Catégories:“ミステリ”

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その日訪ねて来たのは、アメリカの出版代理人だと名乗る男。男が分厚い英語の原稿を取り出し、日本で出版したいと言い出したのを見て、柳広司は苦笑します。てっきり自作の小説を英語で出版する話を持ってきたのだと思い込んでいたのです。男の説明によると、その原稿は、「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーが、親しかった友人の眼を通して書いたという遺稿。1945年8月、終戦に沸くロスアラモスの町で開かれた戦勝記念パーティの後、1人の男が殺された事件について書かれたものだったのです。

お初の柳広司作品。頂き物です。ありがとうございます~。
原爆が生まれたという砂漠の町・ロスアラモスの名前は知ってましたが、名前を知ってる程度だったので、すごく興味深く読みました。へええ、こんな風にして原爆は作られたのですかー...。あ、もちろんこの作品は原爆や戦争を肯定するものではないですし、ナチスによる人体実験ももちろん認めてないんですけど、それでもやっぱり新しい知識や発明に対する科学者(医学者でも)の情熱(狂気)って、そこに通じるものがありますよね。怖い。人間として何が正しくて何が正しくないのかという命題は、やっぱり科学の進歩とは相容れないものなんだなあ、なんてしみじみ思ってしまいます。なので「面白かった」とは簡単に言いがたいんですけど...(気持ち的にね) 読み応えのある作品だったし、原爆を作り出した人々の中には、ナチスを逃れてアメリカに亡命せざるを得なかったヨーロッパ出身の物理学者たちも多く含まれていたということを認識しただけでも読んだ甲斐がありました。...あ、でも一応殺人事件は絡んでるんですけど、ミステリ部分は脇役ですね。主役はあくまでもあちらかと...(角川文庫)

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博多の長浜にラーメンとおでん、そしてカクテルを出す屋台を営むテッキこと鴨志田鉄樹。そして、その屋台にいつもやって来てはツケで飲んでいくのは、テッキの高校時代からの腐れ縁で、今は結婚相談所の調査員をしているキュータこと根岸球太。博多の街を舞台に、2人が様々な巻き込まれていくハードボイルド連作短編集。

北森鴻さんの本はかなり読んでますが、こうやって読むのはとても久しぶり。以前はコンプリートする勢いで読んでたはずなんですけど、私の中でミステリ熱が冷めてきたこともあって、ここ2年ほどの間に出た本は全然読んでないんですよね。でも、それ以前のは全部読んでるはず... いや、この作品を抜かしてですが。なぜこれだけ抜けてたかといえば、なんでなんでしょうね。どこかとっつきにくい雰囲気が漂ってたせいなんですよね。(私にとって、です) 図書館で見かけても、なんとなくスルーしてしまってました。でも文庫になったのを機に読んでみたら、意外なほど読みやすくてびっくり!

テッキとキュータの2人の視点が交互に登場して、物語が進んでいきます。2人は高校時代からの腐れ縁で、どちらも29歳。東京の大学を中退して博多に戻って来たテッキは冷静沈着、むしろ老成した雰囲気。使う言葉は標準語。そして常にお気楽で女好き、頭で考えるよりも先に口が出るタイプのキュータは人情家。言葉は博多弁。この2人が好対照となっていて楽しいし、オフクロこと華岡結婚相談所の所長・華岡妙子や、魔女のような雰囲気の歌姫も、独特の存在感を放っていますねー。一見して硬質な雰囲気だし、扱う事件はそれぞれに重いんですけど、狂言回し(?)のキュータのおかげか、その重さがいい感じで和らげられていて、とても読みやすかったです。それでも最後はかなり苦い結末で、驚かされましたが...。
今年の10月に出ている「親不孝通りラプソディー」は、この2人の高校時代のエピソードみたいですね。この本の中でも一度思わせぶりなことが書かれていたので、その話なんでしょう。またそちらも読んでみようっと。(講談社文庫)


+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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中庭が隠れ家のようなカフェ・レストランになっている小さな古いホテル。そこを訪れた「女」は、待っていた「サングラスの女」と共にワインを飲み、鴨とチコリのサラダを食べながら、以前この同じ中庭で開かれた小さなティー・パーティのことを話し始めます。それは脚本家・神谷華晴のために開かれたパーティの話。神谷は大の紅茶党で、その日も貰ったばかりのカップを片手に客の間を泳ぎ回り、ひっきりなしに紅茶を飲んでいました。しかしその手からは突然カップが落ちて...。カップからは毒が検出されます。誰も紅茶に毒を入れた形跡も目撃証言もなく、警察は自殺と断定。それでも「女」は真相に気付いたのです。そしてその時、「サングラスの女」の口からは、突然糸のような血の筋が流れ、その身体は崩れ落ちて...。

いやあ、面白かった。演劇という意味では「チョコレート・コスモス」(感想)の延長線上にあるような作品なんですけど、雰囲気としては、むしろ「夏の名残りの薔薇」(感想)でしょうか。演劇ミステリですね。「チョコレート・コスモス」ほどの興奮はなかったんですが、こういうのもすごく好き~。
でもとても面白かったのだけど、とても分かりづらくもありました。同じ場面、同じ台詞が何度も繰り返し繰り返し、少しずつ形を変えながら登場、何層にも入れ子になっているのです。ゆっくり読んではいたんだけど... 一体どこからどこまでが現実で、どこからが芝居で、どこからが芝居の中で演じられている芝居なのやら、まるで不思議のアリスの国に迷い込んだみたい。内側だと思っていたものが、気がつけば外側になっていて、外側だと思っていたものは、いつの間にか内側になり、現実と虚構が螺旋階段のように絡み合ってグルグル上っていくような...。まだ掴みきれてない部分があるので、これはもう一回、今度はメモを取りながら読んだ方がよさそうです。

そしてこの作品には、神谷という脚本家が登場するんですが、これは...? 芝居の演出で芹澤という名前もちらっと出てきて、こちらは「チョコレート・コスモス」で登場したあの人と同一人物だと思うんですが、神谷の方はどうなんでしょう? 「チョコレート・コスモス」の神谷とは年齢も食い違いそうだし、別人のような気もするのだけど...? 「チョコレート・コスモス」の本が手元にないので、細かい部分が確かめられませんー。(新潮社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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時々遊びに来ていたデブで不細工なねこが、その日赤い首輪をしているのを見て、「ぼく」はこっそり首輪の下に短い手紙を書いた紙を押し込むことに。すると次にその猫がやって来た時、そこには返信が挟まっていて... という表題作「モノレールねこ」他、全8編が収められた短編集。

いやー、やっぱり菊池健さんの描かれる絵は、加納朋子さんの作品にぴったりですね。この表紙の猫、パズルになってるんですよー。可愛い! そして中身もとても加納朋子さんらしい作品集でした。どれも人と人との絆をテーマにした物語。
縁あって親子や友達、恋人、そして夫婦になる人々。それは単なる偶然のめぐり合わせかもしれませんが、深く関わり合うような関係を築くには、やはり何かしら不思議な、偶然以上のものが潜んでいるような気がします。住んでいる場所も育った環境もまるで違う男女2人でも、縁さえあれば、知り合って恋に落ち結婚することもありますし、それとは逆に、似たような場所と環境で育ってお互いのことを知っていても、特に深く関わり合うことなくすれ違っていく人々もいるわけですし。やっぱり人間同士が深く関わりあうには、何かの「縁」が必要なんでしょう。そしてその「縁」が人同士を結びつけ、愛情や信頼関係を育てていくのでしょうねー。時には近すぎるからこそ、なかなか上手くいかないこともありますが、少しずつ築き上げて確立した絆は強いですし、その「縁」が本物なら、たとえ何十年のブランクがあっても再びめぐり合えるはず。
どの作品の絆もそれぞれに違ったものですし、短編同士には繋がりが全くないのですが、共通するのはその暖かさ。ああ、久しぶりに加納朋子さんらしい作品を読んだ気がします。良かったです~。(文藝春秋)


+既読の加納朋子作品の感想+
「てるてるあした」加納朋子
「ななつのこものがたり」加納朋子
「モノレールねこ」加納朋子
「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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先月出たばかりのチョーモンインシリーズ。これで8冊目かな? 今回は短編が5編収められていました。
もちろん神麻嗣子ちゃんも保科さんも登場するし、相変わらず楽しいんですけど... 聡子さんは? 能解警部は? レギュラー陣の登場があまりないのがちょっと寂しかったです。でもこのシリーズらしい作品も多かったし、安定してますねー。やっぱり先日読んだ「春の魔法のおすそわけ」とは全然違ーう。

5編の中で私が一番気に入ったのは、「捕食」という作品。これには大学時代の保科さんが登場します。仲間たちとスキーに行った時に、吹雪の中で道に迷った保科さんが辿り着いたのは、山の中に建つ屋敷。そこの主が語った奇妙な話とは... という物語。ちょっとホラータッチなんですけど、そこが良かった。でも、どうやらその仲間の中には聡子さんもいたようなのに、まるっきり登場しないなんて...!
表題作の「ソフトタッチ・オペレーション」は5編の中で一番長くて、このシリーズらしい(とは言っても、よくよく考えると、森奈津子さんが喜びそうなシチュエーションでもありますね)、とても西澤さんらしい作品。でもね、密室物を書くためには、密室を作り出すための状況を考えるというのが、まず最初の作業なんだろうとは思うんですが... これはあまりにも強引すぎるのでは。作中に登場する某ミステリ作品に対するオマージュだとしても、ちょっとツラいものがあるなあ。

でも、タックシリーズだけでなく、こっちのシリーズにも闇の部分があったはずなんですけど、あれは一体どうなったんでしょう。この作品では、全然気配すら匂わせてもいないし、前作も確か同じような感じだったかと。確かに、そこを書いてしまえばシリーズが終わってしまうのかもしれませんが... そろそろそちらの進展も気になるところです。その闇があるからこそ一層魅力的なんですしね。(講談社ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「幻惑密室」「実況中死」「念力密室!」「夢幻巡礼」「転・送・密・室」「人形幻戯」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦

+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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人の波に流されるままに地下鉄の改札を抜け、地上に出て初めて自分が九段坂にいることに気づいた鈴木小夜子。典型的な二日酔い症状で頭が割れそうに痛い小夜子は、自分の持っていたはずのポシェットが、いつの間にか2千万円の現金の入ったセミショルダーとなっているのに気づいて驚きます。現在の自分自身の全財産が丁度2千万円。キャッシュカードや保険証など全てを失くした代わりに、この2千万円を一気に使い切ってしまおうと考えた小夜子は、目についた美青年に声をかけるのですが...。

タイトルはとても爽やかなんですが、蓋を開けてみれば、人生に疲れた二日酔いの独身中年女性が迎え酒をしつつ、周囲に絡みつつ展開していく物語。いやー、酒臭い息がこちらまで漂ってきそうなほどでした...。でもこの展開はあれですね、どちらかといえば森奈津子シリーズのノリなのでは? あんな風にエロティックではないんですけど、そのまま森奈津子シリーズにしてしまった方が、あり得ない~って状況ももう少し楽しめたのではないかと...。丁度この鈴木小夜子も作家という設定ですしね。...ええと、謎も一応ありますが、小夜子が謎に思っているだけで、読者には謎でも何でもありません。どちらかといえばラブ・コメディかなあ...。(中央公論新社)


+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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現場には行かず、話を聞くだけで事件を解決してしまう探偵を安楽椅子探偵と言いますが、これは文字通り、家具としての安楽椅子が名探偵になっちゃって...?! という安楽椅子探偵アーチーシリーズの2作目。今回は、「オランダ水牛の謎」「エジプト猫の謎」「イギリス雨傘の謎」「アメリカ珈琲の謎」というエラリー・クイーンばりの国名シリーズの連作短編集となっています。

1作目を読んでからもう3年経ってるので、前のを覚えてるかちょっと不安だったんですが、心配は無用でした。もうアーチーは相変わらずですしね。椅子の持ち主の及川衛との会話は、以前同様の「おじいちゃんと孫」っぷり。野村芙紗は、塾通いを始めたせいで、前回ほどの登場ではないんですけど、代わりに前作でも登場していた鈴木さんが来たりして、この鈴木さんとアーチーがまた好一対。2人の会話が楽しいです。そして芙紗が本格的に登場してからは、衛がとっても微笑ましかったり。
どれも楽しい作品でしたが、今回私が特に気に入ったのは、衛と芙紗、そして衛のお父さんの3人が近所にできたインド料理のレストランに行って、そこで奇妙な出来事に遭遇するという「インド更紗の謎」。その店は、衛のお父さんがものすごく信頼しているインターネットの横浜限定のグルメサイトが褒めてるという店なので、お父さんの思い込みが楽しくて。現実的なお母さんにロマンティックなお父さん、という設定がとても生かされていて、不憫なお父さんを応援したくなりました。本当の結末とのコントラストもいいですね。 (東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+
「安楽椅子探偵アーチー」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美

+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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