Catégories:“石堂藍Fブックガイド”

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石造りの城・ゴーメンガーストの周囲には<外>の民のあばら家が、貝がらのようにびっしりと張り付いており、それがこの世界の全て。そのゴーメンガーストの現当主は76代目のセパルクレイヴ。城での生活は、数限りない儀式によって支配されており、老書庫長のサワダストだけがただ1人、それを理解し取り仕切っていました。そしてその日の朝、77代目伯爵となる菫色の瞳をしたタイタスが生まれます。

先日「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」の感想で読みかけだと書いたゴーメンガースト3部作、最初の2冊をようやく読み終わりました。
これはトールキンの「指輪物語」と並んで、20世紀のファンタジーの最高峰と言われている作品なのだそう。でもその雰囲気は、正反対と言ってもいいほど違うんですね。「指輪物語」は、その後のファンタジー作品に多大な影響を与えてるし、実際追随する作品がとても多いんですけど、こちらの作品はとにかく独特。並大抵の作家じゃあ、こんな作品に追随する作品なんて書き上げられないんじゃないかしら。全編、陰鬱で重厚な雰囲気。暗くて重苦しいゴーメンガースト城の情景が、質感も含めて、周囲に浮かび上がってくるよう。しかも登場人物たちがまた、揃って個性的... というかアクが強いんです。どうやら美しい人間は1人もいないようで、それぞれに醜さが強調されてるんですけど、それが作品の雰囲気と相まって、ものすごく印象的なんですよね。マーヴィン・ピーク自身による挿絵も異様な雰囲気を醸し出してました。そしてこの作品、展開がとても遅いです。シリーズを通して、主人公は多分タイタスだと思うんですけど、1冊目が終わった時点で、まだ2歳ですから。(笑) でもその展開の遅さが逆に、ゴーメンガースト城をめぐる悠久の時の流れを感じさせます。
きっと絶賛する人は絶賛するんでしょうねー。という私は、絶賛というほどではなかったです。が、それでも読んでから時間が経てば経つほど、場面ごとの印象が鮮明になりそうな作品ではありました。でもとにかく読むのにパワーが... 本当は3冊まとめて感想を書きたかったんですけど、3冊目はやっぱりもうちょっと時間を置いてから読むことにします。ちょっとぐったり。(創元推理文庫)


+既読のマーヴィン・ピーク作品の感想+
「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」マーヴィン・ピーク
「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」マーヴィン・ピーク

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行方不明の伯父から甥に届いた手紙。それは、かつてイギリスを捨てて旅に出て、今は北極にいるという伯父が突然書いてよこしたもの。伯父さんは、雪原の帝王である幻の白いライオンを追い求めているというのです。

本当は「ゴーメンガースト」シリーズに取り掛かっているんですが、全3冊のうち、今2冊目の途中。これはものすごく重厚... というか暗くて重苦しくいファンタジー。こういうのをゴシック・ファンタジーというのかなあと思いつつ、分類には疎いのでよく分からないのですが... ちょっと疲れたので、そちらを中断して同じマーヴィン・ピークのこちらの本を読んでみました。
表紙の画像を見てもいい感じだと思ってもらえると思うんですが(オレンジの地に白抜きになってるのが、幻の白ライオンの絵がついた切手)、中身もいいです。要するに絵入りの手紙集なんですけど、これが凝ってるんですねー。本を開くとまず目にうつるのが味のある鉛筆画。左脚を失った代わりにメカジキのツノをつけている伯父さんの絵や、助手の亀犬・ジャクソンの絵、他にも動物たちの絵が沢山。この絵を描いたのはマーヴィン・ピーク自身なんです。そしてそんな絵を背景に、伯父さんからの手紙。タイプライターで打った紙を絵の余白に切り貼りしていたりして、芸が細かい! しかも伯父さんの使ってるタイプライターが古いので、文字によって太さも濃さもまちまちで、沢山ある誤字脱字が頻繁に訂正されていたり、手書きの説明が余白に記入されていたりするのが、日本語で再現されているんです。(原書ではどんな感じなのか見てみたい) その手書きの文字がまた汚い字なんですけど、雰囲気にぴったりなんですよね。いかにもこの伯父さんが書きそうな字。そして時には、手紙にコーヒーや肉汁、血の染み、足跡、指紋が...。(血の染みだけはあまりリアルじゃなかったけど)
手紙を受け取った甥の反応などはまるで分からないんですけど、こういう手紙を受け取ったら、やっぱりワクワクしちゃうでしょうね。陰鬱な「ゴーメンガースト」からは想像できないような、ユーモアたっぷりの冒険話。絵はいっぱいあるけど、絵本ではないです。意外と読み応えがあってびっくりでした。(国書刊行会)


+既読のマーヴィン・ピーク作品の感想+
「行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙」マーヴィン・ピーク
「タイタス・グローン」「ゴーメンガースト」マーヴィン・ピーク

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イギリスのヴィクトリア朝の作家、メアリ・ド・モーガンの童話集。職業作家ではなかったようなのですが、ウィリアム・モリスや画家のバーン=ジョーンズ、詩人のロゼッティといったラファエル前派の芸術家たちと家族ぐるみでつきあい、仲間内では話上手のレディとして人気があった人なのだそう。という私は、岩波少年文庫は大好きだったのに、この作家さんは全然知りませんでした... 迂闊。

一見昔ながらの童話集に見えるんですけど、いざ読んでみると、その内容はなかなかしたたか。意外と辛口でびっくり。特に表題作の「フィオリモンド姫の首かざり」がすごいです。これは、見かけはとても美しいながらも、実は邪悪なフィオリモンド姫が主人公。王様に「そろそろ結婚を」と言われた姫が、魔女の助けを借りて婚約者たちを1人ずつ宝石の珠にしてしまい、それを首かざりにしてしまうという物語。この本の表紙の絵は、フィオリモンド姫が婚約者たちの変身した宝石の連なる首かざりを、鏡でうっとり見入ってるところです。腰元のヨランダだけは姫の性悪さを知ってるんですが、他の人たちは皆、姫のあまりの美しさに心根も綺麗だと思い込んでいるんですよね。そういう話を読むと、大抵、邪悪な姫よりも健気な腰元に気持ちがいくんですが、この作品は違いました。この良心のかけらもないような姫の存在感がすごい。その邪悪っぷりが堪らなく魅力的。...って、そんなことでいいのかしら。(笑)
妻が黄金の竪琴に変えられてしまったのを知らずに、その竪琴を持って妻を探して諸国を歩き回る楽師の物語「さすらいのアラスモン」や、妖精に呪われて心を盗まれた姫の絵姿に一目惚れして、心を取り戻す旅に出る王子の物語「ジョアン姫のハート」なんかも、当たり前のように頑張ってハッピーエンドになる童話とは一味違ーう。それ以外の作品も、滑稽だったり哲学的だったり、なかなか幅も広いんですね。メアリ・ド・モーガン、気に入っちゃった。図書館にあと2冊あったし、それも借りてこようっと。(岩波少年文庫)


+既読のメアリ・ド・モーガン作品の感想+
「フィオリモンド姫の首かざり」ド・モーガン
「風の妖精たち」「針さしの物語」ド・モーガン

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アーサー王伝説の中でも特に有名な、中世英語詩の傑作「サー・ガウェインと緑の騎士」、瑕疵ひとつない大切な真珠を失ってしまったという宗教的な詩「真珠(パール)」、王妃を連れ去られてしまい、竪琴だけ持って荒れ野に隠遁するオルフェオ王の物語「サー・オルフェオ」、そして緑の礼拝堂へと向かう前のガウェインの歌「ガウェインの別れの歌」の4編。14世紀に中英語で書かれた作品のJ.R.R.トールキンによる現代英語訳、の日本語訳です。(笑)

「サー・ガウェインと緑の騎士」に関しては、英語でなら大学時代に読んだんですけど、日本語できちんと読むのは初めてかも。子供の頃に、R.L.グリ-ンの「アーサー王物語」(岩波少年文庫)の中で読んで以来ですね。でも、英語版にも、この冒頭の部分はあったかなあ... トロイア戦争、ローマ建国、ブリテン建国に触れられている辺りにはまるで覚えがないです。トールキンの創作? 緑の騎士の外見の描写も、私が読んだのとはかなり違うから、やっぱり創作なのかも。私が思っていた緑の騎士は「緑色の鎧兜に身を固めた大柄な騎士」なんですが、ここに登場する緑の騎士はすごいんですもん。この表紙の絵もすごいですよね。左がその緑の騎士。これじゃあまるで原始人? 右の小さな人影がガウェインです。「この世(ミドルアース)に常ならぬものすごさ」「巨鬼(トロル)の半分ほどもあろうかというほどの巨躯」という文章が、まるで「指輪物語」みたいで、さすがトールキンの世界になってます。...とまあ、その辺りはいいんですが、散文の形に訳されているのが、やっぱりとても残念。頭韻を日本語に移し変えるのは不可能だと思うけど、やっぱり詩にして欲しかった。うーん。

「真珠」は一種の挽歌なのだそう。幼くして死んだ娘になぞらえた「真珠」に導かれて、エルサレムを垣間見る美しい詩。(これは詩に訳されていました) 「サー・オルフェオ」は、ギリシャ神話のオルフェウスの物語のブリテン版。王妃がなぜ突然連れ去られたのかは分からないんですが、王と王妃の愛情、そして王の人望の厚さが清々しい読後感。

アーサー王関連の物語も、色々読みたいんですよね。アーサー王の伝説に関しては、子供の頃からずっと好きだったんですが、例えば「アーサー王の死」や「トリスタンとイゾルデ」みたいな本家本元的作品や研究書ばかりで、アーサー王伝説に触発されて作った作品にはあまり目を向けてなかったのです。それが一昨年、マリオン・ジマー・ブラッドリーの「アヴァロンの霧」を読んで開眼してしまって! と言いつつ、なかなか本格的に手がまわらなかったんですが、ギリシャ神話関連もそろそろ一段落しそうだし(読みたいのはまだあるけど)、今度こそ色々読んでみようかと~。(原書房)


+既読のJ.R.R.トールキン作品の感想+
「農夫ジャイルズの冒険 トールキン小品集」J.R.R.トールキン
「妖精物語の国へ」「妖精物語について」J.R.R.トールキン
「シルマリルの物語」上下 J.R.R.トールキン
「ビルボの別れの歌」「指輪物語『中つ国』のうた」J.R.R.トールキン
「ブリスさん」「サンタ・クロースからの手紙」J.R.R.トールキン
「仔犬のローヴァーの冒険」J.R.R.トールキン
「ホビットの冒険」上下 J.R.R.トールキン
「指輪物語」J.R.R.トールキン
「サー・ガウェインと緑の騎士」J.R.R.トールキン
「終わらざりし物語」上下 J.R.R.トールキン

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旅人の語る物語、そしてその中に登場する青い花に心を奪われた20歳の青年・ハインリヒは、その夜、夢をみます。それは泉のほとりに生えた1本の淡い青色の花の夢。ハインリヒがその花に目を奪われていると、花は姿を変え始め、中にほっそりとした顔がほのかにゆらぎます。夢の青い花のことを考えてふさぎがちになった息子の気分を変えるために、母親はアイゼナハから郷里アウクスブルクに住む実の父のもとに、ハインリヒを連れて旅立つことに。

13世紀初め頃の中世ドイツが舞台の物語。この物語の主人公のハインリヒは、実在のほどは明らかでないにせよ、 13世紀初めに行われた歌合戦で、当時の著名な恋愛詩人たちを相手に競ったという、伝説の詩人なのだそうです。
「うるしのうつわ うたかたの日々の泡」のkotaさんが、たらいまわし企画・第25回「『ドイツ』の文学」で挙げてらして(記事)、その後イギリスの作家ジョージ・マクドナルドが影響を受けたと知って、ますます興味が湧いた本。硬質な質感を持つ作品だと仰ってましたが、確かに...。モチーフという意味では水の方が前面に出てきてるし、水のイメージも強いんですけど、なぜか鉱石のイメージが強く残ります。実際に鉱山の場面もあるんですけどね。とにかく、ものすごく美しい作品でした。特に作中で語られる「アリオン伝説」と「アトランティス物語」、「クリングゾール・メールヒェン」、そして水にまつわる2つの暗示的な夢がすごいです。美しくて幻想的。隠者の本を見る場面も良かったなあ...。
主人公のハインリヒが旅をする物語なんですが、旅を描くのが目的ではなくて、ハインリヒの成長を描くための旅。特に内的葛藤があるわけでもなく、常に受身で、しかしその中で自分の学ぶべきものを謙虚に学んでいくハインリヒの姿は、まるでシュティフターの「晩夏」(感想)の主人公のようだなあ... と思ったら、「晩夏」の主人公の名前もハインリヒではないですか! 何か関連が? それともドイツ人にとって「ハインリヒ」というのは、日本における「太郎」ですか?(笑)
年代的には、ノヴァーリスが1801年に29歳の若さで亡くなって、その4年後にシュティフターが生まれてます。

でもこの「青い花」は、未完の作品なんですよね。本には遺稿も併せて収録されていて、それを読むと完成しなかったのが残念でならないほど。今は美しさに目を眩まされちゃってるし(笑)、そうでなくても、一度読んだだけでは理解しきれたとは到底言えないので、折にふれて読み返してみたいですね。作中で語られているノヴァーリスの文芸観も面白いです。(岩波文庫)

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ウラル地方の民話をバジョーフがまとめたもの。表題作「石の花」はプロコフィエフの作曲でバレエにもなっていて有名ですね。私が知ったのも、バレエの方が先でした。でもバレエでは、「山の女王の愛を拒んだため石像に変えられた細工師ダニーロが、許婚カテリーナの深い愛情によって救い出される」という話で、山の女王が悪者になってたと思うんですが、元の話はちょっと違います。石の細工に取り付かれてたダニーロが、山の女王に諭されても聞く耳を持たず、頼み込んで石の花を見せてもらうんですもん。見たら許婚の元に帰れなくなるって知ってたのに。

全部で8編入ってて、どれもおじいさんが昔話を語るという形式。基本的にロシアの銅山での労働者たちの話です。銅や石を掘ったり、石に細工をしたり。彼らの生活はとても苦しいのだけど、山の情景がとても幻想的で素敵だし、作っている細工物は本当に見てみたくなってしまいます。ここで登場する「石」とは、基本的に孔雀石(マラカイト)。不透明の緑色で、縞模様が孔雀の羽を思わせることから、日本では孔雀石と呼ばれる石。古くから岩絵の具や化粧品の原料に使われてきていて、クレオパトラもこのアイシャドーを使ってたという話もあったりします。私自身は、孔雀石ってあまり好きじゃないんですけどね... でも、そのあまり好きじゃないはずの孔雀石が、この作品ではもう本当に素敵なんです。逆に、この本で孔雀石に興味を持った人が、実物を見て「イメージと違ーう!」と思うケースは多いかも...(^^;。

8編中最初の5編には一貫して山の女王が登場するし、人間側も徐々に世代交代して連作短編集みたい。後の3編は少し雰囲気が違うこともあって、私は最初の5編が好きです。山の女王がまたいい人なんですよ。「石の花」のダニーロに対しても、許婚がいるのに石の花なんて見たがってはダメだと言い聞かせてるし、気に入った人間にはその子・孫の代まで色々と世話をやいてあげてますしね。(悪戯好きな部分はなきにしもあらずですが...) ただ、山の女王の世界を人間が一度垣間見てしまうと、人間の世界には存在し得ない美しさにみんな取り付かれてしまうんですね。(岩波少年文庫)

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生まれた時から声が大きかったジェルソミーノは、産声は工場のサイレンと間違えられ、小学校に行くようになってからも、教室で答える声で黒板や窓ガラスを壊してしまう始末。そして、声で梨の木から実を落として村中が大騒動になってしまった時、ジェルソミーノは村を出ることを決意します。ジェルソミーノが国境を越えてやって来たのは、パン屋のことを「文房具屋」、文房具屋のことを「パン屋」と呼び、猫はわんわんと吠え、犬はにゃおんと鳴く「うそつき国」でした。

書かれた年代としては、「チポリーノの冒険」(感想)より後の作品なのだそうで、こちらには政治色はそれほど感じられないですね。もちろん風刺はたっぷりあるんですけど、まるで楽しいほら話みたい。というか、まるでケストナーの作品を読んでいるような感じ。
物を壊してしまうほどの声というのは、それほど目新しく感じないのですが、ジェルソミーノが「うそつき国」で猫のゾッピーノや画家のバナニートと仲良くなって繰り広げる冒険は、文句なしに楽しい♪ 悪役・ジャコモーネの末路もなかなか良かったです。
でもワクワクするよう展開の中で、立ちんぼベンベヌートのエピソードだけは切ないんですよね...。イタリア語で「ベンベヌート」といえば、英語の「Welcome」と同じ意味じゃありませんでしたっけ? 人の命を延ばすごとに自分の命を失ってしまう彼に、この名前を持ってきてる意味を考えてしまいます。もしかしたら、綴りが全然違うかもしれないのですが...。(筑摩書房)


+既読のジャンニ・ロダーリ作品の感想+
「猫とともに去りぬ」ロダーリ
「チポリーノの冒険」ジャンニ・ロダーリ
「うそつき国のジェルソミーノ」ジャンニ・ロダーリ
「パパの電話を待ちながら」ジャンニ・ロダーリ

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