Catégories:“ミステリ”

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今回の作品は、一言でいえば演劇物。書けないで苦しんでる脚本家や、若手の実力派女優や、大学生の劇団員らの視点から物語は進んでいきます。「ネクロポリス」では正直がっかりしたし、「エンドゲーム」では、途中まではものすごく面白かったのに、読み終えみると自分の中に何も残ってなくて、これまたがっかりしていたんですが、これは良かったです。久々の大ヒット! もう、夢中で一気読みしてしまいました。最近すっかり海外物づいてて、日本物を読むのをちょっと躊躇ってたんですが、これは読んで良かったです~。

というのは、きっと私自身がお芝居をとても好きなせいも大きいと思うんですが...。ここ数年はほとんど観てないんですけど、この「チョコレートコスモス」に登場するあの劇場にも、大学時代によく通ってたし、実際に小劇団の公演のお手伝いをしたこともありますしね。(お手伝いとは言っても、ほんのちょっぴりなんですが) そして私自身は大学時代にバンドを組んでいて、ライブハウスの雰囲気が堪らなく好きだったんですが、ライブハウスと小劇場ってあの空気感が共通してたんだなあって、今頃になって思ったりします。そして、これまた今頃気がついたんですけど、私が読んでいて興奮する本って、そういう空気に通じる作品みたいです。どれだけ臨場感があって、どれだけ鮮やかにその情景が浮かび上がってくるかが、私の中での最重要ポイントみたい。いい作品だとは思っても、映像として鮮やかに浮かんでこない作品って、あまり意識や記憶の中に残らないような気がします。

それにしても、役者さんによって演じられている舞台の場面を文章にして、その臨場感や興奮をダイレクトに読者に伝えるのって、とても難しいんじゃないかと思うのに、この作品からは、本当に鮮やかにその臨場感や興奮が伝わってきました。舞台ものとしては、服部まゆみさんの「ハムレット狂詩曲」以来かも。(これも、繰り返し繰り返し「演じる」場面が描かれる作品なんです) 臨場感が肌に直に伝わってくるし、まるで自分もその芝居の場に居合わせているような感覚。それも観客席から見ているのではなく、同じ舞台に立っているかのような、しかも自分も一緒に「向こう側」へと連れて行かれてしまったかのような...。
登場人物の中では、演劇界のサラブレッドで、天才子役から現在や若手実力派女優となっている東響子がすごくいいです。その力やオーラをひしひしと感じます。彼女に比べると、佐々木飛鳥の造形は一見負けてるようにも見えるんですが、でもそれは、彼女がまだまだ卵の段階だから。殻を破って、自分の力で飛び立った後の飛鳥の姿が無性に見てみたくなってしまいます。それに脚本家の神谷の書く芝居がどんな本になるのか、そしてそれがどんな風に演じられるのか、観てみたくて堪らない!
そしてこの作品は、登場する役者さんや劇団について、「これは... もしかして○○?」と考えながら読むのも楽しいです。(毎日新聞社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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テレビ番組にレギュラー出演し、招霊木(オガタマノキ)を片手に、その卓抜した霊視能力で相手のことを全て見抜いてしまう人気霊媒師・能城あや子。本当は霊視能力などまるでないのですが、何もかも見抜いているかのような発言に人気は急上昇、という連作短編集。
能城あや子は、テレビにもよく登場してるし、書店では著作をよく見かける「あのヒト」(こちらは霊媒というより占い師か)のイメージ。私は、テレビに出ている霊媒師なんて、言っていることがどれだけ当たっていたとしても本物だなんて到底思えないし、ましてや好感を持つことなんて、まずないんですが... でもその認識が、この本を読んでると覆りそうになっちゃう。

表向きには、彼女にはマネージャーが1人いるだけで、テレビの収録の日に出掛けて行って相談者に初めて会い、霊視を行うわけなんですが、実は秘密裏に2人の調査隊がいて、その2人が予め誰が相談者になるのか、どんな相談なのかを探り出し、完璧に調査し推理していくんですね。この過程が、ほとんどミステリの謎解きと一緒なんです。実際には、相談者を尾行したり、その人の家に不法侵入したり、会社のパソコン相手にハッキングをしかけたりと、とてもじゃないけど穏やかとは言えないやり方をしてるんですけど、でもその態度に一本筋が通っているので説得力があるし、あと、このメンバーが「金儲け」から超越してるのがいいのかな... 実際にはかなり儲けてるはずなんですけど、そういう俗っぽい部分が見えてこないんです。なんだか腕のいい職人芸を見せられているような気分。(井上夢人さんご自身が卓越した職人芸を楽しませてくれる作家さんだ!)
やり方はどうであれ、相談者の悩みは解決するし、真犯人は捕まるし、時には監禁されていた人が助け出されることもあるし、どこにも被害者がいないどころか、関係者にとっては能城あや子の霊視はまさに天の声のようなもの。もちろん、能城あや子は絶対にインチキだと決め付けて、カラクリを暴こうとする人間もいるんですけど、スタッフたちの仕事振りは常に完璧を目指していて、敵を欺くには味方から。テレビ局のスタッフのことも調べあげていて、番組に映らない部分でも、こまめに能城あや子に「霊視」させてたりするんですよね。
引き際も鮮やかな、井上夢人さんらしい楽しい作品でした。(集英社)


+既読の井上夢人作品の感想+
「オルファクトグラム」上下 井上夢人
「クリスマスの4人」井上夢人
「the TEAM」井上夢人
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ともっぺさんに、「四季さんのお好きな『鳥類学者のファンタジア』のフォギーが出てますよー!」と教えて頂いて、その後Bryumさんにも「まだ半分くらいなのですが、面白いです!」とオススメされた作品。ともっぺさんたら、最初にお会いした時に、私が「鳥類学者~」を読んでたのを覚えてらっしゃったんですね。素晴らしい~。

内容としては、「日本近代文学者総覧」という書物で無名の作家・溝口俊平について書いた、三流女子短大の国文助教授「桑幸」が、溝口俊平の遺稿が見つかったという編集者からの知らせがきっかけで、騒ぎに巻き込まれていくという話です。

物語は2つの視点から交互に描かれていて、その一方が助教授・桑幸。こちらが伝奇部門。そしてもう一方はジャズ・シンガーのアキとその元夫・諸橋倫敦という元夫婦(めおと)探偵。こちらはミステリ部門。「鳥類学者のファンタジア」の主人公・フォギーは、このアキの友達なんです。まあ、ほんの脇役なんですけど、でもまた再会できるのはやっぱり嬉しい♪
そして桑幸のパートでは、怪しげな新興宗教団体やら、失われた例の大陸やらロンギヌスやらフィボナッチの数列やら、「鳥類学者のファンタジア」でもお馴染みだった、怪しげなモチーフが満載。いやあ、面白い~。マニアックなユーモアもたっぷりだし、「哀しく、切なく、でもほのぼの幸せなき持ちになれる」と世間一般で絶賛される溝口俊平の童話集には、今の本の売れ方読まれ方に対する強烈な皮肉がたっぷり。桑幸本人は、見かけも中身も人並み以下で、本人が不満な割には三流女子短期大学という場所に実に良く似合った俗物。なけなしの見栄を張っているところとか微笑ましくて、お近づきにはなりたくないタイプですけど(笑)、傍から見てる分には結構好きでした。
でも、桑幸のパートの面白さに対して、ミステリパートはちょっと退屈...。ミステリ系叢書からの配本だからミステリ部分に力が入ってるんでしょうけど、元夫婦探偵の視点オンリーの2章では、読んでる途中何度も寝てしまって、もう金輪際読み終えられないかと思いました...。元夫婦探偵もいいんですけど、全体的に桑幸のパートをメインにしてくれたら、もっと面白くなったんじゃないかと思うし、奥泉さん的にも本領発揮だったんじゃないかと思うのに!
とはいえ、2章さえ終わればこっちのもの。(?) 桑幸のパートが再び挿入される3章からは復活、最終章で2つの視点がめまぐるしい移り変わるクライマックスがまた面白かったです。(文藝春秋ミステリ・マスターズ)


+既読の奥泉光作品の感想+
「モーダルな事象」奥泉光
Livreに「葦と百合」「鳥類学者のファンタジア」の感想があります)

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万引き癖がある戸倉美加子、寄り道のための金を得るために級友の体操服を盗んだ辻岡良枝、ボーイフレンドと2人乗りをしていたバイクで事故を起こした西園寺楓。3人とも歴史のある私立の名門高校・明友学園の生徒であり、家庭教師として家に来ていた教師Xに弱みを握られて、学校を退学していました。明友学園に新任教師として赴任した坪井笑子は、おちこぼれ同然の男子クラスの担任として第二職員室に配置されるのですが、女子生徒に声をかけられて同好会の顧問となることに。そしてその面々と共に、第二職員室にいるらしい教師Xを探ることになるのですが...。

青井夏海さんの作品では、「スタジアム虹の事件簿」や助産婦シリーズの、ほのぼの~とした明るい雰囲気の日常ミステリが大好きなんですが、これはサスペンス調のミステリ。随分雰囲気が変わるんですね...。最初に3人の女子高校生の弱みを握る教師Xの場面があるんですけど、この教師Xがあまりに陰湿で、思わず読むのをやめようかと思ったほどでした。あくまでも悪人という犯人像というもいいんですけど、これまでの青井さんの作風を考えると、悪いことはしても憎めないとか、もう少し救いのあるタイプの犯人像だったら良かったのになあ、なんて思ってしまいます。それに主人公の坪井笑子の造形もあまり好みではなく...。特に、高校時代の同級生の男の子(しかも就職で世話になってる人の息子)に対する態度には、うんざり。付き合う気がないんだったら、はっきり意思表示するのが親切ってものでしょうに。なんだか利用できる時だけ利用しててイヤだなあ。
青井夏海さんの作品なら、もっとほのぼの路線のが読みたかったです。(双葉社)


+既読の青井夏海作品の感想+
「そして、今はだれも」青井夏海
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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このお正月は、もっぱら昨年のうちに人様にお借りした本を読んでました。
まず、池波正太郎さんの「剣客商売」。以前若竹七海さんの「閉ざされた夏」で、主人公のお姉さんが池波正太郎作品をバイブルのように読んでいて、作中に登場する食事をしてたのが気になってたんですが、どのシリーズも長いし、なかなか手が出なかったんですよね。でも第16回のたらいまわし「美味しそうな食べ物が出てくる本は?」の時にワルツさんが挙げてらして、決定的に読みたくなっちゃって!(記事はコチラ) そして、私が読みたがってるのを知ったAさんが、全19巻プラス「包丁ごのみ」プラスその他モロモロを送りつけてくださったのでした。ありがとうございます~。予告どおり年越し読書にしてみました。

 「剣客商売」「辻斬り」「陽炎の男」「天魔」池波正太郎(新潮文庫)

テレビの時代劇みたいに完全に一話完結なのかと思ってたら、話同士に意外と繋がりがあるというか広がりがあっていいですねえ。中心人物が少しずつ変化したり成長していくのもいい感じ。まだまだ先は長いので、続きもじっくり読もうと思います。

そしてこちらは菊池秀行ファンのKさんが送りつけてくださった本。(笑)
二度と読むことはないだろうと思っていた清涼院作品まで入ってて圧倒されましたが(いえ、ある意味予想通りでしたけど・笑)、「なんなんだこれは」と思いつつ、案外楽しかったです。♪やらハートマークやらが文章についてるのには相変わらずげんなりなんですが、最初から開き直って読んでたせいでしょうか?(笑) しかし菊池作品を一気に行くのはちとツライみたいです... 「夜叉姫伝」、1巻の途中で止まってます。最後まで読めるかしら。(それにしてもドクター・メフィストが単独で登場してる時は美青年医師として完全にその場を攫っているのに、秋せつらと一緒に登場すると、たちまち怪しげな魔人に見えてしまうのはなぜ) そして「消失」は一番楽しみにしてた作品。以前から色々と噂は聞いてたし、一度読んでみたかったんですよねえ。一応心構えをしながら読んでたんですけど... なんとこういうオチだったんですか! なるほどぉ。いや、これは強烈だわ...。読者を驚かせることに、ひたすら全力を注いだ作品なんですね。(笑)

 「エル-全日本じゃんけんトーナメント」清涼院流水(幻冬舎)
 「魔界医師メフィスト 兄妹鬼」菊池秀行(角川ノベルズ)
 「消失」中西智明(講談社ノベルス)

    

「魔界医師メフィスト 兄妹鬼」と「消失!」は、画像が出ないですね。「エル-全日本じゃんけんトーナメント」は、私がお借りしたのは幻冬舎ノベルスですが、画像とリンクは幻冬舎文庫のものにしています。
本はこのぐらい。あとDVDを2つ観たので、その感想もまた改めてアップしますね。

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新製品企画会議の席で直属の上司相手にトラブルを起こして、総務部のお客様相談室へと左遷された涼平。そこはなんとリストラ要員の強制収容所と呼ばれる場所で、誰もが1ヶ月、長くもっても2ヶ月で辞める場所だというのですが...。

序盤は正直あまり好みじゃないんですが、涼平がお客様相談室に回されてからが面白いです。クレームをつける客たちもすごいんですけど、ここの社員たちも一筋縄ではいかない面々なんですよねえ。最初は苦情の客に謝ることすらできなかった涼平が、ここで揉まれるうちに一皮も二皮も剥けていくところが良かったです。やっぱりクレーム処理は、苦情のお客さんにまず言いたいことを全部吐き出させて、それから謝るのが基本ですね。言うだけ言ったらすっきりする人もいるんだし。なーんてことをちょっと懐かしく思い出したりして。私も、お客様相談室じゃないけど、クレーム処理は結構しましたよー。悪質クレーマーの実態や、そういうのを撃退していくのも痛快でした。やっぱり荻原さんは元々会社勤めをしてた人だし、会社の中の描写はリアルですね。
でも、最近読んだ荻原作品の中では面白い方だったと思うんだけど、やっぱりデビュー当初のインパクトはなくなっちゃってるような気も。「オロロ畑」とか「なかよし小鳩組」とか、もっと夢中になって楽しめたと思ったんだけどな。それとも私の求めるものが変わってきたってだけなのかな?(光文社文庫)


+既読の荻原浩作品の感想+
「誘拐ラプソディー」荻原浩
「母恋旅烏」荻原浩
「神様からのひと言」荻原浩
Livreに「オロロ畑でつかまえて」「なかよし小鳩組」「ハードボイルド・エッグ」の感想があります)

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浅暮三文さん2冊。「石の中の蜘蛛」は日本推理作家協会賞を受賞してる作品らしいんですけど(同時受賞は有栖川有栖さんの「マレー鉄道の謎」)、それよりも「実験小説 ぬ」の方がずっと面白かった! こちらは「実験短編集」「異色掌握集」という2章に分かれていて、全部で26編の短編が収められてます。実験小説というタイトルに相応しく、面白いアイディアがたっぷり。最初の「帽子の男」からして、面白すぎる~。これは普段何気なく見ている交通標識から、「彼」とその家族の人間模様が浮かび上がってくるという物語。時にはページを上下に分割して、その上下でそれぞれの文章が同時進行させてみたり、様々な図を使ってみたり、あるいはまるでゲームブックのようであったりと、見た目にも新鮮。しかも単なる実験的な作品というだけじゃなくて、それぞれ短編として読み応えがあるのがスゴイんです。浅暮さんのアイディアや想像力、表現力は素晴らしい~。さすが「ダブ(エ)ストン街道」を書いた人だけありますね。こういう作品は、好みがはっきり分かれそうな気がしますが、私は大好き♪ (光文社文庫・集英社文庫)


+既読の浅暮三文作品の感想+
「ラストホープ」浅暮三文
「嘘猫」浅暮三文
「実験小説 ぬ」「石の中の蜘蛛」浅暮三文
「夜聖の少年」浅暮三文
Livreに「ダブ(エ)ストン街道」の感想があります)

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