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近未来のアメリカが舞台。キリスト教の原理主義者の一派がクーデターを起こして、ギレアデ時代が始まります。その頃、中絶を含めた様々な産児制限や性病の流行、環境変化によって、白人種の出生率が急落しており、それを憂慮していた彼らは、全ての女性から仕事と財産を没収。再婚の夫婦と未婚者の私通は全て姦通だとして子供を取り上げ、妊娠可能な女性を選び出して「侍女」としての教育を施し、子供のいない支配者階級の男性の家に派遣。彼女たちは出産のための道具とされることになったのです。

侍女たちはくるぶしまで届く赤い衣装を纏い、顔の周りには白い翼のようなものが付けられて、周囲とは遮断されています。私物と言えるようなものは一切持てませんし、部屋からも自殺や逃亡に使えそうな道具は慎重に取り除かれています。もちろん日々の行動に自由はなく、その存在に人間性などこれっぽっちも求められていません。まさに「二本足を持った子宮」。
各個人からその個性を奪い取るには、名前と言葉を取り去るのが一番効果的なのね... というのが、この作品を読んで最初に感じたこと。単なる出産する道具である侍女たちの名前は「オブ+主人の名」。この物語を語っているのは「オブフレッド」と呼ばれる女性ですし、他にも「オブグレン」だの「オブウォーレン」だのがいます。日々決められた通りに行動し、侍女同士での挨拶ややり取りも決められた通りの言葉のみ。

一見荒唐無稽な設定なんですが、考えて見れば十分あり得る未来。この作品は1985年に書かれているので、それから20年経ったことになるのですが、世界的な状況はますます悪化するばかり。十分通用するどころか、ますますこの設定が現実的になっているのかも...。それでも子供や夫を奪われて「侍女」となった女たちは、そうなる以前の暮らしを覚えているんですが、次世代の「侍女」たちは、元々そのような自由な世界が存在していたなど知る由もなく... その辺りには全然触れられてなかったんですけど、そういうのもちょっと読みたかったなあ。
でも、ここまで管理社会となって、人々も大人しく従ってるんですが(でないと、すぐに処刑されちゃうので)、そんな中でもやっぱり人間的な感情が垣間見えるんですよね。特に子供ができない夫婦にとって、侍女はありがたい存在のはずなんですが、そう簡単に割り切れるものでもなく...。水面下で入り乱れる感情も面白かったです。(ハヤカワepi文庫)

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アンドレシアと呼ばれる惑星に問題が起こり、探査隊が派遣されることになります。アンドレシアは、まだ幼年期の文明にある惑星。その豊かな資源に目をつけた、まだ若い文明の「帝国」の探検隊が、新たにここを植民地にしようと見事な森林地帯をパワーショベルで切り拓いていたのです。探査隊の任務は、自分たちの存在を悟らせずに、アンドレシアから帝国軍を撤退させることなのですが...。

木樵りの青年たちが出会った「仙女」が、実は他の惑星からやってきた異星人だった?!という設定が面白い作品。各地に伝わるおとぎ話に登場する妖精や何かも、実は宇宙人だったのか? なんて思ってしまいそうになる説得力です。でもこの話、高度な発達を遂げた文明の下で教育を受けてるエレーナという少女の視点から書かれていくのがネック...。エレーナは、自分の属してる文明が高度だからといって、アンドレシアや帝国を見下してるんですよね。アンドレシアの原住民の青年の方が、本質的な意味では彼女よりもずっと賢いのに! まあ、彼女の成長物語という意味ではそれでいいんでしょうけど、知識は持ってても、本質的に頭の悪いエレーナには終始イライラ。エレーナじゃなくて、作者の「神の視点」から書いてくれたら、もう少し楽しめたかもしれないのに。それに彼女の視点からだとファンタジーというよりSF。やっぱりSFは苦手だわ... ツラかったです。(ハヤカワ文庫FT)

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遺伝子組み換えによって、全ての暴力への衝動が抑制されている光の世界。ここでは人は生まれ落ちた時に抑制遺伝子を埋め込まれ、身体と心が大人になり安定して体液が発光すると、"木曜日の儀式"を受けて「聖遺伝者」の仲間入りをします。しかしそんな光の世界にも、暴力は僅かながらに存在していました。それは土竜(もぐら)と呼ばれる、"木曜日の儀式"から零れ落ちた少年たち。そしてそれらの土竜を排除しようとする炎人たち...。

未来の地球を舞台にしたSF作品。でもSF的な設定ではあるけれど、どちらかといえば土竜のカオルという少年の成長物語。遺伝子操作によって理想的な人間、そして理想的な社会が作り出され、でもそこには実は落とし穴が... というのはどこかで見たような設定なんですけど、この世界観は個性的だし、ミトラと名付けられることになる不思議な「神」やその謎なんかは面白かったです。でも、もうちょっと書き込んで欲しかったですね。最初は「うすのろ」と呼ばれていたカオルが、いつの間にか中心で行動するような人間になってるんですけど、何がカオルを成長させたのか、今ひとつ伝わってこないんです。土竜のチームのリーダーの少年のカオルに対する言動も、今ひとつ解せなかったし...。どうやらみんな「うすのろ」と言いながらも、カオルのことを妙に信頼してたみたいなんですけど、どこがそんなに信頼させていたのか良く分からなくて。
未来の地球の姿が、ちょっとナウシカのようなラピュタのような感じで、宮崎駿映画にすると良さそうな物語でした。と思ったら、丁度徳間から出てるし! そんな話にはならなかったのかしら?(徳間デュアル文庫)


+既読の浅暮三文作品の感想+
「ラストホープ」浅暮三文
「嘘猫」浅暮三文
「実験小説 ぬ」「石の中の蜘蛛」浅暮三文
「夜聖の少年」浅暮三文
Livreに「ダブ(エ)ストン街道」の感想があります)

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21世紀に入り、地球の抱える様々問題が深刻化していた頃、優秀な人材を確保することが目的のΣ(シグマ)計画によって、優秀な環境工学技術者だったエフゲニィ・マカロフのクローンが次々と作り出されることになります。元となったマカロフは、そのまま普通に一生を終える予定。しかし本人の強い希望によって、大量に生み出されるマカロフたちの人生を追体験するために、人工冬眠の施術を受けて70年後の世界へと送り出されることに...。

去年読んだ「オルガニスト」(感想)がとても素敵だった山之口洋さん。今年はぜひコンプリートしたいと思ってる作家さんの1人です。そしてこの本は、祥伝社の400円文庫のうちの1冊。「長すぎない短すぎない中編小説」をモットーにしたこの400円文庫、なかなかこの長さがしっくりする作品がないんですけど、それだけにぴたりとハマった時は気持ちが良いんですよね。今まで読んだ中でハマったなと思った作品は、若竹七海さんの「クール・キャンデー」とか、菅浩江さんの「アイ・アム」。この作品も、短いけど濃くて良かったです。
同じ遺伝子を持ったマカロフでも、その生き方や個性は様々。70年後の世界には「マカロフ・クラブ」というのが出来てるんですけど、ここはバーテンダーもマカロフなら客もマカロフという、マカロフだけが入れる会員制クラブ。皆全く同じ遺伝子を持っているはずなのに、脚本家もいれば俳優もいるし、刑事もいれば泥棒もいるんですよね。「みな、それぞれの人生の痕をどこかしらに刻みつけた」マカロフたち。環境工学を研究するしか能がなかった本家のマカロフにとっては、それは新鮮な驚き。本当はそこには痛い真実もあるんですが... まあそれはそれとして(いいのか?)、ここに繰り広げられる様々なマカロフたちの人生模様がすごく好きでした~。全く同じ遺伝子だと、ここまでバリエーションに富むのは本当は難しいでしょうけど、でもなんかいいなあ。夢があって。ラストも、ちょっと甘いんじゃ... と思いつつもなかなか良かったです。(祥伝社文庫)


+既読の山之口洋作品の感想+
「オルガニスト」山之口洋
「0番目の男」山之口洋
「天平冥所図会」山之口洋

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1969年にヒューゴー賞とネビュラ賞を受賞したという作品。これはハイニッシュ・ユニバースと呼ばれるシリーズの4作目だったんですね。1冊ごとに独立した話ではあるようなんですが、元々SFはあまり得意ではないところに、良く分からない用語が沢山登場するし、説明もほとんどなくて、かなり苦戦しました... というか、挫折しなかったのが不思議なほど。読了後も解けない疑問がいっぱい! 巻末に「ゲセンの暦と時間」が載っていたのに気づいたのも読了後だし、地図とか用語辞典が欲しかったです。

舞台となるゲセンは常に雪と氷に覆われている惑星。ここに住むゲセン人は、外見的には人類と同じなんですが、両性具有で、26日周期でめぐってくるケメルと呼ばれる発情期にパートナーと性交して子供をもうけるのが特徴。主人公はそんな世界を訪れて、地球を含む、宇宙に存在する3000もの国家の同盟体の使節として、同盟を申し込むことになるんですが... でも相手は宇宙船はおろか、空を飛ぶ鳥すら見たことのない人々。しかも主人公は両性具有ではなくて男性。特に発情期が決まっているわけでもなく。外見こそ一緒ですが、両性具有の彼らから見たら薄気味悪い存在にしか見えないわけです。

ものすごーく苦戦したんですが、終盤の氷原の逃避行は良かったです。曲がりなりにも友情として確立しようとしていたものが、ケメルによって違うものに変貌しようとする一瞬なんてドキドキ。途中で挿入されたゲセンの民話や説話も面白かったし、SFが好きな人は大絶賛の作品なんだろうなあ。という私もせめてシリーズ1作目から読んでいれば... うーん、でもやっぱりSFはしばらくやめておいた方が無難かも...(^^:。(ハヤカワ文庫SF)


+既読のアーシュラ・K・ル=グウィン作品の感想+
「闇の左手」アーシュラ・K・ル・グイン
「ゲド戦記」アーシュラ・K・ル=グイン
「夜の言葉」アーシュラ・K・ル=グウィン

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昨日に引き続き、パトリシア・A・マキリップ。これまで読んでいた幻想的な作品とはうって代わってSF。...と聞いてたんですけど、始まりはまるでアフリカの奥地のような場所で、びっくりでした。森の中に流れる<河>が中心となり、<屏風岩>に始まり<十四の滝>で終わる世界が舞台。その世界に住むカイレオールという14歳の少女が、世界はどんな形をしているのか、その世界の外には何があるのかなどの好奇心を押さえきれずに、幼馴染の少年タージェと共に<十四の滝>へ向かうのですが... という話が「ムーンフラッシュ」。そして「ムーンドリーム」はその4年後の話。

私はてっきり、アフリカの奥地に欧米の探検家が入り込んだ話なのかと思い込んでたのですが、全然違ってました。(笑)
カイレオールのお父さんは薬師で、薬師は部族の中心になって様々な儀式を執り行うんですが、夢を判断するのも役割のうち。この河の世界では、夢には必ず何らかの意味が隠されてるんです。そういうのも、こういう純粋な世界ならではという感じ。例えばアルタミラやラスコーの壁画みたいな絵は、テレビとか印刷物とか何もない純粋な世界に生まれ育っているからからこそ描けるもので、情報過多の現代人にはあんな力強い絵は到底描けない、みたいなことを聞いたことがあるんですが、丁度そんな感じでしょうか。カイレオールとタージェが、外の知識と引き換えにその純粋な力強さを少しずつ失っていくみたいなところが淋しかったんですが、最後には、ごくごく狭い世界のはずだった河の世界の意外な包容力の大きさが感じられて良かったし、原始的で素朴な世界の描写がマキリップらしくて美しかったです。

これでマキリップは制覇。うわーん、早く新作が読みたいです!(ハヤカワ文庫FT)


+既読のパトリシア・A・マキリップ作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「妖女サイベルの呼び声」「影のオンブリア」の感想)
「星を帯びし者」「海と炎の娘」「風の竪琴弾き」パトリシア.A.マキリップ
「ムーンフラッシュ」「ムーンドリーム」パトリシア・A・マキリップ
「オドの魔法学校」パトリシア・A・マキリップ
「ホアズブレスの龍追い人」パトリシア・A・マキリップ
「チェンジリング・シー」パトリシア・A・マキリップ
「茨文字の魔法」パトリシア・A・マキリップ

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近未来。深刻化していたオゾンホールの問題に対してテレサ・クライトン教授が発明したのは、ウェアジゾンという、大気中のフロン分子と結合してオゾンを破壊する力をなくす化学物質。このウェアジゾンを全世界に散布する計画が、国連によって推進されます。しかしこの物質には、思わぬ副産物がありました。夕焼けや朝焼けといった、空を赤くする光の波長まで散乱させてしまうのです。ウェアジゾンの効果は150年。ウェアジゾンを散布すると、地球から150年もの間、夕焼けや朝焼けが消えることになると分かり、混乱が巻き起こります。

今までのようなノスタルジックでちょっぴり怖い作品群とはがらりと変わったSF作品。環境問題が背景となっていますが、夕焼けというどこかノスタルジックなモチーフが絡んでいるのは朱川さんらしいですね。
国連の計画のために日本にやって来たテレサが知り合うことになる人々とのドラマの積み重ねはさすがに濃やかに描かれているし、オゾン層破壊という問題を取り上げたのはいいと思うんですけど、夕焼けを失うことに対してマスコミを始めとする人々が感情的になっているだけで、それ以上の掘り下げがなかったのがとても残念。最後の結末も、あらら、そう来ちゃいますか...!という感じ。肝心のイエスタデーという人物に関しても、イマイチ良く分からないままだったんですよねえ。うーん。でも読んだ後に改めて夕焼けを見ると、もしこれが見れなくなってしまったら... と、しみじみ考えちゃいました。(角川書店)


+既読の朱川湊人作品の感想+
「かたみ歌」朱川湊人
「さよならの空」朱川湊人
「花まんま」朱川湊人
Livreに「都市伝説セピア」「白い部屋で月の歌を」の感想があります)

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