は児童書のところに置かれてるんですけど、これは実は結構激しい作品ですね。須藤由希子さんのモノトーンの挿絵の中に、血の赤が鮮烈でどっきり。(理論社)


+既読の梨木香歩作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「ぐるりのこと」の感想)
「沼地のある森を抜けて」梨木香歩
「水辺にて」梨木香歩
「ミケルの庭」「この庭に 黒いミンクの話」梨木香歩
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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やまんばの母と人間の父の間に生まれた由布も13歳。以前から山のふもとの風早の街に行きたくて堪らなかった由布は、母が7年に1度の山の神の寄り合いで富士山に行っている間に、姉を残して1人山を下りてしまいます。街には父がいるはずなのです。10年前に街に行ったきり戻らなかった父。母は、父が山の生活が嫌になってしまって自分たちを見捨てたのだと言うけれど、由布にはどうしてもそうは思えず、帰りたいのに何か理由があって帰れないのではないかと考えていました... という「やまんば娘、街へゆく」と、捨てられた猫の赤ちゃんを拾い、1人世話をしようとする少女の物語「七日間のスノウ」。

「七日間のスノウ」しか画像が出ないですね。これは、正真正銘の児童書。風早街の話だから読んだんですけど、字が大きくてちょっとしんどかったし、お話そのものも痛すぎました...。「百年めの秘密」に登場したのと多分同じお屋敷も出てくるので、そういう意味では読んで良かったんですけどね。
それよりも「やまんば娘、街へゆく」の方が、ずっと私好み。これは副題が「由布の海馬亭通信」。古い石畳の道に面して建っている灰色の煉瓦造りの海馬亭は、今でこそアパートとして使われてるんですけど、元々はホテルで、竜の落とし子の形の錆びた金の看板にはしゃれた文字で「海馬亭」とあるんです。それを、「ナルニアのあの街灯のように」1つぽつんと立った街灯が見守っていて...。風早の街に、また1つ素敵な場所が増えてしまいましたー。やまんば娘の由布は可愛いし、お姉さんやお母さんも見たくなってしまったわ。アパートの住人たちもそれぞれに個性的で暖かくて、海馬亭がとても素敵な空間になってます。(理論社・佼成出版社)


+シリーズ既刊の感想+
「ささやかな魔法の物語 カフェ・かもめ亭」村山早紀
「人魚亭夢物語」村山早紀
「コンビニたそがれ堂」村山早紀
「百年めの秘密」村山早紀
「やまんば娘、街へゆく」「七日間のスノウ」村山早紀

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中古のワープロを買った潤が書く最初の物語は、11歳の夏の冒険の物語。潤が経験した、ちょっぴり不思議な物語。いつものように塾に向かっていた潤は、人気のない荒れた屋敷のところで白いネグリジェを着た髪の長い女の子の幽霊を目撃します。塾の休み時間、早速他の面々に幽霊を見た話をする潤。潤は知らなかったのですが、その屋敷は実は幽霊屋敷として有名で、強盗に殺されたお嬢様の幽霊が出るのだというのです。親友のあげはは、その家にはちゃんと持ち主がいて時々手入れをしているし、そんな伝説は嘘っぱちだと頭から否定します。

「人魚亭夢物語」にも登場していた潤が主人公の物語。潤が弥子に話した「子供の頃の不思議な体験」の物語というのがこれです。
始まりは、夏休みの5人の子供たちの冒険譚。幽霊目撃もあり、夏らしい怪奇風味もたっぷり。親たちの不審な行動が幽霊伝説に重なって、やっぱり伝説は本当だったのか...? と思わせるとことが良かったです。本当はもっと現実的な展開を見せるんですけどね。でも常識では説明しきれない部分も...。
この作品の中で、「ぼくの成績は中くらい。きっとこのまま、作家になったりすることなく、中くらいの進学をして、中くらいの就職をするんだろう。で、中くらいの人生を生きる。ごくごくありふれた人生。」などと考えている潤は、「人魚亭夢物語」では大学生として登場します。どうやら全然「中くらい」の人生ではなくなったようです。(あかね書房)


+シリーズ既刊の感想+
「ささやかな魔法の物語 カフェ・かもめ亭」村山早紀
「人魚亭夢物語」村山早紀
「コンビニたそがれ堂」村山早紀
「百年めの秘密」村山早紀
「やまんば娘、街へゆく」「七日間のスノウ」村山早紀

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胸の奥が重苦しく、何かを蹴とばしたいような気分だった江藤雄太が見かけたのは、見慣れないコンビニ。ふらっと中に入ると、そこにいたのは銀色の長い髪に金色に光る目のレジのお兄さん。その外見だけでもびっくりなのに、お兄さんはなんと雄太の名前を知っていたのです。しかもそこには、転校してしまった美音から雄太が受け取らなかったメモ帳があったのです... という表題作「コンビニたそがれ堂」以下、連作短編集。

風早の街の裏通りのビルの隙間、古い赤い鳥居が建っている辺りにひょっこりと立っているコンビニを舞台にした連作短編集。このコンビニはコンビニらしくない赤と灰色で、少し古い雰囲気。手作りっぽいおでんのいい匂いが漂い、「おいしいお稲荷さんあります」という手書きのメニューがレジの傍に立てかけられています。探しものがある人間だけが辿り着けるというお店。
さすが「たそがれ堂」という名前の通り、夕暮れの情景がお得意のようです。しかもどの物語も季節感がたっぷり、季節それぞれの夕暮れの情景が広がります。そして夕暮れ時という時間帯のせいなのか、とても切ない物語が多いのです。特に後半。ありがちな展開だと思いながらも、すっかり作者の術中にはまってしまった話も...。(笑)
店主のお兄さんは、お茶目なきつねの神様。時にはミュージシャン志望と間違えられるような、イケメンのお兄さん。お稲荷さんだなんて、日本の昔ながらのモチーフを使いながら、現代を象徴するようなコンビニと結び付けているところが、また面白いです。(ポプラ社)


+シリーズ既刊の感想+
「ささやかな魔法の物語 カフェ・かもめ亭」村山早紀
「人魚亭夢物語」村山早紀
「コンビニたそがれ堂」村山早紀
「百年めの秘密」
「やまんば娘、街へゆく」「七日間のスノウ」村山早紀

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