Catégories:“児童書・YA(翻訳)”

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ずっとまえ、わたしが小さかったとき、わたしよりももっと小さいいもうとがいました。ちいちゃいいもうとは、目が茶色で、かみの毛は赤くて、鼻がすこしピンク色で、とてもとてもきかんぼうでした...。きかんぼのちいちゃいいもうとが巻き起こす、楽しいけどとっても大変な騒動の数々を、おねえちゃんの「わたし」がお話してくれます。

「きかんぼのちいちゃいいもうと」のシリーズ3冊。「ぐらぐらの歯」と「おとまり」と「いたずらハリー」。
この「きかんぼのちいちゃいいもうと」は、わがままだし気まぐれだし勝手だし、もう本当に大変なんですけど! でもそんな「きかんぼのちいちゃいいもうと」が、実はとても優しくて可愛い女の子で、みんなに愛されてるのがすごく伝わってきて、読んでるだけで幸せになれちゃうんです。だってお隣のジョーンズさん夫婦も、牛乳屋さんもパン屋さんも石炭屋さんも窓ふき屋さんも御用聞きの人たちも、みーんな「きかんぼのちいちゃいいもうと」が大好きなんですもん。しかも酒井駒子さんの挿絵がまたものすごく可愛いし! 特にぶーっと膨れてるところが最高。膨れてるのに、なんでこんなに可愛いのかしら!

どれも楽しいお話だったんですが、私が特に好きだったのは、2巻「おとまり」の表題作。ドレスを脱がないでびしょびしょに濡れてしまった「きかんぼの女の人」って!(笑) しかも、もしや...?と思ったら、次のページの挿絵に描かれてるのがまさにその絵だったし! うふふ。
パンの耳の話とか、指輪の話とか、図書館の話なんかも可笑しいし、あと「本のなかの小さい男の子」の「朝ごはんなし、お昼ごはんもなし」「晩御飯もなかったのよ」「いいえ、晩ごはんはありました」も良かったんですよねえ。大おばさんにあげたスノードームの話も。パラパラめくってるだけでも、素敵な場面がいっぱい出てきて困っちゃう。どれもこれも大好き。でも、何といっても最高なのは、「いたずらハリー」の最後の「おぎょうぎのいいお客さま」でのお母さんとの会話かな♪
自分の妹とか子供とか、知ってる子とか、誰かに重ね合わせながら読む人が多いのではないかと思いますが、私が重ね合わせてしまったのは、友達のとこの子供。おねえちゃんはしっかり者でおりこうさんなのに、その弟はもう本当にやんちゃで! 壮絶な「困ったくん」なんです。でも、すんごく可愛いんですよね。お姉ちゃんもお母さんも始終困らされつつ、その子に向ける視線は愛情たっぷり~。まあ、その子は男の子なので、「きかんぼのちいちゃいいもうと」というよりは、その悪戯仲間のハリーの方がぴったりかもしれませんが!(福音館書店)


+既読の酒井駒子作品の感想+
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子
「よるくま」「よるくま クリスマスのまえのよる」酒井駒子(「リコちゃんのおうち」)
「ビロードのうさぎ」マージェリィ・W・ビアンコ文・酒井駒子絵訳
「きつねのかみさま」あまんきみこ文・酒井駒子絵
「絵本のつくりかた1」「Pooka+ 酒井駒子 小さな世界」
「ゆきがやんだら」「ぼく、おかあさんのこと...」酒井駒子
「こりゃ まてまて」「ロンパーちゃんとふうせん」酒井駒子
「BとIとRとD」酒井駒子
「赤い蝋燭と人魚」小川未明文・酒井駒子絵
「くまとやまねこ」湯本香樹実文・酒井駒子絵
「金曜日の砂糖ちゃん」酒井駒子
「きかんぼのちいちゃいいもうと」1~3 ドロシー・エドワーズ

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夏休みが始まって間もなく、マリアンとその兄のジョーは、ピンホーのばば様に呼び出されます。ピンホー一族はクレストマンシー城の近くにあるアルヴァースコート村に住む魔女の一族で、ばば様はその長。近隣の他の町や村に移り住んでも、一族の者たちは皆ばば様の命令には従っているのです。ばば様の用件は、ジョーは夏休み中クレストマンシー城でブーツみがき係をしながら、クレストマンシー城の人々がピンホー一族のことに気付く気配がないかどうか確かめて報告すること、そしてマリアンは、毎日朝食後から夕食前までばば様の家で使い走りをすること。しかしそこにファーリー一族のじじ様とばば様、その娘のドロシアが現れます。口論の末、ファーリーのじじ様のかけた呪文で、ばば様がすっかりおかしくなってしまうのですが...。

大魔法使いクレストマンシーシリーズの7作目。
クレストマンシー城のお膝元でこんなことがあったなんて~~。ということで、すっごく面白かったんだけど! やっぱりクレストマンシーのシリーズが一番好きだし、その中でもこれは上位の方だなと思ったんだけど! でも「ああ、面白かった~」で終わってしまって、あんまり何も書けない私。それより、クレストマンシーシリーズを最初から読み返したいよぅ。
落ち着いて何か書けそうになったら、その時にちゃんと感想を書きますね。(徳間書店)


+シリーズ既刊の感想+
「魔法使いはだれだ」「クリストファーの魔法の旅」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔女と暮らせば」「トニーノの歌う魔法」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法がいっぱい」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法の館にやとわれて」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「キャットと魔法の卵」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ

+既読のダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品の感想+
「魔法使いハウルと火の悪魔」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「アブダラの空飛ぶ絨毯」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「デイルマーク王国史」1~4 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「わたしが幽霊だった時」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
留守中に読んだ本(18冊)(「マライアおばさん」「七人の魔法使い」「時の町の伝説」の感想)
「呪われた首環の物語」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「花の魔法、白のドラゴン」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「いたずらロバート」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジーランド観光ガイド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バウンダーズ」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「星空から来た犬」「魔空の森ヘックスウッド」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「バビロンまでは何マイル」上下 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」「海駆ける騎士の伝説」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「うちの一階には鬼がいる!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「魔法!魔法!魔法!」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「ぼくとルークの一週間と一日」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
「牢の中の貴婦人」ダイアナ・ウィン・ジョーンズ
Livreに「ダークホルムの闇の君」「グリフィンの年」「九年目の魔法」の感想があります)

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ヴァレーゼに住むビアンキさんは薬のセールスマン。7日間のうち6日間はイタリアじゅうを西から東へ、南から北へ、そして中部へと旅してまわっています。そんなビアンキさんに幼い娘が頼んだのは、毎晩1つずつお話をしてほしいということ。女の子はお話を聞かないことには眠れないのです。そしてビアンキさんは約束通り、毎晩9時になるとどこにいようが家に電話をかけて、娘に1つお話を聞かせることに。

ロダーリによるショートショート全56編。電話で娘に語る小さな物語という設定通り、どれも小さなお話なんですが、これが本当に楽しくて! だって空からコンフェッティは降ってくるし、回転木馬は宇宙に飛んでいくし、鼻は逃げていくし...! ロダーリの頭の中ってどうなってるんだろう。次から次へとアイディアが湧き出してくるのかな~。時にはオチがなくても、全くのナンセンスでも、ロダーリの手にかかると楽しく読めてしまうのが不思議なほど。どれも奇想天外だし、読者の気を逸らさないどころか、全く飽きさせないはず。さすがロダーリ。
私が特に好きだったのは、散歩をしながら体をどんどん落してしまう「うっかり坊やの散歩」や、一見何の変哲もない回転木馬の話「チェゼナティコの回転木馬」、数字の9が計算をしている子供に文句を言う「9を下ろして」、春分の日に起きた出来事「トロリーバス75番」辺り。でも読後に本をパラパラめくってると、やっぱりどれも捨てがたいー。この本は手元に置いておきたいな。ちょっと疲れた時なんかに、1つずつ読むのもいいかもです。^^(講談社)


+既読のジャンニ・ロダーリ作品の感想+
「猫とともに去りぬ」ロダーリ
「チポリーノの冒険」ジャンニ・ロダーリ
「うそつき国のジェルソミーノ」ジャンニ・ロダーリ
「パパの電話を待ちながら」ジャンニ・ロダーリ

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くさいろの童話集

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書評/SF&ファンタジー

東京創元社で刊行中のラング童話集の11冊目。今回も献本で頂きました。感謝。

今回多かったのは、西アジアのお話。全20編のうち、トルコが3つ、パンジャブが3つ、アルメニアが4つ。トルコはギリシャの右隣、アジアの始まりと言ってもいい位置だし、アルメニアはそのまた右隣。そしてパンジャブという国は今はありませんが、インドの北西でパキスタンの北東... これは西アジアとは言えないかもしれませんが、それほど離れているわけでもないですよね。あと出典が不詳とはなっていても、明らかにこの辺りのお話だというのもいくつか。ラクダが出てきたり、街中に出たのがジャッカルなのかトラなのか言い争っていたり、まさにインドが舞台となっていたり。
それでもやっぱりどこかで読んだことがあるようなお話が多くて... 核となるお話は一緒でも、それぞれの地域や国の特色がでてるのがまた楽しいところなんですが、こういう民間に伝わってきた昔話は、ほんと世界中共通してるんだなと再認識しますね。アンドルー・ラング自身は神話や伝説、民話の研究で有名な民俗学者だったそうなんですけど、そういった民話の世界的な流れなんかは研究しなかったのかしら。この12色の童話集に関しても、結局のところは採取して紹介しただけなのかな? でも先日読んだ「妖精の誕生」も、当時としては国境を越えた妖精の研究というのがとても珍しかったそうなので、こちらも全世界にわたる民話の採取という時点で、本当に貴重だったんでしょうね、きっと。

今回ちょっと気になったのは、トルコの昔話だという「物言わぬ王女」。ここに登場する王女さまは、美しすぎて常に7枚のベールで顔をかくし、一言も口をきかない王女さま。この王女に口をきかせることができれば、王女と結婚できるけれど、失敗したら命がない、という危ない話。結局王子が人間の言葉を話すナイチンゲールの助けを借りて、3度王女に口をきかせることに成功するんですけど... 1回口をきくたびに、どうやらベールが破れるらしくて、王女は口をきいてしまった自分に怒り狂うんですね。この「口をきかない」というのは、王女の意地だったのかしら? それとも何かの呪い? そして7枚のベールの意味は? 7枚のベールをしていても王女の頬と唇の色が漏れ出して、歩いて3ヶ月半もかかる山肌に美しい赤みがさしてるほどなんですけど、そんなキョーレツな美貌を隠すベールがはがれた時、王子さまの目は大丈夫だったんでしょうか?(笑) この話もとても面白かったんだけど、きっとかなり省略されちゃってるんだろうなあ。ここには書かれていない部分がものすごーく気になります。

この「くさいろの童話集」、原題は「TALES FROM THE OLIVE FAIRY BOOK」。草じゃなくて、オリーブ!(笑)
ちなみにここまでは「あお」「あか」「みどり」「きいろ」「ももいろ」「はいいろ」「むらさき」「べにいろ」「ちゃいろ」「だいだいいろ」「くさいろ」で、原題はそれぞれ「BLUE」「RED」「GREEN」「YELLOW」「PINK」「GRAY」「VIOLET」「CRIMSON」「BROWN」「ORANGE」「OLIVE」。まあ、大抵はそのままなんですけどね。さて最後の12冊目は「ふじいろ」で、原題は「LILAC」。全12巻なんて、読む前は気が遠くなりそうだったけど、案外早かったかも。残すところ、あと1冊だけなんですものねえ。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+(東京創元社版)
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編
「きいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ももいろの童話集」アンドルー・ラング編
「はいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「むらさきいろの童話集」アンドルー・ラング編
「べにいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ちゃいろの童話集」アンドルー・ラング編
「だいだいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「くさいろの童話集」アンドルー・ラング編

+シリーズ既刊の感想+(偕成社文庫版)
「みどりいろの童話集」「ばらいろの童話集」アンドルー・ラング

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昔、ヨーロッパはほとんど全部森で覆われており、人間も動物も森で暮らしていました。人々が生きていく上で、森は畑や牧草地以上に大切な存在。スウェーデンの人々も大きな森に囲まれた小さな村に住み、森の木で様々な道具を作り、食べ物を探し、家畜に緑の草を食べさせてたのです。しかし昔の森は、いつも緊張して身構えていなければならない場所。山賊が潜んでいたり、トロルやクーグスローンやヴィットロールなど姿の見えない魔物がいる所。森の中では思いもかけない不思議なことがよく起こり、人々はそんな話を暗い冬の夜長に語り合い、そして昔話や伝説ができていきます。この本に収められているのは、そんなスウェーデンに古くから伝わる、12の森のお話です。

スウェーデンの民話の本を改めて読むというのは初めてだと思うんですけど、さすが北欧繋がり、アスビョルンセン編のノルウェーの民話集「太陽の東 月の西」で読んだような話が多かったです。「バターぼうや」は「ちびのふとっちょ」だし、「トロルの心臓」は「心臓が、からだのなかにない巨人」。「仕事を取りかえたおやじさん」は「家事をすることになっただんなさん」。でもそれだけじゃなくて、それ以外の民話に似ているものもありました。「ティッテリチェーレ」は「トム・ティット・トット」や「ルンペルシュティルツキン」みたいだし、「親指小僧」は「ヘンゼルとグレーテル」のバリエーション。「トロルと雄山羊」「小便小僧のピンケル」も、出所が思い出せませんが、よく似た物語を読みましたよ。何だっけ? でももちろん、読んだことのないタイプのお話もありましたよ!
きっとお母さんが小さな子供と一緒に楽しむ本なんでしょうね。挿絵も可愛いし、お話の中に出てくる昔の道具や当時の生活習慣の簡単な説明が巻末にあるのが分かりやすいし、面白いです。ただ、ちょっと気になった部分も。この本に収めるために元のお話を簡略化しるんだろうと思うんですけど、それで話がおかしくなってる部分があるんですよね。「トロルの心臓」では、地主の娘を助けに来た小作人の息子が、娘に3つのことをトロルに聞くように指示するんですけど、その3つの質問のうちの2つ意図が分かりません。きっと元の話には関係するエピソードがきちんとあったのに、省略されてしまったんだろうと思うんですが...。いくら昔話では「3」が基本だからといって、そんなところだけ律儀に残しても。それに「王女と大きな馬」なんかは、ここからさらに冒険が始まる、というところで終わってしまっているような...。せっかくロシア民話のイワンのお話みたいになりそうだったのに。

まあ、それはともかくとして。

この中で凄かったのは「ふくろうの赤ちゃん」という話。

むかし、子どもがほしいと思いながら、なかなか授からない夫婦がいました。

ここまでは普通ですね。でも。

ある朝、おやじさんは仕事にでかけるとき、おかみさんにいいました。
「いいか、夕方帰ってきたとき、子どもが生まれていなかったら、命がないと思え」

そ、そんな無茶なーーー!!(笑)
この話、3ページぐらいしかない短い話なんですけど、もう最後まで可笑しいです。おかみさんもなかなかやるし、その後のおやじさんの台詞がまた最高。ああ、オチまで書いてしまいたいぐらい~。(ラトルズ)

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6月。ムーミン谷近くの山が噴火して大きな地震が起こり、遠くから海の水が押し寄せてきます。洪水のせいでムーミン谷はすっかり水浸し。避難しなくてはならなくなったムーミントロールたちの前に流れてきたのは、ムーミン一家よりももっと人数の多い家族が一緒に乗れるぐらいの大きな家でした。一家は早速その家に引越しをすることに... という「ムーミン谷の夏まつり」。
11月から4月までは冬眠するムーミンたち。しかし新年を少し過ぎた頃。ムーミントロールはふと目を覚まし、それきり眠れなくなってしまったのです。家の中は夏と一緒でも、妙に静かで寂しくて... ムーミンママの布団の上で丸まって長い冬の夜を過ごしたムーミンは、朝になると外に出てみることに。スナフキンに会いに南へ行こうと思ったのです... という「ムーミン谷の冬」。

ムーミンシリーズの4作目と5作目。
「ムーミン谷の夏まつり」は、1作目の以来の危機勃発の物語。でも彗星が地球にぶつかるというあの時にもまるで動じなかったムーミン一家が、洪水ごときでうろたえるわけもなく。(笑) 避難というよりも、もうほんと普通にお引越しですね。ピクニックのような和やかさ。みんなが新しい家に落ち着いた後でも、ムーミントロールとスノークのおじょうさんが木の上に置き去りにされるという事件が起きるんですが、ムーミンパパもムーミンママもあまり心配してないし~。はぐれたと分かった最初こそ嘆き悲しむムーミンママなんですけど、「ほんとに、あの子たちのことが、そんなにかなしいのかい」と言われて、「いいえ、ちょっとだけよ。だけど、こんなにないてもいい理由があるときには、いちどきにないておくの」ですもん。そこで一しきり泣いたら、後は希望のみ。なんて前向きなんだ!(笑)
今回は、ムーミントロールの気障な台詞にひっくり返りましたよ。「わたしがすごくきれいで、あんたがわたしをさらってしまうというあそびをしない?」というスノークのおじょうさんに対して、ムーミントロールの答えは「きみがすごくきれいだ、なんてことは、あそびにしなくていいんだよ。きみは、いまだって、ちゃんときれいなんだもの。ぼく、たいていきみをさらっちゃうよ。あしただけどさ」ですよ! それと、いつも孤高な人生を歩んでいるスナフキンが、公園の「べからず」立て札を片端から引き抜いてやろうと、ニョロニョロの種を蒔いたり、一緒に逃げ出した24人の子供たちの世話をしたりとなかなか楽しい展開です。

「ムーミン谷の冬」は、シリーズ初の冬の物語です。目を覚ましてしまうのはムーミンとちびのミイ。
冬眠中の11月から4月までの期間というのは、ムーミンたちにとって存在しないも同じ時間。北欧が舞台なのに、ムーミンが雪を見たこともなかったというのが驚きなんですが、ここに描かれているのは、まさに北欧の冬。夏とは全然雰囲気が違います。死んだように静まり返った雪の世界。「夜が明ける」とはいっても、半年は夜となる北欧は、白夜の反対の極夜の状態。1日中、薄闇のモノトーンの世界なんでしょうね。家の中にも外にも、寂寞としたイメージが漂っています。雪は音を吸収するでしょうから、一層不気味だったのでは。
「ここは、うちの水あび小屋だぜ」と言うムーミンに対して、「あんたのいうとおりかもしれないけど、それがまちがいかもしれなくてよ。そりゃ、夏にはなるほどこの小屋は、あんたのパパのものでしょうさ。でも、冬にはこのおしゃまのものですからね」と返すおしゃまさん。そう言われてしまうと一言もありませんね。よく知っている場所のはずなのに、ここは既に異世界。夏と冬でこれほど世界が変わるというのがすごいです。北欧に住む人々にとっては普通なのかもしれませんが、とてもインパクトがありました。
そしてそれだけに、春の到来がとても素敵。まだまだ雪が厚く積もり、氷も厚くはって寒いながらも、やがて水平線にお日さまが最初は糸のように細く顔を出し、それから少しずつ高く上るようになり、やがてムーミン谷にも弱い日ざしが差し込むようになります。そして雪嵐。こんな風に北欧の人々は春を迎えるんですね。目が覚めたムーミンママの「わかってますよ」という言葉がとても温かいです。ああ、特に大事件はおきない話なんだけど、シリーズ5冊読んだ中でこの作品が一番好き!(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ムーミン谷の彗星」トーベ・ヤンソン
「たのしいムーミン一家」トーベ・ヤンソン
「ムーミンパパの思い出」トーベ・ヤンソン
「ムーミン谷の夏まつり」「ムーミン谷の冬」トーベ・ヤンソン

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グリム姉妹の事件簿1

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書評/ミステリ・サスペンス


11歳のサブリナと7歳のダフネのグリム姉妹は、2年前に両親が失踪して以来孤児院暮らし。孤児院のミズ・スミートはグリム姉妹のことを毛嫌いしており、2人を孤児院から引き取ってくれる家庭を見つけることが、今や彼女の一大使命となっていました。今もまた、祖母だと名乗る人物のところに連れて行かれるところ。しかしこれまで2人を送り込んだ先の人々は大抵意地悪で、時には頭がおかしいこともあり、2人をメイドや子守りとしてこきつかうか、ただ無視するばかり。その上、今回連れて行かれる先は、両親にずっと死んだと聞かされていた祖母のところなのです。サブリナはその「祖母」の偽者の家からもすぐ脱走する心づもりにしていました。しかしダフネはすぐに「レルダおばあちゃん」に懐いてしまい...。

東京創元社の創元ブックランドの新刊。今回は献本で頂きました。感謝。
本の案内に、かのグリム童話をまとめたグリム兄弟の子孫が、今はおとぎばなしの登場人物たちの見張りをしつつ、代々探偵業を営んでいるとあり、この時点で既に興味津々だったのですが、帯にはさらにジェイン・ヨーレンの「どうしてわたし自身で考えつかなかったんだろう! すっごいアイディア」という言葉が。ジェイン・ヨーレンにそんなことを言わせるとは、と読む前から期待が膨らみます。
そして実際に読んでみて。確かにこの設定は面白い~。そもそもグリム兄弟がおとぎばなしを書き留めたのは、おとぎばなしの時代の終わりが近づいたことを悟ったから。昔々はおとぎばなしに出てくる生き物たち(エヴァーアフター)と人間は共に暮らしていて、不思議なことも日常的に存在していたのに、両者は徐々にぶつかり合うようになってしまったんですね。魔法が禁止され、エヴァーアフターたちが迫害され始めたのを見たグリムは、できる限り沢山の物語を書き留め、親しくなったエヴァーアフターたちがアメリカ移住するのを手伝います。船を世話し、ハドソン川のほとりに土地を買って、エヴァーアフターたちがその土地に町を築くのを手伝うんです。でも新大陸にも徐々に人間は増えて、エヴァーアフターたちの身に再び危険が迫ります。バーバ・ヤーガに魔法をかけてもらうことによって、今の状態に落ち着くことになったんですが...。
その話がレルダおばあちゃんから出た時は、グリム一族がエヴァーアフターの後見人のような役割なのかなあと思っていたのですが、舞踏会での会話を聞いている限りでは、エヴァーアフター側にも様々な思いがあるようで! その辺りは、読んでいてちょっと複雑になってしまったんですけど... でもいずれにせよ、どちらか一辺倒の態度だけってわけじゃないのが良かったです。それに昔ながらの物語やファンタジー系の作品の登場人物が所狭しと歩き回っているのには、やっぱりわくわくしてしまいます。彼らの裏の素顔を覗き見るような楽しさ~。そして一番魅力的だったのは、レルダおばあちゃんの言う「世界一大きなウォークイン・クローゼット」! これはすごいです! この中、入ってみたい!!

今回だけで解決することと、また次回以降に続くことと。まだまだ小手調べといった感じもあるし、これでようやく登場人物たちが落ち着くところに落ち着いたので、今後ますます面白くなりそうな予感。次作も楽しみに待ちたいと思います。そして創元ブックランドの本は毎回挿絵も楽しみなのですが、今回は後藤啓介さんによる影絵調の挿絵で、これも物語の雰囲気によく似合っていて素敵です。(創元ブックランド)

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