Catégories:“児童書・YA(翻訳)”

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ルブリン・デュは、丘陵地帯に馬と共に暮らす、イケニ族の族長の息子。5歳の頃、ルブリンは中庭で飛び交うつばめが空に描く美しい模様に魅せられて自分もその動きを真似しようとし、そして妹が生まれた祝宴の席では、竪琴弾きの歌を聴きながら、音楽と詩が心の中で織りなす模様に魅せられて、夢中でその絵を床石に描き出します。その後親友ができ、一人前の男になるために様々なことを学ぶようになっても、ルブリンはつばめの飛行や竪琴の歌、麦畑を渡る風や疾駆する馬の群れなど、動くものを形に留めたいという、痛いほどの欲求を持ち続けることに。

紀元前1世紀頃に作られたと言われている、バークシャー丘陵地帯のアフィントンにある全長111メートルもあるという白馬の地上絵に、ローズマリー・サトクリフが作り上げたという物語。
5歳の時から片時も離れずにいたような親友も、ルブリンの絵に対する情熱を本当には理解してなくて、結局唯一の理解者となったのは、敵の族長・クラドックだけ。本文中で一番印象に残ったのも、この2人のやりとりでした。クラドックは、ルブリンが描いた馬の絵を見て、最初の数頭と最後尾の馬の間の「ゆれているような線」について質問するんですよね。「なぜ馬の形をしていないのか? まんなかにいるのも馬のはずだが」 それに対するルブリンの答えは、「なぜなら、まんなかは馬の形には見えないからです」「まんなかの馬は、特別の注意を払わない限りは、かたまりにしか見えません。疾走している馬の群れを思い出してください。最初の馬と次に続く数頭、それから最後尾以外の馬が目に留まったことがありますか? 変化し流れる、ただのかたまりとしか見えないはずです」。ルブリンの描いた線を、目の前に蘇らせてくれるようなやりとりでした。
それがきっかけで、ルブリンは丘陵地帯に巨大な白馬を描くことになるんですが...。
この本の表紙の絵こそが、その白馬の絵。(本を右に倒すと、右に向かって走る馬の絵になります) これはルブランの孤独を乗せて走り続ける白馬。周囲を人が取り囲んでいて感じる孤独は、1人きりの孤独とは段違いに深いもの。でもその孤独が深いほど白馬への思いは純粋になって、白馬は命を得ることができたんでしょうね。(そして最後がまたいいのよ!)

この本は、暁の女神の紅松優利さんのオススメ。実はローズマリー・サトクリフの本を読むのは初めてです。数々の作品の題名を見るだけで、同じものが好きな人の匂いを強く感じていたんですけど、作品数が多いので、逆に手を出せないでいたんですよね。この本は児童書で字が大きいこともあって、最初はなかなか話に入れなくて困ってたんですが、気がついたらすっかりその世界に浸りきっていて、結局読み終わった途端に、また最初から読み返してしまいました。
内容は全然違うんですけど、上橋菜穂子さんの「狐笛のかなた」の雰囲気に、どこか通じるような... どちらかが好きな方は、もう片方もお好きなのではないかと思います。ぜひぜひ。(ほるぷ出版)


+既読のローズマリー・サトクリフ作品の感想+
「ケルトの白馬」ローズマリー・サトクリフ
「炎の戦士クーフリン」「黄金の騎士フィン・マックール」ローズマリー・サトクリフ

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ペギー・スーシリーズの4作目「魔法にかけられた動物園」と5作目「黒い城の恐ろしい謎」。またしても本を頂いてしまいました。ありがとうございます~。

3巻で「見えざる者」との戦いも決着し、ペギー・スーの冒険もこれで終わりかと思いきや、本国フランスでセルジュ・ブリュソロの元に熱心なファンレターが山のように届き、結局ペギー・スーの冒険もまだまだ続けられることになったのだそう。(このブリュソロは、フランスのスティーブン・キングと呼ばれているという人気作家さんなのだそうです) 最初の目的も果たしてしまったし、これからどんな展開になるのかちょっと心配だったんですけど、むしろ最初の3冊よりも面白かった!
というのも、元々畳み掛けるような展開で一気に読めるシリーズなんですが、時々驚くほどブラックな部分があったりするんですよね。ブラックというよりも、むしろ残酷。なので、本国でそれほど人気というのがちょっぴり不思議だったんですが... でも今回読んだ4巻5巻は、そういう部分が少し薄まっていて、私としてはありがたかったり。
それに、考えてみると1巻の頃とは魔法の扱いもかなり変わってるんですよね。最初はこの世の中でただ1人ペギー・スーだけが妙な能力を持ってる感じだったんですが、3巻でケイティーおばあちゃんが登場してからは、魔法が当然のように存在するようになったし。そうなると、今までちょっと無理してたような部分がなくなって、物語にすごく入りやすくなったような気がします。完全に普通の日常生活の中にちょこっと不思議なことが出てくるような物語も好きですけど、このシリーズは、ちょっとパラレルワールド的に常に不思議なことが存在してる方が似合う! 4巻の冒頭でも、ペギー・スーが泊まっていたホテルでは、宛名を書いて待つだけで、完璧に同じ筆跡で続きの文章が浮かび出てくるという「観光客を面白がらせるためだけの素朴な魔法」が使われてるのが、なんか可愛いんです。
4巻も5巻も地球外生物なんかが登場して、スケールの大きな作品となってます。どちらも一気に読めるんですが、特に4巻の設定がすごくよく出来てて、最後の最後まで面白かったです。5巻の方は、最後の決着がちょっと「あれ?」だったんですけど、それまでは面白かったし。本が客に襲い掛かろうとする呪われた本屋の場面が特に面白かったです。ハリー・ポッターの2作目に出た猛獣の本(?)みたいなのばかりが置いてある店なので、アイディアを頂いちゃったのかな? とも思いましたが。(笑)(角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ペギー・スーi  魔法の瞳をもつ少女」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーii  蜃気楼の国へ飛ぶ」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiii 幸福を運ぶ魔法の蝶」セルジュ・ブリュソロ
「ペギー・スーiv 魔法にかけられた動物園」「ペギー・スーv 黒い城の恐ろしい謎」セルジュ・ブリュソロ

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もう少し時代がかった雰囲気にすれば、グリムやペローのような童話集の中にあってもおかしくないかも、といった感じの童話集。やっぱり初期のハヤカワFT文庫には、子供向けの作品が結構ありますねえ。ちょっぴりリチャード・ヒューズの「クモの宮殿」のようでもあるんですけど(感想)、「クモの宮殿」のような強烈なナンセンスがあるわけでもなく、少し物足りない...。
でも、表題作の「あべこべの日」は面白かったです。ある日目が覚めると、その日は「あべこべの日」。飼い猫のミーツィが、スプーンとフォークとナイフにまざって引き出しの中で寝てるかと思えば、ミーツィの寝床ではミーツィの代わりに猫の寝巻きを着た銀のスプーンが寝ているし、予定通り外出しようとすると、お父さんは馬の代わりに馬車に繋がれて、白馬がお父さんの代わりに御者台に乗り、一緒に行く伯母さんが馬車の後尾灯として取り付けられちゃう... なんでそんな「あべこべ」が起きるのかは全く説明されないし、不思議なまんま終わっちゃうんですけどね。ある日突然来る「あべこべの日」かあ。大変そうだけど面白そう。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のハンス・ファラダ作品の感想+
「あべこべの日」ハンス・ファラダ
「田園幻想譚」ハンス・ファラダ

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いつものように4人だけで夏休みを過ごしていた、ジェーン、マーク、キャサリン、マーサ4人の子供たち。お父さんは既に亡く、お母さんは新聞社に勤めていて忙しいので、いつもビックさんという女性が家に来て4人の面倒を見ることになっているのですが、ビックさんは4人をどこかへ連れて行こうなどと考えるような人ではないのです。あんまり何も起こらないことにうんざりしたジェーンが、「いっそのこと火事でもあればいいのに」と大声で叫んだ時、4人の耳に聞こえてきたのは、消防自動車のサイレンの音で...。

ハヤカワepi文庫に浮気してたり、図書館の予約本が回ってきたりして、1ヶ月ぶりのハヤカワ文庫FT。今年は主に通し番号で100番までを読もうと思ってるんですけど(現在通し番号は414番まで)、まだ半分ちょっと。この辺りは絶版本ばかりで、読むよりも入手するのが大変なんですよね。「魔法の湖」も、amazonには既に情報もない状態だし。
さて「魔法半分」は、魔法のコインを拾った4人の子供たちが巻き起こす騒動の物語。E.ネズビットの大ファンだという4人の子供たちの冒険は、そのまんまネズビットの「砂の妖精」みたい。冒険をするのが4人の兄弟姉妹という部分も、伝統的なファンタジーの形式を受け継いでるんですね。(男女2人ずつではないですが) もちろん、魔法が使えるようになるとは言っても簡単に上手くいくわけはなくて、魔法のコインが叶えてくれるのが、願った事の半分だけというのが、とても面白いんです。家に帰りたいと願ったお母さんは、気がつけば帰り道の途中に立ってるし、猫のキャリーは「アタシニャー、オニェガイ、ソトヘ、ニャク」なんて人間と猫の言葉が混ざってるような状態。マークが願った「無人島に行きたい!」に至っては、「無人」だけが叶って、「島」は叶っていない状態。結局みんながいたのは、無人の砂漠。(笑)
「半分の魔法」を使いこなすためには、本来の願い事の2倍お願いしなくちゃいけなくて、これがすごく面白いところ。それにこういった子供たちだけの魔法の冒険に、実の母親といった身近な大人が引きずり込まれてしまうのも、実はかなり珍しいのでは...。実は結構斬新な作品なんですね。(作品自体は既に古いんですが)
そして「魔法の湖」は、「魔法半分」の冒険から3週間後、家族で湖の畔の山荘に旅行した時の話。こっちは「魔法半分」みたいな斬新な部分はあまりなくて、むしろ3つの願い事に失敗してしまうおとぎ話のパターンのような感じ...。相変わらず楽しかったけど、「魔法半分」の方が私は好きでした。(ハヤカワ文庫FT)

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エリザベスが初めてジェニファに会ったのは、ハロウィーンの校内行列のために家に帰って仮装して、学校に戻る途中でのこと。エリザベスは引っ越してきたばかりなので、まだ友達もいなくて1人ぼっち。でも木の上に腰掛けていたジェニファのぶかぶかの靴をはかせてやったのがきっかけで、2人は話すようになります。そして自分は魔女だと言うジェニファについて、エリザベスは魔女の修行をすることに。

子供の頃から大好きな「クローディアの秘密」(感想)のE.L.カニグズバーグのデビュー作。この「魔女ジェニファとわたし」と「クローディアの秘密」が立て続けに発表されて、この2冊がその年のアメリカの児童文学賞ニューベリー賞を争ったんだそうです。(受賞は「クローディアの秘密」)
転校したばかりで、なかなか友達ができないままのエリザベスと、自分のことを魔女だと言ってしまう、ちょっと不思議な女の子ジェニファの物語。エリザベスが主人公だし、一見、「内気なエリザベスに友達ができて良かった良かった」的な話に思えてしまうんですけど、それだけじゃないんですよね。頭が良すぎて、周囲の子たちが子供っぽく見えてしまうジェニファにとっての、友達ができた話でもあります。図書館ですごい勢いで本を読み、小学生ながらもマクベスをかなり読み込んでいるらしいジェニファ。1人でも自信満々に振舞っているジェニファだけど、時には友達が欲しくなったりもして、そんな時にするりと入り込んできたのがエリザベスだったのかも...。自分のことが魔女だと言っていたのは、一種の虚勢だったんだろうなあ、なんて思ったり。
エリザベスに友達がいないことを心配して、「社会性」がないのではないかと考えるお母さんに対して、お父さんが、普通の体温は36.5度だけれど、36度で健康な人もいるのだから、「だから、なにがふつうだなんて、だれにもいえるもんか」という言葉が良かったです。
ただ、「Trick or Treat!」が「ハロウィーンのおねだり」と訳されていたり、ハロウィーンの「おふせまいり」という言葉にちょっと時代を感じてしまいました...。この辺りだけでも訳文を変えて欲しいところなんですけど、そうもいかないのかしら。(岩波少年文庫)


*既刊のE.L.カニグズバーグ作品の感想*
「クローディアの秘密」「エリコの丘から」E.L.カニグズバーグ
「魔女ジェニファとわたし」E.L.カニグズバーグ
「ティーパーティーの謎」「800番への旅」「ベーグル・チームの作戦」カニグズバーグ

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「オズの魔法使い」のシリーズで有名なライマン・フランク・ボームの処女作。14編の短編が収められた連作短編集です。このうち2作は、以前アンソロジーで読んでいて(感想)、まるでオズの国の延長にいるような可愛らしいおとぎ話だなーと思ってたんですが、実際にこのこの国はオズの国に繋がっていたんだそうです。登場人物も共通してるし、この物語の舞台となるモーの国は、オズの国の南東にあるのだとか。そしてこのお話はほんと美味しそうなんです。

<モーの谷>には二筋の河があり、その一つにはとても濃い牛乳が流れています。このミルク・リヴァーの中には島がいくつかありますが、なかにとびきり上等のチーズできている島があり、人々はいつでも食べたいと思うときにシャベルですくっていいことになっています。流れがゆるやかな岸辺の淵には、舌もとろけるようなクリームが牛乳の面てに盛り上がっており、睡蓮のかわりにイチゴの大きな葉が浮かんでいて、よく熟れた赤いイチゴが鼻先をクリームの中にトップリとつっこんでいるさまは、さあここへ来て召し上がれといわんばかりです。河岸を形づくっている砂は、まじりけなしの白砂糖。藪の中にはありとあらゆるキャンディやボンボンが鈴生りで、だれでも気軽に摘み取ることができます。

この他にも、全編美味しそうな描写がたっぷり。でもこういうのは、子供の頃に読みたかったですね。大人になってから読むと、可愛らしいとは思うけど物足りない...。
処女作のせいかオズシリーズではなかなか見られないようなグロテスクなシーンもあるんですが、どこか上品なユーモアに感じられるのが魅力。でも初期のハヤカワ文庫FTって子供向けの作品が結構目につきます。もっと大人向けのが読みたいぞ。(ハヤカワ文庫FT)

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ヒューズは日本ではあまり知られていませんが、イギリスでは非常に有名な作家とのこと。これはヒューズの初めての児童書だそうで、ごくごく短い作品ばかり20編が収められた短編集。
常識に捉われない個性的な発想とナンセンスぶりが楽しい作品群。これらの作品は、ヒューズが友人の子供相手に即興で話して聞かせた物語をそのまま活字にしたんだそうです。特に手を入れなかっただけあって、最初に語った時のままの生き生きとした雰囲気がそのまま残ってる感じ。そして意外なほどブラック味もあったりします。
例えば、この中に収められている「電話旅行」という話は、血の繋がらない両親に厳しく育てられている少女が、時々電話線を通って、電話の相手の家に遊びに行っちゃうという、発想そのものがとても楽しい作品。でも両親に可愛がられてない可哀想な女の子と言うと、大抵「小公女」的な良い子を想像すると思うんですけど、この少女が意外な我儘ぶりを発揮してびっくりなんですよね。しかも彼女がしばらくいなかった間、両親は心配していたのか全然だったのか、それも良く分からないようなエンディング。結構煙にまかれます。
思いっきり破綻してて収拾がつかない話も多いんですけど、案外楽しかったです。(1作ずつが短いからかも)(ハヤカワ文庫FT)

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Note


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