Catégories:“ミステリ(翻訳)”

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14歳のカッレは名探偵に憧れ、ロンドンの貧民窟やシカゴの暗黒街に生まれたかったと思っている少年。日々怪しい人物をチェックし、町の治安を守るために見回りを欠かさず、空想の中で「探偵ブルムクヴィスト」になっては、いっぱしの名探偵ぶって「架空の聞き手」相手に捜査や推理の基本を語ってきかせています。しかし実際には、カッレは小さな町の食料品店の1人息子。カッレが住む平和な町では事件など望むべくもないのです。そして夏休み。遊び仲間の靴屋の息子のアンデスと、パン屋の娘のエーヴァ・ロッタと一緒に毎日のように遊びまわっているカッレの前に現れたのは、エーヴァ・ロッタのお母さんの弟だというエイナルおじさん。エイナルおじさんはエーヴァ・ロッタの家にしばらく滞在することになり、何かといえばカッレたち3人につきまとうのですが...。

子供の頃の私にとってリンドグレーンといえば、まずこのカッレくんのシリーズ。もう何度読んだか分からないぐらい大好きでした。ピッピもいいんですけどね、破天荒で突拍子のないことをしてばかりのピッピよりも、この3人の方が好き。現実味があって、身近な存在に感じられたからかも。このシリーズを最初に読んだのは、多分小学校3年生の頃だから、9歳のピッピよりも14歳のカッレたち3人の方が大人っぽく感じられて良かったというのもあったのかも。
ケストナーの「エーミールと探偵たち」はもう読んでたかもしれないけど、ホームズやルパンを読むようになる前で、「探偵」という存在にもあまり馴染んでなかった頃。カッレくんが憧れるエルキュール・ポワロやピーター・ウィムジィ卿の存在も知らなかったし(アスビョーン・クラーグは未だに知らない)、歴史上のバラ戦争なんていうのも、もちろん初耳。でもカッレたち3人の「白バラ軍」と、それに敵対する「赤バラ軍」のバラ戦争にも「いく千いく万の人命は、死と死の暗夜に落ちてゆくであろう」という言葉にもワクワクしたし(この言葉は、今読んでも本当にかっこいい)、夜中にこっそり家を抜け出しての冒険ときたら! そしてエーヴァ・ロッタのパパがくれる甘パンの美味しそうなことったら!

で、今回久しぶりに本を手に取ったんですけど、やっぱりすっごく面白かった~。これは本当に大好きです。展開も全て覚えてるというのに、すっかり童心に戻ってワクワク。でもそんな風にワクワクしつつも、早く名探偵になりたくて背伸びしてるカッレくんが、たまらなく可愛かったりなんかもして~。この辺りは自分が年を重ねた分、受ける印象がちょっぴり変わりますね。そういう描写がその時よりも目につくというか。一緒に白バラ軍に入って活躍したい(というかエーヴァ・ロッタになりたかった)と思ってた子供の頃とは違って、温かい目で見守る側になってる自分を再認識してしまう...。そして空想の中の事件だけでなく現実の事件に触れることによって、3人が大人の世界を垣間見る部分なんかでは、ああ、まだまだ大人になってしまうのは早いよ、1日でも長くこの幸せな時間を過ごさせてあげたいな、なんて思ってしまう...。
と言いつつ、入れるものなら今でもやっぱり私も白バラ軍に入りたいですけどね。で、赤バラ軍と戦争をしたい! 聖像の争奪戦を繰り広げたい! 白バラ軍はもちろんだけど、赤バラ軍のシックステンとベンカとユンカだって、とっても気持ちいい男の子たち。赤バラも白バラも、読んでる私まで気持ちよくなってしまうほど素敵な子供たちです。やっぱりいいな、このシリーズは。いくつになっても、子供の頃、最初にこのシリーズを読んだ頃の自分を思い出させてくれるみたい。うふふ、大好き。(岩波少年文庫)


+既読のリンドグレーン作品の感想+
「長くつ下のピッピ」「ピッピ船にのる」「ピッピ南の島へ」リンドグレーン
「やかまし村の子どもたち」「やかまし村の春・夏・秋・冬」「やかまし村はいつもにぎやか」リンドグレーン
「名探偵カッレくん」「カッレくんの冒険」「名探偵カッレとスパイ団」リンドグレーン

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ローマに巡礼としてやってきた修道女フィデルマ。しかしひっそりとした裏通りの小さな教会堂でのミサにあずかっていた時、殺人事件に遭遇してしまうことに... という「聖餐式の毒杯」他、全5編の短編集。

7世紀のアイルランドを舞台にしたミステリ、修道女フィデルマシリーズの短編集。
短編作品も十分読ませてくれることは、シリーズ外作品の「アイルランド幻想」(オススメ!)でも既に分かっていたことなんですが、今回も切れが良い短編集になっていて、とても面白かったです。フィデルマが相変わらず冷静でな毅然とした態度で、その観察眼と洞察力、推理力を披露。でも、その高飛車で傲慢な態度も相変わらずなんですけどね... これさえなければなあ。7世紀のアイルランドが舞台というのが話の中でも十分生かされていて、その辺りもすごく面白いんですけど、肝心のフィデルマにはあまり愛着が湧かない私です...。でもちょっと思ったんですけど、原書でもここまで高飛車で傲慢なんでしょうかね? 会話の翻訳にどうも不自然さを感じるし、もしかしたら訳のせいもありそうだなあと思ってしまうんですがーー。(ということで、私はこの訳者さんの訳が苦手だったりする)
5作の中で一番面白かったのは、アイルランド全土の大王としての即位式を早く執り行わなければならないというのに、儀式に必要な王家伝来の宝剣・カラハーログが盗まれて... という「大王の剣」。あとはフィデルマがローマで事件に挑む「聖餐式の毒杯」も! 5編とも、フィデルマでなければ解決にもっと時間がかかるか、もしくは迷宮入りという事件、鮮やかに解き明かしてくれるのは快感です。
でも、7世紀の頃のローマってどうなってたんだろう? 古代ローマ帝国はもっと早い時期に東西に分裂して、東ローマ帝国(=ビザンティン帝国)しか残ってなかったと思うんだけど? 西ローマ帝国は確か5世紀に滅びたはず。イタリアが小国家に分裂するにはまだ早いのかな? (世界史、苦手だったんだよね~) この作品を読む限りでは、すでにキリスト教の本山的な雰囲気なんですが。

でもこのシリーズ、翻訳が出る順番がバラバラなんですよね。最初に出た「蜘蛛の巣」がシリーズ5作目で、次に出た「幼き子らよ、我がもとへ」が3作目なんですもん。今回は短編集だから、まあいいんだけど... 長編はやっぱり順番通りに出して頂きたい! そうでないと、フィデルマの人間的成長が楽しめないことになってしまうんですもん。実際に物事が前後して、フィデルマの反応の変化が妙な具合になってます。次はぜひ1作目を訳していただきたいな。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「蜘蛛の巣」上下 ピーター・トレメイン
「幼き子らよ、我がもとへ」上下 ピーター・トレメイン
「修道女フィデルマの叡智」ピーター・トレメイン

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AD76年9月。今回マルクスに助けを求めたのは、ヘレナの母・ユリア・ユスタ。27歳になるヘレナの弟・アウスル・カミルス・アエリアヌスがアテナイで勉強したいと言い出して、家族がギリシアに向かう船に乗るアエリアヌスを見送ったのは8月のこと。手紙が届くのは何ヶ月も先のことになるだろうと思いきや、オリュンピアで「神殿巡り」の旅をするギリシア団体旅行の一行と知り合いになり、そのうちの1人が死亡した事件に巻き込まれたというのです。ユリア・ユスタの頼みは、ギリシアでアエリアヌスに代わって事件の捜査を行い、アエリアヌスを予定通りアテナイに行かせて欲しいということでした。

久し振りの密偵ファルコシリーズ。これが17作目です。古代ローマ時代(ウェスパシアヌス帝の時代)を背景にしたシリーズなんですが、今回はローマ帝国の属州となっている古代ギリシャを旅する話なので特に嬉しい♪ 政治的にはローマが上位に立ってるんですけど、歴史・文化的にはギリシャが先駆者。ギリシャの文化に憧れるローマ人も多いのです。4年に1度のオリンピックの開催年を変えてまで、無理矢理参加してしまった皇帝ネロもその1人だし...(ネロの時代と結構近いせいか、何かといえばネロの名前が出てきます) 古代ローマの公用語はラテン語だけど、ギリシャ人の奴隷に勉学を習う貴族の子弟も多いし、教養がある人たちは当然のようにギリシャ語を話すし、大学に行くとかならまずはギリシャ留学だし。

今回のファルコの旅に同行するのは、5人と犬1匹という賑やかな一行。オリンピックの起源となったオリュンピアの地を訪れて体育場に行ったり、世界七不思議の1つであるゼウス像を見物したり、アポロンの神殿での神託が有名なデルポイや、デルポイとはまた違った方法で神託が行われるレバデイアのトロポニオスの神託所を訪れたりと、古代ギリシャの名所めぐりが楽しめるのもとても嬉しいところ。ギリシャ神話の様々なエピソードも紹介されます。そして良きローマ人としてのファルコの目を通して見たギリシャも面白いのです。まあ、この時代に本当にこんなパック旅行があったのかどうかは知りませんが...(笑)
でも、本来の目的は殺人事件の解決。事前に分かってたのは、今回「神殿巡り」の旅の途中に死亡した若妻のウァレリアと、3年前に白骨死体で見つかったマルケラ・カエシア。でも、まだまだ事件が起こるし、ファルコの捜査も攪乱されまくり。ファルコ大苦戦。...いや、この最後のオチには驚きました。伏線は十分すぎるほどあったんですけど、まさかまさかそうくるとは...。無理矢理な気もしますが、でもすんごいですね。これがまた視覚的効果抜群なせいか、最後のシーンがフランス映画の「太陽がいっぱい」と妙に重なって感じられました。発端も展開も結末も何もかもまるで違うのにね。映画的な幕引きでした。(光文社文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「密偵ファルコ 白銀の誓い」「密偵ファルコ 青銅の翳り」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 錆色の女神」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 鋼鉄の軍神」「密偵ファルコ 海神の黄金」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 砂漠の守護神」「密偵ファルコ 新たな旅立ち」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ オリーブの真実」「密偵ファルコ 水路の連続殺人」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 獅子の目覚め」「密偵ファルコ 聖なる灯を守れ」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 亡者を哀れむ詩」「密偵ファルコ 疑惑の王宮建設」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 娘に語る神話」「密偵ファルコ 一人きりの法廷」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 地中海の海賊」リンゼイ・デイヴィス
「密偵ファルコ 最後の神託」リンゼイ・デイヴィス

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昇天祭の日。大学生のアンゼルムスは、市で醜い老婆が商売に出している林檎や菓子の入った籠に突っ込んでしまいます。その辺りにいた子供たちが飛び散った商品に我先にと飛びつき、アンゼルムスは老婆に中身のあまり入っていない財布を渡して逃げ出すことに。せっかくの昇天祭なのに一文無しとなってしまったとアンゼルムスが嘆いていると、ふと頭上の紫丁香花の樹から水晶の鈴のような響きが。そこにいたのは3匹の緑金の小蛇。そしてアンゼルムスはそのうちの1匹に恋をしてしまうのです。それはセルペンチナでした... という「黄金の壷」。
真夜中、サント・オノレ通りにあるスキュデリー嬢の家の戸が激しく叩かれます。それは見知らぬ若い男。侍女が玄関を開けると、外にいる時は哀れっぽいことを言っていた男は家の中に入るなり荒々しくなり、匕首まで持っていたのです。思わず助けを求めて叫ぶ侍女。すると男は小箱を侍女に持たせると、スキュデリー女史に渡して欲しいと言い残して消え去ります。折りしもパリでは宝石強奪事件が相次いで起きていた頃。その箱に入っていたのは見事な宝飾品。当代随一の金細工師・ルネ・カルディラックの作った品だったのです... という「スキュデリー嬢」。

ホフマンの作2つ。「黄金の壷」の方は古本屋で見つけた古い本で、なんと初版が昭和9年! なので当然のように旧字・旧かな使いです。検印もついてるし、題名も本当は「黄金寳壷 近世童話」。でもこれ、面白いことは面白かったんですけど... この作品は、ホフマンの作の中でも傑作とされている方らしいのに、それほどでもなかったんですよね。ホフマンらしい幻想味は素敵なんですけど、肝心のアンゼルムスとセルペンチナの場面が思ったほどなかったからかなあ。もっとこのセルペンチナの一族の話が読みたかったな。この作品では、むしろアンゼルムスに片思いする16歳のお嬢さんの方が存在感があるし、世俗的で面白かったかも。
「スキュデリー嬢」は、ルイ14世の時代を舞台にした作品。ルイ14世はもちろんその愛人・マントノン夫人も、スキュデリー嬢その人も実在の人物。でもこの主人公となるスキュデリー嬢、実は「嬢」という言葉から想像するような若い娘さんじゃなくて、73歳の老嬢なんですね。その年輪が若い娘さんには出せない味を出していて、それが良かったです。そしてこの作品、スキュデリー嬢を探偵役とするミステリでもあります。それほど積極的に事件の謎を解こうとするわけではないし、むしろ巻き込まれた被害者とも言えるんですが... 謎が解けたのも、彼女の推理力のおかげというより、人徳のおかげでしたしね。普通のミステリを期待して読むとちょっとがっかりするかもしれませんが、期待せずに読むと、ほのぼのとした時代ミステリ感が楽しめるかと。

でも「スキュデリー嬢」はともかく、自分が「黄金の壷」をちゃんと読み取れてるのか気になる... 丁度、古典新訳文庫でこの組み合わせが出てたし、そちらも読んでみようかなあ。(岩波文庫)


+既読のホフマン作品の感想+
「クルミわりとネズミの王さま」ホフマン
「悪魔の霊酒」上下 ホフマン
「黄金の壺」「スキュデリー嬢」 ホフマン

「ホフマン短篇集」ホフマン
「黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ」ホフマン

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1379年6月。ジョン・クランストン卿はランカスター公ジョン・オブ・ゴーントの豪華な晩餐に招かれます。甥のリチャード2世の摂政を務めるジョン・オブ・ゴーントは野心の強い人物。この晩餐は、巨万の富を築いているクレモナの領主を接待するためのもの。国王を始めとするこのえり抜きの賓客たちと共に、なぜ自分が招かれているのかと不思議に思うクランストン。しかしその時、イタリア人の持ち込んだ不思議な謎が解けるかどうかという賭けを持ち出されたのです。それは、イタリア人の持つ郊外の館の「緋色の部屋」で4人もの人間が死んだ謎。イタリア人は、謎が解けない方に千クラウンを賭けるといいます。まんまとジョン・オブ・ゴーントの思惑に引っかかったことを悟りながらも、クランストンはその賭けに応じることに。

14世紀イギリスを舞台にした、検死官クランストン卿とアセルスタン修道士のシリーズ第3弾。
今回は「緋色の部屋の謎」、聖アーコンウォルド教会の敷石の下から発見された白骨死体の謎、そしてフラックフライアーズの修道院での連続殺人事件の謎と大きな謎が3つ。その中でも一番重要なのは「緋色の部屋の謎」。期限は2週間、解けなければ千クラウン払わなければならないんですから。でも連続殺人鬼を放置しておくわけにもいかないし、白骨死体のせいで奇跡騒ぎが起きてしまうし、どれも早急に解決しなくちゃいけません。

大酒飲みで大食らいで、所構わずげっぷやおならをしているクランストン卿。(これでも貴族!) モード夫人の「あなたって大口ばかりたたいて、大食らいでーー取り柄は、心が大きいことだけだわ。ときどき誰よりも賢くなることがあるけれど、それ以外のときは」という言葉がぴったり。本当はとても切れ者だし、実は権力には負けないまっとうな精神の持ち主なんですけどねえ。わざと酔いつぶれる寸前の酔っ払いという仮面をかぶってそれを隠しているみたい。彼が唯一恐れているのは、小柄なモード夫人だけ。夫人と生まれたばかりの双子の息子たちを溺愛する、いいお父さんです。そんなクランストンに比べると、アセルスタンは堅実でやや地味に見えるんですが... でもクランストン卿と比べたら誰でも地味に見えてしまうかも。アセルスタンもいい味出してます。今回は特に純な一面を見せてくれますしね。そんな2人が事件の捜査に乗り出すんですが、推理の部分で活躍するのはもっぱらアセルスタン。クランストンはほとんどのことをアセルスタンに任せっぱなしです。でも最後に見事なところを見せるのがクランストン。
このシリーズの大きな特徴である14世紀末の英国の風俗描写は相変わらず。排泄物の臭いが今にも漂ってきそうです。そんな不潔なロンドン下町の描写と対照的なのが、ジョン・オブ・ゴートの豪華極まりない晩餐会。リチャード2世とジョン・オブ・ゴーントの関係もとてもリアルでいいですねえ。歴史がどうなったのか知ってる読者としては、色々ニヤリとさせられちゃう箇所が~。そして一見穏やかに見えるけれども、実は権力欲が渦巻いている修道院の世界も面白いし。そんな歴史的な面白さも味わえるミステリです。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「毒杯の囀り」ポール・ドハティ
「赤き死の訪れ」ポール・ドハティ
「神の家の災い」ポール・ドハティ

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ノエルは、ソルトマーシュ村の副牧師を務める青年。牧師のクーツさん夫妻はあまり好きではないものの、彼らの姪のダフニと甥のウィリアムは気に入っているし、特にダフニとは恋仲。クーツ家でなかなか居心地の良い日々を送っていました。しかしクーツ牧師の家でメイドをしていたメグ・トスティックに子供ができたことから、クーツ家は大騒ぎとなります。破廉恥な行いが大嫌いなクーツ夫人によってメグは首となり、村の宿屋に滞在して出産を待つことに。メグの恋人は、宿屋のバーテンダー兼用心棒のボブ・キャンディ。しかし赤ん坊の父親はボブではなかったのです。メグは誰が父親なのか頑として口を割ろうとしないどころか、出産後、誰もメグにもその赤ん坊にも会うことができず、村では噂が飛び交います。そんな折、この土地の領主であるサー・ウィリアムの家にミセス・ブラッドリーという小柄で痩せた、眼光の鋭い女性が滞在することになって...

ミセス・ブラッドリーという精神分析医の女性が探偵役を務めるミステリ。でもこれが普通の探偵役とは全然違ーう! このミセス・ブラッドリー、声は綺麗らしいんですが、その外見描写は散々なんですよね。「小柄で、痩せていて、しわくちゃで、顔は黄ばみ、魔女を思わせる黒い目は眼光が鋭く、猛禽の鉤爪のような黄色い手をしていた」とか「トカゲ、というか、鱗に覆われた先史時代の爬虫類みたいで、甲高い、きーきーいう笑い声を聞くと、思わず飛び上がってしまう」とか... ワトスン役のノエル青年も始終ぎょっとさせられてるし、とにかく「胡散臭い」「変人」というのが第一印象。しかも物語自体も一筋縄ではいきません。何が何やらよく分からないうちに事件が起こっていて、気が付けばこのエキセントリックなミセス・ブラッドリーがノエル青年を従えて捜査に乗り出してるし。
とにかく、これまであまり読んだことのないような雰囲気。しかも物語自体に何やら妙な歪みのようなものがあるなあ、なんて思ってたんですが、訳者あとがきに「この作者はわざと強弱の付け方を逆にしてオフビートな世界を創り出しているのだ。グラディス・ミッチェルの面白さとは、盛り上がるべきところで盛り上がらず、本来なら盛り上がるはずのないところで、突如、盛り上がったりする面白さなのである。」と書かれているのを見て納得。そうか、そうだったのか。やっぱりそれがグラディス・ミッチェルの魅力だったんですね。でもやっぱり強烈ですよ、ミセス・ブラッドリーって。もしやグラディス・ミッチェル自身がミセス・ブラッドリーのような女性だった...? なんて思いたくなっちゃう。(笑)
これは慣れれば慣れるほどクセになるかもしれないです... という私も一読した時よりも、感想を書こうと思ってぱらぱらと読み返してた時の方が面白くてハマってしまって、結局また読み直してしまったし。最初に読んだ時はほんと「ワケ分からん」状態だったんですが、後から読み返してみると「そういう意味だったのか!」という文章や会話がいっぱいあって、なんだか作者にいいようにしてやられてしまったみたいです。これはシリーズの他の作品もぜひ読んでみようと思います~。(国書刊行会)

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ジーヴスは、ありとあらゆる点でとてつもなく有能な執事。主人のバーティーが目が覚めたきっかり2分後に完璧なミルクティーを持って現れ、主人に質問される全てのことに適切に答え、適切な助言をするのです。そんなある日のこと、公園に散歩に出かけたバーティーは、旧友のビンゴ・リトルに出会います。春になると永久不変に誰かと恋に落ちるビンゴは、その時もメイベルという名のウェイトレスに恋をしていました。身分違いのメイベルと何としても結ばれたいと考えていたビンゴは、現在収入面で頼り切っている伯父に穏便に結婚を認めさせる方法をジーヴスに尋ねてくれとバーティーに頼み込みます。

色んなブログで面白いという評判は目にしていたし、オススメもされていたんですが、ようやく読めました!
いやあ、噂にたがわず面白かったです~。なんとなくもっと文学寄りなのかと思い込んでたんですけど、そうではなかったんですね。すらすら読めてしまうエンタメ作品。英国独特なシニカルなユーモアが満載。この「比類なきジーヴス」は、元々短編だったものを編集・加筆して長編小説の体裁にしたものなんだそうで、確かに読んでみると連作短編集みたいだし、基本的な展開はどれも一緒なんですね。バーティーが失敗して、ジーヴスが得意の機転でその窮地を切り抜けるというパターン。そこにアガサ伯母さんや、従弟のクロードとユースタス、ビンゴの恋の相手たちが彩りを添えてます。バーティーが自分で危機を切り抜けたと思っても、必ずその裏にはジーヴスの活躍があるんですねえ。でもそんな完全無欠なジーヴスにも、時折ご主人さまに冷たくなることがあるんです。それは大抵、決して趣味がいいとは言えないバーティーの服装センスが原因というのがまた可笑しい♪
普通に読むだけでも十分楽しいんですが、先日読んだ新井潤美さんの「階級にとりつかれた人々」のおかげで少し理解度が増したかな? このジーヴスが、ロウアー・ミドル・クラスのヒーローだというわけですねー。多分アッパー・クラスのステレオタイプとして描かれているバーティーやビンゴのあり方にも、ビンゴの恋人(ウェイトレス=ロウアー・ミドル・クラス?)に対する反応にも納得です。でも、バーティーが自分のことをシャーロック・ホームズになぞらえる箇所にだけは違和感が。シャーロック・ホームズの連載も、確かロウアー・ミドル・クラスが購読する新聞か雑誌だったと思うのだけど~?(国書刊行会)

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