Catégories:“幻想文学1500”

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19世紀末のニューヨーク。盗賊団・ショート・テイルズ団に追われていた泥棒のピーター・レイクは、絶体絶命のピンチに逃げ込んだ薪小屋の陰に、1頭の白馬がいるのに気づいて驚きます。この白馬はブルックリンの小さな厩から逃げ出して、マンハッタンへと駆けて来ていたのです。ピーターは白馬に飛び乗り、呆気に取られている追っ手たちを尻目に、猛烈な勢いで馬を走らせ逃げ去ります。

いやー、とても不思議な物語でした...。一言で言えば、時を超えた話なんですけど、とっても説明しづらいです。上に書いたあらすじなんかじゃあ、全然説明できてません。これはほんのさわり部分。19世紀末のニューヨークと20世紀末のニューヨークを背景に、様々な人々が描かれていきます。主人公は一応ピーター・レイクだと思うんですが、登場人物がとても多くて、ほんの端役と思われる人物にまで詳細な描写が付け加えられてるんですよね。だからピーター・レイク1人というより、ニューヨークに住む多くの人々の生活が浮かび上がってくる感じ。そういう意味では、人間よりもニューヨークという街自体が主人公なのかもしれません。
退屈に感じる部分もあったし、よく分からない部分もあったし、色んな疑問が残ったままになっちゃったんですけど、それでも読後残ったのは美しい情景。「ウィンターズ・テイル」という題名だけあって、やっぱり冬の情景が一番印象的でした。特に雪に覆われたニューヨークのマンハッタンと、凍りついたコヒーリズ湖。厳しい冬の寒さは、現実の厳しさ同様、人間にも辛く当たるんですが、それでもなにやらとてつもなく美しく印象に残ります。この「冬」は、やっぱり人生そのものを象徴しているのでしょうかー。そしてその冷たい空気の中、風のように舞い上がる白馬・アサンソー。
どんな話だったか説明するのがとても難しいし、自分でも理解しきれたとは思えないのですが、魅力的な物語ですね。いずれまた最初から読み返してみたいです。そうすれば、今よりももう少し理解できるかも。(ハヤカワ文庫FT)

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息子のジェイスンの10歳の誕生日に、フローリン国の文豪・S・モーゲンスターンの「プリンセス・ブライド」を贈ったウィリアム・ゴールドマン。これはゴールドマンが10歳の頃、肺炎で寝込んでいる時に、父が少しずつ読み聞かせてくれた本。ゴールドマンが本好きとなったきっかけの本なのです。でも苦労して手に入れた本なのに、ジェイソンは1章だけで挫折。息子が本を気に入ってくれずがっかりするゴールドマンですが、自分で本を開いてみて、かつて知っていた物語とは違っていることに気づきます。父は退屈な歴史部分を飛ばして、面白いアクションの部分だけを読んでくれていたのです。ゴールドマンは「プリンセス・ブライド」の娯楽抜粋版を作り上げることを決意します。

「明日に向かって撃て!」や「大統領の陰謀」の脚本で、アカデミー脚本賞も受賞している作家・ウィリアム・ゴールドマンが、フローリン国の文豪S・モーゲンスターンの名前を借りて作り上げた「真実の恋と手に汗握る冒険物語の名作」。
いやー、ほんとユーモアたっぷりの作品でした。作中作(?)の「プリンセス・ブライド」自体も面白いんですけど、一番楽しかったのは、やっぱりゴールドマン自身による遊び心たっぷりの解説! 「プリンセス・ブライド」が始まる前の、娯楽抜粋版を作るきっかけとなった話も面白いですし、本編が始まってからは、ゴールドマン自身による解説が随時織り込まれていて、これがまた楽しいのです。ハヤカワ文庫版では、この解説部分を分かりやすくするために赤字で印刷していますが、原書もそうなのかしら? 何度も解説が入るので、物語はそのたびに分断されることになるんですけど、勢いを殺いでしまったりはしないですね。むしろ、漫才のツッコミのような感じかも。(笑)
退屈な歴史部分を全部カットするのって、もしかして某大作ファンタジーに対する皮肉?なんて思いながら、楽しく読みました。もちろんフローリン国などという国はありませんし、文豪S・モーゲンスターンも存在しません。全てがゴールドマンによる一人芝居。上手いです~。
この作品は、「プリンセス・ブライド・ストーリー」という邦題で映画化もされているのだそう。これはちょっと観てみたいかも。(ハヤカワ文庫FT)

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ニューヨークの共同墓地・ヨークチェスターに19年もの間隠れ住んでいるジョナサン・レベック。ある時ぐでんぐでんに酔っ払ってここに迷い込んで以来、鴉に1日2回の食事を運んでもらいながら、ここに暮らしているのです。幽霊を見ることができるレベックは、死者の話し相手となって相手の気持ちを落ち着かせたり、一緒にチェスをしたり、本を朗読する毎日。そんなある日、新たにマイケル・モーガンという男が墓地に埋葬されます。

以前「最後のユニコーン」を読んだ時に(感想)、ちょろいもさんがこの「心地よく秘密めいたところ」もいいと伺って、読もうと思っていた本。もっと早く読むつもりだったのに、ずいぶん遅くなってしまいましたー。(それでも1年は経ってないからまだマシなのだ)
まるで神話の世界のような「最後のユニコーン」とは違って、とても現実に近い物語なのだけど、独特の雰囲気は共通してますね。あくまでも静か。墓地が舞台の物語なので当然といえば当然なんですが、本当に静かに淡々と進んでいきます。途中、マイケルの死は毒殺なのか自殺なのかといった興味はあるんですが、基本的にはそれほど起伏のない物語。ただ、舞台が墓地で、死と隣り合わせだけに、とても登場人物たちの言葉に哲学的な雰囲気があるんですよね。レベック氏がマイケルに語る「死」というもの、静かに記憶がなくなっていくそのイメージが素敵です。人生から逃げ出したレベック氏や、夫を失って以来時間が止まっているようなクラッパー夫人にとって、ここはまさに「心地よく秘密めいたところ」。ここにいることは、人生における執行猶予期間なんでしょうね。人生半ばで死んでしまい、死んだ自分と向き合う時間を持つことになったマイケルやローラにとっても同様。まさにそれぞれにとっての「死」と「再生」の物語なのでしょう。
そしてこの作品で印象に残るのが鴉! ボロニヤ・ソーセージやローストビーフ・サンドイッチの重さによろけ、時にはトラックの荷台で休みながらも、レベック氏に食べ物を届け続け、皮肉な言葉を吐き続ける鴉の姿がとても微笑ましくて良かったです♪ こんな話を読んだら、鴉に対するイメージが変わっちゃうな。(そういえば、ジョージ・マクドナルドの「リリス」でも鴉が印象的だったなあ)

この作品は、ピーター・S・ビーグルが19歳の時に書いたものだと知ってびっくり。19歳でこういう作品が書けるものなんですか! てっきり、既に人生を重ねて老成した時期の作品かと... 凄いなあ。良かったです。(創元推理文庫)


+既読のピーター・S・ビーグル作品の感想+
「最後のユニコーン」ピーター・S・ビーグル
「心地よく秘密めいたところ」ピーター・S・ビーグル

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魔法の国ザンスシリーズの4作目と5作目。最初の3冊を読んだ時にすっかりおなかいっぱいになってしまって(感想)、これでオシマイにしておこうかななんて思ったんですが、読んでみたらやっぱり面白かった!
特に「魔法の通廊」の方は、読みながら何度も笑ってしまいました。これはザンスの外の魔法の存在しない世界(全部ひっくるめてマンダニアと呼ばれています)に行った王と女王が予定の1週間を過ぎても帰って来なくて、1作目の主人公ビンクの息子ドオアが探しに行く話。ドオアの魔法の力は、無生物と話す能力なんですよね。だからドオアがいると、石だの水だの壁だのが話し始めてとっても賑やか。たとえば、ドオアが城の堀の水に「知っていることを言え。でないと、この石をぶつけるぞ」と脅すと、水もおびえるんですけど、投げられそうになった石も「うへえ! こんなドロドロの汚水になんか、投げ込まないでくれ!」と言ってたり。(笑) 3巻の「ルーグナ城の秘密」もドオアが主人公で面白かったし、ドオアが主人公の話って実は結構好きかも。そしてこの4巻では、ザンスとマンダニアの地理的時間的繋がりが、初めて明らかになりました。これは色々冒険ができそうな設定ですねー。
5巻は、人喰い鬼のメリメリが7人の人外美女たちと旅をすることになる話。人喰い鬼なのに菜食主義者のメリメリは、気が優しくて力持ち。愛すべきキャラクターです。でも今回、知能(アイキュー)蔓の呪いですっかり賢くなってしまったり、魂の半分を取られて力が弱くなってしまったりと、アイデンティティの危機が! まあ、結末は想像がつくんですけど、意外と最後までじらして読ませてくれました。やっぱりこのシリーズは、もうちょっと読み進めよう。(ハヤカワ文庫FT)


+シリーズ既刊の感想+
「カメレオンの呪文 魔法の国ザンス1」ピアズ・アンソニイ
「カメレオンの呪文」「魔王の聖域」「ルーグナ城の秘密」ピアズ・アンソニイ
「魔法の通廊」「人喰い鬼の探索」ピアズ・アンソニイ
「夢馬の使命」「王女とドラゴン」ピアズ・アンソニイ

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異世界を舞台に、痩せのニフトとチリテのバーナーという2人の盗賊たちが活躍する短編集。どちらかといえば、なるべく手に取りたくないタイプの表紙だったんですけど、想像してたよりは面白かったです。丁度、フリッツ・ライバーのファファード&グレイマウザーシリーズのような雰囲気でしょうかー。いかにもアメリカンヒロイックファンタジーという感じ。本当はそういうのはあまり得意ではないんですけどね。
主人公が盗賊という割に盗みの場面はそれほどなくて、それよりも不思議な冒険が中心。決して善人ではないながらも、悪人に一泡ふかせるニフトの冒険はなかなか痛快。物語自体も、最後のどんでん返しが楽しいです。4編収められてる中で私が一番気に入ったのは、代官にハメられて死刑にされそうになった2人が、魔海に囚われてる代官の息子ウィンフォートを探しにいくことになる「魔海の人釣り」。これは4編の中では一番長くて、200ページほどもある中編。ニフトとバーナーが旅に出てウィンフォートを見つけるまでがちょっと退屈だったんですけど、口ばかりが達者で実力が伴わないウィンフォートが一行に加わってからは、話がすっかりややこしくなって、俄然面白くなりました。おどろおどろした魔海の辺りの描写もいい感じです。(ハヤカワ文庫FT)

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地図屋のヤキン=ボアズは、何年もかけて息子にやる親地図を作り続けていました。そして息子のボアズ=ヤキンが16歳になった時、その地図を息子に見せることに。そこにはヤキン=ボアズが知っている全ての物事が書き込まれているのです。しかし息子が言ったのは、「ライオンは?」という言葉。ライオンは既に絶滅して久しいというのに...。そして数ヵ月後、ヤキン=ボアズは旅に出ます。1ヶ月経っても戻って来なかった時、ボアズ=ヤキンが親地図がしまってある引き出しをあけると、そこには地図はなく、「ライオンをさがしに行った」という書付が残されていました。

うーん、これは今ひとつ分からなかったです... とてもアレゴリカルな物語なのは分かるのですが...。荒俣宏さんの訳者あとがきに「ライオン」や、「ヤキン」と「ボアズ」という言葉について、色々と解説されていました。「ヤキン」と「ボアズ」はソロモンの神殿の2本の青銅の柱のことで、ユダヤ教とキリスト教にとってはとても重要なシンボル性を持つ言葉なのだそうです。...へええ。普通であれば、若い息子が冒険を求めて旅に出て、父親は家にいるものですが、この物語ではその逆。年老いた父親がまず家を出ています。探し求めるのは、既に失われてしまった「力」(ライオン)。父親は既に自分の妻の夜の相手ができなくなっているのですが、家を出てグレーテルに出会うことによって、そういった「力」の1つを取り戻しています。そして息子もまた父親を探す旅に出るのですが...。
帯にはピーター・S・ビーグルの「くやしい。ぼくは本書のような物語を書きたかったのだ!見事に先を越されてしまった」という言葉があったんですが、ピーター・S・ビーグルにそこまで思わせたものは何だったのか。うーん、私にはやっぱりよく分からない...。(ハヤカワ文庫FT)

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徹底した人間嫌いの主人、エムズ卿には身寄りがないことから、いつか自分たちが遺産を相続をする可能性があるのではないかと淡い期待を抱き始めたデーヴィス夫婦。しかしエムズ卿の動物への偏愛ぶりを見ているうちに、もしや動物に全財産を遺すつもりなのではないかと不安になり、デーヴィス夫婦は屋敷にいる動物を1匹ずつ始末し始めます。そしてエムズ卿の死後。エムズ卿は、動物たちが生きている限りデーヴィス夫婦が屋敷に住むことを認めると遺書に書き残していたことが明らかになり、デーヴィス夫婦は唯一残った半シェパード犬の世話中心の生活を送るようになるのですが...。

いやー、ハヤカワ文庫FTも結構読みましたが、その中でもダントツで妙な話でした...。ファンタジーらしくない話はこれ以外にも時々ありますけど、なぜこの話がこのラインナップに入ってるのか理解できないぐらい。
原題は「Chog」で、これは「child」と「dog」の造語、文字通り犬児のことなんです。それも普通の犬の子じゃなくて、人間と犬の間にできた子。でもだからといって、そういう場面が赤裸々に描かれてるわけではなくて、かなり後になってから、そうだったんだということが分かる程度の婉曲な表現。直接的に書かれるというのも考えてしまうけど、ここまで婉曲に書かれてるというのも、実際起きたこととのギャップが激しすぎて何とも言えません...。こういうのをブラックユーモアって言うんでしょうか。読んでるだけで気が滅入りそうです。でも決してつまらないわけではなくて、逆に一旦読み始めたら、その展開からは目が離せないんですよね。

クエンティン・クリスプって、私は全然知らなかったんですけど、同性愛カミングアウトの先駆者としても有名な人なんだそうです。バージニア・ウルフ原作の映画化作品「オルランド」とか、イーサン・ホーク監督の「チェルシー・ホテル」、スティングの「イングリッシュマン・イン・ザ・ニューヨーク」のビデオクリップにも出演してるとか。いや、そういった部分は特に関係ないんですが...^^;(ハヤカワ文庫FT)

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