Catégories:“石堂藍Fブックガイド”

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新しい家に引越しした翌日の日曜日、入ってはいけないと言われた壊れかけのガレージの中で彼をみつけたマイケル。両親が家の中にいる隙に懐中電灯を手にガレージに忍び込んでみると、山と積まれた茶箱のうしろの暗い陰に彼は塵とほこりにまみれて横たわっていました。最初はてっきり死んでいると思い込むマイケル。しかし「なにが望みだ?」という声が聞こえてきて... それは「スケリグ」でした。

この表紙に惹かれて手を取る人も多いだろうと思うんですが... 私にとっては逆にこの表紙がネックでなかなか手に取ることのできなかった本です。しかも読み始めて、何度もソーニャ・ハートネットの「小鳥たちが見たもの」を思い出してしまって、そのたびに警戒してしまったし... でもまた全然違う物語でした。良かった...(まだあの時の動揺から立ち直りきれてない私)
主人公のマイケルは、「小鳥たちが見たもの」のエイドリアンみたいに孤独と寄り添っているような少年ではなくて、サッカーと作文が得意な普通の少年。引越しはしたけれど、今までの学校にも通うことができるし、仲の良い友達もいます。でも引越し先の家はまだまだ快適に住めるような状態には程遠くて、しかも生まれたばかりの赤ちゃんは一応退院はしたんだけど、まだまだ予断を許さない状況なんですね。赤ちゃんが心配でマイケルも両親もどこか上の空。

元気なスポーツ少年のはずのマイケルが見せる繊細さも印象に残るんですが、マイケルが引っ越し先で仲良くなるミナという少女がとても魅力的。ミナは学校に行かずに家で母親に様々なことを学んでいて、何事においてもとても独創的だしパワフルなんです。マイケルは彼女に色んなことを学ぶことになるし、意気消沈中のマイケルは彼女にぐいぐいと力強く引っ張られることになります。彼女のこの力強さがあったからこそ、みんな救われることになるんですね。...でもやっぱりミナだけの力ではないですね。読後に一番強く感じたのは、この3人のバランスの良さとでもいうべきもの。誰かが誰かに助けられっぱなしというのではなくて、お互いに助け助けられて、欠けているものを補い合って、「生きる」方向へと向かっているのを感じます。これで1人欠けていたら、もしくは1人がまるで違うタイプの人間だったら、これほどのパワーは発揮されなかったでしょう。そしてどんな結末でもあり得たでしょうね。この作品を「甘(うま)し糧」のような物語にしているのは、3人それぞれの力が「1+1+1=3」ではなくて、もっと大きな力を発揮していたからだと思うのです。

スケリグは一体何者だったんでしょう。イメージとしては、トルストイの「人はなんで生きるか」に登場するミハイルだったんですけど、それにしては埃やアオバエの死骸にまみれた姿で登場するし、食事の場面では品のなさを見せつけてるし、まるで浮浪者みたい。生肉を食べているような息の臭いもありますしね。でもこの物語では、スケリグがミハイルではなかったからこそ、という気がしてならないです。マイケルやミナのように、ありのままのスケリグを受け止められるかどうかが大切だったのかもしれません。(創元推理文庫)

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大晦日にユカがふと目覚めると、枕元に置いておいたクレヨンの箱がからっぽ。なんとクレヨンたちがカメレオンを囲んで会議をしていました。シルバー王妃の12の悪い癖を直さないと城には戻らないとゴールデン王が家出をしてしまったというのです... という「クレヨン王国の十二ヶ月」。そして学校の春休み、5年1組では岩戸山の自然公園で星座の観察が行われることになりノブオも参加。しかしノブオと右田先生はなぜか犬猿の仲で... という「クレヨン王国のパトロール隊長」。

なんとクレヨン王国シリーズは今まで読んだことがなくて、これが初めて。石堂藍さんの「ファンタジーブックガイド」に載ってたので、いずれは読もうと思ってたんですけど、ようやく読めました。
「クレヨン王国の十二ヶ月」は、シリーズの1作目。城を出てしまったゴールデン王を探すためにシルバー王妃と小学2年生のユカが12の町を旅する物語。これはこれでとても可愛いんですけど、やっぱり童話ですしね。散らかし癖、お寝坊、嘘つき、自慢屋、欲しがり癖、偏食、意地っ張り、げらげら笑いのすぐ怒り、けちんぼ、人のせいにする、疑い癖、お化粧3時間という12の悪い癖を直すという教訓話だし... 王様がいなくなると1年で世界の色が失われて人間も地球も滅びてしまうというのに、それでも家出してしまう王様というのがまた納得しづらいところ。シルバー王妃とユカが旅する12の町は12の月の町で、それぞれの町の色が決まってて、そういうのは本当はとってもそそる設定のはずなんですけど... 私にはちょっと可愛らしすぎて、小学校の頃に出会っていればもっと楽しめただろうになーって思ってしまいました。
でも「クレヨン王国のパトロール隊長」がすごく良かった! こちらは小学校5年生のノブオの成長物語です。現実の世界でも色々あって大変なノブオがクレヨン王国に来て、ここでもさらに大変な状況に巻き込まれてしまうというなかなか厳しい物語。心がもう限界まで来ちゃってるのに、そんなノブオに対してクレヨン王国は表面的になだめて解決するんじゃなくて、抜本的な荒療治をするんです。これがなかなかすごい。クレヨン王国のシリーズには作品が沢山あるけど、「ファンタジー・ブックガイド」にこのタイトルが挙げられてたのが分かるなあ。あとがきを読んでみると、この「パトロール隊長」と「クレヨン王国月のたまご」が、シリーズの中でも一番ファンレターが届く作品なんだそうです。納得。いずれ「月のたまご」も読んでみようっと。(講談社青い鳥文庫)

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大西洋の沖合いの6000メートルもの深さの海面に浮かぶ小さな村。村を通るただ1本の道に沿って色褪せた赤煉瓦の家や店が並び、沢山の小窓がある鐘楼が立つこの村には、木靴をはいた12歳の少女がたった1人で暮らしています。船が近づくと少女は激しい眠気に襲われ村全体が波の下に沈むため、船乗りの誰1人として、この村を望遠鏡の隅にすら捉えたことがないのです... という「海の上の少女」他、全20篇が収められた短篇集。

日本では最初に堀口大學が紹介して以来、詩人たちのアイドル的存在だったというシュペルヴィエル。聖書のエピソードを膨らませたりアレンジした作品もあれば、ギリシャ神話をモチーフにしているものもあり、フランスの普通の人々を描いた作品もあり、どこか分からない場所の物語もあり、収められている20編はとてもバラエティ豊かです。でもそこに共通しているのは、透明感のある美しさ。どの作品も散文なんですけど、詩人だというだけあって詩的な美しさがありました。
特に印象に残ったのは、大海原に浮かぶ村を描いた幻想的な表題作「海に住む少女」。そして娘の溺死体が海に流れ着く「セーヌからきた名なし嬢」。読んでいると情景が鮮やかに浮かび上がってきます。美しいなあ...。そして驚いたのは、死を感じさせる作品がとても多いこと。大半の作品が何らかの形で「死」を描いてるんですね。「死」そのものというよりも、「生」と「死」の境界線上かも。「死」とは関連していなくても、たとえば「少女」と「女」、「人間」と「人間でないもの」みたいな何らかの境界線上で揺らいでる印象が強いです。それはもしかしたら、フランスと生まれ故郷のウルグアイとの間で揺れ動いていたシュペルヴィエル自身だったのかしら、なんて思ってみたり。
それと思ったのは、作品を自分の方に引き寄せて読むのではなくて、作品の方に歩み寄らなければならないということ。そこに書かれているがままを受け入れ、味わわなければならないというか... 絵画的な美しさが感じられることもあって、まるで静まりかえった美術館で絵画を眺めているような気分になりました。 (みすず書房)

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両親がイギリスを離れる半年間、かつて乳母をしてくれていたベスの家に滞在するためにオールダリーの村へとやって来たコリンとスーザン。到着した翌日、2人は早速近くの「丘」へ。そして帰宅後、ベスの夫に丘の散歩で見た様々なものにまつわる言い伝えを聞くことに。その中には、昔、魔法使いに1頭の白馬を売ることになった百姓の物語もありました。百姓は魔法使いに連れられて洞窟に入り、140人の騎士たちが白馬と共に眠る光景を見ることになったのです。

イギリスのウェールズ地方に伝わる民間伝承を元に書き上げたという作品。その伝承がケルト文学の中に織り込まれている、と訳者あとがきにありましたが、洞窟の中で甲冑に身を固めた騎士たちがいつか戦う日のために人知れず眠っている... というのは、そのまんまアーサー王伝説にもある言い伝えですね。この物語でその騎士たちを眠らせたのは「銀のひたいのキャデリン」と呼ばれる魔法使いなんですけど、これがまるでマーリンみたい。で、このキャデリンは「炎の霜」と呼ばれるブリジンガメンの魔法の宝石の力で騎士たちを眠らせてるんですが、この宝石が紛失してしまうんですね。その辺りからは「指輪物語」と似たような展開になります。コリンとスーザンが入り込んでしまう山中の洞窟はまるでモリアのようだし、同行するのはドワーフ、途中で出会うのはエルフ、そして「黄金の手のアンガラット」はガラドリエルといったところ。(キャデリンはガンダルフみたいだとも言えるし)
壮大な歴史を感じさせる作品なんですけど、やっぱり似ているだけに比べてしまうんですよねえ、「指輪物語」と。そうなると、中心人物たちがどうもイマイチ魅力不足...。とはいえ、「黄金のアンガラッド」や「ギャバランジー」といった、背後にいかにも物語が潜んでいそうな人物もいるんですけどね。
この本では「炎の霜」の奪還の物語だけが語られてるんですが、大きな歴史絵巻の一部分を切り取ったという印象の作品でした。この後のことが、続編だという「ゴムラスの月」で語られることになるのかな。でもあと一冊じゃあ、世界の全貌を見れるところまではいかないんだろうな。(評論社)

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「抒情詩」「童謡」「宗教詩」「譚詩」という見出しのもとに88編を収めた詩集。

先日読んだ「ヴィクトリア朝妖精物語」(感想)に収められていた「妖魔の市」がものすごく良かったので、こちらも読んでみることに~。でもあちらの本の刊行が1990年なら、こちらの本の初版が出たのは1940年。なんと50年もの差があるんです。こちらは当然のように旧仮名遣いだし、全然違っていてびっくり。でも「ヴィクトリア朝妖精物語」の矢川澄子さん訳ももちろんすごく良かったんですが、この旧仮名遣いもクリスチナ・ロセッティの雰囲気にはとてもよく合ってるような気がしますね。訳者による「序」には「譯文の硬軟新古一様ならざるは、その時その折の感懐に従ったまでである。深く咎めざらんことを」とありますし、実際、文語体の訳と口語体の訳が混ざってるんですが、でも口語と言っても当時の口語ですしね。とてもいい雰囲気なんです。こういうの、好き好き♪

クリスチナの姉のフランチェスカはダンテ研究家、長兄ダンテ・ガブリエルは前ラファエル派の画家であり詩人。次兄ウィリアム・マイケルも美術評論家。恵まれた芸術的環境にいたクリスチナは13歳から詩を作り始めたのだそうです。清楚で優しくて透明感があって、夢見るような雰囲気がとても素敵。でも同時に死を思わせるようなものがとても多くて驚きました。幼い頃から病弱だったというクリスチナは、それだけ日常的に死を感じていたのですね。(結果的には、60年以上生きることになるのですが)
あまり現代的な詩は分からない私なので、逆にこういう旧仮名遣いで書かれている方がすんなりと入ってきたりします... 抒情詩なのに(「なのに」というところが問題なんですが)すごく素敵! もちろん物語詩の「譚詩」が一番好みではありましたが~。

そして私は今まで知らなかったんですけど、「童謡」に収められているような詩は、実際に曲がつけられているものも多いみたいですね。西条八十の訳詩で「風」とか。「風」と聞いても歌詞を見ても全然ぴんとこないんだけど、聞いたらどんな曲か分かるのかな...。以下、西条八十の詩です。

誰が風を見たでしょう
僕もあなたも見やしない
けれど木 (こ) の葉をふるわせて
風は通りぬけてゆく

誰が風を見たでしょう
あなたも僕も見やしない
けれど樹立 (こだち) が頭をさげて
風は通りすぎてゆく

私が読んだこの本に載ってるのはまた違う訳なんですけどね... 実はかなり有名な歌ですか??(岩波文庫)

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アイルランド系の詩人・ウィリアム・アリンガムによる詩に、これまたアイルランド系の画家一族に生まれた「妖精国の宮廷絵師」と呼ばれるリチャード・ドイルの絵が添えられた絵本。原書は、イギリスの有名な木版印刷師・エドマンド・エヴァンスが手がけた数々の絵本のうちでも最高傑作とされる豪華本なのだそうです。それが文庫本になってしまうというのが驚きなんですが、このちくま文庫版は絵もカラーだし、小さいながらも美しい本となっています。

詩の方は「夜明け」「昼まえ」「昼のおふれ」「暮れ方近く」「日は暮れて」という5幕の芝居仕立て。妖精の姫君が妖精国の掟によって次の満月には結婚しなければならないというのに、お姫さまは3人の求婚者たちが全然気に入らなくて... という物語詩です。矢川澄子さん訳。でもね、詩そのものはとても可愛らしいんですけど、その合間合間に直接その場面と関係のないイラストと説明文が挟まれてるので、ちょっと分かりづらいんですよね...。原書でもこんな構成だったのかしら。日本語に訳す時にどうにかならなかったのかしら。
ちなみにイラストを描いているリチャード・ドイルの甥があのシャーロック・ホームズシリーズのコナン・ドイルなんですって。コナン・ドイルが画家一族に生まれてたなんて、知らなかったです。(ちくま文庫)

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以下の14編が収められた妖精物語集です。
 「妖魔の市」(クリスチナ・ロセッティ)
 「お目当てちがい」(ジョージ・マクドナルド)
 「魔法の魚の骨」(チャールズ・ディケンズ)
 「四人のこどもが世界をまわったはなし」(エドワード・リア)
 「さすらいのアラスモン」(メアリ・ド・モーガン)
 「いないいない姫」(アンドリュー・ラング)
 「王の娘の物語」(メアリ・ルイザ・モールズワース)
 「王さまを探せ マザーグースの国の冒険」(マギー・ブラウン)
 「妖精の贈り物」(F・アンスティ)
 「壺の中のお姫さま」(ラドヤード・キプリング)
 「ヒナゲシの恋」(ローレンス・ハウスマン)
 「ものぐさドラゴン」(ケネス・グレアム)
 「メリサンド姫 あるいは割算の話」(イーディス・ネズビット)
 「魔法使いの娘」(イヴリン・シャープ)

ジョージ・マクドナルドとメアリ・ド・モーガンの2作は既読です。キプリングも、多分。
今回はクリスチナ・ロセッティの「妖魔の市」が目当てで読んだんですが、これが期待に違わず、ものすごく素敵な作品でした。これは、小鬼たちが売っている美味しそうな果物に毎日のように見とれていたローラは、とうとう自分の金の巻き毛で果物を買って食べてしまい... という物語詩。不気味で、でもものすごく魅惑的で、こういうの大好き! これを読めただけでも、この本を読んだ甲斐があったと言えそう。しかも矢川澄子さん訳だし。でももちろんそれだけではなく、他の作品も楽しかったです~。
19世紀に書かれた作品なので、昔ながらの妖精物語を逆手に取ってるのも結構あって、それが楽しいんですよね。良い子の口から出てくる宝石が実は精巧な偽物だったとか、王さまが政府関係の仕事で毎日出勤してるんだけど、その出勤途中で妖精に出会ったりとか。そんな中で私が特に気に入ったのは「メリサンド姫 あるいは割算の話」。
洗礼の祝賀会っていくら気をつけても結局誰か妖精を呼び忘れちゃうし、呼び忘れた妖精に何かしら呪いをかけられて大変なことになっちゃう。それならいっそのこと祝賀会をやめてしまおうということになるんですけど、逆に妖精全員が詰めかけてきて、お姫さまは「ハゲになる」という呪いをかけられてしまうんですね。王さまが以前教母にもらった願い事をとっておいたおかげで、お姫さまは年頃になった時に髪の毛が生えるように願うことができるんですけど、その願いが「わたしの頭に1ヤードの金髪が生えますように。そして、金髪は毎日1インチづつのびて、切った場合にはその二倍の早さでのびますように」というもの。それってまるでねずみ算? おかげでエラいことになるんです... そして後は、さすがネズビットだわという展開に。(笑)
あと「ものぐさドラゴン」なんかも大好き。ケネス・グレアムは「たのしい川べ」しか読んだことなかったけど、他の作品も読んでみたくなりました。そしてもちろん、王道の妖精物語も収められています。「ヒナゲシの恋」なんてとっても可愛かったな。(ちくま文庫)

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