Catégories:“戯曲・詩”

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先日岩波文庫の「四つのギリシャ神話-『ホメーロス讃歌』より」というのを読んだんですが(感想)、これはその完訳版。デーメーテール、アポローン、ヘルメース、アフロディーテーはもちろんのこと、ディオニューソス、アレース、アルテミス、ヘーラー、ヘーラクレースなど22の神々への讃歌全33編です。...この本、ホメーロスの著作物のようにも見えるんですが、「イーリアス」「オデュッセイア」のホメーロスその人が書いたのではありません。「ホメーロス風」というだけ。作者も作られた年代もバラバラで、詳しいことは分かっていないようです。

でも、岩波文庫にも収められていた4編以外は、どれも短いんですね。一番短いもので、たったの3行、長くても数ページ程度。そのほとんどはただの描写だったり、祈願的なものだったりで、神話的なエピソードを描いたものではないんです。長大な4編との落差にはびっくり。これを読むと、岩波文庫がその4編しか出さなかったのも分かりますー。...とは言っても、面白くなかったわけではないです。色んな神々の詩を読むのはやっぱり楽しいし、しかもこの本の注釈はとても詳細。アポロドーロスの「ギリシア神話」やヘシオドスの「神統記」、オウィディウスの「変身物語」、ギリシャ悲劇はもちろんのこと、ギルガメシュ叙事詩などの東洋の神話系伝承にまで言及・引用されてるのがすごいのです。各讃歌ごとについている解題も勉強になります。

今回一番楽しく読めたのは、「パーン讃歌」。デュオニュッソスの従者とされながらも、ギリシャ神話ではほとんど名前を見かけることのないパーン神が、ヘルメースの子供だったとは迂闊にも知らなかったので、とても面白かったです。詩全体の雰囲気も陽気で楽しくて、目の前に情景が広がるようでした。(ちくま学芸文庫)


+既読のホメロス名義作品の感想+
「イリアス」上下 ホメロス
「四つのギリシャ神話 『ホメーロス讃歌』より」
「オデュッセイア」上下 ホメロス
「ホメーロスの諸神讃歌」ホメーロス

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アヨーディヤーに住むダシャラタ王の第一王子・ラーマは、16歳になると賢者ヴィシュヴァーミトラの元で修行し、その後ミシラーのジャナカ王の娘・シータと結婚。しかしラーマが王位を継ぐことになった時、それに嫉妬した次男・バラタの母・カイケーイー妃とその召使女・マンタラーの陰謀で、14年もの間王国を追放されることになってしまいます。国を離れるラーマに従うのは、妻のシータと弟のラクシュマナ。しかしそんなある日、シータが羅刹ラーヴァナに攫われてしまい...。

1980年に出た本だというのに、アマゾンにもBK1にもデータがみつからない! 先日レグルス文庫版を読んだ時に、あまりの抄訳ぶりにがっくりきてたら、picoさんがこんな本もあるよと教えて下さった本。河出世界文学大系という全集の中の1冊です。図書館にあったので、早速読んでみました。
でも同じ「ラーマーヤナ」でも、レグルス文庫版とはちょっと違っていてびっくり。レグルス文庫はただの抄訳版かと思っていたんですけど、確かに全体的にはこちらの方が断然詳しいんですけど、そうではなかったのかしら? まず作者のヴァールミーキについても、こちらの本では最初から詩歌にすぐれた聖仙人とされてるんですけど、レグルス文庫版では、最初は盗賊だったヴァールミーキが心を入れ替えて修行し、霊感を得て詩を作るようになるまでのくだりがあるんですよね。物語の終盤も、結果的に起きたことは同じでも、なんだかニュアンスがどうも違うような... 不思議だ。あ、でも、やっぱりこっちの方が断然詳しいし、読み応えがありました。こちらの方が、枠物語という部分が前面に出ていたレグルス文庫版よりも、もっと純粋に王子ラーマの物語という感じがします。(河出書房新社)


+関連作品の感想+
「ラーマーヤナ」上下 ヴァールミーキ
「ラーマーヤナ」ヴァールミーキ

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3巻(感想)に続く、エウリピデスの悲劇作品集。収録作品は、「エレクトラ」「タウリケのイピゲネイア」「ヘレネ」「フェニキアの女たち」「オレステス」「バッコスの信女」「アウリスのイピゲネイア」「レソス」「キュクロプス」の9作。

全体的に3巻の方が面白かった気がします。「タウリケのイピゲネイア」も、先日読んだ岩波文庫版(感想)の方が断然良かったし。とは言っても、この作品の場合は、多分訳の問題ではなくて脚注の問題なんですよね。岩波文庫版の脚注の入り方が、ほんと絶妙だったんですもん。うるさくなく、でも知っておくといい情報を確実に伝えてくれて。こちらのちくま文庫版は脚注がとても少なくて、これはこれでとても読みやすいんですが、それだけに「へええ、そうなんだ」的な部分が少ないのが寂しい。だからといって、岩波文庫全般に脚注が絶妙かといえば、そうとは言えないところが難しいのですが... 多すぎて、本文の邪魔になるものも多いので。(笑)

9作中、トロイア戦争関連が7作。特にアガメムノン一家を巡る作品が多くて、とても興味深かったです。まず前述の「アウリスのイピゲネイア」は、出帆を待つギリシア軍が風凪のために数ヶ月足止めを食らった時に、アガメムノンの娘・イピゲネイアが生贄として犠牲になった物語。これがアガメムノン家の悲劇の元凶となっています。(もっと遡れば、アガメムノンがクリュタイメストラを先夫から奪い、その子を殺したこと、さらに父や先祖の所業なんかもありますが) そしてアガメムノンが殺害されるアイスキュロスの「アガメムノーン」(感想)に続く形で、「エレクトラ」「オレステス」「タウリケのイピゲネイア」といった作品群があります。アイスキュロスの作品群にも、この「アガメムノーン」と3部作になる「供養する女たち」「慈愛の女神たち」といった作品があるので、ここはぜひ読み比べてみたいところ。
そして設定として面白いのは、「ヘレネ」。実はヘレネはトロイアへは連れ去られておらず、神々によってエジプトに匿われていたという話。トロイアに連れ去られたのは、空気から作った似姿。でも人間は誰もそんなことを知らず、ギリシャ軍もその空気のヘレネを取り返すために奮闘していた、というわけです。こういう風にヘレネを庇うような作品って時々ありますね。やっぱり美女は得なのかー!

最後の作品「キュクロプス」は、完全な形で現在までに残されている唯一のサテュロス劇。サテュロス劇とは、滑稽卑俗な所作と歌によって演じられる劇で、古代ギリシアの悲劇競演の際には、悲劇が3作上演され、最後にサテュロス劇が演じられて観客たちの緊張を解いたのだそうです。日本の能における狂言のような存在なんですかねえ? 本の形で読む限り、それほど滑稽卑俗といった感じはしないのですが、狂言だって今の時代に見たら、そんな感じはしないですものね。(ちくま文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ギリシア悲劇I」アイスキュロス
「ギリシア悲劇II」ソポクレス
「ギリシア悲劇III」上 エウリピデス
「ギリシア悲劇IV」下 エウリピデス

+既読のエウリピデス作品の感想+
「タウリケーのイーピゲネイア」エウリーピデース
「ギリシア悲劇III」上 エウリピデス
「ギリシア悲劇IV」下 エウリピデス

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エウリピデスのギリシャ悲劇集。エウリピデスは、アイスキュロス、ソポクレスと並ぶギリシャ三大悲劇詩人の1人です。ここには「アルケスティス」「メデイア」「ヘラクレスの子供たち」「ヒッポリュトス」「アンドロマケ」「ヘカベ」「救いを求める女たち」「ヘラクレス」「イオン」「トロイアの女」の10編が収録されています。

この中でエウリピデスの代表作といえば「メデイア」や「ヒッポリュトス」「アンドロマケ」辺り。特に「メデイア」は有名ですよね! 蜷川幸雄演出の「王女メディア」の元本でもあります。簡単な筋としては、伝説の黄金の羊の毛皮を取りに行ったイアソンは、コルキスの王女メデイアの助けを借りて目的を達成。その後メデイアとの間に2人の子供もできるんですけど、心変わりして他の王女と結婚しようとするんですね。で、怒ったメデイアはその王女と父親、自分が生んだ2人の子供まで犠牲にして、イアソンに復讐するというもの。怖いです。

でも、私がこの中で一番気に入ったのは「メデイア」ではなくて、悲劇と呼ぶには少々微笑ましすぎるような「アルケスティス」。これはペライの王アドメトスに死が迫った時、「代わりに死ぬ者さえあればアドメトスは救われる」という約束をアポロンが運命の女神たちから取り付けてくるんです。でも誰も身代わりに死のうなんてせず、ただ1人申し出たのは王妃のアルケスティスでした、という話。

最初は、老い先短いアドメトスの両親が、なぜ我が子のために死のうとはしないのか!という部分が強調されるんですね。王妃アルケスティスもそんなことを言いながら死んでいきますし。確かに親が子の身代わりになるという話はよくありますし、ほんの数年早くなるだけなのに、そんなに死ぬのが嫌なの? という気にさせられます。でもそれぞれの人物のやりとりを読んでいると、様々な人間の思惑が見えてきて面白いんです。やはり人間は死を恐れるもの。いくら年を取ったからといって、それが薄れるわけではなく。

アドメトス王の父親・ペレスが王妃の葬儀にやって来て、息子と激しい口論になるんですが、その時のペレスの「この世の生は短かろうと思うにつけ、その恋しさはひとしおなのだ。」「もしも御身に自分の命が愛(かな)しいなら、皆も同じく愛(かな)しかろう」という言葉に説得力があります。身代わりに死ぬのを拒否するペレスは、親らしいとは言えなくても、とても人間的ですよね。そして逆にこの2人のやり取りから浮かび上がってくるのは、アドメトスの身勝手さ。親が老い先短いからといって、親の死を望む息子っていうのは、如何なものでしょうか! 天の理を曲げてまで、自分が生き残ろうとしてる時点で、既におかしいんです。今は妻の死を盛大に嘆いてるんですけど、こういった人は、1年もすれば新しい妻を迎えるんだろうなあ...。(しかも妻相手に嘆く言葉は、「こんなことしなければ良かった」ではなくて、「捨てないでくれ」「置いていかないでくれ」「私はこれからどうすればいいのだ」ばかり・笑)
そして、妻自身も純粋な愛情から死んだとも思えないのがポイント。死に際の言葉を読み返してみると、生き続けようとアドメトスの両親への恨みを口にして、まるで当て付けに死んでいくみたいでもあるし、世間体を気にしての行動のようでもあるし(賢妻はかくあるべき?)、「父なし児となった和子たちと一緒に生きながらえて行きたいとは思いませず」という言葉は、もしかして夫が死んで貧しい惨めな暮らしをするぐらいなら死んだ方がマシ、と思ってるのでしょうか?! 自分の死後、子供がいつか継母にいじめられるんじゃないかと心配してるんですけど、子供たちの行く末が本当に心配だったら、生き続けたいという思いもあるものなのでは...? こちらも自分のことしか考えてないです。死に際だから仕方ないのかもしれないですけど、そういう時こそ本質が出るとも言えますね。

...と、そんな感じで人間の内部を抉り出されていくのが楽しい作品。でも最後の展開は打って変わって可笑しいんです。ヘラクレス、いい人ねっ。八方丸く収まってめでたしめでたし。馬鹿夫婦は勝手にやってくれ、と笑えます。(悲劇じゃないじゃん)

3大詩人の中では、一番とっつきやすいのがエウリピデスのような気がします。どこかに「昼メロみたい」という評がありましたが、そうでしょうか! まあ、今の時代に読めば、そう思う人もいるかもしれないですけど、こちらが本家本元でしょう。人間の本質をすごく見抜いいて楽しいです。既存の神話に結構大胆な解釈を加えてるところも面白いですし。このシリーズは全4巻で、1巻がアイスキュロス、2巻がソフォクレス、3巻4巻がエウリピデス。比べて読めば、もう少しはっきり掴めてくると思います。
と言いつつ、文庫で700ページ以上という分厚い本なので、続けざまに読むのはちょっとしんどい...。休み休み行きますね。(ちくま文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「ギリシア悲劇I」アイスキュロス
「ギリシア悲劇II」ソポクレス
「ギリシア悲劇III」上 エウリピデス
「ギリシア悲劇IV」下 エウリピデス

+既読のエウリピデス作品の感想+
「タウリケーのイーピゲネイア」エウリーピデース
「ギリシア悲劇III」上 エウリピデス
「ギリシア悲劇IV」下 エウリピデス

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今回の第27回たらいまわし企画「ウォーターワールドを描く本」で、主催者のねるさんが挙げてらした本。(記事) 本当は呉茂一訳が読みたかったんですが、結局「イリアス」(感想)の時と同じ、松平千秋訳で読みました。...いえ、この方の訳に不満があるわけじゃないですし、むしろとてもいい訳だと思うんですけど、詩の形ではないんですよね。呉茂一訳は、確か叙事詩形式で訳してるはずなので...。(以前読んだのは、この方の訳のはず) でもなかなか見つからないまま、結局手軽に入手できるこちらを買ってしまいました。

トロイア戦争で10年、その後10年漂流と、20年もの間故郷のイタケを留守にすることになってしまった、アカイアの英雄・オデュッセウスの物語。もうすぐ故郷に帰れそうなところから話が始まるのが、トロイア戦争末期を描いた「イリアス」と共通点。アカイア人たちはそれぞれに苦労して帰国することになるんですけど、ポセイドンの怒りを買ってしまったオデュッセウスの苦労は並大抵のものじゃありません。一方、故郷の屋敷では、オデュッセウスは既に死んだものと思われていて、奥さんのペネロペイアには沢山の求婚者が言い寄ってます。

「イリアス」も良かったんですが、やっぱり戦争物の「イリアス」よりも、こちらの方が楽しく読めますね~。登場人物も「イリアス」ほど多くなくて、把握しやすいですし。それに「イリアス」では人間だけでなく神々も大騒ぎで、それがまた面白いところなんですが、こちらで全編通して登場するのはアテネぐらい。そのせいか、物語としてすっきりしてます。
序盤では、オデュッセウスがポセイドンの激しい怒りを買ったということしか分からず、その原因が何だったのかは中盤まで明らかにされないので、徐々に徐々に... って感じなんですが、イリオスを出帆してからのことが一気に語られる中盤以降、俄然面白くなります。そして後半のクライマックスへ。構成的にもこちらの方が洗練されてるのかも。それにしても、30世紀も昔の話を今読んで面白いと感じられるのがすごいですよね。細かいところでは、今ではあり得ない部分なんかもあるんですが、やっぱり大きく普遍的なんでしょうね。そしてこの作品こそが、その後の冒険譚(特に航海物)の基本なんですねー。
「風の谷のナウシカ」のナウシカという名前が、この作品に登場する王女の名前から取られてるのは有名ですが、魔女キルケの食べ物によって豚にされてしまう部下のエピソードなんかも、「千と千尋の神隠し」のアレですね。ジブリの作品って、ほんと色んなところからモチーフをがきてますね。「千と千尋の神隠し」にしても、これ以外にも「霧のむこうの不思議な町」「クラバート」の影響が見られるわけで。

この「オデュッセイア」の中に、遙かなる世界の果て「エリュシオンの野」というのが出てきます。「雪はなく激しい嵐も吹かず雨も降らぬ。外洋(オケアノス)は人間に爽やかな涼気を恵むべく、高らかに鳴りつつ吹きわたる西風(ゼビュロス)の息吹を送ってくる」場所。神々に愛された者が死後住むとされた楽園。至福者の島(マカロン・ネソス)。明らかに、海の彼方の楽園伝説の元の1つと言える概念。でも私の持っているアポロドーロスの「ギリシャ神話」には、「オデュッセイア」紹介ページにしか、エリュシオンの野の記述がないんです。これってホメロスの想像した場所なのでしょうか。それともやはり以前からあった概念なんでしょうか? これより後の時代に書かれたウェルギリウスの「アエネーイス」では、このエリュシオンの野は確か地の底にあるんですよね。まだまだ謎だらけです。(岩波文庫)


+既読のホメロス名義作品の感想+
「イリアス」上下 ホメロス
「四つのギリシャ神話 『ホメーロス讃歌』より」
「オデュッセイア」上下 ホメロス
「ホメーロスの諸神讃歌」ホメーロス

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強大な力で多くの神々を奴隷にしてしまった魔王・ラーバナに立ち向かうために、至上の神・ビシヌ(ヴィシュヌ)は、奴隷とされてしまった神々を人間や猿に転生させることに。南インドのジャングルには、神々の生まれ変わりの猿や猩々が沢山生まれ、ビシヌ神自身は北インドのダサラタ王の長男・ラーマとして転生。しかしラーマが立派に成長して、ダサラタ王がラーマに王位を譲る決意を固めた時、それに嫉妬した第二王妃(継母)と召使女の陰謀で、ラーマは14年もの間王国を追放されることになってしまうのです。国を離れるラーマに従うのは、妻のシータと弟のラクシマナ。しかしそんなある日、シータが魔王・ラーバナに攫われてしまい...。

「マハーバーラタ」と並ぶ、インドの古典叙事詩。とうとうインドまで来てしまいましたー。この「ラーマーヤナ」はヴァールミーキの作と言われていますが、実際にはインドに伝わる民間伝承をヴァールミーキが紀元3世紀ごろにまとめたってことのようですね。ヒンドゥー教の神話の物語ですが、古くから東南アジアや中国、日本に伝わっていて、この物語に登場する猩々のハヌマーンは、「西遊記」の孫悟空のモデルとも言われているようです。確かに彼の活躍場面は、孫悟空の三面六臂の活躍ぶりを彷彿とさせるもの。

本来この物語には魔王・ラーバナを倒すという大きな目的があったはずだし、そのためにビシヌ神も転生したはずなんですが、人間や猿に転生した時に神々だった時の記憶を失ってしまったせいか、ラーバナ征伐がまるで偶然の出来事のようになってるのがおかしいです。ラーバナがシータを攫わなければ、ラーバナとの争いは起こらず、魔王の都に攻め込むこともなかったのでしょうか! 「ラーマーヤナ」の「ヤナ」は鏡で、要するに「ラーマの物語」ということだそうなので(おお、インドでも鏡は物語なのね)、ラーマの英雄譚ということで構わないんですが... まあ、ラーマに箔をつけるために、ビシヌ転生のエピソードが付け加えられたんでしょうしね。
このラーマに関してはそれほど魅力を感じないのですが、至上の神であったビシヌでも、人間に転生してしまうと、ただの我侭な男の子になってしまうのかーという辺りは可笑しかったです。

でも私が読んだこの本は、一見大人向けの新書版なんですが、中身は子供向けの易しい物語調なんです。どうやらかなり省略されているようで、読んでいて物足りない! でも東洋文庫版「ラーマーヤナ」は、訳者の方が亡くなって途中で中断しているようだし、他にはほとんどない様子。結局、現在はこの版しか入手できないみたいなんですよね。「ラーマーヤナ」がどういった物語なのかを知るにはいいんですが、やっぱり完訳が読みたかった。ああ、東洋文庫で続きが出てくれればいいのになあ。(レグルス文庫)


+関連作品の感想+
「ラーマーヤナ」上下 ヴァールミーキ
「ラーマーヤナ」ヴァールミーキ

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現在進行中の絶賛叙事詩祭りで最大の目玉になりそうな作品、念願の「狂えるオルランド」をとうとう読みました!
これは8世紀末のシャルル・マーニュ率いるキリスト教徒軍とイスラム教徒軍との戦いや、騎士たちの恋や冒険を描いた物語。イタリアルネッサンス最高傑作とされているのだそうです。イタロ・カルヴィーノが偏愛しているという作品。でも、同じくシャルル・マーニュが登場するフランスの叙事詩「ロランの歌」と何らかの関係があるんだろうとは思ってたんですけど、「ロラン」が、イタリア語では「オルランド」なんて知りませんでしたよー。(情けない)

というのはともかく。これが思いの他、難物でした。

まず、訳者まえがきを読んで初めて、これが15世紀にボイアルドが書いた「恋するオルランド」(未完)の続きとして書かれていると知ってびっくり。それならそちらを先にいっておきたいところですが、その「恋するオルランド」は、日本語には翻訳されてないらしいんです。しかも、この本には「恋する~」のあらすじがほとんど書かれてない! いくら「狂える~」が、それだけで独立して読める作品とされていても、続編である以上、人間関係がすっかり出来上がっている以上、そちらのあらすじをきちんと書いておいてくれてもいいのでは... それもなしに、「『恋するオルランド』第○巻第○歌○○節参照」なんて訳注が頻出するときた日には...!
私はシリーズ物を途中から読むのが大嫌いだし、繋がりがある作品は順番に読みたいタイプ。(積み重ねていく部分って、大切ですよね) なのに、いきなり話が始まっちゃう。全然話に入れなくて困っちゃいました。特に最初の1~2章では大苦戦。何度読み返しても、全然頭に入ってこなくて、目は文字の上を素通りするだけ。訳者まえがきに、「まずなによりも、読んで面白い」「少しも読者を退屈させない」なんて書かれてるのに、全然面白くないよー...。

せっかく市外の図書館からお取り寄せしてもらったんだけど、やっぱりやめちゃおうかしら、でも、そんな気軽に再チャレンジなんてわけにもいかないし... なんて思いながら我慢して読むこと約30ページ。(この30ページに5日ぐらいかかりました) ある日突然、面白くなりました! 訳者さんの言葉にも、ようやく納得。ヨーロッパはもちろん、インド、エチオピア、はたまた... と様々な場所でエピソードが同時進行していくんですけど、全然混乱しないどころか、すごく読みやすい! (登場人物は物凄く多いので大変ですが) 最初の苦労は一体何だったんだ? 全部読み終えてから最初に戻ってみると、今度は全然読みにくくなかったです。(笑)

myrtus05.jpg題名の割に、オルランドは主役じゃないんですね。オルランドが失恋して正気を失い、他の人物がその正気を取り戻させるという流れはあるんですけど(この正気を取り戻す部分が凄いです。ぶっ飛んでます) むしろイスラム教徒の騎士・ルッジェーロとキリスト教徒の乙女・ブラダマンテが中心。というのも、この2人こそがアリオストが仕えていたエステ家の始祖となる2人なので...。(途中何度か語られるエステ家の隆盛については、ちょっと退屈) そしてもう1つ中心となっているのが、キリスト教徒とイスラム教徒の戦い。これは迫力です。名だたる騎士たちの強さってば、凄まじすぎ。一騎当千とはこのことか。
(右の写真は、作中に何度も登場するミルトの花。日本名は銀梅花)

結局のところ、ものすごーく面白かったです。分売不可の2冊組で12,600円という凄い値段なんですけど、それでも欲しくなっちゃったぐらい。この金額を出しても欲しいって思えること自体凄いんですけど、そう思えるような本が読めて幸せ~。物語そのものが面白いのはもちろん、訳文もすごく良かったし、ギリシャ神話やホメーロスの「イーリアス」「オデュッセイア」、ウェルギリウス「アエネーイス」、オウィディウス「変身物語」、プリニウス「博物誌」、ダンテ「神曲」、マルコポーロ「東方見聞録」、アーサー王伝説などなど、様々な古典文学を下敷きにしてるから、そういう意味でもすごく楽しいし、色んなエピソードの展開の仕方を他の古典作品と比べて、1人でにやにや。特に絶世の美女の見せる意外な計算高さや、命をかけて結ばれた王子さまとお姫さまが「そして2人はいつまでも幸せに暮らしました」になるとは限らないところとか、面白い~。そしてこの作品は、後の文学作品にも色々と影響を与えているんですよね。これでようやく、そういう作品を読んだ時に、悔しい思いをしなくて済むから嬉しいな。多少は理解も深まるでしょう。(期待)

あとは返却期限までぼちぼちと読み返して... ポチッとしてしまう衝動と戦うだけですね。わはは。(名古屋大学出版会)

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