Catégories:“児童書・YA(翻訳)”

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町が大きくなるにつれ、貨物駅では山のような荷箱や石炭、牛や豚をさばききれなくなり、正面の空き地に国中で一番大きなクレーンがすえつけられることになります。そしてクレーン係となったのは、工事中からクレーンにほれこんでしまった1人の若者でした。

夏の日も冬の日も、晴れの日も雨の日も荷物を積み替えし続けるクレーン男。その仕事が楽しくて仕方なくて、誰にも譲りたくないんですね。水が欲しければつかみ機で川からくみ上げるし、必要なものはトラックの運転手たちが買って来てくれるし、親友のレクトロも毎日会いに来てくれるし、髪が伸びればレクトロのお兄さんが刈ってくれるし、日曜になれば娘たちがクレーンの周りで踊るし、全然寂しくなんてないんです。でも戦争が始まって状況は一変します。突然1人ぼっちになってしまうクレーン男。
平和な頃に楽しい夢にふけってるレクトロの絵があんまり幸せそうなもんで(レクトロの絵はどれも表情がいい!)、その後の状況がとてもツライのですが... でもそんな中でも素敵な情景がいくつかありました。クリスマスとかね。これは本当に素敵。モノクロの絵なのが信じられないぐらい色を感じます。そしてその後で、1羽のワシと友達になるんですが、このワシとクレーン男がただ一度仲たがいした時の哀しいことったら。
物語の終わりとクレーン男の最後の言葉は、美しいながらも寂しくて胸が詰まりそうになりました。でもやっぱりとっても素敵です。もちろん矢川澄子さんの訳も♪(パロル舎)


+既読のライナー・チムニク作品の感想+
「タイコたたきの夢」ライナー・チムニク
「クレーン男」ライナー・チムニク

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むかしむかしのある日のこと、大きなもりの中にぽつんとある町の通りを、1人のせむし男がタイコをたたきながねり歩き、さけびだします。「ゆこう どこかにあるはすだ もっとよいくに よいくらし!」 町の人々はその男を牢屋にとじこめようとします。しかし町をくまなくしらべてみても、どこにもその男はいないのです。その夜、ひとりの老人がタイコを持っているのを見つかり、牢屋にとじこめられてしまいます。人ちがいだと言っても、だれも聞いてくれません。そしてあくる朝、またしても同じようにさけぶ声が。老人と牢番が一緒にタイコをたたきながら、同じようにさけんでいたのです。

たった1人が叫んだ「ゆこう どこかにあるはすだ もっとよいくに よいくらし!」 という言葉。最初は1人だったのが2人となり、8人になり、見る見るうちにもっと増えて、あっちでもこっちでも人々がタイコをたたき始めます。それは水滴が集まって水となり、やがては川となって勢い良く流れていくような感じ。読んでいる私まで、その奔流に飲み込まれてしまいそうになります。1つの町で始まった行進は、他の町も巻き込んでどんどん勢いを増して、しまいにはものすごい大きさに。まるでレミングの行進みたい。でも可笑しいんだけど、笑うに笑えない...。何があってもあくまでも前進してゆく人々の姿が、痛々しく見えて仕方ありません。それだけにすごく印象に残るんですけどね。これは何を意味しているのだろうと思いながら読んでいたら、最後にライナー・チムニクの紹介が。1930年にポーランドに生まれ、ミュンヘン在住の作家さんだと分かって、深く納得。
グレー地に、ライナー・チムニクが自ら描いたという細いペン描きの絵があって、とてもシックでお洒落な本です。絵もすっごく可愛い! ちょっと細かいんだけど、味わいがある絵なんですよね。そして矢川澄子さんの訳がやっぱり素敵。「ゆこう どこかにあるはすだ もっとよいくに よいくらし!」 ...このリズム感がいいんですよね。(パロル舎)

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両親がイギリスを離れる半年間、かつて乳母をしてくれていたベスの家に滞在するためにオールダリーの村へとやって来たコリンとスーザン。到着した翌日、2人は早速近くの「丘」へ。そして帰宅後、ベスの夫に丘の散歩で見た様々なものにまつわる言い伝えを聞くことに。その中には、昔、魔法使いに1頭の白馬を売ることになった百姓の物語もありました。百姓は魔法使いに連れられて洞窟に入り、140人の騎士たちが白馬と共に眠る光景を見ることになったのです。

イギリスのウェールズ地方に伝わる民間伝承を元に書き上げたという作品。その伝承がケルト文学の中に織り込まれている、と訳者あとがきにありましたが、洞窟の中で甲冑に身を固めた騎士たちがいつか戦う日のために人知れず眠っている... というのは、そのまんまアーサー王伝説にもある言い伝えですね。この物語でその騎士たちを眠らせたのは「銀のひたいのキャデリン」と呼ばれる魔法使いなんですけど、これがまるでマーリンみたい。で、このキャデリンは「炎の霜」と呼ばれるブリジンガメンの魔法の宝石の力で騎士たちを眠らせてるんですが、この宝石が紛失してしまうんですね。その辺りからは「指輪物語」と似たような展開になります。コリンとスーザンが入り込んでしまう山中の洞窟はまるでモリアのようだし、同行するのはドワーフ、途中で出会うのはエルフ、そして「黄金の手のアンガラット」はガラドリエルといったところ。(キャデリンはガンダルフみたいだとも言えるし)
壮大な歴史を感じさせる作品なんですけど、やっぱり似ているだけに比べてしまうんですよねえ、「指輪物語」と。そうなると、中心人物たちがどうもイマイチ魅力不足...。とはいえ、「黄金のアンガラッド」や「ギャバランジー」といった、背後にいかにも物語が潜んでいそうな人物もいるんですけどね。
この本では「炎の霜」の奪還の物語だけが語られてるんですが、大きな歴史絵巻の一部分を切り取ったという印象の作品でした。この後のことが、続編だという「ゴムラスの月」で語られることになるのかな。でもあと一冊じゃあ、世界の全貌を見れるところまではいかないんだろうな。(評論社)

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スカアハの祖母・ドーラの店にいたニコラ・フラメル、スカアハ、ソフィーとジョシュの4人は、ドーラがあけた「レイゲート」を通ってパリへと脱出。ディー博士に追わせまいとドーラがすかさずレイゲートを破壊するものの、ディー博士は軽い切り傷とすり傷だけで逃げだし、パリにいるニコロ・マキャベリに連絡を取ります。マキャベリはすぐさま4人を見つけ出し、ロウのタルパに4人を襲わせ、自分も4人に接触するのですが...。

「アルケミスト 錬金術師ニコラ・フラメル」の続編。伝説の錬金術師ニコラ・フラメルと、世界を救う、あるいは滅ぼす力を持つ双子・ソフィーとジョシュが中心になる物語の第2弾です。
1作目の時は、北欧神話にケルト神話、ギリシャ神話にエジプト神話... と、あまりに範囲が広すぎて節操のない感じも受けてしまったんですけど、2作目では私も既に慣れてしまったらしく(あらら)、まるで違和感を感じないどころか、逆にとても面白かったです~。この作品、神話だけでなくて、歴史上の人物も色々と絡んでくるのも面白いところなんですよね。前回登場の錬金術師・ニコラ・フラメルとその妻・ペレネル、敵のジョン・ディーに加えて、今回登場したのはまずニコロ・マキャベリ。ルネッサンス期のイタリアフィレンツェに生まれて、「君主論」を書いたあのマキャベリです。今はフランスの対外治安総局(GDSC)の長官。そしてサンジェルマン伯爵。魔術師にして錬金術師、発明家であり、音楽家でもある人物。元々時空を超えて存在していた怪人と言われる人物だそうなので、こういった物語にはまさに適役ですね。今の職業はロックスター。(笑) そしてその妻は、オルレアンの乙女・ジャンヌ。いや、もうほんと楽しくて堪りませんー。マキャベリに関しては、敵ながらもなかなかいい味を出しているので、今後の展開もとても楽しみになってしまいます。3作目も早く出ないかしら!(理論社)


+既刊シリーズの感想+
「アルケミスト 錬金術師ニコラ・フラメル」マイケル・スコット
「マジシャン 魔術師ニコロ・マキャベリ」マイケル・スコット

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ドイツのとある荒れ果てた森の中の古い城に住んでいたのは、ゴッケル・フォン・ハーナウという名の老人。ゴッケルにはヒンケルという妻と、ガッケライアという娘があり、3人は古い城の鶏小舎の中に住んでいました。かつてはドイツの中で最も立派な城の1つだったこの城は、ゴッケルの曽祖父の時代にフランス軍によって叩き壊され、当時飼われていた見事な家禽も食い尽くされ、それ以来荒れるにまかされていたのです。ゴッケルの曽祖父も父親も隣国ゲルンハウゼン王家の雉及び鶏の守として仕えており、ゴッケルも同じ役職につくものの、桁外れに卵好きの王に卵の浪費を強く訴えたため、王の怒りを買って宮廷から追放され、荒れ果てた父祖伝来の城に住むことになったのです。ゴッケルたちに従うのは、牡鶏のアレクトリオと牝鶏のガリーナのみ。ゴッケルは養鶏で生計を立てようと考えるのですが...。

岩波文庫版でも出ているのでそっちでもいいかなあと思ったんだけど... とは言っても、それもすっかり廃版になっちゃってるんですけど(笑)、やっぱり矢川澄子さん訳が読みたいなあと王国社版をセレクト。いえ、本当は妖精文庫のが入手できればそれが一番なのですが!
人間の言葉を理解する鶏、何でも願いの叶うソロモンの指輪、親切にしてやった鼠の恩返しなどなど、童話らしいモチーフが満載なんですが、昔ながらの童話とはやっぱりちょっと違いますね。同じドイツでも、グリム童話とは実はかなり違うかも! そういった伝承の童話の持つ雰囲気をエッセンスとして持ってるんですけど、それはあくまでもエッセンス程度で、むしろ現代の物語という感じです。これは19世紀はじめ頃に書かれた作品なんですけど、当時はとても斬新な作品だったのではないかしら。結構凝った作りだと思うんですけど、すっきりまとまっていて、読みやすかったし面白かったです。矢川澄子さんの訳だから、読みやすいのは当然なんだけど♪ 特に驚いたのはその幕切れ。鮮やかですね!
でも原書のドイツ語には、ふんだんに言葉遊びが施されてるんですって。登場人物の名前も遊び心たっぷりなのだそう。さすがに日本語訳では、そこまでは分からないんですよね。それだけがちょっぴり残念。(王国社)

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あるひんやりした春の朝。海に近い森の中にきのこを探しに来ていたマルセルとココが見つけたのは、倒れている男。最初は生まれて始めて死人を見つけたと思い、わくわくしながらも逃げ出す2人でしたが、本当に死んでいるのか確かめるために戻ってみると、男は起き上がっていました。目はまっすぐ2人を見つめているのに、「だれだ、そこにいるのは?」と叫ぶ男。男の目は見えていなかったのです。男はとても若い外国人で、脱走兵。病気でもう長くはもたない弟のジョンに会うために、イギリスの自分の家に帰ろうとしているところだと話します。

全然名前も知らない作家さんだったんですが、先日ましろさんに教えていただきました。感謝♪

本筋の物語そのものもいいんですが、兵士が子供たちに話して聞かせるロバの出てくる4つの物語がとてもいいんですよね。キリスト生誕の時にマリアをベツレヘムへと運ぶロバの物語、旱魃に苦しむ世界を救うロバの物語、戦争で負傷者たちを助ける少年とロバの物語、そしてジョンが見つけた銀のロバの物語。
ロバって、日本ではあまり馴染みがないですよね。私が知ってるのは「くまのプーさん」のイーヨーぐらいだし... しかもこのイーヨー、どう見てもイマイチ冴えない地味な存在。でも本当はすごく素敵な動物だったんですね。気立てが良くて我慢強くて足が丈夫で、骨惜しみせずに働いてくれるロバ。小麦のような香ばしいにおいと、深く優しい目をしたロバ。頑固で愚かといわれながらも、どんな動物よりも気高いといわれるロバ。ロバにキスされた赤ん坊は、ロバと同じ性質をそなえた子になると言われているのだそうです。兵士の語る話は、どれも大きく圧倒的な力に振り回される小さな存在の物語なのですが、とてもすんなりと心に入り込んでくるようなものばかり。そしてそんな圧倒的な力に立ち向かうために必要な勇気と愛情を持っているのがロバ。ああ、ソーニャ・ハートネットにとって、ロバってこんなに身近な存在なんですね。そして一見とても小さな存在の方が実は純粋な勇気や愛情を持っている... というのはココやマルセルも同じ。

第一次大戦下のフランスの海辺の町が舞台。イギリス軍の脱走兵の話なので、本当はほのぼのなんてしようがないはずなんだけど、読んでいてすごく和む物語。心が洗われるようでした。マルセルとココを見てる限りでは、近くで戦争をやってることなんてまるで感じられなくて、それが逆にちょっと薄ら寒い気もするのだけど。
ロバではないんだけど、手のひらにすっぽり収まるサイズの銀の恐竜ならいくつか持ってます、私。本を読んでる間ずっとそのイメージでした。ちょっと光沢がなくなってきてるから磨いてあげようっと。そしてソーニャ・ハーネット作品、他のも読んでみようっと。(主婦の友社)

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土曜日の夕方、いじめっこのジョアンたちに追いかけられていた13歳のニータは、咄嗟にいつも通っている図書館に逃げ込みます。顔馴染みの司書に地下の児童室に行っておくようにと言われたニータは、大好きな本たちを眺めながら本棚と本棚の間をぶらぶらと歩き回ってるうちに、見覚えのない本を見つけて驚きます。それは「魔法使いになるには」というタイトルの本。誰かのジョークだとしか思えないニータでしたが、その中に書かれていることは、いたって大真面目な様子。ニータは夢中になってその本を読み始めます。

図書館で見つけた本がきっかけで、魔法使いになってしまうという物語。どうやら以前他の出版社から「魔法使い(ウィザード)になる方法」という題名で刊行されて絶版になっていた本が、新訳となって再登場したみたいですね。

図書館にあった「魔法使いになるには」というタイトルの本は、魔法使いの資質がある人にはきちんと書いた人間の意図通りに見えているけれど、そうでない人には別のものに見えているという設定。シャンナ・スウェンドソンの「Don't Hex with Texas」にも同じような設定があったなあ、なんて思ったんですけど、こっちの方が先です。(最後の方でハリー・ポッターを思い出すシーンがあったんですけど、それもこっちの方が先・笑) この「魔法使いになるには」という本、魔法使いの素質がない人にはどんな本に見えてるんでしょうね。図書館の司書の目には普通の本に見えていたはず。ニータの妹のデリーは、キッチンに置き忘れていた本を部屋に持って来て「手品師にでもなるつもり?」なんて言ってるんですけど、普通の人には「手品師になるには」って本に見えるのかな?
この「魔法使いになるには」の本の引用もなかなか楽しいんです。にやりとしてしまったのは、「魔法使いは言葉に愛着を抱く。たいていの魔法使いは活字中毒だ。実際、魔法使いの素質を持つ者に現れる強い徴候として、なにかを読まずして寝つくことができないという点があげられる」というくだり。あと「歴史、哲学、<魔法使いの誓約>」の章で<力ある者><素質ある者>、そして<孤高なる者>について語られている辺りも面白かったし。「この物語は形を変え、数多くの世界で語り継がれている」って、確かにね。聖書だけでなく、いくつもの異世界ファンタジーにもなってるはずですもん。(笑) そしてこの本に書かれている情報が時と場合に応じて変化していくらしいのも、いかにも魔法使いの本らしくていい感じ。ニータはまず植物と話ができるようになるんですが、ナナカマドと会話する辺りも好きだったし。

物語そのものは、もうちょっと整理できたんじゃないかという気もしたんですが... ちょっと読みにくいところがあって、何度も前に戻って読み直したりしてしまったんですが、ニータも、仲間になるキットという少年も微笑ましいし、一緒に活躍するホワイトホール(?!)のフレッドも愛嬌たっぷり。
ニータの本は図書館の本だから返さなくちゃいけないんだけど、この冒険の後どうしたのかしら? この話はシリーズ物になってて、来年には続きが刊行されるようなので、またその辺りも書かれてるんでしょうね。絶賛ってほどじゃないんだけど、なかなか可愛らしかったので、もう少し付き合ってみるかなー。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「駆け出し魔法使いとはじまりの本」ダイアン・デュエイン
「駆け出し魔法使いと海の呪文」ダイアン・デュエイン

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Note


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