Catégories:“ミステリ”

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光原百合さんの作品2つ。
その日「マノミの木」目当てに茉莉花村にやって来たのは、馬で10日ばかり行った先にある耀海(かぐみ)の若き領主夫妻。奥方の水澄が重い病にかかり、どんな病でも治すマノミにすがるしかないとやって来たのです。しかしマノミは魔の実。マノミ酒を飲んで命が助かれば、その代わりに最愛の人の記憶を失うのです... という「花散る夜に」。(新・本格推理 不可能犯罪の饗宴)
大学を卒業後、地元の尾道に戻った静音は、ひょんなことから神埼零というピアニストのコンサートに行くことに。音楽にはあまり詳しくないながらも鳥肌が立つような感動を覚えた静音は、それ以来、地元で演奏がある時は事務方スタッフとして手伝うようになり、いまや神崎零とも調律師兼マネージャーの木戸柊ともお馴染み。そして今回の演奏会が終わった後、静音は自宅にあるピアノのことを相談します。静音の家のピアノは音が出ないピアノ。相変わらず応接間に置かれているものの、静音の家ではみな諦めていたのです... という「ピアニシモより小さな祈り」。(オール讀物)

「花散る夜に」は、「嘘つき。やさしい嘘十話」に収録されていた「木漏れ陽色の酒」の続編。「最愛の人の記憶を失ってしまう」というのは、やっぱり何度考えてもキツい設定だわーと思いつつ。それだけだと話の範囲がどうしても狭まってしまいそうな気もするんですが、それは素人考えでした。ああ、なんて素敵なエンディング。
淡い金緑色のマノミの酒もなんですが、今回のマノミの花の散る場面の美しいことったら。この花びらの辺りで、ああこの作品はミステリなんだなあ、なんて改めて思ったりしてました。そして、ふと気づいてみれば。今回の領主夫妻の名前は「蒼波」「水澄」、前回は「水際」と「沙斗」。いずれも水に関係する名前なんですね。あの世とこの世の間にいる人々に、マノミの酒が効かなければもう助からない人々に、とても相応しい気がします。

「ピアニシモより小さな祈り」は、大好きな潮の道幻想譚シリーズ。これは尾道の街を舞台にした、ちょっぴり不思議なファンタジー。今回はピアノのお話。読んでいる後ろから、澄んだピアノの音が流れてくるような気がします。音と共に光の波が広がっていき、金色のオーロラに包まれるようなピアノの演奏、私も体験してみたい。でもそんな美しいピアノの音とは対照的な、切なくて哀しくてやるせない想いも存在して。最後の「ピアニシモより小さい音でしかなくとも...」という言葉がすごく良かったです~。そして和尚さんは相変わらずだし、静音は気が強い中に可愛いらしさがあって素敵だし、自分の魅力を知ってる人も、自分の魅力にまるで気づいてない人も、どちらも魅力的でした。私としては... 自分の魅力にまるで気づいてない人の方が好みかも。(笑)


そして光原百合さん情報です。
ギリシャ神話系ファンタジー「イオニアの風」の発売が決定になったそうです。発売日は8月25日。中央公論新社から。光原さんの本は装丁が素敵な本が多いのですが、今回も素敵な本になったそうで~。とっても楽しみ。
それと潮の道幻想譚シリーズは、これで単行本1冊分の短編が出揃って、これから単行本に向けた作業に入るとのこと! 最初の方のお話の記憶が朧になってるので、改めて最初から読み返すのがとても楽しみです。
あと、今刊行中の「詩とファンタジー」に光原百合さんの「夏の終わりのその向こう」が掲載されてるんですけど、それには「星月夜の夢がたり」で挿絵を担当された鯰江光二さんが絵をつけてらっしゃるんですね。その作品は、来年刊行予定の絵本に収録されることになるんだとか。内容は、ギロックの叙情小曲集の全曲をモチーフにしたファンタジーで(絵はもちろん鯰江光二さん)、小原孝さん演奏によるCDも付くんだそうです。光原百合さんは、尾道学園の創立50周年記念で校歌をご一緒に作られた時からの小原孝さんのファン。それ以来、すっかりピアノに開眼されて、小原さんが弾かれるギロックに魅了されて... 今回の「ピアニシモより小さな祈り」も、そうやって書かれることになったのですねえ。
ああ、どれも楽しみー!!(文藝春秋・光文社)


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「ピアニシモより小さな祈り」「花散る夜に」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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七日の間誰も出て来ず、しかも何の応答もなくなった館。大后はたまりかねて白い糸の標を破って踏み込みます。そこにいたのは大王と衣通姫(そとおりひめ)。しかし大王は既に亡くなっていました。大后は衣通姫が大王の命を奪ったのだろうを弾劾するのですが、衣通姫は何とも答えようとせず... という「ささがにの泉」他、全7編。

オムニバス形式の七夕の姫の物語7編。神話の時代の衣通姫は「使い神」に守られた姫。姫の身体には地霊の力が満ち、国つ神の霊力を備えています。そしてその姫による機織は、まさに神事と言えるもの。「秋去衣」の軽大郎女(かるのおおいらつめ)にとっての機織も同様ですね。でも徐々に時代が下がるに従って、社会は変わり、霊力も失われ、機織は日常の仕事となってしまうのです。都ほどではないにせよ、変化に晒されることになるのは泉の地に住む一族も同様。それでもここに登場する姫たちは、みなそれぞれに様々な状況的な制約の中にありつつも、精一杯生きている女性たちなんですが... 「糸織草子」の姫なんて、読んでいて痛々しくなってしまうほどだったなあ...。
この7編の中で私が特に好きなのは、「ささがにの泉」と「朝顔斎王」。「ささがにの泉」は神話時代を感じられる独特の雰囲気が大好き。そして「朝顔斎王」は「源氏物語」の朝顔の斎院と重ね合わせられている、とても可愛らしい作品。

7つの題名は、それぞれに織姫の別名によるもの。(ささがに姫・秋去姫・薫物姫・朝顔姫・梶の葉姫・百子姫・糸織姫) 千街晶之さんの解説によると、折口信夫の論文「水の女」が発想源の1つであることは、ほぼ間違いないだろうとのこと。藤原氏は元々聖なる水を扱う家柄だったという説もあるのだそうです。そちらも読んでみたい! 確かに常に泉の地に住む一族が見え隠れしていますし、例えば「美都波」「瑞葉」「椎葉」「水都刃」...と「みづは」という名前が繰り返し登場するところなんかも暗示的。おそらく他にも様々な暗示的な意味合いが籠められているのでしょうね。そして、そこここに散らばるヒントを元に歴史上の人物のことを推理するのも楽しいところ。私も色々調べまくってしまいました。(その甲斐あって主要人物についてはほぼ全て分かったかな) 日本史に詳しい人ほど、一層楽しめそうです。でもそんなことは考えずに、ただストーリーを追って読んでも、十分ここに流れる空気は堪能できそうです。物語そのものも幻想的な美しさだし、物語の最後にゆかりの和歌が添えられているのも雅な美しさ。とっても味わい深い作品でした。(双葉文庫)


+既読の森谷明子作品の感想+
「れんげ野原のまんなかで」森谷明子
「千年の黙(しじま) 異本源氏物語」森谷明子
「七姫幻想」森谷明子

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女童のあてきがお仕えしているのは、藤原宣孝と結婚して2年目の藤原香子。香子は既に「源氏物語」の執筆に取り掛かっており、作品を読んだ左大臣・藤原道長から、娘の彰子の入内に当たって女房として仕えるよう何度も熱心な誘いがかけられていました。その頃、出産のために宮中を退出する中宮定子に同行した猫が繋いでおいた紐ごと失踪し、大騒ぎとなって... という「上にさぶらふ御猫」、そして失われた1帖の謎を探る「かかやく日の宮」、その後日談となる「雲隠」の3編。

鮎川哲也賞受賞の、森谷明子さんのデビュー作。先日読んだ倉橋由美子さんの「夢の通い路」(感想)にも紫式部や道長が出てきたとこだし、丸谷才一さんの「輝く日の宮」は、この作品と合わせて読んだんですけど、またちょっと源氏物語が自分の中で大きく浮上してきてます。
というこの「千年の黙」は、平安時代を舞台に、繋いでおいた猫が失踪した事件と、「かかやく日の宮」が失われた理由を探るミステリ作品です。探偵役は紫式部。猫の事件の方は日常の謎系なんですが、失われた章の理由を探る「かかやく日の宮」は、立派な新仮説。丸谷才一の「輝く日の宮」で書かれていた解釈ほどの大胆な仮説ではないものの... うーん、比べてしまうとやっぱりちょっぴり小粒かしら。でもこちらはこちらで1つの立派な仮説となっています。なるほどね~。そして「雲隠」の章での、紫式部と道長のやりとりにニヤリとさせられて。
紫式部はもちろんのこと、その夫の藤原宣孝やその上司に当たる藤原道長、道長の娘の彰子中宮といった歴史上の人物も登場するし、阿手木やその夫となる義清、阿手木の親しい友達となる小侍従も賑やかに動き回っていて、こちらは物語として面白かったです。平安時代という舞台の雰囲気が楽しかった~。そして紫式部の「物語を書くこと」に対する思いは、そのまま森谷明子さんの思いでもあるのでしょうね。作者は自分の心を偽らないように書く、しかし一度作者の手を離れてしまえば、それはもう読者に託すしかない... 全編を通して「物語」に関する印象的な台詞が多かったです。例えばこんなの。

「物語というものは、書いた者の手を離れたら、ひとりで歩いていくものです。わたくしのうかがいしれぬところで、どんなふうに読まれてもしかたがない。うっかり筆をすべらせたら、後の世の人がどんなにそしることかと思うと、こわくて身がすくむこともあります」
「そう、むずかしいのね。あたしはそんなことは考えない。後の世のことは、神仏でもない身にはわからないもの。ただね、自分の心はいつわらぬようにしよう。あとは自分に子どもが生まれたら、その子にだけは誇ってもらえるようにしよう、と。そしてほかの人にはどう見られようと、かまわないでいようと」(P.215)

これは入内する前の彰子との会話。こういう言葉って、デビューして色んなところで色々なことを書かれた作家が書きそうなイメージがあるのだけど... 森谷さんはデビュー作で書いていたのですね。(創元推理文庫)


+既読の森谷明子作品の感想+
「れんげ野原のまんなかで」森谷明子
「千年の黙(しじま) 異本源氏物語」森谷明子

+既読の「源氏物語」の感想+
「源氏物語」+「まろ、ん?」小泉吉宏(与謝野晶子訳)
「源氏物語」1・2 円地文子訳
「窯変 源氏物語」1~3 橋本治
「窯変 源氏物語」4~6 橋本治
「窯変 源氏物語」7・8 橋本治
「窯変 源氏物語」9・10 橋本治
「窯変 源氏物語」11・12 橋本治
「窯変 源氏物語」13・14 橋本治

+既読の「源氏物語」関連作品の感想+
「東方綺譚」マルグリット・ユルスナール(雲隠)
「源氏供養」上下 橋本治
「輝く日の宮」丸谷才一
「千年の黙(しじま) 異本源氏物語」森谷明子
「七姫幻想」森谷明子
「紫式部日記 ビギナーズ・クラシックス日本の古典」紫式部・山本淳子編

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サクセス塾の事件から4ヶ月ほど経ち、受験勉強に本腰が入る3学期のある日のこと。謝恩会の実行委員長に任命されたレーチは謝恩会の会場探し中。無料で使えて多少の騒いでも大丈夫だという場所がなかなか見つからないのです。そんな時、2年の片桐弟が提案したのは、3学期が終われば取り壊される予定の旧校舎。取り壊されるのが決まっているだけにドンチャン騒ぎには最適なのではないかという話に、レーチはすっかりその気になり、亜衣・真衣・美衣と共に旧校舎へ。しかしその旧校舎には、40年前に「夢見」によって「夢喰い」が封印された開かずの教室があるのです...。

夢水清志郎シリーズ最終巻。15年書き続けたというこのシリーズも亜衣たちの中学卒業と同時にシリーズからも卒業となります。
卒業というのは、それぞれがそれぞれの選択をしなければならない時期。その選択が正しかったかどうかはすぐには分からないし、長い人生の中で、あの時選択を間違た、と思うこともあるのかも。でもその時その時で自分のできる精一杯の選択をしていれば、後悔することはないですよね。亜衣も真衣も美衣もレーチも、自分自身で決めた道を進んでいくからこそ、これから先、後悔なんかしないで真っ直ぐ進んでいけるのではないかと思います。そして今回、印象に残る言葉が色々とあったんですけど、一番印象に残ったのは亜衣と出版社の人の会話の場面。なんだかぐっときちゃいました。ほんとその通りだわ~。
謎解き部分は正直物足りなかったんですけど、シリーズ最終巻に相応しい素敵な物語。楽しいシリーズ物はいつまでも続いて欲しいと思ったりもするものですが、こういう風にきちんと区切りがついてみると、卒業するというのもいいものだなと思いますね。(実は「ハワイ幽霊城の謎」だけ未読なんだけど... 読まなくちゃ!)(講談社青い鳥文庫)


+シリーズ既刊の感想+
ブログにはこれ以前のシリーズ作品の感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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日限の親分が若だんなのところへ。最近通町で横行している質の悪い掏摸は、おそらく打物屋の老舗の大店の次男坊が飴売りの女の共謀。しかし肝心の証拠がまるでなく、親分は困り果てていました... という「いっちばん」他、全5編の連作短編集。

しゃばけシリーズの第7弾。「ひなのちよがみ」だけは雑誌掲載時に既読。
相変わらずのしゃばけワールドで、若だんなだけでなく妖たちも相変わらず。このシリーズはマンネリになろうが何しようがこのまま頑張って欲しいなと思う気持ちと、でもそろそろ狐者異を再登場させてみても面白いんじゃ?という気持ちと半分半分なんですよね。まあ、もし畠中恵さんがそろそろ終わりにしたいと思ったとしても、まあ出版社が止めさせてくれないでしょうけど。
今回は妖たちが勢ぞろいする「いっちばん」が楽しかった! みんな若だんなを喜ばせようと頑張るんですけど、なかなか上手くいかないまま最後になだれ込んで、気がついたら事件もすっかり解決してマシタ! というこの構成が素敵。そして「餡子は甘いか」では、相変わらず菓子作りが下手な栄吉が頑張っている様子が見られて、こちらもいいですねえ。器用貧乏な人よりも、栄吉みたいなタイプの方が一度コツを掴んだら安定度はずっと高いはずだし、これからも負けずに頑張って欲しいな。(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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千蔭お駒が妊娠。つわりが酷く何も食べられないお駒のために、千蔭と八十吉は巴之丞の元へ。お駒の母・佐枝が、お駒は珍しいものの方が喜んで口にするかもしれないと言い、珍しいものなら巴之丞が詳しいと考えたのです。巴之丞のおすすめは、乃の字屋の猪鍋。最近江戸で流行っており、店の外まで行列ができるほどだというのですが... という「猪鍋」他、全3編

猿若町捕物帳第4弾。いやあ、面白かった。このシリーズ、最初はちょっと地味かなと思っていたのですが、進むにつれてどんどん面白くなりますね! 今回の注目は「おろく」。彼女がいい味を出してるんですよねえ。そしてもしやこのままいっちゃうの...? と思いきや、千蔭がまたかっこいいところを見せてくれるし。ま、人が良いにもほどがあるって感じもしますが。梅ヶ枝も巴之丞も元気です。今回、梅ヶ枝がなんだか可愛らしかったなあ。

それにしても日本人作家さんの本を読むのはほんと久しぶり。先月の仁木英之さん「薄妃の恋 僕僕先生」以来かな? 最近は翻訳物オンリーでいきたいぐらい、翻訳物に気持ちが向いてしまってるんですが、近藤史恵さんはやっぱり大好き。特に好きなのは、どうしてもデビュー作の「凍える島」とか「ガーデン」「スタバトマーテル」「ねむりねずみ」「アンハッピードッグス」といった初期の作品なんだけど... いや、「サクリファイス」も久々に「キター!!」って感じだったんですが(笑)、でもこういうのもいいなあ。可愛いとか美味しいのもいいんですけどね。そういうのは読んでてすごく楽しいんだけど、近藤史恵さんらしさが少し薄めのように感じられてしまうんですよね。このシリーズは、私の中では既にそちらよりも上になってきてます。我ながらちょっとびっくりですが。(光文社)

+シリーズ既刊の感想+
「巴之丞鹿の子」「ほおずき地獄」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「にわか大根」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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夏休み。サークルの会合まで時間があいていた結城理久彦は、コンビニでアルバイト情報誌を見ることに。女にもてるためには車が欲しいと考えていたのです。そこで出会ったのは、結城とは明らかに違う世界に住んでいると思われる上品な女性・須和名翔子。須和名もまたアルバイトを探していました。2人で短期アルバイトのページを繰るうちに、どう考えても誤植としか思えないような条件を提示しているアルバイトを見つけることになります。ある人文科学的な実験の被験者として7日間隔離され拘束されるだけで、時給11万2000円をもらえるというのです。

いやあ、久しぶりにベタなほどミステリらしいミステリを読みました。舞台は「暗鬼館」だなんていかにもなネーミングのクローズドサークル。その見取り図もいかにもな作りだし! そこここに思わせぶりな趣向が凝らされてるし、ネイティブアメリカンの人形が12体用意されてるこのが「そして誰もいなくなった」的展開を予想させます。副題が「THE INCITE MILL」なんてなってるところは森博嗣作品みたいだけど、登場人物が妙な実験に「INしてみる」とも読めるし、古今東西のミステリに淫してきたミステリ好きが、思いっきり自分好みのミステリ的舞台と自分好みのミステリを作り上げることに淫してみたって感じにも取れますね。そして、せっかくだからそういうお遊びに読者も「淫してみる」?といったところでしょうか。(笑)
時給11万2000円って、なんて半端な... と思いましたが、そういうことだったのね。その辺りまでわざとらしくて、それが逆に可笑しい。しかも終盤のあの役割反転。これは予想してなかったのでびっくりです。ミステリ好きさんなら、色んなところでニンマリできそうですよー。(文芸春秋)


+既読の米澤穂信作品の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「犬はどこだ」米澤穂信
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」の感想があります)

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明治31年(1898年)。仏典の研究のために清国へと渡った能海寛(のうみゆたか)は漢口の街に到着。準備を整え人夫を雇って出発した能海に接近してきたのは、英国商社のジャーデン・マセソン社のトーマス・ヤンセン。あくまでも日本の仏教を立て直すために原典を求め、そのために東本願寺法主からダライ・ラマ13世への親書を携えて拉薩を目指しているつもりの能海でしたが、外の人間たちからは、彼は日本政府の意を受けて西蔵を目指す密使だと見られていたのです。能海は知らないうちに、「グレートゲーム」に巻き込まれていくことに。

日清戦争と日露戦争の間の時期を背景に、清や西蔵(チベット)、そしてそれらの国々を巡るを各国の思惑を描いた骨太な歴史ミステリ。能海寛はもちろんのこと、河口彗海や寺本婉雅、成田安輝など実在の人物たちが登場します。
能海が本人も知らないうちに歴史の一駒にされていたという設定はとても面白かったし、チベットのラサへと向かう厳しい道のりもとても迫力があって、英国のジャーデン・マセソン社のエージェントの介入、能海を助ける山の民や清国人たちとのやり取りもなかなか良かったんですけど、これだけのことを描きあげるには枚数が足りなかったのではないかしら? このページ数にしてはかなりよく描き込まれてると思うし、能海もなかなかいい感じなんですけど、全体から眺めた時にどこか物足りないものがありました。最後も、ある程度は歴史物の宿命とはいえ、後味があまりにも良くないですしね... なんでこんな幕引きにしちゃったのかしら。このラストで作品全体の印象も変わってしまうんだけどなあ... ここまできちんと作り込んできてるのに、なぜ?(小学館文庫)


+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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長屋に女の幽霊が出ると聞いた岡っ引の長次は、下っ引きの宇多に調べるように言いつけます。その幽霊は近頃息子と娘を失ったばかりの大和屋由紀兵衛の持つ長屋に出るのだというのですが... という「恋はしがち」以下、全6編の連作短編集。

9人の幼馴染たちの物語。下っ引きの宇多、岡っ引きの長治の娘のお絹、大和屋由紀兵衛の息子・千之助とその妹・於ふじ、大工の棟梁の娘のお染、野菜のぼて振りの弥太、叔父の口入屋の手代をしている重松、茶屋の看板娘のおまつ、裕福な煙管屋の娘・お品。この話が始まる時点で千之助と於ふじは既に亡くなってしまっていて、大きな流れとしてはこの2人の亡くなった事件のミステリですが、むしろ青春小説といった感じでしょうか。

小さい頃は男女の区別もなく毎日のように遊び回っていた9人も、今やもうお年頃。それぞれの生活が忙しくてなかなか会えなくなるし、お互いを男や女として意識するようにもなります。そこで上手く「思い思われ」になればいいんですけど、9人ですしね。なかなか上手くいかなさそうだなという予想通り、実際それぞれの思いはすれ違い... そうこうしてるうちに仲間を失ってしまったり。
大人になるってこういうことなのよね、なーんて切ない感じが前面に出てるのはいいんですけど... やっぱり9人というのは多すぎやしませんかねえ。せいぜい7人なんじゃ? 区別がつかなくて困るってほどではなかったんですけど、それほど9人の描き分けができているとは思えなかったし、逆にそれぞれのイヤな面は目についてしまったりで、感情移入できるような人物はいなかったな。せっかくなのにあまり楽しめず、ちょっと残念でした。(光文社)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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ぱっとしない私立大学の文学部に入学したせいで、上京するなり叔母の経営する銀座の文壇バー・ミューズでバイトをすることになった了。その店はミステリー作家の辻堂珊瑚朗が贔屓にしている店。辻堂は来店するなり、店には新しい男性スタッフが増え、しかもその男性が叔母とかなり親しい仲だということを看破します。

竹内真さんとしてはとても珍しいミステリ作品。語り手は了という大学生の青年なんですが、中心となっているのはミステリ作家の辻堂珊瑚朗。彼が安楽椅子探偵のように様々な謎を解き明かしていく連作短編集です。
最初の謎を解く辺りがまるでシャーロック・ホームズのようで(見ただけで相手の職業を言い当ててしまうのは「赤毛連盟」でしたっけ?)おおっと思ったんですが、そういう路線の作品でもなかったようです。謎解きは色々あるんだけど、謎解きそのものを楽しむというより、辻堂珊瑚朗が出してくる回答によって辻堂自身の粋さを感じさせるのが一番なのかな? 必ずしも真実ではなくても、その場に相応しい回答を相応しい形で用意するというのが肝心みたい。それは相手によって自分を演じ分けてしまうという辻堂自身のようでもあるし、銀座のバーという夜の世界一流の嗜みでもあるような。

竹内真さんといえば爽やかな青春物。ジャンルがミステリに変わっても、竹内真さんの持ち味は変わらないのではないかと思ったんですが... 夜の銀座を舞台にしてるということは、もしかしたらそういうイメージからの脱却を目指してらっしゃるのでしょうかー。これはこれで楽しめる作品だとは思うんですけど、もう少し竹内真さんらしさが欲しかった気も...。まあ、文壇バーが舞台となっていることもあって、登場する作家たちは誰がモデル?という楽しみはあるんですけどね。最後に登場する甲賀という作家は、もしや竹内真さんご自身? となると、いずれ「安楽椅子探偵」という言葉の定義と矛盾するような安楽椅子探偵物の長編が読める日も来るのでしょうか。(笑)(東京創元社)


+既読の竹内真作品の感想+
「図書館の水脈」竹内真
「真夏の島の夢」竹内真
「じーさん武勇伝」竹内真
「自転車少年記」竹内真
「笑うカドには お笑い巡礼マルコポーロ」竹内真
「オアシス」竹内真
「ワンダー・ドッグ」竹内真
「ビールボーイズ」竹内真
「シチュエーションパズルの攻防」竹内真
Livreに「粗忽拳銃」「カレーライフ」「風に桜の舞う道で」の感想があります)

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30代後半、ほぼ同年代に見える喪服を着た男女が5人。彼らは高校の同級生で映研の仲間。かつては気の置けない仲間として付き合っていた彼らも、実際に会うのはとても久しぶり。映画監督デビューを果たしたタカハシユウコの呼びかけで、エキストラとして出演するために集まったのです。その日は、奇しくもかつての同級生・オギワラの葬式があった日。それぞれの近況やかつての同級生の噂から、殺されたオギワラの捜査のために葬式には警察も来ていたという話になり、高校の学園祭の直前に消えたフィルムの話や食中毒事件の話も飛び出して、徐々に不穏な空気が漂いはじめます。

演劇集団キャラメルボックスのために書き下ろしたという初の戯曲作品。少人数の密室劇で心理サスペンス物がやりたいという劇団側の最初の希望通り、登場人物は5人だけで、場面もそのままの1幕物。
話が進むにつれてそれぞれの抱えている事情は徐々に明らかになっていくんですけど、相手が今どんな状況にあってどんなことを思ってるのか、最初は分からないんですよね。まずは腹の探りあい。なんでこの人はこんなに疑い深いんだろう... なんて人もいたりして。それも彼の今いる状況のせいなんですが、その疑い深い言葉に背中を押されるようにして他の4人も徐々に疑心暗鬼になっていきます。そして場がどんどん緊迫していく様子にどきどき。
とは言っても、最終的には肝心な部分が分からないまま終わってしまうのが恩田さんらしいですが...(笑)
劇団側からの「直してほしい・解決してほしい点のリスト」を全て解決したせいで恩田色が薄くなってしまったという意見もあったようなんですが、そうなのかな? それでも私にはすごく面白かった! 初の戯曲作品ということで色々戸惑った部分もあったようですが、そんな裏事情が分かる「『猫と針』日記」その他もすごく面白かったです。「違う。違うわ。台詞の重みが、存在感が、全然違うっ。」

最後に「猫と針」という題名について。

かつてボリス・ヴィアンという人がいて、『北京の秋』という本を書いた。人に「なぜ『北京の秋』というタイトルなのか」と聞かれ、「北京にも秋にも関係があい。だから『北京の秋』だ」と答えたそうである。『猫と針』は、猫は若干関係があると思うけれど、針が関係あるのかどうかはまだ分からない。

要するにあんまり関係ないということですね。(笑)
ボリス・ヴィアンの全集の中で次に読む予定なのが「北京の秋」。ああ、読まなくちゃな。もうちょっと涼しくなったら、ちゃんと「秋」になったら読もうっと。(だから「秋」には全然関係ないって言ってるのに!)(新潮社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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新姚県の知事が難癖をつけては罪もない士人を捕縛して牢に押し込めたがるというという噂が朝廷に届き、越州へと向かった巡按御史一行。そして新姚県に入って早くも3日目で、希舜と伯淵は宿に踏み込んできた羅卒によって政庁へと引き立てられてしまいます...という「黄鶏帖の名跡」他、全5編。

「十八面の骰子」に続く巡按御史のシリーズ第2弾。少年のような見かけながらも実は25歳の巡按御史・趙希舜、長身に美声ながらも拳法の達人でもある希舜の弟分・傅伯淵、希舜の父に用心棒として雇われた賈由育、そして伯淵に惚れて女細作として同行するようになった燕児の4人組が活躍する連作短編集です。ええと、巡按御史というのは、天子直属の監察官。身分を隠して任地へ赴き、秘密裏のうちに地方役人の不正の有無を吟味する役目。身分を証明するためには「先斬後奏」「勢剣」「金牌」という3つの品を常に携行しています。
要するに水戸黄門的勧善懲悪物なんですが(笑)、中華ミステリの森福都さんらしく、「蓬草塩の塑像」ではアリバイトリック、「肉屏風の密室」では文字通り密室トリックといったように、ミステリ的にも十分楽しめるのがポイント。一行がどこに行っても温信純という男の存在が不気味に見え隠れして、女流賊・行雲とその手下2人も事あるごとに現れます。それに希舜がなぜ巡按御史になりたいと思ったのか、どんな出来事があったのか、という前作を読んだ時に知りたいと思っていたこともぽつぽつと語られるので、前作「十八面の骰子」を読んでおいた方が断然楽しめるでしょうね。と言ってる私自身が「十八面の骰子」の細かい部分をすっかり忘れていたりするんですが... 文庫が出たら買うつもりにしていたのに、すっかり抜けてたみたい。チェックできませんー。(それにしても文庫本の表紙の雰囲気が単行本と全然違うのにはびっくり。なんと宇野亜喜良さんでしたか。)
悪役との決着もまだついてないし、5編目「楽遊原の剛風」のラストは、いかにも続きがありそうな終わり方。続編にも期待です。(光文社)


+シリーズ既刊の感想+
「十八面の骰子」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「肉屏風の密室」森福都

+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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口能登の旧家の屋敷を借りて個展を開いていた関屋次郎。関屋は椿をモチーフにした絵を専門に描いている画家。しかし「椿なら関屋次郎」という評判で人気が高く、熱狂的な蒐集者がいるにも関わらず、関屋は苛立っていました...という「八百比丘尼」他、全4編の連作短編集。

風待屋のsa-ki さんに教えてもらったんですけど、いやあ、これが面白かった。服部真澄さんといえば国際謀略小説専門の方かと思ってたんですけど、こんな作品も書いてらしたんですねー。雰囲気の違いにびっくり。
物語の中心となっているのは、一流のアーティストや料理人、茶人たちに頼りにされる「平成の魯山人」佛々堂先生。普段はくたくたのシャツに作業用のズボンのような服装で、古いワンボックス・カーに様々な荷物をところ狭しと積み込んで日本各地を移動してるんですけど、2~3分もあればそんな小汚い服装から小粋に着物を着こなした旦那に化けちゃう。それにどんなに多忙でも携帯電話やファックスといったものは使わず、佛々堂先生からの連絡は墨でさらさらと書きつけた巻紙。
この佛々堂先生がほんと洒脱なんですよね。魯山人といえば、私にとってはどうも漫画「美味しんぼ」の海原雄山のイメージで...^^; いかにも偉そう~な上から目線の人間をイメージしてしまうんですけど、この佛々堂先生は人懐こくて、たとえ我侭を言っても憎めない存在なんです。本人もとっても世話好きですしね。伸び悩んでいる作家がいれば助けの手を差し伸べるし... しかも本人にはそうと悟らせないその差し伸べ方の粋なこと。一流の骨董や書画を扱う小説といえば、北森鴻さんの冬狐堂シリーズが真っ先に思い浮かぶんですけど、こちらはもっと肩の力が抜けた感じ。冬狐堂シリーズも面白いんですけどね。むしろ「孔雀狂想曲」の方が近いかも? あんな風にミステリ的な事件が起こることはありませんが。それに金儲けが絡んでギラギラ、人間関係がドロドロ、っていうのがないのがいいんですよねえ。それでいて、さらっと深いものを教えてくれる面もあったりして。
春の椿、夏の蛤、秋の七草、松茸と季節折々の風物も織り交ぜて、とても風流で味わい深い作品となっていました。このシリーズいいなあ。謀略小説よりずっと好みかも♪(講談社文庫)


+既読の服部真澄作品の感想+
「鷲の驕り」服部真澄
「清談 佛々堂先生」服部真澄
Livreに「龍の契り」の感想があります)

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三舟シェフと志村さんが珍しく喧嘩... その原因は、三舟シェフがついつい餌付けしてしまった黒い痩せた猫でした。責任を取ってその猫を飼うようにと志村さんに言われた三舟シェフは、お店に貼り紙をして、早急に猫の貰い手を捜すことになります... という「錆びないスキレット」他、全7編の短編集。

「タルト・タタンの夢」に続く、ビストロ・パ・マルのシリーズです。
相変わらずお料理が美味しそう~。それにパ・マルの雰囲気も相変わらずいい感じです。無口で無愛想だけど絶品の料理を作る三舟シェフ、シェフとして十分一人立ちできる実力があるのに、敢えて三舟シェフの下で働くことを選んでいる志村さん、そしてソムリエの金子さんにギャルソンの高築くん。「タルト・タタンの夢」を読んでから1年も経ってないのに、ようやく懐かしい面々に会えた~という感じ。
今回は三舟シェフがパ・マルを開店する前、フランスにいた頃のエピソードも2つあって、その中にヴァン・ショーを作るきっかけとなった出来事も語られるのが嬉しい♪ 前回のように、毎回謎解きの後にヴァン・ショー... にならなかったのは、表題作「ヴァン・ショーをあなたに」を際立たせるためだったのかな? 今回は謎解きとしては少し小粒な感じだったし、ヴァン・ショーがあんまり登場しなかったのも寂しかったんですが、その分三舟シェフの素顔を見せてくれていたので、物足りなさは感じなかったです。
今回特に気に入ったのは、「ブーランジュリーのメロンパン」と「ヴァン・ショーをあなたに」の2編。どちらも家族の絆を感じさせる暖かい作品でした。あと印象に残ったのは、「錆びないスキレット」での志村さんの台詞。「猫に餌をやるということは、そういうことです。その猫に責任ができるのです。だから、シェフ、きちんと責任を取ってください」 ...南方署強行犯係のシリーズを思い出しますね。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「窓の下には」の感想)
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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夏休みの最後の3週間を、父と2人で海のそばの小さな町で家を借りて過ごすことになったと聞かされて驚くカズヤ。母がその間ずっと遠くで仕事なので、2人で東京にいても仕方がないというのです。カズヤは小学5年生。父は小説家で、母はデザイナー。そしてたどり着いた海辺の町は、海水浴場などではなく、小さな漁港があるだけの町。カズヤは早速、同じ小学5年生でミステリー好きのミツルと話すようになります。そのミツルがしてくれた秘密の話は、この町に住んでいた佐多緑子という大金持ちの老婦人の遺産にまつわる謎の話。彼女は亡くなる4日前に全財産を銀行からおろし、亡くなるまで一度も外出せず、訪ねてきた客もいなかったというのに、死後、そのお金は屋敷のどこにもなかったというのです。2人は早速佐多緑子の遺産はどこに消えたのか考え始めます。

ポプラ社にTEEN'S ENTERTAINMENTというYA向けのシリーズが出来ていたようですね。これはその第一回配本作品。
題名の「フリッツと満月の夜」の「フリッツ」は、表紙の絵にも描かれている猫のこと。満月の夜に一体何があるのかな~?なんて思って読んでいたんですけど... いや、確かにフリッツも満月の夜も一応重要ではあるんですけど... あんまり話の中心というわけではなかったんですね。むしろカズヤとミツルのひと夏の冒険物語という感じ。もしかして、元々はきっともうちょっと違う話になるはずだった? 書き直してるうちに路線が違う方向にズレちゃったの? って思っちゃう。このフリッツの存在こそが松尾さんらしいところになるはずだったんでしょうに、この程度じゃああんまり必然性が感じられない... せめてもう少し早く物語の前面に出てきていれば。
うーん、ダビデの星の使い方は面白かったんですけどねえ。私にはどうも全体的に物足りなかったです。残念(ポプラ社)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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信乃にアルバイトの話を持ってきたのは、継父の「村尾さん」。取引先の社長に、ある10歳のお嬢様が女子高校生限定の家庭教師を探しているという話を聞いてきたのです。無事にその子の家庭教師になれた時の謝礼は、かなりの高額。しかしお嬢様はなかなか気難しいらしく、これまで面接を受けに別荘まで行った高校生のほとんどが、その日のうちに帰されてしまっているというのです。信乃は再婚したての両親を2人きりにさせてあげる意味もあって、面接を受けに行くことを決めます。そして翌日早速その少女、阿久根芽理沙に会いに行くことに。

普通なら、我侭なお嬢様の家庭教師になった女子高生が別荘地で連続殺人事件に巻き込まれて... というミステリになるはずのところなんですけど、この作品を書いてるのは松尾由美さん。そんな一筋縄でいくはずがありません。なんせ人くい鬼モーリスが殺人事件に絡んできちゃうんですから。
この「人くい鬼モーリス」は、実際には何なのかははっきりと分からないものの、この土地が別荘地になる前、普通の村だった頃は時々目撃されていた存在。芽理沙のお祖父さんもお母さんも、子供の頃に何度も見ています。お祖父さんの観察ノートによると、モーリスは自ら人を殺すことはしないものの、新鮮な人間の死体が大好物。死体を前にお祈りでも捧げるように頭を少し垂れていると、死体が光を放ち始め、数秒で死体が消えてなくなってしまうといいます。お祖父さんの考えでは、モーリスが食べてるのは生物の残留思念で、死体が消えてなくなるのは、その副作用のようなもの。そして最大のポイントは、モーリスを見ることができるのは高校生ぐらいまでの子供だけだということ。
この別荘地で起きる殺人事件では、いずれも死体が消滅してしまいます。読者や主人公たちにすれば、モーリスが食べてしまったんだろうというところなんですが、実際に推理する大人たちはそんな存在自体全然知らないし、人くい鬼の噂を聞いたとしても信じられるわけもなく...。そもそも死体と一緒に犯人の手がかりとなりそうなものも消えてしまってるだけでも問題なのに、死体を移動させられる腕力というのが犯人の条件になってしまうんだからヤヤコシイ。

読んでいても、モーリスの姿があまり鮮明に浮かんでこなかったのがちょっと残念でした。この作品は、ある怪獣のお話のオマージュになってるので、それが分かればそちらの絵が出てくるんですけど、最初はそんなこと分からないですしね。それに終盤、ちょっと唐突だなーとか、ツメが甘いなーと思ってしまう部分も... 本当ならもっと強烈に面白い作品になったんじゃないかって思ってしまうー。それでもモーリスの存在というファンタジックな存在が現実的なミステリと上手く絡み合っていて、これはこれでなかなか面白かったです。(理論社)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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南アルプスの小さな山村にある火村家から「御守り様」の調査依頼があり、内藤三國と佐竹由美子は早速火村家へ。しかし正式な調査依頼だったにも関わらず、調査に関する当主とその家族の意見は真っ二つに割れており、しかもその晩、その人形が土蔵から消えうせて... という「憑代忌(よりしろき)」他、全4編。

蓮丈那智フィールドファイルのシリーズ第3弾。
相変わらず、民俗学的な謎と現実での事件の連携がお見事。シリーズも3作目ともなると、新たなネタを見つけるのが大変なんじゃないかと考えてしまうんですけど、相変わらずレベルの高い作品群。さすがですね。しかも長編でも書けそうな話を短編で発表し続けてるわけで...。基本的には、相変わらず三國が那智に振り回されるというパターンなんですが、前作で初登場した佐竹由美子もすっかりこのシリーズに馴染んでいるようだし、狐目の教務課主任もどうやらレギュラー入りしそうな活躍ぶり。この狐目の主任、いいですねえ。今後の活躍がとても楽しみ♪
表題作では、冬狐堂こと宇佐見陶子も登場。初めてこのシリーズを読んだ時は、那智がどうしても生身の人間に思えなかったこともあって(笑)、冬狐堂シリーズの方が人間味があって好きだったんですが、あちらはあまりに闇が深すぎて、最近は読んでるとちょっとツラいものが...。こっちのシリーズの方が読んでいて楽しいかも。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「凶笑面」「触身仏」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「写楽・考」北森鴻

+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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神山高校に入学して1ヶ月。まるで進まない「入学一ヶ月の実態と今後の抱負」という作文を前に、折木奉太郎が福部里志から学校の怪しい噂を聞かされることになる「やるべきことなら手短」他、全7編の短編集。

古典部シリーズ4作目は、シリーズ初の短編集。ホータローたちの高校入学1ヵ月後の話から始まるので驚いたんですが、7編が2年生目前の春休みまでの時系列順に並んでました。今までの3作の合間合間を埋める作品の集まりとなってるんですねえ。
どの作品も、中心になっているのはホータローと千反田える。7編の中でちょっとおおっと思ったのは、「心あたりのある者は」ですね、やっぱり。これはハリイ・ケメルマンの名作「九マイルは遠すぎる」の古典部版。本家の「九マイル」ほどの迫力はないと思うし(あれは衝撃的でした...!)、本当にそれが正解なの?なんて思っちゃったりもするんですけど、ホータローの謎解きとしてはぴったりだし、ものすごく古典部らしさが出てるような~。そして最後の「遠まわりする雛」のラストでは、思いがけない余韻が! 今まで千反田えるといえば、「私、気になります」の一言でホータローを行動に移させる役割に徹していたように思うんですが、今後はその存在も少しずつ変化していくかも? 楽しみです。(角川書店)


+シリーズ既刊の感想+
「氷菓」「愚者のエンドロール」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信

+既読の米澤穂信作品の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「犬はどこだ」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「さよなら妖精」の感想があります)

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夜中の火事で、仁吉と佐助に起こされた若だんな。しかし中庭に向いた離れの板戸を開けた途端に煙を吸いこんでしまった若だんなは、気づくと賽の河原にいたのです... という「鬼と小鬼」他、全5編の連作短編集。

しゃばけシリーズの第6弾。
今回、いきなり若だんなが三途の川のほとりに行ってしまってびっくり~。でも他の短編も「死」や「別れ」を強く意識させられる作品ばかりでした。特に最初の「小鬼」と最後の「はるがいくよ」。
この「はるがいくよ」が余韻が残る作品でいいですねえ。生まれたその日から病弱で、いつまで命が持つのか分からない若だんな。たとえ若だんなが病で亡くなることがなかったとしても、人としてせいぜい数十年を生きるのみ。後に残される妖たちは、その後も長い年月を生きることになるんですが、普段自分があんまり「死」の近くにいるから、若だんなはそんな当たり前のことを実感として知ることはなかったんですね。自分が置いていかれる身になって初めて、そのことに改めて気づかされることになるわけです。小紅の存在が切ないながらも、とても健気で可愛らしい~。(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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何年も一緒に暮らしてきたのに、そのあくる日から別々の生活へと踏み出すことになっているヒロとアキ。最後の晩、荷物もすっかり運び出してがらんとした部屋の中で、買ってきた酒と惣菜を片手に話し始める2人。とりとめもない話題に始まった会話は、やがては1年前の夏の旅行の話へ。その旅行が2人の別離の決定的なきっかけとなったのです。彼を殺したのは、やはり彼(彼女)だったのか? 夜明けまでに相手に白状させることはできるのか?

場所は何もない部屋の中、一組の男女の一夜の会話だけで物語が進行。なんだか舞台の芝居を見ているみたいな作品でした。というかこれ、舞台で演じられているところが、読みながらまさに想像できるんですけど... 既にどこかやろうとしてる劇団があったりして。(笑)
何も事前知識がないまま読み始めたんですが、思いっきりミステリだったんですね。なんとなくびっくり。2人のことはなかなか明らかにされなくて謎だらけだし、ふと思い出した情景がまた新たな謎を呼んで、それまで真実だと思っていたこととはまた全然違う新しい真実が見えてくるんです。今まで確かに見えていたはずのものが、一瞬のちにはまるで違う表情を見せて、まるで万華鏡みたい。もちろん、それに連れて2人の間の緊迫感も刻々と変化。これは真実が何なのかということを突き詰めるというよりも、このくるくると変わる表情を楽しむ作品なんでしょうね。川の表面で光る木洩れ日の中にちらちらと見えているのは、本当に魚...?
いやあ、こういうの久々に読んだなって感じ。楽しかったです。(中央公論新社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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高校2年生の春休みの京都旅行の時に急行列車の中で出会って親しくなり、しかしその後亡くなってしまった阪井京子。その京子のご両親から久しぶりに家に招かれた「わたし」は、かつて京子にもらったそばちょこに梅酒ゼリーを作って持っていくのですが... という「のぞき梅」他、全11編の短編集。

単行本未収録の作品から、ホラー風味の強い11編選んで収めたという短編集。若竹七海さんお得意の、人間の悪意がじわじわ~っと染み込んでくるような怖さや、漠然とした不安からくる怖さ、超常現象や怪奇現象的な怖さ、怪談的な怖さなど、一言でホラーとは言っても怖さは様々。でも読んでいて、それぞれの作品がばらばらに発表されたとは思えないほど、各短編同士に繋がりや流れがあるのにはびっくりでした。特に途中の何編かは、短編のポイントとなる言葉が次の短編に引き継がれていて、そういった意味でもぎょっとさせられたし...。短編集を組む時に、その辺りの配列にも十分気を配られたんでしょうねー。
それぞれに面白かったんだけど、これで私が短編が苦手でなければもっと楽しめたでしょうに勿体ないなー、と思ってしまいました... 11編もあると集中力を持続させるのが大変なんです。連作短編集なら、準長編みたいなものだから大丈夫なんですけどね。
それでも一番印象に残ったのは表題作の「バベル島」かな。これはイギリスのウェールズ北西部のバベル塔で起きた惨劇の話。そこでボランティアの一員として働きながらも、からくも日本に生還した高畑一樹と、200年前にそこを訪れていた曽祖父・葉村寅吉、それぞれの日記から話が進んでいきます。舞台といい雰囲気といい何と言い、かなり好み。あ、葉村寅吉ってことは、葉村晶の曽祖父... だったりするのかな。やっぱり。(光文社文庫)


+既読の若竹七海作品の感想+
「猫島ハウスの騒動」若竹七海
「親切なおばけ」若竹七海・杉田比呂美
「バベル島」若竹七海
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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富貴庵の店主・芦辺が陶子に語ったのは、同じ人形が10ヶ月のうちに3度も店に戻ってきたという話。昭和を代表する人形作家・北崎濤声の正真物で、しかも素晴らしい出来の人形だというのですが... という「倣雛心中」他、全4編。

冬狐堂のシリーズ第4弾。このシリーズを読むのも久々です。以前から、魑魅魍魎が跋扈するような古美術・骨董業界の話が面白くも、あまりに救いがなくて、読んでいるとちょっと息苦しくなってしまうようなところがあったんですが、今回もそうでした。相変わらず傷だらけになりながらも、女1人この世界で生き抜いていこうとする陶子の姿が痛々しい...。自分目当ての罠だと分かっていても、毅然とした一歩を踏み出すような女性だし、そんなところが彼女の魅力なんですけどね。
業界内の悪意以外にも、何も知らずに見れば見事な品物が、思いがけない業を潜めていることもあります。大切にされてきた素性の良い品物ならともかく、ここに登場するのは作り手や代々の持ち主のどろどろとした負の思いを引き継いでいそうな品物ばかり。もうほんと、見事に上っ面だけが綺麗な世界ですね。同じように古い品物を扱っていても、先日読んだ畠中恵さんの「つくもがみ貸します」(感想)とは、全然雰囲気が違うなー。
今回は、陶子の旗師生命も危ぶまれる要素が登場。そんな脆さを秘めた陶子を支えていくのが、カメラマンの横尾硝子でした。その硝子が一番クローズアップされるのは、表題作の「瑠璃の契り」。これは薩摩の切り子ガラスの話。表紙にもなってるコレです。...そうか、彼女は名前そのまんまのガラスだったのねー。ということは陶子はやっぱり陶器で、プロフェッサーDは、DOLL...?(笑) その他にも雅蘭堂の越名集治や、博多でカクテルを名物とする屋台を出してる根岸キュータ、池尻大橋や三軒茶屋のバーが登場します。(文春文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「狐罠」「狐闇」「緋友禅」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「瑠璃の契り」北森鴻

+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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天平18年秋8月。備前国から平城京に庸調を納めに行く一行の中にいたのは、采女として後宮で仕えることになっている広虫と吉備真備の娘の由利。男ばかりの一行の中で2人はすぐに意気投合します。そして、京まであと3日というところで拾ったのは、行き倒れていた百世という少年。百世は母を亡くし、丹波笹山から大仏鋳造のタタラで働いている父を探しに来たのです。京に着いた2人は早速吉備真備に葛木連戸主を紹介され、百世の父親探しに乗り出すのですが... という「三笠山」他、全4編の連作短編集。

奈良時代、聖武天皇から称徳天皇までの時代を舞台に、4編でそれぞれ東大寺の大仏建立、正倉院への宝物奉納、藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱、そして道鏡の野心と宇佐八幡の神託が取り上げられていて、この時代の主な出来事を網羅してる連作。風待屋の sa-ki さんに教えて頂いた本です。sa-ki さんから芝田勝茂さんの「サラシナ」(感想)と時代的に結構重なってるとは聞いてたし、確かにそちらとも重なってたんですが、それ以上に高橋克彦さんの「風の陣」(感想)と重なっていてびっくり。「風の陣」は、「立志篇」「大望篇」「天命篇」の3巻を読んだんですが、それぞれ橘奈良麻呂、藤原仲麻呂(恵美押勝)、弓削道鏡を取り上げてるんです。スタートが微妙にズレてはいるけど、もうまるっきり同じ時代の話。でも雰囲気がまるっきり違っていて、それもびっくり~。「風の陣」は、陸奥出身の丸子嶋足という青年を主人公にした正統派の歴史小説なんですが、こちらは広虫と戸主という内裏で共働きをしてる夫婦を中心に据えていて、もっと明るいユーモアたっぷりの作品なんです。味付け程度とは言え、ファンタジーがかった柔らかさもありますし。どちらもそれぞれにそれぞれの作家さんらしさが出てて面白いんですが、同じ歴史的事実を描きながらも書き手によってこれほど違ってしまうとは、両極端~。(笑)
4編の中で一番面白かったのは、2編目の「正倉院」。こんな裏話があったなんて、正倉院の宝物を見る目が変わっちゃうな。あと面白かったのは、吉備真備の長女の設定。これにはびっくり! 言われてみれば、確かに同じ時代ですものねえ。でも、一体どこからこんなアイディアが浮かんだのやら。(笑)(文芸春秋)


+既読の山之口洋作品の感想+
「オルガニスト」山之口洋
「0番目の男」山之口洋
「天平冥所図会」山之口洋

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長年大切に扱われてきた器物の中には、百年を経ると妖(あやかし)と化して力を得て、つくも神となるものがあります。お紅と清次の姉弟が切り回している小さな古道具屋兼損料屋・出雲屋には、そんなつくも神となった古道具がいっぱい。そしてそんなつくも神となった品物は売り払われることなく、日々様々な場所に貸し出されているのです... という連作短編集。

お紅と清次の店にあるつくも神は、掛け軸の月夜見(つくよみ)、蝙蝠の形をした根付の野鉄、姫様人形のお姫、鷺の煙管の五位、櫛のうさぎ、金唐革の財布・唐草といった面々。大切にされてきた古い品がつくも神になるという設定はいいと思うし、実際このつくも神たちとなった品々が愛嬌あるんです。お紅と清次もいい感じだし、そこまでは順調。とっても可愛らしい話になりそうでワクワクしちゃう。でも、そこからが... うーん。
肝心のつくも神たちと人間2人の距離が、なんだか中途半端な気がしちゃうんですよねえ。つくも神たちは、お紅と清次を気にせず喋りまくってるけど、2人に話しかけられた時は返事をしないと決めてます。2人が何か知りたいこと、つくも神たちに調べてもらいたいことがある時は、つくも神たちの前でわざとらしく話題にしてから、つくも神たちを関係各所に貸し出すんです。
この話が「しゃばけ」シリーズとはまた違うのは良く分かってるし、これもまた決まりごとの1つだとは思うんだけど...
つくも神たちが「人間とは決して話さない」と決めてる根拠が、イマイチ薄くないですか? なんだかすっきりしないんですよね。お互いのやり取りが遠まわし遠まわしで、どうにも不自然だし...。しかもつくも神たちが期待したほど活躍してくれなくて、結局単に噂集めをしてるだけ。
...というのは、まあ、読んでいるうちにだんだん気にならなくなってくるんですが。

やっぱりこのラスト、あまりにあっさりとしすぎてやいないでしょうかね? あれだけ「蘇芳」「蘇芳」って騒いでいたのに、途中経過の一波乱二波乱もなく、これだけですか? うーん、正直言って拍子抜け。可愛らしい話なんですけどねえ。それだけに、もう一捻り欲しかったなあ。(角川書店)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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ビストロ・パ・マルは、料理長の三舟、料理人の志村、ソムリエの金子ゆき、ギャルソンの高築智行の4人が切り盛りする小さなフレンチ・レストラン。値段も手頃で、気取らないフランス家庭料理を楽しめる店には常連も多く、カウンター席7つテーブル5つという小さな店は、すぐに予約でいっぱいになってしまうほど。そんなある日やって来たのは、常連客の西田。連れていたのは、最近婚約したという華やかな美女。幸せそうな2人に和やかな雰囲気で食事が進みます。しかしそれから2週間ほど経ったある日、再び現れた西田はどうやら体調が悪いらしくて... という表題作「タルト・タタンの夢」他全7編。小さなビストロが舞台の連作短編集です。

基本的な流れとしては、ビストロにやって来たお客の抱える食べ物絡みの悩みや疑問、問題なんかを、三舟シェフが美味しいお料理と共に鮮やかに解決してしまうというもの。読む前は、近藤史恵さんまでもが今はやりの(?)美味しいミステリを書いてしまうのか...! と、ちょっぴり違和感だったんですけど、これが本当に美味しそうで! フレンチには日頃それほど興味のない私なんですが、強烈にフレンチレストランに行きたくなってしまうほどでした~。しかも近藤史恵さんのお料理に関する薀蓄の入れ方も、いつものことながら、ほんと絶妙なんですよね。
ミステリとしてはあまり派手ではないというか、どちらかといえば地味のような気もするんですけど、でもしっかりとお料理絡みの謎だし、お客さんがシェフの美味しいお料理でおなかもいっぱい、心も満足、となるのが良かったです。きっとそうなんだろうなとは思っても、なぜというところまでは分からない謎も結構あったので、シンプルな謎解きが鮮やかに感じられました。私が好きだったのは、夫婦のことはその夫婦にしか分からないんだなと実感させられた「ロニョン・ド・ヴォーの決意」。謎解きの時のシェフの言葉が好きなんです。そしてトリックに単純にびっくりさせられたのは、「理不尽な酔っぱらい」。まさかそんなことができるとは...!(驚)
読んでるとおなかもすくんですけど、それ以上にシェフ特製のヴァン・ショー(ホットワイン)が飲みたくなっちゃいます。読後感がとても暖かい連作短編集。これはぜひ続きも読みたいです~。(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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与次郎が語ったのは、言い伝え通り恵比寿像の顔が赤くなった時、1つの島が滅んだという話。それを聞いて正馬と惣兵衛は非合理な話だと強く否定し、剣之進1人があり得ることだと反論。剣之進は実際にその話の証拠として「豊府紀聞巻四」を見つけてきます。しかしそれでも正馬と惣兵衛は、確かに恵比寿像の顔が赤くなった後に天変地異が起きたのかもしれないが、その2つの出来事の因果関係が証明されたわけではないと言うのです。結局4人は薬研堀のご隠居のところに話を聞いてもらいに行くことに... という「赤えいの魚(うお)」他、全6編の収められた短編集。

一体いつ以来...? の京極作品。京極堂のシリーズの方だって、あんなに夢中になってたのに、「宴の始末」辺りから気持ちが離れ始めて、結局「邪魅の雫」も読まなかったんですよねえ。でもこの作品はともっぺさんにとても良かったと教えていただいて、読んでみました。「続巷説~」がとても綺麗に閉じていてすごく良かったので、あれ以上一体何を書いたんだろう?って思ってたんですけど、ともっぺさんも読む前は似たようなことを感じてらしたのに、読んでみたらすごく良かった~と仰ってたので。
「憑き物」を落として人を正気に戻す京極堂シリーズに対して、こちらは「憑き物」を利用して人を正気に戻すシリーズ。でも時代は既に明治となっていて、今までの話とはまた趣向が違いました。百介はもうすっかり老人だし、文明開化の時代を生きる4人の若者たちが中心。

最初のうちは、それぞれに確かに面白いんだけど、同じパターンが続くなあ... って感じだったんです。でもね、最後の「風の神」が良かった! きっとこの部分を書きたかったんですね、京極さんは。「彼岸」と「此岸」に関する部分がしみじみと良かった。百介が又市たちと過ごしたのはほんの数年間のこと。その後又市たちは百介の前に姿を現さなくなって、百介自身は又市たちに見捨てられてしまったように感じてるんですが、でもそれはきっと本当は全然違うんですね。大きな愛情が感じられるなあ。もしかすると又市たちにとって、百介は最後の良心だったのかも。江戸から明治へと移り変わった時代の中で、最早妖怪に用などなくなってしまったというのは、どうも寂しいんですが、やっぱりこの境目の時期だからこその話だったんだなあ。(なんて言ったら京極堂のシリーズはどうなんだ?なんですが)
あ、京極堂のシリーズに直接繋がる人物も複数登場してました。結局のところ、全部そっちに流れ込むってことなのね。(笑) (角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「巷説百物語」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「続巷説百物語」京極夏彦
「後巷説百物語」京極夏彦

+既読の京極夏彦作品の感想+
「百器徒然袋-風」京極夏彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります

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16年ぶりに三軒茶屋を訪れた有坂祐二は、かつての恋人・江上奈津美と歩いた道や一緒に行った店を辿るうちに、香菜里屋という店を見つけ、思わず中に入ることに... という「螢坂」他、全5編の連作短編集。「花の下にて春死なむ」「桜宵」に続く、ビアバー「香菜里屋」シリーズ第3弾です。

今回もとても美味しそうな作品群でした! 美味しいシリーズだというのは頭では分かってても、前もここまで美味しそうだったっけ... と改めて驚いてしまうほど料理は美味しそうだし、香菜里屋という空間はとても居心地が良さそう。もちろんマスターの工藤哲也も相変わらず魅力的です。客の話すどんな小さいことも、どんな小さい出来事も見逃さずに、正しい筋道を見つけてしまうマスター。今回は「死」と密接に結びついている分、謎が解き明かされても救いとはならないこともあって、いつもよりも重めの話が多かったように思うんですが、それでも生々しい傷を負った心が柔らかく揉み解されて、辛い情景が過去の風景へと変わっていくのは、マスターの人柄というものでしょうね。ほろ苦くて切なくて、でも暖かい物語。この中で私が一番好きだったのは「双貌」でした。これは小説家による作中作が登場して、他の4編とはちょっと違う雰囲気の作品です。
「桜宵」から登場している工藤の旧友・香月が、「雪待人」でも意味深な一言をもらしてるし、次は工藤の過去が明かされる内容になるようですね。どんな話になるのかいつも以上に楽しみ~。これは単行本が出たらすぐ読まなくちゃ!(講談社文庫)


そして北森鴻さんといえば、11月24日(土)三重県名張市主催の、「第17回なぞがたりなばり講演会」に出演されることが決定したそうです。テーマは「旅とミステリー ~乱歩と香菜里屋の不思議な邂逅~」。名張市は江戸川乱歩生誕の地ということで、毎年豪華なゲストを招いて講演会を開催してらっしゃるんです。去年は綾辻行人さん、その前は有栖川有栖さん、その前は福井晴敏さん、高村薫さん、真保裕一さん、馳星周さん、北村薫さんと宮部みゆきさん...
乱歩と香菜里屋の不思議な邂逅だなんて、一体どんなお話になるんでしょうね? 美味しいお話もたっぷり聞けるかも? 興味のある方はコチラまでどうぞ~。

あとイベントといえば、11月11日(日)立教大学キャンパスで行われる日本推理作家協会60周年イベント「作家と遊ぼう!ミステリーカレッジ」も面白そうです。参加作家さんが、ものすごーーく豪華だし、企画もそれぞれにとっても楽しそう。全部で6時間ほどのイベントなので、どれに行くか迷ってしまう人も多いかも? 参加作家さんとして名前が挙がっていなくても、ふらりと遊びに来る作家さんも多そうです。詳細はコチラ

ということで、ちょっぴり回し者になってみました。えへ。


+シリーズ既刊の感想+
「花の下にて春死なむ」「桜宵」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「螢坂」北森鴻

+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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父の転勤で北九州に引っ越すことになった、小学校5年生の高見森(シン)。東京では腕白のいじめっ子として問題児扱いをされていた森ですが、引越し当日の夜にはこっそり外に抜け出て、パックという少年と一緒に社宅の屋根に上り、翌朝には同じ登校班の子供たちにもすんなりと受け入れられて、今度の学校では楽しくやれそうな予感。しかし、てっきり一緒に学校に通うとばかり思っていたパックの姿が見えないのです。しかも周囲の子供たちに聞いても、みんな口を濁すばかりで...。

講談社ミステリーランドの第13回配本。加納朋子さんらしく、とっても可愛らしいお話でした~。
大人から見れば単なる乱暴者の森なんですが、実は意外と素直な少年。話の合いそうな転校生と友達になりたいと思った時も、おばあさんのアドバイス通りにしてるし... いや、これに関しては、今時の少年が本当にそんなことをするのか?! とも思っちゃうんですけどね。それまで森の周囲にいた子供たちは、森がそんなことをするなんてまさか思わなかったでしょう... 地方によって子供たちに違いがあるなんて書きたくないんですけど、やっぱり大人になるのが早い分、大人の色眼鏡ごしに物事を見てしまいがちなのかも、とか思ってしまうー。それに比べて、北九州の子供たちの可愛いことったら。彼らの話す北九州弁が、またいいんです。これですっかり親しみが湧いてしまいました。...ええと、肝心の謎に関してはそれほどでもなくて、少年たちの冒険譚といった要素の方が強かったんですが、それでも社宅という条件がすごく利いてると思ったし、夢がありながらほろ苦い現実もあるところが良かったです。爽やか~。
「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」と言いつつ、今までは「かつて子どもだったあなた」向けの作品が多かった気がするミステリーランドのラインナップの中では、純粋に「少年少女のため」に近い作品かも。(そしてこの表題の文字が可愛い! 可愛すぎる! こんなPC用フォントがあったら、絶対欲しいー)(講談社ミステリーランド)


+既読の加納朋子作品の感想+
「てるてるあした」加納朋子
「ななつのこものがたり」加納朋子
「モノレールねこ」加納朋子
「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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大学に入る時に、それまで続けていた陸上競技をやめて自転車のロードレースを始めた白石誓は、今は国産自転車フレームメーカーが母体のチームに所属する選手。チームのエースは33歳のベテラン、石尾。そしてその次の位置につけているのが、誓と同期でまだ23歳の伊庭。誓はエースを狙うほどの実力ではなく、アシストに徹した走り。そして日本で行われる数少ないステージレース、ツール・ド・ジャポンに、誓も出場することになります。しかしその中の南信州での山岳コースで、思いがけず誓が総合トップに踊り出てしまうのです。その時、エースの石尾にまつわる3年前の黒い噂が明るみに出て...。

近藤史恵さんの、久々のノンシリーズ作品。近藤史恵さんにしてはちょっと珍しい雰囲気かな。自転車のロードレースの話です。今まで自転車競技には全然興味も知識も無かった私なんですけど、いやあ、面白かった!

まず、この本で知ったこと。

・自転車のロードレースは、紳士のスポーツとも、この世で最も過酷なスポーツとも呼ばれる。
・集団の先頭を引っ張る選手が空気抵抗を1人で引き受けることになるので、レースの最中でも、相手がライバルだったとしても、順番に先頭交代するのがマナー。(紳士のスポーツたる所以の1つ)
・ロードレースにはエースとアシストという役割分担があり、実際には個人競技というよりも団体競技に近い。
・アシストはチームのために、時にはエースの風除けとなり、時にはエースとは違う場所でレースを作る。エースの自転車にトラブルがあった時は、アシストが自分の自転車を明け渡すこともある。

まあ、ほかにも色々あるんですが(紳士協定的な暗黙の了解がいっぱい)、内容を読む上で重要なのはこのぐらいでしょうか。作品の中には、うちから比較的近い地名も登場してて、確かにそこの道で自転車のトレーニング姿をよく見かけてはいたんですけど、こういうことをやっていたとは、ほんと全然知らなかった。でもこれが素直に面白くて~。本当の自転車レースを見たくなってしまったわ! 自ら1位でゴールするよりも、アシストに徹する方が好きだという主人公の気持ちにも共感してしまったし。でも、アシストに徹したい主人公の思いとは裏腹に、思いがけずエースへの道が開けてしまって、周囲の人間の主人公に対する視線や態度が変わっていくんですね。それにつれて、様々な思惑が交錯して。
でもそんな風にロードレースの魅力とか、それにまつわる人間ドラマを描く作品だったはずなのに、さすが近藤史恵さん。ミステリ作品でもありました。しかもそのミステリ部分がいいんです~。そういう風にミステリが絡むと、思いがけない人間の暗部が見えてきたりするものだし、近藤作品だからこそ尚更そうなりそうなところなんですけど... この解決は良かったな。自転車のロードレースがそれまで以上に理解できたような気がします。...本当にそこまで...?という部分も正直ちょっぴりあるんですけど、でも良かった。ほおおっ。

自転車を扱った作品といえば、竹内真さんの「自転車少年記」もそうですね。この作品とはまたタイプが違いますが、あれもとっても爽やかな青春小説でオススメです~。今度テレビで自転車のロードレースをやってることがあれば、見逃さないようにしようっと。(新潮社)


+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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大学の先輩だった河原崎と一緒に、夜の動物園に入らせてもらった時の話「動物園のエンジン」、人を捜す仕事で小暮村に行った黒澤は、その村に未だに残る風習に驚かされる「サクリファイス」、「僕の勇気が魚だとしたら」という文章で始まるある作品にまつわる、いくつかの物語「フィッシュストーリー」、プロ野球選手の家に泥棒に入っている間に、助けを求める若い女性からの電話が... という「ポテチ」の4編。

今回も他の作品とのリンクが結構あったんですが、個人的には「ラッシュライフ」の黒澤が登場するのが嬉しかったですね。なので、2作目の「サクリファイス」が一番好み。黒澤登場はもちろんのこと、すでにすっかり形骸化しているかのように思えた不気味な風習が、実は今でも生きていた?!という辺りが~。伊坂作品らしさという意味では、表題作「フィッシュストーリー」が一番かな。20数年前の父親の話、30年前のロックバンドの話、現在のハイジャック犯の話、そして10年後の話。全然関係ないように見える出来事が1つの細い糸でずっと繋がっていて。でも、一般的には「ポテチ」が一番人気かもしれないですね。これは味のある登場人物も多かったし。
でも、悪くはないんだけど... 私自身の気持ちが国内作品から離れ気味のせいもあると思うんですが、どうも物足りなかったです。伊坂作品らしさが、今回薄かったように思うんですよね。薄いとは言っても別路線を打ち出したわけではなくて、これまでの作品と同じようなパターン。比較的最近の作品では、私は「砂漠」や「魔王」が好きなんですけど... 特に「魔王」のインパクトは、今までにない伊坂色を見せてくれたという意味でも凄かったと思うのに...! でも結局また元に戻っちゃったのね、って感じ。うーん。(新潮社)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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御手洗が石岡と共に馬車道に住んでいた頃。散歩に出た2人の前に現れた少女が、近所の老女が老人ホームに入れられそうになっているので助けて欲しいと訴えます。老女はUFOや宇宙人、宇宙戦争を家の前で見たという話をしており、それを知った息子夫婦にボケてしまったと思われているのです... という表題作「UFO大通り」と、ラジオの深夜放送で聞いた、傘を車に轢かせようとしている女性を見たという不思議な話に、退屈していた御手洗は興味を引かれて... という「傘を折る女」。

ものすごーく久しぶりの島田荘司作品。調べてみたら、「ロシア幽霊軍艦事件」を読んで以来、2年半あいてたみたいです。島田荘司作品の読了本は54冊。好きだったんですよねえ、特に御手洗シリーズの初期の作品。傑作とされるデビュー作の「占星術殺人事件」は、実はあんまりだったんですが、「斜め屋敷の犯罪」「御手洗潔の挨拶」「異邦の騎士」「暗闇坂の人喰いの木」辺りが。デビューから1990年までぐらいの作品が一番好き。でも事件の舞台が海外に移るようになってから少し気持ちが離れ始めて(違う意味でスケールが大きすぎて好みじゃなくて)、最近の御手洗は電話での登場とかばっかりだし! 石岡くんと里美が中心になってからは、読む気をすっかり失ってました。
でも、ともっぺさんに、この「UFO大通り」は「四季さんの好きな、馬車道の頃の話ですよ~」とオススメされて読んでみることに。

で、読んでみて。やっぱり馬車道の頃の話は安心しますね。どちらも奇抜な謎を御手洗が鮮やかなに推理するという、御手洗シリーズらしい作品。UFOに乗った宇宙人の地球侵略、それを信じていたかのような小寺青年の死体は、白いシーツを体にぐるぐると巻きつけて、オートバイ用のフルフェイスのヘルメットをかぶってバイザーを閉め、首にはマフラー、両手にはゴムの手袋。部屋の天井からはちぎって貼ったガムテープの切れ端がぎっしり...。そんな謎も見事に解かれてみれば、とても地に足のついた話。へええ。
ただ... 初期の作品のことを思うと、どうしてもどこか弱いような。島田荘司作品のどこが好きかといえば、スケールの大きさとか、衝撃度の強さ、密度の濃さとか、そういうところなんですが、その意味ではちょっぴり物足りなかったです。しばらく読まないでいるうちに、初期の作品群が自分の中で美化されてしまったのかもしれないけど... 同じ馬車道の頃の話なので、どうしても比べてしまうのかも。うーん、なかなか難しいものですねえ。(講談社)


+既読の島田荘司作品の感想+
「ロシア幽霊軍艦事件」島田荘司
「UFO大通り」島田荘司
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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スポーツクラブでフロア・スタッフのバイトをしている殿内亨は、インストラクターの芹香にときめき、遅番の仕事が終わった後、プールで一泳ぎをするのが楽しみな毎日。しかしそんなある日、プールの中で身体に熱いものがかかって火傷をしたという女性が現れて... という「水の中の悪意」他全4編。キリコちゃんのシリーズです。

このシリーズはキリコも可愛いし、読みやすくて好きなんだけど... 前の2作とはちょっと違ってたかな。事件の方は相変わらず、人間の暗部を覗き込むようなもので、でも最後にはちょっぴり救われて気分が上向きになるというパターン。今回の4編の視点は、全て事件の当事者の視点。そこまではいいんだけど... 謎解きこそキリコがするし、それぞれに意表を突いた結末が待ってるんだけど、キリコはあくまでも脇役って感じなんですよね。それが私としては物足りなかったかも。清掃業というキリコの仕事も、いつもほど生かされている感じがしなかったし。しかもキリコが脇役だから、キリコ側の人たち(大介とか)が全然登場しないんですよねえ。もっとキリコ自身の話を読みたかったので、ちょっと残念。
今回面白かったのは、スポーツクラブに通い始めたキリコの言葉。習い事をしている場合、同じクラスの人と自然に知り合いになって挨拶したり少し話したりするようになるけれど、毎朝駅で顔をあわせる人とは、仲良くなろうとも思わないし、挨拶もしないもの。「スポーツクラブはそれが入り混じっているような気がする」という観察が面白かったです。(ジョイ・ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「天使はモップを持って」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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1年前から契約社員として働いていた服飾雑貨の輸入会社で、念願の正社員に昇格した久里子。しかし2ヶ月も経たないうちに、業務縮小のためリストラされてしまい...。ついこの間、大喜びで報告した手前、クビになったとはなかなか言い出すことができない久里子は、リストラされる前と同じ時間に家を出る日々を送ることに。

「賢者はベンチで思索する」の続編。3編の連作短編集です。てっきりあれで終わりだと思い込んでいただけに、びっくりの続編。あんな終わり方だったのに大丈夫なのかしら、なんて心配したんですけど(と言うほどハッキリ結末を覚えてるわけじゃないんだけど・汗)、いざ読んでみたら、ぜんぜん違和感なく読めました♪(記憶も少し薄れてますが・汗)
今回は3編とも久里子の居場所探しの物語だったような気がします。社会的な居場所と、プライベートな居場所。せっかく正社員になったと思えばリストラされてしまうし、昼間ひたすら暇つぶしをする久里子。ようやく見つかった仕事は、服飾とはまるで関係ない職場だし(服飾の専門学校卒なので)、これでいいのかと悩みは尽きません。そしてもう1つのプライベートな自分の居場所は、前回いい雰囲気になりかけてた彼ですね。でもなんと彼、修業のためにイタリアに行ってしまっていたんです...! ここで彼を兄のように慕う美少女なんかも登場して、その辺りはちょっとベタ。でも感情の揺れの1つ1つが丁寧に描きこまれていて、とてもいい感じでした。
いくら直属の上司に言い渡されたとはいっても、そんなにあっさりと納得しちゃうものなの? なんて納得できない部分もあるんですが... 私だったら、最初に昇格の話を持ってきてくれた部長に相談するけどなー。でもその後の久里子の行動が本当に久里子らしくて、それはそれで良かったかな、なんて思ってしまったりするのも近藤マジックなのでしょうか。(笑)
そして赤坂老人の言葉には、相変わらず含蓄がありました。今回特に印象に残ったのは、怒りや憎しみといった心の働きと冷静な判断を下す頭の働きは別物で、どちらを優先させてもいけないという部分。あとは「今、日本では人を殺す人よりも、自分を殺す人の方がずっとずっと多いんだ」かな。色々問題はあるようですけど、やっぱり素敵な人でした♪(文藝春秋)


+シリーズ既刊の感想+
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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神田の古名主、高橋宗右衛門の自慢の息子・麻之助は、16歳になった途端に生真面目で勤勉な青年から、お気楽な若者へと変貌してしまったという青年。そんな麻之助も22歳。ある日、悪友の八木清十郎に男色の仲だと宣言して欲しいと言われ、さすがの麻之助も驚きます... という表題作「まんまこと」他、全6編の連作短編集。

畠中恵さんの新シリーズ。やっぱりこの方の作品には、江戸の雰囲気がよく似合いますね。今度のシリーズ中心となるのは、主人公の高橋麻之助と、女好きの八木清十郎、堅物の相馬吉五郎という3人組。とは言っても、それほど一緒に行動するわけじゃないんですけどね。基本的には名主のところに持ち込まれた麻之助絡みの揉め事を、麻之助が友人たちの助けを借りて調べて、人情味たっぷりに解決するという流れです。八方丸く収まって読後感が良いところは、さすが畠中恵さん。でもまだシリーズ最初の作品のせいか、まだどこか定まりきっていない印象もあるんですよね。麻之助の機転がきくところはいいんだけど、どうしても若旦那と重なっちゃうし... そうなると妖(あやかし)がいない分、こちらはやや部が悪い気も。麻之助が16歳でお気楽になってしまった理由に早々に見当がついてしまったのも、ちょっと残念でした。ただ、「しゃばけ」シリーズでは常時登場して活躍する女性がいないので、今後のお寿ずの活躍に期待かな。(文芸春秋)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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学生時代から夢だった絵本作家になり、「パパといっしょに」という作品で賞を取るものの、それから2年もの間絵本を描けないでいるまま、フリーライターの仕事がすっかり本業となってしまっている、40歳の新藤宏が主人公の連作短編集。
せっかくいい絵本を出した作家なのに、物語が始まった時は既に絵本を描く気もなく、自分のことを「絵本作家」ではなく「元絵本作家」だと自嘲的に考えている進藤。自分の作品を知ってる人間がいると、逆に尻込みしてしまうような覇気のなさ。最初はなんでそんなことになったのか分からないのですが、短編が進むに連れて徐々に分かってくるという構成。

昨日と同じくお初の作家さん。そして同じく頂き物です。ありがとうございます。
評判はとてもいいのに、なぜこれまで重松作品を読んでなかったかといえば、なぜか読むのがツラそうな感じをひしひしと感じていたから。要するに、読まず嫌いですね。でもこれは読みやすかった。「ツラそう」は単なる私の思い込みで、他の作品も同じように読みやすいのかな? いや、まだ油断はできないぞ、なんて思いつつ。(笑)

各章でそれぞれ新しい人物が出てきて、それは大抵進藤がフリーライターとして会う相手なんですけど、その人物がそれぞれに一癖も二癖もあって、しかも既に絶頂期は過ぎてしまったような人物ばかりなんですよね。特に「マジックミラーの国のアリス」の田上幸司や「鋼のように、ガラスの如く」のヒロミ、「虹の見つけ方」の新井裕介は、それぞれの世界でかつて頂点を極めた人々。いかにもモデルがいそうで、そういうのを考えるのも楽しいところ。...それにしても、絵本を作り出すというのは、他の物作りの作業以上に、周囲の物や人間に関心がないとできない作業なんじゃないかと思いますね。色んな出会いによって、進藤は少しずつ刺激を受け、同時にフリーライターとして流されている自分に向かい合うことになります。そして最後は絵本を描けそうな予感なんですが... あれがどんな絵本になるんだろう? 進藤はどんな風に仕上げるつもりなんだろう? すごく不思議。そこんとこがちょっと覗いてみたいなあ。(角川文庫)

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その日訪ねて来たのは、アメリカの出版代理人だと名乗る男。男が分厚い英語の原稿を取り出し、日本で出版したいと言い出したのを見て、柳広司は苦笑します。てっきり自作の小説を英語で出版する話を持ってきたのだと思い込んでいたのです。男の説明によると、その原稿は、「原爆の父」ロバート・オッペンハイマーが、親しかった友人の眼を通して書いたという遺稿。1945年8月、終戦に沸くロスアラモスの町で開かれた戦勝記念パーティの後、1人の男が殺された事件について書かれたものだったのです。

お初の柳広司作品。頂き物です。ありがとうございます~。
原爆が生まれたという砂漠の町・ロスアラモスの名前は知ってましたが、名前を知ってる程度だったので、すごく興味深く読みました。へええ、こんな風にして原爆は作られたのですかー...。あ、もちろんこの作品は原爆や戦争を肯定するものではないですし、ナチスによる人体実験ももちろん認めてないんですけど、それでもやっぱり新しい知識や発明に対する科学者(医学者でも)の情熱(狂気)って、そこに通じるものがありますよね。怖い。人間として何が正しくて何が正しくないのかという命題は、やっぱり科学の進歩とは相容れないものなんだなあ、なんてしみじみ思ってしまいます。なので「面白かった」とは簡単に言いがたいんですけど...(気持ち的にね) 読み応えのある作品だったし、原爆を作り出した人々の中には、ナチスを逃れてアメリカに亡命せざるを得なかったヨーロッパ出身の物理学者たちも多く含まれていたということを認識しただけでも読んだ甲斐がありました。...あ、でも一応殺人事件は絡んでるんですけど、ミステリ部分は脇役ですね。主役はあくまでもあちらかと...(角川文庫)

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博多の長浜にラーメンとおでん、そしてカクテルを出す屋台を営むテッキこと鴨志田鉄樹。そして、その屋台にいつもやって来てはツケで飲んでいくのは、テッキの高校時代からの腐れ縁で、今は結婚相談所の調査員をしているキュータこと根岸球太。博多の街を舞台に、2人が様々な巻き込まれていくハードボイルド連作短編集。

北森鴻さんの本はかなり読んでますが、こうやって読むのはとても久しぶり。以前はコンプリートする勢いで読んでたはずなんですけど、私の中でミステリ熱が冷めてきたこともあって、ここ2年ほどの間に出た本は全然読んでないんですよね。でも、それ以前のは全部読んでるはず... いや、この作品を抜かしてですが。なぜこれだけ抜けてたかといえば、なんでなんでしょうね。どこかとっつきにくい雰囲気が漂ってたせいなんですよね。(私にとって、です) 図書館で見かけても、なんとなくスルーしてしまってました。でも文庫になったのを機に読んでみたら、意外なほど読みやすくてびっくり!

テッキとキュータの2人の視点が交互に登場して、物語が進んでいきます。2人は高校時代からの腐れ縁で、どちらも29歳。東京の大学を中退して博多に戻って来たテッキは冷静沈着、むしろ老成した雰囲気。使う言葉は標準語。そして常にお気楽で女好き、頭で考えるよりも先に口が出るタイプのキュータは人情家。言葉は博多弁。この2人が好対照となっていて楽しいし、オフクロこと華岡結婚相談所の所長・華岡妙子や、魔女のような雰囲気の歌姫も、独特の存在感を放っていますねー。一見して硬質な雰囲気だし、扱う事件はそれぞれに重いんですけど、狂言回し(?)のキュータのおかげか、その重さがいい感じで和らげられていて、とても読みやすかったです。それでも最後はかなり苦い結末で、驚かされましたが...。
今年の10月に出ている「親不孝通りラプソディー」は、この2人の高校時代のエピソードみたいですね。この本の中でも一度思わせぶりなことが書かれていたので、その話なんでしょう。またそちらも読んでみようっと。(講談社文庫)


+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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中庭が隠れ家のようなカフェ・レストランになっている小さな古いホテル。そこを訪れた「女」は、待っていた「サングラスの女」と共にワインを飲み、鴨とチコリのサラダを食べながら、以前この同じ中庭で開かれた小さなティー・パーティのことを話し始めます。それは脚本家・神谷華晴のために開かれたパーティの話。神谷は大の紅茶党で、その日も貰ったばかりのカップを片手に客の間を泳ぎ回り、ひっきりなしに紅茶を飲んでいました。しかしその手からは突然カップが落ちて...。カップからは毒が検出されます。誰も紅茶に毒を入れた形跡も目撃証言もなく、警察は自殺と断定。それでも「女」は真相に気付いたのです。そしてその時、「サングラスの女」の口からは、突然糸のような血の筋が流れ、その身体は崩れ落ちて...。

いやあ、面白かった。演劇という意味では「チョコレート・コスモス」(感想)の延長線上にあるような作品なんですけど、雰囲気としては、むしろ「夏の名残りの薔薇」(感想)でしょうか。演劇ミステリですね。「チョコレート・コスモス」ほどの興奮はなかったんですが、こういうのもすごく好き~。
でもとても面白かったのだけど、とても分かりづらくもありました。同じ場面、同じ台詞が何度も繰り返し繰り返し、少しずつ形を変えながら登場、何層にも入れ子になっているのです。ゆっくり読んではいたんだけど... 一体どこからどこまでが現実で、どこからが芝居で、どこからが芝居の中で演じられている芝居なのやら、まるで不思議のアリスの国に迷い込んだみたい。内側だと思っていたものが、気がつけば外側になっていて、外側だと思っていたものは、いつの間にか内側になり、現実と虚構が螺旋階段のように絡み合ってグルグル上っていくような...。まだ掴みきれてない部分があるので、これはもう一回、今度はメモを取りながら読んだ方がよさそうです。

そしてこの作品には、神谷という脚本家が登場するんですが、これは...? 芝居の演出で芹澤という名前もちらっと出てきて、こちらは「チョコレート・コスモス」で登場したあの人と同一人物だと思うんですが、神谷の方はどうなんでしょう? 「チョコレート・コスモス」の神谷とは年齢も食い違いそうだし、別人のような気もするのだけど...? 「チョコレート・コスモス」の本が手元にないので、細かい部分が確かめられませんー。(新潮社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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時々遊びに来ていたデブで不細工なねこが、その日赤い首輪をしているのを見て、「ぼく」はこっそり首輪の下に短い手紙を書いた紙を押し込むことに。すると次にその猫がやって来た時、そこには返信が挟まっていて... という表題作「モノレールねこ」他、全8編が収められた短編集。

いやー、やっぱり菊池健さんの描かれる絵は、加納朋子さんの作品にぴったりですね。この表紙の猫、パズルになってるんですよー。可愛い! そして中身もとても加納朋子さんらしい作品集でした。どれも人と人との絆をテーマにした物語。
縁あって親子や友達、恋人、そして夫婦になる人々。それは単なる偶然のめぐり合わせかもしれませんが、深く関わり合うような関係を築くには、やはり何かしら不思議な、偶然以上のものが潜んでいるような気がします。住んでいる場所も育った環境もまるで違う男女2人でも、縁さえあれば、知り合って恋に落ち結婚することもありますし、それとは逆に、似たような場所と環境で育ってお互いのことを知っていても、特に深く関わり合うことなくすれ違っていく人々もいるわけですし。やっぱり人間同士が深く関わりあうには、何かの「縁」が必要なんでしょう。そしてその「縁」が人同士を結びつけ、愛情や信頼関係を育てていくのでしょうねー。時には近すぎるからこそ、なかなか上手くいかないこともありますが、少しずつ築き上げて確立した絆は強いですし、その「縁」が本物なら、たとえ何十年のブランクがあっても再びめぐり合えるはず。
どの作品の絆もそれぞれに違ったものですし、短編同士には繋がりが全くないのですが、共通するのはその暖かさ。ああ、久しぶりに加納朋子さんらしい作品を読んだ気がします。良かったです~。(文藝春秋)


+既読の加納朋子作品の感想+
「てるてるあした」加納朋子
「ななつのこものがたり」加納朋子
「モノレールねこ」加納朋子
「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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先月出たばかりのチョーモンインシリーズ。これで8冊目かな? 今回は短編が5編収められていました。
もちろん神麻嗣子ちゃんも保科さんも登場するし、相変わらず楽しいんですけど... 聡子さんは? 能解警部は? レギュラー陣の登場があまりないのがちょっと寂しかったです。でもこのシリーズらしい作品も多かったし、安定してますねー。やっぱり先日読んだ「春の魔法のおすそわけ」とは全然違ーう。

5編の中で私が一番気に入ったのは、「捕食」という作品。これには大学時代の保科さんが登場します。仲間たちとスキーに行った時に、吹雪の中で道に迷った保科さんが辿り着いたのは、山の中に建つ屋敷。そこの主が語った奇妙な話とは... という物語。ちょっとホラータッチなんですけど、そこが良かった。でも、どうやらその仲間の中には聡子さんもいたようなのに、まるっきり登場しないなんて...!
表題作の「ソフトタッチ・オペレーション」は5編の中で一番長くて、このシリーズらしい(とは言っても、よくよく考えると、森奈津子さんが喜びそうなシチュエーションでもありますね)、とても西澤さんらしい作品。でもね、密室物を書くためには、密室を作り出すための状況を考えるというのが、まず最初の作業なんだろうとは思うんですが... これはあまりにも強引すぎるのでは。作中に登場する某ミステリ作品に対するオマージュだとしても、ちょっとツラいものがあるなあ。

でも、タックシリーズだけでなく、こっちのシリーズにも闇の部分があったはずなんですけど、あれは一体どうなったんでしょう。この作品では、全然気配すら匂わせてもいないし、前作も確か同じような感じだったかと。確かに、そこを書いてしまえばシリーズが終わってしまうのかもしれませんが... そろそろそちらの進展も気になるところです。その闇があるからこそ一層魅力的なんですしね。(講談社ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「幻惑密室」「実況中死」「念力密室!」「夢幻巡礼」「転・送・密・室」「人形幻戯」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦

+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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人の波に流されるままに地下鉄の改札を抜け、地上に出て初めて自分が九段坂にいることに気づいた鈴木小夜子。典型的な二日酔い症状で頭が割れそうに痛い小夜子は、自分の持っていたはずのポシェットが、いつの間にか2千万円の現金の入ったセミショルダーとなっているのに気づいて驚きます。現在の自分自身の全財産が丁度2千万円。キャッシュカードや保険証など全てを失くした代わりに、この2千万円を一気に使い切ってしまおうと考えた小夜子は、目についた美青年に声をかけるのですが...。

タイトルはとても爽やかなんですが、蓋を開けてみれば、人生に疲れた二日酔いの独身中年女性が迎え酒をしつつ、周囲に絡みつつ展開していく物語。いやー、酒臭い息がこちらまで漂ってきそうなほどでした...。でもこの展開はあれですね、どちらかといえば森奈津子シリーズのノリなのでは? あんな風にエロティックではないんですけど、そのまま森奈津子シリーズにしてしまった方が、あり得ない~って状況ももう少し楽しめたのではないかと...。丁度この鈴木小夜子も作家という設定ですしね。...ええと、謎も一応ありますが、小夜子が謎に思っているだけで、読者には謎でも何でもありません。どちらかといえばラブ・コメディかなあ...。(中央公論新社)


+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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現場には行かず、話を聞くだけで事件を解決してしまう探偵を安楽椅子探偵と言いますが、これは文字通り、家具としての安楽椅子が名探偵になっちゃって...?! という安楽椅子探偵アーチーシリーズの2作目。今回は、「オランダ水牛の謎」「エジプト猫の謎」「イギリス雨傘の謎」「アメリカ珈琲の謎」というエラリー・クイーンばりの国名シリーズの連作短編集となっています。

1作目を読んでからもう3年経ってるので、前のを覚えてるかちょっと不安だったんですが、心配は無用でした。もうアーチーは相変わらずですしね。椅子の持ち主の及川衛との会話は、以前同様の「おじいちゃんと孫」っぷり。野村芙紗は、塾通いを始めたせいで、前回ほどの登場ではないんですけど、代わりに前作でも登場していた鈴木さんが来たりして、この鈴木さんとアーチーがまた好一対。2人の会話が楽しいです。そして芙紗が本格的に登場してからは、衛がとっても微笑ましかったり。
どれも楽しい作品でしたが、今回私が特に気に入ったのは、衛と芙紗、そして衛のお父さんの3人が近所にできたインド料理のレストランに行って、そこで奇妙な出来事に遭遇するという「インド更紗の謎」。その店は、衛のお父さんがものすごく信頼しているインターネットの横浜限定のグルメサイトが褒めてるという店なので、お父さんの思い込みが楽しくて。現実的なお母さんにロマンティックなお父さん、という設定がとても生かされていて、不憫なお父さんを応援したくなりました。本当の結末とのコントラストもいいですね。 (東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+
「安楽椅子探偵アーチー」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美

+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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世話になった伯父の隆正に憧れて、警察の仕事を選んだ松宮は、現在は警視庁捜査一課の刑事。練馬の少女死体遺棄事件で練馬署の加賀恭一郎と組むことになります。加賀は隆正の息子。しかし胆嚢と肝臓が癌に冒されて余命いくばくもない隆正の病室に、加賀は近づこうともしないのです。割り切れない思いを抱えながらも、一緒に聞き込みを始める松宮。一方、少女を殺したのは14歳の直巳。パートを終えて家に帰ってきた母親の八重子は、リビングに死体があるのを見て驚き、直巳の将来のことを考えて、夫の昭夫と共に直巳を守ろうと決意を固めるのですが...。

加賀恭一郎物です。ミステリ作品ですが、単に事件を解けばいいというだけのミステリではありませんでした。嫁姑問題や老人介護問題、家族の絆など、家族や家の問題が織り込まれてます。馬鹿親子には、ほんと嫌な思いをさせられますが、事件の解決が、加賀に対する松宮の心情的なわだかまりの解決と見事に重なっているところがいいですねー。加賀も、「刑事というのは、真相を解明すればいいというものではない。いつ解明するか、どのようにして解明するか、ということも大切なんだ」という言葉通りの解決をしてくれますし。
ただ、重いテーマを扱いながらもとても読みやすいんですが、それだけに本当はもっと深いところまで書きたかったのではないかという気も...。270ページというのは、短すぎたのでは? もう少しじっくり書いて欲しかったな。

それにしても、海外物(特に古典)を続けて読んでいて、ふと日本の現代物に戻ると、なんて読みやすい! ほんと毎回のようにびっくりします。海外物の場合、カタカナの固有名詞を覚えるのが大変だし、特にギリシャとかインドとか、固有名詞をきっちり押さえておかないと、すぐワケが分からなくなっちゃうので、食い入るように読むというせいも大きいのですが... 東野さんの作品は元々読みやすいから尚更なんでしょうけどねー。(講談社)


+シリーズ既刊の感想+
「卒業」「眠りの森」「どちらかが彼女を殺した」「悪意」「私が彼を殺した」「嘘をもうひとつだけ」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「赤い指」東野圭吾

+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「容疑者Xの献身」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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15年前の錬摩を知る者からの英文のメッセージに導かれるようにして、指定された品川埠頭へと向かった錬摩は、そこで燃え盛るドラム缶を見ることに。遺体の第一発見者として周囲が騒がしくなる錬摩。そして今度は錬摩の身近な人間が行方不明になり、またしても英文のメッセージが...。

民間の犯罪心理捜査士・大滝錬摩のシリーズ5作目。これが完結編。
いやー、4巻を読んだ時点では、あと1冊で解決するなど到底無理!と決め付けてたし、その5巻を待ってるうちに、本当に最終巻が出るのかしら... なんて、だんだん不安にもなっていたんですが、鮮やかに決めてくれましたよ! 面白かった! 15年前の錬摩を知る人物のことも、錬摩を取り巻く人々の感情も、宗一郎との決着も、全て解決した上でのフィニッシュ。あとがきに「予想は裏切り、期待は裏切らない」をモットーに書いてらっしゃるとあるんですけど、確かにそのまんま。もう、お見事としか言いようがないです。全てのことが、あるべき場所に綺麗に収まっちゃったみたい。もうびっくり。いやー、良かったなー。待った甲斐がありました。
巻末に宗一郎の大学時代を描いた短編が収められてるのも、嬉しいところ。これでもうこの「EDGE」シリーズが終わりだなんて寂しいんですけど、新しい作品も楽しみ。のんびり(笑)待ちたいと思います。(講談社X文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「EDGE」「EDGE2 三月の誘拐者」とみなが貴和
「EDGE3 毒の夏」「EDGE4 檻のない虜囚」とみなが貴和
「EDGE5 ロスト・チルドレン」とみなが貴和

+既読のとみなが貴和作品の感想+
「セレーネ・セイレーン」とみなが貴和
「夏休みは命がけ!」とみなが貴和

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ムーミンパパそっくりの探偵・陽向万象の探偵事務所は、その名も「ひまわり探偵局」。玄関脇には可愛いひまわりのイラストで囲まれた木彫りの看板があり、ドアを開けるとカウベルの音が。そして漂ってくるのは、紅茶と焼きたてのクッキーの匂い。しかし、時には保育園と間違えられることもあるような、ほのぼのとした雰囲気なのですが、万象は実は辣腕の私立探偵なのです。そんな万象と、万象をこよなく尊敬する押しかけ助手の「さんきち」の連作ミステリ。

ネットのお友達、はまっちさんこと濱岡稔さんの新刊が出ました! 「さよならゲーム A‐side」「さよならゲーム B‐side」「わだつみの森」といった硬派なミステリ作品に続くのは、美味しい紅茶と美味しいお菓子が出てくる、ほのぼのとしたミステリ。この作品は、実は4~5年前に濱岡さんがご自身のサイトで公開しているのを読ませて頂いているのですが、それからミステリ作品を沢山読み、最近ではミステリ自体にすっかり飽きがきてしまっているにもかかわらず、この作品はその時と同じようにとても楽しんで読めました。ようやく本になってくれて嬉しい!
濱岡さんご自身のサイトによれば、この作品を書く時に心掛けられたのは、「1.一応、ミステリイであること。」「2.オーソドックスなホームズ・ワトスン物であること。」「3.シンプルな謎解きをメインにしていること。」「4.軽いものであること。」「5.楽しく、後味もよいこと。」
確かに、オーソドックスでシンプル。でも万象と「さんきち」はまるで漫才コンビみたいだし、濱岡さんらしいマニアックなネタや薀蓄が作品中に散りばめられていて、これがすごく楽しいんです。それでいて第一話~第三話では、今はもういない人々の残した謎を解く物語ということもあり、その謎が解けてメッセージが明らかになった時の、しみじみとした切なさも...。その切なさが幸せを感じさせてくれて、またいいんですよね。
眩惑されるような「わだつみの森」もものすごく好きだったんですけど、こういう気軽に楽しめる作品も楽しくて大好き。日常系のミステリがお好きな方は、ぜひぜひ♪(文芸社)


+既読の濱岡稔作品の感想+
「ひまわり探偵局」濱岡稔
Livreに「さよならゲーム-A Side・B Side」「わだつみの森」の感想があります)

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葉崎半島の西にある猫島は、人間が30人ほどと100匹を超える猫が住んでいる島。数年前、猫の専門誌にここの猫の写真が取り上げられて以来、猫の楽園として有名な観光地となっていました。猫マニアが島に押し寄せ、同時に捨て猫の数も急増したのです。そんなある日、観光客をナンパしていた高校生・菅野虎鉄が見つけたのは、ナイフが突き立てられた猫の剥製。丁度猫島にやって来ていた駒持警部補は、猫島夏期臨時派出所の七瀬巡査と共に調査を開始します。
ということで、「ヴィラ・マグノリアの殺人」「古書店アゼリアの死体」に続く、葉崎を舞台にしたコージーミステリ。今回舞台となる猫島は、葉崎からほんの目と鼻の先にある小島です。干潮の時は徒歩で移動できるほど。

今回は、とにかく猫、猫、猫ばっかり!
メル、マグウィッチ、ポリス猫DC、ビスケット、お玉、ワトニー、トマシーナ、セント・ジャイルズ、ラスカル、ジョフリイ、ヴァニラ、シルヴァー、ウェブスター、クリスタロ、モカ猫、アイーダ、アイ、ソロモン(ミスター・ティンクルス)、アムシャ・スパンダ、チミ...
「著者のことば」によると、この作品には本当に沢山の猫が登場していて、しかもその8割の名前は小説や映画に出てくる猫の名前からとってあるのだそうです。「ただし、出典が全部わかったら、相当の猫バカだと思う」とのこと。
トマシーナはポール・ギャリコからでしょうし(柴田よしきさんの「猫探偵正太郎」シリーズにもトマシーナがいるけど)、チミは仁木悦子さんの「猫は知っていた」かなと思うんですけど... アムシャ・スパンダはゾロアスター教からって作中にあったし、ウェブスターはP.G.ウッドハウス「ウェブスター物語」、ソロモンは「黒ネコジェニーのおはなし」、ミスター・ティンクルスは映画「キャッツ&ドッグス」...? 
ラスカルはあらいぐま?(笑) シルヴァーは「宝島」(猫じゃないじゃん!)で、モカ猫はモカ犬から? でも後は...? セント・ジャイルズがすごく気になるんですけど...!

剥製の猫にナイフが突き立てられていた事件から、殺人事件までだんだんと事件が大事になっていくのですが、雰囲気としてはあくまでもコージーミステリ。殺人が起きてコージーミステリというのも妙ですが(笑)、みんなどこかのんびりと構えていて微笑ましくて、コージーとしか言えない雰囲気なんですよね。住人たちが賑やかに楽しそうに動き回っていて、ミステリとしてよりも猫島に住む人々や猫たちの物語として楽しかったなー。「ヴィラ・マグノリアの殺人」「古書店アゼリアの死体」に登場していた人々が名前だけの登場をするのもまた、昔馴染みに会えたようで嬉しいところ。ラストは、若竹作品には珍しく毒が少なくてびっくり。 ...それより、修学旅行で一体何があったのか、気になるんですけど...? なんでそんなところで出し惜しみ? それが一番のびっくりでした!(光文社カッパノベルス)


+既読の若竹七海作品の感想+
「猫島ハウスの騒動」若竹七海
「親切なおばけ」若竹七海・杉田比呂美
「バベル島」若竹七海
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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はやみねかおるさんのYA向けシリーズ「都会(まち)のトム&ソーヤ」の4作目。クラスメートが応募する、地元のタウン誌の自主制作映画コンテストの締め切りに間に合わせるために、内人と創也がマラソン大会を抜け出す「大脱走 THE GREAT ESCAPE」、「番外編 栗井栄太は夢をみる。」、究極のゲームを作るための資金作りに、内人と創也がテレビのオバケ屋敷探検番組に出演する「深窓の令嬢の真相」、そして「おまけ 保育士への道 THE WAY OF THE "HOIKUSHI"」。今回も前回同様、ショートショートを挟んで中編2編です。

相変わらずのテンポの良さが楽しいシリーズ。「深窓の令嬢の真相」も、いかにもこのシリーズらしい作品なんですが、今回は「大脱走」が面白かったな。ごく普通の中学校生活に、いかにもあり得そうな感じで馴染んでたので、その辺りが個人的にポイント高かったです。でも、前作はショートショートを挟んだ中編同士が繋がって1つの長編になっていたように思うんですけど、今回はそれぞれに独立した短編となっていたのがちょっと残念。そろそろ読み応えのある長編作品を読みたいなあ。
それにしても、「トム」と「内人」の関係にはびっくり。そして卓也の上司の黒川さんについてもびっくり! はやみねさんご自身が気付いてらっしゃらなかったというのは本当でしょうか!?(講談社YA! ENTERTAINMENT)


+シリーズ既刊の感想+
「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ 乱!RUN!ラン!」2 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ いつになったら作戦(ミッション)終了?」3 はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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光原百合さんご自身が「声なき楽人(バルド)」シリーズと呼ばれているという、ケルト神話に題材を取ったシリーズ。「祓いの楽人」オシアンと、その相棒・ブランの連作短編集です。ケルト神話は大好きなので、この新刊は本当に楽しみにしてました~。

「祓いの楽人」とは、竪琴を奏でて歌を聞かせる一般的な楽人とは違い、竪琴の調べによって楽の音の神秘を操る人間のこと。自然や人間があるべき様から外れている時に、竪琴の音を聞かせて、あるべき姿に戻すという技を持つ楽人です。なりたいと思ってなれるようなものではなく、なれるのはそれ相応の天分を持った人間だけ。そしてオシアンはとても強力な「祓いの楽人」。諸国を旅しながら、時には死んだ後も頑なな人々の心を開き、彼らに道を示していきます。そして、楽師なのに声を出せないオシアンの代わりに村の人々と話すのは、小生意気で饒舌な相棒・ブランの役目。

「祓い」を必要とするような物語だから仕方ないとはいえ、どの物語もなんて切ない... ただ好きだっただけなのに、大切に思っていただけなのに、なぜか相手を傷つけることになってしまう登場人物たち。本心とは裏腹の言葉を口にしてしまい、心にもない行動をとってしまう、あるいは本当の思いが伝えられないまま終わってしまう。そしてそんな自分の行動を後悔し、死んだ後も留まり続けてしまう...。でも、彼らはただ、自分の深い想いを伝える術を知らなかっただけなんですよね。
未練や後悔の念が中心なのですが、ブランの存在が作品全体の雰囲気を明るくしてくれるようですし、オシアンの美しい透明感のある竪琴の音色が、その明るさを光に昇華させているよう。この世界は、本当にとても素敵でした。ケルト的な雰囲気は、5作目の「三つの星」で一番強く感じたかな。元になっているモチーフや登場人物の名前はもちろんなんですけど、他の4作に比べてダントツでケルトの雰囲気を感じたのは何だったんでしょうね...。「祭礼の島」に、どこかアヴァロンの雰囲気を感じてたからかしら。
でも、あとがきに「ケルト民話に触発されて生まれた一つの異世界の物語」とある通り、とてもケルト的でありながら、光原さんならではの世界です。あんまり自然に存在してるので、こちらもするんとその世界に入っちゃいましたけど、「祓いの楽人」というのも光原さんのオリジナルですよね? まだまだオシアンやブラン自身について分かっていない部分が多いので、彼ら自身の物語も読みたいです。そちらも、相当切ないものになりそうですが...。

そして今回も装幀がとても綺麗です~。最初見た時、「星月夜の夢がたり」とお揃いかと思いました。タイトルのフォントも似てますし。でも、出版社はもちろん、装幀した方も違いました。「星月夜の夢がたり」の暖色系の色合いとは対照的に、こちらは月明かりのような寒色系の色合い。これがまた、オシアンのイメージ、そして作品全体のイメージにぴったりですね。(角川春樹事務所)

そして「親切な海賊」は、幻冬舎のPR誌・星星峡に載っている不定期連載作品。こちらは「潮ノ道の日常」シリーズというシリーズ名なのだそうです。星星峡はジュンク堂に置かれてるんですけど、このジュンク堂に行く時間がなかなか取れなくて...! 最初に行った時は「明日来ると思います」、次に行った時は「もう全て配布してしまいました」... ガックリ。(でも、その後無事読めました!)
「銀の犬」ですっかり切ない気分になってたんですが、こちらを読んだら、暖かくてぽかぽか~。最初はただの困った頑固親父かと思った花嫁の父(結婚式はまだだけど)なんですけど、いいじゃないですか~。吼え合ってるアレクサンダーとジロー(犬です)を挟んで芹菜と話している場面で、すっかり気に入っちゃいました。婚約者の耕介も、最初予想したよりもずっと可愛い気があったし(失礼かな...)、この2人きっと上手くいきますよ! 表面上はお互いブツクサ言いそうだけど、根っこのところで信頼できる関係になりそうです。気がついたら、美弥そっちのけで意気投合して、酒を酌み交わしてるかも。(笑)
芹菜と零司も相変わらずのいいコンビだし(零司、頑張ってますね)、颯月さんも相変わらず、眠そうな割に力強くて素敵。本当は「あたりを打ち払うほどの美人」ぶりをもっと長時間拝めれば言うことないんですけど... 珈琲のカフェインもあんまり効き目なさそうだし、なかなか難しそうですね。(笑)


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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夜中の突然の地震で起きた若だんなが耳にしたのは、若だんなが邪魔だから殺してしまおうという声と、このままでは若だんなが死んでしまうのではないかと心配する声、そして遠くから聞こえる悲しそうな泣き声でした。そして翌日また地震が起き、若だんなの頭に物が激突、若だんなは気を失ってしまいます。気がついた若だんなに母親のおたえが提案したのは、湯治に行ったらどうだろうという案。ゆっくりお湯に浸かって養生したらぐっと丈夫になれるかもしれないと、稲荷神様のご神託があったというのです。

若だんなのシリーズの第5弾。
今回は1作目以来の長編なんですねー。この方の連作短編は大好きだけど、やっぱり長編だと嬉しいです。しかもシリーズ初の遠出、目先が変わって新鮮ですし。ただ、箱根まで行くとなると、旅に参加できる人数が限られてるのが、やや残念ではあるのですが...。
旅に出た途端に、消えてしまう仁吉と佐助。いつもなら梃子でも若だんなから離れないと頑張る2人なのに、予想外の事態が起きたとはいえ、結局2人とも離れてしまったというのがちょっと納得しきれないのですが... そのおかげで、若だんなが自力で頑張ることになります。いやー、周囲にどれだけ甘やかされても、若だんなって本当に良い青年ですね。皆が若だんなを思いやる心が温かくて、読んでいるこちらまで幸せな気分になれるのが、このシリーズの良さでしょう。やっぱり人間、基本は愛情をたっぷりと受けることなんだろうなー。
物語冒頭で若だんなが山神に尋ねる「私はずっと、ひ弱なままなのでしょうか」「他に何もいらぬほどの思いに、出会えますでしょうか」という問いがとても印象的でした。山神のくれた「浅い春に吹いた春一番で出来た」金平糖のようなお菓子が食べてみたい...。そして印籠のお獅子も既に仲間入りでしょうか。可愛いです~。(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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リンツ少年の住む国では、その頃、怪盗ゴディバによって富豪の家から高価な宝物が盗まれるという事件が相次いでおり、ゴディバを追う名探偵ロイズの活躍が注目されていました。リンツもロイズに憧れる1人。そんなある日、リンツは近所に住む新米新聞記者から、ゴディバがいつも現場に残していくカードの裏に、実は風車の絵が描かれているということを聞きます。それは犯人自身とごく一部の人間しか知らない情報。そしてそのことを聞いたリンツは、以前父と一緒に露店で買った古い聖書の表紙の破れ目に入っていた、1枚の地図のことを思い出します。その地図の裏にも風車小屋の絵があったのです。早速リンツはロイズに手紙を書くことに。

ミステリーランド第10回配本。
主人公が「リンツ」で、怪盗ゴディバや名探偵ロイズが登場することからも分かる通り、登場人物の名前とか地名はチョコレート関係の名前ばっかり。そのほかのこと、例えば濃い白い霧の現象は、地元では「ホワイトショコラ」と呼ばれてますし、ほんと全編チョコレートでいっぱい。でもチョコはチョコでも、ミルクチョコレートではなく、ブラックチョコレートなんですよね。かなりビターな味わいでした。平田秀一さんの挿絵がまたダークで、雰囲気を盛り上げてるし...。(怖かった)
ある意味、あっさりネタが見える部分もあったんだけど、でもこの展開はすごいですね。さすが乙一作品。一筋縄ではいかなくてびっくり。正直、こんなことでいいのか?!という部分はあったんですけど、でも面白かったです。読んでいて一番気に入ったのも、とんでもない悪がきの彼だったし...。戦争や移民問題などもさりげなく盛り込まれてるんですが、説教臭くないところがポイント高し。

ただ、世界各国のチョコの名前が入り乱れてるせいで、読んでいて「ここは一体どこの国?」的に落ち着かなくて、それだけはちょっと閉口しました。だってイギリス名やらドイツ名やらロシア名なんかが入り乱れてるんですもん。まあ、子供だったら気にしないでしょうけどね。
何も知らないでこの本を読んだ子供が、あの名前は全てチョコレート絡みだったのか! と後で気づいたら、楽しいでしょうねー。そういうの、ちょっといいかも。(講談社ミステリーランド)


+既読の乙一作品の感想+
「銃とチョコレート」乙一
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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猿若町捕物帳シリーズ第3弾。今回は、吉原の遊女が3人立て続けに亡くなった事件を調べることになる「吉原雀」、以前は相当の人気があったという女形・村山達之助の演技がめっきり冴えなくなってしまったという「にわか大根」、天水桶から見つかった死体は巴之丞の昔馴染みなのか...「片陰」という3編。

これまでも面白くはあったんですが、梨園シリーズや整体師シリーズなどの他のシリーズ物に比べるとどこか印象が薄かったこのシリーズ、これまでの3作品の中で一番面白かったです! もちろんこれまで通り、巴之丞や花魁の梅が枝の存在が物語に華を添えていますし、仏頂面の千蔭もいい味を出しています。そして今回はこれに加えて、前作で結婚した彼女の新婚生活ぶりが伺えるのが楽しいところ。冒頭のやりとりなんて、ほんと立場が逆転してるみたい。やはり拵えというものは人を変えてみせるものなんですねえ。(笑)
でもそれ以上に気になるのが、梅が枝! 美貌と気風の良さが売りの彼女の本心はどこにあるのでしょう。今後どんな風に展開するのか、目が離せません! 早く続きが読みたいなー。(光文社)


+シリーズ既刊の感想+
「巴之丞鹿の子」「ほおずき地獄」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「にわかだいこん」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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映画化もされてしまった「陽気なギャングが地球を回す」とその続編。
人間嘘発見器・成瀬、相変わらずの演説振りをみせる響野、天才的なスリ・久遠、体内時計の持ち主・雪子の4人が再登場。今回は4人がそれぞれに関わった事件が最終的に繋がりをみせるという作り。せっかくなので、「陽気なギャングが地球を回す」を再読してから、「陽気なギャングの日常と襲撃」を読んでみました。

前作では、響野の喫茶店は登場するものの、他の3人の日常の生活についてはほとんど書かれていなかったんですよね。それがいいところでもあったんですが、やっぱり4人が普段どうしているのかという部分にも興味があったので、今回4人の普段の仕事っぷりや日常生活が垣間見えるのが楽しかったです。題名にも「日常」という言葉がある通り。そして前作と同じく、章のタイトルとか、辞書の言葉の意味のもじりも楽しいです。
でも、相変わらずのテンポの良さで、全体的に楽しく読めたことは読めたんだけど...
私としては4人の颯爽とした強盗ぶりや、響野の演説を楽しみにしていたのに、それが物語の中心とはなっていなかったので、ちょっとがっかり。もっと強盗と本筋と密接に絡み合っていれば、もっと楽しめたんじゃないかと思うんだけどなー。これじゃあ、強盗がまるでオマケみたい。前回の方がオチも良かったし、伏線の回収具合も好きでした。もちろん、こちらもさくさく読めるんですけどね。ちょっとさくさくいきすぎちゃったのかもしれないです。(祥伝社文庫・祥伝社ノンノベル)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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小市民としての道を追求してやまない小鳩くんと小山内さん。周囲は2人のことを恋人同士だと思っているのですが、実は2人の関係はお互いをかばい合うためだけのもの。そして高校2年生の夏は、甘いものをこよなく愛している小山内さんのたっての希望で、小山内さんの夏の運命を左右するという「小山内スイーツセレクション・夏」を完遂することに。

「春期限定いちごタルト事件」が好評だったため、「夏期限定」も書かれることになったという小市民シリーズの2作目。
謎までもがあまりに小市民的で小粒、謎解きのための謎といった遊びの要素が強いように思えた「春期限定いちごタルト事件」は、どうにも物足りなかったんですけど、こっちは面白かったです! 今回も日常の小さな謎から始まるんですが、思わぬ方向へと発展していってびっくり。小鳩くんと小山内さんの目指す「小市民」についても、前作ではどこか地に足が着いていないような違和感を感じてたんですが、こちらでは十分納得。いやー、いいですねえ。しかもまさかこういうエンディングを迎えるとは...。最後まで読んでまた最初に戻ると、各所にきちんと伏線があったのも分かるし、同じ情景がまた全然違った風に見えてくるのが怖いほど。前作が小粒すぎるほどの日常の謎だったことも、今回の驚きに一役買っているんでしょうね。前作が出た時点では、シリーズ化は決定していなかったはずなのに、まるで全てが計算づくのようじゃないですか! そして、ここで終わり、というのも私としてはアリだと思うんですけど(ブラックだ~)、次は「秋期限定モンブラン事件」が出るようですね。ここから一体どんな展開を見せてくれるのか、どきどき。ここから話をどう持っていくかって、難しそう。
ただ、甘い物があまり得意ではない私には、読んでいるだけで胸焼けしてきそうな作品でした。(あのシャルロットなら、いけそうですが) 次回のモンブランも、私には食べられないのよ~。でも、甘い物好きの人にはきっと堪らないんでしょうね。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信

+既読の米澤穂信作品の感想+
「犬はどこだ」米澤穂信
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」の感想があります)

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元大物国会議員・大堂剛の事務所に勤めている佐倉聖は、21歳の大学生。両親が早くに離婚し、中学の頃からぐれ始めた聖でしたが、高校卒業も間近に控えた頃に更生。今では、保護司に連れて来られたこの事務所で、真面目に働きながら大学にも通い、年の離れた腹違いの弟を養う生活。年は若いながらも経験は豊富に積んできた聖が、様々な日常の謎を解いていく連作短編集。

しゃばけシリーズの楽しさとは裏腹に、現代物では立て続けにがっかりさせられてきていた畠中さんの現代物の新作。「とっても不幸な幸運」を読んだ時に、もう二度と現代物は読むもんか!とまで思ってたんですが、今回はあまり評判が悪くないようだったので、恐る恐る読んでみました... 確かにそれほど悪くはなかったです。というか、まずまず面白かったです。
謎自体は小粒すぎる気がするし、政治家の先生方があまりに良い人に描かれすぎている気もかなりしたんですけど、この人間関係の楽しさと、雰囲気の良さは、やっぱり畠中さんならではでしょうね。元不良で腕っぷしが強く、機転も利く聖自身もなかなか良かったし、嫌味な二枚目議員・加納も、結構好きです。まあ、続編を読みたいかと聞かれると、これ1冊で十分と答えてしまいそうなのですが... 元々政治家絡みの話があまり好きじゃないというのもありますしね... 聖がその後どうなるのか、その辺りだけは知りたいんですが。
一時はもう、「しゃばけ」だけの作家さんになってしまうのかも、と危惧してた畠中さんなんですけど、それだけでは終わらなさそうな所を見せてくれてほっとしました。というか、「しゃばけ」シリーズであれだけ書ける方が、なんで、これまでの現代物であの出来だったのかが、私としてはすごく不思議なんですけどね。畠中さんなら、もっともっと書けるはず! これからも頑張って頂きたいな~。(実業之日本社)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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中学の修学旅行で京都に行っていた小野寺冬葉が失踪。その時に一緒にいたのは、修学旅行で同じ班だった6人。知恩院に向かっていた彼らが、市バスに乗り込んでいる間の出来事でした。バスがひどく混んでいたため、乗り込んだ時はバラバラの場所にいた6人。その後バスがすいてきた時、1人足りないのに気づいたのです。行き先はきちんと分っており、自分の意志でバスを降りたとしか思えない冬葉。...そして20年後。冬葉の名前でメールが届きます。文面は「わたしを憶えていますか? 冬葉」。

失踪した冬葉からのメールが届いたことが呼び水となって、20年ぶりに集まることになった元同級生たち。冬葉がまだ生きているのか既に死んでいるのか、メールの発信人は本当に冬葉なのか、冬葉でないとすれば一体誰なのか。そして20年前の冬葉に一体何があったのか。それらの謎を含んで、物語は展開していきます。単行本にして554ページの2段組という長さなんですけど、長さを感じさせませんね。柴田よしきさんならではの語りの上手さもあって、先が気になってどんどん読み進めてしまいましたー。
冬葉にまつわる謎も魅力的なのですが、20年ぶりに集まった5人(6人のうち1人は消息不明)の造形がいいですねえ。14~15歳だった彼らも今や30代半ば。当然仕事にも人生にも一波乱二波乱あるわけです。そんな波乱を乗り越えてきたり、今まさに乗り越えつつある姿が良かったし、読んでいて楽しかったです。でも最後に明かされた真相は...。物語の終盤、とある悪意の存在が明らかになるんですけど... 犯人がそういう人間だったという説得力はあったし、そんな悪意が他の悪意を増幅させていくのも分かるんですけど... でも所詮は単なる自分勝手な大馬鹿人間、という感じに見えてしまって、それまでのこの作品を受け止めるにはちょっと役不足だった気がします...。面白かったし、読んでる間は夢中になってたんですけど、その辺りがちょっぴり残念でした。(徳間書店)


+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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その頃、神降市で起きていたのは、野良猫の連続殺害事件。猫はただ殺されているだけでなく、そのたびに首や手足が切り取られて持ち去られていました。芳雄のクラスメートが可愛がっていた猫も、3日前に4匹目の犠牲者となったばかり。そんなある日、トイレ掃除で一緒になった転校生の鈴木君に話しかけた芳雄は、鈴木くんが自分のことを神様だと言うのを聞いて驚きます。鈴木くんが真面目なのか冗談を言ってるのか判断がつかなかった芳雄は、自分や周囲の人々のこと、そして猫殺しの犯人について訊ねることに。

ミステリーランドの7回目の配本。同時配本は、田中芳樹氏の「ラインの虜囚」。小学校最後の夏休みの冒険譚、みたいな話ばかりが続いて食傷気味だったミステリーランドなんですが、違うタイプの作品も増えてきたようですね。「ラインの虜囚」は、「三銃士」や「紅はこべ」が好きな人には堪らない作品だし(感想)、こちらの「神様ゲーム」もまた一味違いました! これはともっぺさんのオススメ。そういえば「ラインの虜囚」も、ともっぺさんにオススメいただいたんですよねえ♪
そしてこの作品は、一言で言って、「さすが麻耶さん!」 かなりブラックではあるんですけど、ミステリーランドというレーベルに相応しくとても分かりやすい展開。それでも麻耶さんの作品なので油断せずに読んでいたんですが... うわあ、最後の最後が! そうきましたか! さすが「夏と冬の奏鳴曲」の作者だー。うわー、この感覚は久々です。実は麻耶さんの作品は、最初に読んだ「夏と冬の奏鳴曲」のインパクトが強すぎて、他の作品にやや物足りないものを感じていたんですけど... いえ、普通は他の作品の方が読みやすいと思うんですが、「夏と冬の奏鳴曲」の、不可解さに頭がぐるぐるしてしまうような感覚が忘れられなくなってしまった私にとっては、ということです。そしてこの作品は、それ以来のぐるぐる感。もう、嬉しくなってしまいましたー。

でも本当にワケ分かんないです。これは結局どういうことだったの...???(ヲイ)

この作品で一番面白かったのは、やっぱり鈴木くんの存在ですね。自分のことを神様だと言い、「きみといろいろ話せて楽しかったからね。そのお礼だよ」と、簡単に犯人の名前を明かしてくれる鈴木くん。神様を前にしてしまうと、ミステリ的な論理的な推理は存在しません。そこにあるのは、ただ「真実」だけ。でも、鈴木くんは本当に「神様」なのかどうか... 信じていいのか分からない読者(芳雄もですが)にとっては、それは逆に持て余してしまうような真実。
この作品は子供には読ませたくない、という意見は多いし、その気持ちも分かるんですけど... ええと、やっぱりダメですかね? 私自身は、別に構わないんじゃないかなって思うんですけど... 少なくとも第1回目配本の某作品みたいな後味の悪さはなかったと思うし、これなら許容範囲かと... でも、そんな意見は少数派なんでしょうね。限りなくゼロに近かったりして。(笑)(講談社ミステリーランド)


+既読の麻耶雄嵩作品の感想+
「神様ゲーム」麻耶雄嵩
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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今回の作品は、一言でいえば演劇物。書けないで苦しんでる脚本家や、若手の実力派女優や、大学生の劇団員らの視点から物語は進んでいきます。「ネクロポリス」では正直がっかりしたし、「エンドゲーム」では、途中まではものすごく面白かったのに、読み終えみると自分の中に何も残ってなくて、これまたがっかりしていたんですが、これは良かったです。久々の大ヒット! もう、夢中で一気読みしてしまいました。最近すっかり海外物づいてて、日本物を読むのをちょっと躊躇ってたんですが、これは読んで良かったです~。

というのは、きっと私自身がお芝居をとても好きなせいも大きいと思うんですが...。ここ数年はほとんど観てないんですけど、この「チョコレートコスモス」に登場するあの劇場にも、大学時代によく通ってたし、実際に小劇団の公演のお手伝いをしたこともありますしね。(お手伝いとは言っても、ほんのちょっぴりなんですが) そして私自身は大学時代にバンドを組んでいて、ライブハウスの雰囲気が堪らなく好きだったんですが、ライブハウスと小劇場ってあの空気感が共通してたんだなあって、今頃になって思ったりします。そして、これまた今頃気がついたんですけど、私が読んでいて興奮する本って、そういう空気に通じる作品みたいです。どれだけ臨場感があって、どれだけ鮮やかにその情景が浮かび上がってくるかが、私の中での最重要ポイントみたい。いい作品だとは思っても、映像として鮮やかに浮かんでこない作品って、あまり意識や記憶の中に残らないような気がします。

それにしても、役者さんによって演じられている舞台の場面を文章にして、その臨場感や興奮をダイレクトに読者に伝えるのって、とても難しいんじゃないかと思うのに、この作品からは、本当に鮮やかにその臨場感や興奮が伝わってきました。舞台ものとしては、服部まゆみさんの「ハムレット狂詩曲」以来かも。(これも、繰り返し繰り返し「演じる」場面が描かれる作品なんです) 臨場感が肌に直に伝わってくるし、まるで自分もその芝居の場に居合わせているような感覚。それも観客席から見ているのではなく、同じ舞台に立っているかのような、しかも自分も一緒に「向こう側」へと連れて行かれてしまったかのような...。
登場人物の中では、演劇界のサラブレッドで、天才子役から現在や若手実力派女優となっている東響子がすごくいいです。その力やオーラをひしひしと感じます。彼女に比べると、佐々木飛鳥の造形は一見負けてるようにも見えるんですが、でもそれは、彼女がまだまだ卵の段階だから。殻を破って、自分の力で飛び立った後の飛鳥の姿が無性に見てみたくなってしまいます。それに脚本家の神谷の書く芝居がどんな本になるのか、そしてそれがどんな風に演じられるのか、観てみたくて堪らない!
そしてこの作品は、登場する役者さんや劇団について、「これは... もしかして○○?」と考えながら読むのも楽しいです。(毎日新聞社)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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テレビ番組にレギュラー出演し、招霊木(オガタマノキ)を片手に、その卓抜した霊視能力で相手のことを全て見抜いてしまう人気霊媒師・能城あや子。本当は霊視能力などまるでないのですが、何もかも見抜いているかのような発言に人気は急上昇、という連作短編集。
能城あや子は、テレビにもよく登場してるし、書店では著作をよく見かける「あのヒト」(こちらは霊媒というより占い師か)のイメージ。私は、テレビに出ている霊媒師なんて、言っていることがどれだけ当たっていたとしても本物だなんて到底思えないし、ましてや好感を持つことなんて、まずないんですが... でもその認識が、この本を読んでると覆りそうになっちゃう。

表向きには、彼女にはマネージャーが1人いるだけで、テレビの収録の日に出掛けて行って相談者に初めて会い、霊視を行うわけなんですが、実は秘密裏に2人の調査隊がいて、その2人が予め誰が相談者になるのか、どんな相談なのかを探り出し、完璧に調査し推理していくんですね。この過程が、ほとんどミステリの謎解きと一緒なんです。実際には、相談者を尾行したり、その人の家に不法侵入したり、会社のパソコン相手にハッキングをしかけたりと、とてもじゃないけど穏やかとは言えないやり方をしてるんですけど、でもその態度に一本筋が通っているので説得力があるし、あと、このメンバーが「金儲け」から超越してるのがいいのかな... 実際にはかなり儲けてるはずなんですけど、そういう俗っぽい部分が見えてこないんです。なんだか腕のいい職人芸を見せられているような気分。(井上夢人さんご自身が卓越した職人芸を楽しませてくれる作家さんだ!)
やり方はどうであれ、相談者の悩みは解決するし、真犯人は捕まるし、時には監禁されていた人が助け出されることもあるし、どこにも被害者がいないどころか、関係者にとっては能城あや子の霊視はまさに天の声のようなもの。もちろん、能城あや子は絶対にインチキだと決め付けて、カラクリを暴こうとする人間もいるんですけど、スタッフたちの仕事振りは常に完璧を目指していて、敵を欺くには味方から。テレビ局のスタッフのことも調べあげていて、番組に映らない部分でも、こまめに能城あや子に「霊視」させてたりするんですよね。
引き際も鮮やかな、井上夢人さんらしい楽しい作品でした。(集英社)


+既読の井上夢人作品の感想+
「オルファクトグラム」上下 井上夢人
「クリスマスの4人」井上夢人
「the TEAM」井上夢人
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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ともっぺさんに、「四季さんのお好きな『鳥類学者のファンタジア』のフォギーが出てますよー!」と教えて頂いて、その後Bryumさんにも「まだ半分くらいなのですが、面白いです!」とオススメされた作品。ともっぺさんたら、最初にお会いした時に、私が「鳥類学者~」を読んでたのを覚えてらっしゃったんですね。素晴らしい~。

内容としては、「日本近代文学者総覧」という書物で無名の作家・溝口俊平について書いた、三流女子短大の国文助教授「桑幸」が、溝口俊平の遺稿が見つかったという編集者からの知らせがきっかけで、騒ぎに巻き込まれていくという話です。

物語は2つの視点から交互に描かれていて、その一方が助教授・桑幸。こちらが伝奇部門。そしてもう一方はジャズ・シンガーのアキとその元夫・諸橋倫敦という元夫婦(めおと)探偵。こちらはミステリ部門。「鳥類学者のファンタジア」の主人公・フォギーは、このアキの友達なんです。まあ、ほんの脇役なんですけど、でもまた再会できるのはやっぱり嬉しい♪
そして桑幸のパートでは、怪しげな新興宗教団体やら、失われた例の大陸やらロンギヌスやらフィボナッチの数列やら、「鳥類学者のファンタジア」でもお馴染みだった、怪しげなモチーフが満載。いやあ、面白い~。マニアックなユーモアもたっぷりだし、「哀しく、切なく、でもほのぼの幸せなき持ちになれる」と世間一般で絶賛される溝口俊平の童話集には、今の本の売れ方読まれ方に対する強烈な皮肉がたっぷり。桑幸本人は、見かけも中身も人並み以下で、本人が不満な割には三流女子短期大学という場所に実に良く似合った俗物。なけなしの見栄を張っているところとか微笑ましくて、お近づきにはなりたくないタイプですけど(笑)、傍から見てる分には結構好きでした。
でも、桑幸のパートの面白さに対して、ミステリパートはちょっと退屈...。ミステリ系叢書からの配本だからミステリ部分に力が入ってるんでしょうけど、元夫婦探偵の視点オンリーの2章では、読んでる途中何度も寝てしまって、もう金輪際読み終えられないかと思いました...。元夫婦探偵もいいんですけど、全体的に桑幸のパートをメインにしてくれたら、もっと面白くなったんじゃないかと思うし、奥泉さん的にも本領発揮だったんじゃないかと思うのに!
とはいえ、2章さえ終わればこっちのもの。(?) 桑幸のパートが再び挿入される3章からは復活、最終章で2つの視点がめまぐるしい移り変わるクライマックスがまた面白かったです。(文藝春秋ミステリ・マスターズ)


+既読の奥泉光作品の感想+
「モーダルな事象」奥泉光
Livreに「葦と百合」「鳥類学者のファンタジア」の感想があります)

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万引き癖がある戸倉美加子、寄り道のための金を得るために級友の体操服を盗んだ辻岡良枝、ボーイフレンドと2人乗りをしていたバイクで事故を起こした西園寺楓。3人とも歴史のある私立の名門高校・明友学園の生徒であり、家庭教師として家に来ていた教師Xに弱みを握られて、学校を退学していました。明友学園に新任教師として赴任した坪井笑子は、おちこぼれ同然の男子クラスの担任として第二職員室に配置されるのですが、女子生徒に声をかけられて同好会の顧問となることに。そしてその面々と共に、第二職員室にいるらしい教師Xを探ることになるのですが...。

青井夏海さんの作品では、「スタジアム虹の事件簿」や助産婦シリーズの、ほのぼの~とした明るい雰囲気の日常ミステリが大好きなんですが、これはサスペンス調のミステリ。随分雰囲気が変わるんですね...。最初に3人の女子高校生の弱みを握る教師Xの場面があるんですけど、この教師Xがあまりに陰湿で、思わず読むのをやめようかと思ったほどでした。あくまでも悪人という犯人像というもいいんですけど、これまでの青井さんの作風を考えると、悪いことはしても憎めないとか、もう少し救いのあるタイプの犯人像だったら良かったのになあ、なんて思ってしまいます。それに主人公の坪井笑子の造形もあまり好みではなく...。特に、高校時代の同級生の男の子(しかも就職で世話になってる人の息子)に対する態度には、うんざり。付き合う気がないんだったら、はっきり意思表示するのが親切ってものでしょうに。なんだか利用できる時だけ利用しててイヤだなあ。
青井夏海さんの作品なら、もっとほのぼの路線のが読みたかったです。(双葉社)


+既読の青井夏海作品の感想+
「そして、今はだれも」青井夏海
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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このお正月は、もっぱら昨年のうちに人様にお借りした本を読んでました。
まず、池波正太郎さんの「剣客商売」。以前若竹七海さんの「閉ざされた夏」で、主人公のお姉さんが池波正太郎作品をバイブルのように読んでいて、作中に登場する食事をしてたのが気になってたんですが、どのシリーズも長いし、なかなか手が出なかったんですよね。でも第16回のたらいまわし「美味しそうな食べ物が出てくる本は?」の時にワルツさんが挙げてらして、決定的に読みたくなっちゃって!(記事はコチラ) そして、私が読みたがってるのを知ったAさんが、全19巻プラス「包丁ごのみ」プラスその他モロモロを送りつけてくださったのでした。ありがとうございます~。予告どおり年越し読書にしてみました。

 「剣客商売」「辻斬り」「陽炎の男」「天魔」池波正太郎(新潮文庫)

テレビの時代劇みたいに完全に一話完結なのかと思ってたら、話同士に意外と繋がりがあるというか広がりがあっていいですねえ。中心人物が少しずつ変化したり成長していくのもいい感じ。まだまだ先は長いので、続きもじっくり読もうと思います。

そしてこちらは菊池秀行ファンのKさんが送りつけてくださった本。(笑)
二度と読むことはないだろうと思っていた清涼院作品まで入ってて圧倒されましたが(いえ、ある意味予想通りでしたけど・笑)、「なんなんだこれは」と思いつつ、案外楽しかったです。♪やらハートマークやらが文章についてるのには相変わらずげんなりなんですが、最初から開き直って読んでたせいでしょうか?(笑) しかし菊池作品を一気に行くのはちとツライみたいです... 「夜叉姫伝」、1巻の途中で止まってます。最後まで読めるかしら。(それにしてもドクター・メフィストが単独で登場してる時は美青年医師として完全にその場を攫っているのに、秋せつらと一緒に登場すると、たちまち怪しげな魔人に見えてしまうのはなぜ) そして「消失」は一番楽しみにしてた作品。以前から色々と噂は聞いてたし、一度読んでみたかったんですよねえ。一応心構えをしながら読んでたんですけど... なんとこういうオチだったんですか! なるほどぉ。いや、これは強烈だわ...。読者を驚かせることに、ひたすら全力を注いだ作品なんですね。(笑)

 「エル-全日本じゃんけんトーナメント」清涼院流水(幻冬舎)
 「魔界医師メフィスト 兄妹鬼」菊池秀行(角川ノベルズ)
 「消失」中西智明(講談社ノベルス)

    

「魔界医師メフィスト 兄妹鬼」と「消失!」は、画像が出ないですね。「エル-全日本じゃんけんトーナメント」は、私がお借りしたのは幻冬舎ノベルスですが、画像とリンクは幻冬舎文庫のものにしています。
本はこのぐらい。あとDVDを2つ観たので、その感想もまた改めてアップしますね。

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新製品企画会議の席で直属の上司相手にトラブルを起こして、総務部のお客様相談室へと左遷された涼平。そこはなんとリストラ要員の強制収容所と呼ばれる場所で、誰もが1ヶ月、長くもっても2ヶ月で辞める場所だというのですが...。

序盤は正直あまり好みじゃないんですが、涼平がお客様相談室に回されてからが面白いです。クレームをつける客たちもすごいんですけど、ここの社員たちも一筋縄ではいかない面々なんですよねえ。最初は苦情の客に謝ることすらできなかった涼平が、ここで揉まれるうちに一皮も二皮も剥けていくところが良かったです。やっぱりクレーム処理は、苦情のお客さんにまず言いたいことを全部吐き出させて、それから謝るのが基本ですね。言うだけ言ったらすっきりする人もいるんだし。なーんてことをちょっと懐かしく思い出したりして。私も、お客様相談室じゃないけど、クレーム処理は結構しましたよー。悪質クレーマーの実態や、そういうのを撃退していくのも痛快でした。やっぱり荻原さんは元々会社勤めをしてた人だし、会社の中の描写はリアルですね。
でも、最近読んだ荻原作品の中では面白い方だったと思うんだけど、やっぱりデビュー当初のインパクトはなくなっちゃってるような気も。「オロロ畑」とか「なかよし小鳩組」とか、もっと夢中になって楽しめたと思ったんだけどな。それとも私の求めるものが変わってきたってだけなのかな?(光文社文庫)


+既読の荻原浩作品の感想+
「誘拐ラプソディー」荻原浩
「母恋旅烏」荻原浩
「神様からのひと言」荻原浩
Livreに「オロロ畑でつかまえて」「なかよし小鳩組」「ハードボイルド・エッグ」の感想があります)

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浅暮三文さん2冊。「石の中の蜘蛛」は日本推理作家協会賞を受賞してる作品らしいんですけど(同時受賞は有栖川有栖さんの「マレー鉄道の謎」)、それよりも「実験小説 ぬ」の方がずっと面白かった! こちらは「実験短編集」「異色掌握集」という2章に分かれていて、全部で26編の短編が収められてます。実験小説というタイトルに相応しく、面白いアイディアがたっぷり。最初の「帽子の男」からして、面白すぎる~。これは普段何気なく見ている交通標識から、「彼」とその家族の人間模様が浮かび上がってくるという物語。時にはページを上下に分割して、その上下でそれぞれの文章が同時進行させてみたり、様々な図を使ってみたり、あるいはまるでゲームブックのようであったりと、見た目にも新鮮。しかも単なる実験的な作品というだけじゃなくて、それぞれ短編として読み応えがあるのがスゴイんです。浅暮さんのアイディアや想像力、表現力は素晴らしい~。さすが「ダブ(エ)ストン街道」を書いた人だけありますね。こういう作品は、好みがはっきり分かれそうな気がしますが、私は大好き♪ (光文社文庫・集英社文庫)


+既読の浅暮三文作品の感想+
「ラストホープ」浅暮三文
「嘘猫」浅暮三文
「実験小説 ぬ」「石の中の蜘蛛」浅暮三文
「夜聖の少年」浅暮三文
Livreに「ダブ(エ)ストン街道」の感想があります)

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ものすごーく久しぶりの京極作品。「巷説百物語」の続編です。今回も連作短編。小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、事触れの治平、考物の百介という4人も健在。でも、前作も必殺シリーズみたいで楽しかったんですが、今回はまた一味違いました。まず、今回のそれぞれの短編は、「巷説百物語」のそれぞれの短編と入れ子になって進んでいくんですね。そして今回、最初の4つの短編はそれぞれに話が完結してたので、普通の連作短編集かと思ってたんですが、それぞれの短編、それまでの伏線が絡み合って、この本の中で一番長い「死神」へと雪崩れ込んでいってびっくり。いやあ、前作とは物語の深みが全然違うんですね。素晴らしいー。
「憑き物」を落として人を正気に戻す京極堂シリーズに対して、「憑き物」を利用して人を正気に戻すこのシリーズ。この続編の「後巷説百物語」が直木賞を受賞してるんですけど、ここまで綺麗にまとまってしまって、このあとどんな続編が出たのかしら? ちょっと気にはなるけど... でも敢えて読まずに、ここで終わらせておきたい気もします。(角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「巷説百物語」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「続巷説百物語」京極夏彦
「後巷説百物語」京極夏彦

+既読の京極夏彦作品の感想+
「百器徒然袋-風」京極夏彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります

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まだまだ駆け出しの28歳のフリーライター・寺坂真以が主に仕事場としているのは、近所のファミリーレストラン。ノートパソコンや手帳、携帯電話などをリュックに詰めて出かけていきます。そしてそこで出会った謎を、幸田ハルというおばあさんの助けを借りて解いていくという連作短編集。

いわゆる日常の謎物。ここに登場する幸田ハルというおばあさんは、このファミリーレストランが建つ前に、この辺り一帯の敷地の持ち主だった女性で、20年前に既に亡くなっています。つまり幽霊ということ。この設定が松尾さんらしいところですねー。彼女は生前の暮らしを懐かしんで、時々ファミリーレストランに現れるんですが、みんなに見えるというわけじゃなくて、見える人と見えない人がいるという設定。
で、このおばあちゃんが何とも愛嬌があって可愛いんです。特に冒頭の「ケーキと指輪の問題」で、せっかく解いた謎が仕事の役には立たなかったと分かった時のおばあちゃんの反応といったら...。あまりに可愛らしくて、一気にファンになってしまいました。松尾さんらしさはそれほど強烈ではないので、松尾ファンの私にとってはちょっぴり物足りなさも残るんですが、逆にこういう作品がファン層を広げるかも? ぜひ続編も書いていただきたい作品です~。(光文社)


+既読の松尾由美作品の感想+
「雨恋」松尾由美
「ハートブレイク・レストラン」松尾由美
「いつもの道、ちがう角」松尾由美
「安楽椅子探偵アーチー オランダ水牛の謎」松尾由美
「九月の恋と出会うまで」松尾由美
「人くい鬼モーリス」松尾由美
「フリッツと満月の夜」松尾由美
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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福岡に働くイソ弁を主人公にした連作短編集。ええと、イソ弁というのは、「居候中の弁護士」の略でしたっけ? 弁護士事務所に勤めている弁護士のことですね。そのイソ弁として働いている新人弁護士「剣持鷹士」が関わった件を、高校時代からの親友・コーキが鮮やかに解いてしまうというパターン。

いやあ、これはまさに推理パズルですね。特に表題作「あきらめのよい相談者」の解決は、まるでハリイ・ケメルマンの「九マイルは遠すぎる」みたい! いくつか提示されていた事実が思いがけない状態で見事に繋がってびっくり~。いや、本当は多少強引なのかもしれないんですけど、こういう作品に弱いんですよね、私。(^^ゞ
作者の剣持鷹士さんご自身が弁護士だそうで、法律的な薀蓄や、裁判にまつわるエピソードも楽しいです。「裁判ってのは、こちらの主張が正しいと裁判所に思わせること、あるいは相手の主張が正しくないと思わせることなんやから、実際に起こったことは何かって考えてもしょうがなかよ」という言葉で、ああやっぱり弁護士にとっては、真相よりも依頼人を守ることが大切なんだなあと実感。あまり正義感の強い人には向かない仕事なんでしょうね。なんだか苦労が多そうです。

さて、この剣持鷹士さんというのは、「五十円玉二十枚の謎」の一般公募で最優秀賞だった高橋謙一氏。このまま書き続けていればきっと人気作家さんになれたでしょうに、この1冊しか本になってないんですよね。なんだか勿体ないなあ。本業の方がお忙しいのかしら?(創元推理文庫)

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そのお人好しぶりのせいで、いつも事件に巻き込まれてしまう白戸修の連作短編集。1作目の「ツール&ストール」は、第20回小説推理新人賞受賞のデビュー作品。

ミステリ作品、特にシリーズ物は主人公がどうやって事件に絡んでいくかというのが大きなポイントだと思うし、わざとらしくならないようにするのって結構難しいと思うんですけど、この作品の巻き込まれっぷりは、ほんとお見事。しかも白戸修が必ずしも探偵役というわけでもなくて、巻き込まれているうちに何となく解決してしまうという感じなんですよね。もちろん彼自身が何かに気づいてそれが解決に繋がることもあるんですけど、周囲の助けも大きくて。脇役もいい味出してます。
それぞれの短編では、スリとかストーカーとか万引きとか、そういう犯罪がクローズアップされるんですけど、例えばそういうスリの実態とか、ストーカーに対する対処法とか、それぞれの犯罪に関する薀蓄も楽しいんですよね。ちょっぴりピカレスクっぽい雰囲気。で、そういうのに感心しながら読んでたら、突然真相が現れて意表を突かれたり。事件が起きて探偵役が推理するっていう、普通のミステリとはちょっと角度が違うのも楽しいところ。主人公の抜け具合に愛嬌があるせいか、どの作品も後味が良くほのぼのとしています。これはぜひ続編も書いて頂きたいな。(双葉文庫)

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金髪の鶏冠頭の不良少年・竜二が、元担任教師に引きずられるようにして、大酒飲みで借金まみれの落語家・笑酔亭梅寿に入門することになって... という物語。連作短編集です。

随分前からヤマボウシさんにオススメされていた作品。ようやく読めました。
あの田中啓文さんが、こんな普通の (一般的に読みやすいという意味です・笑) 作品も書いてらしたとは! と、まずびっくり。いつもの破天荒な作風はどこにいっちゃったの? 読む前に、先入観入りまくりだったんですけど...!(笑)
いえ、ネットでの評判は上々のようだし、きっとかなり読みやすい作品になってるんだろうなとは思ってたんですけどね。それにしても違いすぎですよぅ。...と偉そうに言えるほど田中啓文作品を読んでるわけじゃないんですが... でもほんとびっくりしちゃいました。ええと、良い方に意外だったし、でもちょっぴり拍子抜けでもあり。
どこが拍子抜けだったかといえば、これが全くそつがない、綺麗にまとまった作品だったってところですね。(やっぱり先入観は大きいぞ・笑) 主人公の竜二が、絵に描いたような不良少年だった割に、特に反抗することもなくこの世界に馴染んでしまうというのもそうだし、特に「派手な外見とは裏腹に、実は良い子で、才能もあった」ってところなんて、「いかにも」ですよね。さりげなく師匠を立てながら、謎解きをしちゃうところも。でもこの師匠、味があってなかなかいいんですよねえ。兄弟子姉弟子も、それぞれに人間らしくて面白かったし。ミステリとしては小粒だけど、きちんと落語のネタにリンクしてるし、落語初心者にも優しい作りだし、話のテンポも良いし、実際にそれぞれの落語を聞いてみたくなる1冊でした。
...でもやっぱり、なんか騙されたような気がするのは拭えない... 妙な先入観がなければ、もっと楽しめたのに! 何かが起きるのを期待しちゃったじゃないかーっ。(笑)
あ、落語といえば、「タイガー&ドラゴン」のDVDはもう出たんですよね。今度借りて来なくっちゃ。(集英社)

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東中島で強盗事件が起こります。被害者は一緒に暮らしている姉妹。妹が刃物で傷つけられていたものの、強奪されたのは現金2万円のみ。しかし姉妹が可愛がっていたチワワも盗まれていたのです。

「狼の寓話」に続く、南方署強行犯シリーズ第2弾。
近藤史恵さんのブログ「むくいぬ屋仮宅」で「犬猫好きの人には、鬱になる内容かも」と書かれてるとは聞いていたのですが、確かにそうでした...。前作もすごーく痛い内容だったんですけど、今回もかなりキツかったです。あんな病気があるなんて、知らなかったよー。あ、知らないといえば、長年動物を飼ってる割に「虹の橋」の話も知らなかったんですけど、検索してみるとものすごい数がヒットしてびっくり。へええ、そうだったんですか。もしかしてものすごーく良く知られてる話だったのでしょうか! でもそういうのを逆手に取る人もいるものなんですね。(怒)
内容的にも、動物の話が人間の話に絶妙にリンクしてる辺りが凄く良かったんですけど、あとがきに、動物絡みの事件というのは、動物が嫌いな人間よりもむしろ動物好きの人間のせいで起きると書かれていたのが痛かった。そうなんですよねえ、動物嫌いの人って、ものすごい迷惑でも掛けられない限り、自分から動物には関わろうとはしないですものね。一般の飼い主以外にも、動物愛護団体のボランティアをしてる人間とか、ブリーダーとか、他にも色んな立場の人が出てきて、もうほんと色々考えさせられちゃいます。動物が好きで、しかも最初は善意から始まってることだけにやり切れない...。(徳間ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「南方署強行犯係 狼の寓話」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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5年前に離婚した夫にしつこくつきまとわれ、思わず殺してしまった花岡靖子。その時靖子に声をかけたのは、アパートの隣室に住む高校の数学教師・石神でした。石神は自分に任せておけば全てが上手く行くというのですが...。

「探偵ガリレオ」「予知夢」に引き続き、湯川学と草薙刑事の登場する作品。でもこれって単純にシリーズ物と言ってしまっていいのでしょうか! これまでの2作品は湯川の物理の知識を生かした、いわば理科の実験を見てるような楽しさのある連作短編集だったんですけど、この作品は雰囲気がまた全然違うんです。本格ミステリでありながら、純愛小説。
アリバイは完璧なのに、靖子を疑い続ける警察。そして警察の先手を打って着実にコトを進める石神。実はこの石神、かつては50年か100年に1人の逸材とも言われた数学の天才で、湯川学とは、帝都大学の同期だったんですねー。まず、この2人の頭脳対決が見もの。コトの真相には、びっくり。でもそういうミステリ的部分よりも、石神の純愛の方が印象的でした。客観的に見て、靖子は石神がそこまで惚れこむほどの女性とは思えなかったんですが、でも石神にとって、そんなことはどうでも良かったんでしょうね。彼のダルマのような体つきと無表情な顔の奥に隠された深い感情... 最後の慟哭は切なかったです。(文藝春秋)


+シリーズ既刊の感想+
「探偵ガリレオ」「予知夢」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「容疑者Xの献身」東野圭吾

+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「赤い指」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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今回の「セ・シーマ」の「名探偵夢水清志郎の謎解き紀行」は、なんとオリエント急行が舞台。トルコのイスタンブールからフランスのパリまで列車の旅をするというのです。早速イスタンブールへと飛ぶ夢水清志郎。そして同じ列車に乗ることになったのは、怪盗クイーン、探偵卿、海賊、トルコの犯罪組織・黒猫の双子の兄妹... 残念ながら、今回岩崎三姉妹は留守番です。

今回は名探偵夢水清志郎(教授)と怪盗クイーンが共演なんですが、なんと挿絵も共演です。村田四郎さん描かれる教授と、K2商会さん描かれる怪盗クイーンが表紙に! ...なのですが、あまりの違和感のなさに、最初全然気付かなかった私... 私の目って変?!
可笑しかったのは、教授とクイーンが季節の贈り物をする間柄だったってこと。クイーンのカリブ海クルージングのお土産のお返しに教授が送ったのは、コタツやみかん、綿入れ半纏などが入った「日本の冬気分セット」ですって。半纏を着てコタツに入ったクイーン、機嫌よく手作りおでんなんかも用意しちゃいます。ま、それがまたジョーカーを怒らせることになるのですが...。
結果としては引き分けなんですけど、どうも印象としては教授の方がいいとこが多かったような気がします。クイーンはジョーカーにこっぴどく叱られるし、1人トルバドゥール号出て行っても誰にも心配してもらえないどころか... だし、変装をあっさり見抜かれてしまったりもするし... 逆に、いつもは暇さえあれば意地汚く食べている印象の教授(今回もかなり食べてますが!)、なかなかかっこ良かったです。でも岩崎三姉妹がお留守番で、出番がほとんどなかったのが残念。次回はぜひみんな一緒で! (講談社青い鳥文庫)


+シリーズ既刊の感想+
ブログにはこれ以前のシリーズ作品の感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「氷菓」「愚者のエンドロール」に続く、古典部シリーズ3作目。とうとう文化祭が始まり、古典部も文集「氷菓」を販売することに。しかし30部の予定だった発行部数は、何かの手違いで200部に...?!

今回は古典部の4人のメンバーの視点から順番に描かれていて、それぞれの個性が感じられて楽しいです。このシリーズは、毎回趣向が凝らされていて楽しいなあ。そして今回、200部もの文集を捌かなくちゃいけなくなった面々が大変なんですけど、そこにいい感じで文化祭が絡んでくるんですよね。わらしべプロトコル、最高! 千反田えるの意外な手際とそのオチ(笑)も楽しいです~。そして今回、自らデータベースと称する福部里志の「データベースは結論を出せないんだ」発言や、伊原摩耶花と漫研の河内先輩のやりとりが痛かったです...。「ピンポン」(映画)で、「なにしろ才能というものは、望んでいる人間にのみ与えられるものではないからな」という台詞があるんですよね。それを思い出しちゃいました。
「クドリャフカの犬」というタイトルがもっと中身に密接に繋がってくるのかと思ってたのに、期待したほどではなかったのがちょっぴり残念でしたが、今回も楽しかったです。(角川書店)


+シリーズ既刊の感想+
「氷菓」「愚者のエンドロール」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信

+既読の米澤穂信作品の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「犬はどこだ」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「さよなら妖精」の感想があります)

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「結構元気に病人をやっている」(笑)若だんなのシリーズ第4弾。やっぱり畠中さんはこのシリーズが一番好き! そりゃ4作目ですから「しゃばけ」や「ぬしさまへ」の頃の新鮮味は薄れてしまってるし、若だんなのお兄さんの話がすっかり落ち着いて以来、特に大きな波風も立たないんですけど、でもマンネリ化を恐れずにこの路線を追求していって欲しいなあ。
今回は屏風のぞきや鳴家といった、今まで脇でいい味を出していた妖(あやかし)が中心となった話があったり、5歳の頃の若だんなのエピソードなんかもあったりして、相変わらずのほのぼのぶり。でも突然、「吉原の禿を足抜けさせて一緒に逃げることにしたよ」などと爆弾発言をしてくれたりします。若だんなが駆け落ち? しかも吉原の... ええっ?!
そんな中で、今回一番気になってしまったのは、初登場の妖(あやかし)「狐者異(こわい)」。他の妖とは違って、人間はもちろんのこと、妖ともまじわらない狐者異は、仏すらも厭い恐れたという妖なんですよね。それがなぜなのか誰も教えてくれないし、生れ落ちた瞬間から、他の者たちのつまはじきとなる運命。受け止めきれた者がいないというこの狐者異に、若だんなが手を差し伸べるのですが...
一応今回の話はこれで終わりなんだけど、この狐者異、また登場しそうな気がします。そしてその話こそが、このシリーズ全体の山場となりそうな予感...。(新潮社)


+シリーズ既読の感想+
「しゃばけ」「ぬしさまへ」「ねこのばば」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「おまけのこ」
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「いっちばん」畠中恵

+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
Livreに「百万の手」の感想があります)

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8歳の時に会って一目惚れした許婚が数ヵ月後に死亡。そして9年後、17歳になった芳娥は許婚の死は殺人だったことを知ることになり、犯人を探し始めます。許婚は当時の宋の宰相・王安石の長男で、当世きっての秀才と名高かった人物。王安石の推進する「新法」にも大きく貢献していました。犯人は「新法」瓦解をたくらむ、旧法派の大物・司馬公と思われるのですが...。

森福都さんの新作。森福さんお得意の中国を舞台にしたミステリです。(嬉)
王安石や司馬公は実在の人物だし、新法派・旧法派の争いも本当にあったんですね。宋代の神宗~哲宗皇帝の時代が舞台。
中国冒険活劇... ってほどではないんですが、剣戟場面もありますし、芳娥自身がかなり長身の男装の麗人なので、司馬公に近づくために大人気女優・月英の助けを借りて偽劇団を作ってみたり、その後の逃亡劇や幻の漆黒泉探し、そこに隣国・西夏の存在や幻の武器開発も絡んできて、なかなか盛りだくさんな華やかさとなってます。芳娥の許婚を殺した真犯人は本当に司馬公なのか、それとも... と、みんなが疑心暗鬼になってくるのも楽しかったし。これで許婚の若い頃にそっくりという少游がもうちょっと活躍してくれれば、もっと良かったんですけどねえ。
でも実は犯人が誰かとか黒幕が誰かとかそういうのよりも、漆黒泉の正体にびっくりでした、私。そ、そういうことだったのか...!
いえ、これは別に秘密でもなんでもなくて、物語の前半で分かっちゃうんですけどね。なるほどねえ...。(文藝春秋)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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単なる犬捜しのつもりが本格的な探偵業をすることになってしまった紺屋長一郎と、探偵に憧れて押しかけてきたハンペーこと半田平吉の2人の視点から展開していく、ハードボイルド系作品。登場人物の平均年齢もぐっと上がるし、これまでの作品、特にホータローの古典部シリーズや「春期限定いちごタルト事件」とはまるで違う雰囲気なんですねー。
本当は人間捜しの探偵業なんてしたくないのに、失踪した孫娘の行方を捜して欲しいという依頼を受けてしまう長一郎。彼の視点は、意外なほど本格的なハードボイルド。対するハンペーの視点は、「トレンチコート」「サングラス」「マティーニ」と、本当は形から入りたがる彼らしいユーモラスなハードボイルド。こちらの仕事は、地元の神社に伝わる古文書調べ。途中「オロロ畑」が出てきた時はびっくりしましたけど、そう言われてみれば、丁度萩原浩さんの「ハードボイルド・エッグ」みたいな雰囲気ですね。(笑) 登場した時は、単なる勉強嫌いのオチコボレキャラかと思ってたのに、意外や意外! なかなかいいですねえ、彼。

ただ、「失踪人捜し」と「古文書調べ」という2つの依頼が、どんな感じで繋がっていくかっていう肝心な部分に関しては、面白いというよりも正直じれったく...。普通、もう少し途中経過を報告しないですか? あ、でもこのラストはかなり好き。これが読めたんだから、まあいっか、とも思ってしまいました。(^^ゞ
ハンペーもまだこれからなんでしょうけど、長一郎に関してはまだまだ明かされてない部分が多いし、本領発揮もしてない感じ。長一郎のチャット相手のGENの正体もそのうち明かされるのかな? 続編もありそうなので、楽しみです。(東京創元社)


+既読の米澤穂信作品の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「犬はどこだ」米澤穂信
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」の感想があります)

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「フォー・ディア・ライフ」「フォー・ユア・プレジャー」に続く花咲慎一郎シリーズ第3弾。
このシリーズは大好きなので、出た時から読みたくて仕方なかった作品。でも、ちょっと物足りなかったかな... 今回、山内練の隠し子疑惑なんてものがあるので(笑)、全編を通して山内練が登場してくれて嬉しいんですけど、でもなんだか今回の山内練は、いつもと違うんですよね。
このシリーズって、ハナちゃんこと花咲慎一郎が色んな事件に振り回されてるうちに、事件同士に思わぬ繋がりが出てきて、限られた時間の中でパタパタとそれらが綺麗に片付いていくのが一番の魅力だと思ってるんですが、今回の作品にはそういうのがないんです。しかもいつもなら、そこには冷酷非道な山内練のおかげでたっぷりと緊迫感があるのですが、今回の山内練は妙にハナちゃんに優しいというか甘いというか...(^^;。...もっとも、今回は1つの長編というよりも3編の連作短編という感じなので、事件の関連については仕方ないのかもしれないんですけどね。(だからといって、別々に楽しめるほど、独立した短編とも思えないんですが)
まあ、そんな風になんだかんだと思いつつも、やっぱりこのシリーズは大好き。探偵業はしているけれど、本職はあくまでも保育園の園長先生のハナちゃん。いつも古本ばかりで可哀想だからと、ようやく入った現金収入で新品の絵本を買いに行ったり、ヨレヨレに疲れてるのに、子供たちのためにインスタントラーメンの匂いが部屋に籠もらないよう、屋上に出るハナちゃんが大好きです。(実業之日本社)


+シリーズ既刊の感想+
「フォー・ディア・ライフ」「フォー・ユア・プレジャー」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき

+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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現在37歳独身、大手総合音楽企業企画室の係長・墨田翔子が主人公。恋人もなく、部下の人望もなく、1人でランチはお手の物。しかし仕事一筋の生活にふと疲れを感じた時、彼女は思い立って有給をとりオーストラリアのケアンズへ...。

ということで、働く女性たちのお話。社会に出て働く以上、仕事面でも人間関係面でもストレスとは無縁ではいられないし、仕事が出来れば出来たで同僚に妬まれたり中傷されたり、出来なかったら出来なかったで上司に叱責されるし、しかも時にはセクハラの危険もあるし、男尊女卑のオヤジどもとも戦わなくちゃいけなかったりして、そりゃもう大変。(もちろんそんなマイナス面ばかりではないけれど)
そんな中で頑張ってる女性たちの描写がすごく素敵です。特に主人公の墨田翔子、こんな女性だったら上司にしたいなあって思っちゃう。人に対する好き嫌いは当然あるけど、それとは別にいい仕事をする人間は認めているし、ミスは容赦なく指摘する。相談事をした時は意外と親身になってきちんと考えてくれ、それだけでなく行動に移す。
1人ぼっちの自分の姿に、時には自嘲気味になる彼女なんですが、きっと自分で思ってるほど嫌われてるわけじゃないんでしょうね。そりゃあこれだけ仕事ができる女性が上司だったら、意識もするし、とっつきにくく感じても不思議じゃないです。まあ、あんな風に人前で計算ミスの指摘をされたくはないですが...(^^;。 相談事をした女性たちも、その懐の意外な深さに驚かされたはず。そこらの男どもより、ずっと男前。最後の対決もかっこよかったな。(新潮社)


+既読の柴田よしき作品の感想+
「ワーキングガール・ウォーズ」柴田よしき
「シーセッド・ヒーセッド」柴田よしき
「窓際の死神(アンクー)」柴田よしき
「夜夢」柴田よしき
「激流」柴田よしき
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「怪笑小説」や「毒笑小説」に次ぐ、ブラックユーモア短編集。13編が収められています。
この中で目を引くのは、やっぱり4編の文壇物でしょうね。表紙の写真にも東野さんご自身が登場してるし、某文学賞に5度目のノミネートという作家・寒川は、どう考えても東野さんご自身がモデル。とは言っても、別に自虐的なギャグじゃなくて、周囲の「きっと東野は悔しがっているだろうな」という期待に応えてみたんだと私は思ってるんですが... どうなんでしょう。(笑) 作中に登場する唐傘ザンゲ氏の「虚無僧探偵ゾフィー」が読んでみたいな。勝手な想像としては、舞○王○郎作品がモデルなのかな、なんて思ってるんですが...?(笑)
そういう文壇物は独立させて1冊にして欲しかったような気はするんですけど、下ネタ物その他がミックスされて、「黒笑」が程よく緩和されているのかも。私が特に楽しんだのは「インポグラ」と「モテモテ・スプレー」なんですが、「シンデレラ白夜行」も面白かったな。突然の童話調に驚いたんですけど、このシンデレラこそが彼女なのですね~。(集英社)


これで東野作品は再びコンプリートのはずだったんですが、一昨日「容疑者Xの献身」が出ちゃいました。いやーん、なかなか追いつかない... じゃなくて、好きな作家さんの新作が次々に読めるなんて幸せ! 今度は早めに読めるよう頑張ろうっと。


+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「容疑者Xの献身」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「赤い指」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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1人娘を殺された長峰。娘が2人の少年にレイプされているビデオを見た時、彼は...。

久々の東野圭吾作品。分厚い2段組だし、相当重いテーマのようだったので、もしかしたらこれは相当ツラいかも... と思ったんですが、読み始めたら一気でした。いや、でも、もう何を書いたらよいのやら... 自分の子供、特に女の子を持つ親ならば、長峰に同情せずにはいられないでしょうね。こんなひどいことをしても、3年もすれば仮出所できるなんて! 「少年法は子供を裁くためのものではなく、間違った道に進んでしまった子供たちを助けて、正しい道に導くために存在する」なんていう言葉が、ほんと白々しく感じられちゃうほどのどうしようもない少年たち。長峰は、司法に任せておいても犯罪者に制裁など加えてくれないだろうと、自分で犯人を1人殺し、もう1人を追いかけることになるんですが、警察はそんな長峰に同情しながらも、長峰の次の犯罪を未然に防ぎ、しかも長峰を逮捕しなければならないわけで... 正義って一体ナニ? 
でも果てしなく広がってしまいそうな、少年法に対する問題提起を、これだけの作品にまとめた東野さんはやっぱりすごいです。(ここでは切り落としてる部分まで含めたら、ほんと何冊も書けそう) はああー、ずっしり。(朝日新聞社)


+既読の東野圭吾作品の感想+
「ちゃれんじ?」東野圭吾
「さまよう刃」東野圭吾
「黒笑小説」東野圭吾
「容疑者Xの献身」東野圭吾
「さいえんす?」東野圭吾
「夢はトリノをかけめぐる」東野圭吾
「赤い指」東野圭吾
「たぶん最後の御挨拶」東野圭吾
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「市民サーヴィス課臨時出張所」の貼り紙と折り畳み式らしい机と共に、市内のそこここに現れる「腕貫探偵」の連作短編集。
「日頃のご意見、ご要望、なんでもお聞かせください。個人的なお悩みもお気軽にどうぞ」なんて貼り紙と一緒に座ってる「腕貫探偵」を見た人たちは、ついふらふら~と寄って行って、話すつもりがなかったことまでどんどん話しちゃう。で、それを聞いた腕貫探偵が一言二言アドバイスして、あっという間に解決しちゃうという、そんな話です。どことなく、同じく西澤さんの「完全無欠の名探偵」みたい。腕貫探偵のアドバイスは確かに的確だけど、最後の部分は結局相談者が自分で推理してたりしますしね。もしやあの「みはる」が、神通力(?)が弱まって、ここの市役所に就職したのか...? なんて思っちゃいました。(笑)(腕貫探偵は、一応市役所の市民サーヴィス課一般苦情係... 本当なのかな?)
ものすごーくテンションが低い探偵なんで(笑)、緊迫感はほとんどないし、謎も小粒。でも登場人物がいいのです。本の後味を爽やかにしてくれた蘇甲純也と筑摩地葉子も良かったし(相変わらず素直に読めない名前...)、7編の中で特に気に入ったのは、「スクランブル・カンパニィ」で、玄葉淳子と秋賀エミリという2人の存在がとても強烈! 事件の内容や解決そのものよりも、 4課には他にどんな面々がいるんだろう、なんてそんなことが気になっちゃいました。その辺りの話も今度読んでみたいなあ。(実業之日本社)


+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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新宿に古くからある「酒場」は、クセモノ揃いの常連客たちが集まってくる場所。そこに店長の義理の娘・のり子が100円ショップで売っていた缶詰を持ち込んだことから物語は始まります。

「百万の手」に続く現代物。「百万の手」みたいに不満がいっぱい残ることはないし、まあまあ可愛らしい連作短編集なんですけど... でもやっぱりなんだか物足りない...。「いつでも帰れる場所」としての「酒場」の存在は魅力的だったんですが、いくら美味しそうな食べ物が出ても、北森鴻さんの香菜里屋みたいな存在にはならないし、それより何より、100円ショップの缶詰という小道具がちょっとチープ過ぎじゃないですかね? 13歳ののり子にはともかく、いい年した常連さんたちにはちょっと合わないですよー。
やっぱりファンタジックな畠中さんの作風には、現代という舞台はあまり合わないんでしょうかねえ。同じような物語でも時代物なら、もっとすんなりとその世界に入り込めたのかも。...それでも詰めの甘さは変わらないか... 「しゃばけ」のシリーズは大好きだし、もっと面白い作品が書ける人だと思うのに残念だなあ。(双葉社)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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またしても酒見賢一さん。こちらはデビュー作の「後宮小説」に続く短編集です。これも全然中国の気配すらなくて、現代日本のミステリの形式を借りて小説という虚構を皮肉っていたり、古代ギリシャ哲学者や数学者の話であったり、徐々に現実と幻想の境目がなくなっていくホラー(ファンタジー?)であったりと、作風は様々。解説を読んでいたら、この本が出た時の酒見さんの「中国小説の作家だと勘違いされてるようだったので、いかんなあと思ってああいうのを書いたんですけどね。あれを読んで得体の知れない作家だなと思われたらうれしいですね。何でもありという作家になりたいんですよ」という言葉が引用されてたんですけど、まさにその通りになってるじゃあないですか!(笑)
この中で気に入ったのは「籤引き」という短編。泥棒とか殺人が起きた時に、真犯人を探し出して裁判にかけるのではなくて、籤引きで当たった人間こそが真犯人、という考えをしている未開の村の描写がとても面白いんです。一見非常識に見えるこのやり方も、読んでいるうちに徐々にそれが正しいように思えてきてしまうんですよねえ。(笑)(講談社文庫)

私が読んだのは古い講談社文庫版なんですが、画像とリンクは集英社文庫版です。(どちらにしても今は入手できないんだけど)


+既読の酒見賢一作品の感想+
「陋巷に在り」1・2 酒見賢一
「陋巷に在り」3・4 酒見賢一
「陋巷に在り」5・6 酒見賢一
「陋巷に在り」7・8 酒見賢一
「陋巷に在り」9・10 酒見賢一
「陋巷に在り」11・12 酒見賢一
「陋巷に在り」13 酒見賢一
「語り手の事情」酒見賢一
「聖母の部隊」酒見賢一
「ピュタゴラスの旅」酒見賢一
「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一
「中国雑話 中国的思想」酒見賢一
Livreに「後宮小説」「墨攻」「童貞」「周公旦」の感想があります)

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「死神」は情報部に指示された人間に近づき、7日間のうちにその人間が死んでもいいかどうかを判断、「可」なら8日目にその死を見届けるのが役目。仕事がくるたびに、対象となる人間に近づきやすい年齢や外見となって近づき、淡々と仕事をこなします。特に問題がない限り「可」を出すことになっているため、ろくな調査をせずに「可」としても構わないのですが、「ミュージック」をこよなく愛する死神たちはギリギリまで判断を保留し、CDショップに入り浸るのです...。

ということで、先月出た伊坂幸太郎さんの新作。死神の「千葉」を主人公にした連作短編集です。そのうちの1作「恋愛と死神」は、以前雑誌で読んでるんですが、やっぱりこうしてまとめて読むとずっと面白い! 死神だなんていう突拍子もないはずの設定なのに、すんなりと作品の世界に入れちゃうし、しかも6つの短編はそれぞれに恋愛物だったり雪の山荘を舞台にしたミステリだったり、ハードボイルドだったりとバラエティ豊かで、それもとても面白いんです。特に雪の山荘なんて、死神ならではの真相が!(笑) そして最後の「老婆対死神」がまたいいんですよー。読んでいるとどの人間も死なせたくないって思っちゃうし、それでも千葉は感傷に流されることなく「可」の判定を下してしまったりするのだけど、でも最後まで読むと「それで良かったのね」という気になりました。飄々としていてちょっぴりズレた発言をする千葉の造形もすごく楽しいし、雨男の千葉なので雨の情景ばかりなのに、読後感はとっても爽やかです。
淡々とそつなくまとまっているようでいて、そこにはしっかり伊坂さん流の笑いの感覚が潜んでいるんですねー。大満足。これは続編もぜひとも書いて頂きたいのだけど、ここまで綺麗にまとまっちゃったら無理かしら?(文藝春秋)


+既読の伊坂幸太郎作品の感想+
「死神の精度」伊坂幸太郎
「魔王」伊坂幸太郎
「砂漠」伊坂幸太郎
「終末のフール」伊坂幸太郎
「陽気なギャングが地球を回す」「陽気なギャングの日常と襲撃」伊坂幸太郎
「フィッシュストーリー」伊坂幸太郎
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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今回は再読したわけじゃないんですけど、Livreに載せている感想をこちらにエントリしておきます。読んだのは2004年6月なので、丁度1年前ですね。この作品を読んだ時点では、「妖都」「蘆屋家の崩壊」だけが既読だったはず。そちらの2作との雰囲気の違いにすっごく驚いた覚えがあるんですけど... そんなこと一言も書いてないや(^^;。
以下Livreからの転載です。

ミッション系のルピナス学園の女子高校生・吾魚彩子が級友の桐江泉と京野摩耶、そして憧れの祀島龍彦と一緒に、刑事をしている姉・不二子とその相棒・庚午宗一郎から持ち込まれた事件を推理するという連作短編集。
最初の2編は、10年ほど前に「津原やすみ」名義で講談社X文庫から出版された、「うふふルピナス探偵団」「ようこそ雪の館ヘ」を全面改稿したもの。そしてこれに「大女優の右手」が新たに書かれたのだそうです。X文庫の時とは、おそらく文体がかなり違うのではないかと思いますが、さすがに元は少女小説らしく、テンポが良くてさくさくと読める楽しい作品となっています。そしてやはり少女小説ならではといったところで、キャラクターが魅力的。特に彩子の憧れの祀島くんが何ともいい味を出しています。収められているのは、「冷えたピザはいかが」「ようこそ雪の館へ」「大女優の右手」の3作。

「冷えたピザはいかが」倒叙式のミステリ。犯人がなぜピザを食べなければならなかったのかというのは今ひとつ納得できなかったのですが、エアコンのタイマーの説明には非常に納得。「ようこそ雪の館へ」奇妙奇天烈な推理も披露されるのですが、しかしその着眼点が面白いですね。「大女優の右手」ここで演じられている尾崎翠の「瑠璃玉の耳輪」は、実在する作品。その舞台の艶やかさが伝わってくるような作品です。プラチナの腕輪という小道具の使い方も鮮やかで、しかも切なさを孕んでいていいですね。この作品の中では、右手が切断されたというのも、まるで1つの儀式のように見えてくるのが不思議。遺体の移動トリックが面白く、3作の中ではこれが一番好きです。

彩子と祀島くんの恋の行方も気になりますし、続編もぜひ書いて頂きたい楽しいシリーズです。(原書房)

とのことデシタ!


+既読の津原泰水作品の感想+
「ペニス」津原泰水
「少年トレチア」津原泰水
「綺譚集」津原泰水
「妖都」津原泰水
「蘆屋家の崩壊」津原泰水
「赤い竪琴」津原泰水
「ルピナス探偵団の当惑」津原泰水

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ささらさや」の姉妹編。 「ささらさや」と同じく佐々良という小さな町が舞台で、登場人物も共通しているのですが、こちらの主人公は照代という15歳の女の子。せっかく希望の高校に受かったのに、浪費家の両親のせいで借金取りに追われることになり、会ったこともない遠縁の親戚「鈴木久代」を訪ねて1人で佐々良へ来るところから物語は始まります。
主人公の照代は全然可愛げのない生意気な女の子。でも両親からされた仕打ちを考えれば、ある程度は仕方ないですよね。彼女の尖った部分が、彼女の寂しさや哀しさをそのまま表しているようで切なかったです。でもそれも佐々良にやって来て色んな人と出会うちに少しずつ柔らかくほぐれていくことになるわけで... まあ、言ってしまえばとっても分かりやすい展開なんですが(笑)、でも加納さんらしく柔らかくて暖かくて、でもドキッとさせられる部分もあって良かったです。
「ささらさや」と同じように不思議なことが起こるのですが、こちらの出来事は「ささらさや」の時ほど物語を左右するものではなくて、言ってしまえばスパイス程度。でもそのスパイスのおかげで、重くなりすぎずに読めたような気がします。それにやっぱりこの佐々良という町がいいんですよねえ。なんだか久しぶりの友達にばったり会えた気分です♪(幻冬舎)


+シリーズ既刊の感想+
「ささらさや」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「てるてるあした」加納朋子

+既読の加納朋子作品の感想+
「ななつのこものがたり」加納朋子
「モノレールねこ」加納朋子
「ぐるぐる猿と歌う鳥」加納朋子
Livreに、これ以前の全作品の感想があります。

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20年前、古都・K市で起きた陰惨な殺人事件。それは、地元の名家の祝いの席に届けられた酒とジュースに青酸系化合物が混入されており、子供6人を含む17人もの人間が亡くなるというものでした。そしてその10年後、その出来事は本として出版されます。事件当時中学生だった雑賀満喜子が、大学の卒論のために当時の関係者に話を聞いて回りまとめたものが、「失われた祝祭」という本として出版されることになったのです。そしてさらに20年後。

事件に関わった人物1人ずつの証言を元に、過去の事件を浮き上がっていくという形態。「Q&A」と似たような手法なんですね。ただしこちらは基本的にQはなくてAだけ。
もちろん事件そのものも浮き上がってくるんですけど、むしろ事件から10年経ってそれぞれの当事者たちの想いが浮き上がってくるというのがポイントなのかもしれないですね。はっきりと質問者が存在していた「Q&A」と違って聞き手の言葉が直接的に登場しないので、まるで自分もその場にいて話を聞いているみたい。そしてなんだか話を聞いてるというよりも、なんだかそこにある混沌とした深淵を覗き込んでいるような気分... 不気味。もちろんそれらの話の中には真実ではないことも含まれているかもしれないし、明らかに事件当日のことを書きながらも、固有名詞が微妙に変えられている部分もあります。巧妙にはぐらかされながら、それ少しずつ核心に近づいていく感覚が堪らない! ...そしてまた最初に戻るのですね。うーん、素敵だわ。恩田さんの作品って最後に近づくと、普通とは違った意味で(笑)ドキドキするんですけど、今回はこの曖昧さがすごくいい方に出てるような気がします。恩田節全開。...と言いつつ、インタビュワーの存在とか、他にも気になってしまう部分もいくつかあったのだけど...(笑) そしてこの本、装幀が凄いんですね。中身も素敵ですが、外側のカバーも。薄い紗のようなグレーで全て塗り込めてしまうような装幀です。(角川書店)

ということでようやくユージニアを読了したので、先日書いていた通りMy Best Books!の恩田陸Best3に参加しますね。しかしこれが迷うんですよねー。どうしよう?


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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津原泰水まつりエントリ第2弾。これも好きなんですよー、「蘆屋家の崩壊」。このタイトルは、言うまでもなくエドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」からですね。30を過ぎても未だ定職についていない猿渡という男と、怪奇小説家、通称「伯爵」の連作短編集。豆腐好きで、美味しい豆腐が食べられると聞けば、日本中遠征してしまう2人の物語。豆腐ですよ、豆腐。出てくる豆腐料理がまた美味しそう。それにこの2人のやり取りも楽しいのです。でもね、そんな風に一見ごく普通の雰囲気かと思えば、実はそこには僅かな歪みが...。何かがおかしいと思ってる間に、いつの間にかその歪みに捕らえられて、落とされてしまうのですねえ。
今回再読して驚いたのは、冒頭の句読点の少なさ。句読点が少なくても全然読みにくくならなくて、むしろそのせいか、最初の短編なんてたった6ページなのにとっても濃いです。独特の濃密さを醸し出しているのですね。これで引きずり込まれちゃう。で、気がついたら句読点は普通になっているのだけど、最初のその効果が持続して勝手に増幅しているのか、もう離してくれないのです。...句読点が少ないといえば、舞城王太郎さんの文章もそうですよね。句読点が少ないというよりはほとんどなくて、独特のリズムとパワーのある文章。でも同じように句読点の打ち方に特徴があるとはいっても、そこにある雰囲気は全くの別物で、なんだか不思議。
でも、確かに句読点の打ち方って重要ですよね。妙に読みにくいと思ったら句読点のせいだったり。...そうか、私も句読点次第で文章の雰囲気を変えられるのか、なんて思ったんですけど、例えば私の文章から句読点を減らしても、ただ単に読みにくくなるだけなんだろうな。

この作品、どうやら猿渡は津原氏本人、伯爵は井上雅彦氏がモデルのようです。この井上雅彦という方も、どんな方なのかとっても気になります。実は未だに読んだことがないので...。(ホラー系は苦手だし←本当か?)(集英社文庫)


+既読の津原泰水作品の感想+
「ペニス」津原泰水
「少年トレチア」津原泰水
「綺譚集」津原泰水
「妖都」津原泰水
「蘆屋家の崩壊」津原泰水
「赤い竪琴」津原泰水
「ルピナス探偵団の当惑」津原泰水

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服飾関係の専門学校を卒業しながら、希望する仕事が見つからずに、ファミリーレストランでバイトをしている久里子が主人公。そのファミリーレストランの内外で起きた奇妙な出来事を、常連客の老人・国枝が解き明かしていきます。

大好きな近藤史恵さんの新刊。でも読みながらなぜか、加納朋子さんの「月曜日の水玉模様」を連想していました。設定も内容も全然違うのに、なぜなんでしょうね。軽快さ加減が似てるのかな? 軽快といえば「天使はモップを持って」「モップの精は深夜に現れる」のキリコちゃんシリーズも同じように軽快なはずなんですけど、こっちのイメージではないんですよね。なぜかしら... 
というのはともかくとして、なかなか可愛らしい連作短編集でした。主人公の久里子や弟の信の成長物語となっているし、それぞれのキャラクターも魅力的。国枝老人が色々な謎を解いていくんですけど、この国枝老人自身が出会う場所によって雰囲気を変えるという謎な人なので(笑)、そっちへの興味も相まって楽しかったです。強烈なインパクトはないし、近藤さんらしい「痛さ」とか「切なさ」はあまり感じられなかったんですけど、読んでいてとても心地良い作品でした。こういうのも好きー♪ シリーズ物になってくれたら嬉しいんですが... この終わり方だと、どうなんでしょう?(文藝春秋)


+シリーズ既刊の感想+
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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神麻嗣子ちゃんのチョーモンインシリーズ第7弾。ようやく読めました!
この1冊の中に収められているのは短編が7編。いつもよりも短い? それにいつものレギュラー陣が、ほとんど登場してない! 特に保科さんなんて最初だけじゃないかーっ。とはいえ、いつものように明るく楽しく、ちょぴり毒を含みながら話が展開していきます。色々とみょ~な超能力が登場して面白いし、やっぱりこのシリーズは好きだなあ。それにあとがきに書かれているような「キャラクターを外側から眺める物語を書いてみたくなる」というのは分かります。私もそういうのを読むのは大好きです。
でもね、それはいいんですけど... 今回は全体的に随分小粒のような気も。なんでこんなに小粒なんだろう、短編集の時はいつもいくつ入ってたかしら、と調べてみたら、「念力密室!」「転・送・密・室」「人形幻戯」の時はそれぞれ6編ずつ。全体のページ数はそれほど変わらないはずなんですよね。1編増えるだけで、こんなに短く感じるのか... と、ちょっとびっくりでした。うーん、「短い=小粒」でもないと思うんだけど...。次こそは、ぜひとも!じっくりとした長編が読みたいです。本当に。(講談社ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「幻惑密室」「実況中死」「念力密室!」「夢幻巡礼」「転・送・密・室」「人形幻戯」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦

+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「都会(まち)のトム&ソーヤ」シリーズの第3弾。今回も楽しかったです。2~3度、思わず噴出してしまった場面もありました。デートの下見だの文化祭だの、中学生らしくっていいですねえ。今回、内人の「おばーちゃんの知恵袋」(勝手に命名)も結構あったので、かなり満足。でも、創也がどんどんボケキャラになってるのは... これでいいのでしょうか...?(クラスメートは創也が目の前でボケてても全然本気にしてないけど・笑) そして創也のお目付け役の卓也さのシャドー保育ったら!(爆笑) 彼に幸せが訪れる日は本当に来るのでしょうか...。
それと新たな敵役も登場しました。この人は次回以降レギュラーになるのかな? 次回も楽しみです。(講談社YA! ENTERTAINMENT)


+シリーズ既刊の感想+
「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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なんだか怖い表紙ですねー。これは本のことどもの聖月さんのオススメの作品。聖月さんったら力を入れるあまり、まるでスパムのようなトラックバックまでばら撒いたんですよー。(笑) その聖月さんの書かれた書評はコチラ
で、そのトラックバックを頂いてから1ヶ月以上経ってしまったわけなんですが、読んでみました。(←これでも早い方なのだ) 
舞台は江戸末期から明治にかけての日本。表題作は、とある狂言作家が、若い頃に師匠に聞かされた話を物語るという形式。この表題作の中にも、顔は美しく化粧をしていても心の中は...という譬えが出てくるんですが、まさにそういう感覚の作品群です。核となる登場人物たちは、かつては華やかな暮らしをしていたり、幸せを掴んでいたりと一応恵まれた日の当たる場所にいたはずの人々。なのに物語の視点となる人物が見ている「今」は、既に凋落した生活ぶり。そこには一応、一般的な人々が納得できるような理由や解釈が存在するんですが、それだけではないんですよね。読んでいると、まるでたまねぎの薄皮を1枚ずつはがしていくような感覚です。1枚ずつはがしていって、その一番奥に潜むものは...? もうほんとゾクリとさせられます。5つの物語には特に繋がりも何もないのですが(日本の伝統的芸能が多く登場するけど)、でもやっぱりこれは連作短編集なんじゃなかろうかーって思います。全て読み終えてみると、どれも1人の狂言作家の目を通してみた物語という気がするし。本物の芝居を書くために、人々の生業やそこに潜む闇を覗きこむ目、ですね。
ええと、純粋に好きかどうかと聞かれると、実はあまり私の好みとは言えないのだけど...(聖月さん、ごめんなさいー)、でもオススメしたくなるのも良く分かる良質の短編集。翔田寛さんって、去年ミステリフロンティアに書かれるまでは、実は名前も良く知らなかったんですけど、こんな作品がデビュー作だなんて! しかも埋もれていたなんて!(あ、別に埋もれてない?) たとえば心の闇を描いた作品が好きな人なら、すごくハマると思います。一読の価値はあるかと♪(双葉文庫)

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ススキ野原に囲まれた秋庭市立秋葉図書館は、立地条件があまり良くないことから、あまり利用者も多くなく、図書館職員も暇をもてあそぶ毎日。そんな図書館で新米司書の文子が出会う謎を描いた、日常の謎系の連作短編集。
図書館が舞台ということで、とても読みたかった本。私も図書館は大好きだし、作品全体の雰囲気もとても良くて、繊細な感じ。そしてほんのり暖かい読後感が残ります。しかもこの作品に登場する2冊の児童書は、私も子供の頃大好きだった作品なんです。ええと、1つはメアリー・ノートンの「床下の小人たち」なんですが、もう1つはタイトルを出すとネタばれになりそうなので伏せておきますね。知ってる人は読んでる途中でピンと来ると思うんですが。あ、でも 最後に能勢夫人が借りた本が分かりません。あれは何なのでしょう?
登場人物もそれぞれにいい味を出してるし、特に水曜日ごとに図書館に来る「深雪さん」が素敵。北村薫さんや加納朋子さんが好きな人は、きっと大好きになるんじゃないかしらという作品です。という私も、もちろん楽しめました。でもね、5つ星の満足度ではないんですよね。どこか物足りなくて... 読み終わった後、なんでだろう? と考えてしまいました。多分、プラスアルファの「深み」が足りないんでしょうね。...でもやっぱり一読の価値がある1冊ですね。図書館好きさんは特に。(東京創元社)

今月はすっかり翻訳物づいてしまって、翻訳物は19冊読んでいるというのに、国内の作品は津原泰水さんの「綺譚集」に続いてこれでようやく2冊目。で、この2冊ともが図書館本なんです。図書館は、ゆっくりゆっくり利用中。でもやっぱり図書館の期限って強力ですね。(笑)
それと今日は古本屋で本を大量に処分してきました。紙袋5つ分で、しめて6千円♪ 部屋も気分もすっきりです。 


+既読の森谷明子作品の感想+
「れんげ野原のまんなかで」森谷明子
「千年の黙(しじま) 異本源氏物語」森谷明子
「七姫幻想」森谷明子

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アイルランドの和平実現を目前に控えた1997年7月。スライゴーのB&B・レイクサイド・ハウスで、IRAと並ぶ北アイルランドの武装勢力・NCFの副議長が何者かに殺害されます。政治的な理由で警察を呼ぶことが出来ないまま、同行していたNCF参謀長のトムは、偶然居合わせた日本人科学者・フジらと共に事件を調べ始めることに。

ということで、石持浅海さんのデビュー作。アイルランドを舞台にしたミステリというのも珍しいし、しかも北アイルランド問題が絡んでくるところなんて、なかなか面白かったです。(IRAはもちろん実在ですけど、NCFって架空の団体ですよね...?) テロ組織っていったら、もっと血の気が多い人たちを想像しちゃうんだけど、案外みんな理性的なのは、やっぱり和平交渉が進んでる最中だからでしょうか。(笑)
でもそっちは良かったんだけど、肝心のミステリ部分に関しては、ちょっと物足りなかったかも。殺し屋に関しても真相に関しても動機に関しても他のことに関しても、予想してた所に直球ストレートなんですもん。私の予想が当たることなんて珍しいから尚更なんですけど、でも今回は、これまた私にしては珍しく、「これしかない」と思ってたんですよね。普段は断然物語重視で、たとえトリックが多少破綻してても気にしない私なんですが、これほど驚けないとなるとやっぱりちょっと考えちゃいます。だって唯一びっくりした箇所が、「~を」が「w」になってる誤植だけだったんですもん(^^;。 とはいえ、これがデビュー作なんですものね。こんな素材をミステリに絡めて書ける作家さんが出てきてるというのは、やっぱりすごいな。他の作品はどんな感じなのか楽しみです。(光文社文庫)

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A女学院の英語教諭・ニシ・アズマ女史は、学院の屋根裏部屋が大のお気に入り。時間が空くとその部屋で絵を描いたり、運び込んだ古ベッドで午睡をしたりしています。しかしそんな彼女も赤縁のロイド眼鏡をかけると名探偵に変身。学院の内外で起きた出来事を解き明かしていきます。...ということで、昭和32年から33年にかけて雑誌に連載されていたという連作短編集。北村薫さんが「謎のギャラリー 謎の部屋」で取り上げて絶賛、文庫化の運びになったようです。さすがに時代を感じさせる文字遣いや文章なんですけど、でもそれがまた逆に雰囲気を出してました。
時には殺人も起きてるのに、むしろ「日常の謎」に近い雰囲気。意外と観察眼の鋭いニシ・アズマ女史が偶然何かを目にして、「おや」と思ったところから事件が始まります。ほんの小さな出来事から、事件の全体像を描き出してしまう鮮やかさ。でも普段のニシ・アズマ女史は、あくまでものんびり午睡を楽しむ可愛らしい女性なんですよね。この彼女の雰囲気が作品全体の雰囲気になっていて、とても優しい読後感。ミステリ部分以上に、この雰囲気をのんびりと楽しみたい作品かも。飄々とした味わいのある1冊でした。 (創元推理文庫)

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久々の御手洗シリーズの長編。 レオナに届いたファンレターから、大正8年に箱根の芦ノ湖にロシアの軍艦がいたという写真の謎、そしてさらに大きな歴史的な謎へと物語は発展していきます。
御手洗が北欧に行ってしまってから、このシリーズへの興味もすっかり薄れてしまってたんですけど(子供の頃の御手洗には興味ないし、海外で活躍するのもあんまり好きじゃない ←ワガママ)、これは北欧に発つ前年の話だったんですね。いや、面白かった。読み始めた時は、こんな壮大な話になるとはつゆ知らず。なんだかまるで全盛期の御手洗物を読んでるような雰囲気もあって、懐かしかったなあ。これこそが真実に違いない!って迫力もありました。...でもねー、パソコン通信全盛の1993年に、インターネットで簡単に検索しちゃってるのが驚き!しかも出先で!?とか、彼女は話せないの、話したくないの、どっち?!とか、つい気になってしまった部分もいくつか。ああ、些細なことなのに! 普段は細かいことなんてほとんど気にせず読んでるのに(面白ければオッケー)、一旦気になりだすと止まらないのはなぜぇ。そんなことに気付いてしまった自分がカナシイ。や、面白かったんですよー。
これは元々「季刊島田荘司2000Autumn」に発表された作品で、その時は、文庫にして80ページほどのエピローグはなかったのだそう。御手洗物としては本編だけでも十分だと思うけど、もしかして本当はエピローグの方が書きたかったのかな? これがあるのとないのとでは、かなり印象が変わりそうです。(角川文庫)


+既読の島田荘司作品の感想+
「ロシア幽霊軍艦事件」島田荘司
「UFO大通り」島田荘司
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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「邪馬台国はどこですか?」の姉妹編とも続編とも言える作品。美貌の歴史学者・早乙女静香とフリーライターの宮田、バーテンの松代はそのままなんですが、今回は三谷教授の代わりにペンシルベニア大学教授のハートマン氏が加わります。彼は古代史の世界的権威。でもほとんど物語の視点提供だけといった感じですね。今回も静香のツッコミに、宮田の一見突拍子もない推論が繰り広げられるのが楽しい連作短編集。でも「邪馬台国」ほどの説得力は感じられなかったかな...。今回は、前回みたいな「わー、本当にそうなのかも!」じゃなくて、「ほおー、そう来るのか」という感じだったし。とはいえ、やっぱり楽しかったです。この軽快さは鯨さんならではですね。しかも今回バーテンの松代さんもかなり頑張ってましたよ。小林ケンタロウさんの「ドカンと、うまいつまみ」が参考文献に入ってるって聞いてたんですけど、それも納得。本当に参考文献に載ってるところを見た時は笑っちゃった。あ、そういうつまみとかカクテルの参考文献もそうなんですけど(笑)、こういう作品の参考文献って、タイトルを見てるだけでも面白そうで読みたくなっちゃいますね。そして、ここで活躍する早乙女静香は、「すべての美人は名探偵である」で、「九つの殺人メルヘン」の主人公の桜川東子と共演してたんですね。これも読んでみたいなあ。(創元推理文庫)

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新しく自分の劇団を立ち上げようとしている度会恭平と、その度会恭平に、「この人しかいない」と思わせた風見爽馬。"劇団φ"のための納得のいくメンバーを探すために、2人は日々走りまわることに...。

全部で7章から成っている作品。そのうちのいくつかの章は、ジャーロに連載されていた時にも読んでいたんですが、今回最初から通して読んでみると、その時の印象とはまた全然違っていたのでびっくり。ジャーロで読んでいた時は、それぞれに独立した1つの短編のように読んでたんですけど、全体を通して読むと、これは連作短編集というよりもむしろ、1つの長編だったんですね! で、1つの章に1つずつ謎が含まれていて、度会さんと風見さんがその謎に関わり合っていくんですが、でも謎解きをするというよりも、むしろ彼らが関わった人間1人1人の心のしこりやわだかまりを解きほぐしていっているような感じ。単に「謎」というよりも、もっと深いものを感じました。そして最初の6章のそれぞれの物語が少しずつ他の章と重なって1つの世界を作り上げていき、最後の「...そして、開幕」にそれぞれの思いが流れ込み、昇華されていくような印象。
いやー、本当に良かったです。光原さんの作品はどれも好きで、新しい作品を読むたびに「この作品が一番好き!」と思ってしまうんですけど、またしても「一番」の作品が!(笑) 最後まで読んで、また最初に戻ったり、今度は途中のところ読んでみたり、ずーっと余韻を楽しんでましたもん。(出先で読んでいたので、特に最後の章を読んだ時は涙腺が緩んでしまってすごーく困ったのですが...) 一瞬で印象をまるで変えてしまう度会さんもとても魅力的だし(特に、うかつに触ったら手が切れそうな時の度会さんが堪らないっ)、度会さんと風見さんのコンビも楽しいし、この2人にスカウトされたシロちゃんこと吉井志朗さんも、またいい味出してるし...! 彼の「シロちゃんと呼ばんでくださいっ」を聞くたびに和んじゃいます。でもでも、やっぱり私は風見さんが一番好きだーっ...! ジャーロで読んでた時も惚れ込んでたんですが、またしても惚れ直してしまいました。やっぱりあの目はポイントですね...っ >光原先生
ああっ、彼が主演を演じたという例の舞台、観てみたいっ。あ、もちろん劇団φの旗揚げ公演も見てみたいです。これは果たしてどんな話なんでしょう。想像(妄想?)がふくらみます。これからの劇団φがどうなっていくのかも、とっても楽しみ。...その時は、「Oさん」も登場するのかな? あ、しないのかな?(笑)(光文社)


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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「天使はモップを持って」の続編。明るくキュートな清掃員・キリコちゃんのシリーズ第2弾です。仕事で色んなテナントに出入りするキリコは、そこで関わった人の悩みを解決したり、社内での謎を解明したりしていきます。
やっぱりキリコちゃんは可愛ーい。何かに悩んでいる当人には、物事の全体像はなかなか見えてこないものだし、少し離れたキリコの立場だからこそ見えてくるものもあると思うんですけど、やっぱりそういうのをちゃんとキャッチしているのは、キリコの素直さとか気配りとか、そういうのがあってこそなんですよねー。読んでいて、キリコの言葉には何度もはっとさせられちゃいました。や、ほんとに。
近藤史恵さんがあとがきで、キリコをずっと天使のままにしておくこともできるけれど、それが嫌で敢えて彼女の「羽衣を隠した」と書いてらっしゃるんですが、その「羽衣を隠した」ことがこのシリーズに、深みを出しているような。普段はキリコの明るく頭の回転の早い面が全面に出ているけど、ふとした時に、隠された心の一面が垣間見られるのがやっぱり魅力的だし、それが読後感を暖かいものにしているんじゃないかと。やっぱりこのシリーズは大好きです。(ジョイノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「天使はモップを持って」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「モップの精は深夜現れる」近藤史恵
「モップの魔女は呪文を知ってる」近藤史恵

+既読の近藤史恵作品の感想+
「賢者はベンチで思索する」近藤史恵
「南方署強行犯係 黄泉路の犬」近藤史恵
「にわか大根」近藤史恵
「ふたつめの月」近藤史恵
「サクリファイス」近藤史恵
「タルト・タタンの夢」近藤史恵
「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵
「寒椿ゆれる」近藤史恵
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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クリスマスの時期に読もうと思っていたのに、今頃になってしまいましたー。でも実際にはあんまりクリスマスは関係なかったですね。帯の「ビートルズが死んだ1970年。すべてはそこから始まった」というのも、まあその通りなんですけど、ジョンだのポールだのの名前がちらっと登場するだけです。(笑)
クリスマスの夜に人身事故を起こしてしまった4人の20歳の若者。警察には行かずに、その事故を隠すことを決意したのですが、その10年後の同じクリスマスの夜、4人の前にあの時死んだはずの男が現れて... という話。話は1970に始まり、10年ごとのクリスマスということで視点を変えて描かれていきます。導入はそれほど珍しくないパターンだし、オチはオチで、これは賛否両論なんじゃないかなあって思うんですけど(私は楽しめたけど←何でもアリ人間) でもこの10年ごとの描写が、ごくさりげないんだけど、なんかいいんです。新入社員の月給が3万7千円だった(!)という1970年に始まり、インベーダーゲーム全盛期(?)の1980年、バブル景気のの1990年、ほとんど現代の2000年。この登場人物たちと同年代の読者なら、もっとノスタルジーを感じられるんじゃないかなあ。んでもって、この4人はいくつになっても変わんないなーって感じなんですけど、でも学生時代の仲間って、ものすごーく久しぶりに会っても、会った瞬間昔の仲間に戻っちゃいますもんね。そんなことを思うと、なんだか微笑ましかったです。(光文社文庫)


でもこの作品の死体遺棄部分を読んで、先日読んだ雑誌の記事を思い出しちゃいました。その記事のタイトルは、「人は土に返れなくなっちゃったのよ」。自然食品の記事のようだったので、てっきり比喩的な意味だと思っていたら、そうじゃなくて本当に土に返れなくなってるという話でした。その理由は、食品と一緒に体内に入り、そして蓄積されていった防腐剤。日本では火葬がほとんどですけど、土葬のアメリカでは、遺骸の内臓がなかなか腐らないのが問題になってるんですって。も、もしや頭とか身体の表面とかはでろでろ~んと腐ってきてるのに、内臓だけはツヤツヤのピカピカ...? これは怖い! で、そういう防腐剤などの有害な添加物を腸から押し出して洗い流すことができるのは、玄米だけなんですって。そうだったんだー!!
玄米、食べましょうねっ。腐らない内臓、怖いです...(^^;。


+既読の井上夢人作品の感想+
「オルファクトグラム」上下 井上夢人
「クリスマスの4人」井上夢人
「the TEAM」井上夢人
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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姉が殺人鬼に襲われている現場に居合わせることになってしまい、自分も頭を強打された主人公。1ヵ月後、昏睡状態から醒めた彼は、世界が一変しているのに驚きます。彼の嗅覚は並の犬以上になってしまっていたのです...

ということで。読む前は、またまたすごい設定だなあと思ったんですけど、読んでみるとこれがすっごく面白くてびっくり。いやー、やっぱり井上夢人さんは凄いわ。話自体も勿論面白いんだけど、こんな風に匂いを表現してしまうとはー。主人公は匂いを「嗅ぐ」のではなく、「目で見る」ことになるんですけど、その匂いの情景がすっごく綺麗なんです。こんな嗅覚にはなりたくないけど、でもこの匂いの結晶は見てみたいぞー! それに途中でテレビ局が入ってきた辺りから、これはもしかしたらあんまり好きじゃない展開になるかも、とちょっと構えたんですけど、全くの杞憂でした。いやー、面白かったです。やっぱり井上夢人さんの作品は好きだー!(講談社文庫)


+既読の井上夢人作品の感想+
「オルファクトグラム」上下 井上夢人
「クリスマスの4人」井上夢人
「the TEAM」井上夢人
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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明治30年代を舞台に、「食道楽」という本邦初の美食小説を書いた実在の小説家・村井弦斎が探偵役となる連作ミステリ。弦斎は、丁度シャーロック・ホームズみたいな感じですね。弦斎と一緒に行動する友人・山田文彦が医学助手をしてるというところは、ワトソン役にぴったりだし。(笑)
伊藤博文や大隈重信といった明治期の立役者も登場しますし、あと松本良順(この頃は松本順という名前)とか、元新撰組隊士の甥という人物とかね。「美食探偵」というタイトルの割には、美食部分にはそれほどそそられなかったんですけど(これだけは残念)、でも村井弦斎がこの作品の中で執筆している「食道楽」にはすごく興味が湧いたし、ミステリとしてもそれほど凝ってるわけじゃないんだけど、素朴なところが逆にとても魅力的。文明開化の時代の空気を楽しめる、気持ち良い作品でした。これはシリーズ化はしないのかな? うーん、やっぱりしないかしら。「その後」を描いて欲しい気もするし、でもここでやめておく方が余韻が楽しめていいような気もするし... どうかしら。(講談社文庫)

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 EDGE4 檻のない虜囚 [amazon] [amazon]
昨日の続きの「EDGE」3巻と4巻です。今回は毒ガス事件に犬の連続虐殺事件。どちらの犯人も、ごく普通の生活を送っているごく普通の人たち。そんな人たちが、ふとした瞬間に「普通」から一歩踏み出してしまうんですね。表れ方はちょっと違うんだけど、共通点は家族。今回の2人の犯人はなんだか表裏一体のよう。でも犯人を追い詰める大滝錬摩だって、いつ一歩踏み出してもおかしくないわけで...。そういった心理の描き方がやはり絶妙。でもって、錬摩も「自分自身を追い詰める」から、だんだん「贖罪」へと移行してるような気もしたりして。
で、そんな事件以外にも、錬摩とその保護下にある藤崎宗一郎の関係にも大きな変化が! 一度は脳に銃弾を受けて零歳児状態にリセットされてしまった宗一郎なんですけど、どんどん成長してるんですよね。このままいったらどうなるんだろう... という危惧はそのまんま現実のことになっちゃいました。もうこの2人の緊迫感だけでもドキドキ!
でも、どうやら次の巻で最終話らしいんですけど、この状態で一体どうやってオチをつけるつもりなんだろう...?! 錬摩と宗一郎のことに決着つけるだけでも大変だと思うのに、思わせぶりな人物や、解決していない事件、怪しげな動きをする人々がうじゃうじゃといて、あと1冊だけで全てが収まるとは私にはどーしても思えないです。もしや5巻は分厚い上下巻?(それはそれで嬉しいのですが♪)
ということで、早く次巻が読みたいです!(ぜひとも頑張って下さいませ♪>とみなが貴和サマ)(講談社X文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「EDGE」「EDGE2 三月の誘拐者」とみなが貴和
「EDGE3 毒の夏」「EDGE4 檻のない虜囚」とみなが貴和
「EDGE5 ロスト・チルドレン」とみなが貴和

+既読のとみなが貴和作品の感想+
「セレーネ・セイレーン」とみなが貴和
「夏休みは命がけ!」とみなが貴和

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 EDGE2 三月の誘拐者 [amazon] [amazon]
ホワイトハート文庫にしては硬派な作品だとは聞いてたんですけど、ほんとにそうでした! うわー、これはほんとホワイトハートじゃあ勿体ないですよぅ。や、私はホワイトハートも好きですけど、読者がすごく限定されそうですからねえ。すごく骨太な作品なんですもん。もっと幅広い層に読んでもらわなくっちゃ! って言ってる間に口コミで広がってるのかな?(笑)
主人公は、民間人でありながら、天才的なプロファイラーとして警察に協力していた大滝錬摩。3年前に起きた事件が元で、今は飛騨の山村に引っ込んでるんですが、警視庁がそんな錬摩を無理矢理引っ張り出してくるんです。プロファイリングといえば、「羊たちの沈黙」なんかが真っ先に思い浮かぶんですけど、ああいう猟奇的な事件ではないんですね。1作目は連続爆弾事件、2作目は連続少女誘拐事件。本当はもっと天才プロファイラーの天才たる所以を見せて欲しい気はしたんですが、でも犯人や大滝錬摩自身の心理がとても肌理濃やかに描かれてるのがとても良かったですー。着実に犯人の範囲を狭めて追い詰めていく錬摩ですが、このプロファイルという作業によって追い詰めているのは、実は自分自身だったりして... まだまだ謎を秘めている錬摩もとても魅力的ですし、錬摩が飛騨に引っ込むきっかけとなった事件で、脳に銃弾を受けて瀕死の重傷を負った元相棒・藤崎宗一郎という存在も気になります。今後一体どうなっていくのかしら... どきどき。
それにしても、この表紙のイラストは大滝錬摩のイメージにぴったり! 美しくて、しかも絶妙です♪(講談社X文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「EDGE」「EDGE2 三月の誘拐者」とみなが貴和
「EDGE3 毒の夏」「EDGE4 檻のない虜囚」とみなが貴和
「EDGE5 ロスト・チルドレン」とみなが貴和

+既読のとみなが貴和作品の感想+
「セレーネ・セイレーン」とみなが貴和
「夏休みは命がけ!」とみなが貴和

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北森さんの作品は久しぶり。なかなか気分が乗らなくて積んだままだった本なんだけど、昨日の「警視庁草子」と登場人物がかなり共通しているようなので、今がチャンス!と選んでみました。明治12年に、後に「藤田組贋札事件」として知られる偽札事件の容疑で逮捕された大阪の豪商・藤田傳三郎の話。ミステリ風味なのかと思ったら真っ当な歴史小説だし、傳三郎の伝記的な作品かと思ったら、彼の影的な存在だった宮越宇三郎の話だったんですねえ。や、この宇三郎がいいんですよ。最初は「鬱陶しい人だな...」的視線で見てしまった宇三郎なんですが、中盤以降どんどん光ってきてびっくり。ほおぉ、これはよろしいですなあ。あ、この時代に活躍した高杉晋作や久坂玄瑞、伊藤博文といった長州の志士たちも登場します。
で、この話自体もとても良かったんだけど、昨日の「警視庁草子」と比べると、これがまた面白いんですよね。同じ贋札事件、同じ下手人による事件が、描き方によってこうも違ってくるとは。私なんて、どれを読んでも「ほー、そうだったのか!」状態だから、どれも真実に見えてきて困っちゃう。歴史ミステリなんかでも、「それがきっと真実だろう」と思い込んでる作品が結構ありますしね。私のこの騙されやすさっていうのは、もしかしたら本(特にミステリ)を楽しむ上で最大の美徳かもしれないわっ。(←自虐的)(文春文庫)


+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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 警視庁草子 下 [amazon] [amazon]
明治初期。まだ混沌とした時代を背景として、警視庁と元江戸南町奉行の面々の対決を描いた作品。いやー、この時代の政府の要人はもちろんのこと、有名人が多数登場、所狭しと動き回ってるのが凄いです。だってね、清水次郎長とその乾分の大政・小政、河竹黙阿弥、雲霧お辰に高橋お伝、山岡鉄舟、幼い頃の夏目漱石や幸田露伴、樋口一葉、少年時代の森鴎外、そして皇女和宮まで! 他にもまだまだ色んな人たちが表に裏に活躍するんですよ。まるで江戸時代から明治への時代の流れをフルカラーで見せられてるみたい。元江戸南町奉行が、「隅の老人--いや、隅の御隠居と呼んでもらおうか」と言っていたり(オルツィ!)、仕掛け人の話のところでご隠居が横を向いて「御免下され、池波正太郎殿」と言っていたり(笑)、しかもこーんなところに新撰組のあの人が!(ここで、大河ドラマでその役をやってた役者さんの顔がどどーんとアップになる) 森鴎外の初恋秘話やいかに?! もう虚実を取り混ぜて自由自在って感じ。山田風太郎って、ものすごい知識の人だったんだろうなあ...。誰が善で誰が悪ということもないのが、またいいんですよね。途中ちょっぴりダレた部分もあったんですけど(これはきっと私の知識不足のせい)、最後の追い込みがまた良かったです。色んな人の想いが切なかったなー。(ちくま文庫)


+既読の山田風太郎作品の感想+
「明治断頭台」山田風太郎
「警視庁草子」上下 山田風太郎
Livreに「魔界転生」の感想があります)

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 笛吹き男とサクセス塾の秘密 [amazon] [amazon]
はやみねかおるさん2冊。
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」は、その名の通り虹北恭助シリーズで、これが4冊目。先行していた漫画(未読)の原作として書かれたそうで、いかにも漫画~という演出も。(笑) 小学校の時から不登校、中学ではふらっと外国に出てしまった恭助なので、本当に「ハイスクール」なのかどうかは...なんですけど(笑)、野村響子ちゃんは高校2年生。もう高校2年生ですかー。ついこの間まで小学生だったのに!(←近所のオバサン感覚) 彼女、週に2通ぐらいずつラブレターを貰ってるんですって。すごっ。今回は恭助がちょっとハッキリとしたとこを見せてくれたのが収穫かな。それに私の中では「新冒険」「新・新冒険」がちょっと低調だったので、復調してくれた感のあるこの作品はなかなか良かったです。でも新登場の人物(へんてこなフランス人!)もいて楽しかったのに、次の作品でシリーズとしては修了なんですって。残念。
「笛吹き男とサクセス塾の秘密」は、夢水清志郎シリーズの12冊目。このシリーズももう10周年とのこと。でも、作中の時間経過は2年8ヶ月。(笑) 3つ子の岩崎姉妹やレーチも中学3年生。高校受験を控えて一応大変そうなんですが、でも受験よりもむしろらぶらぶ~な雰囲気だったかも。(笑) そういえばこのシリーズ、去年テレビでやってるのを見ちゃったんですよね。岩崎姉妹をやってたのは三倉茉奈・佳奈の双子で、タイトルも「双子探偵」。亜衣と真衣だけで、美衣がいなくてさびしいの。本来1人2役だってできるんだから、2人3役ぐらいやって欲しかったなー。(講談社ノベルス・講談社青い鳥文庫)


+シリーズ既刊の感想+
ブログにはこれ以前のシリーズ作品の感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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中学時代の自分たちの姿を反省し、高校進学を機に「小市民」になることを決意している小鳩常悟郎と小山内ゆき。しかしなるべくひっそりと過ごそうとする2人ですが、謎の方が彼らを放っておいてくれず... という話。同じ米澤さんの古典部シリーズと同じく、高校を舞台にした日常の謎系の青春小説。題名もインパクトあるけど、この表紙も可愛いなあ。
常悟郎は中学時代名探偵として目立ってたらしいのがすぐに分かるんだけど、小山内さんは一体何があったんだ...?!と、日常の謎よりも、そっちに興味津々な私。(笑) んんー、日常の謎の方は、古典部シリーズに比べるとちょっと色褪せて感じられちゃったかな... あ、でもそれが小市民の小市民たる所以なのか?? それでも最後の幕引きは鮮やかで、まさに「春期限定いちごタルト事件」でした。ただ気になったのは、2人の過去を知る人間がなんでこんなに少ないのかということですね。常悟郎の小学校時代の級友が1人出てくるだけなんですもん。同じ中学の人間はことごとく入試に落ちてしまったの? あと、小山内さんの小学校時代の友達とかは...??
爪を隠したこの2人を見ていると、なんとなく西尾維新さんの「魔法少女りすか」を思い出しました。常悟郎と創貴って、ちょっぴり似てません? あ、似てないかなー...(^^;。(創元推理文庫)


これでちょっとは勢いがついたかな? ということで、次は長~いのを行きます。全13巻なんですけど、ぼちぼちと古本屋で集めてたら12巻まで揃ったので。んんー、一気に読めるかしら。これで一気に波に乗りたいところですが♪
さて、私は何を読むのでしょう。...答は明日分かります。(笑)


+シリーズ既刊の感想+
「春期限定いちごタルト事件」米澤穂信
「夏期限定トロピカルパフェ事件」米澤穂信

+既読の米澤穂信作品の感想+
「犬はどこだ」米澤穂信
「クドリャフカの順番 『十文字』事件」米澤穂信
「ボトルネック」米澤穂信
「遠まわりする雛」米澤穂信
「インシテミル」米澤穂信
Livreに「氷菓」「愚者のエンドロール」「さよなら妖精」の感想があります)

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サラ金の借金が膨れ上がって取立屋に追われるようになり、勤め先の親方を殴って金と車を持ち出した主人公。最早自分に残されているのは自殺しかないと思いつめるのですが、ことごとく失敗。そして、知らない間に車に乗り込んでいた少年の家が金持ちらしいと知って、突発的に誘拐を企てるのですが、実はその子供の親は... という話。自殺をしようとしながら失敗ばかりしてるところは、なんだか吉本新喜劇的な面白さ。これは楽しくなりそうだー、と期待したのですが... うーん、期待したほどではなかったなあ。きっと主人公と少年のほのぼのぶりや、ドタバタ劇が魅力なんでしょうけどね。主人公と少年の2人よりも、やくざの場面の方が面白かったし。「仲良し小鳩組」もそうだったけど、この人の書くやくざっていい味出してますね。(双葉文庫)


+既読の荻原浩作品の感想+
「誘拐ラプソディー」荻原浩
「母恋旅烏」荻原浩
「神様からのひと言」荻原浩
Livreに「オロロ畑でつかまえて」「なかよし小鳩組」「ハードボイルド・エッグ」の感想があります)

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時効が迫った夜間銀行詐欺で奪われた1億円を巡るコン・ゲーム。いかにもドナルド・E・ウェストレイクのドートマンダーシリーズに触発されているというピカレスク小説。同じようにドートマンダーシリーズに触発されているという、伊坂幸太郎さんの「陽気なギャングが地球を回す」の同系の作品ですね。
でも、テンポはいいし、それぞれのキャラクターは立っているはずなのに、前半は何とも言えず読みにくかったです...。登場人物が、かつての泥棒3人組、婆さん3人組、そして現在の宝石強盗3兄弟と、3つの3人組があるんですけど、そういう情報がロクに説明されないまま、視点がどんどん入れ替わるんですもん。もう、何が何やら...。その辺りをもっと整理して書いてくれれば、きっともっと楽しめたのに残念。でもほんとテンポがいいので、前半さえクリアできれば後半はすごく楽しいです。
それにしても浅暮さんって、本当に釣りがお好きな方なんですね。釣りのシーンになると、いきなり力が入ってるし! 釣り(フライフィッシング)好きの人にはいいかも。(笑)(創元推理文庫)


+既読の浅暮三文作品の感想+
「ラストホープ」浅暮三文
「嘘猫」浅暮三文
「実験小説 ぬ」「石の中の蜘蛛」浅暮三文
「夜聖の少年」浅暮三文
Livreに「ダブ(エ)ストン街道」の感想があります)

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「闇から来た少女」「闇から覗く顔」に続く、ドールズシリーズ3作目。今回は冒頭から血塗れのバラバラ死体が登場、かなりのスプラッタぶりです。駆けつけた警官は、その血の海の中で転んでしまうし、その拍子に、切り取られてた耳が口に入っちゃったり、首が膝の上に落ちてきたりとお気の毒...。そういうのに弱い人は、最初の3ページで既にアウトかも? (でも逆にスプラッタ好きだからといって、シリーズ1作目2作目を飛ばして読んじゃダメですよー)
で、今回の犯人とその正体はかなり早めに想像がついてしまったので、「まさか、そんなことありえない」という登場人物の言葉が空々しく響いたんですけど(今回は次から次へと新しい推理が登場して、そのほとんどに「まさか」「ありえない」という反応があったんですけどね・笑)、でもやっぱり面白かった。目吉センセー、好きだわあ。(角川文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「闇から来た少女」「闇から覗く顔」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「闇から招く声」高橋克彦

+既読の高橋克彦作品の感想+
「白妖鬼」高橋克彦
「鬼」高橋克彦
「火怨 北の燿星アテルイ」上下 高橋克彦
「空中鬼」高橋克彦
「天を衝く 秀吉に喧嘩を売った男・九戸政実」1~3 高橋克彦
「炎立つ」1~5 高橋克彦
「風の陣」1~3 高橋克彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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1963年発表ということで、なんと40年以上前の作品。元はストリッパー、しかし見初められて現在は富豪夫人に納まっている主人公の一人称で語られていきます。作中でも引き合いに出されてるんだけど、まるでダフネ・デュ・モーリアの「レベッカ」みたいな舞台設定。でもこの彼女の語り口があまり好きじゃなくて、ちょっと読みにくくて、で、そっちに気を取られてたら、すっかり騙されてました...。
いや、もう、上手すぎ。何かあるんだろうとは思ってたんですけど、途中で一瞬、ワケが分からなくなりましたもん。これがデビュー作だなんて凄いなあ。名作といわれるのも納得です。...でも見事に騙されたんだけど、個人的なの好みとしては、「殺人はお好き?」みたいなユーモアタッチの作風の方が好きかな。あっちは予想がつく結末なんですけどね。でもやっぱり楽しいんですもん♪(集英社文庫)


+既読の小泉喜美子作品の感想+
「殺人はお好き?」小泉喜美子
「メインディッシュはミステリー」小泉喜美子
「弁護側の証人」小泉喜美子

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本当は海外物が絶好調なんですが、そっちは一休み。原りょうさんがほぼ10年ぶりに新作を出して、今度サイン会があるとのことで、行けるかどうかもまだ分からないっていうのに、本を買って整理券ももらってきてしまいましたー。ま、行けるかどうかはともかく、原さんの新作とくればやっぱり読まずにはいられないっしょ。
ということで、新・沢崎シリーズ第1弾。早速読みましたー。いやあ、この雰囲気ですよ。渋いなあ。なんだかもう、この雰囲気だけで酔えるって感じなんですよね。くうぅ。芳醇な香りと熟成したまろやかな味わい。今回の沢崎は完全に巻き込まれ型で... まあ、巻き込まれ型というのはいつものことなんですけど、今回は特にやる気がなかったようなのが、アレレ。で、その割にいつの間にか全て分かっちゃってるのはナゼ。...とか言いつつも、やっぱり良かったです。そうそう、この会話なんだよね、とか読みながら思っちゃいました。サイン会、行けるといいなー。(早川書房)


+シリーズ既刊の感想+
「そして夜は甦る」「私が殺した少女」「天使たちの探偵」「さらば長き眠り」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「愚か者死すべし」原りょう

+既読の原尞作品の感想+
「ミステリオーソ」「ハードボイルド」原りょう

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雑誌に載っている、光原百合さんの作品3つ。

「1-1=1」 小説推理1月号(双葉社)
「人気作家競作! モンキー・パンチの名作『ルパン三世』の世界に挑戦!」ということで、大沢在昌氏との競作。実はルパン三世って、あんまり良く知らないんですよね。もちろん名場面は見たことがあるし、山田康雄さんの声も印象に残ってるんですけど、ちゃんと通して観たことって1回もないかも...。元の話を全然知らないでこの作品を読むというのは、きっとすごく勿体無いんでしょうね。でもこれだけ読んでもすごく雰囲気があって楽しかったです。特にあの錠太郎の秘策ってば最高。思わず噴出しそうになりましたよ。確かにこれは有効だー。(喜)
で、ラストにかけては、しんみりしたりほのぼのとしたり。うわあ、いい話だなあ。


「クリスマスの夜に」 オール讀物12月号(文芸春秋)
「すばらしい赤ちゃん」と「森のクリスマスツリー」「森の郵便屋さん」の3編。可愛らしいクリスマスの童話は、この季節にぴったりですね。光原さんでクリスマスといえば、「ほしのおくりもの」という絵本もありますが、これもそのうちに絵本になったりしないのかな?(「ほしのおくりもの」は、表題作の、金色の星の咲く木のとこが大好きなのだ) 私はこの3作の中では「森の郵便屋さん」が一番好きだな。なんて可愛いの!木彫りというところが、またあったかくて素敵。


「オー・シャンゼリゼ」 星星峡(幻冬舎)
星星峡は、幻冬舎から出ているPR誌。大きな書店にしかないんですけど、カウンターに置いてあって、ただでもらえます。前回光原さんの作品が載ってた時は、なかなか書店に行く時間が作れなくて、その間になくなってしまったんですが、今回はちゃんともらえました♪
ということで、沢渡颯月先生の登場する短編。なんて爽やかで可愛い話なんでしょう。いやあ、若いっていいですなあ... なんておばさんくさいことを言いたくなったのですが(笑)、でも金管楽器ってなんだかエロティックなイメージですね。少女から大人の女へ... というこの時期に、ぴったりだなあって思っちゃった。


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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この作品の探偵となるのは、南美希風。南美希風といえば、「OZの迷宮」にもちらりと登場していた彼ですね! ページ数にして230ページ足らずという短い作品ながらも、なかなか小気味の良い本格ミステリだったと思います。警察が最初に疑う人物に関しては「えーっ」って感じでしたけど(だってまるで、時代劇で、殺された人物のそばに手ぬぐいが落ちてたから、その手ぬぐいの持ち主が犯人って感じなんだもの・笑)、でも、いささか冷たすぎるぐらいの推理によって、可能性が1つずつ着実に潰されていくところも良かったかと。登場人物たちのアリバイがそれぞれに関連していて、容易には崩せないというのも。
あとがきによると、火だけでなく、今後水や地、風の神にも登場してもらうようなことが書いてありました。その時は南美希風のシリーズ物になるのかな? 南美希風という人物に関しては、まだまだ実体を掴めないでいるんですが、でも楽しみ。(光文社)


+既読の柄刀一作品の感想+
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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建築探偵シリーズの14作目。今回は、神代教授の視点が中心。時系列的には、「綺羅の柩」の終わり頃から始まって、「Ave Maria」とすっぽり重なる感じ。今回面白かったのは、何といっても同潤会アパートに関する部分ですね。実は、私が生まれて最初に住んでいたのが、表参道の同潤会アパートなんですよー。だからやっぱり興味もあるし、その辺りの話がすごく面白かったです。...で、肝心のストーリーの方は、それに比べると少しボヤけてるような感じだったかな...。それにイズミとミズキがね... 水戸黄門の「もういいでしょう」という気持ち。(謎)
この作品で、シリーズ第2部完結編なんですって。調べてみると、「原罪の庭」で第1部が終わっていたんですね。もちろんここで区切りっていうのもいいんだけど、むしろ「Ave Maria」で区切ったら良かったのに。で、実は主役は蒼だったのだ...!とか。ダメかしら。(笑)(講談社ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「仮面の島」「センティメンタル・ブルー」「月蝕の窓」「綺羅の柩」「angels」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「Ave Maria」篠田真由美
「失楽の街」篠田真由美

+既読の篠田真由美作品の感想+
Livreに「幻想建築術」「魔女の死んだ家」龍緋比古シリーズの感想があります)

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建築探偵シリーズの13作目。今回は蒼の話。薬師寺家事件の時効を目前に、ちょっと周囲が騒がしくなってきてます。冒頭にも明記されてるんですけど、シリーズ5作目の「原罪の庭」のネタバレになってるので、これだけを単独で読んじゃダメという作品。
蒼が年齢の割に子供っぽいという指摘は多かったようだし、まあ、確かに私もそう思ってたんですけど、あれは個性(もしくは作者の好み)かと思ってました...(^^;。「原罪の庭」は、シリーズの中でも特に好きな作品なんですが、それ以上あまりいじって欲しくないという気持ちも凄くあって、最初これが蒼の話と知った時は、あまり読みたくなくなっちゃったんですよね。でもいざ読んでみたら、思っていたよりもずっと良かったです。
でもねー、あの翳くんとの友情表現がコッパズカシすぎる...!それに、あとがきで、同人誌に書いた話(もちろんこのシリーズで、でもノベルスや文庫には収録されない話)について触れるのって... どうなんでしょう? 前から分かってることとは言え、ちょっと反則じゃないかなあって思っちゃうんですけど。(講談社ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
「仮面の島」「センティメンタル・ブルー」「月蝕の窓」「綺羅の柩」「angels」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「Ave Maria」篠田真由美
「失楽の街」篠田真由美

+既読の篠田真由美作品の感想+
Livreに「幻想建築術」「魔女の死んだ家」龍緋比古シリーズの感想があります)

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私の大好きな!クレイグ・ライスの作品を訳してらっしゃる小泉喜美子さん。でもこの方が小説も書いてらっしゃるというのは、若竹七海さんの「スクランブル」を読むまで知らなかったんですよね。で、ずっと読んでみたかったんですが、作品はほぼ全て絶版。
これは、進駐軍時代に日本語ペラペラになった私立探偵・ガイ・ロガートが、再び日本にやってきて繰り広げるユーモアたっぷりのハードボイルド。あとがきに、クレイグ・ライスやカーター・ブラウンのような明るく楽しいハードボイルドを書こうと思ったとある通りの、本当にまるでそのままライス作品を読んでいるような楽しい作品でした。それでもって、正統派ハードボイルドをちょっとパロディにしたような感じでもあるんですよね。登場する女性はあくまでも女性らしく(笑)、探偵役のガイ・ロガート自身は、フィリップ・マーロウやリュウ・アーチャーをもーっとずーっと愛嬌たっぷりにして、ずっこけさせたようなタイプ。(笑) まあ、犯人と結末に関しては予想がつきますが、それはご愛嬌。最後まで楽しく読める作品でした。(徳間文庫)


小泉喜美子さんを続けていこうかとも思ったんだけど、やっぱり次は画像が出る本を読もう...。あと、カーター・ブラウンって読んだことないんですよね。こちらも要チェックだな。


+既読の小泉喜美子作品の感想+
「殺人はお好き?」小泉喜美子
「メインディッシュはミステリー」小泉喜美子
「弁護側の証人」小泉喜美子

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下町を舞台にした、ユーモアミステリ。犯人は怪我人が出ないように十分気を付けてるようだし、何か起きるたびに濃い~い町内の人々がわさわさと首を突っ込んでくるので、事件が立て続けに起きても、ほのぼのしたドタバタ。まるで緊張感がありません。はやみねかおるさんの虹北恭助シリーズに、ちょっと雰囲気が似てるかな... 特に、あの中の映画好きの若旦那の出てくる短編ね。(笑)
主人公の3人が町内の人々の濃さに負けてるし、犯人に「そんなことのために、そこまでやるか?!」って言いたくなったりするし、ツッコミ所は色々と。でも細かい部分を気にしなければ、ドタバタぶりがまずまず楽しい作品でした。(創元推理文庫)

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「秘の巻」に続き、「戯の巻」。「秘の巻」の作品は、発表年が大体1980年代前半なんだけど、「戯の巻」は1980年から2000年まで色々。(とは言っても1993年から2000年まで7年のブランクがあるのですが) どうやら私は古い作品の方が好きみたいです。これいいなあと思った作品は1980年からの2~3年に集中してるんですもん。これって単に作風の変化ってこと...?
それにしてもシリーズ最後の作品は意外な展開でした。こんな風に幕を閉じるとは思ってもみなかったー。個人的にはあまり好きな幕切れじゃないんだけど... でも曾我佳城という人物にはとても似合ってるのかもしれないなあ。(講談社文庫)


+既読の泡坂妻夫作品の感想+
「11枚のとらんぷ」泡坂妻夫
「奇術探偵曾我佳城全集 秘の巻」泡坂妻夫
「奇術探偵曾我佳城全集 戯の巻」泡坂妻夫
Livreに亜愛一郎シリーズ、ヨギ・ガンジーシリーズ、「乱れからくり」「煙の殺意」「毒薬の輪舞」の感想があります)

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20年の時を経て完結したという「奇術探偵曾我佳城全集」。秘の巻と戯の巻に分かれていて、こちらは1冊目の秘の巻。11の短編が収められていて、美貌の女性奇術師・曾我佳城が謎解きに活躍します。
決して派手ではないものの、泡坂さんの奇術に対する思いが伝わってくるような短編集ですね。舞台を見に来ていた少年に曾我佳城が語った言葉にはぐっときちゃいました。奇術師の技量を試すような行動によって、その奇術師がせっかく用意してきた楽しい奇術を観れなくなるかもしれない。その場をより楽しむために、奇術師に協力して雰囲気を盛り上げるのが一番。そんな意味合いの言葉。これは奇術の舞台だけでなく、エンターテイメントの舞台全般に言えることなんだろうな。
奇術や事件のトリックも楽しみましたが、一番好きなのは一作目の「空中朝顔」。曾我佳城はほとんど出てこないんですけどね。この朝顔の情景がなんとも綺麗でいいなあ。あとはやっぱり曾我佳城、謎の多い彼女自身のことが気になります。(講談社文庫)


+既読の泡坂妻夫作品の感想+
「11枚のとらんぷ」泡坂妻夫
「奇術探偵曾我佳城全集 秘の巻」泡坂妻夫
「奇術探偵曾我佳城全集 戯の巻」泡坂妻夫
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大隈半島の先端近くにある竹茂という集落で竹の花が満開と聞き、その集落を訪れることにしたカメラマンの猫田夏海と、彼女の大学時代の先輩・鳶山久志。そこはわずか7世帯、12人の人間しかないという小さな村。荘子の思想を大切にしている一種のユートピアなのですが、しかし竹の花に誘われるように凄惨な事件が起きることに...
設定こそ横溝正史作品のようで(第21回横溝正史ミステリ大賞優秀作なんですって)、結構どろどろとした雰囲気になりそうなあらすじなんですが、中身は意外に飄々と軽かったです。これは主人公である猫田夏海のキャラクターですね。必要以上に陰惨な雰囲気にならなかったのはいいんですけど、でも彼女のキャラクターにあまり馴染めないまま終わってしまったかも...。軽妙というよりも、なんだか浮いているような気がしちゃって。それにあまりにあからさまにワトソン役すぎて、逆に気の毒というか。
でも竹はいいですね。中空についての話も面白かったし、やっぱり竹の花! 竹はイネ科なので、1つ1つは地味な花なんだけど、沢山集まると竹林全体に霞をかけたような幻想的な風景になるんですって。これが見てみたかったなあ。(角川文庫)

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有名な彫刻家・川島伊作が癌のため逝去。その遺作となったのは、1人娘の江知佳を形どった石膏像でした。しかし家人が伊作を救急車で病院に連れて行っている間、無人となったアトリエに何者かが忍び込み、その首を切断して持ち去っていたのです。その死の前日、偶然、江知佳と知り合いになっていた法月綸太郎は、その事件に巻き込まれることに。
いやー、「二の悲劇」から実に10年ぶりの長編なんだそうです。力作ですね! これぞまさに本格ミステリといった感じの、とても端整な作品。(だと思う) この物語の舞台となるのが、今から5年ぐらい前、まだ20世紀の頃というのが、執筆に相当時間がかかったんだなあと、ちょっぴり哀愁を漂わせてますが...。(笑)
彫刻に関する話はとても面白かったし、久々の探偵・法月綸太郎も相変わらずで、なんだか嬉しくなっちゃう。伏線の張り方も、いかにも法月さんーっ。最後の解決編がちょっと唐突だったり、「それ、本当にバレなかったの...?」って部分もあったんだけど、でもやっぱり面白かったです。いい作品を読んだなーって感じ。(角川書店)

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ビルの最上階で、社長が殺されていた! 暗証番号を打ち込まないと最上階には止まらないエレベーター、社長室の前の廊下の監視カメラ、オートロック式非常階段の扉などによって警備は万全。誰も侵入していない密室状態の社長室で、一体何があったのか。
貴志さん初の本格ミステリという作品。いやあ、面白かったです。こういう不可能状況って、なんだかワクワクしてきてしまいます。しかも密室のための密室って感じの突飛な設定じゃなくて、普通のオフィスビルの中っていうのがまたいいんですよねー。
探偵役となるのは、弁護士の青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径。女弁護士先生の方はちょっと薄味なんですけど、この榎本径がいいんですよ。叩けば埃がいっぱい出てきてゲホゲホしてしまいそうな人物で、なんか味があるのです。で、弁護士先生も頑張って推理しちゃったりなんかして(この発想も良かったな)、盛り上がってきたところで第2部へ。今度は犯人からの視点で語られる倒叙形式。本格ミステリというよりも、サスペンス物のような雰囲気になります。本当はこちらの第2部の方が、おそらく貴志さんの本領発揮なんでしょうね。...でも私は1部の方が面白かったなあ。あの盛り上がりを分断されてしまったし、最終的な謎解きが唐突な気がしちゃって、それだけはちょっと残念でした。とは言っても、これが犯人の心情を描くには一番なんでしょうし、それがなかったら全然説得力がなくなっちゃうんですよね。
これはぜひシリーズ化して欲しいな。で、榎本径の過去の話なんぞも読んでみたいものです。ふふっ、これは楽しそう♪(角川書店)


+既読の貴志祐介作品の感想+
「硝子のハンマー」貴志祐介
Livreに「青の炎」の感想があります)

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決して吉兆は占わず、人の不幸だけを恐るべき的中率で当て、多くの自殺者を生み、ついには書店から姿を消したという占い書「フォーチュンブック」。松本市内の書店の倉庫に残っていたこのフォーチュンブック6冊と、その本を巡る人々。そして昭和の歴史に残る数々の大事件が繋がり合っていきます。
最後もびっくりしたし、何とも上手いとしか言いようがないなあ。でもね、雰囲気が暗いんですよー。そのフォーチュンブックのせいなのか何なのか、一種異様な雰囲気。精神状態があまり良くない時に読んだら、引きずり込まれちゃいそうな感じ。
でもやっぱり上手いんですよねえ。(ほおぉっ)(徳間文庫)


+既読の北森鴻作品の感想+
「共犯マジック」北森鴻
「蜻蛉始末」北森鴻
「親不孝通りディテクティブ」北森鴻
「螢坂」北森鴻
「瑠璃の契り」北森鴻
「写楽・考」北森鴻
「暁の密使」北森鴻
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「希望の形」光原百合

見ず知らずの女の子に、突然彼氏になって欲しいと言われた「俺」。10万円というバイト料につられて、オーケーするのですが...。
わー、いつもと雰囲気が違うんですね。えええ、そっちの展開になっちゃうの...?と思ったら、最後はちゃんと収まるところに収まってくれて、ほっ。...なんだか、違う意味で、とってもスリリングな短編でした。(?)
一矢と正憲、案外いいコンビかもしれないなあ。正憲の最後の台詞、なんかいいし♪ で、この頑固オヤジは、まるで「みんなの家」の田中邦衛みたいだなー。(笑)


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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江戸末期。上野の端にある小さな神社の禰宜を務める弓月の元を訪れたのは、由緒正しい大神社の権宮司・佐伯彰彦。彰彦は、弓月の夢告(ゆめつげ)の能力で、神社の氏子である蔵前の札差・青戸屋の1人息子の行方を占って欲しいと言うのです。
畠中さんの江戸時代物!やっぱりこの方は、江戸時代が合ってるんでしょうねー。どうしても若旦那のシリーズのインパクトが強いので、同じ江戸時代が舞台となると、どんな風に特徴を出すんだろう... とちょっぴり心配していたのですが、心配無用でした。こちらは妖怪こそ出ませんが、主人公の弓月もいい味出してますし、ほのぼのとして暖かくて、やっぱりこの雰囲気は大好きです(^^)。...ちょっと頼りなくて、でもやる時はやるゾ!って弓月のキャラクターは、若旦那と少しかぶってるんですけどね。(笑)
青戸屋の1人息子は一体誰なのか、神社に集まった彼らを狙うのは誰なのか、という謎が中心にあるし、弓月のゆめつげの能力が、本人にもなかなか意味が解けない謎の情景ということで、立派にミステリ仕立てと言える作品なんですが、でもミステリという以前に1つの物語として面白かったです。シリーズ化して欲しいような作品だけど、でもこれはもうこれでお仕舞いかなあ。ちょっともったいないような気がするけど、これは仕方ないかなあ。(角川書店)


+既読の畠中恵作品の感想+
「ゆめつげ」畠中恵
「とっても不幸な幸運」畠中恵
「おまけのこ」
「アコギなのかリッパなのか」畠中恵
「うそうそ」畠中恵
「みぃつけた」畠中恵
「まんまこと」畠中恵
「つくもがみ貸します」畠中恵
「ちんぷんかん」畠中恵
「こころげそう 男女九人お江戸の恋ものがたり」畠中恵
「いっちばん」畠中恵
Livreに「しゃばけ」「ぬしさまへ」「百万の手」「ねこのばば」の感想があります)

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真敷市の公民館創立20周年記念ショウが行われることになり、地元のアマチュア奇術師たちの集団・マジキクラブも出演することに。数々のハプニングに悩まされながらも、なんとか迎えたフィナーレ。しかしその頃、メンバーの1人は自宅で殺されていたのです。
うわあ、面白かった! こんなに楽しい作品を今まで読まずにいたなんて勿体なかった!
ええと、作品は3部構成となっていて、まず第1部はマジックショウですね。ここでのエピソードもすごく楽しいんですが、この作品で何といっても特筆すべきなのは第2部。ここでは、第1部で起きた殺人の見立てに使われた、「11のとらんぷ」という短編集が読めるんですよー。これがもう独立した1つの作品として読んでもいいぐらいの面白い作品。こんな作品を作中作に使っちゃうなんて、勿体ないんじゃ... と他人事ながら心配してしまうほど。いや、すごいですね。さすが短編の名手・泡坂氏。そして第3部は解決編。ここでも、あーんな所にもこーんな所にも伏線が張ってあったことが分かって、もうびっくり。
いやー、ほんと隅々まで気の行き届いた作品だったんですね。まるで本物のマジックショウを見てたみたいに気持ち良く騙してくれて、すっごく面白かったです。これが長編デビュー作だっただなんて凄いわあ。と、大絶賛なのでした。読んで良かった♪ (画像は創元推理文庫ですが、読んだのは双葉社文庫です)


+既読の泡坂妻夫作品の感想+
「11枚のとらんぷ」泡坂妻夫
「奇術探偵曾我佳城全集 秘の巻」泡坂妻夫
「奇術探偵曾我佳城全集 戯の巻」泡坂妻夫
Livreに亜愛一郎シリーズ、ヨギ・ガンジーシリーズ、「乱れからくり」「煙の殺意」「毒薬の輪舞」の感想があります)

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「長い影」有栖川有栖

既に閉鎖されていた工場から死体が発見され、アリスと火村、そして鮫山警部補は、深夜の工場から人影が出てくるのを目撃したという夫婦の家を訪れます。
作家アリスシリーズの短編。この人が犯人なんだろうなという人物はいて、実際その通りだったんだけど、その人物が犯人だと断定されるまでの過程が緊迫感たっぷりで面白かった! 丁度刑事コロンボが犯人を追い詰めていく感じですね。あ、今はコロンボよりも古畑任三郎を引き合いに出す方がいいのかしら。(笑)

「恋愛で死神」伊坂幸太郎

7日間ある人間を調査し、その人間が死ぬべきだと判断すれば「可」と報告、死ぬ必要がないと考えれば「見送り」と伝える、調査部の死神たち。その日も死神の「千葉」は、対象となった荻原が死んでいるのを確認していました。
「死神」というのがある種の比喩的表現なのかと思ってたら、これが本当の死神でびっくり!(笑) なんで「荻原」が調査対象になったのかが良く分からないし、死神たちの世界のこともシステムのことも全然分からなかったんだけど、でも7日間の話は面白かった。最初から結末が分かってるとはいえ、最後は「なんでよ?」だったんですけどね。これはシリーズ物になるのかな。楽しみになっちゃう。

「扉守」光原百合

瀬戸内の町の高校に通う林雪乃は、その日の朝、ふと通りがかった路地で小さな店に気付きます。その日の放課後、雪乃は早速「セルベル」というその雑貨店に行くことにするのですが...。
冒頭の、雪乃のシーンでびっくり。「雪乃」という名前も「子ウサギ」もどちらも白いイメージだから、その変化がまた強烈で。一体何があるんだろうと思ったら... なるほど! 子犬のエピソードが重なってくるのが、何とも言えずいいなあ。ミステリアスな雰囲気がとても素敵なファンタジーでした。ええと、これもシリーズ物ってことでいいのかな? 光原さんの作品って、どれもこれもシリーズ化して長く続けてもらいたくなっちゃうんですけど。(笑)


他にもいくつか読んだんだけど、感想はこのぐらいで。
それと「小説NON」は、昨日行った本屋には置いてなかったので、また明日にでも大きな本屋に行ってきまーす。


+既読の光原百合作品の感想+
「ありがと。 あのころの宝もの十二話」ダ・ヴィンチ編集部編(「届いた絵本」)
オール讀物11月号(文藝春秋)(「扉守」)
小説NON 11月号(祥伝社)(「希望の形」)
小説推理・オール讀物・星星峡(「1-1=1」「クリスマスの夜に」「オー・シャンゼリゼ」)
「最後の願い」光原百合
光原百合ベスト3@My Best Books!
「尾道草紙」尾道大学 創作民話の会
「銀の犬」「親切な海賊」光原百合
オール讀物 2007年10月号(「写想家」)
「嘘つき。 やさしい嘘十話」ダ・ヴィンチ編集部編(「木漏れ陽色の酒」)
オール讀物 2008年11月号(「旅の編み人」)
「新・本格推理 不可能犯罪の饗宴」二階堂黎人編・オール讀物 2009年8月号(「花散る夜に」「ピアニシモより小さな祈り」)
「イオニアの風」光原百合
「扉守 潮ノ道の旅人」光原百合
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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国立公園の山の奥に建てられた、一軒クラシックホテルで繰り広げられる物語。アラン・レネ監督のフランス映画「去年マリエンバードで」をモチーフに、ホテルに滞在していた6人の視点から語られていきます。この「去年マリエンバードで」という映画は、確か高校生の頃に観たことがあるんですけど、なんとも不可解で不思議な映画だったんですよね。メビウスの輪みたいな印象で。で、この作品もまさしくそのメビウスの輪のような作品でした。しかもこの作品は「第一章」「第二章」ではなくて、「第一変奏」「第二変奏」という言葉が使われてるんですけど、これがまたぴったりなんですよー。変奏曲というのは、1つの主題があって、確かにその同じ主題が元でありながらも、少しずつ姿を変えていく感じ... でいいんでしょうかね? 第一変奏から第二変奏へ、そして第三変奏へ、そして第六変奏まで、それぞれに少しずつ重なりながらも、どんどん姿を変貌させていきます。いやー、こういう雰囲気はほんと大好き。...って、恩田さんの作品を読むたびに言ってるような気がするんですけど(笑)、でもほんと良かったです。なんとも美しくて濃厚で、でも毒があって。いいですねえ。
...でもこの本の画像のためにAmazonを検索してみたら、あまり好意的な評がされてなくてびっくり。もしかして好き嫌いが分かれる作品なのかしら。私はこういうの大好きなんだけどなあ。(文藝春秋)


+既読の恩田陸作品の感想+
「夏の名残りの薔薇」恩田陸
「小説以外」恩田陸
「ユージニア」恩田陸
「蒲公英草紙」「光の帝国」恩田陸
「酩酊混乱紀行『恐怖の報酬』日記」恩田陸
「ネクロポリス」上下 恩田陸
「エンド・ゲーム」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸
「中庭の出来事」恩田陸
「朝日のようにさわやかに」恩田陸
「木洩れ日に泳ぐ魚」恩田陸
「いのちのパレード」恩田陸
「猫と針」恩田陸
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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明治維新によって江戸時代が終わりを告げ、新政府が発足。まだその体制が整いきっていない頃、腐敗した役人を裁くための役所「弾正台」が作られます。その弾正台で大巡察として活躍するのが香月経四郎と、後に初代警視総監となった川路利良。そして2人は様々な犯罪に出会うことに。
伝奇小説で有名な山田風太郎氏によるミステリ作品。最初は長編のように始まるのですが、3章以降は連作短編集のような作りになっています。...実はこの最初の2章がどうも退屈で... 何度読み返しても頭に入ってこなくて困ってしまいました。ほとんど挫折しそうになったほど。でもここで諦めちゃダメ。3章からはずんずんと面白くなります! 奇怪な不可能犯罪の目白押し。で、このトリックにもびっくりなんだけど、作品最後の真相にはボーゼン。いやー、そういうことだったのね。これは驚いた。
謎解きをするのは、香月経四郎の愛人のフランス女性・エスメラルダ。彼女の推理部分が全部カタカナで読みにくいのだけはネックなんですけど、でもこれは頑張って読むべし!(ちくま文庫「山田風太郎明治小説全集7」)


+既読の山田風太郎作品の感想+
「明治断頭台」山田風太郎
「警視庁草子」上下 山田風太郎
Livreに「魔界転生」の感想があります)

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200歳とも300歳とも言われるすっぽんの徐庚先生に師事している、県令の1人息子・趙昭之。今日も2人で香山の照月亭へと赴き、街を見下ろしながら世の中のことについて学んでいます。
森福さんお得意の、中国を舞台にしたミステリ風味の連作短編集。「森福版"聊斎志異"」という言葉にも納得の少し不思議な雰囲気が漂います。すっぽんの徐庚先生は、本当に「すっぽん」の化身だし、その他にも幽霊や人面瘡が当たり前のように登場。でもそんな妖異が登場しても素朴でのんびりとしていて、こういう雰囲気は大好き。
でも、とても面白いんだけど、どこか決め手に欠ける気もするんですよね。短編同士の繋がりが薄いからかなあ。キャラクターのインパクトが弱いのかなあ。(昭之のお父さんとお母さんは好きなんだけど!)それにいくら社会勉強と言っても、他人の生活を勝手に覗き見してるというのがちょっとね。しかも高みの見物だし...。この部分でもう少し説得力があれば良かったのになあ。(光文社)


+既読の森福都作品の感想+
「琥珀枕」森福都
「漆黒泉」森福都
「狐弟子」森福都
「楽昌珠」森福都
「肉屏風の密室」森福都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「都会のトム&ソーヤ」第2巻。前回に引き続き、謎の天才ゲームクリエイター・栗井栄太を追う内人と創也。相変わらずの内人のサバイバル能力もいいし、創也の冷静な頭脳派でありながら、意外と考えなしに行動しちゃうとこもお茶目で良かったです。内人の「おばあちゃん」もいい味出してる! でも話としては、1巻の方が面白かったかな。こちらは栗井栄太の正体が明かされるという大イベントがありながらも、どこかこじんまりとしてたような気がします。(講談社Ya!Entertainment)


+シリーズ既刊の感想+
「都会のトム&ソーヤ1」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「都会のトム&ソーヤ2 乱!RUN!ラン!」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ3 いつになったら作戦(ミッション)終了?」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ4 四重奏(カルテット)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ5 IN塀戸(VADE)」はやみねかおる
「都会のトム&ソーヤ6 ぼくの家へおいで」はやみねかおる

+既読のはやみねかおる作品の感想+
「虹北恭助のハイスクール・アドベンチャー」「笛吹き男とサクセス塾の秘密」はやみねかおる
「オリエント急行とパンドラの匣」はやみねかおる
「卒業 開かずの教室を開けるとき」はやみねかおる
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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「垂里冴子のお見合いと推理」の続編。登場人物たちの個性もそれぞれにくっきりとしてきたようで、冴子はもちろんのこと、派手好きな空美やシスコン気味の京一もいい味を出してます。すっかりホームドラマ化してて楽しいなあ。こういうパターン物は、安心して読めますね。パターン物だからといって、ワンパターンってわけじゃないし。でも今回の冴子のお見合い相手がどうもイマイチな人ばかりだったのだけは、ちょっと残念。前回の最後の彼のような人がいると、冴子の受けるダメージが大きくなってしまうので、それも可哀想なんですけどね。(あれは上手くいって欲しかった!) 冴子には幸せになって欲しいし、でもお見合いが上手くいってしまうとシリーズが終わってしまうというジレンマ。でもラストの冴子を見てると、このシリーズ自体が変貌していきそうな予感もありますね。次、どうなるのか楽しみです。(講談社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「垂里冴子のお見合いと推理」......ブログには感想がないので、よろしければLivreへどうぞ
「続・垂里冴子のお見合いと推理」山口雅也

+既読の山口雅也作品の感想+
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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結構早くに買ってたのに、なかなか読む気になれなくて、今日ようやく読みました。
「百器徒然袋-雨」に続く、榎さん大活躍の連作3編。ちょっぴり失速気味の本編に比べて、やっぱりこっちは楽しい! 語り手となっているのは、平凡で地味で不運な配線技師。これが一見関口君を彷彿とさせるような人なんですけど、でもやっぱり視線が関口くんとはまた違うというところがポイントですね。京極堂も、ただの不機嫌なだけの薀蓄親父じゃないし。(笑)
もう今回は、とにかく榎さんのお馬鹿ぶりに笑えて笑えて、電車の中でもあやうく吹き出すところでした。面白すぎるーっ。「にゃんこ!」(←別にネタバレではないけど、見たい方は反転して下さい)も良かったけど、「ぐう。」(←コレもね)も良かったけど、最初に笑ってしまったのが「僕が仕切るからへいき」(←コレもです)ってあの言葉。(笑) でも、京極堂に「京極」って呼びかけるのはどうなんでしょうねー。みんな、「京極堂」とか「中禅寺」とか言って欲しいな。でないと作家・京極夏彦との区別がつかなくなっちゃうもの。(既に区別はついてないかのか?)
登場メンバーは豪華だし(いさま屋は出ないけど)、くすくすニヤニヤの楽しい作品。でも最後に意外な暖かさが待っていて、それもまたとても良かったです。んんー、なかなか深いなあ。(講談社ノベルス)


+シリーズ既刊の感想+
ほとんど感想が残ってませんが、Livreに「狂骨の夢」「陰摩羅鬼の瑕」の感想があります。
「百器徒然袋-風」京極夏彦

+既読の京極夏彦作品の感想+
「続巷説百物語」京極夏彦
「後巷説百物語」京極夏彦
Livreに、これ以前の作品の感想があります)

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6年勤めた会社をやめた十和人は、ハローワークの外で声をかけてきた男の依頼を聞いて驚きます。1ヶ月間、日本国内のとある別荘に滞在するだけで、莫大な報酬を受け取ることができるというのです。
わーい、面白かった! 偽装結婚物とか偽装家族物って時々見かけるけど、やっぱり西澤さんにかかると一味違いますね。小さな謎や大きな謎もあるんだけど、ミステリというよりはSFの方に重点が置かれてるというか、これはもっと違う要素の方がさらに大きいかな。この雰囲気は、初期の作品の雰囲気に近いかも。この偽装家族生活、しかも盗聴器や隠しカメラが仕掛けられてる家で過ごすなんて、ほんと神経が疲れそうー、なんて思いながら読んでたのですが、対外的には新婚気分の抜け切れない夫婦、しかしその実態は赤の他人同士という2人が、自分たち自身の話をし始めるところが好きだわあ。後味も爽やかで良かったです。ふふふ。(カッパノベルス)


+既読の西澤保彦作品の感想+
「方舟は冬の国へ」西澤保彦
「生贄を抱く夜」西澤保彦
「腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿」西澤保彦
「フェティッシュ」西澤保彦
「キス」西澤保彦
「春の魔法のおすそわけ」西澤保彦
「ソフトタッチ・オペレーション」西澤保彦
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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中国四大奇書の1つとも言われる「紅楼夢」を元に書き上げられたミステリ作品。栄華を極めた賈家の作った人口楽園「大観園」で繰り広げられる連続殺人事件。
ここで起きる事件は、どれもこれも不可能犯罪。衆人環視の中で犯人が消えうせてしまったり、被害者の衣類だけが空を飛んでいたり、密室状態の現場にある遺体は、空から落ちてきたとしか思えなかったり。そんな事件ばかりが次々と起こります。そういう不可能犯罪って、「なぜそのような状況にしなければならなかったのか」という部分がポイントですよね。ただ単に「密室が作ってみたかったから」という理由では、読者は納得しないもの。この作品では、それが綺麗にクリアされていました。そして、なぜ大観園が舞台じゃなきゃいけなかったのかという理由も最後の最後に明らかになります。その理由自体は、正直それほど意外とは思わなかったんだけど、でもここでは全てが連動してて、そうなるとやっぱりもう、「そうだったのか!」。いやー、お見事です。
芦辺さんが「紅楼夢」を十分読み込んでらっしゃるのが分かりますね。完全にこの世界を自分のものにしてるもの。それがやっぱりスバラシイー。(文藝春秋)


+既読の芦辺拓作品の感想+
「紅楼夢の殺人」芦辺拓
Livreに「十三番目の陪審員」「真説 ルパン対ホ-ムズ-名探偵博覧会」の感想があります)

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