Catégories:“幻想文学1500”

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「影との戦い」「こわれた腕環」「さいはての島へ」「帰還」「アースシーの風」「ゲド戦記外伝」の6冊。以前4巻まで読んでいて、その「帰還」に「ゲド戦記最後の書」という副題がついてるんですよね。まさかその後5巻と外伝が出るとは! 先日6巻セットを貸してもらったので、いい機会だし最初から全部読み直してみました。

主人公はゲドという魔法使い。1巻の「影との戦い」で登場するゲドはまだ少年です。強い魔法の力を持っているのを見出され、魔法使いたちの学院で正式に魔法について学ぶことになるんですが、自分の力を慢心して、若気の至りでとんでもない事態を引き起こしてしまう... という物語が、この「影との戦い」。そして1巻進むごとに何年も経過していて、最終的に「アースシーの風」の頃のゲドは、なんと70歳ぐらいのおじいさん。(笑)

このゲド戦記、最初は全3巻の作品だったんですよね。最初の3冊は、色々なメッセージを内包してはいるものの、純粋に異世界ファンタジー。でも3巻から16年経って刊行されたという4巻は、どうもフェミニズム論が前面に出すぎていて、初読の時はあまり好きになれなかったんです。ゲドも初老の域に達してるし、3巻の時に力を使い果たしてしまって既に大魔法使いでもなくなってしまってるし、ファンタジーというジャンルを離れてしまったような気がして。4巻であれだったら、5巻では一体どうなるんだろうと思ってあまり期待してなかったんですが... いやー、良かったです。この5巻があって初めて、物語全体が綺麗に閉じたという気がします。それまで当たり前のように受け止めていたこの世界の前提があっさり覆されて、初めて正しい姿がくっきりと見えてきたという感じ。
ゲドが「影との戦い」での失敗のせいですっかり内省的になっちゃうんで、全体的にあまり明るい雰囲気ではないんですが(笑)、でもやっぱりいいです、ゲド戦記。世界の奥行きも抜群。やっぱり今回最初から読んで良かった! 名作ですね。


そして次のジブリは、この「ゲド戦記」なのだそうです。びっくり~。一体どんな感じになるんでしょうね。っていうか、一体どんな風にまとめるつもりなんでしょうね? と思ってたら、ココの記事にありました。3巻を中心にまとめるんですって。ゲド、なんだか脇役になっちゃいそうだなあ。(笑)(岩波書店)


+既読のアーシュラ・K・ル=グウィン作品の感想+
「闇の左手」アーシュラ・K・ル・グイン
「ゲド戦記」アーシュラ・K・ル=グイン
「夜の言葉」アーシュラ・K・ル=グウィン

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友人に連れられて行ったそのクラブは、敷地もあまり大きくなく、部屋数もたかが知れており、ビリヤード台もなく、特別美味しいワインがあるわけでもない、冴えないクラブ。しかし折よくジョーキンズという古株が来ていて、彼に好物のウイスキーのソーダ割を振舞えば、必ず面白い物語を聞かせてくれるというのです。

ビリヤードクラブで語られるホラ話の数々。それは世界中を旅してきた、一度は人魚と結婚までしたたというジョーキンズ氏が語る物語。ダンセイニといえば、これまでは「ぺガーナの神々」や「魔法使いの弟子」のような中世的なファンタジーのイメージだったんですが、これはまるで違うんですね。こんな作品も書いていたとはびっくり。こちらにも妖精や魔女、人魚などは登場しますし、蜃気楼が幻想的な情景を作るんですが、もっと日常に近い物語。しかも「電気王」という作品では火星旅行について、「ビリヤード・クラブの戦略討議」ではなんと原爆戦争について書かれてるんです。この「ビリヤード・クラブの戦略討議」が発表されたのは、広島の原爆投下から3年後なんですよね。最初はちょっと引いたんですが、でも最後のオチは好きでした。...でも、魔女の住む森や丘の上に現れる蜃気楼の情景は美しいけど... ダンセイニなら、もっと重厚なファンタジーが読みたいかな。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
「ダンセイニ戯曲集」ロード・ダンセイニ
「牧神の祝福」ロード・ダンセイニ

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パトリシア・マキリップによる異世界ファンタジー、イルスの竪琴全3巻です。いやあ、面白かった!
一読して「指輪物語」の影響を感じたし、実際共通する部分が多いんですよね。辺境の小さな平和な村に住む平凡な主人公が、何らかの使命のために旅に出るところとか、実は平和だと思っていたのは主人公たちだけで、戦いの影がすぐそばまで迫ってきていたこととか。でも、この世界ならではのユニークな設定も色々とありました。王国内のそれぞれの領国支配者は、その領国と見えない絆で密接に結びついていて、その領国内でのことは草木の1本1本に至るまで全て感じとることができるし、その人が死ぬと領国支配権は自動的に世継に移るとか... だから君主が死んだ時、世継はそれを真っ先に身体で知ることになるんです。あと、この世界では「謎解き」がとても重要で、大学も謎解きとその教訓を教える場所だし、謎解きのためには命を賭けることも珍しくないとか。主人公も、最初は躊躇ってるんですが、最終的には謎に対する好奇心を抑えきれずに冒険に飛び込んでしまうことになるし... そして謎解きが盛んなだけあって、作品の中では謎がさらに大きな謎を呼んで、もう謎だらけ。って、あらすじもちゃんと書いてないので、何のことやら、ですが。
3冊のほとんどが旅の途上というのも「指輪物語」っぽいところ。でもその旅で訪れる各地の情景の描写がすごく綺麗なんですよねえ。もう、草原を吹き渡る風を肌に感じられるような気がするほど。戦いの場面ですら幻想的で美しいというのが凄いです。

登場人物も地名もすごく色々あって最初は混乱したし、設定を掴むまでが大変だったんですけど、一度掴んでしまえば、あとは夢中で一気読み。巻末に登場人物名と地名の一覧表が載ってるのも助かりました。ええと、現在は1冊目の「星を帯びた者」だけが入手可能のようですね。これ1冊だけだと、「えっ、こんなところで終わらせないでよ!」ってところで終わっちゃうので、どうかと思うんですけど、剣と魔法の異世界ファンタジーが好きな方にはオススメの作品かと~。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のパトリシア・A・マキリップ作品の感想+
留守中に読んだ本(18冊)(「妖女サイベルの呼び声」「影のオンブリア」の感想)
「星を帯びし者」「海と炎の娘」「風の竪琴弾き」パトリシア.A.マキリップ
「ムーンフラッシュ」「ムーンドリーム」パトリシア・A・マキリップ
「オドの魔法学校」パトリシア・A・マキリップ
「ホアズブレスの龍追い人」パトリシア・A・マキリップ
「チェンジリング・シー」パトリシア・A・マキリップ
「茨文字の魔法」パトリシア・A・マキリップ

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「ケルトの薄明」だけ、画像が出ないですが...。

アイルランド生まれの詩人・イエイツが、既存のアイルランドの民間伝承物語や妖精譚の中から話を抜粋し、分類・体系化した本が「FAIRY AND FOLK TALES OF THE IRISH PEASANTRY」と「IRISH FAIRY TALES」。そこから妖精譚だけを抜粋してまとめたのが「ケルト妖精物語」で、妖精譚以外を収めたのが「ケルト幻想物語」。そして他人が集めた物語を編集するのに物足りなくなったのか、イエイツ自身が自分の足でアイルランドを歩き回って話を集めたのが「ケルトの薄明」。
イギリスの妖精について書かれていた「妖精 Who's Who」と同じように、気まぐれで我儘で意地悪な妖精の話が多いです。そして、「ケルト妖精物語」や「ケルト幻想物語」も素朴な物語が多いんですが、「ケルトの薄明」はそれ以上に素朴な印象。物語になり切れないスケッチ的なものも多くて、炉辺などで語る人々の言葉がそのまま伝わってくるようでした。イエイツが、口の堅いおじいさんからなんとか話を引き出そうと苦労してるらしいところも、なんか可笑しくて。でも話によって、読みやすいのと読みにくいのと、ちょっと差が激しかったかなあ。これを読むと、グリム童話やペロー童話って洗練されてるんだなあって実感しちゃいます。

アイルランドにキリスト教を伝えた聖パトリックは、土着のドルイド教を良く理解していたので、そういった信仰を無闇に排除するようなことはなく、むしろそういった宗教を吸収するようにして、キリスト教を広めていったんですよね。それまでの土着の神々は、妖精として残っていったのだそう。そのせいか妖精譚もキリスト教の影響を受けながらも、ちょっと異教的な雰囲気を残してて、そういうところが結構好きです。(ちくま文庫)

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ポール・ギャリコ2冊。どちらも児童書。「ほんものの魔法使」の方は、ちくま文庫からも出ましたが、私が読んだのは単行本です。
「トンデモネズミ大活躍」は、ある陶器職人が作ったネズミが命を得て大冒険を繰り広げるという物語。モナコの故グレース・ケリー王妃が陶芸を始めた時に最初に作ったネズミの人形が、物語の生まれるきっかけになったのだそうです。ここに登場するトンデモネズミは、全身青色。小さな丸っこい体はフクロネズミみたいだし、後ろ足はカンガルー、前足はサルのよう。耳はウサギの耳そっくりで、内側は毒々しいオレンジ色。しかも尻尾もほとんどなく、という状態なんですけど... グレース・ケリー王妃が作ったネズミもそんな姿だったのでしょうか?(笑)
「ほんものの魔法使」は、魔法都市マジェイアを訪れた青年魔術師アダムの物語。最初は本物の魔法使いが沢山登場するファンタジーかと思ってたんですけど、実はこの魔術都市にいる魔法使いは本物の魔法使いじゃなくて、手品師とか奇術師なんですよね。最初はどこかにネタがあるはず... と、アダムの魔法を見ていた面々が、もしかしたらこれは本物?と思い始めたところから、だんだん中世の魔女裁判のような感じになってくるのが不気味。

「トンデモネズミ大活躍」の方は、あまりに子供用であんまり好みじゃなかったかも... 「ほんものの魔法使」の方が面白かったです。でもポール・ギャリコの作品の中では、まあまあってとこですね。(←なんかエラそう(^^;) (岩波書店・大和書房)


+既読のポール・ギャリコ作品の感想+
「トマシーナ」ポール・ギャリコ
「セシルの魔法の友だち」ポール・ギャリコ
「マチルダ ボクシング・カンガルーの冒険」ポール・ギャリコ
「われらが英雄スクラッフィ」ポール・ギャリコ
「幽霊が多すぎる」ポール・ギャリコ
「猫語の教科書」ポール・ギャリコ
「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」他2冊 ポール・ギャリコ
「七つの人形の恋物語」「スノーグース」ポール・ギャリコ
「トンデモネズミ大活躍」「ほんものの魔法使」ポール・ギャリコ
「ポセイドン」上下 ポール・ギャリコ
「ザ・ロンリー」ポール・ギャリコ
「「きよしこの夜」が生まれた日」ポール・ギャリコ
Livreに「ジェニィ」の感想があります)

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バレエで有名な「くるみ割り人形」の原作。子供の頃にも読んだことがあるはずなんですが、改めて読んでみるとバレエとはかなり雰囲気が違っていてびっくり。バレエでは、クリスマスプレゼントに貰ったくるみ割り人形がネズミを戦っているのを見たクララが、思わず加勢に入ってくるみ割り人形側が大勝利。人形の国に連れて行ってもらえる... というストーリーですよね。で、全てが終わってみると、クリスマスの夢だった... って感じだったかと。
原作も確かに大筋ではそうなんですが... でも終始「夢の世界~」なバレエとは違って、もっと生々しく現実が迫ってくる感じなんです。最初にネズミとくるみ割り人形が戦う場面なんて、マリー(原作ではクララじゃなくてマリー。クララはマリーの持ってる人形の名前)も実際に怪我をして血を流して倒れてたりするし、親はマリーの再三の話を聞いて、そのたびに「夢をみたのね」と言うんだけど、実は夢オチではなく... なんだか思ってた以上に不気味な話でした。えっ、こんな終わりでいいの?! 状態。
あ、でも人形の国の描写はとっても素敵です。氷砂糖の牧場、アーモンド・干しぶどうの門、麦芽糖の回廊、大理石のように見えるクッキーの敷き詰められた道、オレンジ川にレモネード川、ハチミツクッキーの村、キャンデーの町、コンポートの里、お菓子の都... もう読んでいるだけでも、いい香りが漂ってきそう。美味しそうです~。(岩波少年文庫)


+既読のホフマン作品の感想+
「クルミわりとネズミの王さま」ホフマン
「悪魔の霊酒」上下 ホフマン
「黄金の壷」「スキュデリー嬢」 ホフマン
「ホフマン短篇集」ホフマン
「黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ」ホフマン

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「白い女神」であるジェンナを中心とした、ケルトの神話を思わせるようなファンタジー。
この作品でまず驚かされたのは、物語が「神話」「伝説」「物語」「歴史」の章に分かれていて、その合間に「歌」や「バラッド」、「寓話」などが挿入されていたこと。そういう風に細かく分かれていると、どうしても流れが分断されやすいと思うんですけど、それがそうでもないんですねえ。分断する以上に、世界をより深く重層的にしていてびっくり。
物語に厚みを持たせるために、その世界の神話が物語中に挿入されるのはそれほど珍しくないと思うんですけど、でもここに書かれた物語が神話となってしまうほど、遥か未来の視点からも書かれてるんです。これが珍しい...。ここでの「物語」が「神話」として高められ、あるいは民間の中の「伝説」として伝わり、その過程で歌やバラッドが出来るんですけど、さらに長い年月が経った未来の歴史家などがこの物語のことを様々な資料で研究してるのが「歴史」の章。
って、言葉で説明するとすごくヤヤコシイですね...(^^;。でもこれによって1つの物語がとても立体的に見えて来ます。真実がどんな風に変化して神話や伝説になっていくのかというのも面白いし、遥か彼方の未来の人々が、見当違いのことを論じてるのも可笑しい♪

私好みの骨太なファンタジーで、すっごく面白かったです。ジェイン・ヨーレンって、叙情的な描写ばかりが前面に出てるのかと思ったけど、それだけじゃないんだなあ。(ハヤカワ文庫FT)


+既読のジェイン・ヨーレン作品の感想+
「夢織り女」ジェイン・ヨーレン
「水晶の涙」ジェイン・ヨーレン
「三つの魔法」ジェイン・ヨーレン
「光と闇の姉妹」「白い女神」ジェイン・ヨーレン
「月夜のみみずく」ジェイン・ヨーレン ショーエンヘール

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