Catégories:“石堂藍Fブックガイド”

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日常&読んだ本logのつなさんが読んでらして、気になった本。(記事) 宮澤賢治作品といえば、本当に有名どころしか読んでないのに大丈夫かしら、という心配もあったんですが、結果的には全然問題ありませんでしたー。良かった。知らない本が沢山出てくると「読みたい、でも読めない」で妙に苦くなることがあるんですけど、この本はそれほど作品を知らないながらもとても楽しめたし、穏やかに「ああ、また今度改めて読んでみよう」という感じ。もちろん、紹介されてる本が読みたくてうずうずするようなのもいいんですけどねー。今の私の気分にはちょっとツラいので。で、この本の表紙を見た時に「迷宮レストラン」(感想)を思い出したんですけど、数々の料理が鮮やかな写真で紹介されていた「迷宮レストラン」(とても綺麗でした!)とは一味違って、こちらは表紙と同じ出口雄大さんの挿画がとても柔らかくて、これも素敵でした。
後に菜食主義で粗食になってしまう宮澤賢治ですが、意外とハイカラで贅沢で新し物好きだったんですね。育ったおうちもなかなか裕福だったようですし。言われてみたら、確かに裕福な生活を知らなければ書けないような部分も多かったなあと思うんですが、実際には「雨ニモマケズ」のイメージが強いのでちょっとびっくりでした。生前には作品は全然売れなかったと聞いてましたしね。今は当たり前のようにあっても、当時はきっと贅沢だったりハイカラだったりしたんだろうなあというものや、その頃の日本人はあまり好まなかったという食べ物がいっぱい登場します。食に対する冒険心があった人なんですね。例えば「ビフテキ」「サンドヰッチ」といった言葉からも、そんなハイカラな雰囲気が伝わってきますね。そして忘れちゃいけないのは、幻想的な食べ物や飲み物。「チュウリップの光の酒」、飲んでみたーい。

そしてこの本を読んでいて一番読みたくなった宮沢賢治作品は、「十力の金剛石」。角川文庫版「銀河鉄道の夜」に入ってたので、これだけは読んでみました。これは、王子が大臣の子と虹を追いかけるうちに一面の宝石の世界に迷い込む話。ここではトパァズやサファイアやダイアモンドの雨が降り、野原には天河石(アマゾンストン)の花に硅孔雀石(クリソコラ)の葉を持つりんどう、猫睛石(キャッツアイ)の草穂、かすかな虹を含む乳色の蛋白石のうめばちそう、碧玉の葉に紫水晶の蕾を持つとうやく。琥珀や霰石(アラゴナイト)の枝に真っ赤なルビーの実を持つ野ばら。それだけ美しい場所なのに、草も花も「十力の金剛石」がまだ来ないので「かなしい」と歌うんですね。みんなが待ち望む「十力の金剛石」とは一体何なのか...
宝石の場面もワクワクしますし(漢字で書く宝石名が、また好みなんです♪)、その後の優しい情景もとても素敵です。(平凡社・角川文庫)


+既読の宮澤賢治作品の感想+
「宮澤賢治のレストラン」中野由貴 「銀河鉄道の夜」宮沢賢治
「注文の多い料理店」「風の又三郎」「銀河鉄道の夜」宮沢賢治
「ざしき童子のはなし」「よだかの星」「風の又三郎」「水仙月の四日」宮沢賢治・伊勢英子

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エルリック・サーガの第2巻。エルリックが3人の永遠の戦士たちに出会う「この世の彼方の海」、エルリックサーガはここから始まった!「<夢見る都>」、そして初期の「神々の笑うとき」「歌う城砦」を収録。旧版では「この世の彼方の海」と「白き狼の宿命」の2冊だったものが、1冊になったもののようですね。

2巻を読み始めてすぐに、エレコーゼ、コルム公子、ホークムーンという名前が登場してびっくり。これってマイクル・ムアコックの他のシリーズの主人公たちじゃないですか! エルリックを含めたこの4人は「四戦士」、<一なる四者>であり、以前にも邂逅があった模様。コルムがエルリックに、「ヴァアロディオン・ガニャディアックの塔」でエレコーゼと一緒に闘ったという話をするんです。エルリックもエレコーゼも「そんなことを言われても」って感じで、コルム公子は未来の世界から来たんだろうという話に落ち着くんですが...。その話はきっと別の作品で読めるんでしょうね。このシリーズの日本語訳は時系列順に作品が並べられているそうなんですけど、「この世の彼方の海」という作品は、実際にはかなり後になってから書かれたようですし。マイクル・ムアコックの世界の奥行きの深さを予感させる作品で、これはぜひとも他のシリーズも読まなくちゃ!って気になってしまいます。
ということで、以下覚書。

エルリック・サーガ...「メルニボネの皇子」「この世の彼方の海」「暁の女王マイシェラ」「ストームブリンガー」「夢盗人の娘」「スクレイリングの樹」「白き狼の息子」
ルーンの杖秘録...「額の宝石」「赤い護符」「夜明けの剣」「杖の秘密」(ホークムーン)
ブラス城年代記...「ブラス伯爵」「ギャラソームの戦士」「タネローンを求めて」
エレコーゼ・サーガ...「黒曜石の中の不死鳥」「剣のなかの竜」
紅衣の公子コルム...「剣の騎士」「剣の女王」「剣の王」「雄牛と槍」「雄羊と樫」「雄馬と剣」

これで合ってるのかしら...
エルリックとルーンの杖秘録は復刊済み、ブラス城年代記とエレコーゼは復刊途中、コルムはこれから? 全部読むとなったら相当な冊数になりそうですが。
この2巻で、エルリックの世界観に引き込まれる人が沢山いる、その魅力がよく分かったような気がします!(ハヤカワ文庫SF)


+シリーズ既刊の感想+
「メルニボネの皇子 永遠の戦士エルリック1」マイクル・ムアコック
「この世の彼方の海 永遠の戦士エルリック2」マイクル・ムアコック
「暁の女王マイシェラ 永遠の戦士エルリック3」マイクル・ムアコック
「ストームブリンガー 永遠の戦士エルリック4」マイクル・ムアコック

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ある日怪物のように大きな海豹に出くわした漁師は、重い銛を首のすぐ下に打ち込みます。しかし海豹は血走った目で漁師を禍々しく睨んだかと思うと、海に飛び込んで姿を消してしまったのです... という「漁師とドラウグ」他、全11編が収められた短編集。

先日ノルウェー民話の「太陽の東 月の西」を読んだ時に、日常&読んだ本logのつなさんに教えて頂いた本。(私の感想と、つなさんのこの本の記事はコチラ) ノルウェーといえば、それこそ「太陽の東 月の西」の編者アスビョルンセンぐらいしか知らなかったんですけど、ヨナス・リーはノルウェーの国民的作家なのだそう。海と漁師の現実の生活を描いたものや、民間伝承を元にした作品を多く書いているそうで、この本は後者の方ですね。ただ、民間伝承を元にしているとは言っても、ヨナス・リー自身の筆がかなり入っているようです。まさに民話といった素朴さが魅力の「太陽の東 月の西」に比べると、つなさんも書いてらっしゃいましたけど、こちらは物語としてかなり洗練されてる感じがしました。
ノルウェーの民話といえばトロルがいるんですけど、この作品に登場するのはドラウグという海の魔物。私は初耳だったんですが、これもノルウェーならではの存在なんだとか。姿は様々で、ある時は「漁師とドラウグ」で登場したように海豹そっくりの顔で、口が耳まで裂けていたり、別の時は船乗りの服を着ているのに頭がなくて、その代わりに海草の塊を載せていたり。頭がないせいか、帽子を深く被っていることも多いみたいです。なんとも気持ちの悪い存在のようですね... そして、姿は変わっても、「海でドラウグに出会った者は近いうちに溺れて死ぬ」というのが共通点。こういうのは、やっぱり北の海にこそ相応しい気がします。南の海にいたとしても怖いと思いますけどねー。雰囲気がまた全然違ってきちゃう。

幻想的だったり怪奇的だったりと、どの物語も北欧の雰囲気がたっぷりでそれぞれに面白かったですが、11編の中で特に気に入ったのは、ラップ人の少女といつも一緒にいた少年の物語、「ラップ人の血」。ラップ人の少女の家族は不思議な物語を沢山知っていて、少年は両親に禁じられてたにも関わらず、そこの家にいつも遊びに行くんですね。そうか、ラップ人って差別されていたのか... なんてところに無知な私なんですが、確かにラップ人といえば精霊信仰だし、キリスト教とは相容れないでしょうね。遊牧民族だから、尚更なかなか布教されないでしょうし。でも、キリスト教と異教が緩やかに混ざり合っている感覚もとても面白かったし、海の中の情景がとても美しかったです。(国書刊行会)

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今は亡き王妃・マルグヴェンの忘れ形見である王女ダユを溺愛するコルヌアイユの王・グラドロンは、ダユの望むまま、海のそばに美しい都を作り上げます。ダユはそこで享楽的な生活を送ることに。

5世紀に海没したと言われるイスの町の伝説。コルアヌイユは、フランスのブルターニュ地方にあります。ブルターニュという土地は、元々ケルト色の濃い場所なんですよね。「ブルターニュ」という名前も、アングロ・サクソン人に追われてブリテン島から逃げて来たケルト人がブルトン人と呼ばれたことからきているし。そういえば「トリスタンとイゾルデ」で、イゾルデの出身地がコルアヌイユになってるんですけど、同じ場所ということでいいのかしら? ...この作品は、シャルル・ギヨが各地に残る断片的な伝説を拾い上げ、キリスト教の聖者伝やギヨ自身の創作を交えて物語として作り上げたものだそうです。イス(YsまたはIs)というのは、「低い町」の意味。湾を埋め立てて海面より低い場所に作られていたためについた名前。フランスの首都・パリの名前の語源とも言われています。「Par Is」とは、「イスに匹敵する」という意味で、伝説の都・イスのようになりたいという願いが込められた名前。いつかパリが滅びた時にイスはもう一度海の底から蘇り、フランスの首都として君臨すると言われているのだそうです。

一見、とてもキリスト教的な物語。マルグヴェン王妃を失って一度は自暴自棄になっていたグラドロン王は、キリスト教徒になることによって立ち直るんですが、娘のダユがそれに反抗します。聖者たちにとってダユは淫婦でしかないし、イスの町は丁度ソドムとゴモラみたいな存在なんでしょうね。結局、ダユは悪魔によって身を滅ぼすことに...。でもそれはキリスト教側からの一方的な言い分。ダユの母親のマルグヴェン王妃は、王との出会い方から考えると、おそらく妖精です。なので娘のダユも妖精の血を引いていることになります。だからこそ、ダユはキリスト教化された王都に我慢できないし、イスの町にも教会を作ろうとしないんです。それどころかイスの町のことで、「古い宗教の女祭司」たちに助けを求めています。イスの町は人間の目には見えない妖精(コリガン)たちによって手入れされていますし。
ダユという名前はケルト語では「良き魔女」という意味だとありました。となると、元々この伝説には違う意味があったということなのでは? この作品はキリスト教が異教を排除したという象徴的な物語になってるんですけど、もしこの伝説の中にキリスト教的要素が全く入っていなかったら、一体どんな感じだったんでしょうね?

海底に沈んだイスの町は、ケルトの他界になってしまったようです。晴れた日は海底に沈んでいる尖塔が見えるとか、波の静かな日は教会の鐘の音が聞こえるとか... 思いがけなくイスの町に行ってしまったというエピソードも色々あるようですね。その共通点は、訪れた人間が1つの行為を行わなかったせいでイスの町は蘇ることができなかった、というもの。もし店で買い物をしていれば、ミサの答唱に応えていたら、イスは蘇ることができたのに。...でもイスが蘇ったら、パリはどうなるんだろう...?(鉱脈社)

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ケルト物3冊。「ケルト妖精民話集」は、J.ジェイコブズの「Celtic Fairy Tales」「More Celtic Fairy Tales」から16編の妖精物語を選んで収録したもの。「ケルト幻想民話集」は、同じくJ.ジェイコブズの2冊からのフィン・マックールやクーフーリンなどの英雄伝説と、P.W.ジョイスのダーマットとグラーニアの物語。「ケルト魔法民話集」は、P.W.ジョイスによるルーグやフィン・マックールの物語3編と、J.F.キャンベルの「ケルト海竜物語」。

英雄物語や神話的な物語は知ってるものが多かったんですが、妖精物語は比較的初めてのが多くて新鮮でした。「白雪姫」と「シンデレラ」の別バージョンもありましたよ。ケルトの「白雪姫」は、「金の木と銀の木」。「金の木」が王女の名前で、「銀の木」はお后さまの名前です。この物語で怖いのは、白雪姫のように継母が美しい継娘に嫉妬するのではなく、お后さまが実の娘を嫉妬して殺そうとするというところ。しかも王様、実の娘の心臓と肝臓を食べたがるお后さまを止めようとはしないんですかーっ。母親には山羊の心臓と肝臓を食べさせておいて、娘の方は丁度求婚しに来ていた外国の王子に嫁がせて外国にやってしまえばそれでオッケーだなんて、なんて安易な男なんだっ。(驚)
そしてケルトの「シンデレラ」は「フェア、ブラウン、トレンブリング」。これは3人の娘の名前で、トレンブリングがシンデレラ。妖精のおばあさんにあたる鶏飼い女(スコットランドでは、鶏を世話する女には魔力があるとされていたらしいです)にどんなドレスがいいか聞かれたトレンブリングの答は、最初は「雪のように白いドレスに緑の靴」、次は「とびきり上等の黒繻子のドレスに赤い靴」、最後は「腰から下はバラの赤、腰から上は雪の白、肩には緑のケープ、頭には赤、白、緑の羽つき帽子、靴は爪先が赤、中程は白、裏とかかとは緑」。...な、なんかものすごい趣味なんですけど... しかも随分と自己主張のはっきりしたシンデレラですねー。でもそれだけしっかりしてるトレンブリングも、無事結婚したら油断したのか、お姉さんが原因でエラい目に遭うんですけどね。

私は3冊とも現代教養文庫版で読んだんですが、既に絶版。最初の2冊は文元社というところからハードカバーが出ていたので、画像のはそこのを使ってみました... が、ハードカバー、高い! もう少し調べてみると、同じジョーゼフ・ジェイコブズで「ケルト妖精物語」という本が2冊出てるんですよね。これはおそらく原本が一緒なのではないかと...。ゲール語からの完訳だそうなので、今から読もうと思われる方は、こっちを読まれた方がいいのかもしれません。表紙もこっちの方が綺麗ですしね。訳者さんは違いますが。(現代教養文庫)

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竜の島メルニボネの初代魔術皇帝から数えて428代目の直系に当たる白子の皇帝・エルリックは、薬と薬草の力によって生きながらえているという皇帝。従兄のイイルクーンがその座を狙っているものの、恋人のサイモリルとの平和な時間を楽しんでいました。しかしそんなある日、新王国と呼ばれる新興人類の国からメルニボネの夢見る都・イムルイルへの襲撃があり、迎え撃った戦いの場でイイルクーンがエルリックに公然と反旗を翻したのです。

本読みの憂鬱の森山樹さんにずーっとオススメされてた作品。他にも絶賛してる方は多いし、井辻朱美さんの訳で復刻されたし、気になってはいたんですが、なかなか読めず... ようやく読めました!

その膚は野ざらしのどくろの色、肩より長く垂れ落ちる髪は乳酪のように白い。細面の美しい顔からのぞくのは、つりあがった愁わしげな深紅の双眼、ゆるい黄色の袍の袖口からあらわれたほっそりした手もまた骨の色、それが巨大なただひとつのルビーから刻みだされた玉座の、両の肘かけに置かれている。

そんな描写から始まる、エルリック・サーガの第1巻。ここには「メルニボネの皇子」と「真珠の砦」の2つの長編が収録されています。
作者のマイクル・ムアコックはイギリス生まれながらもアメリカに移住したと聞いてたし、本に載ってる写真がカウボーイハット姿なので(笑)、この作品もいかにもアメリカ的なヒロイック・ファンタジー(ちょっと苦手)かと思っていたんです。が、主人公は予想外に内省的な人物でした... 暗い。(笑) エルリックは白子なので、見た目にも明らかに他のメルニボニ人とは異なってるんですけど、中身も違います。残酷なまでにあっさりと事を決定していくメルニボネの人々に対して、平和主義なのか事なかれ主義なのか、エルリックの行動や決定は、もう本当に歯がゆいほど。神々の中にただ1人迷い込んだ人間みたい。でもそんなエルリックでも、一度新興人類の王国に行ってしまうと、十分人間離れしてましたが。(笑)
エルリックは、身体的には薬がないと生きていかれないほど虚弱なんだけど、その反面、魔剣ストームブリンガーを使いこなせるほどの精神力の持ち主。でもそのストームブリンガーは、混沌の神に忠誠を誓って得たもの。剣で人々の魂を吸い取って、混沌の神に捧げ続けているんですね。これは、エルリック本人は善を成したいと考えていても、その裏には必ず悪魔が控えているようなもの。それでもストームブリンガーを手放せないエルリック。...何ていうかエルリックの中にはものすごく沢山の矛盾があるんですね。それがエルリック一番の魅力なのかもしれません。
でも、私としては混沌の神・アリオッホがものすごーく気になるんですよねえ。その姿は美青年、しかし目だけは老いた聡明さと邪悪さを持っているというアリオッホ。彼の話をもっと読みたいなあ。

続きも読もうと思ってますが、これはもう少し後で。1話ずつ完結してるようなので、ゆっくり追いかけられそうです。でも作品が長くて本が分厚くなるっていうのはいいんですけど、こんな風に2つの長編が1冊にまとめられちゃってるっていうのはどうなんでしょ。1つずつでも普通の厚みになったでしょうに。こういうのっていやー。しかもこれ、ハヤカワ文庫SFに入ってますけど、今のところはFTの方がずっと相応しい感じなんです。...それも手に取るまでに時間がかかった理由の1つなんですよね。(ハヤカワ文庫SF)


+シリーズ既刊の感想+
「メルニボネの皇子 永遠の戦士エルリック1」マイクル・ムアコック
「この世の彼方の海 永遠の戦士エルリック2」マイクル・ムアコック
「暁の女王マイシェラ 永遠の戦士エルリック3」マイクル・ムアコック
「ストームブリンガー 永遠の戦士エルリック4」マイクル・ムアコック

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アウヘンスキオフ城に住むキャサリンと村に住むケイトは、幼い頃から大の仲良し。なかなか自由には会えないものの、少しでも機会をみつけては一緒に過ごしていました。キャサリンが12歳になる頃、乳母のゲルダが結婚して外国に行くことになり、キャサリンの父は新しい乳母を探す代わりに、ケイトの母親のグリゼル・マックスウェル夫人と再婚。キャサリンとケイトは姉妹となることに。しかしグリゼルは魔女だったのです。野育ちのケイトが、美しく気立ての良い継子キャサリンに負けているのを見たグリゼルは、夫の留守の間にじわじわとキャサリンを追い詰め始めます。

スコットランドのギャロウェイ地方に伝わるケイト・クラッカーナッツの伝承がメインモチーフになっているんですが、ブリッグズがその背景として選んだのは17世紀半ばのスコットランド。1649年のチャールズ一世の処刑とそれに続く内戦という激動の時代を舞台にしています。読んでいると、まるで歴史小説みたい。でもそんなところに妖精や魔女が登場しても、全然違和感がないんですよね。逆に、そういう存在が本当にスコットランドやイングランドの日常に根ざした存在だったんだなあと感じられるほどです。
継母が実は魔女だったというのは、「シンデレラ」を始めとするおとぎ話によくあるパターンなんですが、先妻と後妻の娘同士が実の姉妹のように仲良くなるという展開はちょっと見ないですね。ケイトは、キャサリンを母親の悪意から守ろうとしながらも、母親に愛情を示されるとやっぱり嬉しくなるし、魔女を忌まわしく感じながらも、同時に強く惹かれるものも感じているし、キャサリンのためには魔女が死んで嬉しいけど、母親を失うのはやっぱり悲しいんですよね。でもそんな板ばさみの状況もしっかり受けとめていて、基本的に守られるだけのキャサリンよりもずっと魅力的でした。この2人、どちらも「ケイト」ですけど、「ケイト・クラッカーナッツ」と呼ばれるのは、キャサリンではなくてケイトの方。やっぱり彼女が主人公なんですね。(岩波書店)


+既読のキャサリン・ブリッグズ作品の感想+
「妖精 Who's Who」キャサリン・ブリッグズ
「魔女とふたりのケイト」K.M.ブリッグズ

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