Catégories:“文学(翻訳)”

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あまりの出来の良さから盗作が相次いだという「あなたの年齢当てます」に始まり、「わたしを見かけませんでしたか?」「話し手の言い分」「聞き手の言い分」「ヒモをためてますか?」などなど全19編のエッセイが収められた本。夜中に台所で僕は本を読みたかったのkeiさんが、先日のたらいまわし企画「"笑"の文学」で挙げてらした本です。(記事

なるほど、こういうユーモアだったんですね~。全部読み終えてみると、やっぱり「あなたの年齢当てます」が一番面白かったです。冒頭はこんな感じ。

このごろの建物の会談は、むかしより勾配がきつくなったように思う。けこみが高くなったのか、段数が多いのか、なにかそんなことにちがいない。たぶん一階から二階までの距離が年々伸びているせいだろう。そういえば、階段を二段ずつ登るのもめっきりむずかしくなった。いまでは一段ずつ登るのがせいいっぱいだ。

もうひとつ気になるのは、近ごろの活字のこまかさである。両手で新聞をひろげると新聞がぐんぐん遠くへ離れていくので、目をすがめて読まねばならない。
つい先日、公衆電話の料金箱の上に書いてある番号を読もうと後ずさりしているうちに、気がついたら、ボックスから体が半分外へはみだしていた。この年でめがねなんて考えるだけでもばかばかしいが、とにかく新聞のニュースを知りたくても、だれかに読んで聞かせてもらうしかなくて、それではどうも物たりない。最近の傾向なのか、みんながひどく小声でしゃべるので、よく聞き取れないのだ。

こんな調子でどんどん進みます。この「あなたの年齢を当てます」にだけ、味のある挿絵が入ってるのが、またいいんですよねえ。淡々とした語り口の中には、実に皮肉っぽいユーモアがたっぷり。やっぱりこの「淡々とした」というところがポイントでしょう。(笑)
他の章も悪くないんですけど、やっぱり「あなたの年齢当てます」がずば抜けてるかな。この場合、読み手である私が男性じゃないというのも関係ありそうですけどね。世の中の奥さん連中を題材に取っている、「全く女ってやつは」という文章が多いので。男性、それも既婚の中年男性が一番楽しめそうな気がします。(ハヤカワepi文庫)

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伝説のチャンス姉妹、ドーラとノーラは、認知こそされていないものの、著名なシェイクスピア俳優サー・メルキオール・ハザードの娘。ハザード家は演劇一家であり、彼らとは離れて育ったドーラとノーラもまた、10代そこそこから舞台に立ち、ショービジネスの世界で生きてきていました。そして今日はドーラとノーラの75歳の誕生日。父親のメルキオールも同じ日が誕生日で、こちらは100歳の誕生日。当日になってドーラとノーラにパーティへの招待状が届きます。

わー、面白かったです! 物語は、ドーラが自叙伝を書くために誰かに話を聞かせているという形式。とにかく終始テンションが高くて猥雑な雰囲気だし、「この男のことはお忘れなく」「○○については適当なところで説明するつもり」「もうすぐわかります」とか言って、ドーラの気分次第で話がどんどん飛ぶし、双子が5組(!)も登場するせいで、ただでさえ多い登場人物はさらにややこしくなってるし、その上演劇一家らしくそれぞれの愛憎関係が複雑かつ華やかなので、読み始めは、もう大変。
でも一旦ペースを掴んでしまいさえすれば大丈夫。ショービジネスの世界らしい華やかさが満載で、楽しかったです。かなり長い作品なのに、一気に読んでしまいました。フレッド・アステアやジンジャー・ロジャースといった実在したスターたちが話の中に登場するのも楽しいし、ドーラの語りにシェイクスピアからたっぷりと引用されてるのも、雰囲気満点。当時のファッションについても、ばっちり分かります。そしてロンドンの演劇界の中心であるハザード一家の歴史を紐解けば、それはそのままロンドン演劇界の歴史なんですねえ。この人たち、誰かモデルがいるのかしら? 到底架空の人物とは思えない存在感なんですけど!
浮き沈みの激しいショービジネスの中で、決して良いことばかりだったとは言えないはずのドーラとノーラなんですが、終始パワフルに人生を生きていて、苦労も苦労と思わずに笑い飛ばす力強さがいいんですよねえ。もちろん75歳になる今もお洒落心は忘れず、「今でも年のわりにはちょいと悪くない脚だと思うわ」と脚を引き立てる服装を選ぶところも可愛いところ。でも、ドーラとノーラが望んでいることは、本当はただ1つ、実のお父さんであるメルキオールに娘だと認めてもらって、お互いに抱きしめあうことだけなんですよね。お父さんの前に出ると、いつもの毒舌ぶりから一転して、10代始めの少女に戻ったようになってしまう2人も可愛いかったな。最後の最後まで、いや、ちょっととんでもないんですけど... お見事でした。(ハヤカワepi文庫)


+既読のアンジェラ・カーター作品の感想+
「ワイズ・チルドレン」アンジェラ・カーター
「魔法の玩具店」アンジェラ・カーター
「夜ごとのサーカス」アンジェラ・カーター
「血染めの部屋 大人のための幻想童話」アンジェラ・カーター

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1905年。26歳のアインシュタインは、特許庁に勤めながら、博士論文の他に光量子に関する論文やブラウン運動に関する論文など、次々に論文を発表していました。まさに相対性理論を確立しようとしていたアインシュタインが、夜毎にみた不思議な夢の物語。

プロローグとエピローグ、そしてインタールードという章でアインシュタインと友人のベッソーのやり取りが描かれている他は、アインシュタインのみた夢が次々に物語となって展開していきます。それは30編の、様々な時間に関する夢。時間に始めも終わりもない円環の世界、突然時間の流れが変わってしまう世界、時間が空間と同じく3つの次元を持っている世界、機械時間と肉体時間を持つ世界、時間の流れが地球の中心から遠く隔たるほど遅くなる世界、時間が規則正しく着実に流れていく世界、原因と結果が不安定な世界、平穏無事な1日、1ヶ月、1年がひたすら通り過ぎていく世界...。時間の持つ様々なバリエーションの描かれ方は、まるでヨーロッパ映画の一場面のよう。ベルンを舞台にした様々な物語は、1905年という時代を感じさせて、とても優雅で情景的です。そこに展開される様々な人間模様が、短いながらもなかなか良かったんですが... 問題は、私が相対性理論を全然知らないこと! 様々な世界の情景が興味深くはあるものの、結局それらを淡々と目で追うだけになってしまいました。実際の理論と照らし合わせて読めれば、もっと面白かったんでしょうにねえ...。この作品には、ちょっと予習が必要かも。
作者のアラン・ライトマンは、現役の物理学者なんだそうです。訳者あとがきに「現代物理学の仮説を踏まえた時間の性質も巧みにイメージ化されている」とあるので、詳しい人なら楽しめると思うんですが... 私にはその辺りはさっぱり... ふはー。(ハヤカワepi文庫)

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1949年。祖父が亡くなり、牧場が人手に渡ってしまうことを知った16歳のジョン・グレイディ・コールは、親友のロリンズと共に牧場のある町を出ることに。2人は馬でメキシコへと向かいます。途中で彼らが出会ったのは、一見してすごい馬だと分かるような馬を連れたジミー・ブレヴィンズ。ジョン・グレイディはジミーを突き放すこともできず、3人は一緒にメキシコを目指すことに。

しばらく国内作家さんの作品が続いてたんですけど、図書館の予約が回ってきた本も一段落。またepi文庫を仕入れて来たので、海外作家さんの作品に戻ります。
ということで、これは全米図書賞、全米書評協会賞などを受賞し、愛好者の熱狂的な支持を受けた作品とのことなんですが...
うーん、ものすごく読みにくかったです。英語の文体が特殊だそうで、それをそのまま日本語で表すためにと、ろくすっぽ句読点のない長い文章が延々と続くんです。句読点がなくても舞城王太郎作品みたいなパワーがあれば面白い味が出るんでしょうけど、これは読みにくかったですー。会話文には「」がないし、メキシコ人との会話にスペイン語が沢山登場して気が散っちゃう。(ついつい単語の意味を頭の中で確認したり、発音したくなっちゃうので) その上、読んでいても、なかなか状況が見えてこないんです。特に冒頭はもうほんとワケが分かんなくて、読み始めてすぐに、こっくりこっくりしてしまいました...(^^;。
この作品が発表されたのは1992年。確かに、たかだか15年ほど前の作品とは信じられないほど、「カウボーイ」がまだ生き残っていた当時の雰囲気を伝えてくれる骨太な作品だし、ハイウェイを車が疾走する横を2人の青年が馬で旅をする図も面白いんですけど... 読んでいても一向に絵が浮かんでこなかったです。うーん、残念。(ハヤカワepi文庫)

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1926年。当時トゥールーズ=ダカール間の連絡に当たっていたラテコエール社に、定期航空の操縦士として入社したサン=テグジュペリ。使用機の慣熟飛行や短距離往復をこなし、気象学の講義を受けているうちに、とうとう初飛行の日がやって来て...。

たらいまわし企画・第21回「教えてください!あなたのフランス本」で、フランス語で読みたいと書いた本なんですが(記事)、結局日本語で読んでしまいました。(^^ゞ
でも、これはまず日本語で読んで正解だったかも。これをフランス語で読んでも、きっと理解し切れなかったです、私。堀口大學氏の訳も、最初はちょっととっつきにくかったんですけど、読んでるうちにすっかり引きこまれてしまいました。
いや、これはすごいです! 一字一句食い入るように読んでしまいましたもん。一度読み終えてから、またもう一度読んだのですが、一度目よりも二度目の方が良かったし、時間が経つにつれて、またじわじわと来てます。

サン=テグジュペリが飛行機に乗ってたのは、20世紀初頭。この時代の時代の飛行機は、今のとは全然違いますよね。今のように、離陸と着陸さえきちんとできれば、あとは計器任せの飛行ができるような時代じゃなくて、燃料もそれほど積めないし、発動機がいつ止まってしまうかも分からないような飛行機。毎日の任務が、命を失う危険と背中合わせ。そんな日々の出来事を描いていくエッセイ的文章なんですが... 「エッセイ」という言葉の持つどこか軽い雰囲気は、この作品には似合わないですね。どの部分を取ってもずっしりとしたものが伝わってくるようです。
僚友・ギヨメやサン=テグジュペリ自身の遭難など、強く印象に残るエピソードが色々とあるんですが、この本の一番の魅力は、そういったエピソードじゃないんでしょうね。サン=テグジュペリや周囲の人々を巡る様々な出来事、そしてサン=テグジュペリ自身が死の一歩手前までいった体験によって得ていくものこそが一番の魅力なんでしょう。それらの体験を通して育まれた感性とでも言うべきものは、まさに大地が教えてくれたこと。これらの体験がなかったら、サン=テグジュペリはあのサン=テグジュペリではなかったんですね。
overQさんが「美しすぎる本」だと仰ってましたが、本当にそうですね。教えて頂いたDVDもぜひ観てみたいです。(新潮文庫)

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以前エドモン・ロスタンの「シラノ・ド・ベルジュラック」を読んだんですけど(感想)、このシラノ・ド・ベルジュラックという人は、ロスタンの創作ではなく、17世紀に実在した人物。本物のシラノは戯曲のシラノとは多少人格が違うみたいなんですが、その多才ぶりは確かだったようです。そして本物のシラノの代表作が、この「日月両世界旅行記」。
これはSF小説(「空想科学小説」と言った方が相応しいかも)のはしりと言えそうな作品で、月と太陽の世界へ旅する奇想天外な旅行記となっています。丁度「ガリヴァー旅行記」みたいな感じですね。「ガリヴァー旅行記」は随分前に読んだきりなので、あんまりちゃんと覚えてないんですが、どことなく精神疾患的なイメージのスウィフトとは違って、同じように風刺小説になっていても、こちらはもっとおおらかで朗らかな感じがします。キリスト教に関して、結構痛烈なことを書いてるので、後が大変だったんじゃないかと思うんですが...。何て言っても、月の世界にはエデンの園があるんですもん!(笑) アダムとイヴが追放された今は、エノクやら預言者エリヤやらが住んでいる様子。あと月の世界には4つ足で歩く人獣の国があり、太陽の国には鳥の国や哲学者の国があります。
でも、ユーモアたっぷり風刺たっぷりで、面白いことは面白いんですけど、たとえばこの作品が書かれた頃の天動説派と地動説派のバランスとか、当時の思想や最先端の科学についてもう少し知ってれば、もっと楽しめたんだろうなあって思うんですよね。思わず流し読みしてしまう部分もあって、なんだか勿体ないことしちゃいました。あ、でもロスタンの描くシラノ・ド・ベルジュラックも良かったんですが、本物の方が破天荒ぶりが優っているようで、見てる分には楽しそうな人物です。(岩波文庫)

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フランスのシャルルマーニュ王率いるキリスト教徒軍と異教徒軍の戦争中、シャルルマーニュの麾下に隅から隅まで白銀に輝く甲冑をまとった1人の騎士がいました。その騎士の名は、アジルールフォ。しかしその輝く甲冑の中には誰もいなかったのです。

シャルルマーニュは、8~9世紀に実在したフランスの王。カール大帝という名前の方が有名ですね。十字軍を率いて遠征し、イスラム教徒であるサラセン人たちと戦い、「ロランの歌」にも歌われています。
人間としての肉体も骨格も持たず、まるで甲冑が意志を持ったかのようなアジルールフォと、その従者となるグルドゥルーが対照的。肉体を持たないアジルールフォは、自分の意志を強く持っていないと存在できないのですが、グルドゥルーは自分が人間であることすら確信していません。人間としての肉体をきちんと持っているのに、自己の意志が不在で、自分を家鴨や蛙だと思い込んだり、スープを飲んでいるのは自分なのに、自分がスープに飲まれていると思い込んでしまうような男。ちょっとドン・キホーテとサンチョ・パンサみたいな2人です。そしてそんな2人に関わることになるのが、父の復讐に燃えるランバルドという青年。彼は軍隊にやって来た途端、常々思い描いていた騎士像と、立派な甲冑の下に隠された現実とのギャップを思い知らされることになるんですよね。そんな彼が思い描いていた通りの、完璧な武芸と高潔な精神を持つのは、肉体的には存在しないアジルールフォだけ。
物語自体も面白いのだけど、ラストの畳み方がお見事でした! そしてこれは、「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」に続く、カルヴィーノの寓話的歴史小説3部作の最終作なのだそう。そちらの2冊もいずれ読んでみたいです。(河出文庫)


+既読のイタロ・カルヴィーノ作品の感想+
「宿命の交わる城」イタロ・カルヴィーノ
「不在の騎士」イタロ・カルヴィーノ
「レ・コスミコミケ」イタロ・カルヴィーノ
「なぜ古典を読むのか」イタロ・カルヴィーノ
「まっぷたつの子爵」「木のぼり男爵」イタロ・カルヴィーノ
「イタリア民話集」上下 カルヴィーノ
「魔法の庭」イタロ・カルヴィーノ
「見えない都市」イタロ・カルヴィーノ
「マルコヴァルドさんの四季」カルヴィーノ
「冬の夜ひとりの旅人が」イタロ・カルヴィーノ
「柔かい月」イタロ・カルヴィーノ
「カルヴィーノの文学講義」イタロ・カルヴィーノ
「パロマー」カルヴィーノ
「くもの巣の小道」イタロ・カルヴィーノ
「むずかしい愛」カルヴィーノ

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