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子供の頃から「ギリシア・ローマ神話」でお馴染みだったブルフィンチ。神話関係で有名な人なので、ずっとイギリス人か、そうでなくてもヨーロッパの人なんだろうと思っていたんですけど、実はアメリカ人だったんですねー。「ギリシア・ローマ神話」「中世騎士物語」、あと「シャルルマーニュ伝説」(近々読む予定)の3冊は、どうやらイギリス文学を読もうと考えているアメリカ人のために書かれた本のようです。必要な知識を手っ取り早く得るための本だったのか。道理で、幅広く分かりやすく網羅しているはずです。確かにヨーロッパの文学を読む時は、神話とか英雄伝説といった基礎知識があった方が絶対いいですものね。あと聖書も。...本書の訳者の野上弥生子さんも、この本や「ギリシア・ローマ神話」を訳したのは、「西欧の芸術文化を理解するにあたって、なくてはならない知識を一般に与えたいためであった」と書かれていました。確かに騎士道物語や英国における英雄伝説に関する幅広い知識が得られる本書は、入門編にぴったり。

以前、同じブルフィンチの「新訳アーサー王物語」を読んだ時は、その浅さに正直がっくりきたんですが、これはなかなか面白かったです。まず冒頭には、中世英国の歴史。社会的な状況や当時の騎士に関する簡単な説明があって、シェイクスピアで有名なリア王なども登場。次はアーサー王伝説。これが本書の中心ですね。明らかにマロリーの「アーサー王の死」を元にしたと思われます。そして、アーサー王伝説も登場する中世ウェールズの叙事詩「マビノジョン」。「アーサー王の死」はもちろん、「マビノジョン」も去年読んでいるので(記事)、特に目新しい部分はなかったんですが、それでも楽しめました。そして最後に「英国民族の英雄伝説」の章では、「ベイオウルフ」「アイルランドの勇士キュクレイン」「油断のないヘレワード」「ロビン・フッド」という4人が簡単に取り上げられています。この章に関してはごくごく簡単な取り上げ方なので、特にどうということもないのですが... ウォルター・スコットの「アイヴァンホー」にロビン・フッドが登場してると知ってびっくり。そうだったんだ! 迂闊にも全然知りませんでした。うわー、ロビン・フッド大好きなんです。これはぜひとも!読んでみたいと思います。(岩波文庫)


+既読のトマス・ブルフィンチ作品の感想+
「中世騎士物語」ブルフィンチ
「シャルルマーニュ伝説」トマス・ブルフィンチ

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バグパイプ奏者のジェーニー・リトルは、祖父の家の屋根裏部屋で、祖父の旧友であり、今は亡き作家のウィリアム・ダンソーンの未発表の小説本を見つけます。そのタイトルは、「リトル・カントリー」。限定発行一部のみという表記のある羊皮紙の本には、祖父に宛てて、この本は絶対に手放してはならない、そして何があろうとも絶対に公表してはならないという手紙がついていました。元々ダンソーンの大ファンだったジェーニーは、屋根裏部屋に座ったまま、その話を読み始めます。しかしジェーニーがその本を読み始めたことによって、何かが動き始めたのです。ジェーニーの周囲に妙な人々が出没し始めます。

隠されていた本を見つけた途端、謎の秘密結社が暗躍し始める現実世界の物語は、ミステリアスなサスペンス風。魔法で小人にされてしまった少女が仲間と一緒に魔女と戦うという、ダンソーンが書いた本の中の世界は、魔女と魔法のファンタジー。この2つの世界が交互に描かれていくんですが、そのどっちもが面白い! 読み始めた途端、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。舞台であるイギリスのコーンウォールもすごく魅力的に描かれてるんです。で、てっきりイギリスの作家さんなのかと思ったら、カナダ在住のオランダ人と分かってビックリ。でもチャールズ・デ・リントは元々作家である以前にケルト音楽奏者なのだそうで、納得。何度も訪れてるんでしょうね。音楽家だったなんて。道理で演奏シーンがリアルに楽しそうなわけだ!(巻末には、主人公の作曲した曲の譜面までついてました)
そしてこの作品で面白いのは、ジェーニーとその祖父、そしてジェーニーの友人2人が、同じ本で違う物語を読んでいるということ。たとえ同時に文字を追っていたとしても、それぞれに読んでいる物語はまるで違うというところなんです。ジェーニーが読んでるのはファンタジーだけど、他の3人が読んでるのはそれぞれ、場所的な設定はそのままだけど、冒険物だったり、恋愛物だったり。作中にはジェーニーの読んだ物語しか載っていないのですが、他の3人の読んだ物語も読みたくなってしまいました。
ただ、肝心の主人公のジェーニーがあまり好きになれなかったのが残念... これほど癇癪持ちだと周囲も大変でしょうね。悪役の女性の方がよっぽど可愛く感じられてしまいました。(苦笑)(創元推理文庫)


+既読のチャールズ・デ・リント作品の感想+
「リトル・カントリー」上下 チャールズ・デ・リント
「ジャッキー、巨人を退治する!」チャールズ・デ・リント

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紀元前8世紀、ローマを建国したロムルスとその双子の弟・レムスを回想する「火の鳥はどこに」、紀元前5世紀のペルシャで、子供が生まれないために、幽鬼(ジン)疑惑をかけられて追放されたペルシャのヴァシチ王妃と、王妃を追いかけた小人のイアニスコスの物語「ヴァシチ」、13世紀のイギリスを舞台に、2人の少年と1人の少女の冒険譚を描いた「薔薇の荘園」の3編。

トマス・バーネット・スワンは元々詩人なのだそうで、どれも詩人らしい叙情性に満ちた美しい作品でした! れっきとした史実を背景にしながらも、半人半獣のファウニ(フォーン?)や、木の精(ハマドリュアス)、ユニコーン、幽鬼(ジン)、マンドレイクといった神話的な存在が登場して幻想味たっぷり。こういうの好きだなあ。あ、もちろん、いかに幻想的な舞台背景ではあっても、史実の裏側を書いているようでも、そこに描いているのは人間そのものでしたけどね。
3編の中で一番気に入ったのは、ペルシャを舞台にした「ヴァシチ」。これはゾロアスター教の光明神アフラ・マズダと暗黒神アーリマンが基礎となった、光と闇の戦いの物語。ペルシャといえば、以前「王書」は読んだんですが(記事)、これはペルシャがゾロアスター教からイスラム教に変わった後に書かれた詩なんですよね。ゾロアスター教に関して、あまり知識がないのがとっても残念。クセルセス王のギリシャ遠征のことも、もっと知ってたらもっと楽しめただろうな。そちら方面の本も探してみなくてはー。(ハヤカワ文庫SF)


+既読のトマス・バーネット・スワン作品の感想+
「薔薇の荘園」トマス・バーネット・スワン
「ミノタウロスの森」「幻獣の森」トマス・バーネット・スワン

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ジョイリーの女領主・ジレルが征服者ギョームに敗北を喫します。兜を取ったジレルの美貌に見とれたギョームにくちづけを強いられ、怒りに駆られるジレル。ギョームを倒す武器を手に入れるために地下牢を抜け出し、城の地下からひそかに通路が通じている地獄へと向かうことに... という表題作「暗黒神のくちづけ」他4編の連作短編集。

ハヤカワ文庫SFに入ってるんですが、これはSFではなくファンタジー作品ですね。舞台となっているのは中世のヨーロッパ。5つの短編のそれぞれで、主人公が超常的で、人間の力の及ばない場所に行き、それでも何とか自分の力で切り抜けていくというパターン。ヒロイック・ファンタジーならぬヒロイニック・ファンタジーです。
ヒロインのジレルは、どうやらスタイルはいいみたいなんですけど、あんまり女っぽくありません。赤毛の短い髪と金色に燃える眸、男に負けない大柄な体、そして男以上の獰猛さを持つ女性とあるので、かなり迫力の怖いおねーさんですね。男なんて全然目じゃないので、「暗黒神のくちづけ」では無理矢理キスされて怒り狂ってます。だからといって、いきなり地獄にまで行かなくても... なんですが、地獄の情景はとても良かったです! 3編目や4編目で訪れる魔法の国や暗黒の国の描写もとても魅力的。こういう描写が素敵な作家さんなんですねー。...ただ、無理矢理キスされて、逆にその相手がなんだか気になってきたわ~的な展開は、ちょっと気になったんですが... それに全編通してキスぐらいしか出てこないのに、妙にエロティックな雰囲気なのはなぜ。
思った以上に面白かったんですが、イラストが松本零士氏なんですよね。この方のイラストの女性って、どうしてこんなに全部メーテルなんだろう? ジレルとはイメージがちがーう。しかもジレルの髪は短いってあるのに、相変わらずの長い髪の女性の絵なんです。なんだかなあ。(そういやこの表紙の絵は誰なんだ?)(ハヤカワ文庫SF)

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かつて意気投合した高名な映画音楽家の指示通り、夜中に起き出して、40年間空き家になっている屋敷へと向かった16歳のマイケル。渡されていた鍵を使って玄関のドアから入り、家の中を通り抜けて裏口から外へ。そして再び左の隣家の玄関から入って中を通り抜けて裏口へ。途中、裏庭のパティオにいた女性に追われて慌てるものの、マイケルはなんとか指示通りに6つ目の門を開けて飛び込みます。その門の先にあったのは、妖精シーと人間、そしてそのハーフが暮らしている妖精の王国。地球ではない、全く別の場所だったのです。

マイケルが行ってしまう異世界は、基本的にシーの国。一応人間もいるんですけど、特定の場所に保護されてます。そこにいる人間たちは、全て音楽にまつわる人々。ピアニストだったり、トランペッターだったり、音楽評論家だったり、音楽教師だったり、ある音楽会を聴きに行っていた人だったり。
マイケル自身もワケが分からなくて困るんですが、読者の私もワケが分からなくて困っちゃう。なんでマイケルがここに来ることになったのかも分からないし(マイケルは音楽家ではなくて詩人)、わざわざ他の人と違う方法でやって来なければならなかった意図も分からないし、ここで何をすることになってるのかも分からない! そもそもこの世界の設定自体、分からないことだらけなんです。みんなマイケルに学べ学べと言うんですけど、質問してもまともに答えてくれる人はほとんどいないし、それ以上質問するなって怒られたりしてるんですよね。マイケルの「質問しないでどうやって学ぶのさ?」という台詞は本当にごもっとも! 読み進めていくうちに徐々にこの世界のことが分かってくるという構成なんですが、これがほんと分かりにくくて、実は「無限コンチェルト」の途中で話が分からなくなってしまった私...。仕方がないので、とりあえず1冊読み終えてから、また最初に戻って読み返すことに。でも一旦分かってくれば、骨太でなかなか魅力的な世界観。続編がなかったらきっとここで諦めてたかと思うんですけど、もう一回読んで良かったー。苦労した甲斐がありました。
詩と音楽の使い方が面白かったし、宇宙の成り立ちにまで話がいってしまうところは、さすがSF作家。とは言っても、感想がものすごーく書きにくい作品なので、ここにもまともなことは書けそうにありませんが... 2冊で1000ページ超、とにかく読み応えがありました。きっと再読したらさらに面白くなるんでしょう。でもとりあえずは「ぐったり」です。(ハヤカワ文庫FT)

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見慣れない黒ずんだ建築物のある都市を暗黒の生き物が襲い、深夜の街を慌てふためきながら逃げまどう人々。それはジルのみている夢でした。しかもジルは、自分が夢を見ているということをよく分かっていたのです。しかしその夢はとてもリアル。同じような夢を何度も見るうちに、それが単なる夢ではないことにジルは気づき始めます。そしてある晩ジルがふと目覚めると、アパートの台所のテーブルには夢の中で出会った魔法使いが座っていたのです。

ダールワス・サーガ3部作。ダールワスという、中世ヨーロッパ的な異世界の王国を舞台にしたファンタジーです。異世界に巻き込まれるのは、大学院で中世史を専攻しているジルと、偶然現れた自動車整備工・ルーディの2人。
作者のバーバラ・ハンブリー自身が中世史を専攻していたそうで、ダールワスの描写にもそれがよく表れていました。石造りの建物の重厚で陰鬱な雰囲気も、宗教と政治の対立具合も、とても中世っぽい雰囲気。となると雰囲気はとても好きなはずなんですが... どうも今ひとつ入り込めませんでした。研究者肌のジルには実は戦いの才能があって衛兵にスカウトされたとか、自動車整備工のルーディには魔法の力があって、魔法使いの弟子になったとか、ちょっと普通とは違う役割分担のところも面白いし、さらにこの2人の最終的な決着の辺りも普通のファンタジーとは違っていて個性的だなと思ったんですけど... 中世の世界に現代人がタイムスリップして現代の知識を生かすというのも嫌いじゃないはずなんですけどねえ。どこかSFっぽさが感じられてしまうのが、違和感だったのかしら。

結局、ジルとルーディをこの世界に連れてきた魔法使いインゴールドの言葉が一番興味深かったです。

魔法使いは良い人々ではない。親切な心が魔法使いの一番の特徴になることはめったにない。魔法使いの大半は悪魔のように高慢だ。特に数ヶ月しか訓練を受けておらぬ者は。だからこそ会議があるのだ。宇宙の道を変えられると知ったうぬぼれをへこますものがなくてはならぬ。

これにはちょっと説得力がありました。なるほどね。(ハヤカワ文庫FT)

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月が人々の想像力を掻き立てなくなってしまったのは、現代科学技術の発展が、月を「地球を照らしだすただの光球」「既知の土地(テラ・コグニダ)にしてしまったから。それまで月は人間にとって「遥けきものであり」、もっとも身近な別世界であったのに、月を喪失することによって、人間は別世界をも失ってしまったのです。しかし別世界の創造を目的とするファンタジー作品の復活によって、人々は夢の中で別世界の生活を手に入れることに成功します。別世界が創造されるに至った背景と、別世界の必要性を中心にしたファンタジー論。

もしかしたら荒俣宏さんの文章とは合わないのかも...。「帝都物語」の時は思わなかったんですけど、今回読むのにかなり苦労しました。読んでも読んでも内容が頭に入ってこなくて、2回通して読んだ後、もう一回メモを取りながら読み返してしまいましたもん。でもきちんとメモを取りながら読んでみると、内容的にはとても面白かったです。別世界の象徴としての月の存在に関する考察からして面白かったですしね。あと私としては、「神話の森を超えて」の章が興味深かった。神話とは太古の歴史の集成でも、1つの哲学や思想が完成される以前の記録でもなく、生贄の家畜同様、神々に捧げられた神聖な供物であり、根本的に謎かけの儀式だったのだとか。(と、ポンとここにそれだけ書いても、説得力も何もあったものじゃありませんが)
この本でよかったのは、何といっても「書棚の片すみに捧げる」ということで巻末に収められているファンタジー作品のリスト。妖精文庫から出た当時は100冊が選ばれていたようなんですが、ちくま文庫版で180冊+2として選ばれていました。現在では入手が難しい本もあるとは思うんですけど、簡単なコメントが添えられた見やすいリストになっているのが嬉しいところ。で、調べてみたら、2002年に「新編別世界通信」というのも出ているそうなんですよね。今度は大幅に改訂されて、ハリー・ポッターまで含まれているのだそう。これもちょっと読んでみたいなあ。このリストも変わってるのかなあ。でもやっぱり本文は読みにくいのかなあ...。^^;(ちくま文庫)


+既読の荒俣宏作品の感想+
「花空庭園」荒俣宏
「別世界通信」荒俣宏
Livreに「帝都物語」の感想があります)

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Note


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