Catégories:“神話・伝承”

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「うちの娘は藁から金糸を紡ぐことができます」と言ったことが王様の耳に入ったことから、窮地に陥った貧しい粉屋の娘は、城の一室に藁の山とともに閉じ込められ、3度謎の小人に助けてもらうことに... というのはグリム童話のルンペルシュティルツキンの物語。しかし、そもそも金糸を紡ぐことができるのなら、粉屋は貧しいはずがないのです。そんなヴィヴィアン・ヴァンデ・ヴェルデの疑問から生まれた6つの「ルンペルシュティルツキン物語」のバリエーション。

なぜこの物語を書こうと思ったか、というまえがきからして面白いです。昔話というのは矛盾があるもので不条理なもの、と子供の頃から悟ってたし、そういうものとして読んでたんですが、改めてその矛盾点を突かれるととっても新鮮。なぜ王様と貧乏な粉屋が話をすることになったのか、金が紡ぎだせるというのに粉屋が貧乏なままなのを王様は疑問に思わなかったのか、金を紡ぐことなど出来もしないのになぜ粉屋は娘を城に送り出してしまうのか、小人は自分で金糸を紡ぎだせるのになぜ報酬として金の指輪とネックレスを受け取るのか、なぜ小人は子どもを欲しがるのか、なぜ名前当てゲームという小人が一方的に不利な取引をすることになるのか、などなど。
「ルンペルシュティルツキン」と同じパターンの「トム・ティット・トット」をファージョンが語りなおした「銀のシギ」は子供の頃に本を持ってましたが(祖母の家に置いてるので、今もありますが)、こんな風に一度に6つも読めちゃうというのがすごいです。基本ラインが同じである程度の枠があるからこそ、そのバリエーションに作者のセンスが出るし、違いが際立ちますね。6つの物語に登場するのは、賢い娘だったり馬鹿な娘だったり、人の言うことを聞こうとしない娘だったり、強引な娘だったり。それに合わせて王様や粉屋、そしてルンペルシュティルツキンの造形もがらっと変わります。そのバランスが絶妙なんですね。それぞれに可愛らしくて良かったんですが~、この6作品の中では私はロマンティックな「藁を金に」が一番好きだなあ。ルンペルシュティルツキンも一番素敵ですしね。でも「金にも値する」の王様の鮮やかな処理も皮肉たっぷりでなかなかカッコいいです。こういう王様って素敵。ふふふ。(創元ブックランド)

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JJ・リディも結婚し、今は4人の子供の父親。でもリディ家では11歳の次女のジェニーが天災のような存在。少し目を離しただけで家や学校から抜け出して、薄着で野山を歩き回って過ごしてばかり。人に言われた通りの行動をすることができないジェニーに、家族全員が振り回されていました。特に不満を持っていたのは、JJの妻のアイスリング。JJと家事を半分ずつ分担して、いずれは療法士の仕事に戻るつもりだったのに、ジェニーがそんな状態で、しかもJJが国内外でのコンサートに忙しくて家にあまりいられない状態なので、予定もきちんと立てられないのです。アンガス・オーグがきちんと木を届けてくれれば、JJも家でフィドル作りに専念できるはずなのですが...。

先日読んだ「時間のない国で」の続編。今回も面白かったー。というか、今回の方がパワーアップで面白かったかも! JJがいきなり4人の子供の父親になっているのには驚いたんですけどね。しかも家の中のゴタゴタの話かと思いきや、そこに見張り塚にいる幽霊と羊の姿のプーカが絡んで、気がついたら話が結構大きくなってるし...。何のために幽霊が見張り塚にいるのかとか、なんでプーカがジェニーに幽霊と友達になるように仕向けてるのかとか、それでいてなぜ自分のことを幽霊からは隠そうとしてるのかとか、なんで隣人の老人・ミッキーが急に見張り塚の上に登りたいと言い出したのかとか、謎がいっぱい。
前回ちらっとしか登場しなかったプーカが今回は前面に登場。話の半ばで「うわーっ、そういうことだったのか!」と第一弾の爆弾(私にとっては)があって、その後もどんどん面白くなります。ああ、ティル・ナ・ノグに行ってみたいな。でもそんなことになったら、ほんと帰って来られないかも~。(創元ブックランド)


+シリーズ既刊の感想+
「時間のない国で」上下 ケイト・トンプソン
「プーカと最後の大王(ハイキング)」ケイト・トンプソン

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ギリシア神話の巨人族ティタンのアトラスは、ポセイドンと大地の息子。かつてアトランティス大陸の住人たちはアトラスに忠誠を誓っていたのですが、ゼウスとの戦いでティタン族は破れ、アトランティス大陸は沈み、アトラスはその巨躯で天地を背負うという罰を受けることに。そして時が流れ、そこにヘスペリデスの園に金の林檎を取りにやって来たヘラクレスが現れます。ヘラクレスはエウリュステウス王のために様々な仕事をさせられており、これが11番目の仕事。アトラスはヘラクレスにしばらくの間その重荷を任せて、ヘスペリデスの園に林檎を取りに行くことに。

マーガレット・アトウッドの「ペネロピアド」同様、英国のキャノンゲイト社が主催する「世界の神話」シリーズの第一回配本作品。この物語の主人公は、ギリシャ神話に登場する巨人・アトラス。天地を背負う巨人。そしてこのギリシャ神話のエピソードにジャネット・ウィンターソン自身の物語が絡められています。
ギリシャ神話で見るアトラスは、その重荷を重荷であるとしか捉えてないはずなんですが、こちらの作品ではアトラスがその重荷を憎みながらも愛しているようなところが特徴。一時はヘラクレスがその重荷を代わって背負い、そのままアトラスが逃げてしまうこともできそうになって... でも結局アトラスはヘラクレスに騙されてまた重荷を背負わなくちゃいけなくなるんですが、ここでアトラスは騙されて怒るのではなくて、「やさしく穏やかに、ほとんど慈愛をこめた行為として背負う」のです。本当に辛いのであれば、世界がどうなろうとも構わず下ろしてしまえば済むこと。
そしてこの重荷の話は、いつの間にかジャネット・ウィンターソン自身の重荷とシンクロしていきます。彼女の重荷は、やはり宗教的に厳格な里親の家庭に育ちながらも同性愛に目覚めてしまったことなのでしょうね。重荷を下ろしてしまえば、世界は崩壊してしまうかもしれない。それでも彼女は自分の重荷を下ろします。その時どうなったか。結局のところ、本当に世界が崩壊することなんて、なかなかないってことですね。ほんの少しの勇気を出せばいいだけのこと。そんなメッセージが伝わってくるようです。
マーガレット・アトウッドとの違いは、この長さでも語りたいことはしっかり語りつくしてるってことかな。ヘラとヘラクレスの会話も面白かったし、アトラスとライカの邂逅も素敵でした。(角川書店)


+既読のジャネット・ウィンターソン作品の感想+
「さくらんぼの性は」ジャネット・ウィンターソン
「オレンジだけが果物じゃない」ジャネット・ウィンターソン
「永遠を背負う男」ジャネット・ウィンターソン

+既読の新・世界の神話シリーズ作品の感想+
「ペネロピアド」マーガレット・アトウッド
「永遠を背負う男」ジャネット・ウィンターソン
「恐怖の兜」ヴィクトル・ペレーヴィン

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フィンランドの国民的叙事詩・カレワラ。これは「イーリアス」と「ラーマーヤナ」と並ぶ世界三大叙事詩の1つでもあります。でも紀元前8世紀半ば頃にホメロスが作ったとされる「イーリアス」や、紀元3世紀頃にヴァールミーキが書いた(編纂した?)「ラーマーヤナ」とは違って、今読める「カレワラ」は、19世紀にリョンロットという人が様々な伝承歌謡を採取して、1つの物語となるように並べたもの。だからストーリー的には、「イーリアス」や「ラーマーヤナ」にやや劣るという欠点もあるんですね。私は好きなんですけど、なんでこれが世界三大叙事詩とされてるのかは、ちょっと疑問...。同じヨーロッパ圏から選ぶなら、例えば「古エッダ」「ニーベルンゲンの歌」辺りの方が妥当な気もするんだけど。
フィンランド人にとって「カレワラ」とは、カンテレという楽器の伴奏に合わせて吟唱するものなので、散文では書かれることはなかったそうなんですが、20世紀になって元ヘルシンキ大学教授のマルッティ・ハーヴィオ博士が「カレワラ物語」としてのカレワラを出版することになります。その訳がこの本。「タリナ」とは物語という意味なんだそうです。私は以前にきちんと叙事詩として訳されてる岩波文庫版の「カレワラ」を読んでるので、本当は散文訳は読まなくても良かったんですけど、でも北欧文化通信社の活動を応援する意味でも読んでみることに~。
ということで、カレワラを読むのはこれが3度目。(絵本を入れれば4度目・笑)
岩波文庫版に比べると、どうしてもかなり簡易版になっちゃってるし、私が大好きな「事物の起源」を唱えることによって魔法をかけるという部分もすごくあっさりしちゃってて残念なんですけど、それだけに頭の整理や復習にはぴったり。まとまりが良くて、とても読みやすかったです。これはカレワラ入門に最適かも。そしてカレワラ入門といえば、岩波少年文庫でも最近「カレワラ物語」というのが出てるんですよね。もしや「カレワラ」人気の兆候が?! そちらは岩波文庫と同じ小泉保さんの訳。これを読むまでは、「カレワラ物語」の方はいいやって思ってたんですけど、そちらもやっぱり読んでみたくなってきちゃいました。どう違うんだろう。同じような感じなのかしら。
あと、カレワラを題材にシベリウスが多数作曲していて、そちらもなかなか素敵です。(北欧文化通信社)

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JJ・リディは、両親と妹との4人暮らし。父は詩人で母は音楽家。母の家は代々音楽家の家系で、毎週のようにケイリーと呼ばれるアイルランド伝統のダンスパーティが開かれているのです。JJ自身もフィドルやフルートの演奏者として、ハーリングの選手として、アイリッシュ・ダンスの踊り手として、数々の賞を手に入れてきていました。しかし最近どうにも時間がないのです。父が母と出会い、母の実家の農家に移り住んだ時に夢見ていたのは牧歌的な生活。しかし今では日々農作業に追われ、詩作などまったくする余裕がない状態。そしてリディ家だけでなく、この一帯に住む大人も子供も同じ問題に悩まされていました。

毎日のように時間にに追われて「時間が足りないー」「もっと時間が欲しいー」と言っている現代人は多いはず。という私もやりたいことが多すぎて、1日24時間じゃあ到底足りない状態。でも「時間が足りない」というのは、単なる比喩的な表現での話。1日はちゃんと24時間あると納得した上で、そんなことを言ってます。ま、言ってしまえば、自分の能力を超えて欲張りすぎなんですよね、私の場合は。まさか本当に時間がなくなっているとは考えたこともありません。でもこの作品の中では、本当に時間がなくなってしまうんです。となると、ミヒャエル・エンデの「モモ」を思い出すんですが、そういうのとはまたちょっと違っていて...。いや、結果としてはかなり似た状況とも言えるんですけど、誰も他人の時間の花を奪おうとしているわけではありませんし。(笑)
アイルランドのファンタジーはチェックしてるつもりでいたんですけど、これはすっかり抜け落ちてました。まさかこんなところにあったとは! この続編の題名が「プーカと最後の大王(ハイキング)」で、それを見るまで全然気づいてなかったんです。まさか「ティル・ナ・ノグ」まで出て来ようととはーっ。時間不足に嘆く普通の世界と時間の存在していないティル・ナ・ノグの関係も面白かったし、それぞれの住人たちがまたいいんですよねえ。そして最初から最後までずっとアイルランドの伝統音楽がずっと流れ続けてるという意味では、以前読んだチャールズ・デ・リント「リトル・カントリー」(感想)みたいな雰囲気。もうほんとリバーダンスが目の前に浮かんできます。色んな曲の楽譜が入ってるので、詳しい人はもっと楽しめそう。そしてスーザン・プライスの「500年のトンネル」(感想)もなんとなく思い出しながら読んでたんですけど、それはこの表紙のせいかな? 前半こそちょっと引っかかる部分もあったんですけど、後半はそんなことなかったし、終わってみれば結構面白かった! 伏線の効いた解決も気持ち良かったので、ぜひ続きも読んでみようと思います~。(創元ブックランド)


+シリーズ既刊の感想+
「時間のない国で」上下 ケイト・トンプソン
「プーカと最後の大王(ハイキング)」ケイト・トンプソン

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トロイア戦争に10年、そしてエーゲ海を彷徨うこと10年。20年の留守の後にオデュッセウスが見出したのは、オデュッセウスだけをひたすら待っていたペネロペイア。従妹であるトロイアのヘレネほど美しくはないものの、ペネロペイアは頭が良く貞節な妻、とホメロスの「オデュッセイア」では伝えられていますが... ペネロペイアと、オデュッセウスの帰還の後吊るし首にされた12人の女中たちが冥界で語る、また別の「オデュッセイア」の物語。

以前読んだ「侍女の物語」がとても面白かったマーガレット・アトウッド。あれは旧約聖書のエピソードを元にしてたんですけど、こちらはギリシャ神話。ホメロスの「オデュッセイア」(感想)です。先日読んだベルンハルト・シュリンク「帰郷者」(感想)に続いての「オデュッセイア」ネタ。ギリシャ・ローマ時代の目ぼしい作品はほとんど読んでしまっているので、こういうところでも読めるなんて嬉しいです~。これは英国のキャノンゲイト社が主催する「新・世界の神話」企画の一環なのだそう。世界の超一流の作家たちによる神話が毎年数作ずつ刊行されて、2038年には100冊目が配本される予定なのだとか。これまた楽しそうな企画ですよね。

で、この作品、ペネロペイアが中心となって語り、その合間に処刑された12人の女中たちがギリシャ悲劇のコロス風に歌い、終盤では現代的な裁判が行われたりと工夫はあるんですが...
うーん、ちょっと描きこみ不足ですかね。どうも圧倒的に枚数が少なすぎた気がします。なんでこんなに軽く流してしまうんだろう? もしかしたら枚数制限でもあったのかな? オデュッセウスの遍歴の中の一つ目の巨人キュクロプスとの戦いが、実は酒場の片目のあるじとの勘定の不払いをめぐる争いだったとか、女神カリュプソとの愛の日々は、実は高級娼館で寄居虫になってただけだったとか、そういうのはいいんですけど... そういうのを出すんであれば、ペネロペイア側もそれに応じてもっと変化させて欲しかったし、それでも敢えて「気高い方のバージョン」を信じるというんだったら、それ相応の作りにして欲しかった気がしますねえ。なんだか中途半端。マーガレット・アトウッドなら本当はもっと全体的に作りこむことができたはずなのに! それだけの力がある人だと思うのに! 目新しさがなくてとっても残念。そもそもこの題名自体、意味が分かりませんよね... このシリーズの他の作品も読んでみようと思ってるのだけど、他のもこんな感じだったら悲しいなー。(角川書店)


+既読のマーガレット・アトウッド作品の感想+
「侍女の物語」マーガレット・アトウッド
「ペネロピアド」マーガレット・アトウッド

+既読の新・世界の神話シリーズ作品の感想+
「ペネロピアド」マーガレット・アトウッド
「永遠を背負う男」ジャネット・ウィンターソン
「恐怖の兜」ヴィクトル・ペレーヴィン

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東京創元社で刊行中のラング童話集の7冊目。巻によってフランス系のお話が多かったり、北欧系が多かったり、南欧系が多かったりと少しずつ色合いが違うんですが、今回はエストニアやセルビア、リトアニア、ルーマニアといった東欧の話が多くて楽しかったです。民話としてはフランスやドイツ辺りの話が一般的な認知度が一番高いと思うんですけど、どこの話が好きかと言われれば、私は北欧が一番好き。そして東欧も好き。どこがどう違うのかは、読んでいても今ひとつ分かってないんですけどね。全部のお話を混ぜて、好きなのを適当にピックアップしていったら、多分北欧や東欧のお話が集まるはず。
そして今回「おおっ」と思ったのは、スワヒリの話が登場していたこと。「あるガゼルの物語」「人食いヌンダ」「ハッセブの話」の3つがスワヒリの話。でも「あるガゼルの物語」は「長靴をはいた猫」みたいな感じだし、小道具的には確かにアフリカなんだけど、どれも普通にヨーロッパの民話と同じように読めてしまいそうな話。それほどアフリカの特徴が出てるというわけではないです。むしろ王様を「スルタン」と呼んでるので、トルコかペルシャかってイメージになってしまうんですが... これは元々の話が英語で書かれた時点でそうなってしまったということなんでしょうね。...あ、でも今スワヒリって具体的にどこなんだろうと思って調べたら、「スワヒリ」という言葉は、アラビア語で「海岸に住む人」という意味なんだそうです。ということは、アラビア語の「スルタン」という言葉を使うのは、当たらずとも遠からず? スワヒリ語はケニア・タンザニア・ウガンダといった東アフリカの国で公用語となってるようですが、スワヒリという国はないんですね。知らなかった。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+(東京創元社版)
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編
「きいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ももいろの童話集」アンドルー・ラング編
「はいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「むらさきいろの童話集」アンドルー・ラング編
「べにいろの童話集」アンドルー・ラング編
「ちゃいろの童話集」アンドルー・ラング編
「だいだいいろの童話集」アンドルー・ラング編
「くさいろの童話集」アンドルー・ラング編

+シリーズ既刊の感想+(偕成社文庫版)
「みどりいろの童話集」「ばらいろの童話集」アンドルー・ラング

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