Catégories:“紀行”

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1871年。モリス37歳。この夏、彼はポニーの背に揺られて、アイスランドを旅した。終生愛してやまなかったアイスランド・サガゆかりの地を訪ねる六週間の旅だった。モリスの生涯の転機となった旅を記録した貴重な日記。氷河と火山の島アイスランドの伝説と自然と、そこに暮らす人びとの姿を精彩に富む筆致で描く。(「BOOK」データベースより)

全7巻のウィリアム・モリスコレクションで、唯一まだ読んでなかった本。アイスランド・サガは私も好きなので、結構楽しみにしてたんですが... うーん、あまり楽しめませんでした。アイスランド・サガが好きとは言っても、きっと「好き」のレベルが違いすぎるんでしょうね。例えば北欧には行ってみたいと思ってても、そういうゆかりの地を訪ねたいと思ったことはないし...。「ここはニャールのサガのあの場面で...」なんて言われても。その「ニャールのサガ」だって、一応読んでるんですけども。(涙)
しかも紀行エッセイ。私にとっては、どうも好き嫌いが激しく分かれる分野みたいです。せっかくだったのに、思ったほど楽しめなくて残念だわ~。(晶文社)


+既読のウィリアム・モリス作品の感想+
「世界のはての泉」上下 ウィリアム・モリス
「理想の書物」ウィリアム・モリス
「輝く平原の物語」ウィリアム・モリス
「ジョン・ボールの夢」ウィリアム・モリス
「ユートピアだより」ウィリアム・モリス
「不思議なみずうみの島々」上下 ウィリアム・モリス
「世界のかなたの森」ウィリアム・モリス
「サンダリング・フラッド」ウィリアム・モリス
「アイスランドへの旅」ウィリアム・モリス

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太古の昔から目に見えない言葉の霊力を信じ、文字よりも言葉を大切にして、歴史や物語、詩を何世代にも渡って言葉で伝えてきたアイルランドのケルト人。その後ケルト社会が崩壊し、ゲール語が英語に取って代わられるようになっても、アイルランドには音楽や物語を好む風土が残り、今に至っています。そんなアイルランドのケルト的な無形の文化、歌い手たちや物語の語り手たちに興味を引かれた著者が、それらの人々に会いながらアイルランドを旅する本です。

まず印象に残ったのは、歌は語りだから、歌の背景を知らなければ正しく歌うことはできない、という言葉。歌う技術よりも、まず「物語ありき」。この言葉には驚きました。...ちょっと考えてみれば、確かに歌も物語も一緒なのにね。でもやっぱり、歌は耳から入ってくるもの、物語は目から入ってくるものという意識が私の中にはあるんですねえ。それがいいのか悪いのかはともかくとして。
古い神話や伝承、口承で伝わってきたような文学が好きと言いつつ、私は実際にはあまり耳からの情報というのに慣れてないのかも、なんて改めて思います。物心ついた頃には既に本は身の回りに沢山あったけど、どちらかといえば本と一緒に放置されてたという感じで、母に本の読み聞かせなんてやってもらったことないし(母もした覚えがないと言ってました)、おじいちゃんおばあちゃんが面白いお話を沢山してくれるなんてこともなく、ラジオもあんまり聞かなかったですしねえ。私にとって情報とは、まず目から入ってくるものなのかも。例えば何かの曲を聴いていても、私にとって歌は楽器の1つぐらいの位置付け。言葉としての歌詞を聞くことってほとんどないんです。ピアノはずっと習ってたし、音を聞き取るという意味ではある程度訓練されてるはずなのだけど。
でもケルトの文化では、元々文字には重きを置いてなくて、あくまでも言葉が中心。「文字にされれば、物語は死ぬ」なんて言葉を聞くと、ドキッとしてしまいます。

さて、この本に登場するのは現代の語り部たち。名刺大のカードを繰って、どんな話が聞きたいのかとたずね、1つ話が出てくるとその話が次の話へ、そしてまた次の話へと繋がっていくなんて楽しそう! 日本の昔話のような「むかーしむかしあるところに...」のような始まりではなくて、畳み掛けるように言葉が出てくるリズミカルな語りというのもちょっと意外でしたが、身振りや手振りもなく、自分の中にある言葉をどんどん並べていくような語り方みたいです。そしてそんな風に語られた物語が実際にこの本でも紹介されてるのが嬉しいところ。
語り部になるにも人それぞれのきっかけがあるでしょうけど、著者が最初に会った人の場合は、成人して海外で仕事をしていて、久々に帰国した時に見た光景がきっかけだったのだそうです。かつては夜になると家族や近所同士で集まって歌を歌い、楽器を演奏し、踊り、物語を語っていたのに、それが全くなくなっていたのにショックを受けたから。テレビの登場のせいだったんですね。人々はそれぞれ家に閉じこもってテレビを見るばかり... でもだからといって語りの伝統が完全に絶えたわけではなくて、声をかけてたら、まだまだ歌やお話を愛する人々がぞろぞろと出てきて。...こういう集まり(ケイリー)に関しては、チャールズ・デ・リントの「リトル・カントリー」(感想)や、ケイト・トンプソン「時間のない国で」(感想)を読んだ時にも楽しそうだなと思ってたんです。
でもこの人の場合は、まだまだそんな人たちがいっぱいいることが分かったからいいんですが、他の語り部には、もう誰もお話を聞きたい人間などいない、なんて言ってる人もいて... 今の人間は集中力がなくなっていて、20分も静かにしてることができない、もう語りも終わりだ、なんて話を聞くと本当に悲しくなってしまいます。

ちょっと意外だったのは、今は神話はあまり受けなくて、それよりも笑い話に人気があるという辺り。フィン・マックールの話もオシアンの話もクーフリンの話もメイヴの話も、私、大好きなんですけどー。確かに1日中働いて疲れてる時には、ちょっとした笑い話がいいのかもしれませんけどね。こんな時に文字があってやっぱり良かったと思います。文字がなかった頃は、最近の人には受けないから、なーんて言われて消えていった物語も沢山あったんでしょうけど、今はその心配はほとんどないんですものね。(笑)(集英社新書)

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ダブリン大学を卒業後、音楽者を目指してドイツに行き、作家に転向しようとしてフランスに行ったというシング。ラシーヌに傾倒していたシングにイェーツが勧めたのは、アラン島を訪れること。シングはその勧めに従って1898年5月から1902年までの間に4回に渡ってアラン島に滞在して土地の人々にゲール語を習い、その土地に伝わる伝説や迷信を聞くことになります。これはその4回に渡るアラン島滞在記。

アラン島はアランモア(北の島)、イニシマーン(中央の島)、イニシール(東の島)という3つの島から成り立っていて、シングはその3つの島にカラハ(土地の人間の乗る小舟)で行き来しながら、島民の家に滞在してアイルランド語やゲール語を習い、土地の老人たちに様々な話を聞く日々。島の人々との生活ぶりが飾らない筆致で描かれていきます。最初は余所者扱いで少し距離があったんでしょうけど、徐々に島の生活に馴染み、島民と親しくなっていくシング。
ここに書かれているのは、ほぼ100年前の生活なんですが、私が以前からアイルランドという土地に対して持っていたイメージそのまま~。土地はあっても肝心の土があまりないから、土を大切に掘り出して砂と海草を混ぜて、平たい岩の上一面に広げて、そこでじゃがいもの栽培をするんですよ! 大変そうー。でも島の人々は素朴で暖かくて、自然体。ケルトの民話や妖精譚が自然に生活の中に息づいているのがとても素敵。島のおじいさんからも、後から後から妖精の話が出てきますしね。ここに出てくる妖精譚には既にどこかで読んだ覚えがあるものも多くて、この作品から知られるようになった物語もあるのかも? それにイェーツ辺りも同じように話を採取してたんでしょうね。そしてこの生活の中で得たものは、シングの戯曲の中で見事に実を結んでいるのだそう。そちらも読んでみたいな。
ただ、私が読んだこの岩波文庫の姉崎正見訳は最近復刊したものなんですけど、昭和12年当時の旧字・旧かな遣いのままなんですよね。みすず書房の栩木伸明訳の方が読みやすいのではないかと思います... この栩木伸明さん、「琥珀取り」「シャムロック・ティー」の方なので、読みやすさは間違いないかと。(岩波文庫)


+既読のシング作品の感想+
「アラン島」シング
「シング戯曲全集」ジョン・M・シング

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デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、そして再びスウェーデンへ。カレル・チャペックの旅行記コレクションの4冊目。今回もチャペック自身によるイラストが多数収められています。

イギリス、チェコ、スペインと続いたチャペックの旅行記、今回は北欧です。これは1936年に、妻のオルガとその兄のカレル・シャインプフルークと共に訪れたデンマーク、スウェーデン、ノルウェーという北欧3国を描いたもの。鉄道や船で巡る旅の記録。カレル・チャペックの人々を見つめる優しいまなざしやウィットの利いた描写は相変わらずですし、色々考えさせられます。例えばデンマーク。

ここはちっちゃな国だ、たとえ五百の島全部を寄せ集めたとしても。まるで小さなパンの一片のようだが、その代りに、厚いバターが塗られている。そう、家畜の群、農場、はちきれそうな家畜の乳房、樹冠に埋もれる教会の塔、さわやかなそよ風の中に廻る風車の肩ーー。(P.25)

でもこれほどまでに豊かな自然を描いたその後で、こんな文章が来るんです。

そう、ここは豊穣の国、バターとミルクの国、平穏と快適の国だ。そう。しかしここでひとつ教えてほしい。なぜこの国は自殺率が世界最高だと言われるのか? それはここが、満ち足りて落ち着いた人たちのための国であるせいではないのか? このうにはおそらく、不幸な人たちには向かないのではないか。彼らはおのれの不運を恥じるあまり、死を選ぶのだろう。(P.30-31)

ほけほけと読んでいていきなりこういう文章が来ると、かなり強烈です。実際、北欧の国は冬の日照時間が短いから鬱になる人が多いとは聞いたことがありますが...。アルコール依存症もとても多いとか。

あと、都心部でのことも色々と描かれてるんですが、私にとって興味深かったのは、まだまだ昔からの自然が残っているような場所。そういった場所が本当にまだまだ沢山あるんですねー。北欧神話やサガで親しんだ、壮大な自然と共に生きる人々の暮らしがここにはあって、ずっと変わることなく続いているんですねえ。チャペックの体験した白夜の描写も美しいです。一度体験してみたくなります。でも白夜があるから冬に長く続く夜があるわけで... それが鬱に繋がるなんて知ってしまうと、能天気に「白夜が見てみたいー」なんて言えなくなってしまうんですよねえ。(ちくま文庫)


+既読のカレル・チャペック作品の感想+
「ダーシェンカ」「チャペックの犬と猫のお話」「園芸家12ヶ月」カレル・チャペック
「イギリスだより」「スペイン旅行記」カレル・チャペック
「ロボット」チャペック
「チェコスロヴァキアめぐり」カレル・チャペック
「北欧の旅」カレル・チャペック

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スコットランドを「幽霊伝説」「妖精伝説」「魔女伝説」「文学・歴史ミステリー」「パワースポット」の5章から紹介していく本。

んんー、悪くはなかったんだけど... なんだかちょっと微妙でした。面白い部分と面白くない部分が混在してるんですよね。「幽霊伝説」はまずまず、「妖精伝説」はいい感じ、「魔女伝説」はイマイチ、「文学・歴史ミステリー」は面白いんだけど物足りない、「パワースポット」は案外いける... といった感じでしょうか。もちろんそれは私の興味の方向性によるものなんでしょうけど。
一番面白かったのは、シェイクスピアのマクベスが実在の人物だったという辺りかな。いや、本当にいたとは知りませんでした。11世紀に17年間スコットランドを治めた王だったんだそうです。でも本当のマクベスは、シェイクスピアの悲劇に描かれてる人物とは全然違う人物だったんですって。シェイクスピアの悲劇で史実に沿ってるのは、国王ダンカンを殺して王位についたこと、そしてダンカンの子・マルコムによって殺されたということだけ。野心に目がくらんで謀反を起こしたという下克上的な描かれ方をしてるんですけど、本当はマクベスは王家の血筋の生まれで、ダンカンとは同年代の王位継承者同士の争いだったようです。しかも戦いを仕掛けたのはダンカンの側だったんだとか。本当のマクベスは、有能で寛大な君主でスコットランドを大いに繁栄させた王なのだそう。しかもマクベス夫人もそんな夫に主君殺しをけしかけるような悪女ではなくて、こちらも王家の血筋、しかも本家筋の貴婦人。演劇界では「マクベス」が呪われた芝居とされているというのも知らなかったんですけど、その呪いが事実とは随分違う人物に描かれてしまったマクベス夫妻の怒りのせいかもという筆者の意見も、いかにもありそうです。(笑)
スコットランドといえば、ウォルター・スコットやその作品に関しても何か言及があるのではないかと期待したんですが、それは全然ありませんでした。ああー、この本が物足りなかったのは、その辺りが全然載ってなかったせいというのが一番大きかったのかも。ロンドンが舞台のジキルハイドなんかより、「湖上の美人」を取り上げて欲しかった。でも「ミステリー」「ファンタジー」の括りに引っかからなければ仕方ないんですよね。残念。(新紀元社)

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アイルランドをレンタカーで走り、そしてアラン島へ。夏の終わりにヒースの花咲くムーア(荒野)が見たくなって、嵐が丘の舞台となったイギリスのヨークシャーのハワースへ。緑と白の地に真っ赤なドラゴンが国旗のウェールズ、「バスカーヴィル家の犬」の舞台となったダートムーア、ミス・マープルが住むセント・メアリー・ミード村のモデル、ダートムーアのウィディコム・イン・ザ・ムーア村へ。クリームティーが美味しいことで有名なトットネス、ケルトの国・コーンウォール地方へ。そしてケルトの遺跡を見るために再びアイルランドへ。

以前読んだ「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」に続く旅行記。ただし今回はアーサー・ランサム色は全然なくて、アイルランドやイギリスの南西部が中心。何度もの旅の話を1冊にまとめたようで、ちょっとあっさりしすぎてる気もしたんですけど... 最初のアイルランドの章があんまりあっけなく終わってしまったのでびっくりしたんですけど、再びアイルランドが登場して一安心。アランセーターで有名なアラン島もいいですが、私としてはケルトの遺跡やタラの丘、「ケルズの書」の方がずっと気になりますしね。
2度目のアイルランド旅行の章ではO.R.メリングの「妖精王の月」とバーバラ・レオニ・ピカードの「剣と絵筆」が引き合いに出されていました。「妖精王の月」は私もとても好きな作品。アイルランドのケルトの雰囲気がたっぷりで素敵なんです。でも「剣と絵筆」の方は初耳。修道僧が福音書を描いている場面が出てきて、羽根ペンの切り方や絵の具の作り方、羊皮紙の磨き方などが詳しく出てるというので、早速図書館に予約を入れてしまいました。修道士カドフェルの本にもそういう場面があったんですけど、それほど詳しくはなかったんですよね。どんなお話なんだか楽しみ楽しみ。(河出書房新社)


+既読の高柳佐知子作品+
「エルフさんの店」高柳佐知子
「ティスの魔女読本」高柳佐知子
「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」高柳佐知子
「ハイウィロウ村スケッチブック」高柳佐知子
「ケルトの国に妖精を探しに」高柳佐知子
「アリゼの村の贈り物」高柳佐知子
「ナチュラル暮らしの手作り工房へ、ようこそ」高柳佐知子
「庭が仕事場」高柳佐知子
「不思議の村のハロウィーン」高柳佐知子

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「まのとのま」って最初聞いた時、一体どういう名前なんだー?と思ったんですが、これは真野さんと乃間さんだから。「真野と乃間」なんですね。真野匡さんと乃間修さんという2人で、名前だけ見ると男性かと思ってしまいそうなところですが、どちらも女性。お2人ともフリーのイラストレーターだそうで、1冊の本の中にイラストがどっさりです。コミック本かと思うぐらいどっさり。でも字もぎっしり。川原泉さんの作品よりもぎっしり。(笑)
「食」「探」「楽」「美」「カッパドキア」「アンタルヤ」という6章に分かれて、この1冊に色んな情報がたっぷり入ってました。ちなみに「探」はイスタンブールの見所で、「楽」は娯楽とかホテルの情報とか。そんな風に分かれてるので、もうちょっと旅行記的な流れでも読んでみたかったなとか、「食」の最初に登場したゴージャスな「トゥーラ」でのエピソードがもっと読みたーい!なんて思ったりもしたんですけど(お店一軒につき紹介は見開き2ページずつなので)、他のページは十分満足。隅々まで読むのは結構大変ですが(笑)、これだけの情報があれば、結構ディープな旅行もできそう。美味しそうだし楽しそうだし、うわーん、自分の目で見てみたい! しかも猫天国なんだそうです、トルコって。観光客はビニールの靴カバーをつけさせられてるというのに、高級絨毯の上でゴロゴロする猫、かわいーい♪
 
無敵シリーズっていっぱいあるんですねえ。北京、上海、香港、バリ、マレーシア、バンコク、沖縄、ハワイ、ベトナム、ソウル、台湾。どこか遊びに行く時はこういう本をガイドブック代わりにするのもいいかもですね。(アスペクト)

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アーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」シリーズゆかりのウィンダミア湖やコニストン湖、ピーターラビットのニア・ソーリー村、ワーズワースのグラスミア。あるいはコッツウォルズの村々やノーフォークの川、ダービー観戦、ウィズリー・ガーデン、そして再び湖水地方。そこで出会った人々や美しい景色、訪れた街や入ったお店、食べたもののことなどを綴った旅行記です。

大人になってからランサムを読み、「どんなものでも欲しい」というほどランサムに夢中になったという高柳佐知子さん。ホテルの朝食のポリッジを食べながら、嵐の翌日にディクソンおばさんが持ってきてくれた熱々のおかゆを思い出したり、ティールームにあった"Stieky Ginger-bread"を食べて、ナンシーとペギーの家のコックのお得意の「とびきり黒くて汁気たっぷりのねばつくフルーツケーキ」はこういうものだったのかと納得したり、他にも登場していた食べ物を見つけては食べてみたり買ってみたり。アーサー・ランサムの遺品を集めた博物館に行ったものの、向かいの別の博物館にあるアーサー・ランサムの部屋を見るまでは気もそぞろだったり。そのわくわくぶりが読んでいて微笑ましいところです。私も大学の時にイギリス北部にしばらく滞在していたので... とは言ってももっぱらヨークシャー地方だったので、位置的に少しズレてはいるんですが、羊もいっぱいいたし、ピーターラビットそっくりのウサギも可愛かったし、ワーズワースの家や湖水地方に足を伸ばしたりと、高柳さんと結構同じところを見てるので、読んでてほんと懐かしくなっちゃいました。イラストを見ながら、ああ、ほんとこんな風景だったなあって。高柳さんほどのランサムフリークではないんですが、ツバメ号とアマゾン号のシリーズは小学校の頃から愛読してましたしね。

ランサムやピーターラビット以外にも、電車に乗ってきた老婦人を見てフィリップ・ターナーの「ハイフォースの地主屋敷」に出てくるミス・キャンドル=トイッテンを思い出したり、本屋にミス・リードの「村の学校」「村の日記」「村のあらし」といったシリーズが並んでいるのを見つけて喜んでいたりと、さすが本好きさんといった感じなんですが、この作品はどちらも未読... 読んでみなくっちゃ。そして高柳さんが泊まられたホテルの部屋に置いてあったという、ウェインライトの湖水地方のガイドブックというのが見てみたい! イラストはもちろん文字も全部手書きの全7巻。初めて出版されたのが1950年代という古い本なのに、高柳さんが行かれた1990年前後でも、どこの本屋さんでも一番目立つところに置いてあったというのが、またいいんですよねえ。

「イギリス湖水地方を訪ねて」の表紙が出ませんが、どちらも高柳佐知子さんのイラストの表紙に、題字も同じレイアウト。双子のような本です。そして「イギリス湖水地方を訪ねて」は文字通り湖水地方ばかりの旅の話、「風のまにまにイギリスの村へ」では他のイギリスの田舎町へも足を伸ばしつつ、なんと3回目の湖水地方の旅にもなっています。3度目の正直なのか(笑)、ハリ・ハウに泊まったり「カンチェンジュンガ」に登ったり! いやあ、いいですねえ。私もまた行きたいなあ。(河出書房新社)


+既読の高柳佐知子作品+
「エルフさんの店」高柳佐知子
「ティスの魔女読本」高柳佐知子
「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」高柳佐知子
「ハイウィロウ村スケッチブック」高柳佐知子
「ケルトの国に妖精を探しに」高柳佐知子
「アリゼの村の贈り物」高柳佐知子
「ナチュラル暮らしの手作り工房へ、ようこそ」高柳佐知子
「庭が仕事場」高柳佐知子
「不思議の村のハロウィーン」高柳佐知子

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画家・大竹伸朗さんが見たモロッコという国を文章、写真、そして絵で表現した本。

風待屋のsa-ki さんに教えて頂いた本です。画家というフィルターを通して見たモロッコを、感性のままに表現してる作品だと聞いていたんですが、まさにその通りの本でした! 一方、大竹伸朗さんというフィルターが強すぎて素のモロッコが見えてこないとも聞いてたんですが、それもその通りで...(笑)
飛行機でマラガに降り立ってから、タンジールやフェズを訪れ、マラケシュから再び飛び立つまでの11日間のことが日を追って書かれてるんですが、これが普通の紀行文とは全然違うんですね。解説の角田光代さんが書かれてるように、これは「異国の夢日記」なのかもしれません。この本を読んでモロッコに行ったとしても、こんな風景は全然見えて来ないんでしょう。(笑)

マラケシュを訪れたところで、こんな文章がありました。

ストロボをたいて撮影すると、一瞬の強烈な光とともに対象となる像が網膜に焼きつく。光をいっさい遮断した部屋の中で像が焼きついた何秒間かは、目を開けてても綴じていても関係のない状態におちいる。
目を閉じながら見る風景は実に不思議だ。「見る」ことの不思議さと頼りなさを、いっしょに感じることになる。

まさにそんな風にして書かれたんでしょうね。モロッコという国のエッセンスは強烈に伝わってくるんですけど、それはあくまでも大竹伸朗さんの感じたモロッコ。カメラのシャッターを押した時みたいに、まさにその瞬間を切り取ってるわけじゃなくて、頭の中に残像として残ってる「いま」を紙の上に表現しているような感じ。それはギタリストが「こんな感じ」と曲を弾いた時みたいに、元の曲と実際に照らし合わせてみるとかなり違っているのに、原曲よりもその「感じ」が的確に表現されているのと似ているのかも。(これは本文中に出てくる話)

最初はなんだか読みにくい文章だなあと思ったんですが、それが逆に大竹伸朗さんという方の個性を端的に表しているみたい。文章としては変なのに、すごく伝わってくるんですよ。途中からは、もうこの文章しかあり得ないという気がしてきたほどでした。大竹伸朗さんの感じたモロッコ、面白かったです。(集英社文庫)

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古代ギリシアの歴史家・ヘロドトスによる、ギリシア諸都市とペルシア帝国の争いの歴史。前5世紀、ついにペルシア帝国が大軍を擁してギリシアに攻め入ったペルシア戦争、そして当時存在した様々な国々の紹介。ヘロドトス自身が各地を歩き回って聞き集めた説話や風土習俗を元に書き上げたものであり、ヨーロッパにおける最も古い歴史書とも言われている作品。元々は全9巻として書かれており、それがこの文庫1冊に3巻ずつ収められています。

基本的には、ペルシア戦争と呼ばれるアケメネス朝ペルシア帝国のギリシア遠征の原因から結果までが描かれているし、ペルシア戦争に関する貴重な資料でもあるそうなんですが... 実際、サラミスの海戦のことなんかもすごく面白いんですが、それ以外のことも色々書かれてるんですよね。そちらの方が私にとっては楽しかったかも。たとえばアルゴー船の遠征でのイアソンと王女メディアのこととか、ペルセウスとアンドロメダのこと、トロイアのパリスがヘレネを奪って始まったトロイア戦争のことなどが、神話ではなく、歴史的な出来事として書かれているのが面白かったし~。ギリシアやペルシア周辺諸国のことが色々と詳しく説明されているんですが、その中でも特に2巻で触れられているエジプトの風物や宗教、その地理的な話もすごく面白かったです。ミイラの作り方とか、そのミイラの松竹梅的な値段による違いとか。(笑)
ヘロドトスが自分が聞いた話を紹介するというスタンスで、自分はこう考える、自分はこの意見を信じるけれど、読者がどの意見に納得するかは読者次第、というのも良かったです。ただ、ギリシアとペルシアはもちろんのこと、アフリカからインドまでものすごく沢山の国が登場するし、それに伴って人名もものすごく沢山! 到底覚え切れなくて、それだけは大変でした。(岩波文庫)

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先日再読したばかりの高橋由佳利さんによるトルコ・コミックエッセイ「トルコで私も考えた」。最新刊が出たので早速~。

今回一番びっくりしたのは、高橋さんのご主人が実は1巻の時から登場していたということ! 思わず1巻をめくって探してしまいましたよー。探してみたら、いましたいました。この頃の絵にはまだ髪の毛があったので、全然気がつかなかった。そうか、2巻を読んだ時には唐突に感じられた国際結婚にも、実は伏線があったのですねー。(違います) 今回初公開の家族写真にはご主人も写っていて、なかなかの男前ぶりを見せてくれます。そしてちょっと悲しかったのが、いつの間にか義理のお父さんが亡くなられていたこと。実はお気に入りの人物だったんだけどなあ。
事前に今回はトルコの楽器を習う話が良かったと聞いていた通り、その辺りもすごく面白かったし... 西洋音楽とはまるで違うらしいトルコ音楽、一度聞いてみたーい。7拍子だの9拍子だのをトルコの太鼓ダルブカで難なく刻んでしまうケナンくん、やめてしまうなんてもったいなーい。(子供の学習能力の高さというよりも、やっぱりトルコ人としてのDNAなのでは?) 最近はどんどん物価も高くなってトルコが変わりつつあるというのも、読んでるだけの身ながらも寂しい話ですね。そして何が一番寂しいって、「トル考」がこの21世紀編で一旦終わりだということ。えーっ、そうだったんですか。逆に引き際が鮮やかということでいいのかもしれないけど、楽しかったのになあ。
高橋さんの絵はこういったギャグ路線のものしか見てないんですが、たまに登場する真面目な絵はとっても綺麗。見てると佐々木倫子さんの絵を思い出すんですけど、本当に似てるのかな~? 真面目なストーリー漫画も一度見てみたくなっちゃいます。(集英社)


+シリーズ既刊の感想+
「トルコで私も考えた」1~4 高橋由佳利
「トルコで私も考えた 21世紀編」高橋由佳利

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高橋由佳利さんによるトルコ・コミックエッセイ。以前お友達から借りて1~3巻を読んだことがあるんですけど、その時はまだそれほどトルコにハマってなかった時期。今回4巻を読むに当たって、せっかくなので1~3巻も再読してみました。
いやあ、やっぱり面白い! 1巻の時は一介の旅行者だった高橋さんなんですが、2巻で気づいてみればトルコ人の男性と結婚していて、それからはトルコに住む人間としての視点に移り変わり、ダンナさまの家族とのエピソードもたっぷり。じきにトルコでの子育ての話も加わります。日本と似ているところも全然違うところもユーモアたっぷりに紹介されていて、それがとっても楽しいんです。似顔絵もそっくりだし♪

今回一番印象に残ったのは、トルコでの子供の扱いの話かな。トルコ人は子供が大好き。ベタベタに甘くって、すぐメロメロになっちゃって、いつでも「可愛い~~~♪」状態。悪いことをしても、「まだ子供だよ」「可哀相だよー」って全然叱れないんですね。子供ができる前の高橋さんにとって、それはとても腹立たしいことだったんです。顔に唾を吐いた子供ですら、怒られないままなんですもん。でもそんな風にされて育って、とんでもなく甘やかされてしまうかといえば、決してそうではなく。きちんと挨拶もできるし、ちょっとしたことで知らない人を助けたり、とっても礼儀正しくて社会性もある... そしてその「子供を叱らない」は、日本人である高橋さん自身にもそうだった、と高橋さんはある日ふと気づくわけです。本当は嫁として色々できなくちゃいけないところなのに、「日本人でトルコのことをまだよく知らないんだし」「親きょうだいも近くにいなくて可哀相なんだから」って大切にされて、それがとても暖かくて居心地が良かったんだなあ、と身にしみるんですね。

トルコ料理の作り方もいっぱい載ってて、実際に作ってみたくなるし、その他の情報もぎっしり。しかも楽しくて、とってもお値打ち。2巻と3巻は既に品切れ重版未定状態みたいなんですが、なんでこんな面白い本を品切れ状態にしちゃうんだろう?ってほんと思っちゃう。(私はギリギリのところで入手しました) 新藤悦子さんのトルコエッセイも面白くて大好きだけど、私にはやっぱりこの「トル考」が原点です♪(集英社)


+シリーズ既刊の感想+
「トルコで私も考えた」1~4 高橋由佳利
「トルコで私も考えた 21世紀編」高橋由佳利

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ギリシャ編とトルコ編に分かれている旅行記。ギリシャで訪れているのは、女人禁制のギリシャ正教の聖なる地・アトス。かつては異教徒に支配されていたというアトスですが、聖母マリアが海岸に足を下ろした瞬間に全ての偶像は砕け散り、それ以来聖母マリアはこの地を聖なる庭と定め、女性の立ち入りを永遠に禁じたのだそうです。最盛期には40の修道院に約2万人の修道僧たちがいたそうですが、今も20の修道院で約2千人の僧たちが質素な自給自足生活を送りながら厳しい修行を積んでいるのだそう。そしてトルコ編は、最初は普通にイスタンブールに始まるんですが、もっぱら三菱パジェロに乗って、トルコの国境付近を時計回りに一周したという旅行記。どちらの旅行も、同行者はカメラマンの松村映三さん。(文庫にはほとんど写真は載ってないのだけど)

旅行記もいくつか読みましたけど、これほど体感温度の低い旅行記って初めてかも... 温度も低ければ内容も薄いように思えちゃうんですけど、どうなんでしょう。特にトルコでの旅行に関しては、村上春樹さんは終始疲れているようで愚痴だらけ。不愉快になったというエピソードばかり。トルコ料理も全然合わなかったようだし、そもそも一体なんでトルコに、それも辺境地帯になんて行こうと思ったの?と不思議になってしまうほどでした。態度の悪い従業員のいたホテルの名前を全部出しているところなんかも、もし名前を出しておかなかったらきっと後で何度も聞かれることになって鬱陶しいんでしょうけど、情報を正しく伝えるというよりも、まるで仕返しをしているように感じられてしまうー。観光客があまり訪れない「辺境」に敢えて「行った」という行動自体に、満足して終わっているように思えます。意地悪な見方をすれば、単なる辺境コレクターみたい。
ギリシャのアトスに関しても、それぞれの修道院でもらったパンが美味しかったとか不味かったとか、そんなのばかり。そもそも宗教的な知識も関心もないんだったら、なんでアトスに行きたかったんでしょう? 一応説明らしき文章はあったんだけど、もっと納得させて欲しかったし、そうでなければ単なる覗き見趣味みたいに感じられちゃう。それに特別に許可を取ってそういう場所を訪れるからには、事前にもう少し勉強してから臨むのが礼儀なのではないかと...。まあ、こちらの方は私自身まるで知らない場所だったこともあって、まだ興味深く読めたんですけどね。(新潮文庫)


+既読の村上春樹作品の感想+
「海辺のカフカ」上下 村上春樹
「雨天炎天」村上春樹
Livreに「村上ラヂオ」の感想があります)

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330年に遷都されてビザンティン帝国の首都となった時からはコンスタンティノープルとして、その後オスマントルコのメフメット二世が陥落させてからはイスタンブールとして、そしてケマル・アタチュルクが共和制トルコを打ち立ててからも、相変わらず首都として栄えているイスタンブール。1600年もの間、首都として、そして東西の文化の融合地点として栄えてきたイスタンブールという街を、その歴史的・文化的な観点から解説していく本です。

ここに書かれているのは、ビザンティン帝国の「コンスタンティノープル」というより、題名通りの「イスタンブール」ですね。主にオスマン・トルコのメフメット2世が陥落させて以降のイスタンブールのことが解説されていて、1つの都市を通して見たオスマントルコと共和制トルコの歴史とも言えそう。時系列的に出来事を追っていくだけではなくて、時には現在のトルコから遡っていくし、陳氏自身の紀行文的な部分もあったりして、それだけにまとまりがないように感じられる部分も無きにしも非ずって感じだったんですが、全体的には分かりやすく概観してる本かと... というか、私の興味がメフメット2世やスレイマン大帝、そして聖ソフィアをはじめとするキリスト教の教会やトプカプ宮殿、ミマル・シナンの建てた数々のモスクなど建築物に集中してしまったせいで、ちょっとムラのある読み方になっちゃったかもしれないんですけど... その辺りはすごく面白かったです。紹介されるエピソードも豊富だし。
ただ残念だったのは、文庫のせいか、収められている写真が全て白黒だったことですね。トルコの写真集を横に置いて読みたくなっちゃいました。(文春文庫)


+既読の陳舜臣作品の感想+
「イスタンブール」陳舜臣
Livreに「阿片戦争」「風よ雲よ」「旋風に告げよ」「小説十八史略」「太平天国」「中国五千年」の感想があります)

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1985年の春から秋にかけてトルコのカッパドキア地方に滞在していた新藤悦子さんは、目的の絨毯織りも完成し、滞在許可の期限も切れるため、一旦国を出ることに。再入国すればまた3ヶ月いられるのです。トルコの西隣のギリシャへはもう何度も行ったことがあるし、査証が必要なブルガリアやソ連、シリアは手続きをする時間がないこともあって却下。丁度絨毯に興味を覚えた時で、ペルシャ絨毯の産地も訪ねてみたいと、新藤さんは東側の国境を越えてイランに入国することに。

イランもトルコと同じように、国民の大多数がイスラム教徒。でも1979年のイスラム革命以来、イスラム法が国の法律となったイランで味わうことになる不自由さは、政教分離で自由な雰囲気のトルコとは大違い。イランでは旅行者でもお酒を飲むことは禁止されているし、女性はチャドル着用が義務。たとえばカメラのような高額品を売り払ったりしないようにパスポートにナンバーが控えられるし、音楽テープやファッション雑誌など反イスラム的なものは国境で没収されちゃう。新藤さんもバスの運転手の後ろの一番前の座席に座っていただけで、革命警備隊に言いがかりをつけられたり(女性が近くにいると、運転手の気が散るから!)、父親か夫の同伴なしではホテルにもなかなか泊まれないという現実に直面することになります。テヘランでは、チャドル代わりのイスラミックコートを着ていても、ボタンを外して羽織っているだけで革命警備隊が飛んでくる始末。いやー、イランって想像以上にすごい状態だったのね。と読んでる私まで圧倒されちゃう。
それでもそんな状態に徐々に慣れてくるにつれて、イランという国がだんだんとはっきりと見えてくることになります。イランでも色んな出会いがあって、それぞれがとても印象的だったんだけど、共通して考えさせられるのは祖国と自分との繋がりかな。イラン・イラク戦争の間に外国に出てしまった人は多いし、戦争が終わってからも出たがってる人は沢山いるんです。でも敢えて国から出ないで留まる人もいれば、戻ってくる人もいる。たとえば、芸術家たちのほとんどがイランを出ても、イランを出たら絵が描けなくなると留まり続けた画家のキャランタリー氏。彼の語る、イラン人の持つ「ヘリテージ」の話は色んなところに繋がってきます。あと、ドイツの大学の歯科医学部を卒業して、ドイツでも開業できるにも関わらず、イランに戻るつもりの青年。理由は、ドイツでは常に異邦人だけどイランではそうではないから。「ビコーズ、イッツ、マイン」という言葉がとても印象に残ります。(こんな風に書いてしまうと、本文の重みが伝わらないのだけど...)
チャドルさえ着ていれば、極端な話、下は裸でも構わないんですよね。ましてやこっそりカメラを持ち込んでもバレることなんてないんです。形さえ整えておけば、中身はどうでもいいの?なんて思ってしまうのだけど、新藤さんはそれをしっかり逆手に取ってます。ちゃっかりチャドルに隠れて人々の生活の中に入り込んで、見るべきものはしっかり見ているという感じ。いやあ、この本は良かったな。そういう風に人々の中に入り込んでるからこそ伝わってくるものが沢山あるし、相変わらずの新藤さんの行動力もすごいですしね。(笑)(新潮社)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

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初めての旅から2年後、トルコで暮らすと決意して会社も辞めてしまったフジイセツコさん。トルコ語も分からないまま、まずは3ヶ月の予定でトルコに滞在。そして半年の帰国を経て、再びトルコへ。そして気がつけば5年。友人に送っていた絵日記がきっかけでトルコ暮らしの話が1冊にまとまってしまったという本です。

コマコマとした説明入りのイラスト満載で、イラストが好みならとても楽しい本なんですけど...
スケッチ的なものはとてもいいのに、「ああなって、それからこうなって」的な、順番に読まなければならない絵になると、突如読みにくくなるのはなぜ? ちゃんとコマ割されてるページはともかく、矢印に沿って読んでいくタイプの絵は、どこから始まってどう進めばいいのか分からない&読みにくいー。それに、新藤悦子さんの本はトルコがどこか懐かしく感じられて無性に行きたくなるし、細川直子さんの「トルコの幸せな食卓」は、ものすごーく!トルコ料理が食べたくなったというのに、ついでにいえば高橋由佳利さんの「トルコで私も考えた」も大好きだったのに! この本を読むと「トルコに住むのは、私には無理だな」になっちゃう。楽しいエピソードも沢山載ってるはずなのに、トルコのイヤな部分ばかりが目につくというか... 作者と性格が合わないのでしょうか。逆にその部分が、今からトルコに住んでみようって人にはすごく役立つのではないかとも思うんですけどね。私にしてみれば、トルコの本で楽しく遊ばせてもらっていたのに、すっかり夢がなくなっちゃった感じです。(旅行人)

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20時間近く列車に乗って初めてトルコを訪れ、何はともあれ腹ごしらえをと街に出た時に入った食堂で食べたトルコ料理の安く美味しかったことに感動したという細川直子さん。テーブルに積み上げられたパンはパリッと香ばしく、噛み締めるほどにほんのり甘さが広がり、バットに盛られた料理の中から選んだ野菜と肉の煮込みも、暖かく優しい味がしてとても美味しくて、それでたったの300円。「食べものが安くておいしい国は、きっといい国に違いない」と感じた細川さんは、その後イスタンブールの旅行代理店に勤務しながら10年以上暮らすことになり、今もトルコと日本を行ったり来たりの生活なのだそう。「トルコのなにがそんなに気に入ったの?」という問いに「食べもの」と答えるほどの食いしん坊・細川直子さんのトルコ案内。

もう、なんて美味しそうなんでしょう! フランス料理、中華料理と共に世界三大料理に数えられることもあるというトルコ料理の魅力が圧倒的な勢いで伝わってくる本です。これは、細川直子さんが心底美味しいものが好きな方だからなんでしょうね~。あとがきに「料理研究家ではなくいわゆるグルメでもない私が、トルコ料理のことをどれだけ正確に伝えられるか自信はなかった」とありますが、これだけ美味しそうなら十分でしょう! もうほんと、読んでるとどれもこれも食べたくなっちゃいます。おなかがすいてる時に読んだら、ものすごくキケンな本かも。そしてその食べ物を通して見えてくるトルコの人々も、とても暖かくて魅力的なんですよね。確かに料理の安くて美味しい国には悪い国はないのかも! なんて気になってきます。トルコにはなかなか行けそうにないけど、せめてトルコ料理はまた食べに行きたいなあ。
巻末には代表的なトルコ家庭料理6品のレシピもあるので、試してみるのも良さそうです。(洋泉社)

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トルコの村で絨毯を一枚織り上げた新藤悦子さんは、絨毯に取り付かれたかのように絨毯の産地を巡る旅へ。そして気づいたのは、自分が惹かれるのは何年もかけて精緻に織り上げられた高価な絹の絨毯ではなく、遊牧民が織る伸びやかな絵柄のウール絨毯であること。絨毯を通して遊牧民の歴史を肌で感じるうちに、遊牧地を訪ねてみたくなった新藤さんは、トルコ西部の山にある遊牧民の夏の放牧地で羊飼いに挑戦することに。

遊牧民は本来、夏の遊牧地ヤイラと冬の遊牧地クシュラを往復する生活。現在は定住化政策によって、村で暮らしている遊牧民が多いようですが、それでもヤイラは遊牧民の誇りと憧れなのだそう。でもびっくりしたのは、ヤイラに行きたがってる新藤さんの前では「ヤイラなんて、今はもうないよ」とその存在を隠そうとすること。新藤さんが村の社交場であるチャイハネ(喫茶店のようなもの)に何度も通って親しくなっても、なかなか教えてもらえないんですね。一旦バレてしまえば、どのヤイラに行くのがいいのか話し合い始めるんですが。これは「日本人女性がなんで羊飼いなんかを?」というのもあるんでしょうけど、自分たちの拠り所として大切にしておきたいというのもあるのかな...。そして現実の羊の遊牧は、長閑で牧歌的な昼のイメージとは大違い。なんと日没から夜明けまでの夜通しの作業でした。そりゃ女性にはなかなか難しいはずだわ。
そしてこの出来事と同じように印象に残ったのは、幻の白い天幕(ユルト)を見たいという新藤さんが、「どうせあとで貧しいと馬鹿にするつもりだろう」と持ち主に断られる場面。その裏には、ここ数年でトルコ人労働者がめっきり増えたドイツで、トルコの貧しさを売り物にして悪口を言うようなテレビ番組が増えたという現実があるんだそうです。そして「ユルトにクラスというのもいいものですね」なんていう新藤さんに対するシェヴケットの言葉は、「冬にここに来れば考えも変わるよ」というもの。
ヤイラのことも白い天幕のことも、今の生活を愛しながらも厳しい現実の壁が立ちはだかっているというのが伝わってくるみたい。客人をもてなさないのは恥だと考えているトルコ人にそんな言動をさせてしまうなんて、その裏にあるものを考えてしまいます。きっと興味本位で無神経な客も増えてるんだろうなあ...。(朝日新聞社)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

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豆腐、かまぼこ、泡盛。豚、ビール... 1973年に初めて沖縄に行って以来、沖縄に強く惹かれてしまった池澤夏樹さんは、旧南西航空の機内誌に食材をテーマにした連載を執筆しているうちに、ご自身が沖縄に移住、10年間住み続けてしまったのだそう。食べるものはそのまま文化だという池澤さん。本土とは異なる沖縄ならではの食と文化の魅力を、35種類の食材を通して、同じように沖縄に移住したカメラマン・垂見健吾さんの写真と共に紹介する本。

んん~、美味しそう! 「まるで大豆畑にごろりと寝て、全身にその精気を吸い込んでいるような気分になった」豆腐とか、「出来立ては本当においしいもので、一切れもらって口に含んで噛むと頭がくらくらするほど」のかまぼこ。「飲むというよりは口の中をこの特別な液体で濡らすという感じ」の泡盛。ものすごい労力をかけたからといって美味しくなるものではないし、池澤さんご自身も書いているように「機械を使わないからできた製品がうまいと信じるほど単純ではない」けれど、それでもやっぱり圧倒的に美味しそうです。これは池澤さんの表現力もあるでしょうし、写真の良さもあるでしょうし、自分が沖縄に行った時の体験もあるでしょうけど... 作り手の働きぶりの美しさというのも影響してるのかも。紹介される「食」の背後に見えてくる人々の姿やその生活もすごく魅力的なんです。
食べることは、生きていく上での基本。そんな当たり前のことを思い出させてくれる本ですね。昔は今に比べると「食べること」がもっと真剣な行動だったはずだし、他の人と食べ物を分け合うことは、人との絆を作る上で欠かせないことであったはず。そして食べるために他の生き物を殺した時は、常に自然の恵みに感謝して全てを無駄なく食べ、使い切る... そういった原点の力強さが感じられる本でした。(文春文庫)


+既読の池澤夏樹作品の感想+
「南の島のティオ」池澤夏樹
「スティル・ライフ」池澤夏樹
「真昼のプリニウス」池澤夏樹
「夏の朝の成層圏」池澤夏樹
「バビロンに行きて歌え」池澤夏樹
「神々の食」池澤夏樹

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トルコに関するフォトエッセイ2冊。「トルコ 風の旅」は、トルコを訪れ始めて10年、行った町や村を西の端から東の端まで紹介していくというもの。そして「イスタンブールの目」は、もっとイスタンブールに特化した本。これまで何度もイスタンブールに滞在しながらも、雑踏の喧騒に疲れ、いつまで経っても観光客扱いにされることにも不満を感じて、実はイスタンブールがなかなか好きになれなかったという新藤悦子さん。カッパドキアの村に居ついてからは、尚更イスタンブールに戻る気がしなくなったのだそうです。しかしそんな時に知り合ったのは、ガイドの仕事をしているイスタンブールっ子の女性。イスタンブールに行った時に彼女のアパートに居候するようになり、美しさも醜さもひっくるめたイスタンブールの混沌を愛しているという彼女の影響を受けるうちに、徐々にイスタンブールの魅力に開眼していったようです。

「イスタンブールの目」は、元々持っている本なので再読。どちらの本も新藤悦子さんが自分で撮った写真を使っていて、自分の足で歩いた場所を紹介しているという実感があるし、旅行者というより滞在者としての視点がとても貴重。トルコのガイドブックは見たことがないんですが、イスタンブールの夏の風物詩だというピクルスのジュースの屋台や、イスタンブールのファーストフードだという鯖サンドについても載ってるのかな? でももしそういうのが載ってたとしても、こんな風に現地の人の声までは伝わって来ないだろうし、見た目も重視して綺麗にコーディネートされながら干された洗濯物のことや、これまた綺麗にディスプレイされた市場の野菜のこと、ソフラと呼ばれるトルコのちゃぶ台のこと、お洒落のセンスと手芸の腕前の見せ所だというスカーフの縁飾り「オヤ」のことのような、トルコの人々の生活が見えてくるような話なんかについてはまず載ってないでしょうね。トルコ式古本屋利用法も! そしてあとはやっぱり雰囲気たっぷりの雑貨。トルコ絨毯やキリム。そしてトルコ料理。「イスタンブールの目」には色んなトルコ料理が可愛いイラストで紹介されて、しかも簡単なレシピもあったりするのです。美味しそう! 

「トルコ 風の旅」のあとがきにあった、トルコのどこに惹かれているのかは上手く説明できないけれど「アナトリアの大地を渡っていく風のなかに立つだけで、こころもからだも深く満たされていく」とあって、その言葉がとても印象的でした。私にとってみれば、西と東の文化が出会うところというだけで十分魅力的に感じられるのだけど。
行きたいなあ、トルコ。トルコといえば何となく夏のイメージなんだけど、冬もいいかも。特に雪のカッパドキア。雪のカッパドキアを見るには、雪が降る前からカッパドキアにいなくちゃいけないらしいです。雪が降ったら中にいる人はカッパドキアに閉じ込められてしまうし、外からはもう入れないから。ツアーやパック旅行だと、なかなか味わえない楽しみでしょうね。こういう贅沢っていいな。(東京書籍・主婦の友社)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

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会社を辞めて、学生時代に行ったトルコに再び渡った新藤悦子さん。男性がいない時のイスラムの女性の大らかで人懐こい素顔、魅力的な笑顔に惹かれた新藤さんは、彼女たちの日常が知りたくなります。村に長く滞在するためには、カモフラージュのために絨毯の織り方を習うことだと考えた新藤さんは、カッパドキアのギョレメ村のハリメという女性を紹介してもらうことに。

絨毯を織ることを教えてくれる女性がようやく見つかったかと思えば、あくまでも草木染めがやりたい新藤悦子さんに対してハリメの言葉は「知るもんかい。草木染めだなんて」というもの。彼女たちも一応自分の手で糸を染めてはいるんですけど、安価でよく染まって綺麗な化学染料しか使ってないんですね。しかも羊毛を自分の手で紡ぐことを考えていた新藤さんに対して、ハリメは町の糸屋で工場産の糸を買うことを主張。ピュア・ウールを主張する新藤さんに対して、村中の女性たちが、経糸には毛よりも綿の方が安いし織るのも簡単だと説得しようとする始末。何とか糸を用意して、草木染めをする準備をしても、新藤さんは何度もハリメに約束をすっぽかされるし、絨毯を織る作業に入る前から問題だらけ。
49歳のハリメは、13歳、7歳、5歳の3人の娘と一緒に暮らしている未亡人。長女は既に嫁いでいて、長男は町に働きに出ているんですけど、長男の仕送りではとても食べていける状態じゃないので、現金収入がどうしても必要なんですね。だから貴重な現金収入になる畑仕事やパン焼きを頼まれると朝から出かけてしまう。そんなことが徐々に分かってくるにつれて、新藤さんは徐々に村に馴染んでいきます。
絨毯を織るということがまず中心にあるんですけど、トルコの女性の日常、特に恋愛・結婚事情についての話も面白かったです。とても印象的だったのは、フランス人の女性観光客にせっかくあげた梨を食べてもらえずにがっかりしたハリメの娘たちが、それでも外国人観光客は「綺麗だから」好きだと言う場面。新藤さんにとってみれば、そんな少女たちこそが「綺麗」なのですが...。それとアルファベットやカタカナの文字を見た時の「コーランの文字(アラビア文字)と違ってデザインみたい」というのもハリメの言葉も。私にしてみたら、アラビア文字の方が余程装飾的に見えるのに! 確かにカタカナは絨毯に織り込みやすいと思いますけどね。文字が読めないハリメにとってもそうなんじゃないかと勝手に思ってたんですけど、そうでもないんですねえ。
右のは絵本。今回私は読んでないんですけど、基本的には同じみたいですね。絵や写真があるんなら、あわせて読むのもいいかも~。(情報センター出版局)


+既読の新藤悦子作品の感想+
「空とぶじゅうたん」1・2 新藤悦子・こみねゆら
「青いチューリップ」「青いチューリップ、永遠に」新藤悦子
「エツコとハリメ」新藤悦子
「トルコ 風の旅」「イスタンブールの目」新藤悦子
「時をわたるキャラバン」新藤悦子
「羊飼いの口笛が聴こえる」新藤悦子
「チャドルの下から見たホメイニの国」新藤悦子

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これはカレル・チャペックが故郷であるチェコスロヴァキアについて書いた本。以前「イギリスだより」「スペイン旅行記」を読んだ時に(感想)、これも一緒に読むはずだったんですけど、イギリスやスペインに比べてチェコスロヴァキアの場合、地名を知らなさ過ぎて... どうも頭を素通りしてしまうので、ちょっと寝かせておいた本。ただ寝かせておいても地名に関する知識は全然増えてないんですけど(笑)、今回は前回に比べれば頭に入りやすかったかな。他の旅行記同様、雑誌や新聞に掲載されていた文章を1冊にまとめたものです。チャペックの死後70年経っているというのに(書かれたのがいつなのか知らないんですが、実質的には90年ぐらい経ってるのかな?)、全く古さを感じさせないどころか今でもとても興味深く読めるのは、他の著作と同様。
大抵はチェコスロヴァキアの牧歌的な風景が紹介されてるんですけど(外国人観光客の見分け方とか面白いです)、ものすごく印象に残ってしまったのは、「プラハめぐり3 そこで暮らす人々」の中の「警察の手入れ」の章でした。あまりに悲惨な人々の生活ぶりは、衝撃的。部屋を開けた途端に襲ってくる恐ろしい悪臭の波。部屋の中にあるのはぼろの山と驚くほど沢山のごきぶり。そしてそのびっくりするほど汚いぼろの固まりの中には何人もの子供たちが重なり合いながら寝ているというんです。1つの賃貸住宅の各小部屋(どのぐらいの広さなんだろう?)には、年配の男女1組と6~10人の子供たちがいるというのが平均的。部屋によっては、1つの小部屋に2~3家族が住んでいたりします。貧乏だから子沢山なのか、それとも子沢山だから貧乏なのか、でも薄い羽根布団が1枚しかなくて、互いに身体を暖め合うしかない人々にとっては、それは必然的な結末なのかも...。綺麗事を言うのは簡単でも、それは全く状況の改善には繋がらないということはチャペックもよく分かっていて、それでもやはり文章で訴えずにいられない気持ちが伝わってきます。この文章が書かれてから随分な年月が経ってるはずだけど、今プラハの貧民街はどうなってるんだろう? 相変わらず同じような状況なのか、それとも強制的に追い出されたりしたのか、それとも...?
もちろん、そんな悲惨な話ばかりではないんですけどね。祖国のいいところも悪いところもひっくるめて、チャペックの暖かいまなざしが感じられる1冊です。(ちくま文庫)


+既読のカレル・チャペック作品の感想+
「ダーシェンカ」「チャペックの犬と猫のお話」「園芸家12ヶ月」カレル・チャペック
「イギリスだより」「スペイン旅行記」カレル・チャペック
「ロボット」チャペック
「チェコスロヴァキアめぐり」カレル・チャペック
「北欧の旅」カレル・チャペック

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戯曲「ロボット」によって一躍国際的名声を得たカレル・チャペックは、1924年にロンドンで開かれた国際ペンクラブ大会に招待され、その時ロンドン郊外のウェンブリーで開催中だった大英博覧会の取材も兼ねて、2ヶ月間かけてイギリス国内、スコットランドやアイルランドまでまわったのだそう。そしてスペイン旅行は、1929年の時。それぞれの旅行で見た多種多様な風物を、チャペック自身の絵入りで紹介した本です。

チャペックがこの旅行記を書いてから、1世紀弱が経とうとしてるんですけど、全然古さを感じさせないのがすごいです。特にイギリス。もしかしたら、当時から全然変わってないんじゃないかしら、なんて思ってしまうほど。
「あらゆる民族的慣習に特別な共感を持」ち、「あらゆる民族的特性を、この世界を極度に豊かにするものと考え」ているチャペックは、自国の習慣をしっかり維持しているイギリス人に、とても好感を持っていたみたい。イギリスの最大の長所は、その島国性にあるとして、イギリスの長所も短所も公平に書いています。この辺りを読んでると、同じ島国だけに、もしチャペックが日本を訪れていたらどうだったんだろう、なんて考えちゃいます。「腰をすえたところにはどこにでも、ブリテン島が生じる」とまで言われるイギリス人ほど、いい意味でも悪い意味でも頑固ではない日本人。きっと自国の伝統をあまり大切にしていない部分が目についてしまうでしょうけど、イギリス人の特性として書かれていることで日本人にも当てはまる部分は、結構あるんですよね。思わず、わが身を振り返りたくなってしまいます。
そして印象に残ったのは、まえがき。イギリスで沢山の観光名所や歴史的な記念碑を見て回っても、チャペックにとってのイギリスは、列車の中から一瞬見えた一軒の赤い小さな家の情景だったんですって。その家の片側では、老紳士が生垣を刈り込んで、反対側では、少女が自転車で走っていて...。同じように、チャペックにとってのドイツは、バイエルン州で見かけた、人気のない古い居酒屋の情景、フランスは、パリの外れの居酒屋で青いスモックを着た農夫がワインを飲んでる情景 ...ああ、なんだかとっても分かる気がします。

「スペイン旅行記」は光と影の国、情熱の国スペインの魅力がたっぷり詰まった1冊。スペインらしい闘牛とかフラメンコ、そしてスペイン絵画の巨匠についてもたっぷりと書かれているんですが、私が一番惹かれたのは、セビーリャの女性の美しさを褒め称えた章。ここで描かれてるセビーリャ女性たちの魅力的なことったら! 読んでいるとものすごく羨ましくなってしまうし、ものすごーくセビーリャに行ってみたくなります。王冠か光背のように髪を飾る螺鈿細工の竪櫛、その上からかぶる黒や白のレース製のマンティーリャ、重い房飾りのついた大きな薔薇の刺繍のあるショール、欲ーしーいー。(それがあったからって、セビーリャ女性になれるわけではないのだけど)

これともう1冊チェコスロヴァキアの本があって、こちらも合わせて読もうと思ったんですが、私、チェコスロヴァキアの地名を全然知らないんですよね。あまりに聞いたことのない地名ばかりなので、読んでてもアタマの上を素通りしてしまう... ので、もうしばらく置いておいて、ちょっと熟成させてみようと思います。(ちくま文庫)


+既読のカレル・チャペック作品の感想+
「ダーシェンカ」「チャペックの犬と猫のお話」「園芸家12ヶ月」カレル・チャペック
「イギリスだより」「スペイン旅行記」カレル・チャペック
「ロボット」チャペック
「チェコスロヴァキアめぐり」カレル・チャペック
「北欧の旅」カレル・チャペック

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「小説すばる」に連載されていたエッセイ「slight sight-seeing」の24編のうち14編と、旅日記「屋久島ジュウソウ」が同時収録されたもの。本来おまけだったはずの「屋久島ジュウソウ」が40~50枚の予定から150枚に増えたため、こちらがメインとなったのだそうです。屋久島旅行のお供は、森さんの本の装幀も担当されている池田進吾さん、そして3人の編集者さんたち。

森さんを始めとする5人の楽しそうな様子や、九州最高峰だという宮之浦岳を登る大変さは十分伝わってくるんですが、読んでいても、屋久島の魅力があんまり伝わって来ないような...(ウィルソン株の中には入ってみたくなりましたが)、武田百合子さんの「富士日記」に倣って各自の食べた物が詳細に書かれているという部分も、それほど面白く感じられなかったです。(魚肉ソーセージのせいかしら...) 恩田さんの「黒と茶の幻想」も大好きだし、いつかは屋久島に行ってみたいと思ってる私なんですが、むしろ後半の短い旅エッセイの方が好きでした。ホリー・ゴライトリーに憧れた時代の名残りの黒い鞄の話、トラベル読書術、サハラ砂漠の入り口に位置する町・エルフードで出会ったハッサンのエピソードなど海外での様々なエピソードが楽しかったです。

ちなみに「屋久島ジュウソウ」の「ジュウソウ」とは、「縦走」のこと。「重曹」「銃創」、重装備の「重装」など、ジュウソウにも色々ありますが、ここで「十三」を思い浮かべたアナタは立派な大阪人!(←私のことだ) 大阪以外の方に説明すると、十三というのは、映画「ブラックレイン」のロケ地にもなった、大阪の繁華街です。(集英社)


+既読の森絵都作品の感想+
「いつかパラソルの下で」森絵都
「にんきもののひけつ」「にんきもののねがい」「にんきものをめざせ!」「にんきもののはつこい」森絵都
「あいうえおちゃん」「流れ星におねがい」森絵都
「ぼくだけのこと」森絵都
「いちばんめの願いごと」森絵都
「屋久島ジュウソウ」森絵都
「風に舞いあがるビニールシート」森絵都
「アーモンド入りチョコレートのワルツ」森絵都
Livreに、これ以前の全作品の感想があります)

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画像は、より入手しやすそうな平凡社ライブラリーのものを使ってますが、私が読んだのは東洋文庫版です。
明治11年、47歳の時に日本を訪れ、日本人通訳である18歳の伊藤と共に約3ヶ月に渡って北関東から東北、北陸、そして北海道を馬と徒歩で旅したイギリス人女性・イサベラ・バードの本です。旅先から彼女の妹や親しい友人たちに宛てた手紙を主体にまとめたもの。中島京子さんの「イトウの恋」はこの本を基に書かれていて、LINさんに面白かったと教えて頂いたんですよね。普段、紀行文にはあまり興味がないのですが、でもこれは確かに面白かった!

それにしても、通訳がついていたとはいえ、食事はもちろん生活習慣がまるで違う国で、西欧の女性がこんな1人旅をしてしまったというのが驚き。しかもこのイサベラ・バードは、どこまでいってもイギリス式を押し通そうとする、ありがちなイギリス人じゃないんですよね。携帯式のベッドや自分の蚊帳は持ち歩くけれど、それは日本の宿屋につきものの蚤の大群から逃れるためだし、食事や臭いに関してはかなりぶつぶつ言ってますけど、それでも基本的に「郷に入れば郷に従え」。もちろんキリスト教至上主義の西欧人らしい部分もあるんですが、色々なものを素直な目でとても良く観察してるし。イサベラ・バードが感じた景色の美しさや人々の不衛生ぶり、礼儀正しさと相反する物見高さ、そして子供たちの親に対する従順ぶりなどが、冷静な文章で書かれていきます。一体ここに書かれている「日本」のどれだけが、今の日本に残ってるんでしょうね。
そして逆に、明治維新直後の日本についての自分の無知ぶりには、我ながらびっくりです。幕末~明治維新直後の小説からでも、ある程度知ってるんじゃないかと思い込んでいたんですが、これが大間違いでした... 私ったら本当に何も知らなかったのね。西欧文化の影響を受ける直前の日本らしい日本の姿、そしてアイヌの姿がとても興味深かったです。

「イトウの恋」とは、細かい部分が色々と違っていると思うんですが、意外なほど同じ部分もあって、思っていた以上に重なります。となると2冊を読み比べてみたくなっちゃう。今、「イトウの恋」が手元にないのがとても残念です。今度、確かめてみようっと。そして宮本常一さんの「イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む」も読んでみたいな。(東洋文庫)

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作者の澁澤幸子さんは、澁澤龍彦氏の妹さん。1981年に初めて訪れて以来すっかりトルコに惚れ込み、毎年のように訪れていたという澁澤幸子さんのトルコ旅行記です。本が好き!お気軽読書日記のもろりんさんには「イスタンブールから船に乗って」をオススメされてたんですけど、そちらは見つからなかったので、代わりに見つけたこちらを読んでみました。
澁澤幸子さんって友達を作るのが上手い方なんですねー。もちろん旅行の醍醐味の1つは友達を作ることだし、特に現地の人々と仲良くなれれば嬉しいんですけど、でもここまで気軽に色んな人と仲良くなれるのって凄いです。あっという間に世界各国のバックパッカーたちと仲良くなっちゃうし、イスタンブールでもどんどん現地の友達を増やしていきます。で、家族同然に迎えられていたりして。なんて羨ましい...。もちろん大の親日家だというトルコ人気質もあるんでしょうけど、やっぱりこれは物怖じしない、人懐こい澁澤幸子さんの性格が大きいのでしょうね。まあ、ここまで危機意識がなくても本当に大丈夫なのか?というのはありますが...。
トルコの銭湯のハマムを始めとして、イスタンブールはもちろんトルコ各地の話も楽しいんですけど、この本で一番楽しいのは、やっぱり現地の人々のエピソード。10年以上も毎年のようにトルコを訪れていたというだけあって、そんな人々にも色々な変化があって、それが楽しくもあり切なくもあるところでした。(新潮文庫)

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4巻は「シルクロード」、5巻は「トルコ・ギリシャ・地中海」、6巻は「南ヨーロッパ・ロンドン」編。
ということで、いよいよインドからロンドンへのバス旅行が始まります。まずはインドを出発して、パキスタンからアフガニスタンへ。パキスタンでの乗り合いバスのチキン・レースはほんと怖そう! でもなんだかすごく分かるっ。イギリスに行ってた時のことを思い出しちゃいましたよー。私はあっちの大学の先生の車に乗せてもらってたんですけど、イギリス人は車の運転をすると人格変わっちゃうのか何なのか、普段は知的で落ち着いたロマンスグレーなおじさまがとにかく飛ばす! 他の車も飛ばす! 何もない田舎なので他の車とはそれほど出会わないし、普段なら問題ないんですけど、でも一回、三叉路の交差地点に猛スピードで走ってきた3台の車が危うく正面衝突?!ってことが...。いやー、あれは怖かった。...って、全然関係ない話ですね、すみません。ええと旅の方は、アフガニスタンからイランに入り、そしてトルコ、ギリシャ。ギリシャからはヨーロッパ圏ということで、やっぱり雰囲気がちょっと変わりますね。そして旅の最終地点へ。
1~3巻ではそれほど「行きたい」にならなかったんですが、4巻からは「行きたい」ですっかりうずうずしちゃいました。そしてイスタンブールのハナモチ氏(笑)が言ってた「チャイの国」の話には納得。確かに日本は「茶」だし、そこからトルコに至るまでの他の国でも、「チャ」とか「チャイ」ですものね。そしてこの「C」の茶の国が、私が行きたくてうずうずする国の共通項なのかも。もちろん「ティー」とか「テ」の「T」の茶の国も好きだし、きっと私にはそちらの方が遥かにすんなり楽しめるだろうとは思うんですが、「C」の国の方が細かい所でいっぱい苦労しそうな分、憧れが強まるのかもしれない... なーんて思いながら4巻5巻を読んでたんですが、ギリシャからのヨーロッパ編を読んでると、やっぱりこっちも行きたくてうずうず!(笑) イタリアもフランスもまだまだ見てない所がいっぱいだし、それにスペイン!行ってないんですよねえ。私の第二外国語も、沢木さん同様スペイン語だったのに! そして、「T」の茶の国を通り抜けてたどり着いた、ユーラシアの西端で再び「C」の茶の国となるというのが、なんだか感動でした。ああ、ポルトガルにも行ってみたい... って、結局「行きたい」ばっかりですが...(^^;。
いやー、本当に楽しい旅でした。読んでる間、すっかり自分も一緒に旅してる気になってました。沢木さんは、この1年間でどれだけの人と出会い、別れていったんでしょうね...。やっぱり旅の醍醐味は、新しい土地とそこにいる人々との出会いですよね。楽しかったり切なかったり不安になったり、もちろんいいことばかりではないし、私にできる旅はこれに比べると遥かにスケールが小さいんだけど、でもまたあの感覚を味わいたくなってきちゃいます。それにこういう本を読んでいると、今の自分の殻を打ち破りたくなってきちゃう。本当は色々とやりたいことがあるし、自分のやれる範囲では頑張ってるつもりなんだけど、でも無意識のうちに諦めてるものがどれだけあるか...。なんだか沢木さんの旅行を通して、そんな自分ときちんと向き合っているような気分になりました。...や、だからといって、実際には荷物片手に飛び出したりはできないんですけどね...!(笑)(新潮文庫)


+既読の沢木耕太郎作品の感想+
「深夜特急」1~3 沢木耕太郎
「深夜特急」4~6 沢木耕太郎

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インドのデリーからロンドンまで乗り合いバスで行くことはできるか?という友人との賭けがきっかけで、26歳の沢木耕太郎さんは仕事も何もかも投げ捨てて、机の引き出しの一円硬貨までかき集めて日本を脱出。結果的に1年以上に及ぶ旅に出ることに。1巻は「香港・マカオ」、2巻は「マレー半島・シンガポール」、3巻は「インド・ネパール」編です。
1巻がいきなりインドの安宿で始まったのには驚いたんですけど、1章の途中でようやく、なぜそこから始まってがのかが分かります。なんとデリーが出発地点だったんですか! でもこれからバスに乗るよってところで、旅の始めの香港・マカオへと戻ることに。マカオのカジノのシーンが特に面白かったなあ。それに対して、2巻はやや低調かも。きっと書いてる本人があんまり楽しんでいないのが伝わってきちゃうからなんでしょうね。読みながら、「なんでもっと楽しまない?!」って何度も思っちゃいました。私だって香港に行った時は凄く楽しかったし、気持ちは良く分かるんですけど、でもタイもマレーシアもそれぞれに楽しい所なのに! なんでこんな風に頑ななのかしら...。もちろん、それだけ香港のインパクトが強かったんでしょうけど、でも本だって読むからには楽しまなくちゃ損だし、映画だって観るからには楽しまなくちゃ。旅行だって他のことだって同じはず。勿体ないナリよ。そして3巻になると、インドのカルカッタとネパールのカトマンズ。ということで、また面白くなります。インドの話ってやっぱり面白いなあ。妹尾河童さんの「河童が覗いたインド」も、椎名誠さんの「インドでわしも考えた」も面白かったし、他の国の話以上に書いてる人間が出てくるような気がしますね。
ということで、次はいよいよ乗り合いバスかな? 楽しみです。(新潮文庫)


+既読の沢木耕太郎作品の感想+
「深夜特急」1~3 沢木耕太郎
「深夜特急」4~6 沢木耕太郎

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アーサー王ゆかりの地への旅行記。ちょっと作者の準備不足が目につくかなー。それにアーサー王伝説自体をあまり良く知らない人のためには、この程度の説明は必要なんでしょうけど、でも「紀行」と言うからには、やっぱもっと旅行記の部分に比重を置いて欲しかった。...とは言え、やっぱり読みやすかったし、面白かったです。読んでいると、実際にこの本を持ってイギリスに行きたくなっちゃいます。アヴァロンの湖と思しき場所の写真にはちょっとがっかりしたんですけど(これじゃあ、普通の川じゃん)、でもウィンチェスター城に置かれているという円卓は見てみたいぞ!!(中公新書)


右は、RoxyMusicの「Avalon」です。いやあ、懐かしいなー。(脈絡ナシ)

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