Catégories:“児童書・YA”

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エリンは大公(アルハン)領の闘蛇衆の村で育った少女。エリンの母・ソヨンの獣ノ医師としての腕は非常に高く、闘蛇の中でも最強の<牙>の世話を任されていました。しかしエリンは、自分たち母娘は集落の人々とはどこか隔たりがあると感じていました。それもそのはず、ソヨンは元々霧の民(アーリョ)であり、戒めを破って闘蛇衆の頭領の息子だった父・アッソンと恋に落ちたのです。アッソンは既に亡くなっており、頭領である祖父はソヨンの腕を認めながらも、2人に冷たい視線を向けるのみ。そしてそんなある晩、闘蛇の、それも<牙>10頭全てが死ぬという事態が起こります。ソヨンはその責任を取って処刑されることになり、エリンはそれを助けようとして、逆に母に闘蛇の背に乗せられて逃げのびさせられることに。そして意識を失って倒れていたエリンを助けたのは、真王(ヨジェ)領の山間地法で蜂飼いをしていたジョウンでした。

アニメにもなりましたよね。でもアニメを見て、本を読もうと思った方も多いかなと思うんですが(図書館にもそういう人がいっぱいいたなあ)、私自身はアニメを見てもあまりそそられず... いや、元々あまりアニメは好きではないというのも大きいんですけど... まあ、当分読まないかな、なんて思ってた作品です。でもあの分厚いハードカバーが講談社文庫になると知って! いい機会かも、なんて思ってたら、タイミングよく背中を押していただいて! 無事読むことができました。
いやあ、面白かったーー。
「守り人」シリーズも「狐笛のかなた」も大好きだし、読めばきっと面白いんだろうなとは思ったんですけど、やっぱり面白かったです。(それなら、なんでさっさと読まないんだ、私)

「守り人」と同じく異世界ファンタジーなんですが、私の勝手なイメージ的には高句麗、百済、新羅辺りかな?(その辺り、勝手に言ってるだけであまり知らないので、突っ込まないで下さい)
エリンの母の闘蛇に関する教え、謎めいた霧の民、そしてこれから学んでいこうとする王獣のこと。それらの根底に同じ流れがあるのを感じつつ... まさしくエリンの書いた「獣について学ぶことは、きっと、自分が知りたいと思っていることに、つながっているはずである」ということに通じるんだろうなと思いつつ。人と獣との関係。本来、人と獣とはどういった関係であるべきなのか、そして飼いならされた獣の失ってしまったものと、獣本来の姿とは。さらには「操る者」ではなく「奏でる者」としての「奏者」という言葉にも興味を引かれつつ。
いや、一気に読んでしまいました。人間と獣とは違うと何度言われても、何度痛い目に遭っても、また獣を信頼してしまうエリン。その辺りが上橋菜穂子さんらしいなあと思いますね。痛い目に遭いながらも、傷つきながらも、相手を理解しよう、受け入れよう、としてしまう...。もちろん種が違えば考え方も違うし、なかなか上手くいくわけがないんですが、それでも希望は捨てなければ、いつか分かり合える一瞬がくるのかも。人と獣に限らず。

上橋菜穂子さんはこの2冊を4か月で書きあげられたのだそう。確かに、やや性急な展開で、登場人物たちも描き切れてなかったかもしれないな、とも思うんですが、でもそれ以上に、大きな流れや勢いを大切にして描かれた作品なんだなというのを感じますね。いや、見事でした。これで綺麗にまとまったと思ったので、続編が書かれたということに改めて驚いてしまいますが...。やっぱりこれは続きも読んでしまうんだろうな。でも、もうちょっとあとで。こちらをもう一度読み返して、消化しきってから読んだ方が良さそうです。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「獣の奏者」1・2 上橋菜穂子

+既読の上橋菜穂子作品の感想+
「虚空の旅人」「神の守り人 来訪編」「神の守り人 帰還編」「蒼路の旅人」上橋菜穂子
「天と地の守り人」1~3 上橋菜穂子
「流れ行く者 守り人短編集」上橋菜穂子
「バルサの食卓」上橋菜穂子・チーム北海道
Livreに「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」「狐笛のかなた」の感想があります)

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おつかいの帰り道に雨が急に激しく降り出して、ルウ子は慌てて近くの市立図書館に飛び込みます。ルウ子が買ったのは、おかあさんと妹のサラのためのプリンと、自分のための青いゼリー。まだ小さくて病気がちで、いつもお母さんを独り占めしているサラと同じものなんて、ルウ子は食べたくなかったのです。ルウ子はサラにいじわるをしてやるつもりで、道で見つけたカタツムリをポケットにしのばせていました。雨がやむのを待ちながら、図書館の中をのろのろと歩き回るルウ子。以前は寝る前のお話も大好きだったのに、今のルウ子は本も大嫌い。しかしその時、ポケットに入れていたはずのカタツムリが足元に落ち、拾おうとするとすごいスピードで逃げ出したのです。気づけばそこは見覚えのない巨大な本棚が並んだ場所。そしてルウ子はかたつむりに連れられて「雨ふる本屋」へ。

本屋に雨が降るなんて!と、その時点で既に衝撃的(笑)な作品。本には水が大敵じゃないですか! 雨の日は本を買わない、という方も結構いらっしゃるのでは? この題名だけで気になってしまう本好きさんも多いだろうなと思います。表紙絵もとっても可愛いし!(でも、絵の中の女の子の後ろの水色の部分が、滝のように流れる水だと思ってたのは内緒... 実際には本屋さんの壁でした・笑)
さて「雨ふる本屋」というのは古本屋。店主はドードー鳥のフルホンさんで、助手は妖精使いの舞々子さん、本を選んでくれるのは、妖精のシオリとセビョーシ。まあ私の場合、図書館とか本屋が出てくる時点ですっかり点数が甘くなってしまうし~。しかもいつも行けるとは限らない(はずの)状況が好み。しかもその古本屋に置かれてる本は普通の本じゃないんです。その本の成り立ちがまたユニーク~。そして最近どうも本がおかしい、と、本の問題をめぐってルウ子が冒険する物語と、ルウ子自身の心の問題とが二重写しにされてるのもいいんですが... うーん、でも期待したほどではなかったなあ。なんだか読んでるとずっと書き手である「大人」の存在が始終透けて見えてしまって、気になって仕方なくなってしまって...。多分ちょっとした言葉の選び方も大きいと思うんですけどね。物語としても、まだまだこなれてないのかな。本当はとっても可愛らしいお話のはずなんだけど、物語の背後にあるものが気になって仕方なくなってしまって、結局あまり楽しめませんでした。こんな風に思ってしまうのって、私が年を取ってしまったということなんでしょうかー。いやーん。(童心社)

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岩波少年文庫版の宮沢賢治3冊。今までいくつかの本を手に取ったことがありますが、岩波少年文庫で読むのは今回が初めて。3冊で童話が26編と詩が11編収められています。

今回改めて読んでみて特に印象に残ったのは、宮沢賢治の生前に唯一刊行された「注文の多い料理店」につけられている「序」。これ、素晴らしいですね。「わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます」...宮沢賢治にとって、生きるために必要なのは単なる食物の摂取ではなくて、自然から得る精神的な栄養がとても大きかったというのが、よく分かります。身体の維持のためには食物の摂取がどうしても必要ですけど、彼にとっては精神を生かすための栄養の方がずっと大切だったんでしょう。そして、そんな宮沢賢治の書いた童話は、実際に身の回りの自然から栄養を得て書かれた物語ばかり。序にも「これらのわたくしのおはなしは、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたのです」とあります。確かに空とか星とか風とか雪とか水とか、野山の動物とか、自然のものが沢山。もうほんと好きにならずにはいられないモチーフが満載なんですけど、でもそんなモチーフが使われているからといって、作品が大好きになるとは限らなくて...。素直に自然と一体化して、その素晴らしさを全身に感じて溶け合ってるからこそ、ですね。やっぱり宮沢賢治の感性って得がたいものだったんだなあ、なんて改めて感じてみたり。そしてこの序の最後の言葉は、「わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません」。たとえ読者が自然からほんとうの栄養を得られるような感性の持ち主でなかったとしても大丈夫なんですね。その作品を読むことによって、その栄養を得ることができるんですもの。まあ、それを自分の中でどう生かすかは、読者次第ではありますが...。
それにしても「イーハトーヴ」という言葉、いいなあ。「注文の多い料理店」には「イーハトーヴ童話集」という副題がつけられていて、エスペラント語の「岩手」のことなんですけど、これがまるで異界へ行くための呪文みたい。登場人物たちが岩手の方言で話していても、そこに描かれているのがごく普通の農村の情景ではあっても、この「イーハトーヴ」という言葉だけで簡単に異世界に連れて行ってもらえるんですもん。

特に好きな作品としては、「ふたごの星」と「やまなし」と「銀河鉄道の夜」かな。やっぱり「銀河鉄道の夜」は何度読んでも素敵。幻想的に美しくて、懐かしくて暖かくて、でもとっても切なくて。で、以前「宮澤賢治のレストラン」という本がとても楽しかったので、今回再読したかったのですが~。ちょっと手元には間に合わなかったので、そちらはまた日を改めて。(岩波少年文庫)


+既読の宮澤賢治作品の感想+
「宮澤賢治のレストラン」中野由貴 「銀河鉄道の夜」宮沢賢治
「注文の多い料理店」「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」宮沢賢治
「ざしき童子のはなし」「よだかの星」「風の又三郎」「水仙月の四日」宮沢賢治・伊勢英子

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お気に入りのバラ色のベレーをかぶり、口には大きなパイプ、そして手にはこうもりがさを持って雑誌社に出かけた絵描き。しかし確かに編集室のドアの脇に立てかけておいたはずのこうもりがさがなくなってしまい... という「水曜日のクルト」他、全6編の作品集。

大井三重子さん名義になってますが、これは実は仁木悦子さんのこと。仁木さんがミステリ作品で有名になる前に書いてらしたという童話作品をまとめた唯一の本。...というのを、迂闊にも全然知らずに読んだので! 解説を読んでびっくりーーー。そうだったのですかーーー。でもそう言われてみれば、童話も書いたって、どこかで読んだ気もする...。(大ボケ)
仁木さんの作品は、あまり沢山は読んでないんですけど、「猫は知っていた」なんて大好き! 明るく軽やかで、優しさがにじみ出てくるような作風が、とても素敵な作品。こちらの童話もやはり明るくて軽やかで、優しい作品群でした。どこか国籍不明な、別世界に1歩踏み出している感じも楽しくて。この表紙の絵も可愛いですよねえ。
大切な物を失くして絵描きが困っているのは分かるんだけど、「水曜日のクルト」のいたずらぼうやはやっぱり微笑ましくなってしまうし~、自分の過去を改めて直視させられてしまう「めもあある美術館」も、思い出の中のおばあちゃんの優しさや暖かさが伝わってくるような作品。「ある水たまりの一生」は、「しずくのぼうけん」のような可愛らしいお話だし、「ふしぎなひしゃくの話」はアンデルセンの童話にでも出てきそう。水たまりや靴屋のおじいさんの、他人の悪意に傷つけられながらも、影響されたりしない純粋な心が印象的。「血の色の雲」はとても哀しいお話なんですが、これは大井三重子さんの実体験に基づくものなのだそう。戦争とは、大切な人を守るために他の人を殺すこと。「ころさないで、死なないで」というリリの叫びが胸に痛いです。「ありとあらゆるもののびんづめ」も、素敵! 金物屋のご夫婦の決断は、実際にはなかなかできないものなのではないかと思います。素晴らしい。みんなの優しい心が回りまわって、彼のところにめぐってきたんですね~。という私が一番好きだったのが、この「ありとあらゆるもののびんづめ」なのでした。
そういえば、「ふしぎなひしゃくの話」に登場するひしゃくは「アピトロカプレヌムのひしゃく」と言う名前なんですけど、この名前には何か由来があるのでしょうか? なんだかいわくありげな名前で気になります。(偕成社文庫)

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この5年間、夏になると従兄弟の章くんの別荘で過ごす5人。中3の章くんを筆頭に、中2の恭と智明、中1のナスと小4のじゃがまる。別荘にいる間は章くんが全ての行動を仕切り、夜の恒例のクラシック・アワー。今年は、シューマンの「子供の情景」でした... という「子供は眠る」。
「ぼく」が初めて藤谷りえ子と知り合ったのは、中3の秋の球技大会の日。不眠症に悩んでいた「ぼく」は、今は使われていない音楽室からバッハの「ゴルドベルク変奏曲」が流れてくるのを耳にします... という「彼女のアリア」。
絹子先生にピアノを習っている奈緒と君江の前に現れたのは、フランス語を話す「サティのおじさん」。4人はレッスンの後にワルツを踊り、素敵な時間を過ごすようになるのですが... という「アーモンド入りチョコレートのワルツ」。
以上3編。

森絵都さんの本も随分追っかけてたのに、最近はとんと読まなくなってしまいました。その間に出たのは「ラン」「架空の球を追う」「君と一緒に生きよう」の3冊。これはやっぱり大人向けの作品なんでしょうか。やっぱりこの方の場合、児童書~YA辺りの作品が好きです、私。
ということで、この「アーモンド入りチョコレートのワルツ」もそんなYA向けの作品。6年前に読んで以来の再読です。なんで今手に取ったかといえば、最初の「子供は眠る」はシューマンの「子供の情景」をテーマに書かれた作品だから。でもって、今ちょうど「子供の情景」を通して弾けるようになったところだから。単純。(笑)

3編とも中学生が主人公となっている物語です。こういう作品の再読って、なんだか懐かしい人に再会したような気分になりますね。久々にばったり会った友達と話しこんでしまって、そうそうあの時あんなこともあったよね!って感じで。いつも自分が中心で物事を仕切らないと気が済まない「子供は眠る」の章くんは、小学校時代の同級生のSさんみたい。「彼女のアリア」の藤谷さんは、中学からずっと一緒だったMちゃん。そして「アーモンド入りチョコレートのワルツ」の君絵は...。
章くんも、あれからぐんと大人になったんでしょうね。あの頃はなんだか懸命にもがいてたものね。表面上は決してそうは見せなかったけど。なあんて。

「子供の情景」のCDはアシュケナージ、アルゲリッチ、アラウ、ケンプなどいくつか聴いてて、それぞれにいいなと思うんですが、私はアルゲリッチのが一番好きかなあ。(右上) 奔放で大胆な演奏という印象のアルゲリッチも、ここでは母親としての優しい愛情深い顔を見せてくれるよう。一緒に入ってるクライスレリアーナはいつものアルゲリッチらしい演奏で、これまた素敵です。
あ、でも「彼女のアリア」で藤谷さんがバッハのゴールドベルク変奏曲を弾いてるんですけど、中学生でこの曲を弾いちゃうって、一体どんな...!! 私は楽譜を見たことないんですけど、難易度としては最高レベルなんじゃないですかね? 末はピアニスト? 序曲のアリアなら、楽譜的にはそれほど難しくないかもしれないけど。いずれにせよ、私もいつかは弾いてみたい憧れの曲集です。でも平均律の4声ですら荷が重い私には...。というこの曲は、グレン・グールドの(左)が好き。
そんな難易度最高レベル(多分)に対して、サティの「アーモンド入りチョコレートのワルツ」の可愛いことったら。こちらは逆に中学生というよりも、小学生向きなような気もしますが。(笑)

文庫本の表紙が、いつの間にかピアノの鍵盤の写真に変わっていてびっくりです。確かにピアノの話ばかりなんですけど、あまりにクリアな写真なので、この内容にはちょっと強すぎるような気がしてしまうー。最初に読んだのが、いせひでこさんの表紙の単行本だったので余計に。ということで、私が持ってる文庫の表紙の画像を出してみました。(現在の表紙は、アマゾンのリンク先で見られます)(角川文庫)


+既読の森絵都作品の感想+
「いつかパラソルの下で」森絵都
「にんきもののひけつ」「にんきもののねがい」「にんきものをめざせ!」「にんきもののはつこい」森絵都
「あいうえおちゃん」「流れ星におねがい」森絵都
「ぼくだけのこと」森絵都
「いちばんめの願いごと」森絵都
「屋久島ジュウソウ」森絵都
「風に舞いあがるビニールシート」森絵都
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」森絵都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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とうとう創也の「第六の(シックスス)ゲーム」が始動することになり、内人は創也の家に招かれます。咄嗟に断る内人でしたが、堀越美晴も来ると聞いて態度を翻し...。内人が創也の家に行くのは今回が初めて。内人は創也のリクエスト通り、小学校時代にお年玉をためて買った「おにぎり王子の大冒険」のゲームソフトを持って、卓也の運転する車に乗って家に向かいます。

「都会のトム&ソーヤ」第6弾。「ぼくの家へおいで」ということで、今回は家の中でのサバイバルが中心。
今回も面白いんですが... でも前回の「嵐の山荘」状態の上下巻に比べると、やっぱり家の中とその近辺が舞台ということで、迫力不足を感じてしまうー。これ、続けて読んだからいけないのでしょうか。あ、でも例えば1巻の創也のアジトの話だってスケール的には似たようなものですよね。本来こっちのスケールの方が本当だからなあ。しかも1巻はものすごく!面白かったし。やっぱりサバイバルネタにも限界が、ということなのでしょうか。全体的にこじんまりとまとまってしまっているという印象でした。(講談社YA! ENTERTAINMENT)


+シリーズ既刊の感想+
「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ 乱!RUN!ラン!」2 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ いつになったら作戦(ミッション)終了?」3 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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栗井栄太が内人と創也に誘いをかけてきます。「IN 塀戸(INVADE)」が完成し、そのお披露目が次の三連休にN県の今は廃村となっている塀戸村で行われることになったのです。創也は卓也が付いて来ないように細工し、内人と2人で塀戸村へ。参加者は栗井栄太、塀戸村のただ1人の住人・水上亜久亜、ジャパンテレビの堀越隆文とその娘の美晴、80歳ぐらいの老人・金田昭之助、そして自称冒険家の森脇誠でした。

「都会のトム&ソーヤ」第5弾。副題は、「IN 塀戸(VADE)」。今回は久しぶりの長編。連作短編が続いて、4巻ではかなりトーンダウンしている印象があったのですが、今回は久々にパワー全開。
山の中でのサバイバル、暗号の解き方のような正統派の楽しみもあるんですが、ジャパン・テレビの堀越ディレクターの26人の部下はA(アー)からZ(ツェット)まで名前が付いていて、中でもコンピューターを専門に扱うのがI(イー)、B(ベー)、M(エム)の3人だとか、ジュリアスのコンピュータの名前が「春」さんだとか、「金銀パールプレゼント」、「バナナはおやつに入ります」なんかも、むしろ大人向けの小ネタですよね。ということでとても楽しく読めました。印象に残ったのは、創也の「ゲームは、のめりこんでプレイするほうが楽しいじゃないか」という言葉。これはゲーム以外のことにも通じますよね。何事でも、自分も積極的に参加する気持ちがなければ楽しさも半減。もちろん本を読むのも!
そして今回、内人と創也のお父さんが登場するオマケ付き。そしておまけのおまけの物語に登場する真田志穂というのは、もしや彼女なの...?(講談社YA! ENTERTAINMENT)


+シリーズ既刊の感想+
「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ 乱!RUN!ラン!」2 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ いつになったら作戦(ミッション)終了?」3 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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サクセス塾の事件から4ヶ月ほど経ち、受験勉強に本腰が入る3学期のある日のこと。謝恩会の実行委員長に任命されたレーチは謝恩会の会場探し中。無料で使えて多少の騒いでも大丈夫だという場所がなかなか見つからないのです。そんな時、2年の片桐弟が提案したのは、3学期が終われば取り壊される予定の旧校舎。取り壊されるのが決まっているだけにドンチャン騒ぎには最適なのではないかという話に、レーチはすっかりその気になり、亜衣・真衣・美衣と共に旧校舎へ。しかしその旧校舎には、40年前に「夢見」によって「夢喰い」が封印された開かずの教室があるのです...。

夢水清志郎シリーズ最終巻。15年書き続けたというこのシリーズも亜衣たちの中学卒業と同時にシリーズからも卒業となります。
卒業というのは、それぞれがそれぞれの選択をしなければならない時期。その選択が正しかったかどうかはすぐには分からないし、長い人生の中で、あの時選択を間違た、と思うこともあるのかも。でもその時その時で自分のできる精一杯の選択をしていれば、後悔することはないですよね。亜衣も真衣も美衣もレーチも、自分自身で決めた道を進んでいくからこそ、これから先、後悔なんかしないで真っ直ぐ進んでいけるのではないかと思います。そして今回、印象に残る言葉が色々とあったんですけど、一番印象に残ったのは亜衣と出版社の人の会話の場面。なんだかぐっときちゃいました。ほんとその通りだわ~。
謎解き部分は正直物足りなかったんですけど、シリーズ最終巻に相応しい素敵な物語。楽しいシリーズ物はいつまでも続いて欲しいと思ったりもするものですが、こういう風にきちんと区切りがついてみると、卒業するというのもいいものだなと思いますね。(実は「ハワイ幽霊城の謎」だけ未読なんだけど... 読まなくちゃ!)(講談社青い鳥文庫)


+シリーズ既刊の感想+
ブログにはこれ以前のシリーズ作品の感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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大晦日にユカがふと目覚めると、枕元に置いておいたクレヨンの箱がからっぽ。なんとクレヨンたちがカメレオンを囲んで会議をしていました。シルバー王妃の12の悪い癖を直さないと城には戻らないとゴールデン王が家出をしてしまったというのです... という「クレヨン王国の十二ヶ月」。そして学校の春休み、5年1組では岩戸山の自然公園で星座の観察が行われることになりノブオも参加。しかしノブオと右田先生はなぜか犬猿の仲で... という「クレヨン王国のパトロール隊長」。

なんとクレヨン王国シリーズは今まで読んだことがなくて、これが初めて。石堂藍さんの「ファンタジーブックガイド」に載ってたので、いずれは読もうと思ってたんですけど、ようやく読めました。
「クレヨン王国の十二ヶ月」は、シリーズの1作目。城を出てしまったゴールデン王を探すためにシルバー王妃と小学2年生のユカが12の町を旅する物語。これはこれでとても可愛いんですけど、やっぱり童話ですしね。散らかし癖、お寝坊、嘘つき、自慢屋、欲しがり癖、偏食、意地っ張り、げらげら笑いのすぐ怒り、けちんぼ、人のせいにする、疑い癖、お化粧3時間という12の悪い癖を直すという教訓話だし... 王様がいなくなると1年で世界の色が失われて人間も地球も滅びてしまうというのに、それでも家出してしまう王様というのがまた納得しづらいところ。シルバー王妃とユカが旅する12の町は12の月の町で、それぞれの町の色が決まってて、そういうのは本当はとってもそそる設定のはずなんですけど... 私にはちょっと可愛らしすぎて、小学校の頃に出会っていればもっと楽しめただろうになーって思ってしまいました。
でも「クレヨン王国のパトロール隊長」がすごく良かった! こちらは小学校5年生のノブオの成長物語です。現実の世界でも色々あって大変なノブオがクレヨン王国に来て、ここでもさらに大変な状況に巻き込まれてしまうというなかなか厳しい物語。心がもう限界まで来ちゃってるのに、そんなノブオに対してクレヨン王国は表面的になだめて解決するんじゃなくて、抜本的な荒療治をするんです。これがなかなかすごい。クレヨン王国のシリーズには作品が沢山あるけど、「ファンタジー・ブックガイド」にこのタイトルが挙げられてたのが分かるなあ。あとがきを読んでみると、この「パトロール隊長」と「クレヨン王国月のたまご」が、シリーズの中でも一番ファンレターが届く作品なんだそうです。納得。いずれ「月のたまご」も読んでみようっと。(講談社青い鳥文庫)

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その日メアリーがツクツクさんを見かけたのは、川沿いの桜並木の下。ツクツクさんは大きなザルをかかえて桜の花びらが地面に落ちる前にザルの中につかまえようとしていました... というお話に始まる、メアリーとお隣に住むツクツクさんのシリーズ4作目。

この本から時間の流れがランダムになるという予告通り、それぞれのお話の時系列順はバラバラ。ツクツクさんのメアリーへの呼びかけも変化するし、お話の中のちょっとした描写から、いつ頃の出来事なのか何となく分かるんですけどね。それにしても、相変わらずのほのぼのぶり~。やっぱりこのシリーズは可愛いです。この不思議さ加減がとっても居心地いいし。
今回一番楽しかったのは、夏に水琴窟を作るお話かな。暑い日に水琴窟の音を楽しむというだけでも素敵なのに、水羊羹に水菓子(西瓜)、水団扇、極めつけが魚洗。こういうのを読むと、日本の夏は五感で涼しさを堪能するものなんだなーって改めて思いますね。...お話の舞台は日本じゃないし、魚洗も日本の物ではないですが。ええと、漁洗っていうのはアレです、私も以前中華街でやってみたことがあるんですが、水をはった金属製のたらい(?)の取っ手を濡れた手でこすることによって、不思議な音と共に水面から水しぶきが上がるというもの。初めてやった私でも30cmぐらいあがったし、熟練してる人がやると、もっと上がります。
それから、春の色んなジャムを作ってしまう話も素敵だったな。こんなに色んなジャムが作れるとは~。桜の花びらのジャム、食べてみたい。色や香りが目の前に浮かんでくるようです。そういえば、コンデンスミルクの缶詰を鍋でことこと煮て、冷えてから缶を開けると茶色くて甘~いクリームになると聞いて、やってみたいなと思ったことがあるんだけど... まだ試したことがなかったな。
あと、虹は七色、とばかり思い込んでたんですけど、国や人によって6色とも5色とも... 2色だなんて言ってる場所もあるとはびっくり。虹の色の並び順を覚える言葉も、今回初めて知りました。「ナクヨ(794)うぐいす平安京」じゃないですけど、こんなのがあったんだ! これは覚えやすいですねー。と、ちょっと感動。 (GA文庫)


+既読の篠崎砂美作品の感想+
「お隣の魔法使い」1~3 篠崎砂美
「お隣の魔法使い 語らうは四季の詩」篠崎砂美

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山畑のネェやが山犬に襲われたという話を聞いてきたのは、タンダの妹のチナ。その山犬に青白い鬼火がまとわりついて、少し前に死んだオンザの顔に見えたらしいのです... という「浮き籾」他、全4編。

完結してしまった守り人シリーズの番外編。タンダ11歳、バルサ13歳の頃の物語です。この頃はまだバルサの養父のジグロが生きていて、2人は追っ手から逃れるために用心棒の仕事をしながら各地を転々としています。トロガイの家もその拠点の1つ。
4編のうち2編はタンダ視点の物語。タンダやその家族の生活ぶりを見ていると、古い時代の日本でもこういった暮らしをしていたんだろうなあって素直に思えてきますねえ。稲に虫がついた時の反応や稲刈り、収穫の祭りの様子なんかもそうなんですけど、目の薬を作るためにナヤの木肌を剥ぎ取る時の様子とか、食べ物が乏しい冬の最中に山の獣たちに食べ物を分ける「寒のふるまい」のことを読んでると、中沢新一氏のカイエ・ソバージュシリーズで読んだ、一神教や国家が誕生する前の時代の話を思い出しちゃう。そのものズバリ重なるというわけではないんだけど、まさにあそこに書かれていたような暮らしをしてたんだろうなと思えるのは、やっぱりそれだけ土台がしっかりと描かれてるということなんでしょう、きっと。
そしてあとの2編は、バルサ視点の物語。こちらではバルサとジグロが仕事をしてる酒場や隊商の旅が舞台となってるので、まるで雰囲気が違います。ススットという賭事が面白い~。このゲームの特徴がとても生かされている物語だったし、専業の賭事師を務めてるアズノという老女がとても印象に残ります。そして隊商の旅の方はちょっと痛い... でも「精霊の守り人」ではもう既に亡くなっているジグロが生きていて、その姿をバルサの視点から見られるのが嬉しいところ。もっと容赦ない厳しさ一点張りの人なのかと思い込んでいたんですけど、そうでもなかったんですね。いや、確かに厳しいですけど。バルサに対する愛情がしっかり感じられて良かったです。(偕成社)


+シリーズ既刊の感想+
「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虚空の旅人」「神の守り人 来訪編」「神の守り人 帰還編」「蒼路の旅人」上橋菜穂子
「天と地の守り人」1~3 上橋菜穂子
「流れ行く者 守り人短編集」上橋菜穂子
「バルサの食卓」上橋菜穂子・チーム北海道

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60年ぶりの満月のハロウィーンの晩。前回の満月のハロウィーンの晩の魔女の悪戯がひどかったため、今回子供たちは「お菓子をくれないといたずらするぞ!」のおふせまわりも早々に終わらせて家に入るように言われていました。しかし魔女のどんちゃん騒ぎに紛れ込んでみたいと考えたアリゼとエクレルは、魔女に扮装してホウキを持って、魔女の集まる星見丘へ。魔女が来ないうちに藪に隠れて待っていると、空は突然、ホウキに乗った魔女でいっぱいになります。ひとしきりゲームや競争をしてから地上に降り、焚き火をたいてお茶を入れ始めた魔女たち。それを見たアリゼは、藪に立てかけられたホウキを1本取って自分のホウキと取替え、「魔法入門」で覚えた呪文を唱えて空に舞い上がります。

先に読んだ「ティスの魔女読本」に出てきた魔女のティスとアリゼの出会いがこの本。空の上で困っていたアリゼを助けてくれたのがティスだったんです。でも、子供の頃に魔女のホウキで空を飛んでみたいと思ったことのある人は結構いるんじゃないかと思うんですが、こんな恐ろしい思いをするなんて想像してる人はほとんどいないと思いますねえ...。ここに登場する魔女たちの羽目の外し具合にもちょっとびっくり。物語に登場するような、いわゆる「良い魔女」「悪い魔女」とはまたちょっと違う「魔女」。これを読んでいると、本来の魔女ってこんな存在なのかもしれないなーなんて思えてきます。
そして魔女たちのハロウィーンパーティの後は、人間たちのハロウィーンパーティ。これは魔女のパーティとは全然違って、なんだかロマンティック。前後の本は読んでるので、おおー、実はこんな出来事があったのね!ってびっくりです。(河出書房新社)


+シリーズ既刊の感想+
「エルフさんの店」高柳佐知子
「ティスの魔女読本」高柳佐知子
「ハイウィロウ村スケッチブック」高柳佐知子
「アリゼの村の贈り物」高柳佐知子
「不思議の村のハロウィーン」高柳佐知子

+既読の高柳佐知子作品+
「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」高柳佐知子
「ケルトの国に妖精を探しに」高柳佐知子
「ナチュラル暮らしの手作り工房へ、ようこそ」高柳佐知子
「庭が仕事場」高柳佐知子

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夏休みの最後の3週間を、父と2人で海のそばの小さな町で家を借りて過ごすことになったと聞かされて驚くカズヤ。母がその間ずっと遠くで仕事なので、2人で東京にいても仕方がないというのです。カズヤは小学5年生。父は小説家で、母はデザイナー。そしてたどり着いた海辺の町は、海水浴場などではなく、小さな漁港があるだけの町。カズヤは早速、同じ小学5年生でミステリー好きのミツルと話すようになります。そのミツルがしてくれた秘密の話は、この町に住んでいた佐多緑子という大金持ちの老婦人の遺産にまつわる謎の話。彼女は亡くなる4日前に全財産を銀行からおろし、亡くなるまで一度も外出せず、訪ねてきた客もいなかったというのに、死後、そのお金は屋敷のどこにもなかったというのです。2人は早速佐多緑子の遺産はどこに消えたのか考え始めます。

ポプラ社にTEEN'S ENTERTAINMENTというYA向けのシリーズが出来ていたようですね。これはその第一回配本作品。
題名の「フリッツと満月の夜」の「フリッツ」は、表紙の絵にも描かれている猫のこと。満月の夜に一体何があるのかな~?なんて思って読んでいたんですけど... いや、確かにフリッツも満月の夜も一応重要ではあるんですけど... あんまり話の中心というわけではなかったんですね。むしろカズヤとミツルのひと夏の冒険物語という感じ。もしかして、元々はきっともうちょっと違う話になるはずだった? 書き直してるうちに路線が違う方向にズレちゃったの? って思っちゃう。このフリッツの存在こそが松尾さんらしいところになるはずだったんでしょうに、この程度じゃああんまり必然性が感じられない... せめてもう少し早く物語の前面に出てきていれば。
うーん、ダビデの星の使い方は面白かったんですけどねえ。私にはどうも全体的に物足りなかったです。残念(ポプラ社)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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信乃にアルバイトの話を持ってきたのは、継父の「村尾さん」。取引先の社長に、ある10歳のお嬢様が女子高校生限定の家庭教師を探しているという話を聞いてきたのです。無事にその子の家庭教師になれた時の謝礼は、かなりの高額。しかしお嬢様はなかなか気難しいらしく、これまで面接を受けに別荘まで行った高校生のほとんどが、その日のうちに帰されてしまっているというのです。信乃は再婚したての両親を2人きりにさせてあげる意味もあって、面接を受けに行くことを決めます。そして翌日早速その少女、阿久根芽理沙に会いに行くことに。

普通なら、我侭なお嬢様の家庭教師になった女子高生が別荘地で連続殺人事件に巻き込まれて... というミステリになるはずのところなんですけど、この作品を書いてるのは松尾由美さん。そんな一筋縄でいくはずがありません。なんせ人くい鬼モーリスが殺人事件に絡んできちゃうんですから。
この「人くい鬼モーリス」は、実際には何なのかははっきりと分からないものの、この土地が別荘地になる前、普通の村だった頃は時々目撃されていた存在。芽理沙のお祖父さんもお母さんも、子供の頃に何度も見ています。お祖父さんの観察ノートによると、モーリスは自ら人を殺すことはしないものの、新鮮な人間の死体が大好物。死体を前にお祈りでも捧げるように頭を少し垂れていると、死体が光を放ち始め、数秒で死体が消えてなくなってしまうといいます。お祖父さんの考えでは、モーリスが食べてるのは生物の残留思念で、死体が消えてなくなるのは、その副作用のようなもの。そして最大のポイントは、モーリスを見ることができるのは高校生ぐらいまでの子供だけだということ。
この別荘地で起きる殺人事件では、いずれも死体が消滅してしまいます。読者や主人公たちにすれば、モーリスが食べてしまったんだろうというところなんですが、実際に推理する大人たちはそんな存在自体全然知らないし、人くい鬼の噂を聞いたとしても信じられるわけもなく...。そもそも死体と一緒に犯人の手がかりとなりそうなものも消えてしまってるだけでも問題なのに、死体を移動させられる腕力というのが犯人の条件になってしまうんだからヤヤコシイ。

読んでいても、モーリスの姿があまり鮮明に浮かんでこなかったのがちょっと残念でした。この作品は、ある怪獣のお話のオマージュになってるので、それが分かればそちらの絵が出てくるんですけど、最初はそんなこと分からないですしね。それに終盤、ちょっと唐突だなーとか、ツメが甘いなーと思ってしまう部分も... 本当ならもっと強烈に面白い作品になったんじゃないかって思ってしまうー。それでもモーリスの存在というファンタジックな存在が現実的なミステリと上手く絡み合っていて、これはこれでなかなか面白かったです。(理論社)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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花の好きなスピカさんに庭のことや花のことを教わったり、風屋のロジャさんに風の集め方を教えてもらったり。鉱石好きのスピネルさんや未来の博物学者のフィルさんと鉱物採取をしに行ったり、フィルさんの自然現象の観察ノートを見せてもらったり。アリゼがハイウィロウ村の人々の生活の中で、面白いと思ったり素敵だなと思ったことを紹介していく本。

先日読んだ「ハイウィロウ村スケッチブック」に続く本。アリゼがスピカさんに教わるのは種まきの仕方とか、花の冠やリース、タッジー・マッジーの作り方などなど。アリゼが年下の友達・ミンちゃんと村のあちこちにフーセンカズラの種をまいて歩くのが楽しいです。野原や森でも、色んな人たちに色んなことを習います。コックス・オレンジ・ピピンという早生品種のりんごの保存の仕方、寝袋での野宿の仕方、ロープ結び、木の枝の小屋の作り方や焚火の仕方、かまどの作り方などなど。あとは、村の人々のお得意の食べ物の作り方も。いちごゼリーやゼリー・ロール、クランペット、マフィン、眠気覚ましのココア、眠れない夜のためのミルク酒などなど。
でも一番楽しかったのは、ロジャさんに風の収集の仕方を習ったり、雲研究家のアスゴールさんに教えてもらいながら雲の上を歩いたりという辺りかな。食べ物系も美味しそうだし、花で作る小物なんかも素敵ではあるんですけど... 高柳佐知子さんの普段の生活が透けて見えてくるようで。こういうのはどちらかといえばエッセイ本向きなんじゃないかなあ。でも風の収集や雲の上の歩き方といった辺りは、ハイウィロウ村ならではのファンタジックな部分。こういう本だからこそ、思いっきり夢を見させて欲しいのです。(河出書房新社)


+シリーズ既刊の感想+
「エルフさんの店」高柳佐知子
「ティスの魔女読本」高柳佐知子
「ハイウィロウ村スケッチブック」高柳佐知子
「アリゼの村の贈り物」高柳佐知子
「不思議の村のハロウィーン」高柳佐知子

+既読の高柳佐知子作品+
「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」高柳佐知子
「ケルトの国に妖精を探しに」高柳佐知子
「ナチュラル暮らしの手作り工房へ、ようこそ」高柳佐知子
「庭が仕事場」高柳佐知子

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以前読んだ「エルフさんの店」や「ティスの魔女読本」に繋がるような本。「エルフさんの店」に出てきたお店がこちらにも登場するし、語り手となるアリゼは「ティスの魔女読本」にも出てくる女の子。市内の図書館に蔵書がなくて残念... と思ってたらお隣の市にはあって、そちらから借りてもらいました。
風屋のロジャさんのお店に行きたくなるし~。この「ロジャ」さんというのは、明らかにアーサー・ランサムのシリーズの登場人物から取った名前。「ロジャー」じゃなくて「ロジャ」なんですもん。あの4人きょうだいの末っ子のロジャが(下に赤ちゃんが生まれたから、末っ子じゃなくなったんだけど)、こんな素敵な青年になってしまっていたというのがなんだか不思議。(注・同一人物ではありません) あとジャム作りの名人フランソワーズさんのジャム作りを見てると、自分でも作りたくなってきちゃう。(ここで、どうもフランボワーズと読んでしまうんですよねー) 村のあちこちに杏やスグリ、ラズベリイ、クワの実、野イチゴ、グミなど沢山の木の実が美味しそうに熟してるなんていうのも、羨ましいな。読書人のトゥリードさんの本の分類も素敵。「空や星の本は天窓のある部屋、花や木の本はおもてにすぐでられる部屋、ファンタジーは重たいドアの窓の小さな部屋、キッチンにはお料理の本」... 私はアリゼと同じく屋根裏部屋が好きかも。ここには古い本が棚や箱に入りきらずに積み上げられてられているんですって。
これを読めば、「アリゼの村の贈り物」も「不思議の村のハロウィーン」も読める!と思ったら、「不思議の村~」の方はこの本と同じく市内の図書館の蔵書にはなかったのでした。また探してもらわなくっちゃ。(河出書房新社)


+シリーズ既刊の感想+
「エルフさんの店」高柳佐知子
「ティスの魔女読本」高柳佐知子
「ハイウィロウ村スケッチブック」高柳佐知子
「アリゼの村の贈り物」高柳佐知子
「不思議の村のハロウィーン」高柳佐知子

+既読の高柳佐知子作品+
「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」高柳佐知子
「ケルトの国に妖精を探しに」高柳佐知子
「ナチュラル暮らしの手作り工房へ、ようこそ」高柳佐知子
「庭が仕事場」高柳佐知子

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街の美術学校に通い始めたハイウィロウ村のアリゼが出会ったのは、魔女のティス。何年か前のハロウィーンの夜に魔女のホウキに乗った時、困っていたアリゼを助けてくれたのがティスだったのです。再会を喜ぶ2人。そしてアリゼが人の世界のことを教える代わりに、ティスが魔女の世界のことを教えることに。

魔女のティスとの出会いの物語は多分「不思議の村のハロウィーン」なんじゃないかなと思うんですが、こちらは未読。この「ティスの魔女読本」は大丈夫だけど、ハイウィロウ村の物語はなるべく順番通りに読んだ方がいいと教えてもらったので、まだ図書館でも借りてないんです。なんせ最初の「ハイウィロウ村スケッチブック」が市内の図書館にはないもので...。どの本もすでに絶版ですし。
地球じゃなくってラジムフォウカという青い星に住んでいる魔女たちの暮らしぶりが、ティスの口から紹介されていきます。魔女の3着の服の話、3足の靴の話、帽子の話、猫の話、ホウキの話、学校の話、食べ物の話... ラジムフォウカにはとても高いダイアモンドの山があって、ここには時々他の星が衝突するので、ティスたちはその時飛び散ったかけらを拾い集めて地球に売りに行ったり。
私が一番気に入ったのは、図書館の話。

図書館は誰でも入れるの。
机と椅子が部屋の中央のラセン階段に
置いてあって、壁は全部本なの。
蔵書は学問の本、魔法の本、
あとは、地球上のすべての国の詩集よ。

壁が全部本だなんて! 外国の映画で時々登場するような、壁一面に本棚になっていて上の方の本を取る時ははしごを使うような書斎にも憧れてしまうのに、こんな図書館があったらそりゃあもう...! そしてなんで詩集かといえば、みんな詩が大好きで、沢山の詩を暗誦するのだそうです。魔女は言葉を美しいものだと思うし、ティスも「距離」とか「地平線」という言葉だけでも感動してしまうのだそう。
高柳佐知子さんの柔らかい絵も詩のような言葉もとても素敵。子供の頃から魔女の出てくるような話は大好きだったので、私も色々想像して楽しんでいましたが、高柳さんの魔女の世界はこんな感じなんですね。楽しーい。やっぱりこのシリーズのほかの作品も読みたいなあ!(河出書房新社)


+シリーズ既刊の感想+
「エルフさんの店」高柳佐知子
「ティスの魔女読本」高柳佐知子
「ハイウィロウ村スケッチブック」高柳佐知子
「アリゼの村の贈り物」高柳佐知子
「不思議の村のハロウィーン」高柳佐知子

+既読の高柳佐知子作品+
「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」高柳佐知子
「ケルトの国に妖精を探しに」高柳佐知子
「ナチュラル暮らしの手作り工房へ、ようこそ」高柳佐知子
「庭が仕事場」高柳佐知子

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何があるのか行ってみないと分からないし、欲しいものが見つかっても手に入るとは限らないエルフさんの「気まぐれ屋」。そんなお店をはじめとする42のファンタジックなお店の数々が、イラストと文章で紹介された本。「エルフさんの店」「トウィンクルさんの店」が合わせて1冊の本として復刊されました。

読んでみたいなと思っていた本がタイミング良く復刊されて大喜び。早速手に入れて読んでみると、これがもうほんと好みのツボど真ん中。あとがきに「私は、ずいぶん前から、古めかしいごたごたした店がすきでした。」「本を読んでいてもそういう「お店」がでてくると、いっしょうけんめい想像していました」とあるんですが、私もそういうお店が子供の頃から大好きでした! ごたごたと色んなものが置いてあって、どれも心惹かれるんだけど、その中に1つ自分がずっと前から欲しいと思っていたものがあって... しかもそのお店をやってる人が、どことなく不思議な雰囲気でとても魅力的。でもそのお店はいつも行きたい時に行けるとは限らない、なーんてお店。...となるとまるっきり、ヒルダ・ルイスの「とぶ船」なんですが。多分、本の中のお店を意識するようになったのは、この作品なのではないかと思います。北欧神話のオーディンを思わせるおじいさんのやってた店にピーターが行けたのはたったの2回。でもそこでピーターは後に「スキードブラドニール」だと分かることになる小さな船を手に入れるんですよね。そしてその後、柏葉幸子さんの「霧のむこうのふしぎな町」を読んで、ますます不思議なお店好きに拍車がかかったりなんかして。

この本に紹介されているお店は、ほんと行ってみたくなってしまうようなものばかり。本当に本の中に入り込みたくなってしまうー。見たい夢の絵を描いてくれるエアリーさんの店「ゆめ屋」、海のそばにあって、雨の日や霧がかった日はまるで水の中にいるように見える「かけら屋」。ここには何かわからないけれど、きらきら光る「かけら」が無造作に置かれています。そして世界中の風を集めた「風屋」、忘れかかっていた「時」に入り込んでしまえる「時屋」、月夜の間だけ走る帆船「カナリヤ号」がある「船屋」、物語に出てくる場所の地図を沢山置いている「地図屋」...

そんなお店のことを読んでいるだけでもワクワクしてしまうんですが、そういったお店の中に高柳佐知子さんがお好きな本のネタもさりげなーくちらりちらりと顔を出していて、それを見つけるのがまた楽しいのです。メアリー・ポピンズ、床下の小人たち、不思議の国のアリス、くまのプーさん、ツバメ号とアマゾン号、赤毛のアン、大草原の小さな家、若草物語など、私も子供の頃に夢中になって読み耽っていた本ばかり。でも私が分かる範囲でもいっぱいあるんだけど、気がついてないものもまだまだありそう。こんな本がずっと絶版だったなんて~。復刊されてほんと嬉しいです。そして高柳佐知子さんの「ハイウィロウ村スケッチブック」にもそういったお店が登場するみたいだし、続編で「アリゼの村の贈り物」というのもあるので、こちらもこの機会にぜひ復刊して欲しいものです。読みたい!(亜紀書房)


+シリーズ既刊の感想+
「エルフさんの店」高柳佐知子
「ティスの魔女読本」高柳佐知子
「ハイウィロウ村スケッチブック」高柳佐知子
「アリゼの村の贈り物」高柳佐知子
「不思議の村のハロウィーン」高柳佐知子

+既読の高柳佐知子作品+
「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」高柳佐知子
「ケルトの国に妖精を探しに」高柳佐知子
「ナチュラル暮らしの手作り工房へ、ようこそ」高柳佐知子
「庭が仕事場」高柳佐知子

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メアリー・フィールズが久々の家族旅行から帰ってみると、隣の空き地にはいつの間にか真新しい家が。引っ越してきたのは、トゥックトゥイックという細身長身の若い青年でした。丈の短い変わったローブを着た彼は、外国の風習を真似てみたと「引越しパスタ」を持ってメアリーの家を訪れます。そして翌日、ママ特製のサンドイッチを持たされたメアリーは、引越しの手伝いをしにお隣の家へ。しかし片付けも一通り終わり、ウッドデッキで美味しい紅茶をご馳走になりながらサンドイッチを食べていると、なんとティーポットから電話の呼び出し音が...。

風待屋のsa-ki さんに教えて頂いた本です。トゥックトゥイックさんという青年(通称ツクツクさん)と、お隣の家に住むメアリーのシリーズ。
いやあ、可愛かった! 普通ならあり得ないような不思議な出来事はいっぱいあるし、魔法の匂いはぷんぷんしてるんだけど、決定的な魔法の場面はないんですね。ツクツクさんが魔法を使ったという証拠はどこにもないし、問い詰めようにも、メアリーはいつもうまくかわされてしまうし。この辺り、ちょっと「メアリー・ポピンズ」を思い出します。ジェインやマイケルも、あんなに不思議な時間をメアリー・ポピンズと共有してても、そのことをメアリー・ポピンズが後から認めることなんて絶対ないですし。とは言っても、ツクツクさんはあんな不機嫌なタイプじゃないし、いつもしどろもどろと自分のせいじゃないと主張してるんですが。(笑) 本人が特別魔法を使わなくても、面白い知り合いがいっぱいいるというところも、そういえば「メアリー・ポピンズ」と同じですね。でも最初こそ、そういった不思議な出来事がただの偶然なのか本当に魔法か突き止めようと意気込むメアリーなんですが、そのうちにそういった出来事を自然と受け入れるようになるのが、またいいんですよね~。
そして「メアリー・ポピンズ」以上に色濃く感じられたのが、ルイス・キャロルのアリスの世界。こちらはもう、白ウサギとかチェスの駒とか、アリスを連想しない方が無理というぐらいなんですが、それもそのはず、篠崎砂美さんの原点はあのアリスの世界なんだそうです。道理で! でもアリスに寄りかかりすぎてるわけでもなく、丁度いい距離感。

3冊で3年間の話になってるんですけど、ツクツクさんのメアリーに対する呼び方なんかで、2人の距離が少しずつ近くなってるのが分かるというのもいい感じ。3冊とも一応四季ごとの4章に分かれてるんですが、4つの連作短編集というより、もっと小さなエピソードがいっぱい集まってできてる感じです。sa-ki さんが3冊目の感想で、春の風物詩の「渡り猫」とか、春を数える単位にやられたと書いてらして、それで興味をそそられたんですが、これがもう本当に可愛くて! ノックアウトされてしまいました。午後の明るい日差しの中で美味しい紅茶の香りと一緒に楽しみたい、ほんのり和める暖かい作品。4巻も早く出ないかな~。(GA文庫)

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修道院学校の寄宿舎に暮らすニコルは、寄宿舎と授業が行われる塔を往復する毎日。毎朝礼拝を受け朝食を食べると、自転車で霧の村を通り抜けて塔へと向かうのです。その日は、ニコルたち12人の生徒たちが初めて尖塔へと上がる日でした。最上階に住む院長先生に刺繍を教わるのです。修道院学校の主要教科は刺繍。生徒が刺繍針を持たない日は一日もなく、院長先生の授業を受けられるのは12人の選ばれた生徒だけ。初めて塔の最上階に上がったニコルたちは、早速院長先生の刺繍に驚かされることになります。そして「地球のマント」と呼ばれる黒い布に刺繍をすることに。

こみねゆらさんの「仏蘭西おもちゃ箱」を読んだ時にいまむるさんに教えて頂いた本です。
とてもミステリアスなファンタジー。ものすご~く不思議な雰囲気が漂っていて、こういった情景を日本人作家の作品に見るのは珍しいかも? 読んでいると情景が広がってくるし、自転車の音や小鳥の声が聞こえてくるような気がしてくるほど。うわあ、これ好き! こみねゆらさんの挿絵も素敵だったし、そもそもこの作品はレメディオス・バロというスペインの画家の3枚の作品が元になってできた物語のようなんですね。早速検索してみたら、そのレメディオス・バロの絵もすごく素敵で~。こみねゆらさんの挿絵とも調和してるし、その3枚の絵を見ることによって世界がさらに広がるような気がしました。肝心の物語の最後の最後で少し語り足りない感じもあって、もっと色々なことを明かして欲しかったというのもあったんですけどね。でもすごく好きな雰囲気だし、とても面白かったです。小森香折さんの作品、もっと読んでみたいなあ。と、小森香折さんの既刊を並べてみましたが...

    

「うしろの正面」の佐竹美保さんの表紙は素敵だし、「さくら、ひかる。」も気になりますが、「ニコルの塔」ほどの雰囲気の作品はなさそうかな?(BL出版)


+既読のこみねゆら関連作品の感想+
「妖精王の月」「歌う石」「ドルイドの歌」O.R.メリング
「夏の王」「光をはこぶ娘」O.R.メリング
「夢の書」上下 O.R.メリング
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便 」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子
「仏蘭西おもちゃ箱」こみねゆら
「ニコルの塔」小森香折

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2月ももうすぐ終わりだというのに、真冬のように寒い日。勤めていた旅行会社をやめてきたばかりの「わたし」が見たのは、1枚のちらし。それは骨董通りにあるシャーリマールという古い絨毯の専門店が、春にインドへの買い付けに行く人材を募集しているという知らせでした。数週間前にも、ショーウインドーに飾られた高価な絨毯に引き寄せられるような思いをしたばかりの「わたし」は、早速店を訪ねることに。店の中は壁にかけられた絨毯でまるで庭園のよう。出てきた白いターバンを巻いた老人は、これらの絨毯は全てインドのカシミールで織られたものだと言い、インドで若草の中にひなげしを織り込んだ春の絨毯を探してきて欲しいのだと説明します。

こみねゆらさんの絵に惹かれて、何の気なしに借りてきた本なんですけど、なんと絨毯の話だったとは! 最近続けざまに読んでるトルコ絨毯ではなくて、こちらの絨毯はインドのものなんですけどね。それでもちょっと運命を感じてみたりして。(笑)
「わたし」が老人に頼まれてインドに探しに行ったのは3つ。若草の中にひなげしを織り込んだ絨毯と、ジャイプールの壷と、アグラの宝石箱。たった1週間の旅行で全てを探さなくちゃいけないので、全てが順調で、あんまり都合が良すぎるともいえるんですけど... それに若干あっさりしすぎているような気もするんですけど... でもそれがまた運命的でもあり、夢物語のようでもあり、この作品のいいところなのかも。3つの品物を見つけた時に、それぞれを持っていた人が語る物語もいいんですよねえ。とても美しいし幻想的。YA寄りの児童書として書かれているようなんですが、とても素敵な話なので、もっと大人向けにしっかりと書かれていても良かったのではないかと思ってしまうほどです。(講談社)


+既読の茂市久美子作品の感想+
「つるばら村のパン屋さん」「つるばら村の三日月屋さん」「つるばら村のくるみさん」茂市久美子
「つるばら村の家具屋さん」「つるばら村のはちみつ屋さん」「つるばら村の理容師さん」茂市久美子
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子

+既読のこみねゆら関連作品の感想+
「妖精王の月」「歌う石」「ドルイドの歌」O.R.メリング
「夏の王」「光をはこぶ娘」O.R.メリング
「夢の書」上下 O.R.メリング
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便 」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子
「仏蘭西おもちゃ箱」こみねゆら

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つるばら村のシリーズはこれまでに読んだ6冊だけなんですけど、茂市久美子さんの本には「○○村の△△さん」というタイトルが多くって、しかも「ゆうすげ村」といえばつるばら村のお隣の村なので、どこからどこまで関係してるのか分からなくて結局全部借りてしまいました。でもどうやら全然関係なかったみたい。ゆうすげ村の話にもつるばら村のことは全然出てこなかったし、他の3冊も同様。「にこりん村のふしぎな郵便」は、つるばら村シリーズよりも先に書かれてるし、他の3冊もつるばら村の1冊目と2冊目が書かれる間に書かれているので、まだつるばら村の話がシリーズになるなんて全然思ってなかったのかもしれないけど.、なんか勿体ないなー。
この中で一番好きだったのは、こみねゆらさんが挿絵を描いてらっしゃる「こもれび村のあんぺい先生」。これは、都会の大学病院に勤めていたあんぺい先生が、過疎化でお医者さんがいなくなってしまった「こもれび村」のお医者さんになりに行くという物語。絵も綺麗だし、つるばら村の最初の3冊に一番雰囲気が近くて好きでした。「にこりん村」と「トチノキ村」はぐっと対象年齢が下がる感じだし、「ゆうすげ村」はまあいいんだけど、つるばら村の後半3冊と同じような感じ。もちろん元々児童書なので、そんなところに文句を言っても仕方ないんですが(笑)、つるばら村の最初の3冊は大人が読んでも楽しいファンタジーだと思うので、どうしてもそういうのを期待しちゃうんですよね。(あかね書房・ポプラ社・あすなろ書房・講談社)


+既読の茂市久美子作品の感想+
「つるばら村のパン屋さん」「つるばら村の三日月屋さん」「つるばら村のくるみさん」茂市久美子
「つるばら村の家具屋さん」「つるばら村のはちみつ屋さん」「つるばら村の理容師さん」茂市久美子
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子

+既読のこみねゆら関連作品の感想+
「妖精王の月」「歌う石」「ドルイドの歌」O.R.メリング
「夏の王」「光をはこぶ娘」O.R.メリング
「夢の書」上下 O.R.メリング
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便 」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子
「仏蘭西おもちゃ箱」こみねゆら

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昨日と同じくつるばら村のシリーズなんだけど、こちらの主人公は、それぞれ青木家具店の林太郎さん一家と、養蜂家のナオシさんと、理容店の「このは」さん。同じ村の話だというのに、くるみさんはほとんど登場しなくて、かなり残念。くるみさんが登場しないので、当然美味しそうなパンの香りもなし。挿絵も中村悦子さんから柿田ゆかりさんという方に代わっていました。こちらの方の絵も可愛いんだけど、なんだかぐっと対象年齢が下がったような気がしてしまうー。それぞれに不思議なことが起きたり、美味しそうな場面があったりするんですけどね。(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「つるばら村のパン屋さん」「つるばら村の三日月屋さん」「つるばら村のくるみさん」茂市久美子
「つるばら村の家具屋さん」「つるばら村のはちみつ屋さん」「つるばら村の理容師さん」茂市久美子

+既読の茂市久美子作品の感想+
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子

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三日月屋は、つるばら村でただ1つのパン屋さん。宅配専門で、まだお店はないのですが、注文を受けるとパン職人のくるみさんがパンを焼いて、どこへでも届けます。元々町のパン屋さんで働いていたくるみさんは、2月もそろそろ終わる頃におばあさんの家だった古い農家に引っ越して来て、中古のオーブンと調理用の大きなテーブルを入れて試作を繰り返し、春になった頃にようやく「三日月屋」を開いたのです。しかし沢山の注文があったのは、最初の1週間だけ。しばらく経つと、お店の存在はまるで忘れられてしまったかのようになり... という「つるばら村のパン屋さん」とその続編2作。

つるばら村のシリーズの最初の3冊。どれもパン屋の三日月屋のくるみさんが主人公です。以前にも何冊か読んだことがあるんですけど、どれを読んだのか分からなくなってしまって(汗)、結局全部読み返すことに...。
「つるばら村のパン屋さん」ではまだお店を持ってないくるみさんですが、「つるばら村の三日月屋さん」では駅前に赤い屋根の小さなお店をオープン。そして「つるばら村のくるみさん」では、なんとライバルと恋のお相手が登場?という展開。くるみさんの恋には、正直あまり興味がないのだけど(あれれ)、このシリーズ、とにかく美味しそうなんです。読んでいるだけで、おなかがすいてしまうし、無性にパンが食べたくなってしまう~。お客さんも人間だけじゃないんですよね。たとえばクマの注文は、生地にタンポポのはちみつを入れることと、生地をこねたり寝かせたりする時に蓄音機でレコードをかけておくこと。そのほかにも、十五夜の月の光を入れて欲しいとかいうのもあったし...。材料を持参して、これを入れたパンを焼いて欲しいという注文も多いですね。時には、パンの香りに誘われて遥か彼方の空の上からのお客さまもあったりして。でも焼きたてのパンのあの香りを思うと、そういうこともあるかもしれないなあ、なんて思っちゃう。中村悦子さんの挿絵もとっても柔らかい優しい雰囲気で素敵です。(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「つるばら村のパン屋さん」「つるばら村の三日月屋さん」「つるばら村のくるみさん」茂市久美子
「つるばら村の家具屋さん」「つるばら村のはちみつ屋さん」「つるばら村の理容師さん」茂市久美子

+既読の茂市久美子作品の感想+
「こもれび村のあんぺい先生」「にこりん村のふしぎな郵便」「トチノキ村の雑貨屋さん」「ゆうすげ村の小さな旅館」茂市久美子
「風の誘い」茂市久美子

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1542年。父のカワと一緒に羊を連れて山の上の草原に来ていた7歳のネフィが出会ったのは、バロという男。人に追われて3日3晩飲まず食わずで歩いてきたというバロは、食料と水をもらったお礼に、遥か西にあるオスマンの国の都イスタンブルの話を物語ります。それは、スルタン・スレイマンがぞっこん惚れ込んで1年前に正式な妃にしたフッレムが宮廷の新しいハレムの庭に青いチューリップを欲しがっているという話。そして何年も青いチューリップの研究をし続けているアーデム教授の話。青いチューリップは都では幻の花とされていました。しかし、カワやネフィの来るこの山では咲いているのです。突然行ってもスルタンには会ってもらえないと考えたカワとネフィは、青いチューリップの球根を持ってアーデム教授に会いに行くことに。

トルコに造詣の深い新藤悦子さん初の児童書という作品。読んでみると夢枕獏さんのシナン(感想)とかなり時代的に重なっててびっくり。背景は16世紀のスレイマン1世の時代。シナンはもう既に建築家頭となっていて、アヤソフィアを凌ぐモスクを建築させようとしていた頃の話です。まあ、この時代がトルコにとって黄金時代だから当たり前といえば当たり前なんでしょうけどねー。それにスレイマン1世もシナンも名前しか登場しないんですけどね。あ、でも、「青いチューリップ、永遠に」の方にはスレイマン妃のロクセラーヌが登場していました。(この作品ではフッレム妃という名前) そしてイブラヒム大宰相とのエピソードも。

その後のヨーロッパでのチューリップ狂時代を予感させるようなストーリーを下敷きに、都に出てきた羊飼いの少年・ネフィの成長や、絵師に憧れるアーデム教授の娘・ラーレの話などが展開。面白かったんだけど、描きたいことがちょっと多すぎたかも、という印象も...。これだけ詰め込んだにしてはよく整理されていると言えるんでしょうけど、もうちょっと絵のことに焦点絞っても良かった気もします。絵師頭の一番弟子・メフメットの葛藤とか、もっとじっくりと読みたかったし。でもこの辺りの話は本当に興味深いです。当時のトルコでは写実的な絵は基本的に禁止されていて、肖像画を描くこともできないし、花の絵を描くにもいちいち文様化しなくちゃいけないというのがあるんですが、見たままを描くのが好きなラーレは、それがどうしても納得できないんです。で、宮廷の絵師頭をしている祖父に尋ねるんですね。その時の答が「文様にだって生命(いのち)がある。目に映るものを、一度殺して、新たな生命を吹き込む、それが文様というものじゃ」という言葉。これがとっても印象的でした。
そして「青いチューリップ、永遠に」は、それから1年後の話。こちらの方が新藤悦子さんの肩からも力が抜けたのか、話の中心がはっきりしていて読みやすいです。波乱万丈という意味では少し控えめになってるし、1作で勝負という感じだった前作に比べて、良くも悪くもシリーズ物になっちゃってるんですけどね。中心となっているのは、相変わらず絵師に憧れているラーレと、印刷された本を初めて目にして、宝石のような本よりも、人々が手に取りやすい薬草帳を作りたいと考えたネフィが中心。ラーレは描いた絵が認められて、女絵師としてちやほやされるようになるんですが、そこで気づかされるのは、「生きている」ことと「生かされている」ことの違い。籠の中の鳥よりも空を飛ぶ鳥の方が、のびのびと歌うということ。いくら華やかで美しい世界だろうと、閉ざされた世界にいるよりも外の自由な空気の方が大切だということ。となると、ラーレを巡る青年たちの中では、型破りなネフィがいかにも魅力的に映るわけで...。ライバルのメフメットにももう少し見せ場を作ってあげて欲しいなー。(講談社)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

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「窓のそばで」は、ルイコという小学生の女の子が主人公の連作短編集。「星占師のいた街」は、12の月それぞれのスケッチ「12のオルゴール」と、ごみごみした街中の古いレンガ造りのビルのてっぺんにあるみすぼらしい箱舟に、猫と一緒に住んでいた年寄りのノアの物語「ノアの箱舟」、古いアパートの前のぽっかりとした空き地が気に入っていたのに、そこに突然建ったのはお洒落な豪華マンションで... という「ポリーさんのおうむ」の3編。

どちらもほんのりと不思議な雰囲気が漂うファンタジーの物語集。「窓のそばで」も可愛らしくて良かったんだけど、こちらはちょっと対象年齢が低かったかな... 「星占師のいた街」の方が断然楽しめました。目の前に鮮やかな情景が広がるのは、竹下文子さんの他の作品と同様で、今回もとても綺麗です。「12のオルゴール」では、季節折々の情景が広がるし、「ノアの箱舟」では、ビルの上に箱舟があって老人と猫が住んでいるというのもさることながら、最後にそれが深い水の底に沈んだ街から船出する場面が、とても素敵。このノアのおじいさんが占い師をして暮らしてるので、これが表題作ということですねー。そしてこの本の書影が出ないのがとても残念なんですが、表紙も挿絵も牧野鈴子さんが描いてらして、これがまたとても雰囲気に合っていて素敵なんです。(偕成社)


+既読の竹下文子作品の感想+
「風町通信」竹下文子
「木苺通信」竹下文子
「星とトランペット」竹下文子
「窓のそばで」「星占師のいた街」竹下文子
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ

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ずっと旅から旅へという生活の中で絵を描いてきたのに、ある時、何のへんてつもない窓につかまってしまい、パリのアパルトマンにしばらく住むことになった「ぼく」。それはルリユールじいさんとの出会いでした... 「ぼく」から「Y」へのパリからの手紙。

以前、「ルリユールおじさん」「絵描き」(感想)を読んだ時に、これも読みたいと思っていたのです。でも題名と表紙から勝手にエッセイだと思い込んでいたら! これも物語だったんですねー。元は理論社のホームページに連載されていたエッセイを改稿、未公開スケッチを加えて構成し直したものだそうなので、もしかしたら元々の語り手は、「ぼく」ではなくて伊勢英子さんだったのかもしれないのだけど。

私が読んだ「ルリユールおじさん」と「絵描き」はそれぞれ独立したお話だったのだけど、これを読むと、1つに繋がった大きな物語だったんだなあって分かります。そしてやっぱり「絵描き」に登場しているのは、伊勢英子さんご本人だったのだなということも。前の2冊に比べると、もちろん絵は少ないのだけど、文字から伝わってくるものも大きいわけで。何度も読み返したくなってしまいます。

古いアパルトマンのルリユールおじさんの家の壁は、どれも天井まで本でいっぱいで!

何百冊あるかわからないけど、すべて革張りで深紅や紺や緑の表紙、金箔の背の文字 -- 気が遠くなりそうなほど美しい本棚だった。

やっぱり私は職人を目指すべきだったんだわ... 芸術家ではなくて、あくまでも職人。ああ、こんなところで何をやってるんだろう。(平凡社)


+既読の伊勢英子作品の感想+
「ルリユールおじさん」「絵描き」いせひでこ
「旅する絵描き パリからの手紙」伊勢英子
「グレイがまってるから」「気分はおすわりの日」伊勢英子
「マキちゃんの絵にっき」「ぶう」伊勢英子
「カザルスへの旅」伊勢英子
「はじまりの記憶」柳田邦男・伊勢英子
「1000の風 1000のチェロ」「雲のてんらん会」いせひでこ
「空のひきだし」いせひでこ
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ
「大きな木のような人」「ルリユールおじさん」いせひでこ
「にいさん」いせひでこ
「ざしき童子のはなし」「よだかの星」「風の又三郎」「水仙月の四日」宮沢賢治・伊勢英子

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野外音楽堂で夜空のコンサートが大成功に終わった夜、トランペット吹きのドンさんが出会ったのは不思議な男性。落し物でも探しているように、身体をかがめて地面をきょろきょろ見回しながら歩いているのです。その男性が拾っていたのは、ぴかぴかと光る小さな物。それは素晴らしい音楽が空気をぴりぴり震わせると、ぱらぱらと落ちてくるという星くずでした... という表題作「星とトランペット」他、全11編の短編集。

竹下文子さんの初めての短編集。ほとんどの作品が10代の頃に書かれたのだそうです。トランペットを吹くとパラパラと星くずの降ってくる夜空、思わず寝転んでみたくなるような、木漏れ日が差し込む林の中の小さな空き地、おだやかに打ち寄せる波にすべるように進んでくる船、麦藁帽子をかぶった途端に見えてくる懐かしい景色、フルート吹きを探しながらるるこが歩き回る様々な場所。どれも目の前に情景が広がるようですし、匂いや感触、そして吹いてくる風も感じられるよう。牧野鈴子さんのイラストもとてもよく似合ってて素敵~。
私が特に好きなのは、なぜか動物ばかりが本を買いに来る「タンポポ書店のお客さま」、トラックの運転手らしいヤスさんとキャベツを手にしたルリコ、そして未亡人のアイダ夫人、店主の4つの話が1つに溶け合う「いつもの店」。あと、「野のピアノ」に出てくる自動車事故で小指をなくしたピアニストの言葉も素敵でした。

ぼくにはまだ九本の指がある。この指で、やさしいやさしい曲をひこう。十本の指先に心を集めるのはむずかしかった。だけど、九本なら、すこしやさしいかもしれない。一本ぶんだけ、やさしいかもしれない。

上の画像は復刊された単行本。私が読んだのはこれと同じく牧野鈴子さんの表紙なんですが、講談社文庫版です。(講談社文庫)


+既読の竹下文子作品の感想+
「風町通信」竹下文子
「木苺通信」竹下文子
「星とトランペット」竹下文子
「窓のそばで」「星占師のいた街」竹下文子
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ

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黒ばらさんは、現在135歳になる二級魔法使い。使える魔法は飛行術と変身術だけなんですが、それはドイツのハロケン山にある魔法学校で習ったれっきとしたもの。普段は駅ビルの一室を借りて、悩める人たちの心の相談に乗る仕事をしています... 「黒ばらさんの七つの魔法」は、そんな黒ばらさんの連作短編集。そして「黒ばらさんの魔法の旅だち」は、それから15年後の物語。こちらは長編です。

牧野鈴子さんの表紙がとても綺麗なので気になっていた作品。
黒ばらさんは魔法は2つしか使えないし、大きな魔法を使うと疲れるからって、それほど積極的に魔法を使おうとしないんですよね。もちろん細々としたことでは魔法を使ってるし、必要があればホウキで街中を飛んだりもするんですけど、外国に行く時は普通に飛行機を利用してるし! そうでなくても団地に1人暮らしで、悩み相談の仕事をしてるなんて、あんまり魔女らしくないです。でも逆にそれが現代風の魔女ってところかな~? 魔法が使えるとは言っても、飛行術と変身術だけじゃあ、やれないことがいっぱい。病気を治すこともできません。でも魔法にばかり頼らないところがいいんですね。それに135歳だというのに、見た目は一応40歳ぐらいの黒ばらさん。ベニスで出会ったエメラルドのような瞳をした素敵な青年に恋したりして、その乙女心が可愛い~♪
「七つの魔法」の方では、「黒ばらさんのカンボランダ」が好きでした。これは、かつて「いばら姫」の誕生祝いのパーティに招かれずに腹を立ててたあの魔女が、なぜか今は「地球の土と緑をすくう委員会」なんていうものに入っていて、あらゆる害に強く繁殖力抜群のカンボランダという木を開発、その種を世界中の魔法使いや魔女たちに送りつけてくるという話。ちょっと意外な最後が好き~。
そして、「七つの魔法」では短編同士にあまり繋がりがなくてバラバラな印象もあったんですけど、「魔法の旅だち」には「七つの魔法」の時に出会った少年や、いばら姫のあの魔女が大きく絡んでくる話になってて、こちらは繋がりもシリーズらしくいい感じになってました。前作から15年ぶりの新作ということで、作中でも15年の月日が流れて、黒ばらさんも今や150歳。世の中の魔法ブームのせいで大忙しになってるうちに、なぜか上手く魔法が使えなくなってる黒ばらさん。今度は気づいたら時間の流れがおかしくなってたり、妖精の世界に入り込んでしまったりで、いばら姫の物語や妖精の取替え子の伝説が上手く絡められていて、前回よりもファンタジー度が高い作品。初登場のノームの少年も可愛かったし、こちらも面白かったです。ただ、黒ばらさんの魔法が不調な理由って、それだけだったんですね...。てっきりもっと何かあるのかと思っていたのに。その辺りだけはちょっぴり残念だったかな。(偕成社)

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満開の桜林の中でふるふると優しく鳴っている電話の音、夜になると赤・緑・紫・橙色と足元を淡く照らしてくれるランタン野菜、浅瀬で水浴びをしているオレンジ色のドラゴンたち、北の崖で見つけた白い貝から聞こえる音楽、銀河からじかに汲んだレモン・星ソーダ、夏の花の花びらの花火、雲のレストランの出す様々な雲の料理、家の中にいる人がすっぽりと夕焼けに包み込まれてしまう「夕焼け窓」... 木苺谷を舞台にした24の短編集。

sa-ki さんに教えていただいた本です。
とても短い話ばかりなんですけど、どれもとっても素敵! 年末のこの時期は何かとせわしなくなってきてるんですけど、読んでいるとそんな慌しい心がどんどん和らいでくるような気がします。舞台は木苺谷で、ちょっぴり不思議なことが起きたりもするので、これはきっと架空の世界なんでしょうけど... それでいて現実の世界の延長線上での話のようでもあって、なんだかどことなく懐かしいんですよね。不思議なことは起きるんだけど、それがとても淡いからなのかしら。読んでいると、びっくりするほどすんなりと受け入れられちゃう。
季節にそれぞれ「風の月」とか「氷の月」、「鳥の月」や「虹の月」、「芽の月」「葉の月」「花の月」「実の月」なんて名前がついてるところも素敵だし... たとえば風の月は3ヶ月ほども続く冬のことで、鳥の月はランタン野菜の季節を蒔く時期。星祭りや冬至祭、折り紙の船を飛ばす「船の日」なんていうのもあって、季節の移り変わりやその折々に感じられる色彩がとっても豊か。とっても静かなイメージなんだけど、柔らかくて美しいんです。どの話もとても良かったんだけど、今の季節がら、暖かみが感じられる話に特に惹かれたかな。とっても素敵な本なのに絶版だし、黒井健さんの絵を使った表紙の画像が出なくて本当に残念!(偕成社)


+既読の竹下文子作品の感想+
「風町通信」竹下文子
「木苺通信」竹下文子
「星とトランペット」竹下文子
「窓のそばで」「星占師のいた街」竹下文子
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ

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安房直子さんの短編集3冊。

「南の島の魔法の話」...「鳥」「ある雪の夜の話」「きつねの窓」「沼のほとり」「さんしょっ子」「南の島の魔法の話」「青い花」「木の葉の魚」「夕日の国」「きつねの夕食会」「もぐらのほったふかい井戸」「だれも知らない時間」
「鶴の家」...「鶴の家」「雪窓」「北風のわすれたハンカチ」「ゆきひらの話」「魔法をかけられた舌」「熊の火」
「夢の果て」...「夢の果て」「あるジャム屋の話」「黄色いスカーフ」「サリーさんの手」「グラタンおばあさんと魔法のアヒル」「花のにおう町」「空にうかんだエレベーター」「ききょうの娘」

どの作品も、やっぱり色彩がとても綺麗。そしてとても豊かなものが広がります。安房直子さんご自身、こういう話を書こうと思って書くというよりも、ある情景が絵のように浮かんできて、そのイメージを物語にするという書き方をすることの方が多いのだそうです。そして「南の島の魔法の話」のあとがきに、安房直子さんが「私が、ファンタジーの作品を好んで書くのは、空想と現実との境の、あの微妙に移り変わる虹のような色が、たまらなく好きだからです」と書かれていたという話がありました。ああ、分かるー。
3冊の中で私が特に好きだったのは、聞いてしまった秘密を取ってもらいに耳鼻科に駆け込んできた少女の話「鳥」、翻訳家がある物語を上手く訳せなくて困っているうちに、実際にその物語を体験してしまう「南の島の魔法の話」、女の子に頼まれて青い傘を作る傘屋の物語「青い花」、鹿の少女と一緒にジャム屋の仕事をだんだん軌道に乗せる「あるジャム屋の話」、黄色いスカーフのおかげでとても幸せな気持ちになるおばあさんの話「黄色いスカーフ」、少女とウサギの満月の夜の冒険物語「空にうかんだエレベーター」。どれも本当にうっとりするほど情景が美しく、でも優しくて甘いだけでないところがいいんですよね。(講談社文庫)


+既読の安房直子作品の感想+
「ハンカチの上の花畑」「だれにも見えないベランダ」安房直子
「南の島の魔法の話」「鶴の家」「夢の果て」安房直子

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アギオン帝国が中心に、様々な部族がその帝国を取り巻くロールの世界。キアスは燃えるような赤い髪をした15歳の少女で、西の谷にあるモールの神殿の巫女見習い。いつかは偉大な巫女になりたいと思いつつも、退屈な勉強や、先輩の巫女に気に入られようといい子ぶる見習い巫女たちに我慢ができず、授業を抜け出しては、モールの林の中にある、ひときわ大きい木ののうろに入ってばかりいました。その木は300年前の大巫女・マシアンの木。女の子が生まれるとモールの木の苗木を植えるモールマイ族にとって、モールの木は生まれた子の<根>であり、生まれた子はその木の<寄生木(やどりぎ)>。巫女の呪歌によって結び付けられた<根>と<寄生木>は、片方が育てばもう片方も育ち、どちらかが死ねばもう片方も死ぬという関係。マシアンの木がまだ生きているということは、マシアンもまだ生きているということ。呼び出しの儀式に失敗して巫女になれなかったキアスは、マシアンを探す旅に出ることに。

海外作品に負けない骨太のファンタジーを書く日本人作家さんは何人かいますが、浜たかやさんもその1人でしょうね。これはロールという架空の世界を舞台に繰り広げられるファンタジー。世界の成り立ちの神話も詳細に描かれていて、世界観がとてもしっかりしていました。それぞれの部族ごとに信奉する神がいて、独自の歴史やしきたりがあるという部分とかもさりげなく、でもきちんと描かれてていいなあ。こういうの好き~。最近のファンタジー作品にはあまり書き込まない傾向があるのかもしれないけど、私はやっぱりこんな風にじっくりと作りこまれて、丹念に描かれてる方が好き。脇役もそれぞれに魅力的で、とても楽しめました。
ただ、序盤~中盤に比べると、終盤はやや失速しているような... というか、ちょっと書き飛ばされてしまったような。じっくり書いて欲しいところがやけにあっさりしてるし、特にせっかくマシアンが登場しても、マシアンなら語って聞かせられる部分がほとんど語られずに終わってしまったし。それに「龍使い」という題名の割に、全然龍を使ってないし! 名前に関しても、結局ただの偶然だったのかなあー。せっかくの作品なんだから、その辺りも丁寧に書いて欲しかったな。そんなことになったら、ただでさえ分厚い本がさらに分厚くなってしまうんですけどね。すごくいい作品なだけに、その辺りだけがちょっぴり残念。(偕成社)

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虫がついた葉を切ろうとして、丹精こめて育てていたひょうたんのつるそのものを切ってしまい、落ち込むサキ。しかしそんなある晩、サキの夢の中にそのひょうたんが出てきます。夢の中のひょうたんはつるを切られてなどおらず、つっかい棒をつたって元気に壁を登っていました。それからというもの、ひょうたんは毎日のように夢に登場し、どんどん伸びて花が咲き、実がなります。サキは夢の中のひょうたんをもいで加工、夢の中の部屋に飾ることに。そしてもう夢も終わりだろうと思ったその時、ひょうたんを持っていたサキは空に浮かんだのです。そのまま窓の外に出て、空を飛んでいたサキが降り立ったのは、古い時代の武蔵の国。そこでサキは不破麻呂という若者に出会うことに。

芝田勝茂さんの作品を読むのは初めて。風待屋 の sa-ki さんに教えて頂いたんですが、いやあ、可愛らしいお話でした! 中心となっているのは菅原孝標の女の「更科日記」(だから「サラシナ」)の中の「竹芝伝説」で、史実と虚構を織り交ぜて書かれたタイムスリップ物。タイムスリップ先は聖武天皇の時代。先日読んだ高橋克彦さんの「風の陣」(感想)よりも、ちょっぴり時代を遡った頃。
ピンクのネグリジェ姿で空から降りてきたサキは、見慣れた多摩川があんまり綺麗で、しかも人影が全然ないんで、服を脱いで川で泳いだりするんですよね。それを見ていた不破麻呂が天女伝説と結びつけてしまうところが、まず可愛い~。天女とは言っても、案外本当にそんなところかもしれないですものね。宇宙服を脱いだ宇宙人とか。(笑) でもって、不破麻呂に出会った後の古代の多摩川での描写が素敵なんです。「多摩川に 晒す手作り さらさらに 何ぞこの娘の ここだ愛しき」と歌いながらの川で布を晒す娘たちや、酒壷の中でゆらゆらとゆれてる直柄のひさごとか... 不破麻呂のひさごの歌と踊りが見てみたくて堪らなーい。
で、一旦現代に戻るサキなんですが、またこの時代に来ることになります。でも今度は天女としてではなくて、天皇の第4子の竹姫こと更科内親王として。なんでここで竹姫になっちゃうのかという必然性については、ちょっと疑問なんですが... 更級日記だから天皇の姫にする必要があるのは分かるんだけど、サキがそうなる必要は特にないですしね。でも竹姫の祖母の皇太后が語る恋物語に竹姫自身の話、そしてサキと不破麻呂の話が重なって、この時代をすごく身近に瑞々しく感じることができたので、まあいっかという感じでした。サキよりもむしろ竹姫の方が身近に迫ってきましたし。ああ、この話の後、どうなったのか気になるなあ。サキの2度目の登場の仕方からいえば、この後彼はちゃんと幸せに暮らしたんじゃないかとも思うんだけど... それはまた別の話なんですね。きっと。(あかね書房)

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その国の総理大臣・美留楼公爵の末娘・美留女姫は物語に夢中で、常に新しい珍しい物語を聞きたいと思っている姫。しかし世の中そうそう新しい物語などありはしません。ある日、道行く人々の身の上話を聞くために街に出た美留女姫は、銀杏の木の下で「白髪小僧と美留女姫」という本を見つけ、それを読みながら歩いているうちに川に落ちてしまい、白髪小僧と呼ばれる乞食小僧に助けられます。美留楼公爵は白髪小僧にお礼をしたいと思うのですが、白髪小僧は何をもらってもニコニコとしているだけ。美留女姫は、白髪小僧にはどんなお礼をしても無駄だと言い、その理由は全てこの本に書いてあると、持っていた本を読み上げることに... という「白髪小僧」他、全19編の童話集。

夢野久作作品を読むのは、「ドグラ・マグラ」以来です。「ドグラ・マグラ」も、途中までは面白かったんですけど、後半の「ちゃかぽこ」が苦手でどうにもならなくなってしまって... 最高傑作とされる作品がこれじゃあ、もう2度と夢野作品を読むこともないだろうと思ってたんですよねえ。でも先日の第38回たら本 「何か面白い本ない?という無謀な問いかけに答える。」でAZ::Blog はんなりとあずき色☆のoverQさんが「白髪小僧」を挙げてらして(記事)、あんまり面白そうなので読んでみることに。私のファンタジー的バイブルである石堂藍さんの「ファンタジーブックガイド」にも挙げられてて、題名だけは知ってたんですよね。

夢野久作が書いた童話は141編にも及ぶんだそうで、ここに収められているのは19編。どれもデビュー前の大正年間に書かれたものなんだそうですけど、それぞれに面白くて(読みやすくて)びっくり。あの「ちゃかぽこ」は一体何だったんだ...?! 状態。(笑)
でもやっぱり、この中で一番読み応えがあったのは「白髪小僧」ですね。この1冊の半分近くを占めている、最早長編と言った方がいいような作品です。白髪小僧と美留女姫の出会いは既に物語として本に書かれていた... という枠物語なんですけど、中の物語が外側の枠よりも大きくなってしまって、結局どちらが枠なのか分からなくなってしまうんです。白髪小僧は、実は藍丸国という国の王様だったとして、その藍丸国の天地創造的なお話も入っていて、どうやら別世界らしいと分かるんですけど、そこには美留女姫と瓜二つの美紅という公爵令嬢がいて、さらにはこれまた瓜二つの美留藻という海女がいて、お互いにお互いのことを夢に見ていて...
...とまあ、そんな物語なんですが、結局未完のまま終わってます。解説には「失敗作であるがゆえに傑作となりえた稀有な作品である。」とありました。確かに収拾をつけられなかったという意味では失敗作なのかもしれないですけど、でもこれはほんと、無理に収拾をつけようとして、こじんまりとまとまったりしなかったところがいいんでしょうね。書いた夢野久作は不本意だったかもしれないし、読んだ人は無限ループの罠に落ち込んでしまうんですけど...(笑) でもこれはすごい。裏返される感覚が堪りません。今の時点で2度読んだんですけど、もうちょっと何度か読み返してみたいです。やっぱり「ドグラ・マグラ」よりもこちらから入るべきだったな~。(ちくま文庫)

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父の転勤で北九州に引っ越すことになった、小学校5年生の高見森(シン)。東京では腕白のいじめっ子として問題児扱いをされていた森ですが、引越し当日の夜にはこっそり外に抜け出て、パックという少年と一緒に社宅の屋根に上り、翌朝には同じ登校班の子供たちにもすんなりと受け入れられて、今度の学校では楽しくやれそうな予感。しかし、てっきり一緒に学校に通うとばかり思っていたパックの姿が見えないのです。しかも周囲の子供たちに聞いても、みんな口を濁すばかりで...。

講談社ミステリーランドの第13回配本。加納朋子さんらしく、とっても可愛らしいお話でした~。
大人から見れば単なる乱暴者の森なんですが、実は意外と素直な少年。話の合いそうな転校生と友達になりたいと思った時も、おばあさんのアドバイス通りにしてるし... いや、これに関しては、今時の少年が本当にそんなことをするのか?! とも思っちゃうんですけどね。それまで森の周囲にいた子供たちは、森がそんなことをするなんてまさか思わなかったでしょう... 地方によって子供たちに違いがあるなんて書きたくないんですけど、やっぱり大人になるのが早い分、大人の色眼鏡ごしに物事を見てしまいがちなのかも、とか思ってしまうー。それに比べて、北九州の子供たちの可愛いことったら。彼らの話す北九州弁が、またいいんです。これですっかり親しみが湧いてしまいました。...ええと、肝心の謎に関してはそれほどでもなくて、少年たちの冒険譚といった要素の方が強かったんですが、それでも社宅という条件がすごく利いてると思ったし、夢がありながらほろ苦い現実もあるところが良かったです。爽やか~。
「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」と言いつつ、今までは「かつて子どもだったあなた」向けの作品が多かった気がするミステリーランドのラインナップの中では、純粋に「少年少女のため」に近い作品かも。(そしてこの表題の文字が可愛い! 可愛すぎる! こんなPC用フォントがあったら、絶対欲しいー)(講談社ミステリーランド)


+既読の加納朋子作品の感想+
「てるてるあした」加納朋子
「ななつのこものがたり」加納朋子
「モノレールねこ」加納朋子
「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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上方で算法を収めた町医者の父に幼い頃から手ほどきを受けたあきは、まだ13歳ながらも、算法の学力はかなりの水準。近所の娘たちと浅草の観音さまにお参りに行った時にも、奉納されようとしていた算額に誤りがあるのを見つけてしまいます。算額とは、表向きは勉学の進歩を神仏に感謝するものなのですが、その実態は、自分の学力を大勢の人の前で誇示するもの。奉納しようとしていたのは、江戸での算法の中心的な存在である関流の宗統・藤田貞資の直弟子で、しかも旗本の子弟だったため、町人の小娘のやっつけられた話は算法家の間ですぐに広まってしまいます。そして話は筑後久留米藩の有馬候にまで伝わり、算法好きの有馬候はあきを姫君の算法御指南役に迎えようと考え始めます。しかし、あきがやっつけた相手の師匠・藤田貞資から、横槍が入って...。

先日、掲示板でアッシュさんにオススメしていただいた本。この「算法少女」という題名は、作者の遠藤寛子さんがつけたものではなくて、安永4(1775)年に刊行された和算書「算法少女」からきたものなんだそうです。江戸時代の「算法少女」を書いたと言われているのが千葉桃三という町医者で、それを手伝ったのが娘のあき。遠藤寛子さんが、あきによる前書きを繰り返し読んで、内容を詳しく調べているうちに、徐々に心の中に育ってきた物語なんだとか。
日本古来の数学である「和算」の存在自体は知っていましたが、江戸時代に、これほど和算が庶民の間に広まっていたとは、全然知りませんでしたー。既に相当高いレベルに達していたようですね。正確な円周率の算出方法などもあって、流派の秘伝とされていたよう。そもそも、万葉集にも九九を使った句があるんだそうですよ! 「十六」と書いて「しし」と読ませたり、「八十一」と書いて「くく」と読ませたり。でもそれほどの和算も明治以降はすっかり影を潜め、西洋の数学が中心になってしまったんですって。勿体ないなー。
物語としては、詰めの甘さもあるんです。せっかくの有馬候の御前での算法対決の場面なんかは、もうちょっと盛り上げて欲しかったところ。でも元々は児童書だそうだし、この品の良い語り口には、この展開が合っているのかもしれないですね。いやあ、本当に可愛らしいお話でした。あとは、物語の中に登場する問題とその解き方が巻末にでも載っていれば、尚良かったのにな。これを読んで、数学の問題を解きたくなる人もきっといるはず!(笑)(ちくま文庫)

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小学校6年生の光太郎は山村留学中。やることなすこと時間がかかる光太郎は、勉強も体育も苦手で、得意なのは図工だけ。それもものすごく時間がかかり、丁寧にすることはいいことだと言ってくれる先生にも、最後には「早くしてね」と言われてしまうのです。しかも身体が小さく細くて、泣き虫。周囲にイジメられて、とうとう東京の学校には行けなくなってしまったという経緯がありました。コンビニも本屋もないけれど、ヤマメのいる川は綺麗で、夜には満天の星空が広がる村。世話になっている家には同じ年のタツオがいて、兄のようにひっぱってくれます。しかし大雨が続いて山が崩れ、ヤマメのいる淵が無事かどうか見に行った光太郎は、そこで河童らしきものを助けることに。そして落ちていた赤い皿を拾ったその晩から、光太郎は原因不明の高熱に襲われ、不思議な夢をみることに...。

別名義の作品は読んだことがありますが、たつみや章さん名義の作品は初めて。これは、「ぼくの・稲荷山戦記」「夜の神話」と一緒に、神さまシリーズと呼ばれている作品なのだそう。3作に特に繋がりはないそうなんですけどね。これはイジメ問題と環境問題を大きく取り上げた作品でした。
これを読んで思ったのは、やっぱり「知らない」じゃ済まされないのよね、ということ。知らなかったから、というのは何の理由にも言い訳にもならないんですよねえ。全てのことに通じると思うんですが、たとえば環境破壊のように人間の生活に直接関わってくる部分は、特にそうじゃないかなと思ってます。自覚があって破壊するほどは悪くはなくても、結果的に破壊してしまえば結局のところは同じことだし。何事においても、きちんと自分の行動の意味と結果を知る努力は必要なんでしょうね。
とまあ、これも悪くないんだけど... 龍神とか山の姫が出てくる辺りはいいんだけど... あまりそんな風にメッセージ性の強い作品は、今はちょっと。たつみや章さんの作品を読むなら、やっぱり「月神の統べる森で」を選ぶべきだったかもしれないな。(講談社文庫)

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どこの子なのか、だれひとりとして知らないけれど、そこに確かに存在している「こうちゃん」。そんなこうちゃんのことを書いた絵本。須賀敦子さんが唯一遺したという小さな物語に、酒井駒子さんの画をつけたものです。

絵本と言っても差し支えないとは思うし、こここに書かれている言葉は決して難しいものではないんですけど、やっぱり子供向きの絵本とは言えないですね。ひらがなの多い文章はとても柔らかくて、読んでいる人を包み込んでくれるよう。するっと心の隙間に入り込んで、ひび割れた部分を埋めてくれるような気がします。でも字面を追うのは簡単なんだけど、そこにどんな意味があるのかと考え始めると、ものすごく難しいんですよね。そもそも「こうちゃん」って一体誰なんだろう? ...私には、ふとした瞬間に感じられる明るい光のようなものに思えました。ふとした拍子にするりと逃げ去ってしまうんだれど、確かに存在するもの。日々柔らかな心で暮らしていないと、すぐに見失ってしまうようなもの。
本を見る前からきっと合うだろうとは思っていましたが、酒井駒子さんの絵が素敵。須賀敦子さんの文章にぴったり。でも、須賀敦子さんの文章をそのまま絵にしたという感じではないんですよね。須賀敦子さんの文章から浮かび上がってくる情景と、酒井駒子さんの描く絵が対になって、コラボレーションとなっているみたいです。(河出書房新社)


+既読の須賀敦子作品の感想+
「トリエステの坂道」須賀敦子
「本に読まれて」須賀敦子
「ヴェネツィアの宿」「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子
「須賀敦子全集1」須賀敦子
「須賀敦子全集2」須賀敦子
「須賀敦子全集3」須賀敦子
「須賀敦子全集4」須賀敦子
「須賀敦子全集5」須賀敦子
「須賀敦子全集6」須賀敦子
「須賀敦子全集7」須賀敦子
「須賀敦子全集8」須賀敦子

+既読の須賀敦子翻訳作品の感想+
「インド夜想曲」アントニオ・タブッキ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「ある家族の会話」ナタリア・ギンズブルグ

+既読の酒井駒子作品の感想+
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子
「よるくま」「よるくま クリスマスのまえのよる」酒井駒子(「リコちゃんのおうち」)
「ビロードのうさぎ」マージェリィ・W・ビアンコ文・酒井駒子絵訳
「きつねのかみさま」あまんきみこ文・酒井駒子絵
「絵本のつくりかた1」「Pooka+ 酒井駒子 小さな世界」
「ゆきがやんだら」「ぼく、おかあさんのこと...」酒井駒子
「こりゃ まてまて」「ロンパーちゃんとふうせん」酒井駒子
「BとIとRとD」酒井駒子
「赤い蝋燭と人魚」小川未明文・酒井駒子絵
「くまとやまねこ」湯本香樹実文・酒井駒子絵
「金曜日の砂糖ちゃん」酒井駒子
「きかんぼのちいちゃいいもうと」1~3 ドロシー・エドワーズ

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北方の国に来ている「私」は、ここ数日間、家の中にあったアルコールとオイル・サーディンだけで生きのびている状態。そんなある日、窓のカーテンの隙間から外を見た「私」は、門柱のところに立ってじっと庭を見つめている女の子に気づきます。ふらふらと外に出る「私」。そんな「私」に、女の子は「この庭に、ミンクがいる気がしてしようがないの」と言うのですが... という「この庭に」と、その前日譚とも言える「ミケルの庭」。

大好きだったはずなのに、ちょっぴり気持ちが離れ気味? 去年の暮れに新刊が出てたのに、読むのが今頃になってしまいました。「この庭に」は、文庫版「りかさん」に収録されている「ミケルの庭」の続編とのことなので、せっかくだし、「ミケルの庭」も再読です。「ミケルの庭」のミケルとは、「からくりからくさ」に登場するマーガレットの産んだ赤ちゃん。ほとんど育児ノイローゼになりかけていたマーガレットが、ミケルが1歳になって乳離れしたのを機に、同居している3人にミケルを任せて中国に短期留学に行っている間の物語。
続編とはされていても、「この庭に」は「ミケルの庭」の数年後の物語だし、共通する登場人物がミケルだというだけで、物語としては特に繋がってないんですね。「この庭に」は、物語としての展開も特になくて、ほとんどアル中状態の「私」が見る妄想のような情景が移り変わっていくだけ。現実世界と異世界の境目がすっかり薄れてしまって、どこにあるのか分からなくなってしまったような感じです。それにしても精神的にかなり荒んで、殻に閉じこもってしまっているミケルの姿が痛々しい...。これはもしかして、胎内にいた時のマーガレットの不安定さを受け継いでしまったのかしら。なんて思うと、なんだか怖くなってくるし、これから本当に真っ当な人生が送れるのか、本当に心配になってしまいます。
挿絵が多いせいか、本は児童書のところに置かれてるんですけど、これは実は結構激しい作品ですね。須藤由希子さんのモノトーンの挿絵の中に、血の赤が鮮烈でどっきり。(理論社)


+既読の梨木香歩作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「ぐるりのこと」の感想)
「沼地のある森を抜けて」梨木香歩
「水辺にて」梨木香歩
「ミケルの庭」「この庭に 黒いミンクの話」梨木香歩
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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やまんばの母と人間の父の間に生まれた由布も13歳。以前から山のふもとの風早の街に行きたくて堪らなかった由布は、母が7年に1度の山の神の寄り合いで富士山に行っている間に、姉を残して1人山を下りてしまいます。街には父がいるはずなのです。10年前に街に行ったきり戻らなかった父。母は、父が山の生活が嫌になってしまって自分たちを見捨てたのだと言うけれど、由布にはどうしてもそうは思えず、帰りたいのに何か理由があって帰れないのではないかと考えていました... という「やまんば娘、街へゆく」と、捨てられた猫の赤ちゃんを拾い、1人世話をしようとする少女の物語「七日間のスノウ」。

「七日間のスノウ」しか画像が出ないですね。これは、正真正銘の児童書。風早街の話だから読んだんですけど、字が大きくてちょっとしんどかったし、お話そのものも痛すぎました...。「百年めの秘密」に登場したのと多分同じお屋敷も出てくるので、そういう意味では読んで良かったんですけどね。
それよりも「やまんば娘、街へゆく」の方が、ずっと私好み。これは副題が「由布の海馬亭通信」。古い石畳の道に面して建っている灰色の煉瓦造りの海馬亭は、今でこそアパートとして使われてるんですけど、元々はホテルで、竜の落とし子の形の錆びた金の看板にはしゃれた文字で「海馬亭」とあるんです。それを、「ナルニアのあの街灯のように」1つぽつんと立った街灯が見守っていて...。風早の街に、また1つ素敵な場所が増えてしまいましたー。やまんば娘の由布は可愛いし、お姉さんやお母さんも見たくなってしまったわ。アパートの住人たちもそれぞれに個性的で暖かくて、海馬亭がとても素敵な空間になってます。(理論社・佼成出版社)


+シリーズ既刊の感想+
「ささやかな魔法の物語 カフェ・かもめ亭」村山早紀
「人魚亭夢物語」村山早紀
「コンビニたそがれ堂」村山早紀
「百年めの秘密」村山早紀
「やまんば娘、街へゆく」「七日間のスノウ」村山早紀

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中古のワープロを買った潤が書く最初の物語は、11歳の夏の冒険の物語。潤が経験した、ちょっぴり不思議な物語。いつものように塾に向かっていた潤は、人気のない荒れた屋敷のところで白いネグリジェを着た髪の長い女の子の幽霊を目撃します。塾の休み時間、早速他の面々に幽霊を見た話をする潤。潤は知らなかったのですが、その屋敷は実は幽霊屋敷として有名で、強盗に殺されたお嬢様の幽霊が出るのだというのです。親友のあげはは、その家にはちゃんと持ち主がいて時々手入れをしているし、そんな伝説は嘘っぱちだと頭から否定します。

「人魚亭夢物語」にも登場していた潤が主人公の物語。潤が弥子に話した「子供の頃の不思議な体験」の物語というのがこれです。
始まりは、夏休みの5人の子供たちの冒険譚。幽霊目撃もあり、夏らしい怪奇風味もたっぷり。親たちの不審な行動が幽霊伝説に重なって、やっぱり伝説は本当だったのか...? と思わせるとことが良かったです。本当はもっと現実的な展開を見せるんですけどね。でも常識では説明しきれない部分も...。
この作品の中で、「ぼくの成績は中くらい。きっとこのまま、作家になったりすることなく、中くらいの進学をして、中くらいの就職をするんだろう。で、中くらいの人生を生きる。ごくごくありふれた人生。」などと考えている潤は、「人魚亭夢物語」では大学生として登場します。どうやら全然「中くらい」の人生ではなくなったようです。(あかね書房)


+シリーズ既刊の感想+
「ささやかな魔法の物語 カフェ・かもめ亭」村山早紀
「人魚亭夢物語」村山早紀
「コンビニたそがれ堂」村山早紀
「百年めの秘密」村山早紀
「やまんば娘、街へゆく」「七日間のスノウ」村山早紀

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胸の奥が重苦しく、何かを蹴とばしたいような気分だった江藤雄太が見かけたのは、見慣れないコンビニ。ふらっと中に入ると、そこにいたのは銀色の長い髪に金色に光る目のレジのお兄さん。その外見だけでもびっくりなのに、お兄さんはなんと雄太の名前を知っていたのです。しかもそこには、転校してしまった美音から雄太が受け取らなかったメモ帳があったのです... という表題作「コンビニたそがれ堂」以下、連作短編集。

風早の街の裏通りのビルの隙間、古い赤い鳥居が建っている辺りにひょっこりと立っているコンビニを舞台にした連作短編集。このコンビニはコンビニらしくない赤と灰色で、少し古い雰囲気。手作りっぽいおでんのいい匂いが漂い、「おいしいお稲荷さんあります」という手書きのメニューがレジの傍に立てかけられています。探しものがある人間だけが辿り着けるというお店。
さすが「たそがれ堂」という名前の通り、夕暮れの情景がお得意のようです。しかもどの物語も季節感がたっぷり、季節それぞれの夕暮れの情景が広がります。そして夕暮れ時という時間帯のせいなのか、とても切ない物語が多いのです。特に後半。ありがちな展開だと思いながらも、すっかり作者の術中にはまってしまった話も...。(笑)
店主のお兄さんは、お茶目なきつねの神様。時にはミュージシャン志望と間違えられるような、イケメンのお兄さん。お稲荷さんだなんて、日本の昔ながらのモチーフを使いながら、現代を象徴するようなコンビニと結び付けているところが、また面白いです。(ポプラ社)


+シリーズ既刊の感想+
「ささやかな魔法の物語 カフェ・かもめ亭」村山早紀
「人魚亭夢物語」村山早紀
「コンビニたそがれ堂」村山早紀
「百年めの秘密」
「やまんば娘、街へゆく」「七日間のスノウ」村山早紀

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弥子は異次元だのUFOだののことを考えては、友達の麻紀には「もっと大人になりなよ」なんて言われてる小学校4年生。学校帰りに塾に直行する麻紀と別れると、ついつい人魚亭へと足が向いてしまいます。そこは「お帰りなさい」と迎えてくれて、美味しい紅茶を飲ませてくれる真波さんのお店。そんなある日、街の"いこいの森美術館"に「"ししゅうする少女"という絵を盗むという予告状が届いて、街中が大騒ぎ。予告状の差出人は、昭和20年代から30年代にかけてこの街で活躍していたという怪盗・銀ぎつね。"ししゅうする少女"は、画家もモデルも分からないながらも、街では一番人気の絵なのですが...。

「カフェかもめ亭」(感想)と同じ風早市が舞台の物語。こちらも美味しい紅茶と素敵なマスターがいる喫茶店が中心となっていて、まるでカフェかもめ亭の元となっているような物語なんですねー。違うのは、カフェかもめ亭では訪れるお客さんの話す不思議なことが中心となっていること、こちらは"ししゅうする少女"を巡る昔の恋物語と、風早の街に伝わる様々な言い伝えが中心となっていること、かな。ほんと色んな言い伝えや噂があるんです。近い時代のものでは、昭和の怪盗・銀ぎつねや謎の秘密結社、港を根城にする泥棒組織の噂、昔からの言い伝えでは、風早の民を守る山の女神と竜宮の女神、妙音岳に隠された財宝、そして真奈姫川の伝説など... 風早を巡る色々な歴史が重層的に重なり、それを人魚亭の真波さんの存在が1つにまとめているよう。弥子はこの街に引っ越してきてまだ1年なんですが、きっとこの街に縁の深い人間なんでしょうね。弥子の両親がこの街の出身とか? 戦争も絡んだ暗い歴史も明らかになるんですが、怪盗銀ぎつねや"黒犬団"の登場で、児童書らしい明るく楽しい冒険物語になっています。「かもめ亭」に比べると対象年齢が低めなので、どうしても私には「かもめ亭」の方が上になってしまうのだけど、こういった言い伝えのある場所やその話は大好き。(しかもこういう、ちょっぴり不思議なお店の話も大好き)
この中に登場する学生作家の「潤さん」は、「百年目の秘密」にも登場していて、潤さんが子供の頃に体験した不思議な経験の話が読めるのだそう。ぜひ読んでみようと思いまーす。(小峰書店)


+シリーズ既刊の感想+
「ささやかな魔法の物語 カフェ・かもめ亭」村山早紀
「人魚亭夢物語」村山早紀
「コンビニたそがれ堂」村山早紀
「百年めの秘密」
「やまんば娘、街へゆく」「七日間のスノウ」村山早紀

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ある寒い11月の日暮れ、きく屋酒店に郵便を持っていった郵便配達は、不思議なおばあさんに菊酒という美味しいお酒をご馳走になり、しかもその菊酒を造る壷を預かることに... という「ハンカチの上の花畑」他、童話風の作品集。「ハンカチの上の花畑」には表題作と「空色のゆりいす」「ライラック通りの帽子屋」の3編、「だれにも見えないベランダ」には、表題作と「緑のスキップ」「海からの贈り物」「カスタネット」「ほたる」「夏の夢」「海からの電話」「小さい金の針」「天窓のある家」「声の森」「日暮れの海の物語」の11編が収録されています。

掲示板でぽぷらさんにオススメされたと思ったら、タイミング良くsa-ki さんも読んでらして、話をしてたんですよね。先日のたらいまわし「オススメ! 子どもの本」にも出してらっしゃいました。
安房直子さんの作品は多分読んだことなくて、でも子供の頃に雑誌で読んだ作品が話に聞く安房さんっぽい雰囲気だなあ... と思いながら読み始めたら、「ハンカチの上の花畑」は読んだことがありました! 「ハンカチの上の花畑」のこの菊酒を作る壷、ハンカチの上でお酒を造る小人さんたち、そしてこのぞわっとする感じ、覚えてる! あのおばあさんは、一体どれだけの人間が壷に振り回されるのを見てきたのかしら...。
少し前の日本のようだったり、昔話風だったりと様々な物語が並んでるんですが、どれもするりと異世界に行ってしまうようなところが共通点。そしてどれも色彩がとても綺麗。空の色をしたベランダで取れた緑の野菜や艶やかな苺、真っ赤な薔薇、薄桃色桜の花と青葉の緑、黒い岩の上に散らばった桜貝... 色彩の対比がとても鮮やかだし、透き通った羽を持つ小さなセミやこぶしの花の銀色の影は幻想的。そして不思議な音がとても印象に残りました。「トットトット」というスキップの足音や、すずかけの木から響くカスタネットの音、耳鳴りのセミの「シーンシーン」という鳴き声という音... 本当にするっと異世界へと連れて行かれてしまいそうになります。
私が特に好きだったのは、「ハンカチの上の花畑」「だれにも見えないベランダ」「夏の夢」かな。「ライラック通りの帽子屋」で出てくる羊の店も好き~。ここのメニューには、「にじのかけら」「ゆうやけぐも」「ごがつのかぜ」「そのほかいろいろ」とあるんですけど、みんな「にじのかけら」しか頼んでないんですよね。これは、ライラックの花の香りがして、甘くてふっくりした、シャーベットのような七色の食べ物。「まるで昔のおもいでを食べているような感じ」です。他のメニューを頼むとどんなものが出てくるのか、知りたくなってしまいます。(講談社文庫)


+既読の安房直子作品の感想+
「ハンカチの上の花畑」「だれにも見えないベランダ」安房直子
「南の島の魔法の話」「鶴の家」「夢の果て」安房直子

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小学校6年生のたかしと小学校3年生の妹のゆうこは、家の壁にかけてある剥製のトナカイの首を見ているうちに、まるでその首が魔法にかけられているような気がしてきます。そして「この魔法をといてあげたらすごいんだけど!」というゆうこの言葉に、たかしは映画で見たいくつかの場面を思い出しながら、呪いを解くような言葉をできるだけ厳かに唱えてみることに。するとその時、トナカイのガラスの瞳の奥で炎が揺れたのです。炎はたちまち瞳いっぱいに広がり、鼻は火のように熱い息を吐き出します。たかしは咄嗟に持っていたロープを枝角にかけるのですが、トナカイに恐ろしい力で引きずられ、しがみついたゆうこもろとも壁穴に引っ張り込まれてしまい、気がつけば一面の枯野に取り残されていました。

子供の頃から気になって何度も手に取ってはいたんです。題名がいかにも私好みそうで。でも表紙や挿絵があまり好みじゃなくて、結局書架に戻してたんですよね。でもどうやらファンタジーを語る時に欠かせない傑作のよう。なので今だにもひとつそそられないままだったんですけど(笑)、読んでみました。
いやあ、とても骨太な作品でびっくりです。端的に言えば、青イヌとトナカイの戦いの物語。でも、きっと無意味な殺戮を繰り返す青イヌは敵側なんだろうな、というのは分かるんですけど、本当にトナカイ側が善で青イヌ側が悪なのかは、読んでいてもなかなか確信が持てないんですよね。読者が確信を持てなければ(って、分かってなかったのは私1人かもしれないんですが)、主人公のたかしやゆうこも当然分からないわけで...。突然知らない世界に放り込まれた2人は、どちらが信じられるのか自分自身で感じなければならなくなります。トナカイにはトナカイの論理があり、青イヌには青イヌの論理があるんです。もしこの物語で2人が最初に出会ったのが青イヌ側だったら、話の展開は全然違ってしまっていたかも。話としてはC.S.ルイスのナルニアに構造的にかなり似てると思うんですけど、善悪二元論にならないところがナルニアと違う... というか、日本の作品らしさなのかな。日本にも善悪二元論の作品は沢山ありますけど、敵にも言い分はあるって話も多いですよね。
文明社会の中で生き抜くのも大変だけど、大自然の中を生き抜くのはそれよりも遥かに過酷なこと。どうしても動植物を問わず他者の命を奪わなければ、自分自身が生きていくことはできないわけです。でも奪った命を尊厳を持って扱うかどうかが問題なわけですね... という部分で中沢新一さんのカイエ・ソバージュシリーズを思い出してしまいました。全5冊のうち、3冊で止まってるんです... 読まなきゃ!
読む前はなんとなくアイヌのイメージを持っていた作品なんですが、作者の神沢利子さんは幼少時代に樺太(サハリン)で暮らしていたのだそう。この雪と氷が果てしなく続く大地のイメージは、そちらのイメージだったんですね。(福音館文庫)

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古い歴史を持つ海辺の町・風早の街の明治時代からの洋館が今も建ち並ぶ辺り、表通りから一歩裏道に入った静かな石畳の道沿いにある、カフェ・かもめ亭。暗い色のオークの木と煉瓦で作られたどっしりとした建物は、その昔帆船やイギリスのパブをモデルに作られたもの。店の真ん中に置かれた小さな自動ピアノがいつも耳に慣れた優しい曲を奏でており、店の扉にはめ込まれた人魚とかもめのステンドグラスからは、どこか魔法めいた色合いの光が差し込んで木の床を染め、店の壁には沢山の絵が飾られています。そんな素敵なお店が舞台の連作短編集。

掲示板でぽぷらさんが教えて下さって読んだ本。なんですが、本を手に取ってみて、あれ? そうそう、この本。sa-kiさんも読んでらっしゃいましたねー。
曽祖父の代から続く店を今受け継いでいるのは、まだマスターになってほんの数年だという広海(ひろみ)。出てくるのはコーヒーだったり、紅茶だったり、ロイヤルミルクティーだったり、時にはお酒をたらしたアイリッシュコーヒーだったり... そしていかにも居心地の良さそうなお店に訪れたお客が広海に向かって語るのは、どこか不思議な物語。ちょっぴり不思議で、ほんのり切なくて、それでも聞いた後に暖かい読後感が残るような物語。人間、幸せなことばかりではないけれど、悪いことばかりでもないよね、そんな気分になります。
私が特に気に入ったのは雑貨の輸入販売をしている寺嶋青年がディンブラのアイスティーを飲みながら語る、今の仕事を始めたきっかけとなった子供の頃の物語「万華鏡の庭」と、久しぶりにやって来たかおるちゃんがエスプレッソを飲みながら語る、小学校の頃に仲良しだった茶とらの猫の「ねこしまさんのお話」。BGMはそれぞれ「シェエラザード」と「ワルツ・フォー・デビー」。大きなスケッチブックを抱えて店に入ってきた高校生の澪子さんが甘いミント・ミルクティーを飲みながら語る、小さい頃からよくみる夢、砂漠を旅する夢の話の「砂漠の花」も良かったなあ。こちらのBGMは「展覧会の絵」。
読んでると、なんだか自分もこのかもめ亭の中でゆったりとお茶を飲んでるような感覚になるんです。素敵でした。久しぶりの日本人作家さんの作品だったので、尚更和んでしまったかも。

「銀の鏡」の真由子と「ねこしまさんのお話」のかおるの話が重なるので気になっていたんですが、あとがきを読んでみると、どうやら村山早紀さん御自身がこういうタイプの女の子だったようですね。「いつも胸の奥に、たくさんのすり傷や切り傷を抱えていて、うつむいて歩」き、自分だけが普通でないような気がして、みんなの中に入って行けなくて悩んでいた女の子。本が友達で、本の世界に入っていくことでやっと息をつくような毎日。「明日、読みかけの本のつづきを読むために、わたしは生きていたのです」という言葉がとても強く印象に残りました。(ポプラ社)


+シリーズ既刊の感想+
「ささやかな魔法の物語 カフェ・かもめ亭」村山早紀
「人魚亭夢物語」村山早紀
「コンビニたそがれ堂」村山早紀
「百年めの秘密」
「やまんば娘、街へゆく」「七日間のスノウ」村山早紀

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「魔法の鍵」が共通のテーマとなったアンソロジー。ここに収められているのは、「M・J(ミック・ジャガー)笑いの女の子」(大原まり子)、「竜の封印」(大和真也)、「カムデン・マーケット」(小室みつ子)、「博物館」(風見潤)、「スタンスランの青い霧」(久美沙織)、「私はその鍵を、十年間持っていた」(波多野鷹)、「鍵の物語-『風街物語』異聞」(井辻朱美)、「To be a girl」(正本ノン)、「新宿鍵物語(キイストーリー)」(菊地秀行)の9編。

風待屋のsa-ki さんに教えてもらった本です。漫画家のめるへんめーかーさんが、友人の小説家さんたちと一緒になって作ったという本。共通のテーマは「魔法の鍵」。それも、「何でも開くことができるけれど、1度きりしか使えない」という鍵。
この、1度しか使えないというのがいいんですよねえ。登場人物の1人も言ってましたが、本当に開けたいものなんて、そうそう見つからなさそうです。たとえ見つけても、本当にこれでいいの?なんて考え始めたら、もう開けられなくなっちゃいそうですよね。
9人の小説家さんたちは、それぞれにめるへんめーかーさんの絵のイメージで話を作ったんだそうですが、この鍵を使うパターンが予想以上にバラエティに富んでいて、それぞれに面白かったです。特に好きだったのは、大好きな井辻朱美さんの風街シリーズの外伝「鍵の物語」かな。すごく井辻さんらしいお話でした。あと、小室みつ子さんの「カムデン・マーケット」もすごく好き。めるへんめーかーさんの絵にぴったりという意味では、これが一番だと思います。めるへんめーかーさんの単行本に入ってたら、何も疑わずにご本人の作品と思い込んでしまいそうなぐらい、イメージにぴったり~。
そして、今回読んだのは小説ばかりなんですが、この中の4つの作品が実際に漫画化されてるそうなんですよね。そちらも見てみたいなあ。...でもとっくに絶版のはず。こちらのコバルト文庫版もそうですしね。...探してみる?(集英社コバルト文庫)

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守り人&旅人シリーズの最終巻。2つのシリーズが再び繋がりました。でも、バルサが主人公の守り人シリーズはまだしも、チャグム皇子が主人公の旅人シリーズは、てっきりあと何冊かあるだろうと思い込んでたので、これで終わりだなんてもうびっくり。でもこの「天と地の守り人」は3冊組だし、そんなものですかね? 最終巻なので、あらすじを書くのはやめておきますね。

大国・タルシュ帝国と新ヨゴ皇国、ロタ王国、カンバル王国、そしてサンガル王国。それぞれの国がそれぞれの国にとって最善だと信じることを行おうとしてるんですけど、その「最善」が誰にとっても最善であるとは限らないところから、争いが生まれてくるんですね。ほとんど八方塞りのように見える状態の中で確実に道を切り開いていくチャグム。いやあ、「精霊の守り人」の時のあの少年が、こんなに立派に成長してしまったとは~。お父さんみたいに外の穢れを知らずに人生を送ることはできなかったし、かといって身分に縛られずに生きることもできなくて不憫なんですけど、いい青年になりました。特にカンバル王国のラダール王に対峙している時がお見事。そしてもちろん、そんなチャグムを支えているのがバルサ。本人は年を取ったと感じてるようなんですが、まだまだその強さは超一流。それに確かに年は取ったかもしれないですけど、それがむしろ人間的な円熟に繋がっているようです。
そして今回は人間たちの世界にナユグ(異世界)が大きく絡んできて、これがまたいいんですよね。ナユグの春と暖かい水の流れ、深い海の情景、そして婚姻。この幻想的なナユグの描写もまた、守り人シリーズの大きな魅力。

話はこれで完結してしまうわけで寂しいんですけど、でもすごく良かった。最後は収まるべきところに綺麗に収まってくれて、正直ほっとしました~。本来なら完全に敵のはずのタルシュ帝国も、皇帝やラウル王子、ハザール王子の視点から描かれてるので、「悪いやつ」では終われないんですよね。ラウル王子とヒュウゴの話をもっと読みたくなっちゃいました。全部で10冊ある中で、今一番読み返したいのは2作目の「闇の守り人」。今年からこのシリーズが新潮文庫で出始めてて、1作目の「精霊の守り人」は3月に出たところなんですよね。早く他のも文庫で出揃って欲しいなあ。(偕成社)


+シリーズ既刊の感想+
「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虚空の旅人」「神の守り人 来訪編」「神の守り人 帰還編」「蒼路の旅人」上橋菜穂子
「天と地の守り人」1~3 上橋菜穂子
「流れ行く者 守り人短編集」上橋菜穂子
「バルサの食卓」上橋菜穂子・チーム北海道

+既読の上橋菜穂子作品の感想+
「獣の奏者」1・2 上橋菜穂子
Livreに「狐笛のかなた」の感想があります

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小学校6年生の瑠璃が学校帰りに見つけたのは、レベル21というお店。広い道から少し引っ込んでるところにあるせいか、よく通る道なのに今まで全然気がつかなかったことに瑠璃は驚きます。窓の外から覗くと、テーブルの上にこまごまとした物が並べられているのが見えて、瑠璃は思わず店の中に入ることに。

小学生の女の子・瑠璃と、レベル21というアンティークショップ(?)の店主・アンジュさんの連作短編集。風待屋のsa-ki さんに教えて頂いた本。児童書です。
元々アンティークショップは大好きなんですが、ここに描かれているレベル21というお店もとっても素敵でした。イメージとしては丁度、「耳をすませば」に出てくる地球屋みたいな感じですね。お店にいるのは、あのおじいさんの代わりに、アンジュさんという素敵な女性。並んでいる品物を1つ1つ手に取って見ているだけでも楽しそうなのに、アンジュさんと仲良くなんてなれたら、もうほんと何時間でも過ごせそう。アンジュさんの私室で勝手に本を読んだりしてる瑠璃が羨ましくなっちゃう。そしてお店の存在が地味なので気づく人が少ないけれど、でも必要な人は訪れることになるという部分は、「霧のむこうのふしぎな町」のキチガイ通りを思い出しました。あの通りに並んでいても違和感がなさそう。謎めいたアンジュさんが実はあそこの住人と親戚だったとしても、全然驚かないです、私。(笑)
地球屋が頭にあったせいか、瑠璃を見てると宝石の原石のような女の子だなってほんと思いました。あのエメラルドの原石のような。ただ、どの短編にも心の問題が描かれてるんですけど、どれもあっさりと終わってしまって、あまり掘り下げたりはしないんですよね。この本の対象年齢が低いとはいえ、なんでここで止めてしまったのかしら? あ、でも、この辺りにはちょっと興味があるんですが、逆にそのあっさり加減が疲れ気味の私には心地良かったです。

作中にポール・ドラローシュの「レディ・ジェーン・グレイの処刑」という絵が引き合いに出されていました。私もテートギャラリーで見ました。(こんな絵) 先日読んだ夏目漱石の「倫敦塔」にも、この場面が登場してましたよ。そういえば以前ルーブルに行った時に、とても気に入ったのに絵葉書がなくて残念だったのが、同じくドラローシュの「若き殉教者」(こんな絵)だったんですよね。今見てもやっぱり素敵。絵葉書でいいから欲しいなあ...。(理論社)

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風待屋のsa-ki さんに教えて頂いた本。「その町へ行くのに 特別な切符や旅券はいらない」という、風町を舞台にした掌編集です。
地球上のどこかに存在しているはず... という井辻朱美さんの「風街」のように、この風町もどこかにきっとあるんだろうな...と、自分も行きたくなってしまうような場所。柏葉幸子さんの「霧のむこうのふしぎな町」で、あの町を必要としている人は、どこからでも一歩踏み出せば行けてしまうように、この本を読む人がたとえどこにいても、風町はそのすぐ隣に存在していそう。

私が特に気に入ったのは、坂の上の閑静なお屋敷町に迷い込んだ時に、偶然結婚式に参会することになった「婚礼」、屋上で大判のスケッチブックを広げ、「大きな青い花びらを押し花にするような具合に」空の色をぴったりと挟み込む「青い空」。アジサイ色の傘を買う「雨が待ってる」。
魔女のような黒い服で夜の散歩をする「月の光」や、月の香りの中で綱渡りをする「星を拾う」のように、印象的な夜が描かれた物語もあるけど、どちらかといえば昼間のイメージ。そして町の名前そのままに「風」も印象的ではあるんですけど、読んでいて印象が強かったのはむしろ水でした。例えば、喫茶店の床を川がいく筋も流れていたり... 夜の間にバケツの水の中に落ちた星くらげ、青一色の部屋で人魚のように泳ぐ伯母さん、アジサイの傘を差している間にすっぽりと水に沈んでしまう街。ライムソーダ色の窓ガラスを通してみる町並みも、水の中の世界のよう。
全体的に、夢の中の話を集めたようなソフトフォーカス感。字が大きめだし、お話も童話風なので、分類としては児童書なのかもしれませんが、これはむしろ大人向けの本のような気がします。飯田和好さんのイラストもこの雰囲気にぴったり。(偕成社)


+既読の竹下文子作品の感想+
「風町通信」竹下文子
「木苺通信」竹下文子
「星とトランペット」竹下文子
「窓のそばで」「星占師のいた街」竹下文子
「むぎわらぼうし」竹下文子・いせひでこ

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双眼鏡をのぞいた時に目に飛び込んできたのは、木立の間からのぞく、赤茶色の屋根の白い家。翌日、自転車でその家を見に行き、近くに素敵な文具屋まで見つけて浮き立つ爽子。しかしそんな時、父の突然の転勤の知らせが。爽子は中学2年生の2学期が終わるまでは今の学校に行きたいと、それまでの2ヶ月間をその白い家、十一月荘に下宿することになります。

これはまるでジブリの「耳をすませば」ですね! 丘の上の素敵な洋館に素敵な文房具屋、口は悪いけれどかっこいい少年、本が好きで、物語を書きたいと思っている少女、まさにあの映像を思い起こさせるような雰囲気です。でも、「耳をすませば」は好きなんだけど、こっちはイマイチだったかも... 最初はいい感じかと思ったんですけどねえ。
まず、爽子が中学2年生に見えないんですよね。嫌なことがあっても、冷静に自己分析をして理性的に乗り越えてしまう爽子は、どちらかといえば大人っぽい少女。それは全然構わないんですが、この言葉遣いって、一体いつの時代の中2? 高楼方子さん自身がこういう少女だったのかしら? 特に爽子の内面や心の声を描く文章に違和感です。言葉の選び方、間違ってませんか... それだけならまだしも、時々わざと子供っぽさを演出しようと、無理矢理はしゃがせているように感じられてしまったのが更にダメ。そして爽子が書く物語も同様。物語と爽子をめぐる現実が二重写しになっているところは、趣向として面白いと思うんですが、筆達者な中にわざと幼さや拙さを演出してるように見えてしまって、読むのがツラかった...。以前読んだ「時計坂の家」では、そんなこと感じなかったと思うんですけどねえ。いや、感じた部分もあったのかもしれないんですけど、それ以上にとても楽しめたのに。残念です。あ、こっちでも、十一月荘で爽子が出会う女性3人は素敵だったんですけどね。そして毎週英語を習いに来る耿介という少年が、すっかり天沢聖司に脳内変換されてて、気に入ってたんですけど...!(笑)
それにしても、この話はその後どうなるのかしら? 気になるなー。あ、物語の余韻に浸りたい方は、解説を読まない方がいいかもです...。(新潮文庫)


+既読の高楼方子作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「時計坂の家」の感想)
「十一月の扉」高楼方子

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小学校3年生のりえちゃんは、一番仲良しの正ちゃんと喧嘩をした日、いつもと違う道を通って帰ります。いつもの道だと、途中で正ちゃんの家の前を通らなければならないのです。でも途中、空き地だったはずの場所に御殿のような建物が建っているのを見てびっくり。そこには赤い門がそびえ立ち、食べ物屋が並んでいました。そして、その中でも立派な店の前を通りがかった時に急に大粒の雨が降り出し、りえちゃんは慌ててお店に飛び込みます。

後に有名な中華料理人になったりえちゃんが、子供の頃の体験をファンタジー仕立ての童話にした、という設定。帯にある「おいしくかわいいお料理ファンタジー」という言葉そのまんまの作品。いやー、美味しそうでしたー。そして可愛かったですー。
りえちゃんがマーおじさんのお店のある中華横丁に入り込む辺りは、はっきり言って「千と千尋の神隠し」の場面にそっくり。でも、ここで出会うのはハクじゃなくて名コックのマーおじさん。美味しい中華小説といえば南條竹則さん、と私の中ではすっかりイメージが定着してるんですが、これも本当に美味しそう。ごく普通のはずの卵チャーハンの美味しそうなこと! しかも「八仙過海」だの「菊花乳鴿」だの「千紫万紅」だの「百鳥朝陽」だの「宝塔暁風」だの「蓬莱晩霞」だの、どんどん登場する中華料理の名前だけでもそそるんですよねえ。(もちろんそのそれぞれに、美味しそう~な説明がついてます) さすが満漢全席を食べたことがあるという南條竹則さんならでは。小学生が主人公なので、「酒仙」や「遊仙譜」に比べると、さすがにお酒度は低かったですが...(笑)
猪八戒のパロディの「ブタンバラン」とか、「美食礼讃」のサバラン、洞庭湖の竜王・洞庭君、中国四大美女の1人・王昭君、「神曲」のダンテ・カジキエビ(笑)、清朝の詩人・袁枚、中国の仙人・呂洞賓など古今東西の様々な人物が登場して、しかもダンテとは一緒に煉獄をめぐっちゃうし、公主の御殿では「トロイの悲劇」なんて劇まであって、かなりのドタバタ。でも、ただ美食を追い求めるだけでなく、さりげなく美食に対する教訓も籠められています。(ヴィレッジブックス)


+既読の南條竹則作品の感想+
「セレス」南條竹則
「りえちゃんとマーおじさん」南條竹則
「鬼仙」南條竹則
「あくび猫」南條竹則
「魔法探偵」南條竹則
Livreに「酒仙」「満漢全席」「遊仙譜」「ドリトル先生の英国」の感想があります)

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秋のはじめの穏やかに晴れたある日のこと、水晶通りにやって来たのは、マーレンという少女。夏の国で家政婦をしていた彼女は、街に沢山降ってきた「お手伝いさん求む」のちらしに興味を引かれ、ハルメ・ハイネの塔にやって来たのです。ヘルメ・ハイネは、全体に血の気の薄そうな魔法使い。最初はすげなくマーレンを断ろうとするヘルメ・ハイネでしたが、どうやらちらしを出したのは先代のハルメ・ハイネで、100年ほど前のことらしいと分かり、とりあえずマーレンを雇うことに。

上巻は、柔らかい色彩に包まれた物語。ここに描かれているのは、とても風街(感想)っぽい場所で、主人公のマーレンが魔女の箒のような古い箒を持ち歩いているというのも、ハウスキーピングのライセンスが「メアリー・ポピンズ・ライセンス」という名前なのも微笑ましいです。マーレンがいた夏の国というのは、地球上の孤児が集められているという場所で、マーレン自身も孤児なんですが、そこにも全然暗いイメージはなし。むしろ賑やかで楽しそう、なんて思えちゃう。でも、下巻に近づくに連れて、その暖かな色彩がどんどん薄れ、それに連れて体感温度もどんどん下がっていきます。あとがきにも、前半はカラーで描き、後半はモノクロで描くというイメージだったとあり、納得。

下巻に入ると、舞台はトロールの森へと移るのですが、そこは全くの冷たい灰色の世界。時々思い出したかのように、原色に戻ってしまった色彩が飛び散っているのですが、基本的に無彩色。前半の夢のような雰囲気が嘘のような、まるで悪い夢でも見ているような、何とも言えないない世界。でもそれでいてとても強烈な吸引力があるんですよね。終盤は、まさしく井辻さんが「エルガーノの夢」のあとがきに書かれていた、「とほうもなく非合理で、小説のようなちゃんとした構造をもっていなくて、断片的で」「詩のような夢のような、奇形であいまいで、それだから美しいような」叙事詩や伝説の世界。整合性があり、きちんとしているだけが、小説の魅力ではないんですよね。

そう考えると、小説ってどこか絵画と似ているような気がします。私は絵だと、例えばクレーやカンディンスキーの抽象画がすごく好きなんですけど(クレーは抽象画家とは言えないかもしれませんが)、小説でも抽象画的な、理屈では説明しきれない部分があるものに惹かれやすいのかなあ、なんて思ったり。
例えば、写真がなかった昔は、肖像画は写真のような意味があったわけで、貴婦人の着ているドレスの襞などをひたすら忠実に写し取ることが重要、という部分もあったと思うんですけど、写真がある今、実物にひたすら忠実な絵というだけではつまらないと思うんですよね。それなら写真を撮ればいいんだし。(もちろん当時だってきっと、実物にひたすら忠実な絵というだけではダメで、画家の個性とか、何かが感じられる絵こそが、今に残ってきていると思うのですが) だけどその写真も、写真を撮る人の個性によって、本当に様々な表情を見せるわけで。で、例えば、ノン・フィクションが好きだという人がいたら、それは絵よりも写真が好きだというようなものなんじゃないかなあ、なんて思ったりしたわけです。
小説と絵画の関係は今ふと思っただけだし、このままでは単なる好みの傾向の話になっちゃうんですが、これはつきつめて考えてみると、ちょっと楽しいかも♪(講談社X文庫)


+既読の井辻朱美作品の感想+
「風街物語 完全版」井辻朱美
「エルガーノの歌」「パルメランの夢」井辻朱美
「幽霊屋敷のコトン」「トヴィウスの森の物語」井辻朱美
「ヘルメ・ハイネの水晶の塔」井辻朱美
「遙かよりくる飛行船」井辻朱美
「ファンタジーの森から」「ファンタジーの魔法空間」井辻朱美
「夢の仕掛け 私のファンタジーめぐり」井辻朱美
「魔法のほうき」井辻朱美
「ファンタジー万華鏡」井辻朱美

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「狂えるオルランド」にすっかりパワーを使ってしまったので、もう少し気軽に楽しめるファンタジーを... ということで井辻朱美さん2冊。井辻さんの作品が本当に気軽に楽しめるタイプかと聞かれると、ちょっと違うかなという気はするんですけど...。(笑)

「幽霊屋敷のコトン」は、代々伝わる古い屋敷に、既に亡くなった一族の幽霊たちと一緒に暮らしているコトンの物語。話そのものは、おとぎ話みたいに可愛らしくて(めるへんめーかーさんの挿絵がイメージにぴったり)、深みとしてはちょっと物足りないんですけど、その中で1つとても印象に残ったのが、コトンのおじいさんが亡くなる前にコトンに毎日日記をつけることを約束させて、「いいかい、おまえが書かなければ、一日は枯れた薔薇の花びらのように、くずれてどこにもないものになってしまうのだよ」と言った言葉。
この言葉、読書にも当てはまるなあと思って。私はこの6年半、面白かった本も面白くなかった本も、読んだ本の感想を毎日書き続けているんですけど、それはまず第一に自分のための記録なんですよね。(と、今まで何度も書いてますが) 安心してどんどん読み続けられるのも、ある意味、そうやって感想を書き続けているから。そうでなければ、きっと読んだ本のイメージはとっくの昔に、ぽろぽろほろほろと崩れ去ってしまっているんじゃないかと思います。もちろん、崩れ去った後にも、何かしら残っているものがあるでしょうし、それだけで十分なのかもしれないんですが... 何かしら書いてさえいれば、それを書いた時のことを、書かなかったことも含めて、色々と思い出せるもの。それはやはり自分にとって大きいです。

そしてこの「幽霊屋敷のコトン」は、とても水の匂いの濃い物語なんですが、それと対のようにして書かれたというのが「トヴィウスの森の物語」。とは言っても雰囲気はまるで違っていて、同じように水の匂いは濃くしていても、こちらは本当にファンタジックなファンタジー。
いずれは騎士となるべき少年、美しい妖魔の若者、黒い森、霧の立ち込める黒い大理石の城には魔王、地下の鍛冶場で仕事をしている性悪な小鬼たち... と、いかにもなモチーフが満載なんですが、その使い方、展開のさせ方が、やはり井辻さんの場合独特なんだなあと実感。美しくて詩的なんだけど、どこか非合理。やっぱりこれは井辻さんならではのファンタジーだなあ、ルーツを感じるなあ、と思うのでした。(講談社X文庫・ハヤカワハイ!ブックス)


+既読の井辻朱美作品の感想+
「風街物語 完全版」井辻朱美
「エルガーノの歌」「パルメランの夢」井辻朱美
「幽霊屋敷のコトン」「トヴィウスの森の物語」井辻朱美
「ヘルメ・ハイネの水晶の塔」井辻朱美
「遙かよりくる飛行船」井辻朱美
「ファンタジーの森から」「ファンタジーの魔法空間」井辻朱美
「夢の仕掛け 私のファンタジーめぐり」井辻朱美
「魔法のほうき」井辻朱美
「ファンタジー万華鏡」井辻朱美

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そういえば、うちにもこんな本があったなあと思い出しました。かなり以前に読んだっきり、すっかり忘れてましたよ。(恥)

著者の山室静さんは、北欧文学の研究家。アンデルセンやリンドグレーンの作品の翻訳もしてらっしゃるし、日本にムーミンを紹介した方でもあるのだそう。この「北欧の神話」は、古詩集「古エッダ」と、13世紀のアイスランドの詩人スノリ・ストルルソンの「エッダ」、同じくスノリの書いた北欧古代史「ユングリング家のサガ」、デンマークのサクソの「ゲスタ・ダノルム」(デンマーク人の事跡)を参考に書かれてます。分類としては児童書に属してると思うんですが、児童書と侮るなかれ! ポイントを掴んだ説明がすごく分かりやすいし、案外読み応えがありました。
わー、こんな本だったのか。...って、まるで初めて読んだ本のように書いてるのが情けないんですが...。
多分、私が始めてきちんと読んだ北欧神話の本がこれなんですよね。でも、その頃は自分が読みたいエピソードだけ拾い読みしてて、あまり全体像には関心がなかったのかもしれないです。(いやーん)

先日「エッダ 古代北欧歌謡集」を読んだ時も(感想)、基本となる「古エッダ」だけじゃ足りないなと感じたんですが、これを読んで、やっぱりスノリの「エッダ」に、私好みの面白いエピソードが多そうだと実感。スノリの「エッダ」は「古エッダ」を元に書かれていて、でもスノリ自身の創作も入ってもっとストーリー性があるんですよね。しかも、その後「古エッダ」の方で欠落してしまった部分がいくつかあるらしく、スノリのエッダ側からしか読めない部分もあるのです。
ページ数の関係からか、「ベオウルフ」や「シグルド」などの英雄伝説などは省略されていて、それが少し残念なんですけど、北欧神話入門編としては、結構いけてるんじゃないかと~。「エッダ・グレティルのサガ」「エッダ 古代北欧歌謡集」で、ちょっとパンパンに膨れ上がってた頭の中が、これでいい感じに整理されたような気がします。この本は、全10巻の「世界の神話シリーズ」の8冊目。このシリーズ、他のも読んでみようかしら?(筑摩書房)

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はやみねかおるさんのYA向けシリーズ「都会(まち)のトム&ソーヤ」の4作目。クラスメートが応募する、地元のタウン誌の自主制作映画コンテストの締め切りに間に合わせるために、内人と創也がマラソン大会を抜け出す「大脱走 THE GREAT ESCAPE」、「番外編 栗井栄太は夢をみる。」、究極のゲームを作るための資金作りに、内人と創也がテレビのオバケ屋敷探検番組に出演する「深窓の令嬢の真相」、そして「おまけ 保育士への道 THE WAY OF THE "HOIKUSHI"」。今回も前回同様、ショートショートを挟んで中編2編です。

相変わらずのテンポの良さが楽しいシリーズ。「深窓の令嬢の真相」も、いかにもこのシリーズらしい作品なんですが、今回は「大脱走」が面白かったな。ごく普通の中学校生活に、いかにもあり得そうな感じで馴染んでたので、その辺りが個人的にポイント高かったです。でも、前作はショートショートを挟んだ中編同士が繋がって1つの長編になっていたように思うんですけど、今回はそれぞれに独立した短編となっていたのがちょっと残念。そろそろ読み応えのある長編作品を読みたいなあ。
それにしても、「トム」と「内人」の関係にはびっくり。そして卓也の上司の黒川さんについてもびっくり! はやみねさんご自身が気付いてらっしゃらなかったというのは本当でしょうか!?(講談社YA! ENTERTAINMENT)


+シリーズ既刊の感想+
「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ 乱!RUN!ラン!」2 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ いつになったら作戦(ミッション)終了?」3 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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最近sa-ki さんに教えて頂いた本が続いてますが、これもそうです。たらいまわし企画・第24回「五感で感じる文学」で出してらした本。実は、池澤夏樹さんの作品を読むのは初めて。以前、須賀敦子さんが、「本に読まれて」の中で池澤さんの作品を何度も取り上げてらして、気になってたんですけど、なかなか機会がなく... ようやく読めました。

これは南の島に住むティオという12歳の少年を中心にした連作短編集。ティオは、父親がホテルを経営しているので、ジープを運転して父親と一緒に空港にお客を迎えに行ったり、観光客を山に案内したりもするんですけど、基本的に長閑な日々を送ってます。(観光客の案内や世話自体も、長閑な感じなんですが) そもそも、この島の人間は、政府や学校みたいなところで働いているんでなければ、大抵は気の向くままに海で魚を採ったり、山の畑を耕したりという暮らしぶりなんですよね。そして、そんなティオの島では時々、島の神さまや精霊の存在を感じさせる不思議な出来事が起こります。そういった出来事は、案外大きなことだったりするんだけど、でもあまりに自然なので、気がつかない人は気がつかないまま通り過ぎちゃう。この自然さは、例えば沖縄の人がマブイを持っているというような感じに近いかなあ...。不思議なことが起きるという意味ではファンタジー作品と言えるんですけど、どちらかといえば、もっと普通の、本当にあった話を聞くような感覚で読んでました。
私が読んだ本ば文庫本でしたけど、元々は児童書として刊行された本なんですね。道理で... という柔らかさが心地良いです。読んでいると、青い空と白い雲、眩しい陽射し、そよぐ風、真っ青な海といった、南国ならではの情景が目の前に広がるよう。なんだか、自分まで長閑に島の生活を送ってるような気がしてきてしまいます。日々の生活で、肩凝りのような状態になってた心が、柔らかく揉みほぐされるような感じ。
10編の短篇が収められているんですが、私が一番好きだったのは、受け取った人が必ず訪ねずにはいられないという絵はがきを作る、絵はがき屋のピップさんの話。あ、でもこれは不思議なことがごく自然に起きる話ではなくて、一番「書かれたファンタジー」っぽい作品なんですけどね。でもこのピップさんが、この1編だけにしか登場しないのは残念だったなあ。あと、「星が透けて見える大きな体」も好き。長閑な雰囲気が一変、この1編だけ現実の厳しさが迫ってくるような「エミリオの出発」も好きです。(文春文庫)


+既読の池澤夏樹作品の感想+
「南の島のティオ」池澤夏樹
「スティル・ライフ」池澤夏樹
「真昼のプリニウス」池澤夏樹
「夏の朝の成層圏」池澤夏樹
「バビロンに行きて歌え」池澤夏樹
「神々の食」池澤夏樹

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リンツ少年の住む国では、その頃、怪盗ゴディバによって富豪の家から高価な宝物が盗まれるという事件が相次いでおり、ゴディバを追う名探偵ロイズの活躍が注目されていました。リンツもロイズに憧れる1人。そんなある日、リンツは近所に住む新米新聞記者から、ゴディバがいつも現場に残していくカードの裏に、実は風車の絵が描かれているということを聞きます。それは犯人自身とごく一部の人間しか知らない情報。そしてそのことを聞いたリンツは、以前父と一緒に露店で買った古い聖書の表紙の破れ目に入っていた、1枚の地図のことを思い出します。その地図の裏にも風車小屋の絵があったのです。早速リンツはロイズに手紙を書くことに。

ミステリーランド第10回配本。
主人公が「リンツ」で、怪盗ゴディバや名探偵ロイズが登場することからも分かる通り、登場人物の名前とか地名はチョコレート関係の名前ばっかり。そのほかのこと、例えば濃い白い霧の現象は、地元では「ホワイトショコラ」と呼ばれてますし、ほんと全編チョコレートでいっぱい。でもチョコはチョコでも、ミルクチョコレートではなく、ブラックチョコレートなんですよね。かなりビターな味わいでした。平田秀一さんの挿絵がまたダークで、雰囲気を盛り上げてるし...。(怖かった)
ある意味、あっさりネタが見える部分もあったんだけど、でもこの展開はすごいですね。さすが乙一作品。一筋縄ではいかなくてびっくり。正直、こんなことでいいのか?!という部分はあったんですけど、でも面白かったです。読んでいて一番気に入ったのも、とんでもない悪がきの彼だったし...。戦争や移民問題などもさりげなく盛り込まれてるんですが、説教臭くないところがポイント高し。

ただ、世界各国のチョコの名前が入り乱れてるせいで、読んでいて「ここは一体どこの国?」的に落ち着かなくて、それだけはちょっと閉口しました。だってイギリス名やらドイツ名やらロシア名なんかが入り乱れてるんですもん。まあ、子供だったら気にしないでしょうけどね。
何も知らないでこの本を読んだ子供が、あの名前は全てチョコレート絡みだったのか! と後で気づいたら、楽しいでしょうねー。そういうの、ちょっといいかも。(講談社ミステリーランド)


+既読の乙一作品の感想+
「銃とチョコレート」乙一
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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折原雅之は船の模型を作るのが大好きな中学3年生。ある日、叔父を訪ねた雅之は、「海賊に会いたくはないか」という言葉と共に、叔父に不恰好な黒いラジオを渡されます。そしてそのラジオを通して、不思議な物語を聞くことに...。

ずいぶん前に彩水仙さんにオススメ頂いていた作品。その時に、空猫の図書室の空猫さんもお好きだと仰ってて気になっていたのですが、あいにく絶版となっていて、市内の図書館にもない状態。今回、ようやく読めました!
1人の男の子とラジオをめぐる、オムニバス形式... でいいのかしら、連作短編集です。全部で9編が収められているんですが、それぞれの題名はそのまんまラジオから流れてくる物語の題名でもあります。このラジオの物語が可愛くていいですねえ。童話風の物語あり、現代恋愛物ありと色々なんですが、どれもどこか不思議テイスト。毎回、唐突と言っていいほど突然始まるのに、現実の雅之の物語とほんのりリンクしているせいか、全く違和感なくその世界に入り込めてしまいました。この中では「ひとりぼっちのミーデ」と「ハッピー、ホップ、グリーン、ピー」が好きだなあ。
でも作中作の物語だけでなく、主人公をめぐる人々もいい感じ。特に良かったのは、ラジオをくれる叔父さんと、都会の学校から転校してきた神田さんかな。特に、雅之のおじさんが、シュヴァルの理想宮に憧れて...というクダリは、おじさんらしくて良かったし。コバルト文庫というと、ちょっと色眼鏡で見てしまいがちな私なんですが(失礼)、これは普通の児童書(YA)のレーベルから出して欲しい作品かも。久下じゅんこさんの挿絵も素敵でした。(集英社コバルト文庫)

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24歳だった頃の森絵都さんのエッセイ。全編恋のことばかり。そして森絵都さんの体験からの言葉ばかり。高校のクラスメートだった彼への初恋から、半年後にそれを失ったこと、どうしても意地ばかり張ってしまう話、そんな初恋を経験する前の詰まらなかったデートの話、そして「無人島幻想」などなど。
「どんなに辛い恋だって、何年かたてば笑い話になるもんだ」と言い古された言葉を嘘だと言い切り、「がんばれ。」と言う言葉には、森さんの実体験としての重みがありました! 高校生ぐらいの女の子なら、かなり励まされるのではないでしょうか~。そしてこういう風に自分の学生時代のその時々の気持ちを鮮明に覚えているからこそ、今の森絵都さんの作品があるのですね。「リズム」も「ゴールド・フィッシュ」も「DIVE!!」も「アーモンド入りチョコレートのワルツ」も「カラフル」も他の作品も、こういう森絵都さんが書いてるんだなあって、しみじみと感じます。普段の小説とはまた違う、それでいてやっぱり同じ人なのだと納得できる、森さんの素顔が見えてきました。とても爽やかで清々しいです。(大和書房)


+既読の森絵都作品の感想+
「いつかパラソルの下で」森絵都
「にんきもののひけつ」「にんきもののねがい」「にんきものをめざせ!」「にんきもののはつこい」森絵都
「あいうえおちゃん」「流れ星におねがい」森絵都
「ぼくだけのこと」森絵都
「いちばんめの願いごと」森絵都
「屋久島ジュウソウ」森絵都
「風に舞いあがるビニールシート」森絵都
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」森絵都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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フロレンティア滞在中にエルディア国王の訃報を聞いたキャサリンは、父・エリオット卿と共にエルディアへ。しかしキャサリンは、初めて知ったエルディアの特殊なしきたりに驚かされます。必ず直系男子が王位を継がなければならないとされているこの国では、息子がいることが国王となる大きな条件。そのため皇太子が16歳になると、妃八家と呼ばれる8つの有力貴族の家から娘たちが側室に送り込まれ、現在まだ独身の20代の皇太子にも、12歳の息子が既に5人いました。先にできた5人の息子たちが次期皇太子となる権利を持ち、新国王が即位する時に次期皇太子が定められ、国王はその息子の母親と結婚するのです。一方、エルディア有数の漁港・エルラドの魚河岸の一角の食堂では、ケイティとダムー、ベラフォードの目の前でヴィンセントが攫われて...。

上下巻になる予定が上中下巻になって、結局完結まで2年も待たされてしまいましたー。上巻を買ったのは丁度2年も前ですよっ。前はあんなに好きだった茅田砂胡さんなんですけど、なんとか読み続けてるのはこのシリーズぐらいですね。それもここまで待たされると、もういいかなって気にもなってきますが...。そもそも「デルフィニア戦記」が大大大好きだったのに、「暁の天使たち」以降はどうもダメ。作者だったら何をやっても ok なのか的なキャラ遊びがイヤになってしまって、続く「クラッシュ・ブレイズ」のシリーズも全然読んでないし。それでも「デルフィニア戦記」の外伝「大鷲の誓い」は、つい買ってしまったんですが... 読みたいんだけど、読むのが怖い。(笑)
さて、このレディ・ガンナーのシリーズも4作目。今回も相変わらずのドタバタぶりが楽しかったです。キャサリンや異種人類の仲間たちの活躍が、最早無敵すぎる気はするんですけど、でもやっぱり読んでて爽快。そして今回は、初登場のギデオン伯爵や鷲のドーザがかっこよかったです。王家の奇妙なしきたりに関しても面白かったですし... 実の親に役立たずと判断されてしまった息子や娘たちが哀れではありましたが。(でもやっぱり女性は強いなー というか男性は脆いなー)
キャサリンの国バナディスのイメージはイギリス。次に行ったゲルスタンはドイツ、ローム王国はイタリア、そして今回のエルディアのイメージはスペイン。次々に違う国がモデルとなっているらしいところも、このシリーズのお楽しみの1つです。(角川スニーカー文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「レディ・ガンナーの冒険」「レディ・ガンナーの大追跡」「レディ・ガンナーと宝石泥棒」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「レディ・ガンナーと二人の皇子」上中下 茅田砂胡

+既読の茅田砂胡作品の感想+
「大鷲の誓い」茅田砂胡
Livreに「デルフィニア戦記」「桐原家の人々」「スカーレット・ウィザード」の感想があります)

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昨日に引き続きの森絵都さん。こちらも児童書です。
まず「あいうえおちゃん」の方は、森絵都さんの文章と荒井良二さんの絵によるあいうえお絵本。
きすに ったら きらめな」「んどに ったら んどかれー」みたいな、リズムのある文章がたっぷり。やっぱりこれは小さな子供が楽しむ本なのね、なんて思いながら見てたんですけど...
途中で「しごとに しっぱい しゃっきんく」「そうり(総理)も そろそろ そだいごみ」「りんぐで りゅうけつ りきどうざん」「りょうしん りょうほう りすとらちゅう」なーんていうのも出てきてびっくり。これってあまり子供向けとは言えないのでは... むしろ大人向けの絵本なのでしょうか? うーん、対象年齢がどっちつかずでで、ちょっと収まりが悪い気もするのですが... 大人向けなら大人向けで、思い切りブラックにしても面白かったかもしれないですね。でもこういうのを読んでいると、思わず自分でも1つ2つひねり出してくなってきます。

そして「流れ星におねがい」は、運動音痴なのに、運動会のクラス対抗リレーに選ばれてしまった桃子のお話。学年ごとに4クラスで競い合うリレーは学校の名物。各学年の優勝したクラスは、校長先生にプレゼントをリクエストできるのです。桃子のいる4年3組は、優勝したらサッカーボールをリクエストすると決めていました。そしてまずリレーの選手となったのは、男子で一番足の速いウルフと、女子で一番足の速い西川さん。でもあとの2人が決まりません。もし負けたら、しばらく肩身の狭い思いをすることになるのは確実。それが嫌で、みんな他人に押し付けあっていたのです。結局、選手を押し付けられたのは、体育係の桃子と圭太郎。でも桃子の50メートル走のタイムは11秒台。落ち込んだ桃子は、用務員の仙さんのところへ。

まあ、言ってみればありがちな話なんで、最初は一歩引いて読んでたんですけど... 知らないうちに感情移入してたらしくて、最後にはじわーり。我ながらびっくりです。このお話は、何といっても用務員の仙さんがいいんですよね。仙さんの流れ星の話を聞いた桃子は、その流れ星に桃子のクラスが優勝するようにお願いして欲しいと頼みこむんですが、仙さんの答えは、「桃ちゃんのクラスが優勝したら、ほかのクラスが負けることになる。勝ちたい気持ちはみんなおなじじゃないのかな?」。ここで「じゃあ、お願いしておいてあげようね」と答えるのは簡単だし、たとえそれで優勝できなかったとしても桃子は納得したはずなのに、そこで敢えて「桃子のクラスが勝つ=他のクラスが負ける」と教えてくれる仙さんが素敵。そしてこういう前提があるからこそ、一念発起した桃子が頑張る場面が効いてくるんじゃないかと♪ (童心社フォア文庫・理論社)


+既読の森絵都作品の感想+
「いつかパラソルの下で」森絵都
「にんきもののひけつ」「にんきもののねがい」「にんきものをめざせ!」「にんきもののはつこい」森絵都
「あいうえおちゃん」「流れ星におねがい」森絵都
「ぼくだけのこと」森絵都
「いちばんめの願いごと」森絵都
「屋久島ジュウソウ」森絵都
「風に舞いあがるビニールシート」森絵都
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」森絵都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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先日のたらいまわし企画「笑う門には福来たる! "笑"の文学」で出した「にんきものののねがい」ですが(記事)、4冊全部読んでみましたー。いやあ、面白かった! やっぱりこのシリーズはイイ!です。

「にんきもののひけつ」 ... 「こまつくん」の人気の秘密を探ろうとする「けいたくん」の話。
「にんきもののねがい」 ... 実は誰にもあだ名で呼んでもらったことがない「こまつくん」の密かな悩みの話。
「にんきもののはつこい」 ... クラスの男子のアイドル、だけど女子には嫌われ者「きさらぎまいこ」の話。
「にんきものをめざせ!」 ... 「けいたくん」が好きで、バレンタインのチョコをあげた「かなえ」の話。

それぞれ主人公は違いますが、お話も登場人物も繋がってます。どこから読んでも大丈夫。

そして私は先日、「にんきもののねがい」を笑える本として出したんですが...
いえ、これも笑える本なんですけど、これは「くすくすっ」レベルなんですよね。これよりも「にんきものののひけつ」ですよ! これがオモシロイ!! いやー、こう来るとはねー。ヤラレタ!! 途中で思わず爆笑してしまいましたよ。ええと詳しく紹介すると...

同じクラスの「こまつくん」はバレンタインの日に27個もチョコレートを貰ったのに、「ぼく」が貰ったのは、コンビニの値札のついた義理チョコ1個だけ。どうやら「こまつくん」の方が人気者だからみたいなんだけど、「こまつくん」とほとんど話したことのない「ぼく」には、どこがそんなに人気なのかよく分からない。確かに「こまつくん」は、顔も頭も運動神経がいいけれど... きっともっと何か違うものがあるはず!
...そして「けいた」は「こまつくん」の人気の秘訣を探ることに、というお話。

読んでると、「こまつくん」の人気の秘訣がよーくよーく分かります。いやー、いいわー。
それにしても、今回は図書館で読んでなくて良かったです。危うく思いっきり注目を集めてしまうところでした。(笑)

もちろん、「にんきものをめざせ!」「にんきもののはつこい」の2冊も面白いです!
でも最初の2冊に比べると、ややパワーダウンかな。もしかしたら、最初の2冊に比べて、少し対象年齢が上がってるような気がするせいかもしれないです。最初の2冊が幼稚園の時から楽しめる本だとすれば、「にんきものをめざせ!」は小学校2年生以上、「にんきもののはつこい」は3・4年生以上というイメージ。(個人差もあるし、単なるイメージですが)
特に「にんきもののはつこい」では、いや~な女「きさらぎまいこ」がいい味出してるんですけど、こういうのを理解するには、やっぱりそのぐらいの年齢の方がいいような気がしますね。「ましょうのおんな」なんていうのも出てくるし。(笑)
そして大人になってから読むと、こういう子いたよねえ、なんて懐かしく読めるかと♪(童心社)


追記: 読む前にパラパラ~とめくってしまうと、爆笑ポイントを見てしまう恐れがありますので、ご注意を♪


+既読の森絵都作品の感想+
「いつかパラソルの下で」森絵都
「にんきもののひけつ」「にんきもののねがい」「にんきものをめざせ!」「にんきもののはつこい」森絵都
「あいうえおちゃん」「流れ星におねがい」森絵都
「ぼくだけのこと」森絵都
「いちばんめの願いごと」森絵都
「屋久島ジュウソウ」森絵都
「風に舞いあがるビニールシート」森絵都
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」森絵都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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その頃、神降市で起きていたのは、野良猫の連続殺害事件。猫はただ殺されているだけでなく、そのたびに首や手足が切り取られて持ち去られていました。芳雄のクラスメートが可愛がっていた猫も、3日前に4匹目の犠牲者となったばかり。そんなある日、トイレ掃除で一緒になった転校生の鈴木君に話しかけた芳雄は、鈴木くんが自分のことを神様だと言うのを聞いて驚きます。鈴木くんが真面目なのか冗談を言ってるのか判断がつかなかった芳雄は、自分や周囲の人々のこと、そして猫殺しの犯人について訊ねることに。

ミステリーランドの7回目の配本。同時配本は、田中芳樹氏の「ラインの虜囚」。小学校最後の夏休みの冒険譚、みたいな話ばかりが続いて食傷気味だったミステリーランドなんですが、違うタイプの作品も増えてきたようですね。「ラインの虜囚」は、「三銃士」や「紅はこべ」が好きな人には堪らない作品だし(感想)、こちらの「神様ゲーム」もまた一味違いました! これはともっぺさんのオススメ。そういえば「ラインの虜囚」も、ともっぺさんにオススメいただいたんですよねえ♪
そしてこの作品は、一言で言って、「さすが麻耶さん!」 かなりブラックではあるんですけど、ミステリーランドというレーベルに相応しくとても分かりやすい展開。それでも麻耶さんの作品なので油断せずに読んでいたんですが... うわあ、最後の最後が! そうきましたか! さすが「夏と冬の奏鳴曲」の作者だー。うわー、この感覚は久々です。実は麻耶さんの作品は、最初に読んだ「夏と冬の奏鳴曲」のインパクトが強すぎて、他の作品にやや物足りないものを感じていたんですけど... いえ、普通は他の作品の方が読みやすいと思うんですが、「夏と冬の奏鳴曲」の、不可解さに頭がぐるぐるしてしまうような感覚が忘れられなくなってしまった私にとっては、ということです。そしてこの作品は、それ以来のぐるぐる感。もう、嬉しくなってしまいましたー。

でも本当にワケ分かんないです。これは結局どういうことだったの...???(ヲイ)

この作品で一番面白かったのは、やっぱり鈴木くんの存在ですね。自分のことを神様だと言い、「きみといろいろ話せて楽しかったからね。そのお礼だよ」と、簡単に犯人の名前を明かしてくれる鈴木くん。神様を前にしてしまうと、ミステリ的な論理的な推理は存在しません。そこにあるのは、ただ「真実」だけ。でも、鈴木くんは本当に「神様」なのかどうか... 信じていいのか分からない読者(芳雄もですが)にとっては、それは逆に持て余してしまうような真実。
この作品は子供には読ませたくない、という意見は多いし、その気持ちも分かるんですけど... ええと、やっぱりダメですかね? 私自身は、別に構わないんじゃないかなって思うんですけど... 少なくとも第1回目配本の某作品みたいな後味の悪さはなかったと思うし、これなら許容範囲かと... でも、そんな意見は少数派なんでしょうね。限りなくゼロに近かったりして。(笑)(講談社ミステリーランド)


+既読の麻耶雄嵩作品の感想+
「神様ゲーム」麻耶雄嵩
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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作家の「ピエールさん」が眠っている間にみたのは、とても美しいお話の夢。それは、ピポ王子の物語。跡継ぎの息子がいなくて悲しんでいた王さまは、王妃さまのアドバイスで、"水のほとりの大魔女"に相談しに行き、"新生児デパート"でピポという名前の赤んぼうを見つけます。王さまは、15歳になったら赤い小馬をあげるという約束で、ピポを自分の子供にするのですが...。

物語自体はいかにも子供向けの冒険ファンタジーで、例えばエルショーフの「せむしの小馬」のような雰囲気。でも「とても美しいお話の夢」の話から始まるせいか、まるで夢の中の出来事みたいです。夢の中で、見る見るうちに怪物が迫ってくるのに、身体が重くて思うように走れない時のような、自分が夢を見ているのが分っているのに、どうしても目を覚ますことができない時のような感覚。そして夢の中ってかなり唐突に場面が変わっても、夢を見ている本人は自然に受け入れてしまいますよね。それと同じような感じ。
「夢」が絡むことによって、普通の冒険物語がすごく重層的な構造になることにびっくり。なんだかとっても不思議な感覚の作品でした。これは何だったんだろう? どういう意味があったんだろう? と思う部分が多くて、一読しただけではつかみきれなかったんですけど、色々なモチーフにはそれぞれ深い意味が隠されていそうです。なんだかとっても気になる、後を引くタイプの作品でした。(ハヤカワ文庫FT)

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山田香な子は、半年前に葛飾区お花茶屋に引っ越してきた小学校5年生。香な子の不幸は、まずクリスマス・イヴが誕生日だということ、山田香な子なんて平凡な名前であること、そして両親の仲が良すぎて、父が母と少しでも長くいるためにと母と同じ職場に転職してしまったこと。そして香な子の通う小学校では、隣の席は小森くん。香な子にとっては、これといって特徴のある男の子ではないのですが、ある日、クラスメートの中でも特に可愛い町野ノドカに、小森くんをデートに誘うのを手伝って欲しいと頼まれて...。

本当はうめさんに「笑う招き猫」をオススメされていた山本幸久さんの作品。「笑う招き猫」も買ったんですが、家に置いてきてしまったんですよねえ。(今は祖母の家です) そしたら父が偶然この本を持っていて、先に読むことに。ああ、もう、なんて可愛らしい初恋物語なんでしょう!
町野さんに協力を頼まれるまでは何とも思っていなかった小森くんのことが、気になっていく過程がとても丁寧に描かれてますし、どのエピソードを取っても、もうほんと可愛いくて~。京成本線での密かなデート、学校で見ているよりも小森くんが大人っぽく見える場面、可愛さでは自称クラスで8番目(笑)の香な子が、自分と町野さんの違いを比べる場面、香な子の抜け駆けに怒った町野さんに逆に闘志を燃やす場面... ずんずんと引き込まれちゃいました。
香な子の両親や義昭オジサン、元モデルで美人でちょっと怖い鎌倉先生、小森くんのお母さんなど、脇役の面々も魅力的。お父さんの前の会社での頑張りぶりや会社を辞めたエピソードも効いてるし、小森くんのお母さんが未来の顔を描くというエピソードもいいですねえ。日下くんが天文にのめりこんでいく様子も微笑ましくて応援したくなります。爽やかでほのぼのとして、気持ちが柔らかくなれるような作品でした。「笑う招き猫」も早く読まなくっちゃ!(ポプラ社)


+既読の山本幸久作品の感想+
「幸福ロケット」山本幸久
「笑う招き猫」山本幸久

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滝沢馬琴による「南総里見八犬伝」を、浜たかやさんが児童書用に編集したもの。山本タカトさんの表紙絵に惹かれて、ずっと読んでみたかったんですけど、お正月にテレビドラマを見て、いてもたってもいられず読んでしまいましたー。1巻は「妖刀村雨丸」、2巻は「五犬士走る」、3巻は「妖婦三人」、4巻は「八百比丘尼」。

こうやって並べると凄いですね、壮観。実際に手に取ってみても、やはりこの表紙は美しかったです~。表紙だけでなく挿絵も山本タカトさんで、随所に登場人物画が挿入されているのが、またイメージを掴み易くていいんです。
私は子供の頃に他のリライト版を読んだだけで、原作の現代語訳なんてものは読んでないので、他のリライト版に比べてこれがどの程度のレベルなのか良く分からないんですが、解説によると、原作を六分の一から七分の一ほどに縮めてあり、後半部分はかなり思い切って割愛、ストーリーを単純で分かりやすくして、約400人と言われる登場人物も大幅に整理したのだそう。数多い敵役を整理して籠山逸東太に兼ねさせたり、原作にはいない人物を作り出したり、最後の決戦に犬江親兵衛を登場させるなど、エピソードを変えた部分も多々あるのだそうです。でもそういう違いがあっても、読み手がきちんと認識していればいいことですしね。(読者が必ず解説を読むとは限らないけど) おそらく八剣士や他の登場人物たちのそれぞれの性格も、原作よりも分かりやすく強調されているんでしょうね。正義の味方も悪役もそれぞれに個性的で、すごく楽しかったし面白かった! 児童書なので、さすがに字は大きいんですが、これは入門編にぴったりかと。という私もいずれは岩波文庫から出ている全10巻の現代語訳を読破したいなと思ってるのですが、この4冊で一通り満足してしまったので、ちょっと先の話になりそうです。(^^ゞ (偕成社)

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前の晩、一世一代の決心で3軒先に住む大学生・亨に誕生日カードを書いて出してしまったことを激しく後悔していた「つばめ」は、その日の午後、いつものように書道教室の後にビルの屋上へ。そして目に入ったのは、見慣れないキックボード。そして派手で意地悪そうな「星ばあ」。つばめは星ばあにキックボードを教える代わりに、亨へのカードを取り戻してもらうことに。

宙の本棚の小葉さんに教えて頂いた本です。
とっても可愛い作品でしたー。まず主人公の中学生のつばめの気持ちが1つずつすごくリアルに伝わってくるんですよね。外から見ると安定してるつばめも、その内心はそれほど安定しているわけではなくて、3 歳の時に自分を捨てた本当の母が書家だったことから書道を始めてみたり、自分の恋心を意識した途端に「亨くん」と話せなくなってしまったり(あるある)、実際には大したことを書いていないカードでも、出したことを1日中後悔してみたり。さらには隣の「いずみちゃん」が家を出た話で、「ママ」に苛ついたり。そんな1つ1つの気持ちがすごく伝わってくるんです。でもそれだけだと普通の話なんですが、この物語を引き締めているのが、意地悪な魔女のような星ばあの存在。言葉遣いが悪くて下品、ずけずけと意地悪なことばかり言うのに、どこか憎めないんですよねえ。空を飛べるなどという突飛な言葉も、このおばあさんなら本当に出来そう... なんて思っちゃう。つばめがついつい色々なことを話してしまうのも分かるんですよねえ。気づけば、2人の会話に引き込まれちゃってました。
星ばあの屋根に関する薀蓄も面白かったし、くらげのように夜空を飛んでいる夢のシーンが印象的。そして人のことには威勢が良くても、自分のことになると途端に意気地がなくなる星ばあが可愛く見えてくるラスト。優しさと暖かさが広がります。(ポプラ社)

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19世紀初頭のパリ。父の訃報を持ってカナダからフランスに渡ったコリンヌは、祖父であるギイ・ド・ブリクール伯爵に会いに行くのですが、勝手にカナダに出奔して原住民と結婚した息子のことを、伯爵は既に息子とは認めていませんでした。伯爵はコリンヌに、パリの東北東、ライン河岸に立っている古い塔に幽閉されている人物の正体を調べれば、コリンヌを孫娘として認めると言い出します。実は9年前にセント・ヘレナ島で亡くなったというナポレオンが実はまだ生きていて、その塔に幽閉されているという噂があったのです。

「小学校最後の夏休みの冒険譚」みたいなのばかりで、ちょっと飽きがきてたミステリーランドなんですが(失礼)、これはまるで違う西洋史物。しかも冒険活劇。ふわふらのともっぺさんから、「三銃士」や「紅はこべ」が好きならきっと気に入ると教えて頂いたんですが、確かにこれはいい! 楽しかったです。目次からして、第一章「コリンヌは奇妙な命令を受けパリで勇敢な仲間をあつめる」、第二章「コリンヌは東へと馬を走らせ昼も夜も危険な旅をつづける」なんて説明口調。どことなく懐かしくて楽しいし、子供のためのレーベルであるミステリーランドに相応しい良質な作品だと思います。あとがきには、なぜ田中芳樹さんがこういう物語を書こうと思ったのかも書かれていて、その気持ちにもとっても納得。
ナポレオンが生きているという噂は本当か? という大きな謎はもちろん、爵位にも財産にも興味のないコリンヌが、なぜ伯爵の言う通りにするのか、そしてなぜ伯爵がそのようなことをコリンヌにやらせるのかなどちょっとした謎もいくつかあって、それらが全てきちんと解決されるのが気持ち良かったです。そしてコリンヌがパリで見つける3人の仲間も、アレクサンドル・デュマやカリブの海賊、ジャン・ラフィットといった実在の人物なんです。そういう風にきちんとした歴史の中に架空の人物を放り込んで活躍させるような話って大好き。子供には勿論、大人が読んでも十分楽しめる作品です。(講談社ミステリーランド)

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去年「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」と読み進めていた守り人シリーズ。その後、積読本減らしのために図書館自粛期間に入ってしまって途切れていたのですが、ようやく続きが読めましたー。やっぱりこのシリーズはいいですねえ。決して派手じゃないんだけど、すごく好きです。ハードカバーだし、字が大きいから図書館で借りてるけど、文庫本になってくれたら絶対揃えるのに! そしてバルサとチャグム皇子の出会いから始まったこのシリーズ、どうやらバルサを主人公にした「守り人」シリーズと、チャグム皇子を主人公とした「旅人」シリーズに枝分かれしたようですね。今回4冊積み上げてて気づいたんですが、「守り人」は二木真希子さん、「旅人」は佐竹美保さんがイラストを描くことになったのかしら?
今までは一応1冊ずつで完結してたんですが(「神の守り人」は2冊組ですが)、「蒼路の旅人」は、これだけでは完結していません。というか、ここからまた新たな物語が始まったみたいな感じ。(表紙の色合いがこれだけ違うのも、それを意識してるのでしょうか) この行方がどうなるのか早く読みたい! バルサやタンダも好きなんですけど、チャグム皇子も好きなんですよねえ。
そして守り人&旅人スペシャルサイトなんてものも見つけました。次は守り人の物語が出るそうなんですが、既に「炎路の旅人」という作品も書かれているようで... これに関しては、「読みたいという読者の声がありましたら、いずれ出版する機会もあるかなぁと思っております」とのこと。勿論読みたいに決まっていますとも! ぜひぜひ出版をお願いしたいものです。
2つに枝分かれしたシリーズも、最終的にはまた1つに戻るのでしょうね。これからどのような物語になっていくのか本当に楽しみです。(偕成社)


+シリーズ既刊の感想+
「精霊の守り人」「闇の守り人」「夢の守り人」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虚空の旅人」「神の守り人 来訪編」「神の守り人 帰還編」「蒼路の旅人」上橋菜穂子
「天と地の守り人」1~3 上橋菜穂子
「流れ行く者 守り人短編集」上橋菜穂子
「バルサの食卓」上橋菜穂子・チーム北海道

+既読の上橋菜穂子作品の感想+
「獣の奏者」1・2 上橋菜穂子
Livreに「狐笛のかなた」の感想があります

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今回の「セ・シーマ」の「名探偵夢水清志郎の謎解き紀行」は、なんとオリエント急行が舞台。トルコのイスタンブールからフランスのパリまで列車の旅をするというのです。早速イスタンブールへと飛ぶ夢水清志郎。そして同じ列車に乗ることになったのは、怪盗クイーン、探偵卿、海賊、トルコの犯罪組織・黒猫の双子の兄妹... 残念ながら、今回岩崎三姉妹は留守番です。

今回は名探偵夢水清志郎(教授)と怪盗クイーンが共演なんですが、なんと挿絵も共演です。村田四郎さん描かれる教授と、K2商会さん描かれる怪盗クイーンが表紙に! ...なのですが、あまりの違和感のなさに、最初全然気付かなかった私... 私の目って変?!
可笑しかったのは、教授とクイーンが季節の贈り物をする間柄だったってこと。クイーンのカリブ海クルージングのお土産のお返しに教授が送ったのは、コタツやみかん、綿入れ半纏などが入った「日本の冬気分セット」ですって。半纏を着てコタツに入ったクイーン、機嫌よく手作りおでんなんかも用意しちゃいます。ま、それがまたジョーカーを怒らせることになるのですが...。
結果としては引き分けなんですけど、どうも印象としては教授の方がいいとこが多かったような気がします。クイーンはジョーカーにこっぴどく叱られるし、1人トルバドゥール号出て行っても誰にも心配してもらえないどころか... だし、変装をあっさり見抜かれてしまったりもするし... 逆に、いつもは暇さえあれば意地汚く食べている印象の教授(今回もかなり食べてますが!)、なかなかかっこ良かったです。でも岩崎三姉妹がお留守番で、出番がほとんどなかったのが残念。次回はぜひみんな一緒で! (講談社青い鳥文庫)


+シリーズ既刊の感想+
ブログにはこれ以前のシリーズ作品の感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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舞台は平安時代。自分のせいで異母妹の比右子を死なせてしまい、悶々とする12歳の小野篁が主人公。最後に一緒に遊んでいた荒れ寺へと向かった篁は、ふとした拍子に、比右子が転落した古井戸に吸い込まれてしまいます。気がつくと、そこは石ころだらけの河原。そこには大きな河と立派な橋があり、行くあてもない篁はその橋を渡り始めるのですが... ふと気付くと篁を食べようと狙っている鬼がいたのです。

以前、たまきさんに薦めて頂いた本。児童書です。
昼は朝廷に仕え、夜になると冥府に通って閻魔大王のもとで役人として働いていたなんて伝説のある小野篁の少年時代の物語。妹と恋仲だった、なんて話もありますね。大人になった後の篁は有能な官僚として有名なんですが、ここに描かれた少年時代の篁には、その片鱗はまだ全然ありません。異母妹の死をいつまでもくよくよと悩んで、生きていく気力も半分失っているような状態。鬼に襲われたところを坂上田村麻呂に危機一髪助けてもらうのに、またしても古井戸の中に舞い戻ってしまう始末。
これは、そんな篁が立ち直っていく成長物語なんですが、私がいいなあと思ったのは、3年前に死んでいるはずの坂上田村麻呂。橋の向こう側に渡ってしまいたいのに、帝から「死後も都を守れ」なんて、武装した姿で立ったまま葬られたせいで、どうしても向こう側に行けないんです。立派な武人だから、帝の言葉通りに京の都をしっかり守ってはいるんだけど、でも本当は向こう側に行きたいんですよね。友人知人もどんどん橋を渡ってしまうのに、なぜ自分だけが... と思いつつ、でも自分にできる精一杯のことをしている田村麻呂の姿がなんとも哀しくて。
そんな田村麻呂の姿もそうだし、田村麻呂に角を1本取られたせいで鬼でもなく人間でもない状態になってしまった非天丸の姿もと篁と重なって、なんとも切なかったです。それだけに、異母妹の死を乗り越えた篁の姿が一層感慨深く... うーん、いい話だわー。(福音館書店)

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■「雨鱒の川」川上健一 [amazon]
本が好き!お気軽読書日記のもろりんさんのオススメ。美しい自然を舞台にしたなんとも美しい純愛物語。中心となっている2人が10年経ってもまるで変わらないのは、変わりゆく自然との対比? 評判通り、方言がいい味を出していました。東北の言葉ってほとんど馴染みがないし、最初は全然意味が分からなくて、読みづらかったんですけどね。(集英社文庫)


■「時計坂の家」高楼方子 [amazon]
Cross-Roadの瑛里さんが、先日BookBatonで思い入れのある作品として挙げてらしたので興味を持っていたところ、たらいまわし企画でも妖精と黒薔薇の書架のつばきさんが挙げてらっしゃいました。これは児童書ですが、とても奥が深いファンタジー。読み返すたびに新たな発見がありそうな作品です。作中ではC.S.ルイスのナルニアが引き合いに出されていたんですが、この独特の雰囲気は、フィリッパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」に近いような気がします。高楼方子さん、いいですねえ。他の作品も読んでみたいな。(リブリオ出版)


■「ぐるりのこと」梨木香歩 [amazon]
これはエッセイ。境界線とそのこちら側、向こう側の話が多かったです。で、改めて考えてみると梨木さんの書かれる物語もそういう話が多いような。(新潮社)


■「プールに住む河童の謎」緑川聖司 [amazon]
児童書です。「晴れた日は図書館へいこう」が面白かったので、期待していた緑川聖司さんの新作。こちらもなかなか可愛らしい作品でした。森友典子さんのイラストも作品のイメージにぴったり。大人のミステリ読みはすぐにピンと来るでしょうけど、この謎がまた児童書にぴったりだし~。相馬くん、可愛かったなあ。でも宝石店に関する記述には納得できないものがいくつか。こんなことを子供が本当に信じ込んだらイヤだわあ。(小峰書店)


■「ベルガリアード物語」全5巻 デイヴィッド・エディングス [amazon]
Baroque Midnight Gothic Twilightの森山樹さんに教えて頂いたシリーズ。異世界ファンタジー好きには堪らない本格的なエピック・ファンタジー。「指輪物語」の本流を汲む作品だと解説にはあったけど、読み始めはむしろロイド・アリグザンダーのプリデイン物語のシリーズみたいでしたね。面白かったです。かなりボリュームのある作品なのですぐには無理だけど、これは絶対また再読したくなるだろうな。この物語の前日譚(?)「魔術師ベルガラス」全3冊が今月から出始めてるそうなので、そちらも買ってこなくっちゃ。(ハヤカワ文庫FT)


■「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ [amazon]
どれもものすごーくダイアナ・ウィンジョーンズらしい作品で、続けて読むとちょっと胸焼けがしそう... とは言っても、どれも作風は違っていて、DWJの引き出しの多さにびっくりなんですけどね。「マライアおばさん」は、ほんとヤなヤツだらけで、誰が味方なのかも分からないほど。毒気がいっぱい。「七人の魔法使い」の方が明るくて楽しかった。本当にこの終わりでほんとにいいの?って感じでしたが...。「時の町の伝説」はタイムトラベル物。ちょっとややこしかったけど、歴史の捉え方が面白かったです。(徳間書店)


■「妖女サイベルの呼び声」「影のオンブリア」パトリシア・A・マキリップ [amazon] [amazon]
どこまで行ったらお茶の時間の七生子さんのオススメ。どちらも重厚で寡黙な独特のな雰囲気がすごく素敵な作品でした。まるで神話みたい。少しでも飛ばすとすぐ分からなくなってしまいそうで、そういう緊張感も久しぶりでした。マキリップも色々と読んでみたい! 「影のオンブリア」の「オンブリア(Ombria)」は、舞台となる都の名前。それ自体が影を連想させる言葉なので(仏語の「影」はombre、伊語だとombraだし)重箱読みしてるような妙な気分だったんですけど、読んでみるとなんともぴったりな名前でした。KinukoY.Craftさんのイラストの表紙も、ほんとぴったりで素敵。この「影のオンブリア」を原作として、岡野玲子さんが「コーリング」を描かれてるのだそうです。→間違いでした。「妖女サイベルの呼び声」が原作なんですって。maki さん、ありがとうございます!(ハヤカワ文庫FT)


■「ウルフタワー」全4冊 タニス・リー [amazon]
訳のせいもあるんでしょうけど、これじゃあまるでライトノベル。コバルトに入っててもおかしくないぐらい。原文がどうなってるのかは知らないですけど、なにもこんなに軽く訳さなくても...。たまに惹かれる部分はあるものの(主人公の相手役がかっこよかった)、全体にタニス・リーらしさがあまり感じられなくて残念。(産業編集センター)

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「都会(まち)のトム&ソーヤ」シリーズの第3弾。今回も楽しかったです。2~3度、思わず噴出してしまった場面もありました。デートの下見だの文化祭だの、中学生らしくっていいですねえ。今回、内人の「おばーちゃんの知恵袋」(勝手に命名)も結構あったので、かなり満足。でも、創也がどんどんボケキャラになってるのは... これでいいのでしょうか...?(クラスメートは創也が目の前でボケてても全然本気にしてないけど・笑) そして創也のお目付け役の卓也さのシャドー保育ったら!(爆笑) 彼に幸せが訪れる日は本当に来るのでしょうか...。
それと新たな敵役も登場しました。この人は次回以降レギュラーになるのかな? 次回も楽しみです。(講談社YA! ENTERTAINMENT)


+シリーズ既刊の感想+
「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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岩波少年文庫再読計画第5弾。南極に生まれたペンギンのルルとキキの冒険物語です。有名な作品なので、読んでる方も多いのではないかと思うのですが、実は私は今回読むのが初めて。きっと自分で字が読めるようになってすぐぐらいの時に読むのに向いてる本だと思うんですけど、すっかりタイミングを逃してしまったんですよね。その後ちょっと気になりつつも、先にカレル・チャペックの「長い長いお医者さんの話」を読んで、こちらがものすごーく気に入ってしまっていたもので、なんだか二番煎じのような気もしちゃってたんですよねえ。
でも実際読んでみて、全然思ってたのとは違ってました。字も大きいし易しいし、読み始めたらすぐ読めちゃうような作品なんですが、短い物語の中に人生の色々なことがぎゅっと濃縮されてました。でも全然説教臭くなくて、するすると楽しく読めちゃう。人気があるのも分かります。こういう作品は、やっぱり子供の時に読んでおかなければ! でもこんな風に読み逃していた作品を読むと、再読計画をやって良かったな~って思います。そうでなければ、読むチャンスってなかなか巡ってこないですものね。(岩波少年文庫)

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バッテリー最終巻。今年の初めに出てたんですけど、なんだかあんまり読みたくなくて(図書館自粛中だったというのもあるけど、それ以上にこれで終わっちゃうというのがねー)、半年も経ってしまいました。
今回読むに当たって、期待し過ぎは禁物とあまり自分の中で盛り上げすぎないようにしてたんですが、それが逆に裏目に出ちゃったかもしれません。いや、なんだかあっさり味でしたね。横手二中との試合を間近に控えて、巧や豪が中心となって話を引っ張っていくのかと思ったら、そうではなくてちょっとびっくり。むしろ中心となって話を引っ張ってるのは、新田東の海音寺や横手の瑞垣じゃないですか。巧と豪は、あれでいいの? もっとぶつけたいものがあるんじゃないの?
それに青波の出番が少なかったのも残念だったんですよね。彼はもっと違った風に巧をあっと言わせてくれる存在になると思ったんだけどな... ある意味、巧の意識を根底から覆す存在となってくれるのを期待していたというか。彼もまた大きな成長を遂げたんでしょうけど、「そういうのじゃなくて...!」とモドカシイ。...そう、彼に限らず、どこを読んでいても、なんだかモドカシくて仕方なかったです!
今回は、淡々と話が流れる中で1人おちゃらけてる吉貞が一番良かったわあ。(笑)
5巻を読んでから1年半も経ってしまっているので、そういうのも大きいのかもしれないんだけど... 私の中ではほとんど盛り上がらないまま読み終わってしまいました。清々しいラストではあるんですが、6巻がまるごと1冊がシリーズのエピローグに過ぎなかったような印象。例えば、いくらクラシックの名曲でも、最後にディミヌエンドしてる最中から聴き始めたら全然ダメよね... という感じ。横手との試合という大イベントがあったはずなのに! もし1巻から一気読みしていたら、こういう感想にもならなかったのかしら? 素晴らしい作品だけに、やっぱり期待しすぎてたのかも。ちょっと勿体無い読み方をしてしまったようです。(教育画劇)


+シリーズ既刊の感想+
「バッテリー」1~5......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「バッテリー6」あさのあつこ

+既読のあさのあつこ作品の感想+
「福音の少年」あさのあつこ
Livreに「No.6」1・2の感想があります)

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引きこもりのはずの幼馴染の五郎丸が、スポーツバッグに猟銃を入れて東京へ?! 瓜生は五郎丸の妹に頼み込まれて、東京行きの電車に飛び乗ることに...。ということで、高校2年生の男の子2人の夏休みの冒険譚です。
登場人物たちが地元・高崎(群馬)にいた時はのんびりとした青春小説だったのに、東京に出てきた途端、冒険小説ノワール風味。走り回ってるのは上野とか本郷とか御茶ノ水辺りなんですけど、もうすっかり不夜城の世界になっちゃいました。時間の流れも一気に速くなって、すごいスピード感。でもねー、とみなが貴和さんにしては今ひとつ切れが足りなかったような気もするんですよね。心理描写が上手いのがとみなが貴和さんの持ち味なのに、家出した五郎丸の切迫した心理があまり伝わってこなくて...。可愛い女の子の頼みを断りきれなくてついつい東京まで行ってしまうお人よしの瓜生の方は、なんだか分かるんですけどね。...そしてラストは何ともダークな予感。どうも座りの悪さを感じます。これは単発? それとも続編もあるのでしょうか? (角川スニーカー文庫)


+既読のとみなが貴和作品の感想+
「EDGE」「EDGE2 三月の誘拐者」とみなが貴和
「EDGE3 毒の夏」「EDGE4 檻のない虜囚」とみなが貴和
「セレーネ・セイレーン」とみなが貴和
「夏休みは命がけ!」とみなが貴和
「EDGE5 ロスト・チルドレン」とみなが貴和

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 笛吹き男とサクセス塾の秘密 [amazon] [amazon]
はやみねかおるさん2冊。
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」は、その名の通り虹北恭助シリーズで、これが4冊目。先行していた漫画(未読)の原作として書かれたそうで、いかにも漫画~という演出も。(笑) 小学校の時から不登校、中学ではふらっと外国に出てしまった恭助なので、本当に「ハイスクール」なのかどうかは...なんですけど(笑)、野村響子ちゃんは高校2年生。もう高校2年生ですかー。ついこの間まで小学生だったのに!(←近所のオバサン感覚) 彼女、週に2通ぐらいずつラブレターを貰ってるんですって。すごっ。今回は恭助がちょっとハッキリとしたとこを見せてくれたのが収穫かな。それに私の中では「新冒険」「新・新冒険」がちょっと低調だったので、復調してくれた感のあるこの作品はなかなか良かったです。でも新登場の人物(へんてこなフランス人!)もいて楽しかったのに、次の作品でシリーズとしては修了なんですって。残念。
「笛吹き男とサクセス塾の秘密」は、夢水清志郎シリーズの12冊目。このシリーズももう10周年とのこと。でも、作中の時間経過は2年8ヶ月。(笑) 3つ子の岩崎姉妹やレーチも中学3年生。高校受験を控えて一応大変そうなんですが、でも受験よりもむしろらぶらぶ~な雰囲気だったかも。(笑) そういえばこのシリーズ、去年テレビでやってるのを見ちゃったんですよね。岩崎姉妹をやってたのは三倉茉奈・佳奈の双子で、タイトルも「双子探偵」。亜衣と真衣だけで、美衣がいなくてさびしいの。本来1人2役だってできるんだから、2人3役ぐらいやって欲しかったなー。(講談社ノベルス・講談社青い鳥文庫)


+シリーズ既刊の感想+
ブログにはこれ以前のシリーズ作品の感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ちょっぴり疲れ気味なので、「陋巷に在り」はまたしても一休み。残りあと3冊なので、読むのが惜しくなったという話も...?(笑)
ということで、今日は笹生陽子さんの「サンネンイチゴ」です。内向的で友達を作るのが苦手。色々と思ってはいても、なかなか口に出しては言えない、中学2年生のナオミが主人公。先生に理不尽にいびられてるクラスメートを見た時も、心の中では勇ましく啖呵を切ってるのに、現実のナオミは何も言えないまま。そんなナオミですが、ある時カバンを盗まれたことから、学年一の問題児のアサミや、アサミの彼氏というウワサのヅカちんと話すようになって... という話。
物語の中には重い問題も色々と含まれてるんですけど、さらりと描かれてるので読後感はとても爽やか。本当にこれでいいのか...?と思う部分もあるんだけど、でもナオミの成長物語としては、やっぱりこれでいいんでしょうね。こういう話って、どこまで掘り下げるかによってまるで印象が違ってきますよね。例えば先生が生徒をいじめる話といえば、まず乙一さんの「死にぞこないの青」が浮かんだんですけど、さすがにあそこまでいっちゃうとね...。やっぱりこの爽やかさが笹生さんの持ち味なんでしょうね。読み終わった時に明るい気持ちになれる作品です。(理論社)

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ある朝気がついてみたら、頭のてっぺんに芽が出ていた女の子の話。最初は友達の反応を楽しみにちょっとウキウキしてたのに、誰にも見えないと知ってガッカリ。嫌になってプチンと抜いても、後から後から生えてきちゃう... という、話。10分ぐらいで読めてしまう、絵本のような1冊です。女の子の、ウキウキしたりしょぼんとしたりする姿が可愛いんですよね。こういう本は疲れてる時にもぴったり。なんだかほっとするなあ。(新潮文庫)

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小学校の時に、図書館で「霧のむこうのふしぎな町」の表紙に惹かれて思わず手に取って以来、大好きな柏葉幸子さん。でも作品は案外読んでなくて、これで4作目でした。「霧のむこうのふしぎな町」を何度も何度も読んでるから、沢山読んでるような気がしちゃった。(^^ゞ
懐かしい雰囲気の12の物語の入った短編集。どの物語にも「おばあちゃん」が出てきて、その「おばあちゃん」と一緒にいる子供たちは、ちょっぴり不思議な体験をすることになります。でも不思議なことを起こすのは、おばあちゃんというよりも、その場所だったり町だったりするんですけどね。読んでいると、どこかは分からないんだけど、田舎の鄙びた町の情景が浮かんできます。古さと新しさが同居していて、すごく暖かくて懐かしい雰囲気。これが柏葉さんの魅力なんだなあ。(講談社文庫)

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「都会のトム&ソーヤ」第2巻。前回に引き続き、謎の天才ゲームクリエイター・栗井栄太を追う内人と創也。相変わらずの内人のサバイバル能力もいいし、創也の冷静な頭脳派でありながら、意外と考えなしに行動しちゃうとこもお茶目で良かったです。内人の「おばあちゃん」もいい味出してる! でも話としては、1巻の方が面白かったかな。こちらは栗井栄太の正体が明かされるという大イベントがありながらも、どこかこじんまりとしてたような気がします。(講談社Ya!Entertainment)


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「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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