Catégories:“幻想文学1500”

Catégories: / / / /

[amazon]
アイルランド系の詩人・ウィリアム・アリンガムによる詩に、これまたアイルランド系の画家一族に生まれた「妖精国の宮廷絵師」と呼ばれるリチャード・ドイルの絵が添えられた絵本。原書は、イギリスの有名な木版印刷師・エドマンド・エヴァンスが手がけた数々の絵本のうちでも最高傑作とされる豪華本なのだそうです。それが文庫本になってしまうというのが驚きなんですが、このちくま文庫版は絵もカラーだし、小さいながらも美しい本となっています。

詩の方は「夜明け」「昼まえ」「昼のおふれ」「暮れ方近く」「日は暮れて」という5幕の芝居仕立て。妖精の姫君が妖精国の掟によって次の満月には結婚しなければならないというのに、お姫さまは3人の求婚者たちが全然気に入らなくて... という物語詩です。矢川澄子さん訳。でもね、詩そのものはとても可愛らしいんですけど、その合間合間に直接その場面と関係のないイラストと説明文が挟まれてるので、ちょっと分かりづらいんですよね...。原書でもこんな構成だったのかしら。日本語に訳す時にどうにかならなかったのかしら。
ちなみにイラストを描いているリチャード・ドイルの甥があのシャーロック・ホームズシリーズのコナン・ドイルなんですって。コナン・ドイルが画家一族に生まれてたなんて、知らなかったです。(ちくま文庫)

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / / /

[amazon]
以下の14編が収められた妖精物語集です。
 「妖魔の市」(クリスチナ・ロセッティ)
 「お目当てちがい」(ジョージ・マクドナルド)
 「魔法の魚の骨」(チャールズ・ディケンズ)
 「四人のこどもが世界をまわったはなし」(エドワード・リア)
 「さすらいのアラスモン」(メアリ・ド・モーガン)
 「いないいない姫」(アンドリュー・ラング)
 「王の娘の物語」(メアリ・ルイザ・モールズワース)
 「王さまを探せ マザーグースの国の冒険」(マギー・ブラウン)
 「妖精の贈り物」(F・アンスティ)
 「壺の中のお姫さま」(ラドヤード・キプリング)
 「ヒナゲシの恋」(ローレンス・ハウスマン)
 「ものぐさドラゴン」(ケネス・グレアム)
 「メリサンド姫 あるいは割算の話」(イーディス・ネズビット)
 「魔法使いの娘」(イヴリン・シャープ)

ジョージ・マクドナルドとメアリ・ド・モーガンの2作は既読です。キプリングも、多分。
今回はクリスチナ・ロセッティの「妖魔の市」が目当てで読んだんですが、これが期待に違わず、ものすごく素敵な作品でした。これは、小鬼たちが売っている美味しそうな果物に毎日のように見とれていたローラは、とうとう自分の金の巻き毛で果物を買って食べてしまい... という物語詩。不気味で、でもものすごく魅惑的で、こういうの大好き! これを読めただけでも、この本を読んだ甲斐があったと言えそう。しかも矢川澄子さん訳だし。でももちろんそれだけではなく、他の作品も楽しかったです~。
19世紀に書かれた作品なので、昔ながらの妖精物語を逆手に取ってるのも結構あって、それが楽しいんですよね。良い子の口から出てくる宝石が実は精巧な偽物だったとか、王さまが政府関係の仕事で毎日出勤してるんだけど、その出勤途中で妖精に出会ったりとか。そんな中で私が特に気に入ったのは「メリサンド姫 あるいは割算の話」。
洗礼の祝賀会っていくら気をつけても結局誰か妖精を呼び忘れちゃうし、呼び忘れた妖精に何かしら呪いをかけられて大変なことになっちゃう。それならいっそのこと祝賀会をやめてしまおうということになるんですけど、逆に妖精全員が詰めかけてきて、お姫さまは「ハゲになる」という呪いをかけられてしまうんですね。王さまが以前教母にもらった願い事をとっておいたおかげで、お姫さまは年頃になった時に髪の毛が生えるように願うことができるんですけど、その願いが「わたしの頭に1ヤードの金髪が生えますように。そして、金髪は毎日1インチづつのびて、切った場合にはその二倍の早さでのびますように」というもの。それってまるでねずみ算? おかげでエラいことになるんです... そして後は、さすがネズビットだわという展開に。(笑)
あと「ものぐさドラゴン」なんかも大好き。ケネス・グレアムは「たのしい川べ」しか読んだことなかったけど、他の作品も読んでみたくなりました。そしてもちろん、王道の妖精物語も収められています。「ヒナゲシの恋」なんてとっても可愛かったな。(ちくま文庫)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / / /

 [amazon]
イヴがエデンの園の禁断の木の実を食べたのは、蛇のせいではなく、自分で食べようと決めたから。しかし繊維が多くもったりとした果肉、ぼんやりとした甘さはイヴを落胆させただけ。イチジクを食べたことによって空が落ちることはなく、神の怒りを示す雷鳴が鳴り響くこともなく、自分裸なのに気付いて恥ずかしくなることもないまま、イヴは夜になって顔を合わせたアダムにイチジクを食べたことを告白し、イヴを失いたくないアダムもまたイチジクの実を食べることに。そして翌朝、いい加減待ちくたびれた頃に4人の天使たちがやって来て、2人と蛇、そして動物たちをエデンの園から追い出します。

聖書の創世記、アダムとイヴの楽園追放の物語をイヴの視点から描いた作品。創世記を物語にしたといえば、ミルトンの「失楽園」(感想)もそうなんですけど、あちらは堕天使たちがやけにカッコいいとはいえ、かなり正統派ですしね。こちらはまた全然雰囲気が違っていて面白かったです~。
アダムの最初の妻・リリスがエデンの園にいるというのもすごいなあと思ったんですが、それ以上に面白かったのは蛇のこと。ここに出てくる蛇は、まだ今のような蛇ではなくて、人間のような姿。とても興味深いのです。エデンの園の世話をしているのも蛇ですしね。丁度現代の園芸用品みたいな様々な道具を使いこなして様々な果樹の世話をしてるし、そもそも蛇の家の文化的なレベルの高いこと! しかも蛇はイヴに、まだ起きていないノアの箱舟の話やバベルの塔の話を語って聞かせるんです。世界にはまだアダムとイヴとリリスしかいないというのに、いきなり大勢の人間の話なんてされても、イヴには想像もつかないんですが。(笑) その話の中には、イヴ自身の未来の物語も含まれています。そして蛇はイヴに生きていく上で必要な様々なことを教えるんです。来るべき楽園追放の日に備えるかのように。

この物語は、聖書よりももっと様々なエピソードが語られているユダヤの創造神話からできあがったのだそう。ということで、いくつかオススメの参考文献が書かれてたんですけど、これって全然日本語訳が出ていないのでは...。うわーん、読みたい、読んでみたい! 聖書だけじゃどうしても物足りないとは前から思ってたんですよね。でも私が読みたいのは「タルムード」(ユダヤ教の聖典)みたいなのじゃなくて、もっと神話そのもの。何かいい資料はないかしら。(トパーズプレス)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / /

ドイツのとある荒れ果てた森の中の古い城に住んでいたのは、ゴッケル・フォン・ハーナウという名の老人。ゴッケルにはヒンケルという妻と、ガッケライアという娘があり、3人は古い城の鶏小舎の中に住んでいました。かつてはドイツの中で最も立派な城の1つだったこの城は、ゴッケルの曽祖父の時代にフランス軍によって叩き壊され、当時飼われていた見事な家禽も食い尽くされ、それ以来荒れるにまかされていたのです。ゴッケルの曽祖父も父親も隣国ゲルンハウゼン王家の雉及び鶏の守として仕えており、ゴッケルも同じ役職につくものの、桁外れに卵好きの王に卵の浪費を強く訴えたため、王の怒りを買って宮廷から追放され、荒れ果てた父祖伝来の城に住むことになったのです。ゴッケルたちに従うのは、牡鶏のアレクトリオと牝鶏のガリーナのみ。ゴッケルは養鶏で生計を立てようと考えるのですが...。

岩波文庫版でも出ているのでそっちでもいいかなあと思ったんだけど... とは言っても、それもすっかり廃版になっちゃってるんですけど(笑)、やっぱり矢川澄子さん訳が読みたいなあと王国社版をセレクト。いえ、本当は妖精文庫のが入手できればそれが一番なのですが!
人間の言葉を理解する鶏、何でも願いの叶うソロモンの指輪、親切にしてやった鼠の恩返しなどなど、童話らしいモチーフが満載なんですが、昔ながらの童話とはやっぱりちょっと違いますね。同じドイツでも、グリム童話とは実はかなり違うかも! そういった伝承の童話の持つ雰囲気をエッセンスとして持ってるんですけど、それはあくまでもエッセンス程度で、むしろ現代の物語という感じです。これは19世紀はじめ頃に書かれた作品なんですけど、当時はとても斬新な作品だったのではないかしら。結構凝った作りだと思うんですけど、すっきりまとまっていて、読みやすかったし面白かったです。矢川澄子さんの訳だから、読みやすいのは当然なんだけど♪ 特に驚いたのはその幕切れ。鮮やかですね!
でも原書のドイツ語には、ふんだんに言葉遊びが施されてるんですって。登場人物の名前も遊び心たっぷりなのだそう。さすがに日本語訳では、そこまでは分からないんですよね。それだけがちょっぴり残念。(王国社)

| | commentaire(0) | trackback(0)
Catégories: / / /

 [amazon]
17世紀、清教徒革命下のイギリス。テムズ川に捨てられていた赤ん坊は、50匹の犬と共に暮らし犬たちを闘犬やレースに出して生計を立てている「犬女」に拾われ、ジョーダンという名前をつけられることに。成長したジョーダンは、自分の中に見えないインクで綴られたもう1つの人生があることに気付き、かつて野イチゴが高く香る家で見かけた踊り子・フォーチュナータを探して旅立ちます。

本の紹介に「幻の女フォーチュナータを捜して時空を超えた冒険の旅に出る」なんて書かれていたので、もう少しSF寄りの作品なのかと思っていたのですが、全然違いました! これはファンタジーなのですねー。放っておけば、もう空想がどこまででも広がってしまいそうな不思議な作品。まるで生まれつき軽すぎて天井に頭をぶつけそうになった3番目のお姫さまのエピソードみたい。でもそのまま飛んでいってしまうのではなく、危ういところでへその緒に引っ張られるんです。王女さまもこの物語も。神話とか聖書とかのエピソードもあり、歴史的でもあり、何ていうかものすごく懐が深いなあ... しかもそこかしこに私が好きな雰囲気がたっぷり。女の掃除人が掃除する様々な色の雲のエピソードも、宙吊りの家での生活も、恋が疫病扱いされている町の話も、そして12人の王女たちの物語も...!
でもこういったファンタジックな物語は、ジョーダンの側の物語なんですよね。これと平行して進んでいくのは、もっと現実的な17世紀のイギリスを描いた「犬女」の物語。こちらのベースはあくまでも史実に忠実。でも「犬女」の存在だけはファンタジーなんですよねえ。ジョーダンがそのファンタジックな世界の中で1人リアルな存在だったように。
リアルでありながらファンタジック、ロマンティックでありながらグロテスク。でも美しい! この本に詰まっているエピソードは、まるでピューリタンたちに割られてしまった教会のステンドグラスの色ガラスに、日の光が当たって色んな色が石畳に映って踊っているような感じです。

冒頭で時間についての言葉が書かれています。

ホピというインディアンの種族の言語は、英語と同じくらい高度に洗練されているにもかかわらず、時制というものがない。過去、現在、未来の区別が存在しないのだ。このことは、時間について何を物語っているのだろう?

まさしくこの言葉の通りの作品だったかも。 (白水uブックス)


+既読のジャネット・ウィンターソン作品の感想+
「さくらんぼの性は」ジャネット・ウィンターソン
「オレンジだけが果物じゃない」ジャネット・ウィンターソン

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / /

  [amazon] [amazon]
フランツィスクスは、父が犯した呪わしい悪行を償うために両親が聖地リンデに巡礼の旅に出ていた時にできた子供。苦行で身体を損なっていた父は、フランツが産まれた丁度その瞬間に他界。その後、母はリンデの修道院で出会った巡礼の言葉に感銘を受け、フランツをシトー会の女子修道院の院長に預けることになります。司祭について様々なことを学んだフランツは、16歳の時に隣町のカプチン会修道院に移って更に勉強し、やがてメダルドゥスという修道名を得ることに。そして、修道院に入って5年が過ぎた時、老齢のキュリルスの代わりに聖遺物の管理をすることになります。ほとんどの聖遺物は偽物。しかしその中には、聖アントニウスを誘惑するために悪魔が使ったという霊液(エリクシル)も入っており、キュリルスはこの霊酒の入った小函だけは決して気軽に開けないようにと注意するのですが...。

「つい、うっかり」「悪魔の霊酒」を口にしてしまったことから、主人公が様々な出来事に巻き込まれていくという物語。先日のたらいまわし企画第46回「つい、うっかり」の時に、overQさんが出してらした本です。(記事) 作者のE.T.A.ホフマンは「くるみ割り人形」を書いた人。以前これを読んだ時に、バレエの可愛らしさとはまた全然違う薄ら怖さにびっくりして、他の作品も読みたいなあと思ってたんです。でもなかなか手に入る本がないんですよね。こんな本が出ていたとは知りませんでしたー。

奇妙な類似や繰り返しが印象に残る幻想的な作品。登場人物に関してもそうなんですけど、ここで起きる出来事も全てが類似と繰り返し... つまりこの主人公にまつわる全ての出来事は、実はその場限りで起きたことではないんですね。最後には5代にわたる大河小説だったということが判明しますし。(このことは巻頭の登場人物表からも分かっちゃうんですが) そう考えると、主人公が悪魔の霊酒を飲んだのは、実は決して偶然ではなかったわけで... 「つい、うっかり」のように見えて、実は巧妙に仕組まれた罠にはまっていたんですねえ。そんなことをするのは、やっぱり悪魔? それが彼の運命(宿命)だった、なんて言い方もできるんですが、それにしては巧妙すぎるんです。読んでいると、まるで悪魔が本当にいて「悪魔の霊酒」が本物だったことを証明されてしまったような気になります。
でもとてもキリスト教色の濃い物語なんですが、何かしら起きる出来事が必ず後々に直接的に影響してるのを見てると、「因果応報」なんて仏教的な言葉が浮かんでしまうー。「因果応報」は、前世の行いが今世に影響してるということなので、ちょっと違うんですけどね。ぴったりの言葉は思い浮かびません... 思い浮かんだのは、せいぜい「業(ごう)」ぐらい。
というのはともかくとして、ものすごく緻密に出来上がった物語でした。全てが夢の中のことみたいなのに、妙に現実的でもあって、最終的に綺麗に収まってしまうのはミステリ的? いやあ、面白かったなあ。(ちくま文庫)


+既読のホフマン作品の感想+
「クルミわりとネズミの王さま」ホフマン
「悪魔の霊酒」上下 ホフマン
「黄金の壷」「スキュデリー嬢」 ホフマン
「ホフマン短篇集」ホフマン
「黄金の壺/マドモワゼル・ド・スキュデリ」ホフマン

| | commentaire(2) | trackback(0)
Catégories: / /

 [amazon]
ある日ディジョンの火縄銃(アルクビューズ)公園のベンチに座っていた「私(ベルトラン)」は、貧困と苦悩を全身に纏ったような哀れな男に出会います。同じベンチに座って読書をしていたその男の本からひとひらの押し花が地面に落ち、「私」がそれを拾い上げて男に返したことがきっかけで、話し始めた2人。芸術を探し求め、そして見つけたという彼は、「私」にそのことを語り聞かせ、持っていた本を読むように渡して去っていきます。それは「夜のガスパール。レンブラント、カロー風の幻想曲」という本でした。

夭折した詩人・ベルトランの散文詩集。没後忘れられていたこの作品集はボードレールによって見出され、マラルメをはじめ多くの詩人に影響を与えることになったのだそう。ラヴェルのピアノ曲「夜のガスパール」も、ここからなんですよね。ラベルのこの「夜のガスパール」は「オンディーヌ」「絞首台(ジベ)」「スカルボ」の3曲。それぞれ同名の詩があるんです。このラヴェルの曲、弾くのがものすごーーく難しそう... 美しいけどちょっと薄気味悪いところもある曲です。

この本は、「神と愛とが芸術の第一の条件、芸術の中にある《感情》であるならば、--悪魔こそその第二の条件、芸術の中にある《思想》ではないでしょうか」と言う男が持っていた本「夜のガスパール」を、ベルトランが出版したという体裁。ガスパールとは、この本の中では悪魔の名とされていますが、元々はベツレヘムへ向かった東方の三博士の1人の名前から。(ちなみに3人の博士の名前はメルヒオール、ガスパール、バルタザール)
「フランドル派」「古きパリ」「夜とその魅惑」「年代記」「スペインとイタリア」「雑詠」という「夜のガスパールの幻想曲第一の書」から「第六の書」までと、「作者の草稿より抜粋したる断章」があって、1つの章につき収められている詩は10編前後。散文詩という物自体、私にはよく分からないままだったし、一読しただけではその魅力が十分分かったとも言えないんですけど、でも1つ1つじっくり読んでると、なかなかいいんです、これが。特に「夜とその魅惑」には、稲垣足穂の「一千一秒物語」を思い起こさせる雰囲気がありましたしね。ちょっと薄気味悪くて、でもちょっと楽しい感じ。

月が黒檀の櫛で髪を梳いていた。丘を、野原を、木々を、蛍の雨で銀色にしていた。(狂人)

しかし小人は、いななき逃げる私の魂にぶらさがり、白いたてがみから糸を紡ぐ、紡錘のように廻っていた。(小人)
そして私、--熱に錯乱し!--顔に皺寄せた月が、私に向かって舌をつき出している首吊り人のように見えた!(月の光)

これだけ抜き出してもワケ分かりませんが...。こういうの、結構好きだな。(岩波文庫)

| | commentaire(2)

Note


MAIL FORMBBS

購読する ATOM


Powerd by MovableType4.24-ja
Copyright 2004-2011 四季. All rights reserved.