Catégories:“幻想文学1500”

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仲間で騙されてフロリダ拘置所に入れられる羽目になったヒバートは、バークスという男の手引きで、同房のスカーラッチと一緒に脱走。3人はスカーラッチの情婦・カーロッタと共に、広い湿原に逃げ込みます。マングローブの藪を進んでいくうちに4人が辿り着いたのは、神殿のような石造りの建物の廃墟。その廃墟の奥にある池には、金色の光に包まれた目に見えない階段がありました。その階段を上った先は、異世界コーイア。そこは訪れた人間が、魂のままの真の姿に変身するという場所。そしてヒバートは、以前から夢に見続けてきた、白髪の賢そうな老人に出会うことに。

ハネス・ボクは、元々SF的な怪奇ファンタジーのイラストレーターなのだそう。さすがイラストレーターだけあって、異世界コーイアの色彩鮮やかな情景がとても美しいです。特に最後の狂気の密林での描写は、真に迫ってる! そんな情景が鮮やかに浮かんでくる作品は大好きなんですが...
肝心の主人公の相手役となる女性の造形が浅すぎてがっかり。こんな、相手の本質を見ようともしない傲慢な女性なんて放っておけばいいのに!って思っちゃいました。相手が絶世の美女なら、中身がどんな性格でも構わないのかしら! そして一旦そう思ってしまうと、どの人間もすごく底が浅く感じられてきちゃう。異世界の造形がとても素敵だっただけに、ものすごーく残念です。(ハヤカワ文庫FT)

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恋人のアンジーが、大学の研究室の霊体投射実験でどこかに転送されてしまった?! 目の前でアンジーが消えてびっくりしたジムは、早速自分も同じように投射してもらうのですが、気がついた時、ジムの意識はなんとドラゴンの中に入り込んでいて...。

中世のイギリスらしき場所に飛ばされてしまい、しかもドラゴンの身体の中に入り込んでしまったジムが、アンジーと一緒に現代アメリカに戻るために、魔法使いや騎士、弓矢の名人、言葉を話す狼、ドラゴン仲間などの協力を得て、「暗黒の力ある者たち(ダーク・パワーズ)」を滅ぼすという、言ってみれば正統派のファンタジー。
設定もいいんですけど、何よりも登場人物たちが魅力的で良かったです。種族も気質も様々な寄せ集めの仲間なんですけど、下手に同じ志を持たせたりしないで、それぞれの思惑の通りに進んでいくと最終的に目的が一致するという辺りもいいんですよねえ。ただ単に悪を倒すというんじゃなくて、運命と歴史のバランスを保つという論理も面白かったし。
ラストも意外性たっぷり。霊体投射実験って一体何だったのかしら? この世界は結局パラレルワールドだったのかしら? なんて良く分からなかった部分もあるんですが、続きがあるそうなので、これはぜひ読んでみたいです。(ハヤカワ文庫FT)

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ヒューズは日本ではあまり知られていませんが、イギリスでは非常に有名な作家とのこと。これはヒューズの初めての児童書だそうで、ごくごく短い作品ばかり20編が収められた短編集。
常識に捉われない個性的な発想とナンセンスぶりが楽しい作品群。これらの作品は、ヒューズが友人の子供相手に即興で話して聞かせた物語をそのまま活字にしたんだそうです。特に手を入れなかっただけあって、最初に語った時のままの生き生きとした雰囲気がそのまま残ってる感じ。そして意外なほどブラック味もあったりします。
例えば、この中に収められている「電話旅行」という話は、血の繋がらない両親に厳しく育てられている少女が、時々電話線を通って、電話の相手の家に遊びに行っちゃうという、発想そのものがとても楽しい作品。でも両親に可愛がられてない可哀想な女の子と言うと、大抵「小公女」的な良い子を想像すると思うんですけど、この少女が意外な我儘ぶりを発揮してびっくりなんですよね。しかも彼女がしばらくいなかった間、両親は心配していたのか全然だったのか、それも良く分からないようなエンディング。結構煙にまかれます。
思いっきり破綻してて収拾がつかない話も多いんですけど、案外楽しかったです。(1作ずつが短いからかも)(ハヤカワ文庫FT)

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題名の「ムルガー」とはサルのことで、要するにサルが主人公のファンタジーです。本国イギリスでは、トールキンの「ホビットの冒険」が出るまでは、並ぶ作品がないと言われるほど評価されてたそうなんですけど... うーん、読みにくかったです。沢山いるサルの種類にも、食べ物や樹木の名前にもムルガー語の名前がついてて、それを追うのが大変なんですよね。巻末に「ムルガー語小辞典」がついてるんですけど、そんなのをいちいち調べてたら、話の流れになんて、とてもじゃないけど乗れませんー。脇役として登場する人間や水の精が印象的だったし、厳しい冬の情景がとても綺麗だっただけに残念。この厄介なムルガー語さえなければ、もっと楽しめたでしょうに。

この作品はハヤカワ文庫FTと岩波少年文庫から出てますが、どちらも絶版状態。読んだのはハヤカワ文庫なんですが、岩波少年文庫の画像があったので、そちらを載せておきますね。訳者さんは同じなのでどちらを選んでも一緒だろうと思ったんですが、岩波少年文庫の方が新しくて、色々と手を加えてあるようです。岩波少年文庫版を選んだら、もっと読みやすくて良かったのかも... 図書館にあったのに、惜しいことしちゃいました。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のウォルター・デ・ラ・メア作品の感想+
「妖精詩集」W.デ・ラ・メア
「ムルガーのはるかな旅」ウォルター・デ・ラ・メア
「昨日のように遠い日 少女少年小説選」

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岩波文庫か集英社文庫ヘリテージシリーズかと考えていたダンテの「神曲」ですが、overQさんにアドバイス頂いて、河出書房新社の平川祐弘訳を選んでみました。口語訳だし、フォントも普通で読みやすかったです! これから読む人には、私からもオススメ。

ということで、13世紀~14世紀のイタリアの詩人・ダンテによる叙事詩。話は知ってるものの、実際に読むのは初めてです。「地獄篇」「煉獄篇」「天国篇」の3部構成で、深い森の中に迷い込んだダンテを救い出すために、ウェルギリウスが地獄と煉獄を案内していきます。そして天国で案内するのは、ダンテの永遠の恋人・ベアトリーチェ。
通して読んでみると、地獄篇が一番面白かったです。次は煉獄篇。地獄に堕ちた人たちはもう救われる見込みはないけど、煉獄に堕ちた人は天国目指して頑張ってるんですよね。で、一番気が入らなかったのが天国篇。こういうの読んでても、あんまり天国自体には興味がないのに気がついちゃいました。構成とか構造は好きなんですけど、この辺りのキリスト教の教義を今更聞いてもっていうのもあるし、それ以上に、ウェルギリウスは終始丁寧だったのに、天国を案内するベアトリーチェったら終始偉そうで鼻につくんですよねえ(^^;。

それにしても、ホメロスを始めとする詩人たちや、、アリストテレス、ソクラテス、プラトンといった哲学者たち、そしてアエネアス、カエサルといった歴史上有名な人物たちが、洗礼を受けなかったからという理由だけで、地獄の「辺獄(リンボ)」に堕とされていて、しかもまず救われる見込みはないという部分にはびっくりです。そりゃ、洗礼を受けないと天国に行けないというのは知ってましたが、救われる見込みもないなんて。しかもアダムやアベル、ノアやモーセ、ダビデといった旧約聖書の重要な面々ですら、かつてはこの「辺獄」にいたんですって! イスラエルの人々に関しては、その後キリストが救い出して天国に連れていったみたいなんですけど(一旦救われると、随分と高い地位にいるようです)、古代ギリシャの偉人たちはどうするつもり?! なんだかキリスト教徒の驕りを感じてしまいます。(ダンテ自身もこれには納得できなかったらしく、天国篇でそのことについて尋ねることになるんですが) ...そういえば、洗礼を最初に始めたのは、「バプテスマのヨハネ」(サロメに殺される彼です)でいいのかしら? 考えてみたら、神自身が定めた儀式じゃないんですよね、洗礼って。

そして地獄で番人の役割を果たしているのは、主にミノス、ケルベロス、プルートン、メドゥーサ、ケンタウロスなどのギリシャ神話の存在。西洋の古典文学にはほんとギリシャ神話が良く登場しますけど、本来なら一神教のキリスト教にとって多神教は排他するべき敵なのでは...?と改めて不思議になりました。信仰の対象でなければ構わない? モチーフとして絵になるから見逃されるのでしょうか? そしてキリスト教の悪魔の頭領・ルチフェロ(ルシファー)は最下層で氷漬けになってました。キリスト教における「悪」は、とにかく悪魔の誘惑が第1の要因だろうと思っていたんですが... 他にも悪魔は色々といるとはいえ、人間を誘惑するべきルチフェロが氷漬けだったら、あんまり悪いことできないんじゃん。結局、罪は個人の責任ということでいいのかなあ。(笑)

ダンテはそこで出会った色んな人に話を聞くんですけど、聞かれた方もまだ生きてる人間に祈ってもらえると罪が軽減されるので、生者に伝言を頼みたがるし、色んなことを進んでダンテに話すんですよね。それが上手いなあと思ったところ。そして当時の人間がかなり沢山地獄に堕とされてますが、これはどうやら当時のダンテの政敵だったようで... 地獄に堕として意趣返ししてます。なんてこったぃ。(笑)

全部読み通すのに、ものすごく疲れたんですけど(毎日のように本の感想をアップしてますが、まさかこれを1日で読んだわけじゃないです)、叙事詩はやっぱり大好き。次は何にしようかしら。ウェルギリウス繋がりで、「アエネイス」かなあ。叙事詩は大作が多いので立て続けには読めないんですけど、ぼちぼちと読んで行くつもりです。(河出書房新社)

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22歳の青年・コランは、働かなくてもいいだけの資産を持ち、腕の良い料理人を雇っていて、毎週のように友人のシックを夕食に招く生活。シックは、技師としての乏しい給料からジャン・ソオル・パルトルの著作を買うのを楽しむ青年。シックにアリーズという恋人ができ、コランにも、アリーズの友達のクロエという恋人ができて、じきにコランはクロエと結婚。コランは、シックとアリーズの結婚も願って、自分の資産のうちの4分の1をシックに贈るのですが、シックはその金でパルトルの著作を買いあさり始めます。そしてクロエが、睡蓮の花が肺の中に咲くという奇病にかかり...。

レーモン・クノーによると「現代の恋愛小説中もっとも悲痛な小説」、ピエール・マッコルランによると「現代の青春の稀有な書物」という、とても不思議で、美しくて、そして哀しい作品。先日のたらいまわし企画「教えてください!あなたのフランス本」でLINさんが挙げてらした本です。(記事
冒頭から奇妙な描写がいくつも出てきて、おや?とは思ってたんです。コランが鏡を覗き込むと、ニキビは自分たちの姿が拡大鏡に映るのを見てびっくりして皮膚の下に逃げ込むし、バスマットに粗塩をふりかけると小さなシャボン玉が無数にふきだすし、洗面台の蛇口からはパイナップル味のはみがき粉目当てでウナギが顔を出して、それをパイナップルで釣って料理に使ってるし... 演奏をすると本当のカクテルを作るというカクテルピアノも登場。コランとクロエの初デートに登場する小さな薔薇いろの雲は、肉桂入りの砂糖の匂い♪ (ジョルジュ・サンドの作品にも薔薇いろの雲が登場するんですけど、これって慣用句か何かなのでしょうか) それでも最初は、話自体は普通に展開するんだろうと思ってたんです。でもふと気づけば、どんどん思わぬ方向へ... クロエの病気のせいで、コランの家が変容し始める辺りなんて、すっごくシュール。まさかこんな展開になるとは思ってもいませんでしたよー。びっくり。序盤がとても繊細で綺麗なだけに、終盤の痛ましさや残酷さが印象に残ります。もう、読んでいるこちらの精神状態まで左右されてしまいそう。でも、そこまでブラックなのに、やっぱり美しいというのが、また凄いんですよね。いやあ、面白かった。読み終わった途端に、もう一度最初から読みたくなりました。
ちなみにシックが狂信的に入れ込んでいるジャン・ソオル・パルトルは、ジャン・ポール・サルトルのこと。本来の作品名の「嘔吐」も、「はきけ」「へど」などの言葉で置き換えられています。あまり分からなかったけど、他にも 色々とあるんでしょうね。(新潮文庫)


+既読のボリス・ヴィアン作品の感想+
「日々の泡」ボリス・ヴィアン
「心臓抜き」ボリス・ヴィアン
「アンダンの騒乱」「ヴェルコカンとプランクトン」ボリス・ヴィアン

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ライラは、生まれてすぐに両親を飛行船の事故で亡くし、おじのアスリエル卿にオックスフォードのジョーダン学寮に預けられている11歳の少女。その日もダイモン(守護精霊)と一緒に、普段は絶対に入ってはいけない奥の間に忍び込んでいました。ふいの話し声に慌てて隠れたライラが見たのは、その日やってくるアスリエル卿のために用意されたワインに、学寮長が白い粉を流し込んでいる場面。そのまま部屋から出られなくなってしまったライラは、衣装ダンスの中に隠れて様子を伺うことに。

以前睡猫亭の睡さんに教えて頂き、壹萬壹阡之本のヤマボウシさんにもオススメ頂いていた、ライラの冒険シリーズ。全6巻なんですが、とりあえず先に4巻を。(ダンテの「神曲」とか言いながら、いきなり普通の本に戻ってます(^^;)
いやー、読み始めてびっくり。初っ端からミルトンの「失楽園」が引用されていました。わあ、読んだばかりですよー、なんていいタイミング! 解説を見てみると、どうやらこの作品はミルトンの「失楽園」を始めとするキリスト教的神話に大きなインスピレーションを受けたプルマンが、叙事詩のようなモチーフを持った冒険ファンタジーを描こうとした作品なんだそうです。ええと、叙事詩のような重みは、まだ全然感じられないですが... どちらかといえば展開の速いハリウッド映画のようなジェットコースター感覚。
主人公の1人・ライラの住む世界は、私たちの住むこの世界にそっくりのパラレルワールド。地名も共通してるし、この世界と同じように聖書も存在しているんですが、色々細かい違いがあるようです。その中でも決定的な違いは、人間がそれぞれダイモンと呼ばれる守護精霊を持っていること。この「ダイモン」(この言葉を見るたびにどうしても「デーモン」という言葉が頭にちらついて困っちゃう・笑)、どうやら人間の魂が具現化した存在のようです。子供の頃のダイモンは様々な動物に姿を変えるんですが、大人になると一定の姿に固定し、それはその人間の本質的な姿を表していて、この辺りは物語が進めばもっとその暗示するものが見えてきそうです。
鎧を着た北極熊や、ジプシーならぬジプシャンたちといった面々が魅力的。夜空を覆うオーロラの向こうには見知らぬ町並みが見えるという北の地の情景も素敵。でも肝心のライラが...。どうも魅力を感じられず、なぜ周囲の人たちがライラを可愛がるのか分からなくて困りました。ただの嘘つきの女の子なのに!(実際「ライアー(嘘つき)」と掛けられているらしいです) でも「神秘の探検」が始まって、普通のこの世界の少年ウィルが登場して、ぐんと面白くなったし、バランスも良くなったような。「失楽園」からのインスピレーションもようやく具体的な形を見せてきたし、後2冊でどんな展開を見せてくれるのか楽しみです。(新潮文庫)


+シリーズ既刊の感想+
「黄金の羅針盤」上下「神秘の剣」上下 フィリップ・プルマン
「琥珀の望遠鏡」上下 フィリップ・プルマン

+既読のフィリップ・プルマン作品の感想+
「かかしと召し使い」フィリップ・プルマン
「マハラジャのルビー サリー・ロックハートの冒険1」フィリップ・プルマン
「仮面の大富豪 サリー・ロックハートの冒険2」上下 フィリップ・プルマン

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