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去年の暮れに出た、クラフト・エヴィング商會の吉田篤弘さんの2冊。「78」は、78回転の古いSPレコードにまつわる物語。そして「十字路のあるところ」は、題名の通り十字路を感じさせる6つの街の物語に、坂本真典さんの写真を合わせたもの。
どちらも吉田篤弘さんらしい世界なんですが、私としては「78」の方が断然好み。こちらには13の短編が収められていて、語り手も、舞台となる場所や時代も様々な物語が立体的に交錯していきます。登場する人物や小道具が次の物語へと繋ぐ役割をしていて、まるで物語同士が響き合っているみたい。こういうのは大好き。ほんと吉田篤弘さんらしいですね。読み終わった後も、またつらつらと読み返して余韻に浸っていました。
33回転や45回転のレコードは知ってますが、蓄音機や78回転のレコードというのは、私にとっては本来未知の世界。でも先日、古道具が好きな親戚の家に行ったら、古い蓄音機を修理したところだと言って、78回転のレコードをかけてくれたところだったんですよ。そんな風にとてもタイムリーにこの作品を読めたのも嬉しかったです。それに、物語の中に「SPは、空気を聴くためのものだから」「演奏者が盤に刻んだ音を聴きながら、同時にそれを繰り返し聴いてきた人たちが刻んだ『傷』の方も聴いている」という言葉が登場するんですが、これは私も(78回転ではないにせよ)33回転のレコードに感じていたこと。なんだか妙に幸せな気分になりました。(小学館・朝日新聞社)


+既読の吉田篤弘作品の感想+
「百鼠」吉田篤弘
「78」「十字路のあるところ」吉田篤弘
「という、はなし」吉田篤弘
「空ばかり見ていた」吉田篤弘
「それからはスープのことばかり考えて暮らした」吉田篤弘
「小さな男*静かな声」吉田篤弘
Livreに「フィンガーボウルの話のつづき」「つむじ風食堂の夜」「針がとぶ」の感想があります)

+既読のクラフト・エヴィング商會の感想+
「アナ・トレントの鞄」クラフト・エヴィング商會
「犬」「猫」クラフト・エヴィング商會プレゼンツ
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「海神別荘」は、表題作のほかに「山吹」「多神教」が入っていて、どれも戯曲。泉鏡花の戯曲はやっぱり読みやすいですね。特に「海神別荘」が良かったです~。これは浦島太郎の女性バージョン(?)。海の中の公子(乙姫様の弟!)に幸せな暮らしを約束された美女が、どうしても今の幸せを父親に伝えたいと言うんですけど、そこには玉手箱こそないものの、ふかーいふかーい落とし穴が... 結構シビアな結末になってます。(笑) でもやっぱり描写が美しい...。これだけでも酔えそうです、ほんとに。
そして「春昼・春昼後刻」は、 眠気を誘うような、うららか~な春の昼下がりの情景にのほほんと読み進めていると... ぎょぎょぎょ。これは実はホラーだったんでしょうか。最後まで読んでからまた最初に戻ると、のどかな春の情景だと思っていたものがやけに濃密に感じられてきて、びっくりでした。
以前に「夜叉ヶ池・天守物語」「高野聖・眉かくしの霊」(感想)を読んだ時、overQさんに、「鏡花の文章は波長が合うと案外読みやすいです。でも。そのときに一気に読まないと、他の本を読んでから戻ってくると、読めなくなってたりします(;・∀・)」と言われたので、ちょっと戦々恐々としててたんですが、前回も入りやすかった戯曲から入ったせいか、今回は大丈夫でした。でももう手元には戯曲がない... しかも「草迷宮」と「外科室・海城発電 他5篇」を続けて読もうと思ったのに、そっちは自宅に忘れてきてることが判明。うわー、残念。また改めて読むことにします。で、でも大丈夫かしら...。「外科室」は以前読んだことがあるんですが...。(どきどき) (岩波文庫)


+既読の泉鏡花作品の感想+
「夜叉ヶ池・天守物語」「高野聖・眉かくしの霊」泉鏡花
「泉鏡花短篇集」川村二郎編
「海神別荘」「春昼・春昼後刻」泉鏡花
「鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇」東雅夫編

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60年代の大阪の下町を舞台にした短編集。表題作「はなまんま」は133回直木賞受賞作。
一読して、「ああ、朱川さんらしいなあ」というノスタルジックな雰囲気。それがまた大阪の下町の雰囲気に本当によく似合うんですよね。私自身が今大阪に住んでいるせいか、いつも以上に登場人物が身近に感じられました。特に大阪らしかったのが、「摩訶不思議」のツトムおっちゃん。人生をタコヤキに例えてしまうところとか、葬式での出来事のオチ、そして話全体のオチが、いかにも大阪人らしくって。(笑)
今回も不思議な存在が登場したり、不思議な出来事も起こるんですが、ホラーの雰囲気はなくて、ひたすらノスタルジック。でもこの作品も良かったんですけど、朱川さんの作品を全部読んだ今考えてみると、最初の「都市伝説セピア」が一番好きだったかなあという感じ。そういえば、これも直木賞の候補になってたんですよね。デビュー作が賞を受賞することは相当難しいと思うんですが、やっぱりあの時取っていたら良かったのにって思っちゃいます。という私自身は正直、直木賞にそれほど興味ないんですが...(^^ゞ (文藝春秋)


+既読の朱川湊人作品の感想+
「かたみ歌」朱川湊人
「さよならの空」朱川湊人
「花まんま」朱川湊人
Livreに「都市伝説セピア」「白い部屋で月の歌を」の感想があります)

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ある日突然、近くにいる人間に思った通りの言葉を口にさせられる「腹話術」の能力が自分にあると気づいた安藤。そしてその頃、政界でまさに台頭しようとしていた弱小の未来党党主、39歳の犬養。この安藤と犬養の物語を描いた「魔王」と、その5年後の「呼吸」。

今までの伊坂さんの作品とはまた違う雰囲気の作品で驚きましたが、面白かったです! あとがきに「ファシズムや憲法などが出てきますが、それらはテーマでありません。かと言って、小道具や飾りでもありません。」と書かれているのですが、全編ファシストやムッソリーニ、ヒットラー、憲法第9条の法改正案など、普通の小説で扱うには重いモチーフが満載。そして、それに対して伊坂さんなりの回答が示されているというわけではないんですが、主人公の安藤が何か起きた時に自分に向かって言い聞かせる「考えろ考えろ」という言葉、そして政治家・犬養の「私を信用するな。よく、考えろ。そして、選択しろ。」という言葉がポイントなんでしょうね。アメリカに言われる通りの行動を取り続ける日本人政治家、そんな政治家に対して苦々しく思ってはいても、結局のところ「無関心」から抜けきらない人々への警鐘。
安藤と犬養は、本当は対立するような関係ではないはずなのに、犬養のパワーが強すぎて、みんなが簡単に飲み込まれていってしまうのが問題なんですよね。1人1人がきちんと自分で考えればファシズムになんてならないはずなのに、結局流れとしてファシズムが出来上がってしまうのが、当然の成り行きとはいえすごい皮肉。犬養は、本当は安藤のような人間こそ欲しかったんじゃないかと思うんだけど... そして一旦流れが出来上がってしまったら、一個人でそれに逆うなんていうのはなかなか難しいわけで。
作品の薄ら寒くなるようなところに、シューベルトの「魔王」の歌詞が効いてますねー。(講談社)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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以前、「トリエステの坂道」を読んだ時に(感想)、OMBRE ET LUMIERE の37kwさんにお勧めということで教えて頂いたのが、この「ヴェネツィアの宿」。そして合わせて「コルシア書店の仲間たち」「ミラノ 霧の風景」「ユルスナールの靴」。すっかり遅くなってしまったんですけど、そのうちの2冊を読んでみました。

まず「ヴェネツィアの宿」は、日本にいた頃の生活や、須賀さんご自身の日本での家族での思い出を中心に、留学先のフランスやイタリアでのことを書き綴ったエッセイ。心に思い浮かぶまま自由に書きとめられたという感じで、時系列順に並んでいるわけではないのですが、全体としては大きなまとまりを感じさせる1冊。やっぱり須賀さんは、いいですねえ。良いことも悪いことも、真っ直ぐな視線で受け止めて、落ち着いた静かな文章で描き出していくという感じ。特に印象に残るのは、彼女の父親のこと。贅沢が好きで、仕事に身が入らず、家族を置いて1年間ヨーロッパとアメリカに行ってしまったという父親。後に家を出て愛人の元へと行ってしまった彼の姿は、最初は短気で身勝手なイメージばかりだったのですが、やはり父と娘の繋がりは濃かったのですね。最後の「オリエント・エクスプレス」の章でそのイメージが覆されるシーンが堪らなかったです。あと、時代はかなり違うんですが、私も須賀さんと同じ風景を見ていたことがあるので、その部分が特にものすごく懐かしかったし興味深かったです。

そして「コルシア書店の仲間たち」は、ローマに留学していた須賀さんが、コルシア・デイ・セルヴィ書店の一員として加わった頃のことを書いたエッセイ。コルシア・デイ・セルヴィ書店は、書店でありながらただの書店ではなく、左翼系のカトリックの活動の場なんですね。この書店に、階級も職業も人種も年齢も様々な人間が出入りしるんですが、この人々こそが、須賀さんがイタリアで得た初めての仲間。そしてこの書店こそが、イタリアで初めて得た自分自身の居場所。後に須賀さんが結婚するペッピーノ氏も、ここの一員です。このエッセイに登場する人々は、文章を読んでいるだけでも、それぞれに鮮やかに浮かび上がってくるんですが、その中でも一番印象が強かったのは創始者のダヴィデ・マリア・トゥロルド神父。爆撃で瓦礫の山となったミラノの都心を親友のカミッロと一緒にが颯爽と歩いている場面なんて、ほんと目の前に情景が浮かんでくるようでした。でも出会いもあれば別れもあり、須賀さんは最愛の夫を失い。書店の理念も徐々に形を変えて... コルシア・デイ・セルヴィ書店と共に、1つの時代終焉を見たような思いがして切なかったです。

次は「ミラノ 霧の風景」「ユルスナールの靴」を探してみよう。(文春文庫)


+既読の須賀敦子作品の感想+
「トリエステの坂道」須賀敦子
「本に読まれて」須賀敦子
「ヴェネツィアの宿」「コルシア書店の仲間たち」須賀敦子
「こうちゃん」須賀敦子・酒井駒子
「須賀敦子全集1」須賀敦子
「須賀敦子全集2」須賀敦子
「須賀敦子全集3」須賀敦子
「須賀敦子全集4」須賀敦子
「須賀敦子全集5」須賀敦子
「須賀敦子全集6」須賀敦子
「須賀敦子全集7」須賀敦子
「須賀敦子全集8」須賀敦子

+既読の須賀敦子翻訳作品の感想+
「インド夜想曲」アントニオ・タブッキ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「ある家族の会話」ナタリア・ギンズブルグ

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昨日に引き続きの泉鏡花。今度はSukuSukuPu-sanのmort_a_creditさんが、先日のたわいまわし企画「心やすらぐ本」で挙げてらした「二、三羽──十二、三羽」が入ってる本です。本当はこちらを先に読もうと思ってたんですけど、泉鏡花の本にしては少し厚いので(今時の本と比べたら全然ですが!)、先に薄い本から入ったという軟弱者の私です。(^^ゞ
まず読んだのは、その「二、三羽──十二、三羽」。これはエッセイ風の作品。ふと庭に遊びに来た雀が可愛らしいくて、奥さんと一緒になって飯粒をやったりするようになるんですが、その雀たちの様子がとてもいいんです。ことに、庭で雀が初めて見る花に驚いてご飯を食べに来るのを躊躇っちゃうところなんて、微笑ましくてほのぼの?。「心やすらぐ本」というお題にぴったり。でもそんな風に読み進めていると、ふと気がつけば鏡花版「雀のお宿」に招かれていてびっくり。やっぱり鏡花なんですね。

この本には9編が収められているのですが、私が一番好きだったのは「竜潭譚」と「薬草取」。これは2編とも神隠し譚で、満開の花の描写がすごいんです。「竜潭譚」は躑躅。「行(ゆ)く方(かた)も躑躅(つつじ)なり。来(こ)し方(かた)も躑躅(つつじ)なり」 あんまり咲いてるんで、土も赤く見えてくるほど。でもあんまり満開すぎると、逆にちょっと恐怖感もあるんですね。(満開の桜もそうですよね)
そして「薬草取」では、四季折々の花が一斉に咲き乱れています。躑躅に山吹、牡丹に芍薬、菊も桔梗も女郎花も朝顔も... 薬草を取りに行った山での話なので、全部野生のはず。どんな風に咲いてるのか見てみたい...。あ、でもこちらは怖くないです。やっぱり1種類ではないせいでしょうか。むしろ幻想的でした。
そして華麗な描写となると、「雛がたり」という作品。お雛様にまつわるエッセイといった感じの作品なんですけど、冒頭から過剰なほどの艶やかな色彩が乱舞しています。そして後半の、現実と幻想の一瞬の交錯... いやあ、すごいです。(お雛さまって、やっぱり人間がいない時はお互いにおしゃべりしてるんですかねえ? お雛様に限らず、人形ってそんなイメージがありますよね)

その他は紀行文など、比較的現実的な作品が多かったので、その分少し物足りなさもあったんですが、ふとした瞬間に見える幻想的な情景や、相変わらずの華麗な描写がやはり美しかったです。(岩波文庫)


+既読の泉鏡花作品の感想+
「夜叉ヶ池・天守物語」「高野聖・眉かくしの霊」泉鏡花
「泉鏡花短篇集」川村二郎編
「海神別荘」「春昼・春昼後刻」泉鏡花
「鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇」東雅夫編

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泉鏡花、学生時代に少し読んだ覚えがあるんですが、それきり全然。ここのところずっと読みたいなあと思っていたんですが、ようやく読めました。「夜叉ヶ池」「天守物語」「高野聖」「眉かくしの霊」の4編の中では、「高野聖」だけが既読。

きっと相当時間がかかるんだろうな... と覚悟してたんですけど、これが全然。もう夢中になって読んでしまいましたー。特に良かったのが「夜叉ヶ池」。そして「天守物語」も。この2編は戯曲です。実際、映画やお芝居にもなってますね。(玉三郎のが観てみたいー) 戯曲を読むなんて、本当に久しぶり。子供の頃は、マルシャークの「森は生きている」とか大好きだったんですが、大人になってからはどうも読みづらくなってしまって敬遠してたんです。それがこんなにさらさらと読めるとは、びっくり。もしかしたら、泉鏡花に関しては、戯曲の方が普通の小説よりも入りやすいのでしょうか? 頭の中で台詞を音読するように読んでいると、泉鏡花ならではの艶やかな世界がぱあっと広がってすごく素敵でした。
「夜叉ヶ池」も「天守物語」も、人間だった時は痛ましい亡くなり方をした女性たちが、物の怪になってから幸せを掴むというのがポイント。それに物の怪の方が、人間よりも約束を律儀に守っているんですよね。夜叉ヶ池の主も、本当は剣ヶ峰千蛇ヶ池にいる恋する若君のところに行きたいのに、そんなことしたら大水になってしまうし、人間との昔からの約束もあるから「ええ、怨めしい...」と我慢しているのに、人間の方が浅はかな考えから約束を簡単に破ろうとしてます。醜い俗世と物の怪の美しい世界の対比?(雨乞いをする人間たちが妙なものを池に投げ込んで困る... と、渋い顔をしてる物の怪の姿が可笑しいです♪)
「高野聖」は、山で何度も遭遇する大蛇や、森の中で上から降ってくる蛭の場面がものすごくリアルで気色悪っ。その後のなまめかしい美女の場面が、余計に妖しく感じられました。川で水浴びをしている時、「うとうとする様子で、疵の痛みがなくなって気が遠くなって、ひたと附ついている婦人の身体で、私は花びらの中へ包まれたような工合」だなんて、イメージとしては恋人よりも母親のようだったけど...(笑)

泉鏡花の本は岩波文庫版が何冊か手元にあるので、ぼちぼちと読んでいくつもりです。(岩波文庫)


+既読の泉鏡花作品の感想+
「夜叉ヶ池・天守物語」「高野聖・眉かくしの霊」泉鏡花
「泉鏡花短篇集」川村二郎編
「海神別荘」「春昼・春昼後刻」泉鏡花
「鏡花百物語集 文豪怪談傑作選・特別篇」東雅夫編

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