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スコットランドを「幽霊伝説」「妖精伝説」「魔女伝説」「文学・歴史ミステリー」「パワースポット」の5章から紹介していく本。
んんー、悪くはなかったんだけど... なんだかちょっと微妙でした。面白い部分と面白くない部分が混在してるんですよね。「幽霊伝説」はまずまず、「妖精伝説」はいい感じ、「魔女伝説」はイマイチ、「文学・歴史ミステリー」は面白いんだけど物足りない、「パワースポット」は案外いける... といった感じでしょうか。もちろんそれは私の興味の方向性によるものなんでしょうけど。
一番面白かったのは、シェイクスピアのマクベスが実在の人物だったという辺りかな。いや、本当にいたとは知りませんでした。11世紀に17年間スコットランドを治めた王だったんだそうです。でも本当のマクベスは、シェイクスピアの悲劇に描かれてる人物とは全然違う人物だったんですって。シェイクスピアの悲劇で史実に沿ってるのは、国王ダンカンを殺して王位についたこと、そしてダンカンの子・マルコムによって殺されたということだけ。野心に目がくらんで謀反を起こしたという下克上的な描かれ方をしてるんですけど、本当はマクベスは王家の血筋の生まれで、ダンカンとは同年代の王位継承者同士の争いだったようです。しかも戦いを仕掛けたのはダンカンの側だったんだとか。本当のマクベスは、有能で寛大な君主でスコットランドを大いに繁栄させた王なのだそう。しかもマクベス夫人もそんな夫に主君殺しをけしかけるような悪女ではなくて、こちらも王家の血筋、しかも本家筋の貴婦人。演劇界では「マクベス」が呪われた芝居とされているというのも知らなかったんですけど、その呪いが事実とは随分違う人物に描かれてしまったマクベス夫妻の怒りのせいかもという筆者の意見も、いかにもありそうです。(笑)
スコットランドといえば、ウォルター・スコットやその作品に関しても何か言及があるのではないかと期待したんですが、それは全然ありませんでした。ああー、この本が物足りなかったのは、その辺りが全然載ってなかったせいというのが一番大きかったのかも。ロンドンが舞台のジキルハイドなんかより、「湖上の美人」を取り上げて欲しかった。でも「ミステリー」「ファンタジー」の括りに引っかからなければ仕方ないんですよね。残念。(新紀元社)
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アイルランドをレンタカーで走り、そしてアラン島へ。夏の終わりにヒースの花咲くムーア(荒野)が見たくなって、嵐が丘の舞台となったイギリスのヨークシャーのハワースへ。緑と白の地に真っ赤なドラゴンが国旗のウェールズ、「バスカーヴィル家の犬」の舞台となったダートムーア、ミス・マープルが住むセント・メアリー・ミード村のモデル、ダートムーアのウィディコム・イン・ザ・ムーア村へ。クリームティーが美味しいことで有名なトットネス、ケルトの国・コーンウォール地方へ。そしてケルトの遺跡を見るために再びアイルランドへ。
以前読んだ「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」に続く旅行記。ただし今回はアーサー・ランサム色は全然なくて、アイルランドやイギリスの南西部が中心。何度もの旅の話を1冊にまとめたようで、ちょっとあっさりしすぎてる気もしたんですけど... 最初のアイルランドの章があんまりあっけなく終わってしまったのでびっくりしたんですけど、再びアイルランドが登場して一安心。アランセーターで有名なアラン島もいいですが、私としてはケルトの遺跡やタラの丘、「ケルズの書」の方がずっと気になりますしね。
2度目のアイルランド旅行の章ではO.R.メリングの「妖精王の月」とバーバラ・レオニ・ピカードの「剣と絵筆」が引き合いに出されていました。「妖精王の月」は私もとても好きな作品。アイルランドのケルトの雰囲気がたっぷりで素敵なんです。でも「剣と絵筆」の方は初耳。修道僧が福音書を描いている場面が出てきて、羽根ペンの切り方や絵の具の作り方、羊皮紙の磨き方などが詳しく出てるというので、早速図書館に予約を入れてしまいました。修道士カドフェルの本にもそういう場面があったんですけど、それほど詳しくはなかったんですよね。どんなお話なんだか楽しみ楽しみ。(河出書房新社)
+既読の高柳佐知子作品+
「エルフさんの店」高柳佐知子
「ティスの魔女読本」高柳佐知子
「イギリス湖水地方を訪ねて」「風のまにまにイギリスの村へ」高柳佐知子
「ハイウィロウ村スケッチブック」高柳佐知子
「ケルトの国に妖精を探しに」高柳佐知子
「アリゼの村の贈り物」高柳佐知子
「ナチュラル暮らしの手作り工房へ、ようこそ」高柳佐知子
「庭が仕事場」高柳佐知子
「不思議の村のハロウィーン」高柳佐知子
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ある朝フェイリムが起きると家の中がぐちゃぐちゃ。重いオーブンは壁から動いているし、玄関のドアの前には家具が積み重ねられ、テーブルも窓をふさいでいました。驚くフェイリムに話しかけたのは、油まみれの小人。小人の他にもフェイリムの腰ほどの背丈の全身毛むくじゃらの男女が沢山いました。小人は家を守る精霊ドモボーイで、毛むくじゃらの男女は畑を守るグラッシャン。そして自分たちを「生まれくるもの」から救えるのはジャッコ・グリーンだけなのだと言います。どうやらフェイリムがジャッコ・グリーンと思われているようなのですが...。
石が孵り、ワームが目覚めるのを阻止しなければならないと言われたフェイリムの仲間となるのは、木から木へと飛び移る「愚者」マッド・スウィーニーと、影をなくしてしまった「乙女」アレクシア、丸いカフェテーブルのような不思議な姿の「馬」オビー・オース。
水辺の洗濯女やバンシー、小麦畑の鬼婆などイギリス土着の妖精が多く登場します。イギリスやスコットランド、アイルランド辺りの土着の妖精がディズニーの可愛い妖精とは全然違うというのは知ってますけど、この本に登場する妖精たちは今まで読んだ本に登場していた以上に迫力があって、「妖精」というより「妖怪」と呼んだ方が相応しい感じ。でも設定としては好みの系統のはずなんだけど、訳文のせいなのかそもそもの話のせいなのか、なんだかとても読みにくかったです...。「生まれくるもの」とか「ワーム」とか言われても全然イメージが湧かなかったですし。しかも情けない主人公の成長物語でもあるんですが、主人公自体もイマイチ。逃げ惑いながら嫌々続ける旅の話なんて読んでてあまり楽しくないですしね。
途中でちょっと面白くなりそうな感じだったのに、ラストの詰めはやっぱり甘いような... 訳者あとがきに書かれているほど深みも味わい深さも感じられなくて残念。以前読んだ「不思議を売る男」は面白かったと思うのになあ。(偕成社)
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イギリスのウェールズ地方のジプシーたちに伝わる民話全21編。
序文に「先祖の語部の言葉そのままに、幾世代かを通じ、祖母から子へ、そして孫へと伝えられて来たのである」とあったので、ジプシーらしい、ちょっと今までなかったような話があるのかと期待したんですが、それほどでもなかったですね...。もちろん、これまでにあまり見なかったようなモチーフはちょこちょこと使われてるんですが、基本的にどこかで読んだような話のバリエーションばかり。ジプシーらしさはその言葉、短いきびきびした語句を連続して使うところにもあるようで、そういうのは日本語に訳したら当然なくなってしまうのですが。
ロシアはイワン、ハンガリーはヤーノシュ、ジプシーの場合はジャック。(さすがイギリス!) 末っ子で周囲から「ばか」だと言われていて、ロシアのイワンによく似てます。(現代教養文庫)
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美しい書物はどのようにしてつくられてきたか。中世イギリスの辺境の島で修道僧たちによってつくられた福音書。グーテンベルクやカクストンら初期印刷術者によってつくられた書物。そして、ウィリアム・モリスの理想の書物―。書物の美しさの精髄を豊富な図版を駆使して解き明かす。本を愛してきた人間の情熱とその運命を人間味あふれる数々のエピソードをまじえて物語る、たのしい書物の文明史。(「BOOK」データベースより)...ということで、「中世の彩飾写本」「初期印刷術」「彩色図版のあるイギリスの書物」「プライヴェート・プレスの時代」という4章に分けて、書物の歴史や変遷を見ていく本です。

ええと、これは結構楽しみにしてた本なんですけど、あんまり面白くなかったです... 著者はイギリスの古書業界では結構有名な方のようだし、図版がたくさん紹介されてるのは良かったんですが、なんといっても文章が。うーん、これはきっと翻訳の問題なんですね。文章中に注釈が入れ込まれているのが、なんとも邪魔で仕方ありませんでしたー。それにその時話題にしている図版が全然違うページに挟み込まれていたりするのも不便だったし。(時には何十ページも戻ることも!)
それと、これは著者がイギリス人だから仕方ないかなとも思うんですけど、3章の「彩色図版のあるイギリスの書物」はちょっと余計に感じられてしまいました。4章のモリス他のプライベートプレスに関しても、それほど目新しいことは書かれていなかったので、この辺りについてはウィリアム・モリス自身の「理想の書物」なんかを読む方がずっといいと思いますね。3・4章はあっさり省いてしまって、もっと1・2章を掘り下げて欲しかったかな。いや、むしろ「ケルズの書」辺りを直接眺める方が、余程楽しかったかも。なんて言ったら、この本の存在価値は...?(笑)(晶文社)
+旧ブログの書誌学的な本の感想+
「西洋書物学事始め」「アーサー王伝説万華鏡」高宮利行
「理想の書物」ウィリアム・モリス
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ラング世界童話集が復刊し始めました!
これはヴィクトリア女王時代に、アンドルー・ラングが世界各地の伝承文学からよりすぐりの作品を子供たちに提供しようと編纂した古典童話集。子供の頃に好きだったんです~。最初に日本語訳を出したのは東京創元社で、これがなんと1958年のこと。その後いくつかの出版社から出されたようで、私が持ってるのは偕成社版。全12巻のうち6~7冊持ってて、未だに祖母の家に置いてるんですが、大人になってから「川端康成訳」に気づいてびっくりだったし、そもそもこういう童話集は大好きなのに、なんで子供の頃に全部買ってもらっておかなかったんだろう!と、後から随分後悔したものです。今からでも欲しいな、なんて思ったりもしたんですけど、気がついたらアマゾンの中古で1冊1万円以上の高値がついてたりして、すっかり諦めてたんですよね。そしたら今年東京創元社から復刊されることになって! これから隔月1巻ずつ刊行されるんですって。嬉しい~。
私が持ってるのはソフトカバーで、しかもその上にぺらっとしたカバーも何もない簡易バージョンで、値段も相当安かったみたいなんですけど(笑)、今回復刊された本を見てびっくり。全然違ーう。表紙の色はタイトルに合わせてあるし、本国のオリジナル版についていたというヘンリー・J・フォードによる絵が使われていて、とても素敵です。
そして久々に読んでみて。いやあ、懐かしい。北欧の伝承童話集「太陽の東 月の西」でお馴染みの話が予想以上にいっぱい入っていてびっくりです。あと多かったのは、オーノワ夫人。このオーノワ夫人についてはあまりよく知らないんですけど、17世紀末のフランスの女流作家。オリジナルの童話を創作していたのか、それとも採取していたのかは不明ですが... どちらかといえば、オリジナルっぽい雰囲気かな。
子供の頃は原典なんて気にせず読んでたし、既に知ってる話も当然のように普通に読んでたんですけど、今改めてそういうのを意識しながら読み返してみると、面白いものですね。この童話集の最初の日本版が刊行された時、日本で手にしやすい作品や日本の昔話を除外して、改めて12冊に編み直されたのだそう。この2冊の巻末を見てみるとグリム童話が全部省かれてて、それもまた私には良かったのかも。いや、グリムもいいんですけどね。でもグリムよりも北欧系の方が好きだったし。
隔月1巻ずつの復刊で、来月には「みどりいろ」が刊行されます。楽しみ~。これを機会に全部読もうっと♪(東京創元社)
+シリーズ既刊の感想+(東京創元社版)
「あおいろの童話集」「あかいろの童話集」アンドルー・ラング編
「みどりいろの童話集」アンドルー・ラング編
「きいろの童話集」アンドルー・ラング編
+シリーズ既刊の感想+(偕成社文庫版)
「みどりいろの童話集」「ばらいろの童話集」アンドルー・ラング
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「時と神々の物語」は、「ぺガーナの神々」「時と神々」「三半球物語」の全作品及び、生前単行本未収録だった短編11編、シドニー・S・シームの挿絵も全点収録。「最後の夢の物語」は、「五十一話集」、本邦初公開の「不死鳥を食べた男」の全作品、その他2編の短編を収録。
ロード・ダンセイニの幻想短編集成全4巻の3巻と4巻。もっと早く読もうと思っていたのに、以前に1巻と2巻を読んでから(感想)、大分時間が経ってしまいました。なんせ分厚いんですよね、この4冊。3巻も4巻も、短編集が丸々3つ4つ入っているようなものだし。
この中では、3巻に収録されている「ぺガーナの神々」「時と神々」が再読です。(感想)
ダンセイニの真骨頂というのは、やっぱりこういった初期の神話系の作品にあると思うんですよね。ダンセイニの文章は17世紀のジェームズ王の欽定訳聖書の格調高い文体の影響を色濃く受けていると言われていて... これはたとえば2人称が「you - your - you - yours - yourself」ではなくて「thou(複数形はye) - thy - thee - thine - thyself」が使われているとか、動詞の活用形が今とは違うとか、そういうのなんですけど、たとえば16世紀のシェイクスピアの作品なんかでも、その2つの人称形が相手との微妙な距離感によって使い分けられてたりするんですよね。いわゆる「初期近代英語」。ダンセイニの作品でこの古風な言葉が使われていたのは、もっぱら初期の作品の「ぺガーナの神々」「時と神々」「エルフランドの王女」(感想)辺りのようです。
そんな風に言葉に強いこだわりを持っていた作家といえば、J.R.R.トールキンがいるんですが... この本の解説に、トールキンはきっと最初はダンセイニの本を沢山読んで熱中したのだろうけど、細部の言語学的な注意が不十分で深みがないと批判的になったのではないか、というようなことが書かれていて、いかにもありそうだなあと笑ってしまいました。もちろん、どちらも原書で読まない限りは、本当に味わうことはできないのだけど。C.L.ムーアが言ったという「誰もダンセイニを真似ることはできないのだが、ダンセイニを読んだことのある者はたいてい誰でも一度はやってみようとするものである」という言葉だって、原書を読まない限りは本当に理解することはできないし。
ダンセイニの後期の作品は、たとえば「魔法の国の旅人」(感想)のホラ話のような軽快な作品が中心となったようで、ここに収められている沢山の短編の中にもそういった芽がいくつも見られるんですが、やっぱり私は初期の重厚な作品の方が好きですね。「ぺガーナの神々」ほどの神話とまではいかなくても、既存の神話にモチーフを取った話や、異世界との境界線をふっと越えてしまうような作品が好きです。(河出文庫)
+シリーズ既刊の感想+
「世界の涯の物語」「夢見る人の物語」ロード・ダンセイニ
「時と神々の物語」「最後の夢の物語」ロード・ダンセイニ
+既読のロード・ダンセイニ作品の感想+
「ぺガーナの神々」ロード・ダンセイニ
「魔法使いの弟子」ロード・ダンセイニ
「魔法の国の旅人」ロード・ダンセイニ
「妖精族のむすめ」ロード・ダンセイニ
「エルフランドの王女」ロード・ダンセイニ
「影の谷物語」ロード・ダンセイニ