Catégories:“ケルト”

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美しい書物はどのようにしてつくられてきたか。中世イギリスの辺境の島で修道僧たちによってつくられた福音書。グーテンベルクやカクストンら初期印刷術者によってつくられた書物。そして、ウィリアム・モリスの理想の書物―。書物の美しさの精髄を豊富な図版を駆使して解き明かす。本を愛してきた人間の情熱とその運命を人間味あふれる数々のエピソードをまじえて物語る、たのしい書物の文明史。(「BOOK」データベースより)...ということで、「中世の彩飾写本」「初期印刷術」「彩色図版のあるイギリスの書物」「プライヴェート・プレスの時代」という4章に分けて、書物の歴史や変遷を見ていく本です。

ええと、これは結構楽しみにしてた本なんですけど、あんまり面白くなかったです... 著者はイギリスの古書業界では結構有名な方のようだし、図版がたくさん紹介されてるのは良かったんですが、なんといっても文章が。うーん、これはきっと翻訳の問題なんですね。文章中に注釈が入れ込まれているのが、なんとも邪魔で仕方ありませんでしたー。それにその時話題にしている図版が全然違うページに挟み込まれていたりするのも不便だったし。(時には何十ページも戻ることも!)
それと、これは著者がイギリス人だから仕方ないかなとも思うんですけど、3章の「彩色図版のあるイギリスの書物」はちょっと余計に感じられてしまいました。4章のモリス他のプライベートプレスに関しても、それほど目新しいことは書かれていなかったので、この辺りについてはウィリアム・モリス自身の「理想の書物」なんかを読む方がずっといいと思いますね。3・4章はあっさり省いてしまって、もっと1・2章を掘り下げて欲しかったかな。いや、むしろ「ケルズの書」辺りを直接眺める方が、余程楽しかったかも。なんて言ったら、この本の存在価値は...?(笑)(晶文社)


+旧ブログの書誌学的な本の感想+
「西洋書物学事始め」「アーサー王伝説万華鏡」高宮利行
「理想の書物」ウィリアム・モリス

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ラング世界童話集が復刊し始めました!
これはヴィクトリア女王時代に、アンドルー・ラングが世界各地の伝承文学からよりすぐりの作品を子供たちに提供しようと編纂した古典童話集。子供の頃に好きだったんです~。最初に日本語訳を出したのは東京創元社で、これがなんと1958年のこと。その後いくつかの出版社から出されたようで、私が持ってるのは偕成社版。全12巻のうち6~7冊持ってて、未だに祖母の家に置いてるんですが、大人になってから「川端康成訳」に気づいてびっくりだったし、そもそもこういう童話集は大好きなのに、なんで子供の頃に全部買ってもらっておかなかったんだろう!と、後から随分後悔したものです。今からでも欲しいな、なんて思ったりもしたんですけど、気がついたらアマゾンの中古で1冊1万円以上の高値がついてたりして、すっかり諦めてたんですよね。そしたら今年東京創元社から復刊されることになって! これから隔月1巻ずつ刊行されるんですって。嬉しい~。
私が持ってるのはソフトカバーで、しかもその上にぺらっとしたカバーも何もない簡易バージョンで、値段も相当安かったみたいなんですけど(笑)、今回復刊された本を見てびっくり。全然違ーう。表紙の色はタイトルに合わせてあるし、本国のオリジナル版についていたというヘンリー・J・フォードによる絵が使われていて、とても素敵です。

そして久々に読んでみて。いやあ、懐かしい。北欧の伝承童話集「太陽の東 月の西」でお馴染みの話が予想以上にいっぱい入っていてびっくりです。あと多かったのは、オーノワ夫人。このオーノワ夫人についてはあまりよく知らないんですけど、17世紀末のフランスの女流作家。オリジナルの童話を創作していたのか、それとも採取していたのかは不明ですが... どちらかといえば、オリジナルっぽい雰囲気かな。
子供の頃は原典なんて気にせず読んでたし、既に知ってる話も当然のように普通に読んでたんですけど、今改めてそういうのを意識しながら読み返してみると、面白いものですね。この童話集の最初の日本版が刊行された時、日本で手にしやすい作品や日本の昔話を除外して、改めて12冊に編み直されたのだそう。この2冊の巻末を見てみるとグリム童話が全部省かれてて、それもまた私には良かったのかも。いや、グリムもいいんですけどね。でもグリムよりも北欧系の方が好きだったし。
隔月1巻ずつの復刊で、来月には「みどりいろ」が刊行されます。楽しみ~。これを機会に全部読もうっと♪(東京創元社)


+シリーズ既刊の感想+
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編

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「時と神々の物語」は、「ぺガーナの神々」「時と神々」「三半球物語」の全作品及び、生前単行本未収録だった短編11編、シドニー・S・シームの挿絵も全点収録。「最後の夢の物語」は、「五十一話集」、本邦初公開の「不死鳥を食べた男」の全作品、その他2編の短編を収録。

ロード・ダンセイニの幻想短編集成全4巻の3巻と4巻。もっと早く読もうと思っていたのに、以前に1巻と2巻を読んでから(感想)、大分時間が経ってしまいました。なんせ分厚いんですよね、この4冊。3巻も4巻も、短編集が丸々3つ4つ入っているようなものだし。
この中では、3巻に収録されている「ぺガーナの神々」「時と神々」が再読です。(感想

ダンセイニの真骨頂というのは、やっぱりこういった初期の神話系の作品にあると思うんですよね。ダンセイニの文章は17世紀のジェームズ王の欽定訳聖書の格調高い文体の影響を色濃く受けていると言われていて… これはたとえば2人称が「you - your - you - yours - yourself」ではなくて「thou(複数形はye) - thy - thee - thine - thyself」が使われているとか、動詞の活用形が今とは違うとか、そういうのなんですけど、たとえば16世紀のシェイクスピアの作品なんかでも、その2つの人称形が相手との微妙な距離感によって使い分けられてたりするんですよね。いわゆる「初期近代英語」。ダンセイニの作品でこの古風な言葉が使われていたのは、もっぱら初期の作品の「ぺガーナの神々」「時と神々」「エルフランドの王女」(感想)辺りのようです。
そんな風に言葉に強いこだわりを持っていた作家といえば、J.R.R.トールキンがいるんですが… この本の解説に、トールキンはきっと最初はダンセイニの本を沢山読んで熱中したのだろうけど、細部の言語学的な注意が不十分で深みがないと批判的になったのではないか、というようなことが書かれていて、いかにもありそうだなあと笑ってしまいました。もちろん、どちらも原書で読まない限りは、本当に味わうことはできないのだけど。C.L.ムーアが言ったという「誰もダンセイニを真似ることはできないのだが、ダンセイニを読んだことのある者はたいてい誰でも一度はやってみようとするものである」という言葉だって、原書を読まない限りは本当に理解することはできないし。
ダンセイニの後期の作品は、たとえば「魔法の国の旅人」(感想)のホラ話のような軽快な作品が中心となったようで、ここに収められている沢山の短編の中にもそういった芽がいくつも見られるんですが、やっぱり私は初期の重厚な作品の方が好きですね。「ぺガーナの神々」ほどの神話とまではいかなくても、既存の神話にモチーフを取った話や、異世界との境界線をふっと越えてしまうような作品が好きです。(河出文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ

+その他 既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ

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修道女フィデルマは、兄であるコルグーの呼び出しに応えて、モアン王国の王城・キャシェル城へ。叔父のカハル王が黄色疫病に倒れてコルグーが王位を継ぐのは時間の問題となっており、そんな時に王城に訪れたラーハン王の使者の強硬な要求にコルグーは困り果てていました。人々から広く敬われていた尊者ダカーンが8日前にロス・アラハーの修道院で殺害された事件のことで、ダカーンの縁者でもあるラーハン国王が、「血の代償金」と「名誉の代価」を払えとモアン国王に要求してきたのです。「名誉の代価」として要求されているのは、オリスガ小国の支配権の返還。これはモアンとラーハンの間でこの6世紀もの間争われ続けてきた件。ロス・アラハーの修道院長がコルグーやフィデルマの従兄であることから、ラーハン王はモアン王家にも責任があると言ってきたらしいのですが...。本当にモアン王家の責任があるのかどうかを調べるために、フィデルマは早速ロス・アラハーへと向かうことに。

昨日に引き続きの修道女フィデルマシリーズ。今度は本国では3作目として刊行された作品で、「蜘蛛の巣」よりも2つも前の作品。もう本当に、なんでこんな順番で刊行するかなー。
というのはともかくとして、こちらの方が「蜘蛛の巣」よりすんなりと読めました。事件的には「蜘蛛の巣」の方が絡み合ってて面白かったんだけど、何と言ってもフィデルマの高飛車なところが前回ほどなかったので(私が慣れたのかもしれませんが)、読みやすかったです。でも今回一緒に組むのが、サクソン人の修道士・エイダルフではなくて、国王直属の護衛戦士のカースだったのがちょっと残念。私としては、カースもすごくいいと思うんですけどね。肝心のフィデルマが物足りなく思ってるようなので~。
今回一番興味深かったのは、アイルランド五王国の大王(ハイ・キング)による「タラの大集会」。この頃のアイルランドにおけるキリスト教のあり方って、ローマの正統派のキリスト教のあり方とはまた少し違うし、アイルランドの法律そのものも、アイルランドでの生活によく合うようにアレンジされてるんですよね。その部分が思いの外しっかりとしたもので好印象だし、すごく面白いところなんです。「蜘蛛の巣」でも、身障者の人権を保障する制度がきちんと存在していて驚いたんですが、今回も女性の人権に関する法律がしっかり登場していました。古代のアイルランドが身近に感じられちゃうなあ。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「蜘蛛の巣」上下 ピーター・トレメイン
「幼き子らよ、我がもとへ」上下 ピーター・トレメイン

+その他 既読のピーター・トレメイン作品の感想+
「アイルランド幻想」ピーター・トレメイン

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アラグラリンの領主である族長・エベルが寝室で殺され、その死体の横で短剣を握り締めていた男が捕らえられます。殺人の知らせは、モアン王国の新王・コルグーを経て、すぐにその妹であるフィデルマへ。フィデルマは修道女でありながら、同時に熟練した法の専門家ということを示すアンルーという高位の持ち主で、裁判官として、あるいは弁護士としてアイルランド五王国のいずれの法廷にも立つことができるという正式な資格の持ち主。フィデルマは、その日裁判官を務めた最後の訴訟で勝った若者の道案内で、早速修道士エイダルフと共にアラグラリンへと向かうことに。

ピーター・トレメインは高名なケルト研究者。以前、「アイルランド幻想」(感想)を読んで、そのしっかりとした土台の上に作り上げられた話がとても面白かったので、こちらも楽しみにしてたんです。これは7世紀のアイルランドを舞台にした歴史ミステリ。修道女フィデルマが活躍するシリーズです。エリス・ピーターズの修道士カドフェルが12世紀の話なので、それよりも500年も早いんですねえ。アイルランドにもキリスト教は既に伝わってるものの、まだドゥルイドの存在も残ってるみたいで、そういう設定がものすごーくそそります。また修道院の人?って思っちゃったりもするけど、やっぱり修道士とか修道女という人たちは一般人よりも学があるし、行動の自由が利くから、動かしやすいんでしょうね。

フィデルマは、頭が良くて美人で、、自分自身の努力で得た「アンルー」という地位もあれば、モアン国王の妹という社会的身分もあるんですよね。この辺りがちょっと完璧すぎる気もしたのだけど… しかも、日頃はそんな身分的なことには無頓着だというのに、高飛車で傲慢な人の相手をすると、逆に冷ややかにやり返して思い知らせちゃうような性格。最初の方でプライドが高くて傲慢な人たちの相手をするので、そういう嫌な面がかなり出てくるんですよね。それが鼻についてしまって、読むのがちょっとつらかったです… せめて、もうちょっと隙のある設定だったら良かったのにって思ってしまいます。でも、それ以外の部分では、やっぱりすごく面白い! 7世紀のアイルランドという世界が舞台なだけに、覚えなければならない用語が多くて、訳注もいっぱいなんですけど、元々興味のある分野なだけにそういうのは苦にならないし。女性にこれほど社会的な活躍できる場があったというのも驚き。殺人事件も思いの外入り組んでいて、読み応えがありました。

でもこれは本国では5作目として刊行されたという作品。なんで5作目からいきなり訳すのかなー。どうせシリーズ物を読むなら1作目から読みたいのに。シリーズ物って、シリーズを通して人間関係が出来上がっていくのも大きな魅力の1つなのに、そういうのを無視して刊行する神経がよく分かりません。たとえば1作目はどうやらアイルランドじゃなくてローマが舞台になってるようなので、「ケルト」が売りなのにローマが舞台なんていうのは困ると思ったのかもしれませんが… そのうちちゃんと1作目も訳されるのでしょうか? 早くそちらが読みたいですー。(創元推理文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「蜘蛛の巣」上下 ピーター・トレメイン
「幼き子らよ、我がもとへ」上下 ピーター・トレメイン

+その他 既読のピーター・トレメイン作品の感想+
「アイルランド幻想」ピーター・トレメイン

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