Catégories:“児童書・YA(翻訳)”

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畑を分割しないことが鉄則の農家では、長男以外の息子たちにそれぞれ仕事を見つけることが必要。そして7番目の息子である父の、さらに7番目の息子のトムは、魔使いの弟子になることになります。7掛ける7の子には素晴らしい能力があるのです。とは言え、畑や村や町を悪い魔女や魔物から安全に保ち人々を守るという大切な仕事を果たしながらも、人に忌み嫌われる魔使いという仕事に胸中複雑なトム。そして師匠となる魔使いが迎えに来たのは、トムが12歳の春のことでした。トムはウォータリー通り13番地の幽霊屋敷での試験に合格し、魔使いとして本格的に学び始めることに... という「魔使いの弟子」とその続編「魔使いの呪い」。

いやー、面白い! 最初この本を探そうとした時「魔法使いの弟子」って検索しちゃったんですけど、「魔法使い」ではなくて「魔使い」というのがポイントだったんですね。魔女とか、ボガートみたいな魔物は存在するんですけど、魔使いはあくまでも「魔使い」。魔法なんて使えないし、魔女やボガートには魔法でも力でもなく、それまで培ってきた知識と経験を駆使して立ち向かうんです。例えば魔女を拘束するのに必要なのは銀の鎖。ボガートを拘束するには、巨大なオークの木のそばに決められた大きさの穴を掘って塩(ボガートを焼く)と鉄(邪悪な力を失わせる)を混ぜたものを穴の内側に満遍なく塗り、穴の中に血を入れた皿を置いておびき寄せ、ボガートが穴の中に入ったところを分厚い石板(もちろんこの裏にも塩&鉄は塗ってある)ですかさず蓋をするという仕組み。1作目を読んだ時にそんな簡単にいくのかしら、なんて思ったりもしたんですが、私の疑問は早くも2作目の序盤で解決されてました。他にも誰か同じことを思った人がいたのかしら。(笑)

「魔使いの呪い」の解説が上橋菜穂子さんなんですが、その中でトムのことを「とても真っ当で、ぶれない」と書いてらっしゃるのを見て、ああ、ほんとその通りだなあと思いましたよ。最初、どの辺りで思ったんだったかしら... 「魔使いの弟子」で、師匠が「ボガートは何種類いると思う?」と聞いた辺りだったかしら。ほんと、真っ当。その真っ当さはおそらく作者の真っ当さなんでしょうけど。そしてその真っ当さが、話をよくある展開とはまた違った展開にしてて、それが面白いんですよね。そしてこのシリーズは「魔使いの秘密」「魔使いの戦い」へと続きます。そちらも楽しみ!(創元ブックランド)


+既読のジョゼフ・ディレイニー作品の感想+
「魔使いの弟子」「魔使いの呪い」ジョゼフ・ディレイニー
「魔使いの秘密」ジョゼフ・ディレイニー

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JJ・リディも結婚し、今は4人の子供の父親。でもリディ家では11歳の次女のジェニーが天災のような存在。少し目を離しただけで家や学校から抜け出して、薄着で野山を歩き回って過ごしてばかり。人に言われた通りの行動をすることができないジェニーに、家族全員が振り回されていました。特に不満を持っていたのは、JJの妻のアイスリング。JJと家事を半分ずつ分担して、いずれは療法士の仕事に戻るつもりだったのに、ジェニーがそんな状態で、しかもJJが国内外でのコンサートに忙しくて家にあまりいられない状態なので、予定もきちんと立てられないのです。アンガス・オーグがきちんと木を届けてくれれば、JJも家でフィドル作りに専念できるはずなのですが...。

先日読んだ「時間のない国で」の続編。今回も面白かったー。というか、今回の方がパワーアップで面白かったかも! JJがいきなり4人の子供の父親になっているのには驚いたんですけどね。しかも家の中のゴタゴタの話かと思いきや、そこに見張り塚にいる幽霊と羊の姿のプーカが絡んで、気がついたら話が結構大きくなってるし...。何のために幽霊が見張り塚にいるのかとか、なんでプーカがジェニーに幽霊と友達になるように仕向けてるのかとか、それでいてなぜ自分のことを幽霊からは隠そうとしてるのかとか、なんで隣人の老人・ミッキーが急に見張り塚の上に登りたいと言い出したのかとか、謎がいっぱい。
前回ちらっとしか登場しなかったプーカが今回は前面に登場。話の半ばで「うわーっ、そういうことだったのか!」と第一弾の爆弾(私にとっては)があって、その後もどんどん面白くなります。ああ、ティル・ナ・ノグに行ってみたいな。でもそんなことになったら、ほんと帰って来られないかも~。(創元ブックランド)


+シリーズ既刊の感想+
「時間のない国で」上下 ケイト・トンプソン
「プーカと最後の大王(ハイキング)」ケイト・トンプソン

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ギリシア神話の巨人族ティタンのアトラスは、ポセイドンと大地の息子。かつてアトランティス大陸の住人たちはアトラスに忠誠を誓っていたのですが、ゼウスとの戦いでティタン族は破れ、アトランティス大陸は沈み、アトラスはその巨躯で天地を背負うという罰を受けることに。そして時が流れ、そこにヘスペリデスの園に金の林檎を取りにやって来たヘラクレスが現れます。ヘラクレスはエウリュステウス王のために様々な仕事をさせられており、これが11番目の仕事。アトラスはヘラクレスにしばらくの間その重荷を任せて、ヘスペリデスの園に林檎を取りに行くことに。

マーガレット・アトウッドの「ペネロピアド」同様、英国のキャノンゲイト社が主催する「世界の神話」シリーズの第一回配本作品。この物語の主人公は、ギリシャ神話に登場する巨人・アトラス。天地を背負う巨人。そしてこのギリシャ神話のエピソードにジャネット・ウィンターソン自身の物語が絡められています。
ギリシャ神話で見るアトラスは、その重荷を重荷であるとしか捉えてないはずなんですが、こちらの作品ではアトラスがその重荷を憎みながらも愛しているようなところが特徴。一時はヘラクレスがその重荷を代わって背負い、そのままアトラスが逃げてしまうこともできそうになって... でも結局アトラスはヘラクレスに騙されてまた重荷を背負わなくちゃいけなくなるんですが、ここでアトラスは騙されて怒るのではなくて、「やさしく穏やかに、ほとんど慈愛をこめた行為として背負う」のです。本当に辛いのであれば、世界がどうなろうとも構わず下ろしてしまえば済むこと。
そしてこの重荷の話は、いつの間にかジャネット・ウィンターソン自身の重荷とシンクロしていきます。彼女の重荷は、やはり宗教的に厳格な里親の家庭に育ちながらも同性愛に目覚めてしまったことなのでしょうね。重荷を下ろしてしまえば、世界は崩壊してしまうかもしれない。それでも彼女は自分の重荷を下ろします。その時どうなったか。結局のところ、本当に世界が崩壊することなんて、なかなかないってことですね。ほんの少しの勇気を出せばいいだけのこと。そんなメッセージが伝わってくるようです。
マーガレット・アトウッドとの違いは、この長さでも語りたいことはしっかり語りつくしてるってことかな。ヘラとヘラクレスの会話も面白かったし、アトラスとライカの邂逅も素敵でした。(角川書店)


+既読のジャネット・ウィンターソン作品の感想+
「さくらんぼの性は」ジャネット・ウィンターソン
「オレンジだけが果物じゃない」ジャネット・ウィンターソン
「永遠を背負う男」ジャネット・ウィンターソン

+既読の新・世界の神話シリーズ作品の感想+
「ペネロピアド」マーガレット・アトウッド
「永遠を背負う男」ジャネット・ウィンターソン
「恐怖の兜」ヴィクトル・ペレーヴィン

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JJ・リディは、両親と妹との4人暮らし。父は詩人で母は音楽家。母の家は代々音楽家の家系で、毎週のようにケイリーと呼ばれるアイルランド伝統のダンスパーティが開かれているのです。JJ自身もフィドルやフルートの演奏者として、ハーリングの選手として、アイリッシュ・ダンスの踊り手として、数々の賞を手に入れてきていました。しかし最近どうにも時間がないのです。父が母と出会い、母の実家の農家に移り住んだ時に夢見ていたのは牧歌的な生活。しかし今では日々農作業に追われ、詩作などまったくする余裕がない状態。そしてリディ家だけでなく、この一帯に住む大人も子供も同じ問題に悩まされていました。

毎日のように時間にに追われて「時間が足りないー」「もっと時間が欲しいー」と言っている現代人は多いはず。という私もやりたいことが多すぎて、1日24時間じゃあ到底足りない状態。でも「時間が足りない」というのは、単なる比喩的な表現での話。1日はちゃんと24時間あると納得した上で、そんなことを言ってます。ま、言ってしまえば、自分の能力を超えて欲張りすぎなんですよね、私の場合は。まさか本当に時間がなくなっているとは考えたこともありません。でもこの作品の中では、本当に時間がなくなってしまうんです。となると、ミヒャエル・エンデの「モモ」を思い出すんですが、そういうのとはまたちょっと違っていて...。いや、結果としてはかなり似た状況とも言えるんですけど、誰も他人の時間の花を奪おうとしているわけではありませんし。(笑)
アイルランドのファンタジーはチェックしてるつもりでいたんですけど、これはすっかり抜け落ちてました。まさかこんなところにあったとは! この続編の題名が「プーカと最後の大王(ハイキング)」で、それを見るまで全然気づいてなかったんです。まさか「ティル・ナ・ノグ」まで出て来ようととはーっ。時間不足に嘆く普通の世界と時間の存在していないティル・ナ・ノグの関係も面白かったし、それぞれの住人たちがまたいいんですよねえ。そして最初から最後までずっとアイルランドの伝統音楽がずっと流れ続けてるという意味では、以前読んだチャールズ・デ・リント「リトル・カントリー」(感想)みたいな雰囲気。もうほんとリバーダンスが目の前に浮かんできます。色んな曲の楽譜が入ってるので、詳しい人はもっと楽しめそう。そしてスーザン・プライスの「500年のトンネル」(感想)もなんとなく思い出しながら読んでたんですけど、それはこの表紙のせいかな? 前半こそちょっと引っかかる部分もあったんですけど、後半はそんなことなかったし、終わってみれば結構面白かった! 伏線の効いた解決も気持ち良かったので、ぜひ続きも読んでみようと思います~。(創元ブックランド)


+シリーズ既刊の感想+
「時間のない国で」上下 ケイト・トンプソン
「プーカと最後の大王(ハイキング)」ケイト・トンプソン

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トロイア戦争に10年、そしてエーゲ海を彷徨うこと10年。20年の留守の後にオデュッセウスが見出したのは、オデュッセウスだけをひたすら待っていたペネロペイア。従妹であるトロイアのヘレネほど美しくはないものの、ペネロペイアは頭が良く貞節な妻、とホメロスの「オデュッセイア」では伝えられていますが... ペネロペイアと、オデュッセウスの帰還の後吊るし首にされた12人の女中たちが冥界で語る、また別の「オデュッセイア」の物語。

以前読んだ「侍女の物語」がとても面白かったマーガレット・アトウッド。あれは旧約聖書のエピソードを元にしてたんですけど、こちらはギリシャ神話。ホメロスの「オデュッセイア」(感想)です。先日読んだベルンハルト・シュリンク「帰郷者」(感想)に続いての「オデュッセイア」ネタ。ギリシャ・ローマ時代の目ぼしい作品はほとんど読んでしまっているので、こういうところでも読めるなんて嬉しいです~。これは英国のキャノンゲイト社が主催する「新・世界の神話」企画の一環なのだそう。世界の超一流の作家たちによる神話が毎年数作ずつ刊行されて、2038年には100冊目が配本される予定なのだとか。これまた楽しそうな企画ですよね。

で、この作品、ペネロペイアが中心となって語り、その合間に処刑された12人の女中たちがギリシャ悲劇のコロス風に歌い、終盤では現代的な裁判が行われたりと工夫はあるんですが...
うーん、ちょっと描きこみ不足ですかね。どうも圧倒的に枚数が少なすぎた気がします。なんでこんなに軽く流してしまうんだろう? もしかしたら枚数制限でもあったのかな? オデュッセウスの遍歴の中の一つ目の巨人キュクロプスとの戦いが、実は酒場の片目のあるじとの勘定の不払いをめぐる争いだったとか、女神カリュプソとの愛の日々は、実は高級娼館で寄居虫になってただけだったとか、そういうのはいいんですけど... そういうのを出すんであれば、ペネロペイア側もそれに応じてもっと変化させて欲しかったし、それでも敢えて「気高い方のバージョン」を信じるというんだったら、それ相応の作りにして欲しかった気がしますねえ。なんだか中途半端。マーガレット・アトウッドなら本当はもっと全体的に作りこむことができたはずなのに! それだけの力がある人だと思うのに! 目新しさがなくてとっても残念。そもそもこの題名自体、意味が分かりませんよね... このシリーズの他の作品も読んでみようと思ってるのだけど、他のもこんな感じだったら悲しいなー。(角川書店)


+既読のマーガレット・アトウッド作品の感想+
「侍女の物語」マーガレット・アトウッド
「ペネロピアド」マーガレット・アトウッド

+既読の新・世界の神話シリーズ作品の感想+
「ペネロピアド」マーガレット・アトウッド
「永遠を背負う男」ジャネット・ウィンターソン
「恐怖の兜」ヴィクトル・ペレーヴィン

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東京創元社で刊行中のラング童話集の7冊目。巻によってフランス系のお話が多かったり、北欧系が多かったり、南欧系が多かったりと少しずつ色合いが違うんですが、今回はエストニアやセルビア、リトアニア、ルーマニアといった東欧の話が多くて楽しかったです。民話としてはフランスやドイツ辺りの話が一般的な認知度が一番高いと思うんですけど、どこの話が好きかと言われれば、私は北欧が一番好き。そして東欧も好き。どこがどう違うのかは、読んでいても今ひとつ分かってないんですけどね。全部のお話を混ぜて、好きなのを適当にピックアップしていったら、多分北欧や東欧のお話が集まるはず。
そして今回「おおっ」と思ったのは、スワヒリの話が登場していたこと。「あるガゼルの物語」「人食いヌンダ」「ハッセブの話」の3つがスワヒリの話。でも「あるガゼルの物語」は「長靴をはいた猫」みたいな感じだし、小道具的には確かにアフリカなんだけど、どれも普通にヨーロッパの民話と同じように読めてしまいそうな話。それほどアフリカの特徴が出てるというわけではないです。むしろ王様を「スルタン」と呼んでるので、トルコかペルシャかってイメージになってしまうんですが... これは元々の話が英語で書かれた時点でそうなってしまったということなんでしょうね。...あ、でも今スワヒリって具体的にどこなんだろうと思って調べたら、「スワヒリ」という言葉は、アラビア語で「海岸に住む人」という意味なんだそうです。ということは、アラビア語の「スルタン」という言葉を使うのは、当たらずとも遠からず? スワヒリ語はケニア・タンザニア・ウガンダといった東アフリカの国で公用語となってるようですが、スワヒリという国はないんですね。知らなかった。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+(東京創元社版)
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編
「きいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ももいろの童話集」アンドルー・ラング編
「はいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「むらさきいろの童話集」アンドルー・ラング編
「べにいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ちゃいろの童話集」アンドルー・ラング編
「だいだいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「くさいろの童話集」アンドルー・ラング編

+シリーズ既刊の感想+(偕成社文庫版)
「みどりいろの童話集」「ばらいろの童話集」アンドルー・ラング

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おかあさんと離れ、おばあちゃんとローリーおじさんと暮らすようになって、新しい学校に通い始めた9歳のエイドリアン。学業はそこそこ、運動はオンチ、それでも美術だけは飛びぬけて得意という引っ込み思案の大人しい少年。学校で仲良しなのは、同じく運動オンチのクリントン。そんなある日のこと、エイドリアンはテレビで3人の子供が行方不明になったニュースを見ることになります。それはエイドリアンの家の近くでの出来事。メトフォード家の3人の子供、10歳のヴェロニカと7歳のゾーイ、5歳のクリストファーが日曜日の午後にアイスクリームを買いに家を出たまま、そのまま帰って来ていなかったのです。

もう、息が止まりそうになりました...。こういう話だったんですね。読み終えた時は、もうショックが大きすぎて何も書けそうにないと思ったんですが、一晩経って少し落ち着いたので、やっぱり何か書いておかないと。
いえね、最初から不穏な空気が流れてるんです。冒頭は3人の子供たちのいなくなった場面。その時のことが淡々と書かれていて、その締めくくりは「三人の子どもはアイスクリームを買うこともなく、家にももどらなかった」。でもこの3人の話はここまで。そして始まるのが主人公のエイドリアンの話。
エイドリアンは、とても感受性の強い子なんですね。本当は美しいものにも敏感なんでしょうけど、ここで語られるのは怖いものの話。エイドリアンには怖いものが沢山あるんです。頭の中に怖いものリストがあって、その日の朝に朝刊で見た「海の怪物」もその1つ。「ナショナル・ジオグラフィック」で見た流砂もそうだし、自然発火や津波もそう。閉店後の店に閉じ込められるのも怖ければ、学校におばあちゃんが迎えに来なくなるのも怖いし、色々と想像が膨らんでしまうのを止められないんですね。だからこそ美術が得意にもなるんでしょうけど。
祖母と叔父と一緒に暮らしてるのは、どうやら母親が精神的に不安定だからみたい。祖母も日々頑張ってるんですが、エイドリアンが同じ家にいること自体に苛々してます。周りに誰1人として、余裕がある人間がいないんです。みんな自分のことに必死で、無条件にエイドリアンを胸に抱きとめられるような状態じゃなくて。みんな悪い人間じゃないし、エイドリアンのことを愛してるのに。エイドリアンはそんな手がかかるような子じゃないのに。
そして学校でも色々あります。学校でのエイドリアンの友達はクリントンだけで、でもエイドリアンはこのたった1人の親友に満足してるんですが...。

大人の余裕のなさとか、子供の世界の残酷さとか、そういうの1つ1つは自分の身近でもよく見かけるようなことなんですけどね。私はエイドリアンみたいな感受性はもってないけど、でもどれもがものすごく痛いほど分かりすぎてしまって(しかもこのおばあちゃんが、うちの母そっくりなんだわ)、何もかもが一気にエイドリアンに襲い掛かってくるようで、それがまさにエイドリアンの怖がってる流砂や津波のようで、いたたまれなかったです。それでいて物語そのものはとてもとても静かで美しくて、最後は、ああ、小鳥が飛び立ったんだな、って思ったのだけど。
最初のソーニャ・ハートネット作品がこれでなくて良かった。いえ、本当は最初に読むのに相応しいような作品なんだけど... 私にはちょっとつらすぎました。(河出書房新社)


+既読のソーニャ・ハートネット作品の感想+
「銀のロバ」ソーニャ・ハーネット
「小鳥たちが見たもの」ソーニャ・ハートネット

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