Catégories:“ミステリ”

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明治31年(1898年)。仏典の研究のために清国へと渡った能海寛(のうみゆたか)は漢口の街に到着。準備を整え人夫を雇って出発した能海に接近してきたのは、英国商社のジャーデン・マセソン社のトーマス・ヤンセン。あくまでも日本の仏教を立て直すために原典を求め、そのために東本願寺法主からダライ・ラマ13世への親書を携えて拉薩を目指しているつもりの能海でしたが、外の人間たちからは、彼は日本政府の意を受けて西蔵を目指す密使だと見られていたのです。能海は知らないうちに、「グレートゲーム」に巻き込まれていくことに。

日清戦争と日露戦争の間の時期を背景に、清や西蔵(チベット)、そしてそれらの国々を巡るを各国の思惑を描いた骨太な歴史ミステリ。能海寛はもちろんのこと、河口彗海や寺本婉雅、成田安輝など実在の人物たちが登場します。
能海が本人も知らないうちに歴史の一駒にされていたという設定はとても面白かったし、チベットのラサへと向かう厳しい道のりもとても迫力があって、英国のジャーデン・マセソン社のエージェントの介入、能海を助ける山の民や清国人たちとのやり取りもなかなか良かったんですけど、これだけのことを描きあげるには枚数が足りなかったのではないかしら? このページ数にしてはかなりよく描き込まれてると思うし、能海もなかなかいい感じなんですけど、全体から眺めた時にどこか物足りないものがありました。最後も、ある程度は歴史物の宿命とはいえ、後味があまりにも良くないですしね... なんでこんな幕引きにしちゃったのかしら。このラストで作品全体の印象も変わってしまうんだけどなあ... ここまできちんと作り込んできてるのに、なぜ?(小学館文庫)


+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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長屋に女の幽霊が出ると聞いた岡っ引の長次は、下っ引きの宇多に調べるように言いつけます。その幽霊は近頃息子と娘を失ったばかりの大和屋由紀兵衛の持つ長屋に出るのだというのですが... という「恋はしがち」以下、全6編の連作短編集。

9人の幼馴染たちの物語。下っ引きの宇多、岡っ引きの長治の娘のお絹、大和屋由紀兵衛の息子・千之助とその妹・於ふじ、大工の棟梁の娘のお染、野菜のぼて振りの弥太、叔父の口入屋の手代をしている重松、茶屋の看板娘のおまつ、裕福な煙管屋の娘・お品。この話が始まる時点で千之助と於ふじは既に亡くなってしまっていて、大きな流れとしてはこの2人の亡くなった事件のミステリですが、むしろ青春小説といった感じでしょうか。

小さい頃は男女の区別もなく毎日のように遊び回っていた9人も、今やもうお年頃。それぞれの生活が忙しくてなかなか会えなくなるし、お互いを男や女として意識するようにもなります。そこで上手く「思い思われ」になればいいんですけど、9人ですしね。なかなか上手くいかなさそうだなという予想通り、実際それぞれの思いはすれ違い... そうこうしてるうちに仲間を失ってしまったり。
大人になるってこういうことなのよね、なーんて切ない感じが前面に出てるのはいいんですけど... やっぱり9人というのは多すぎやしませんかねえ。せいぜい7人なんじゃ? 区別がつかなくて困るってほどではなかったんですけど、それほど9人の描き分けができているとは思えなかったし、逆にそれぞれのイヤな面は目についてしまったりで、感情移入できるような人物はいなかったな。せっかくなのにあまり楽しめず、ちょっと残念でした。(光文社)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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ぱっとしない私立大学の文学部に入学したせいで、上京するなり叔母の経営する銀座の文壇バー・ミューズでバイトをすることになった了。その店はミステリー作家の辻堂珊瑚朗が贔屓にしている店。辻堂は来店するなり、店には新しい男性スタッフが増え、しかもその男性が叔母とかなり親しい仲だということを看破します。

竹内真さんとしてはとても珍しいミステリ作品。語り手は了という大学生の青年なんですが、中心となっているのはミステリ作家の辻堂珊瑚朗。彼が安楽椅子探偵のように様々な謎を解き明かしていく連作短編集です。
最初の謎を解く辺りがまるでシャーロック・ホームズのようで(見ただけで相手の職業を言い当ててしまうのは「赤毛連盟」でしたっけ?)おおっと思ったんですが、そういう路線の作品でもなかったようです。謎解きは色々あるんだけど、謎解きそのものを楽しむというより、辻堂珊瑚朗が出してくる回答によって辻堂自身の粋さを感じさせるのが一番なのかな? 必ずしも真実ではなくても、その場に相応しい回答を相応しい形で用意するというのが肝心みたい。それは相手によって自分を演じ分けてしまうという辻堂自身のようでもあるし、銀座のバーという夜の世界一流の嗜みでもあるような。

竹内真さんといえば爽やかな青春物。ジャンルがミステリに変わっても、竹内真さんの持ち味は変わらないのではないかと思ったんですが... 夜の銀座を舞台にしてるということは、もしかしたらそういうイメージからの脱却を目指してらっしゃるのでしょうかー。これはこれで楽しめる作品だとは思うんですけど、もう少し竹内真さんらしさが欲しかった気も...。まあ、文壇バーが舞台となっていることもあって、登場する作家たちは誰がモデル?という楽しみはあるんですけどね。最後に登場する甲賀という作家は、もしや竹内真さんご自身? となると、いずれ「安楽椅子探偵」という言葉の定義と矛盾するような安楽椅子探偵物の長編が読める日も来るのでしょうか。(笑)(東京創元社)


+既読の竹内真作品の感想+
「図書館の水脈」竹内真
「真夏の島の夢」竹内真
「じーさん武勇伝」竹内真
「自転車少年記」竹内真
「笑うカドには お笑い巡礼マルコポーロ」竹内真
「オアシス」竹内真
「ワンダー・ドッグ」竹内真
「ビールボーイズ」竹内真
「シチュエーションパズルの攻防」竹内真
Livreに「粗忽拳銃」「カレーライフ」「風に桜の舞う道で」の感想があります)

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30代後半、ほぼ同年代に見える喪服を着た男女が5人。彼らは高校の同級生で映研の仲間。かつては気の置けない仲間として付き合っていた彼らも、実際に会うのはとても久しぶり。映画監督デビューを果たしたタカハシユウコの呼びかけで、エキストラとして出演するために集まったのです。その日は、奇しくもかつての同級生・オギワラの葬式があった日。それぞれの近況やかつての同級生の噂から、殺されたオギワラの捜査のために葬式には警察も来ていたという話になり、高校の学園祭の直前に消えたフィルムの話や食中毒事件の話も飛び出して、徐々に不穏な空気が漂いはじめます。

演劇集団キャラメルボックスのために書き下ろしたという初の戯曲作品。少人数の密室劇で心理サスペンス物がやりたいという劇団側の最初の希望通り、登場人物は5人だけで、場面もそのままの1幕物。
話が進むにつれてそれぞれの抱えている事情は徐々に明らかになっていくんですけど、相手が今どんな状況にあってどんなことを思ってるのか、最初は分からないんですよね。まずは腹の探りあい。なんでこの人はこんなに疑い深いんだろう... なんて人もいたりして。それも彼の今いる状況のせいなんですが、その疑い深い言葉に背中を押されるようにして他の4人も徐々に疑心暗鬼になっていきます。そして場がどんどん緊迫していく様子にどきどき。
とは言っても、最終的には肝心な部分が分からないまま終わってしまうのが恩田さんらしいですが...(笑)
劇団側からの「直してほしい・解決してほしい点のリスト」を全て解決したせいで恩田色が薄くなってしまったという意見もあったようなんですが、そうなのかな? それでも私にはすごく面白かった! 初の戯曲作品ということで色々戸惑った部分もあったようですが、そんな裏事情が分かる「『猫と針』日記」その他もすごく面白かったです。「違う。違うわ。台詞の重みが、存在感が、全然違うっ。」

最後に「猫と針」という題名について。

かつてボリス・ヴィアンという人がいて、『北京の秋』という本を書いた。人に「なぜ『北京の秋』というタイトルなのか」と聞かれ、「北京にも秋にも関係があい。だから『北京の秋』だ」と答えたそうである。『猫と針』は、猫は若干関係があると思うけれど、針が関係あるのかどうかはまだ分からない。

要するにあんまり関係ないということですね。(笑)
ボリス・ヴィアンの全集の中で次に読む予定なのが「北京の秋」。ああ、読まなくちゃな。もうちょっと涼しくなったら、ちゃんと「秋」になったら読もうっと。(だから「秋」には全然関係ないって言ってるのに!)(新潮社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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新姚県の知事が難癖をつけては罪もない士人を捕縛して牢に押し込めたがるというという噂が朝廷に届き、越州へと向かった巡按御史一行。そして新姚県に入って早くも3日目で、希舜と伯淵は宿に踏み込んできた羅卒によって政庁へと引き立てられてしまいます...という「黄鶏帖の名跡」他、全5編。

「十八面の骰子」に続く巡按御史のシリーズ第2弾。少年のような見かけながらも実は25歳の巡按御史・趙希舜、長身に美声ながらも拳法の達人でもある希舜の弟分・傅伯淵、希舜の父に用心棒として雇われた賈由育、そして伯淵に惚れて女細作として同行するようになった燕児の4人組が活躍する連作短編集です。ええと、巡按御史というのは、天子直属の監察官。身分を隠して任地へ赴き、秘密裏のうちに地方役人の不正の有無を吟味する役目。身分を証明するためには「先斬後奏」「勢剣」「金牌」という3つの品を常に携行しています。
要するに水戸黄門的勧善懲悪物なんですが(笑)、中華ミステリの森福都さんらしく、「蓬草塩の塑像」ではアリバイトリック、「肉屏風の密室」では文字通り密室トリックといったように、ミステリ的にも十分楽しめるのがポイント。一行がどこに行っても温信純という男の存在が不気味に見え隠れして、女流賊・行雲とその手下2人も事あるごとに現れます。それに希舜がなぜ巡按御史になりたいと思ったのか、どんな出来事があったのか、という前作を読んだ時に知りたいと思っていたこともぽつぽつと語られるので、前作「十八面の骰子」を読んでおいた方が断然楽しめるでしょうね。と言ってる私自身が「十八面の骰子」の細かい部分をすっかり忘れていたりするんですが... 文庫が出たら買うつもりにしていたのに、すっかり抜けてたみたい。チェックできませんー。(それにしても文庫本の表紙の雰囲気が単行本と全然違うのにはびっくり。なんと宇野亜喜良さんでしたか。)
悪役との決着もまだついてないし、5編目「楽遊原の剛風」のラストは、いかにも続きがありそうな終わり方。続編にも期待です。(光文社)


+シリーズ既刊の感想+
「十八面の骰子」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「肉屏風の密室」森福都

+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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口能登の旧家の屋敷を借りて個展を開いていた関屋次郎。関屋は椿をモチーフにした絵を専門に描いている画家。しかし「椿なら関屋次郎」という評判で人気が高く、熱狂的な蒐集者がいるにも関わらず、関屋は苛立っていました...という「八百比丘尼」他、全4編の連作短編集。

風待屋のsa-ki さんに教えてもらったんですけど、いやあ、これが面白かった。服部真澄さんといえば国際謀略小説専門の方かと思ってたんですけど、こんな作品も書いてらしたんですねー。雰囲気の違いにびっくり。
物語の中心となっているのは、一流のアーティストや料理人、茶人たちに頼りにされる「平成の魯山人」佛々堂先生。普段はくたくたのシャツに作業用のズボンのような服装で、古いワンボックス・カーに様々な荷物をところ狭しと積み込んで日本各地を移動してるんですけど、2~3分もあればそんな小汚い服装から小粋に着物を着こなした旦那に化けちゃう。それにどんなに多忙でも携帯電話やファックスといったものは使わず、佛々堂先生からの連絡は墨でさらさらと書きつけた巻紙。
この佛々堂先生がほんと洒脱なんですよね。魯山人といえば、私にとってはどうも漫画「美味しんぼ」の海原雄山のイメージで...^^; いかにも偉そう~な上から目線の人間をイメージしてしまうんですけど、この佛々堂先生は人懐こくて、たとえ我侭を言っても憎めない存在なんです。本人もとっても世話好きですしね。伸び悩んでいる作家がいれば助けの手を差し伸べるし... しかも本人にはそうと悟らせないその差し伸べ方の粋なこと。一流の骨董や書画を扱う小説といえば、北森鴻さんの冬狐堂シリーズが真っ先に思い浮かぶんですけど、こちらはもっと肩の力が抜けた感じ。冬狐堂シリーズも面白いんですけどね。むしろ「孔雀狂想曲」の方が近いかも? あんな風にミステリ的な事件が起こることはありませんが。それに金儲けが絡んでギラギラ、人間関係がドロドロ、っていうのがないのがいいんですよねえ。それでいて、さらっと深いものを教えてくれる面もあったりして。
春の椿、夏の蛤、秋の七草、松茸と季節折々の風物も織り交ぜて、とても風流で味わい深い作品となっていました。このシリーズいいなあ。謀略小説よりずっと好みかも♪(講談社文庫)


+既読の服部真澄作品の感想+
「鷲の驕り」服部真澄
「清談 佛々堂先生」服部真澄
Livreに「龍の契り」の感想があります)

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三舟シェフと志村さんが珍しく喧嘩... その原因は、三舟シェフがついつい餌付けしてしまった黒い痩せた猫でした。責任を取ってその猫を飼うようにと志村さんに言われた三舟シェフは、お店に貼り紙をして、早急に猫の貰い手を捜すことになります... という「錆びないスキレット」他、全7編の短編集。

「タルト・タタンの夢」に続く、ビストロ・パ・マルのシリーズです。
相変わらずお料理が美味しそう~。それにパ・マルの雰囲気も相変わらずいい感じです。無口で無愛想だけど絶品の料理を作る三舟シェフ、シェフとして十分一人立ちできる実力があるのに、敢えて三舟シェフの下で働くことを選んでいる志村さん、そしてソムリエの金子さんにギャルソンの高築くん。「タルト・タタンの夢」を読んでから1年も経ってないのに、ようやく懐かしい面々に会えた~という感じ。
今回は三舟シェフがパ・マルを開店する前、フランスにいた頃のエピソードも2つあって、その中にヴァン・ショーを作るきっかけとなった出来事も語られるのが嬉しい♪ 前回のように、毎回謎解きの後にヴァン・ショー... にならなかったのは、表題作「ヴァン・ショーをあなたに」を際立たせるためだったのかな? 今回は謎解きとしては少し小粒な感じだったし、ヴァン・ショーがあんまり登場しなかったのも寂しかったんですが、その分三舟シェフの素顔を見せてくれていたので、物足りなさは感じなかったです。
今回特に気に入ったのは、「ブーランジュリーのメロンパン」と「ヴァン・ショーをあなたに」の2編。どちらも家族の絆を感じさせる暖かい作品でした。あと印象に残ったのは、「錆びないスキレット」での志村さんの台詞。「猫に餌をやるということは、そういうことです。その猫に責任ができるのです。だから、シェフ、きちんと責任を取ってください」 ...南方署強行犯係のシリーズを思い出しますね。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「窓の下には」の感想)
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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