Catégories:“児童書・YA(翻訳)”

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魔使いの弟子となって1年が過ぎ、1年目の課題「ボガート」から2年目の課題「魔女」へ。少し前にペンドルの魔女の力が増しているという報告を受けた魔使いは、魔女と対抗するためにペンドルに行くことを決め、トムはアリスの協力で、魔女から逃げる術をつけるための修行を繰り返していました。その頃、魔使いを訪ねて来たのは、ペンドルの丘の北にあるダウンハム村のストックス神父。かつては魔使いの優秀な弟子であり、しかし修行を終えた後、魔使いではなく教会の仕事を選んだという人物。そしてトムはアリスと共に久しぶりに兄のジャックの農場へと向かいます。しかし納屋は黒く焦げ、母屋の扉は壊れ、兄の家族も家畜もおらず、しかも母親から受け継いだ部屋は開けられて、そこに置かれていたトランクその他の荷物もなくなっていたのです。

魔使いのシリーズの第4弾。
いよいよアリスの親戚の魔女たちもいる、魔女の本拠地・ペンドルへ~。本当に「いよいよ」です。でもいくら優秀な弟子で修行を頑張っているとは言っても、修行2年目のトムにそれほど大きなことができるはずがありません。トムにできることは、自分にとれる最善の道を考え、それを着実に実行することだけ。魔使いやアリス、そして今はいない母親の助けがあってこそ。
今回トムは大切な家族を人質に取られて、かなり辛い思いをすることになります。でも家族の存在がトムにとって弱みであると同時に強さの源ともなっているようで、その辺りがいいですね。自分の仕事と家族のどちらかを選ばなければならないような状況にまで追い詰められる展開もあって、その辺りの対応にトムの精神的な成長も見られます。トムを弟に持ったばかりに、ジャック一家の受難の日々が続くんですが... 今回特に気になったのはエリーのこと。ただでさえ、思わぬ「魔使い」としてのトムの実態に傷ついているエリーなのに、今回のことをきちんと受け止めて消化していけるのでしょうか。もし身体や精神が元に戻れば、ジャックはこのことで大きく好転しそうな気がしますが、エリーはどうなんでしょう。どこか壊れてしまいそうでとても不安。しかし今回初登場の次兄・ジェームズがいい感じ。力強くて、ジャックよりも人間的な大きさを感じます。彼が一緒に暮らすことで、ジャック一家も落ち着くのかも。

このシリーズは最終的にどこまで進むんでしょうね。各巻冒頭にあるような「ウォードストーン」の話までいくとは思ってなかったんですけど... 今回の「魔王」は、やっぱりその話に直結するでしょうし、やっぱりその辺りまでいくのかなあ。でも今のペースで書いてたら、すごい長大なシリーズになっちゃいそう。そうなった時、ちゃんと翻訳が出続けるのかちょっと心配です。(笑)(創元ブックランド)


+既読のジョゼフ・ディレイニー作品の感想+
「魔使いの弟子」「魔使いの呪い」ジョゼフ・ディレイニー
「魔使いの秘密」ジョゼフ・ディレイニー
「魔使いの戦い」上下 ジョゼフ・ディレイニー

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東京創元社で刊行中のラング童話集の8冊目。今回多いのはハンガリーの昔話。でも以前読んだ「ハンガリー民話集」(感想)とはまた違う物語が多かったですね。ハンガリーの民話特有の締めくくりの言葉「死んでいなければ今も生きているはずだ」は多かったけど、日本の「むかしむかし、あるところに」にあたる「あったことかなかったことか」というのもなかったし、「ヤーノシュ」もハンガリー王の「マーチャーシュ」もなく... この辺りはラングが物語を英訳する時になくなってしまったのかな? でも話そのものもあまり似てなかったように思うし、何より鳥の足の上で回転するお城が登場しなかったのが残念。イタリアやスペイン、ロシアの昔話が登場する時は聞き覚えのある物語が多いのに、なぜなのかしら~。
とはいえ、今回も挿絵の美しさを堪能したし~。相変わらず楽しかったです。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+(東京創元社版)
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編
「きいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ももいろの童話集」アンドルー・ラング編
「はいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「むらさきいろの童話集」アンドルー・ラング編
「べにいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ちゃいろの童話集」アンドルー・ラング編
「だいだいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「くさいろの童話集」アンドルー・ラング編

+シリーズ既刊の感想+(偕成社文庫版)
「みどりいろの童話集」「ばらいろの童話集」アンドルー・ラング

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ニータの家族がハンプトンズの海岸沿いの貸し別荘で夏を過ごすことになり、友人のキットとジャーマン・シェパードのポンチも一緒に行くことになります。夜の海で泳ぐ2人。しかしその時、キットは岩がざわざわして何かに怯えているのを感じていました。海で何か起きているらしいのです。そしてイルカにクジラが「狩人」たちに追われて怪我を負っているのを聞いた2人は、クジラを助けに向かうことに。スリィという名前のそのクジラは海の魔法使いでした。スリィに海で起きている危機を聞いた2人は、「孤高なる者」を再び海底に封印し、海に平和を取り戻すための「十二の君の歌」という儀式に参加することを承諾します。

駆け出し魔法使いシリーズの第2弾。
前作から2ヵ月後、海の呪文という題名通り海の物語となっています。今回、海の中での情景や海の魔法の描写が素敵だし、敵なのか味方なのか微妙な存在の全身白いサメの長の造形もとても良かったんですが、それでも前作のホワイトホールの突飛さに比べてしまうと、やや凡庸かも...? でも今回はむしろ、葛藤する人間ドラマというか、2人の成長物語としての面が大きいんですね。ニータとキットが内容をきちんと理解しないまま安請け合いしてしまった役割は、非常に重大なもの。一度誓ってしまった言葉はもう元には戻せないし、誰も2人を助けることはできないのです。

でも、話は面白かったんですけど... 1つ引っかかってしまったのが捕鯨に関する記述。

これまでにも、なんでも胃袋に収めてしまう日本人のことは何度も耳にしていたが、他に食べるものはいくらでもあるだろうに、と思わずにいられなかった。(P.51)

私だって何が何でも絶対に捕鯨が必要だなんて思ってませんけど、こういうところに、他文化を認められないアメリカ人の度量の狭さを感じてしまって、なんだかヤな感じ~。近くのページでニューヨーク付近の海の汚染のことも書いているんですが、アメリカ人の愚かさも書いたら、それで公平な視点になったとでも? やっぱりどうもすっきりしないです。というか不愉快だわー。

それと疑問が1つ。あの本は相変わらず図書館から借り出してるってことなんでしょうか?(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「駆け出し魔法使いとはじまりの本」ダイアン・デュエイン
「駆け出し魔法使いと海の呪文」ダイアン・デュエイン

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レオンがお母さんの机の中から見つけたのは自分の名前が太い活字体で書かれ、学校の印章と「親展」のスタンプが押されている封筒。気になって仕方ないレオンは、4年生になる新学期の前の夜、とうとう開いて読んでしまいます。そこにあったのは、自分に対する担任や他の教師たちの厳しい評価。レオンは人並みはずれて手先が不器用で、それなのにレオンの通うクラシック学院のモットーは「敏捷な精神は敏捷な指に宿る」なのです。

ニューヨークのマンハッタンが舞台のファンタジーと思いきや、一般的なファンタジー作品とはまた全然違っていてびっくり。そもそも、主人公が通う学校からして、ものすごく個性的なんです。手先の器用さを重視するあまり、お裁縫に取り付かれている教師もいるぐらいですから! 実際、学校での授業風景は、裁縫と体育だけなんですよね。話の端々から他の授業もあるのは分かるんだけど、そっちはこれっぽっちも出てきません。そしてレオンの担任となった先生こそが、その裁縫が大好きな教師・ハグマイヤー先生。ヘルメットのような黒い髪に黒いマント、マントの留め金は2つの目玉、黒いドレスに黒いブーツ、煮込んだ肝臓色のストッキングといういかにも魔女のような外見。教室でのどんな小さな囁きも聞き逃さない地獄耳で、生徒に次々にアニマイルと呼ぶぬいぐるみを作らせては売りさばいているという噂...。
怪しげな学校に怪しげな先生。常識人に見えるレオンのお母さんが、なんでレオンをこの学校に通わせることになったのか、ものすごーく不思議。父親を早くに事故で失ってて、それほど裕福とは思えないのに、レオンは毎日タクシーで通学してるんですもん。それなりの理由があったんだろうと思うんですけどね。この作品は3部作の1作目だし、じきにその理由も分かってくるんでしょうか。

レオンの手先が不器用な本当の理由が思わぬところにあったのも楽しかったし、風変わりな客が入れ替わり立ち代り滞在するホテルでの場面も面白いです。個性豊かなホテルの面々も、親しくなるタクシー運転手のナポレオン・ドゥランジュもいい味を出してますしね。そんな大人たちの存在が、子供たちよりも余程魅力的だったかも... というのもYA向けファンタジー作品としてはちょっと異質な気がするんですが、学校の授業の場面で裁縫と体育の時間しか書かれていないことが象徴してるように、読んでいるとどこか歪みを感じるんですよね。でもそんな歪んだ不思議空間が、この物語の魅力なのかもしれません。(創元ブックランド)


+既読のアレン・カーズワイル作品の感想+
「レオンと魔法の人形遣い」上下 アレン・カーズワイル
「レオンとポテトチップ選手権」上下 アレン・カーズワイル

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1978年。ケンブリッジ大学での勉学を終え、今やロンドンのシティの金融界の心臓部に財政コンサルタントのオフィスを構えているサリー。その日、そのオフィスを訪ねてきたのは、引退した教師のミス・ウォルシュ。彼女はその前の年にサリーのアドバイスで海運会社への投資を行い、老後の蓄えの3000ポンドでアングロ-バルト海運会社の株を買っていました。その後アングロ-バルト海運会社は順調に業績を伸ばしていたのですが、わずか1年後、突然倒産してしまったのです。ミス・ウォルシュはこれは実は詐欺なのではないかという疑問を抱いていました。

サリー・ロックハートの冒険シリーズの第2弾。「マハラジャのルビー」から6年後。サリーは22歳になっています。写真家のフレデリックやジム・テイラーたちが周囲にいるのは相変わらずなんですが、状況的にはかなり様変わり... まあ、サリーに関しては予想通りなんですけどね。フレデリックは写真だけでなく探偵業にも手を出しているようだし、ジムは劇場の裏方として働きながら脚本家になろうとしてました!
前回よりもサリーが魅力的に感じられて、それが今回一番良かったかな。上巻では、サリーのところに持ち込まれた話と、フレデリックたちに持ち込まれた話が、当時大人気だったという降霊術も絡みながら、徐々に繋がりを見せていきます。そのほかにも、議会を通過したばかりの「妻財産法」なんていうのも絡んでくるし、労働者階級が中心となっていた前作とは違って今回は上流階級が絡んでくるのも面白いところ。ブラム・ストーカーの名前まで! そして下巻に入るとさらに物語の展開は速くなって、中盤から終盤にかけてば、まるで次々に引火して爆発していく爆弾のような感じでした...。私としては正直あまり嬉しくない展開だったりするんですけど、ま、面白かったです。
次の作品は3年後とのこと。25歳のサリーはどうなっているのかしら~。(創元ブックランド)


+シリーズ既刊の感想+
「マハラジャのルビー サリー・ロックハートの冒険」フィリップ・プルマン
「仮面の大富豪 サリー・ロックハートの冒険2」フィリップ・プルマン

+既読のフィリップ・プルマン作品の感想+
「黄金の羅針盤」上下「神秘の剣」上下 フィリップ・プルマン
「琥珀の望遠鏡」上下 フィリップ・プルマン
「かかしと召し使い」フィリップ・プルマン

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1872年10月。最近父を失ったばかりのサリー・ロックハートは、父がサミュエル・セレビーと共同で経営していたロックハート&セルビー海運会社へとやって来ます。3ヶ月前にスクーナー船<ラヴィニア号>が南シナ海に沈み、これに乗船していたサリーの父も亡くなっていました。しかしその日の朝、シンガポールからサリーのもとにメモのようなものが郵送されてきたのです。そこには父ではない筆跡で「サリ七つの祝福に用心しろ マーチバンクスが助けになってくれる チャツム 用人しろ」と書かれていました。サリーはミスター・セレビーを訪ねてきたのですが、ミスター・セレビーは生憎留守。そして代わりに会ったミスター・ヒッグスは、「七つの祝福」という言葉を聞いた途端、心臓麻痺で死んでしまったのです。

サリー・ロックハートの冒険シリーズの第1弾。この作品は4部作で、「ライラの冒険」シリーズよりも前に書かれた作品なんだそうです。
舞台はシャーロック・ホームズが活躍し始めるよりも10年ほど前のヴィクトリア朝のロンドン。孤児となったサリーを引き取る親戚・ミセス・リーズの造形もいかにもヴィクトリア朝の堅苦しい未婚女性って感じだし、当時の風物が生き生きと書かれているのが楽しいです。特にステレオスコープ(日本ではのぞきからくり)が面白そう! 主人公のサリーは、好きに学習するようにまかされた結果、「英文学、フランス語、歴史、美術、音楽に関する知識は皆無だが、軍の作戦、簿記、株式市場の動き、ヒンドゥー人に関する実用的知識には堪能となった」という、ヴィクトリア朝の女性としてはあり得ないほど個性的な少女。でも、サリー自身は今ひとつ魅力的ではなかったかな...。悪たれ少年のジムは可愛いし、写真家のフレドリックとその妹・ローザ、トレンブルといった面々が揃うバートンストリート45番地はすごく魅力的だったんですけどね。マハラジャのルビーや父親の死の謎といった本筋の冒険や謎よりも、サリーが店を建て直していく辺りの方が面白かったかも。
第2弾はこの作品の6年後。サリーは既に大学を卒業して一人立ちしているようです。また写真店の面々やジムが登場してくれるといいんだけど、どうなるのかな。(創元ブックランド)


+シリーズ既刊の感想+
「マハラジャのルビー サリー・ロックハートの冒険1」フィリップ・プルマン
「仮面の大富豪 サリー・ロックハートの冒険2」上下 フィリップ・プルマン

+既読のフィリップ・プルマン作品の感想+
「黄金の羅針盤」上下「神秘の剣」上下 フィリップ・プルマン
「琥珀の望遠鏡」上下 フィリップ・プルマン
「かかしと召し使い」フィリップ・プルマン

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寒くて暗い11月の晩、魔使いの鐘が鳴ります。それは魔使いに仕事を頼む合図の鐘の音。しかしトムが外に見に行くと、そこには農夫ではなく、左手に杖を持った背の高い黒いフード姿の人物が立っていました。ここから一番近くに住んでいる魔使いは、トムの兄弟子にあたるビル・アークライト。咄嗟にそのアークライトなのかと思うトムでしたが、男は名乗ろうとはせず、トムに師匠宛ての手紙を渡します。それはかつて魔使いの弟子だった男で、しかし結局魔使いにはなれなかったモーガン。手紙を読んだ師匠は、翌日アングルザークの「冬の家」に行くと宣言します。

魔使いのシリーズの第3弾。
「魔使いの呪い」でも少し触れられてたんですが、今回は題名通り、魔使いの秘密が本格的に明かされることになりました。そしてそのことに密接に関係する出来事も起きることに。これまでも、魔使いって最終的には甘いというか優しいよなーと思ってたんですけど、今回はほんとズバリその印象通りの人物像です。トムには散々厳しいことを言ってるけど、それはやっぱり同じ轍を踏ませたくないという親心なんでしょうね。なんて思ってみたり。愛想が悪く見えてても、実は人一倍愛情たっぷりな人間だということがよく分かります。魔使いになると決める時には、今のトム以上に逡巡したかもしれないですね。そして今回も白黒がはっきり分けられない部分が多かったです。今までのアリスがまさにそうなんだけど... そんなアリスだからこそメグのことが誰よりも理解できるのかも。
トムのお母さんとメグって、もしや何か他にも共通点があったりするのかしら...? 続巻も楽しみ♪(創元ブックランド)


+既読のジョゼフ・ディレイニー作品の感想+
「魔使いの弟子」「魔使いの呪い」ジョゼフ・ディレイニー
「魔使いの秘密」ジョゼフ・ディレイニー

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