Catégories:“児童書・YA(翻訳)”

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ダークエンジェルは、若く美しい乙女をさらって花嫁にしては、その魂と血を抜き取るという吸血鬼。その13番目の花嫁となったのは、エイリエルの美貌の主人・エオドゥインでした。エイリエルと一緒に、従姉妹の結婚式のための花を山の上に摘みに行った時、ダークエンジェルに攫われたのです。一旦山を降りるものの、エイリエルはエオドゥインの復讐をするため、もう一度山を登ることに。そして13人の魂を抜かれた花嫁の侍女としてダークエンジェルに攫われることになるのですが...。

まー、なんて可愛らしいお話なんでしょー。本の感想にはあまり書かないようにしてるんですが、まさに「少女漫画みたい」という言葉がぴったりの作品でした... ものすごーく絵にしやすそう。しかもちょっと昔の少女漫画に実際にありそうな雰囲気。でもライオンが出てきたり湖の白い魔女と戦ったりという部分はナルニア的だし、ヴァンパイアが羽を持って空を飛ぶことからイカロスと呼ばれていたり、湖の魔女がローレライと呼ばれてるところは、なんだかタチの悪いパロディみたい...
なんて思いながら読み進めてたんですが、途中でこの世界の成立ちや神々について書かれている部分があって、そこを読んだ途端、印象が変わりました。オケアヌスと呼ばれる星(多分地球... でもって、この世界の舞台は月)から炎の車に乗ってやって来たラヴェンナと呼ばれる古き神々が地上に空気や水、そして生命をもたらしたこと、このラヴェンナが星馬や太陽のライオンなど世界の守護者を創り出したこと、しかしオケアヌスでは大いなる戦いと疫病が起こり、そのため炎の車は来なくなったこと、そのためこの世界の環境は次第に変わり始めたこと、ラヴェンナはドームの街に入り、そこは封じられて外の世界との接触が絶たれたこと... なかなか興味深かったです。これは未来の地球の物語でもあるのでしょうか。これこそが、メレディス・アン・ピアスとしてのオリジナルな部分なんでしょうね。(メインの部分はユングの患者の幻覚からインスピレーションを受けてるそうだし、あまりオリジナリティがないと言ってもよさそう) この辺りをもっと前面に出してくれればいいのにな。
アメリカではこの作品が好評で、早速3部作として続編も書かれたのだそう。続編では一皮剥けているのかな? 一歩踏み出すだけで、ものすごく魅力的な世界を見せてくれそうな気配が感じられるので、もしそうなら読んでみたいものです。どうやら日本語には訳されてないようですが...。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のメレディス・アン・ピアス作品の感想+
「ダークエンジェル」メレディス・アン・ピアス
「炎をもたらすもの」「闇の月」「夏星の子」メレディス・アン・ピアス

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森のはずれの小さな家に住んでいたのは、野ウサギのヘアとリスのスキレルと、小さな灰色ウサギのグレイ・ラビット。しかしヘアはうぬぼれ屋、スキレルはいばり屋で、家の中のことは全て優しいグレイ・ラビットに押し付けていました。そんなある日、森にイタチがやって来たという噂が流れ、ヘアとスキレルは震え上がります。

アリソン・アトリーも下のカニグズバーグ同様、全作品読みたいと思っている作家さん。動物物は正直得意ではないので、あまり期待してなかったんですけど、これはなかなか良かったですー。予想しなかった深みがあるというか何というか、子供向けの本なんですけど、大人になった今読んでも意外と楽しめちゃいました。ここに収められているのは「スキレルとヘアとグレイ・ラビット」「どのようにして、グレイ・ラビットは、しっぽをとりもどしたか」「ヘアの大冒険」「ハリネズミのファジー坊やのおはなし」の4編。

グレイ・ラビットの同居人のヘアやスキレルは、悪い動物たちではないんですけど、日常のことは全部グレイ・ラビットに押し付けて、自分たちは3食昼寝付的な毎日を送ってます。ヘアは朝ごはんがレタスだけなのにむくれてるし、スキレルは自分の牛乳が届いてないことに文句を言うだけ。そして気軽に頼んだ用事がまたグレイ・ラビットを危ない目にあわせることになっちゃうんですよね。読み始めた時は2匹のわがままぶりが鼻につくし、グレイ・ラビットのお人よしぶりも「なんだかなあ」って感じ。
でもそんな2匹のことがグレイ・ラビットは大好き。どんな用事でもこなしてしまうし、2匹がピンチの時は助けに駆けつけます。そして1編目の最後で、実はグレイ・ラビットがただのお人よしじゃなかったことが分かってびっくり。実は器の大きさが全然違ってたんですね! それが分かってからは、俄然面白くなっちゃいました。
この2匹も、グレイ・ラビットに助けられてからは、心を入れ替えてがんばることになります。もちろん生まれながらの性格や長年の習慣はなかなか直らないんですけどね。「どのようにして、グレイ・ラビットは、しっぽをとりもどしたか」でスキレルが取った勇敢な行動にはもうびっくりだし、「ヘアの大冒険」では、ヘアの思い切った行動力に喜ぶグレイ・ラビットにこちらまで嬉しくなっちゃう。グレイ・ラビットの視線はまるで2人のやんちゃな子供を見守るお母さんのようで、包み込むような暖かさがまた素敵でした。(岩波少年文庫)


+既読のアリソン・アトリー作品の感想+
「西風のくれた鍵」「氷の花たば」アリソン・アトリー
「グレイ・ラビットのおはなし」アリソン・アトリー

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カニグズバーグ3冊。カニグズバーグの作品は以前から全部読みたいと思ってたんです。でも以前「エリコの丘」を読もうとした時に、小島希里さんの訳文ではどうしても読み続けられなくて挫折、金原瑞人さんが全面的に手を入れたという改稿版でようやく読めたという経緯があったんですよね。「ティーパーティーの謎」「800番への旅」も全面改稿になるという話だったので、それを待っていたら、知らないうちに出てましたー。(アマゾンには未だに改稿版の情報が入ってないんですが、今店頭に並んでるのは全部共訳のはず) そして松永ふみ子さん訳の「ベーグル・チームの作戦」も岩波少年文庫から出てたので、こちらも合わせて読むことに。

...と読み始めたんですが...
全面改稿になってるはずなのに、やっぱりどこか読みにくいー。「ティーパーティーの謎」なんて、「クローディアの秘密」に次いで2度目のニューベリー賞受賞作品だというのに、そこまでいいとは思えなかったのは、やっぱり訳文のせいなのではないかしら。なんか文章が尖ってて、読んでいてハネつけられるような気がするんですよね。でも「エリコの丘」も金原瑞人さんの手が入って格段に読みやすくなってたので、その前はもっと読みにくかったんでしょう、きっと。アマゾンのレビューでもボロボロに書かれてるし、こんなに評判の悪い訳者さんも珍しいですね。それに比べて、松永ふみ子さんの訳の「ベーグル・チームの作戦」の読みやすいこと!

カニグズバーグの作品はごくごく現実的な物語ばかり。登場するのは、おそらく平均的なアメリカの家庭の少年少女たち。勉強の成績の良し悪しはともかく、日頃から色々なことをきちと考えている賢い子たち。そしてちょっと気の利いた大人がちょっぴり。こんな大人が身近にいたら、ちょっと斜に構えた子供でも、大人になるのも悪くないよねって思えそうな感じ。そして、そんな彼らを描くカニグズバーグの目線がまたいいんですよね。やっぱりカニグズバーグの作品は全部読もう。岩波少年文庫で全部出してくれるといいな。(岩波少年文庫)


*既読のE.L.カニグズバーグの感想*
「クローディアの秘密」「エリコの丘から」E.L.カニグズバーグ
「魔女ジェニファとわたし」E.L.カニグズバーグ

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その仕事振りが新聞を賑わせない日はないほどの有名な大どろぼう、ホッツェンプロッツ。その日の獲物は、カスパールのおばあさんの新式のコーヒー挽き。カスパールが親友のゼッペルと一緒に、豆を挽くと歌を演奏するコーヒー挽きを作り、おばあさんに贈ったのです。2人はおばあさんのコーヒー挽きを取り返そうと、大活躍することに... という「大どろぼうホッツェンプロッツ」と、続編「大どろぼうホッツェンプロッツふたたびあらわる」「大どろぼうホッツェンプロッツみたびあらわる」の2編。

これは姪のためのクリスマスプレゼント用に買った本。私も子供の頃に大好きだったんですが、小学校の頃に図書館で借りて読んだっきりなんですよね。懐かしくて、思わずまた読んでしまいましたー。いやあ、思い出した思い出した。覚えてる通りです。一見怖ろしげな泥棒も肝心なところが抜けていて憎めないし、何よりユーモアたっぷり。とっても楽しい冒険談。そしてこれがずっと続いてたら飽きそうなところを、3巻できっちりシメてくれるのがまたニクイんですよねー。
喜んでもらえるといいなあ。(偕成社)


+既読のオトフリート・プロイスラー作品の感想+
「大どろぼうホッツェンプロッツ」3冊 プロイスラー
Livreに「クラバート」の感想があります)

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ケント州にあるアーサー大佐の屋敷には、動物好きの夫人や13歳の娘・モリーのために常に沢山の動物が飼われていました。西アフリカ産の王様灰色オウム・ダッドリーもその一員。そしてこのダッドリーと一番仲が良いのは、つい最近屋敷に紛れ込んできたばかりの赤毛のネコ・ギルデロイ。本来天敵同士のオウムとネコにも関わらず、彼らはお互いに友情を感じていたのです。そしてある朝、ダッドリーとギルデロイは屋敷を出て冒険の旅に出ることに。行き先をロンドンに決めて、早速汽車に乗り込みます。

怪奇幻想文学の大家として知られるブラックウッドの異色作だそうなんですけど...
やっぱり動物物は苦手。どうしても話の中に入りこめないまま、読み終わってしまいました。ダッドリーとギルデロイにも何か寓話的な象徴があったのかもしれないんですけどね。そこまでは読み取れず仕舞いです...。(ハヤカワ文庫FT)

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裕福な家に飼われているヨークシャー・テリアのタピオラが、英雄になりたくて家出をする「タピオラの旅」、自分がいずれ死ぬことに気づいたタピオラが、巨大な原牛の大群が荒野を猛然と突進する夢を見たことがきっかけで、軍隊を作ることになる「タピオラの勇敢な連隊」の2編。

ヨークシャー・テリアのタピオラ、カナリアのリチャード、ネズミのエレミアなど、動物を擬人化した寓話。ハヤカワ文庫FTでも、特に入手しにくい本なので、どんな作品なのかと思ってたんですが...
動物物があまり得意ではないせいもあるんでしょうけど、タピオラには全然感情移入できないし、読みながら思いっきり苛々してしまいましたー。この作品が書かれた1938年は、第二次世界大戦勃発の前年ということもあり、そういった世相を色濃く反映した作品なんでしょうし、その当時に読めばきっともっと受ける印象が違っていたんだろうと思うんですが...。(ハヤカワ文庫FT)

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行方不明の伯父から甥に届いた手紙。それは、かつてイギリスを捨てて旅に出て、今は北極にいるという伯父が突然書いてよこしたもの。伯父さんは、雪原の帝王である幻の白いライオンを追い求めているというのです。

本当は「ゴーメンガースト」シリーズに取り掛かっているんですが、全3冊のうち、今2冊目の途中。これはものすごく重厚... というか暗くて重苦しくいファンタジー。こういうのをゴシック・ファンタジーというのかなあと思いつつ、分類には疎いのでよく分からないのですが... ちょっと疲れたので、そちらを中断して同じマーヴィン・ピークのこちらの本を読んでみました。
表紙の画像を見てもいい感じだと思ってもらえると思うんですが(オレンジの地に白抜きになってるのが、幻の白ライオンの絵がついた切手)、中身もいいです。要するに絵入りの手紙集なんですけど、これが凝ってるんですねー。本を開くとまず目にうつるのが味のある鉛筆画。左脚を失った代わりにメカジキのツノをつけている伯父さんの絵や、助手の亀犬・ジャクソンの絵、他にも動物たちの絵が沢山。この絵を描いたのはマーヴィン・ピーク自身なんです。そしてそんな絵を背景に、伯父さんからの手紙。タイプライターで打った紙を絵の余白に切り貼りしていたりして、芸が細かい! しかも伯父さんの使ってるタイプライターが古いので、文字によって太さも濃さもまちまちで、沢山ある誤字脱字が頻繁に訂正されていたり、手書きの説明が余白に記入されていたりするのが、日本語で再現されているんです。(原書ではどんな感じなのか見てみたい) その手書きの文字がまた汚い字なんですけど、雰囲気にぴったりなんですよね。いかにもこの伯父さんが書きそうな字。そして時には、手紙にコーヒーや肉汁、血の染み、足跡、指紋が...。(血の染みだけはあまりリアルじゃなかったけど)
手紙を受け取った甥の反応などはまるで分からないんですけど、こういう手紙を受け取ったら、やっぱりワクワクしちゃうでしょうね。陰鬱な「ゴーメンガースト」からは想像できないような、ユーモアたっぷりの冒険話。絵はいっぱいあるけど、絵本ではないです。意外と読み応えがあってびっくりでした。(国書刊行会)


+既読のマーヴィン・ピーク作品の感想+
「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」マーヴィン・ピーク
「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」マーヴィン・ピーク

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