Catégories:“石堂藍Fブックガイド”

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「黄金の羅針盤」「神秘の短剣」に続く、ライラの冒険シリーズ第3部。これで完結です。
ここにきてようやく、「失楽園」にインスパイアされたというプルマンの描きたいことが見えてきました。「失楽園」をタイミング良く再読しておいて良かった! そこに書かれていた、ルシファーにしろアダムにしろイヴにしろ自由意志を持った、自分で選択する自由を持った存在として神が創造したという部分もこの作品に表れてるし、ルシファーやアダム、イヴのやったことは実は魂の解放と自由の始まりだったという部分も、「失楽園」を読んで感じていた通り。欧米でこの考えがどの程度受け入れられるのかは分かりませんけど、神についての解釈や描写も、大胆でとても良かったです。あの「オーソリティ」の姿には、さすがにびっくりしましたが...(^^ゞ
もちろん善側・悪側と立場がはっきりと見える人々もいるんですが、善悪が複雑に絡まりあってなかなかその本心が見えてこない人間もいるので、その辺りに緊迫感がたっぷり。ラストも安易なハッピーエンドじゃないところが気に入りました。ウィルとライラが自分たちの運命を受け入れていく様子もとても良かったし~。3部で新たにまた1人重要人物の視点が加わったので、途中ちょっと話が飛びすぎて散漫な印象になってしまったのが少し残念だったんですが、うるしを塗り重ねていく場面なんかはすごく好きだったし、琥珀の望遠鏡を覗いた時に見た金色のダストの情景が美しかったです。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「黄金の羅針盤」上下「神秘の剣」上下 フィリップ・プルマン
「琥珀の望遠鏡」上下 フィリップ・プルマン

+既読のフィリップ・プルマン作品の感想+
「かかしと召し使い」フィリップ・プルマン
「マハラジャのルビー サリー・ロックハートの冒険1」フィリップ・プルマン
「仮面の大富豪 サリー・ロックハートの冒険2」上下 フィリップ・プルマン

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アイルという国を舞台にした異世界ファンタジー「アイルの書」全5巻。「白い鹿」「銀の陽」「闇の月」「黒い獣」「金の鳥」です。ケルトの神話を下敷きにしてるとあって、以前からものすごーく読みたかったんですが、既に絶版。見つけるのに苦労しました...。でもその甲斐あって、とても良かったです~。

私のファンタジー好きは、ここを見て下さってる方はご存知だと思うんですけど、その根っこのところにあるのは、どうやら神話好きと叙事詩好きらしいんですよね。だからそういう世界を作家が作り出している異世界ファンタジーが大好き。そしてこの「アイルの書」は、まさしくその要素を備えた作品です。神話が存在する世界がしっかりと作られていて、しかもまるで吟遊詩人が本当に歌い語っているような物語なんです。
主な舞台はアイルという島。これはきっと「アイルランド」がモデル。5冊全部主人公が違っていて、最初の「白い鹿」が神話の時代が終わる頃の物語。「はるかな昔、まだ創世の魔法がこの世にとどまっていたころ、アイルとよばれる小島があった。」です。そして「銀の陽」から「金の鳥」までは、それから1千年ほどの時が流れた後の物語。一貫して書かれているのは友情。そして痛みとその癒し。って書くとなんだか陳腐になってしまうんですが...。特に良かったのは2巻。続いて3巻かな。4巻5巻も面白いんですけど、4巻で舞台が変わるので、読み終えてみると全3巻で終わらせても良かったような気もしますね。4巻5巻は番外編ということで。(笑)
「指輪物語」が好きな方は、気に入る可能性大です。実際、この作品にも「指輪物語」の影響が色濃く感じられます。でも「指輪物語」自体ケルトの神話との関連が深いはずなので、出処は一緒とも言えるのかなあ。

この作品に「ケア・エイシャ」と呼ばれる城砦が登場するんですけど、C.S.ルイスの「ナルニア」シリーズで、王や女王となったぺヴェンシーきょうだいが住んでいたのが「ケア・パラベル」。「ケア」って城のこと? 何語?...と思って検索したら、ウェールズ語だという記述が。そしてウェールズ語は、インド・ヨーロッパ語族ケルト語派なんだそうです。なるほどねえ。(ハヤカワ文庫FT)

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ちくま文庫20周年復刊フェアで再版された9冊のうちの1冊。(復刊されたのはコチラ) 西条八十や佐藤春夫、三好達治らが愛してやまなかったというデ・ラ・メアの詩集で、「妖精たち」「魔女と魔法」「夢の世界」の3章に分けられて、60編ほどの詩が収められています。出てくる妖精が、丁度イギリスやアイルランドの伝承に見られるような感じで、子供の頃読んだ童話を思い出すような懐かしい雰囲気。英国では「幼な心の詩人」と評されているというのも納得。でも正直なところ、私にはちょっと可愛らしすぎたかも...。それにこういうのは、やっぱり原書で読んでこそだなと思ってしまいました。荒俣宏氏の訳はとても読みやすいし、詩の1編1編にドロシー・P・ラスロップの挿絵がついていてとてもいい雰囲気なんですけど、でもやっぱり日本語に訳してしまうと、原文にあるはずの韻も失われてしまいますしね。
この中で気に入ったのは、「サムの三つの願い、あるいは生の小さな回転木馬」。妖精に3つの願いを叶えてもらうサムの物語。妖精や魔女に願い事を叶えてもらうという話は、大抵願う本人が自滅してしまうものですが、これは一味違います。そしてその願いがエンドレスで繰り返されていくというのも面白いんですよねえ。(ちくま文庫)


+既読のウォルター・デ・ラ・メア作品の感想+
「妖精詩集」W.デ・ラ・メア
「ムルガーのはるかな旅」ウォルター・デ・ラ・メア

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ダミアーノは、父親譲りの魔力で錬金術を行う21歳の青年。リュートと、言葉を話す小さな牝犬・マチアータをこよなく愛し、平和な生活を送っているダミアーノなのですが、パルテストラーダの町を支配下に置いていたサヴォイ公国の軍が撤退し、代わりにパルド軍が入ったことによって、ダミアーノの平和な世界は一変してしまうことに。

先日読んだ「黒龍とお茶を」がとても面白かったR.A.マカヴォイの、「魔法の歌」シリーズ全3巻。「ダミアーノ」「サーラ」「ラファエル」です。現代のサンフランシスコが舞台で、日常生活にほんのりと異質なものが入り込んだ程度のファンタジーだった「黒龍とお茶を」とはがらりと変わり、こちらは中世イタリアを舞台にした荘厳な作品。まるでラファエロの絵画がそのまま動き出したような印象。
とは言っても、ものすごーく感想が書きにくい作品だったんですけど... 天使や悪魔の扱いが独特で、その辺りがすごく面白かったです。冒頭から大天使ラファエルが登場して、ダミアーノにリュートを教えていたのには驚かされたんですが、そもそも、ダミアーノが魔道士でありながら敬虔なキリスト教徒という、この設定も珍しいと思うんですよねえ。
途中、サタンの姦計によってラファエルが大天使らしからぬ扱いを受けることになり、それがラファエルに大きな変化をもたらすんですけど、それ以前のラファエルって、ダミアーノ以外の人間には基本的に無関心だったし、多分ダミアーノに呼び出される前は、もっと人間に無関心だったんじゃないかと思うんですよね。ラファエルがこの状態なら、多分ウリエルやガブリエルやミカエルも似たようなものでしょうし、神その人はそれ以上に無関心なのかも、なんて思ったり。となると、神にとっては、ラファエルとサタンの諍いも特に関心を引くものではなかったんだろうなあ、なんて思いながら読んでいたら、なんだかサタンの方がずっと人間的に見えてきて、ルシファーがサタンになってしまった根本的な原因が見えたような気がしてきちゃいました... とは言っても、それはあくまでもこの作品の中でのことなんですが、マカヴォイ自身が、どんなことを考えて書いていたのか知りたい!(もしやこの作品の真の主役はラファエル?)
そしてサタンが住んでいるのが、常若の島ティル・ナ・ヌォーグ。なぜここにティル・ナ・ヌォーグが? これってケルトの神話に登場するティル・ナ・ノグと同じですよね? 私はケルト近辺でしか読んだことがないんですが、イタリアにもそういうのがあるのでしょうかー。妖精や死んだ英雄なんかが住んでる楽園だとばかり思ってたんですけど、なぜそこにサタンが住む?...マカヴォイがその名前を出してきた意図も知りたくなってしまいます。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のR.A.マカヴォイ作品の感想+
「黒龍とお茶を」R.A.マカヴォイ
「ダミアーノ」「サーラ」「ラファエル」R.A.マカヴォイ

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娘のエリザベスに急に呼び出され、ニューヨークからサンフランシスコへとやって来たマーサは、エリザベスが予約した高級ホテルに泊まりながらも、娘となかなか連絡がつかずに困惑していました。そして話し相手もいないマーサに、ホテルのバーテンダーが紹介したのは、メイランド・ロングという初老の紳士。ロング氏はこのジェイムズ・ヘラルド・ホテルに住んでおり、古いバラッドに詳しく、自分の耳でいにしえの吟遊詩人から直接聞いてきたような話し振りをする不思議な男性。2人は早速意気投合して、住所も職場も分からないエリザベスの行方を一緒に探すことになるのですが...。

ハヤカワ文庫FTなので、一応ジャンルとしてはファンタジーなんでしょうけど... 確かに「龍」という存在があるから、ジャンル分けをすればファンタジーになるんでしょうけど、話の展開としては、むしろサスペンスもしくはミステリ。現代のサンフランシスコを舞台にした、コンピューター犯罪小説でもあります。そしてほんのりとラブ・ロマンス。すごく可愛くて素敵な話でした!
時々普通の人間とはちょーっと違う雰囲気も醸し出してるロング氏も素敵だし、このロング氏とマーサの会話も、とっても小粋でお洒落。そのままヨーロッパ映画にしてしまいたくなるぐらい。若い2人が頑張るという話もいいけど、こんな風に、いい具合に肩から力が抜けた大人の年代の話も楽しいです~。大人のためのファンタジーといった感じですね。ゆっくりお茶でも楽しみながら読みたい1冊。本国では続編もあるようなんですが、訳されないのでしょうか。こちらもぜひ読んでみたいです。(ハヤカワタジー文庫FT)


+既読のR.A.マカヴォイ作品の感想+
「黒龍とお茶を」R.A.マカヴォイ
「ダミアーノ」「サーラ」「ラファエル」R.A.マカヴォイ

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随分前にBaroque Midnight の森山樹さんにオススメして頂いたファファード&グレイ・マウザーシリーズ。全5巻。ファファードという名の蛮族の大男と、グレイ・マウザーと呼ばれる都会派の小男の2人が活躍する異世界冒険ファンタジーです。
読み始めてまず驚いたのが、その構成。全5巻となると、まず長大なファンタジーを思い浮かべると思うし、たとえ5巻全部が繋がった長編ではないとしても、せいぜい1冊ごとに1つの話が完結してると考えるのが普通だと思うんですよね。それが、このシリーズは連作短編集なんです。1巻は、ファファードが生まれ育った北の地を出てくる話、グレイ・マウザーが師匠だった魔術師を失って旅立つ話、そしてその2人が出会う話で3つの中編が入ってるんですが、2巻なんて10もの短編が入ってるんですもん。もうびっくり。ファンタジーも色々読んだけど、こういうのって初めてかも。でも5巻は「シリーズ初の長編」というのが売り物になってるんですけど、ライバーという人はどうやら短編モードの作家さんだったらしく、それまでの連作短編とそれほど変わらないような...。(というのは私の独断ですが)

読んだ印象としては、すごく男性的なファンタジーということでしょうか。2人の冒険者たちが美女を目の前にしては鼻の下を伸ばし(笑)、せっかく稼いだお金も何だかんだと巻き上げられたり、失ってしまったり... 毎回苦労してる割に見入りが少ないんですよね。...と書いてると、なんだか古典的なハードボイルドを思い出しちゃいました。男らしい私立探偵に美人秘書、もしくは美人の依頼人。(笑)
1巻では魔法の使い方がすごく面白かったし、吟遊詩人としても勉強していたというファファードと魔法使いの弟子だったグレイ・マウザーという設定がちょっと珍しくて、これがどんな風に発展するのか期待してたんですが、結局そういう方面ではあまり発展がなくて残念。1巻の、白一色の北国から、グレイ・マウザーの灰色になり、最後2人が出会うランクマーの都の、毒々しい色合いを含んだ黒、という色合いの変化も面白かったんですけどね。全部読み終わってみると、1巻が一番面白かったかもしれないなあ。でも2人が冒険することになる海の中とか雪山とか地底王国とかの描写も、それぞれ色鮮やかで良かったです。そして、基本的にこの話は異世界ネーウォンが舞台なんですが、時空の扉を超えて地球に来ちゃう時もあったりして(それも古代フェニキアですと!)、きっと作者さんはものすごく楽しんで書いてるんだろうなあってそんな作品でした。(創元推理文庫)

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ジャック・フィニイは「ふりだしに戻る」が読みたいと思いつつ未読で、これが初挑戦の作家さん。「ゲイルズバーグの春を愛す」は、柊舎のむつぞーさんに教えて頂いた作品です。
先に「夢の10セント銀貨」を読み始めたんですが... これがなんとも...。ニューヨークに住む冴えない主人公が、魔法のコインでパラレルワールドのニューヨークに移動すると、そこでの自分は大成功していた、という話なんですけど、主人公が単なる自分勝手で子供っぽい男にしか感じられなくて、どうも受け付けませんでした。(というか、ただの迷惑な変人じゃん!←暴言)
となると「ゲイルズバーグ」の方は? と戦々恐々で読み始めたんですけど、こちらは良かったです~。ちょっぴり不思議なテイストのノスタルジックな短編集。どれも良かったんですけど、中でも特に良かったのは、表題作と「愛の手紙」。表題作を読んでる時はゲイルズバーグの街を歩きたくてたまらなくなったし、「愛の手紙」はものすごくロマンティック。それに、なんて切ない!
「独房ファンタジア」や「大胆不敵な気球乗り」は、情景が浮かんでくる愉快な作品だったし、他の作品もそれぞれにいい感じ。そしてこの中に「コイン・コレクション」という短編もあるのですが、これは「夢の10セント銀貨」の元になっているような話。でもこちらの方が断然良かった! もしかしてフィニイは短編の方が本領発揮なのでしょうか。こちらだけ読んでいれば、すんなりファンになってただろうな、なんて思うほどの素敵な短編集でした。基本的に短編集が苦手な私が「好き~」と思ったぐらいなので、短編好きな方には堪らないのではないかと思われます。(って、どういう規準だ・笑)(ハヤカワ文庫FT)

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